(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335166
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】空気コンプライアンスチャンバを備えたインク送達システムを有するプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20180521BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20180521BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/175 121
B41J2/175 171
B41J2/18
B41J2/01 401
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-520913(P2015-520913)
(86)(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公表番号】特表2015-525691(P2015-525691A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(86)【国際出願番号】EP2013064086
(87)【国際公開番号】WO2014009233
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】61/669,410
(32)【優先日】2012年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512193425
【氏名又は名称】メムジェット テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】バララ,ロンメル
(72)【発明者】
【氏名】ブライス,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】サネイ,キアヌーシュ ミル
【審査官】
亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−088328(JP,A)
【文献】
特開2008−126646(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0090292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷ヘッドと、
負の静圧でインクを前記印刷ヘッドに供給するように構成された循環インク送達システムであって、前記印刷ヘッドとポンプとを相互接続するインク管を含む循環インク送達システムと、
前記印刷ヘッドと前記ポンプとの間の前記インク管に連結された空気チャンバであって、前記インク管に接続された一端と、蓋をされた反対側の端部とを有するポリマーチューブを含む空気チャンバと、を含み、前記ポリマーチューブは、前記インク管から略上方に延びて前記空気チャンバの側壁を画定する、
インクジェットプリンタにおいて、
前記ポリマーチューブは空気透過性であり、大気に露出された外側面を有し、
前記空気チャンバは、前記循環インク送達システムの最も高い位置に配置されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記ポリマーチューブは、100バレル(334.8×10−19kmol・m/(m2・s・Pa))未満の酸素透過度を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記ポリマーチューブは、5〜50バレル((16.74〜167.4)×10−19kmol・m/(m2・s・Pa))の範囲内の酸素透過度を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項1に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記インク送達システムは、
前記印刷ヘッドの高さより下に配置されたインク容器であって、大気に通じた通気口と供給ポートとを含むインク容器と、
前記供給ポートと前記印刷ヘッドの第1のポートとを相互接続する第1の導管と、
を含み、インクは、負の静圧で前記印刷ヘッドに重力送りされることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項4に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記第1の導管内のインクの流れを制御する弁と、
前記弁の開閉を制御するコントローラと、
を含み、前記コントローラは、前記プリンタがアイドル状態のときに前記弁を開くように構成され、そのため、前記インク送達システムは、アイドル期間中に負の静圧になり、それにより、前記ポリマーチューブの壁を通り抜けた空気の拡散による前記空気チャンバの再生が可能になることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項4に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記インク送達システムは、
前記印刷ヘッドの第2のポートと前記インク容器の戻りポートとを相互接続する第2のインク導管を含み、
前記ポンプは前記第2のインク導管に配置されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記空気チャンバは、前記ポンプと前記印刷ヘッドとの間で前記第2のインク導管に接続されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項8】
請求項6に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記ポンプは可逆回転型ぜん動ポンプであることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項9】
請求項4に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記インク容器と流体連通したインク貯蔵器をさらに含むことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項10】
請求項9に記載のインクジェットプリンタにおいて、前記インク貯蔵器から前記インク容器へのインクの流れを制御する調整弁をさらに含み、それにより前記インク容器内のインクの液位を一定に維持することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ用のインク送達システムに関する。本発明は、主として、特にインクのポンプ圧送時に、インク送達システムの圧力変動を最小化するために開発された。
【背景技術】
【0002】
ホームアンドオフィス(「SOHO」)プリンタ、ラベルプリンタ、および大判プリンタを含む、Memjet(登録商標)技術を採用したインクジェットプリンタは、複数の様々な印刷フォーマット用に市販されている。Memjet(登録商標)プリンタは通常、使用者が交換可能な1つまたは複数の静止したインクジェット印刷ヘッドを含む。例えば、SOHOプリンタは、単体の使用者交換式多色印刷ヘッドを含み、高速ラベルプリンタは、媒体送り方向に沿って一列に整列した複数の使用者交換式モノクロ印刷ヘッドを含み、大判プリンタは、大判のページ幅にわたるように、互い違いに重なった配列の複数の使用者交換式多色印刷ヘッドを含む。
【0003】
使用者が印刷ヘッドを交換できるようにするのは、Memjet(登録商標)技術の主要な利点である。ただし、これは、印刷ヘッドにインクを供給するインク送達システムに負担をかける。例えば、インク送達システムは、インクが誤ってこぼれないように、使い切った印刷ヘッドが、交換する前にデプライミングされることを可能にし、新たな印刷ヘッドが、設置後にプライミングされるのを可能にすべきである。プライミングおよびデプライミング作業は通常、インク送達システムに内蔵されたポンプを必要とする。
【0004】
インクジェット印刷ヘッド用のインク送達システムに向けたいくつかの手法が、米国特許出願公開第2011/0025762号明細書、米国特許出願公開第2011/0279566号明細書、および米国特許出願公開第2011/0279562号明細書(すべて本出願人に譲渡されている)に記載されており、これらの特許の内容は、参照により本明細書に援用されるものとする。
【0005】
Memjet(登録商標)に関連して前述したインク送達システムは通常、インク容器を印刷ヘッドのそれぞれの第1および第2のインクポートと相互接続する第1および第2のインク導管を有する閉ループシステムを含む。インクを圧送して閉ループを循環せるために、可逆回転型ポンプが第2のインク導管に配置される。通常、印刷ヘッドを通るインクまたは空気の流れを制御するために、ピンチ弁が第1のインク導管に配置される。米国特許出願公開第2011/0279566号明細書、および米国特許出願公開第2011/0279562号明細書で説明しているように、ポンプおよびピンチ弁は、複数のプライミング、デプライミング、および他の保守または再生作業を連係して行う。
【0006】
米国特許出願公開第2009/0219368号明細書は、ポンプと、循環するインク送達システムの圧力変動を減衰させるための空気コンプライアンスチャンバとを含むプリンタについて記載している。しかし、空気コンプライアンスチャンバは、例えば、運搬時またはプリンタが傾いた場合に、簡単にインクで満杯になり得るために性能が劣化するという欠点がある。
【0007】
ぜん動ポンプを駆動させるなどによって引き起こされる圧力変動をプリンタの寿命にわたって減衰できるインク送達システムを有するプリンタを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、
インクジェット印刷ヘッドと、
負の静圧でインクを印刷ヘッドに供給するように構成されたインク送達システムと、
インク送達システムと流体連通した空気チャンバと、
を含み、空気チャンバは、少なくとも1つの空気透過性壁を含むインクジェットプリンタを提供する。
【0009】
本発明によるプリンタは、有利には、インク送達システムと流体連通した空気チャンバを用いて、インク送達システムの圧力を減衰させる。さらに、インク送達システムにコンプライアンスを付与する空気チャンバは自己再生式であり、プリンタの寿命にわたって圧力減衰が維持されるのを保証する。これまで、米国特許出願公開第2009/0219368号明細書で説明したものなどの圧力減衰空気チャンバは、運搬時またはプリンタが傾いた場合にインクで満杯になる傾向があった。本発明の空気チャンバは、同様にインクで満杯になる傾向があるが、空気透過性の壁をインク送達システムの負の静圧と組み合わせることで、空気チャンバは、再生するために外部からの介入をあまり必要とすることなく、空気で満たされた状態に容易に再生することができる。
【0010】
当然ながら、空気チャンバが再生する速度は、空気透過性壁の透過度、壁の長さ、空気チャンバの容積、負のインク圧の大きさなどのパラメータに依存する。通常、これらのパラメータは、約10時間から数日、または数週間の期間内に完全に再生させるように選択される。インクジェットプリンタは、その寿命のほとんどがアイドル状態にあるので、比較的遅い再生が許容可能であり、再生用の十分な期間が与えられる。さらに、空気コンプライアンスチャンバにインクが充満するのは、通常、破局的な事象ではなく、インク送達システムの最適な性能に向けた比較的遅い再生が、ほとんどの環境で許容可能である。
【0011】
従来から、インク送達システムの空気コンプライアンスチャンバは、空気に対して不透過性であるように構成されている。空気は、圧力スパイクを吸収するために、チャンバの壁に押し付けて圧縮できなければならないので、空気コンプライアンスチャンバで空気透過性の壁を採用するのは反直感的である。しかし、低度の空気透過性は、圧力スパイクの吸収と自己再生とを許容可能にバランスさせる。当然、空気透過性壁は、漏れを回避するためにインクに対して不浸透性とすべきである。
【0012】
当業者には、特定のポリマーが空気透過性であり、したがって、本発明で使用するのに適していると分かるであろう。例えば、ほとんどのシリコーンは、比較的高い空気透過性を有し、この特性を考慮して、コンタクトレンズで広範に使用されている。本発明において、比較的低い空気透過性(すなわち、一般的なシリコーンの透過性よりも低い)を有するポリマーが、通常最も適している。
【0013】
空気透過性壁は、100バレル(334.8×10
−19kmol・m/(m
2・s・Pa))未満の酸素透過度を有するのが好ましい。「バレル」という単位は、コンタクトレンズ業界で使用される酸素透過度の標準単位である[1バレル=10
−10(cm
3O
2)cm
2・cm
−3・s
−1・cmHg
−1]。
【0014】
空気透過性壁は、1〜100バレル、好ましくは5〜50バレル、または好ましくは7〜30バレルの範囲の酸素透過度を有するのが好ましい。
【0015】
ポリマーチューブが、空気チャンバの側壁を画定し、ポリマーチューブは空気透過性であるのが好ましい。ポリマーチューブは、1〜2mmの範囲の壁厚と、2〜5mmの範囲の内径とを有することができる。空気チャンバの側壁として使用するのに適したチューブ材料の1つのタイプには、Saint−Gobain Performance Plasticsから入手可能な熱可塑性エラストマーであるTygoprene(登録商標)XL−60がある。ただし、当然のことながら、他の空気透過性材料も、本発明で使用するのに同様に適する。
【0016】
好ましくは、ポリマーチューブは、インク送達システムのインク導管に接続され、インク導管から略上方に延び、ポリマーチューブは、空気チャンバを画定するように蓋をされる。チューブをインク導管から上方に延長することで、インクが(例えば、プリンタを傾けることで)空気チャンバに浸入する傾向が最小限になる。
【0017】
空気チャンバの最適容積は、減衰させる必要がある圧力スパイクの周波数および振幅によって決まる。通常、空気チャンバは、0.1〜2cm
3の範囲の容積を有するが、最適容積は、様々なプリンタおよびインク送達システムに応じて変わるのは当然のことである。
【0018】
好ましくは、空気チャンバは、印刷ヘッドの高さより上に配置される。空気チャンバを印刷ヘッドの上に配置することで、空気チャンバはさらに、インク送達システムに存在する任意の気泡用の気泡捕捉器として機能する。インク内の気泡には浮力があることから、気泡は、インク送達システムの最高点に集積する傾向があると分かる。当然、空気チャンバへの気泡の集積は、再生のさらなる助けとなる。
【0019】
好ましくは、インク送達システムは、ぜん動ポンプなどのポンプを含む。空気チャンバは、主に、ポンプの駆動に伴う圧力変動を減衰させるために使用される。
【0020】
空気チャンバは、印刷ヘッドとポンプとを相互接続するインク導管と流体連通するのが好ましい。空気チャンバを(通常は可能な限り印刷ヘッドの近くで)印刷ヘッドとポンプとの間に配置することで、空気チャンバは、印刷ヘッド内のスパイク状のインク圧力に対して最大限の減衰作用を及ぼす。
【0021】
プリンタは、インク送達システムの静圧を制御する圧力調整システムを含むのが好ましい。インクジェット印刷ヘッドは、通常、負の静圧でインクを供給され、そのため、通常では、負圧を得るための圧力調整システムを内蔵する。例えば、ダイヤフラム弁調整装置(米国特許第7,431,443号明細書を参照のこと)、泡立ち点調整装置(米国特許第7,703,900号明細書を参照のこと)、ばね調整装置(米国特許第7,448,739号明細書を参照のこと)、エアベロー(air bellow)調整装置(米国特許第5,975,686号明細書を参照のこと)、毛管発泡体調整装置(米国特許第5,216,450号明細書を参照のこと)、重力送り調整装置(米国特許第8,066,359号明細書を参照のこと)などの多数の圧力調整装置がインクジェット技術分野において公知である。当然のことながら、本発明は、特定のタイプの圧力調整装置、またはインク送達システムで負の静圧を得るための特定の手段に限定されるものではない。
【0022】
好ましくは、インク送達システムは、
印刷ヘッドの高さより下に配置されたインク容器であって、大気に通じた通気口と供給ポートとを含むインク容器と、
供給ポートと印刷ヘッドの第1のポートとを相互接続する第1の導管と、
を含み、インクは、負の静圧で印刷ヘッドに重力送りされる。
【0023】
好ましくは、プリンタは、
第1の導管内のインクの流れを制御する弁と、
弁の開閉を制御するコントローラと、
を含み、コントローラは、プリンタがアイドル状態のときに弁を開くように構成され、そのため、インク送達システムは、アイドル期間中に負の静圧になり、それにより、空気透過性壁を通り抜けた空気の拡散による空気チャンバの再生が可能になる。
【0024】
アイドル期間中にインク送達システムに負の静圧をかけることは、空気チャンバの再生速度を最大化する。
【0025】
好ましくは、インク送達システムは、
印刷ヘッドの第2のポートとインク容器の戻りポートとを相互接続する第2のインク導管と、
第2のインク導管に配置されたポンプと、
をさらに含む。
【0026】
空気チャンバは、ポンプと印刷ヘッドとの間で第2のインク導管に接続されるのが好ましい。好ましくは、ポンプは可逆回転型ぜん動ポンプである。
【0027】
プリンタは、インク容器と流体連通したインク貯蔵器を含むのが好ましい。
【0028】
調整弁は、インク貯蔵器からインク容器へのインクの流れを制御して、インク容器内のインクの液位を一定に維持するように構成されるのが好ましい。
【0029】
より一般的に、本発明は、自己再生式圧力減衰流体システムを提供し、このシステムは、
負の静圧で液体を供給するように構成された液体供給システムと、
液体供給システムと流体連通した空気チャンバと、
を含み、空気チャンバは、液体に対して不浸透性である少なくとも1つの空気透過性壁を含む。
【0030】
添付図面を参照して、本発明の実施形態が単なる例として下記に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明によるインクジェットプリンタの概略図である。
【
図2】
図2は、非減衰型インク送達システムの圧力波形である。
【
図3】
図3は、本発明による減衰型インク送達システムの圧力波形である。
【
図4】
図4は、自己再生式の空気コンプライアンスチャンバを示している。
【
図5】
図5は、再生中の
図4の空気コンプライアンスチャンバを示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1を参照すると、インクを印刷ヘッドに供給するインク送達システムを有するプリンタ1が概略的に示されている。このインク送達システムは、米国特許出願公開第2011/0279566号明細書、および米国特許出願公開第2011/0279562号明細書に記載されたものと機能的に同様であり、これらの特許の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0033】
プリンタ1は、第1のインク導管10を介して印刷ヘッド4の第1のポート8に接続された供給ポート6を有するインク容器2を含む。インク容器2の戻りポート12は、第2のインク導管16を介して印刷ヘッド4の第2のポート14に接続されている。したがって、インク容器2、第1のインク導管10、印刷ヘッド4、および第2のインク導管16は、閉じた流体ループを画定する。通常、第1のインク導管10および第2のインク導管16は、特定の長さの可撓性チューブで構成されている。
【0034】
印刷ヘッド4は、第1のポート8と第1のインク導管10とを解放可能に相互接続する第1の接続部3と、第2のポート14と第2のインク導管16とを解放可能に相互接続する第2の接続部5とを用いる使用者交換式である。印刷ヘッド4とその対応する接続部についてのより詳細な説明は、例えば、米国特許出願公開第2011/0279566号明細書に見られる。
【0035】
インク容器2は、インク容器の屋根に配置された空気透過性薄膜の形態の通気口18を介して大気に通じている。したがって、通常の印刷中に、インクは、負の静圧(「背圧」)で重力を受けて印刷ヘッド4に供給される。言い換えると、印刷ヘッド4の下に配置されたインク容器2からのインクの重力送りにより、負の静圧でインクを供給するように構成された圧力調整システムが形成されている。印刷ヘッド4のノズルプレート19で受ける背圧の大きさは、インク容器2内のインク20の液位からのノズルプレートの高さhによって決まる。
【0036】
圧力調整システムは通常、インク容器2内のインクのほぼ一定の液位、したがって、一定の高さhおよび対応する背圧を維持する何らかの手段をさらに含む。
図1に示すように、圧力調整システムは、圧力調整弁30を有する供給管28を介して、インク容器2の導入ポート26に接続された大容量インク貯蔵器24を含む。一部の実施形態では、導入ポート26および戻りポート12は、第2のインク導管16と供給管28とがともに合流する、インク容器2の同じポートとすることができる。
【0037】
圧力調整弁30は、インク容器内のインクの液位をほぼ一定に維持するように、インク貯蔵器24からインク容器2へのインクの流れを制御する。米国特許出願公開第2011/0279566号明細書に記載されているように、弁30は、インク容器2内の浮動機構を用いて機械的に制御することができる。しかし、当然のことながら、インク容器2内のインクの液位を観測するインク液位センサを、インク液位センサからのフィードバックに基づいて弁30の動作を電子制御するコントローラと組み合わせるなど、弁制御の他の形態を採用することができる。
【0038】
インク貯蔵器24は、典型的には、供給接続部32を介して供給管28に接続された使用者交換式のインクカートリッジである。代替案として、および米国特許出願公開第2011/0279562号明細書に記載されているように、インク容器2は、インク貯蔵器24を有し、供給管および28および調整弁30のない使用者交換式のカートリッジとすることができる。インク容器2が使用者交換式のカートリッジの場合、高さhは、インクカートリッジのスリムな、または扁平な高さプロファイルによって、ほぼ一定に維持することができる。インク容器2の高さプロファイルを扁平にすることで、満杯のインクカートリッジとほぼ空のインクカートリッジとの間の高さhの変化が確実に最小限になる。
【0039】
インク容器2、第1のインク導管10、印刷ヘッド4、および第2のインク導管16を組み込んだ、閉じた流体ループは、プライミング、デプライミング、および他の印刷ヘッド保守作業を容易にする。第2のインク導管16は、インクに流体ループを循環させる可逆回転型ぜん動ポンプ40を含む。このため、第2のインク導管16は、第2のポート14とポンプ40との間に画定された第1の部分16aと、戻りポート12とポンプ40との間に画定された第2の部分16bとを有する。単なる慣例として、ポンプ40の「順」方向は、供給ポート6から戻りポート12への(すなわち、
図1に示すように時計方向)インクのポンプ圧送に対応し、ポンプの「逆」方向は、戻りポート12から供給ポート6への(すなわち、
図1に示すように反時計方向)インクのポンプ圧送に対応する。
【0040】
ポンプ40は、様々な流体作用を調整するために、ピンチ弁装置42と協働する。ピンチ弁装置42は、第1のピンチ弁46および第2のピンチ弁48を含み、例えば、米国特許出願公開第2011/0279566号明細書、米国特許出願公開第2011/0279562号明細書、および米国特許出願第61/752,873号明細書に記載されたピンチ弁装置のいずれかの形態をとることができ、これらの特許の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0041】
第1のピンチ弁46は、第1のインク導管10から分岐した空気管50を通る空気の流れを制御する。空気管50は、大気に通じ、閉じた流体ループ用の吸気口として機能する空気フィルタ52で終端している。第1のピンチ弁46は、第1のピンチ弁46が開いたときに印刷ヘッドノズルからのインクの垂れを最小限にするために、ノズルプレートの高さより下に配置されている。
【0042】
空気管50により、第1のインク導管10は、供給ポート6と空気管50との間の第3の部分10aと、第1のポート8と空気管50との間の第4の部分10bとに分割されている。第2のピンチ弁48は、第1のインク導管10の第3の部分10aを通るインクの流れを制御する。
【0043】
ポンプ40、第1のピンチ弁46、および第2のピンチ弁48は、様々な流体作用を調整するコントローラ44によって制御される。前述から、
図1に示すインク送達システムが、多彩な流体作用を可能にするのは当然のことである。表1は、プリンタ1で使用されるいくつかの例示的な流体作用に対する様々なピンチ弁およびポンプの状態を示している。当然ながら、これらの例示的な流体作用の様々な組み合わせを使用することができる。
【0044】
通常印刷(「印刷」モード)時、印刷ヘッド4は、負の背圧で重力を受けてインクをインク容器2から抽出する。このモードでは、ぜん動ポンプ40は遮断弁として機能し、一方、第1のピンチ弁46は閉じ、第2のピンチ弁48は開いて、供給ポート6から印刷ヘッド4の第1のポート8へのインクの流れを可能にする。
【0045】
印刷ヘッドのプライミングまたはフラッシング時(「プライム」モード)、インクは、閉じた流体ループを順方向(すなわち、
図1に示すように時計方向)に循環する。このモードでは、ぜん動ポンプ40は、ポンプ圧送順方向に駆動され、一方、第1のピンチ弁46は閉じ、第2のピンチ弁48は開いて、印刷ヘッド4を介した供給ポートから戻りポート12へのインクの流れを可能にする。この態様でプライミングを使用して、デプライミングされた印刷ヘッドにプライミングするか、またはシステムから気泡を一掃することができる。一掃された気泡は、インク容器2に戻され、通気口18から大気に放出することができる。
【0046】
「待機」モードでは、ポンプ40は停止され、一方、第1のピンチ弁46は閉じ、第2のピンチ弁48は開く。「待機」モードは、印刷ヘッド4で負の静インク圧を維持し、これは、プリンタがアイドル状態のときに、ノズルプレート19上での色の混合を最小限にする。通常、印刷ヘッドは、このモードにおいて、ノズルからのインクの蒸発を最小限にするために蓋をされる(例えば、米国特許出願公開第2011/0279519号明細書を参照のこと、この特許の内容は、参照により本明細書に援用される)。
【0047】
印刷ヘッド4の各ノズルが十分にプライミングされるのを保証し、かつ/または詰まった任意のノズルから障害物を取り除くために、「パルス」モードを使用することができる。「パルス」モードでは、第1のピンチ弁46および第2のピンチ弁48は閉じられ、ポンプ40は、逆方向(すなわち、
図1に示すように反時計方向)に駆動されて、インクを印刷ヘッド4のノズルプレート19に画定されたノズルに強制的に通す。
【0048】
使用済みの印刷ヘッド4を交換するために、プリンタから印刷ヘッドを取り外すことができるようにするには、その前に印刷ヘッドからデプライミングする必要がある。「デプライム」モードでは、第1のピンチ弁46は開き、第2のピンチ弁48は閉じ、ポンプ40は順方向に駆動されて、空気管50を介して大気から空気を吸い込む。印刷ヘッド4がデプライミングした後、プリンタは、印刷ヘッドをインク供給源から切り離す「無効」モードにセットされ、それにより、インクこぼれを最小限にして、印刷ヘッドを安全に取り外すことができるようになる。
【0049】
プリンタ1が電源を入れられるときか、またはプリンタが(例えば、新たな印刷ジョブを送られて)アイドル期間から起動したときに、インク送達システムは、印刷ヘッド4が印刷の準備が整った状態にあることを保証しなければならない。典型的には、これは、通常では、例えば、最後の印刷ジョブからの期間に応じた他の様々な保守動作(例えば、拭き取り、吐き出しなど)と組み合わせたプライムおよび/またはパルス動作を含む。プリンタは、インクに閉じた流体ループを循環させるために、比較的頻繁に「プライム」モードにセットされることがある。
【0050】
ぜん動ポンプ40は、インク送達システムの主要構成要素である。ぜん動ポンプは当技術分野で公知であり、典型的には、ぜん動ポンプ作用を引き起こすために、可撓性チューブを周期的に圧縮する複数の突起を使用する。ぜん動ポンプは、有利には、ポンプ圧送された流体を汚染せず、この流体を、インク送達システムで使用するのに理想的なものにする。
【0051】
ぜん動ポンプ、および、実際上はほとんどのポンプの特徴は、ポンプ圧送された流体に振動圧力が付与されることである。流体のこれらの振動圧力変動は、ポンプの突出部がチューブに周期的に作用するときの可撓性チューブの圧縮および弾性膨張に対応する。インクジェット印刷ヘッド用のインク送達システムに関しては、ポンプ圧送時にピーク圧力と低圧力との間で振動するインク圧力が問題となることがある。インクの最も高い圧力が所定の値を超えた場合に、これにより、印刷ヘッドがインク溢れを起こすことがある。他方で、インクの最も低い圧力が所定の値よりも小さい場合、これにより、印刷ヘッドはノズルから空気を「大量に勢いよく(gulp)」吸い込む。溢れ出るのも、大量に勢いよく吸い込むのも、最終的に印刷品質の劣化をもたらすことから望ましくない。
【0052】
再度
図1を参照すると、空気コンプライアンスチャンバ70が、印刷ヘッド4と、第2のインク導管16と流体連通したポンプ40との間に配置されている。空気コンプライアンスチャンバ70は、空気の圧縮によってインク送達システム内のインク圧力変動を減衰させる空気充填チャンバを含む。空気コンプライアンスチャンバ70を印刷ヘッドの近くに(例えば、印刷ヘッドから100mm未満、印刷ヘッドから75mm未満、または印刷ヘッドから30〜60mmに)配置することで、チャンバは、印刷ヘッドノズルで受けるインク圧力変動を減衰させる際に最大の作用を及ぼし、ひいては、望ましくないあらゆるインク溢れまたは大量に勢いよく吸い込むことを抑制する。さらに、空気コンプライアンスチャンバ70は、固有の浮力を有し、システムの最高点に向かって上昇する傾向がある、インク送達システム内の任意の気泡に対する気泡捕捉器として機能するように、印刷ヘッド4よりも高く配置されている。
【0053】
図2および
図3は、減衰されないインク送達システムおよび減衰されたインク送達システムのリアルタイムのインク圧力波形を示している。
図2では、インク送達システムは、
図1に示す通りであるが、空気コンプライアンスチャンバ70がない。この減衰されないシステムの場合、ポンプ圧送時の平均圧力は、約−975mmH
2Oで安定しているが、動的圧力は、約−600〜−1250mmH
2Oの間で振動している。この例では、約−1250mmH
2Oの最低圧力は、印刷ヘッド4の大量に勢いよく吸い込む点に近く、ポンプ圧送時に大量に勢いよく吸い込む危険が大きいことを意味する。
【0054】
図3では、インク送達は
図1に示す通りであり、容積が約0.4mLの空気コンプライアンスチャンバ70を含む。
図3から、空気コンプライアンスチャンバ70は、インク送達システムで「ショックアブソーバ」として機能するのが分かる。この減衰されるシステムの場合、ポンプ圧送時の平均圧力は、やはり約−975mmH
2Oで安定しているが、動的圧力振動は大きく低減され、約−850〜−975mmH
2Oの間で変動している。結果として、約−975mmH
2Oの最低圧力は、印刷ヘッド4の大量に勢いよく吸い込む点から大きく離れており、ポンプ圧送時の望ましくない大量に勢いよく吸い込む危険を最小限にする。
【0055】
図4を参照すると、空気コンプライアンスチャンバ70は、単純なT字コネクタ72または同様なものを介して、第2のインク導管16に接続することができる。チャンバ70は、1本のチューブによって画定される側壁74およびキャップ76を含む。チャンバ70の側壁74を画定するチューブは、内径が3.6mmのTygoprene(登録商標)XL−60で構成することができる。チューブの長さは、減衰を最適化するように調整することができる。この例では、チューブは約4cmの長さを有して、チャンバ容積を約0.4mLにする。
【0056】
空気コンプライアンスチャンバに関する大きな問題は、空気コンプライアンスチャンバがインクで満杯になった場合に効果がなくなることである。チャンバ側壁74は、略上方に延びるように構成されて、プリンタが傾いたときにインクがチャンバ70を満たす危険を最小限にする。しかし、プリンタの寿命の間に、インクの浸入により、空気コンプライアンスチャンバ70が有効でなくなる、または一部しか有効でなくなるという問題がある。
【0057】
図5を参照すると、一部がインクで満たされた空気コンプライアンスチャンバ70が示されている。この部分的に満たされたチャンバの有効性は、チャンバ内部の圧縮可能な空気の体積が小さくなるために低下する。
【0058】
図5に示すように、プリンタは、チャンバ70とインク容器2との間の流体連通により、負の静インク圧とされる「待機」モードにある。チャンバ70の側壁74は、ある程度の空気透過性を有することからチャンバは自己再生式であり、その理由は、大気からの空気が、側壁を通り抜けて拡散することで、チャンバに流入できるからである。負のインク圧により、側壁74からチャンバ70に流入した空気は、チャンバ内の任意のインクを移動させることができ、最終的には、チャンバを
図4に示すような最適な動作状態に戻す。通常、空気コンプライアンスチャンバ70は、インクで汚れた状態になってから数日(例えば、1〜7日)以内に最適な動作状態に戻る。当然、空気コンプライアンスチャンバ70に気泡を捕捉することも再生に寄与する。
【0059】
分かりやすくするために、本発明は、単一のインクチャネルに関連して説明された。しかし、もちろん、本発明が複数のインクチャネルを使用できるのは当然のことである。例えば、印刷ヘッド4は、N個のインク容器2からインクを供給されるN個のインクチャネル(例えば、CMYK、CMYKK、CMYなど)を含むことができ、N個の各インク容器2は、それぞれの第1のインク導管10および第2のインク導管16を介して印刷ヘッドに接続される(通常、Nは2〜10の整数である)。各第2の導管16は通常、この導管16と流体連通したそれぞれの空気コンプライアンスチャンバ70を有する。多インクチャネルの場合に、プリンタ1は通常、多チャンネルぜん動ポンプ40、多チャンネルピンチ弁装置42、および多チャンネル印刷ヘッド接続部3、5などの、インク送達システムの共有構成要素を使用する。
【0060】
もちろん、本発明が、単なる例として説明され、添付の特許請求の範囲で規定された本発明の範囲内で、細部の修正を行うことができるのは当然のことである。