(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335170
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】エアバッグアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/261 20110101AFI20180521BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
B60R21/261
B60R21/203
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-528506(P2015-528506)
(86)(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公表番号】特表2015-526343(P2015-526343A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】US2013053915
(87)【国際公開番号】WO2014031339
(87)【国際公開日】20140227
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】13/593,135
(32)【優先日】2012年8月23日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509307495
【氏名又は名称】ティーケー ホールディングス インク.
【氏名又は名称原語表記】TK HOLDINGS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】チャベス, スペンサー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ライチャイ, ヴェラ
(72)【発明者】
【氏名】ミーム, ラッセル ジェイ.
【審査官】
鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0276917(US,A1)
【文献】
特開2011−131644(JP,A)
【文献】
特表2006−515544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/261
B60R 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグクッションと、
前記エアバッグクッションを膨張させる膨張ガスを提供するように構成されるインフレータと、
前記インフレータと前記エアバッグクッションとの間に配置され、前記膨張ガスが排出され前記エアバッグクッションに入る前に、少なくとも一度、前記膨張ガスの流れ方向を強制的に変更するように構成されるディフューザと、
前記インフレータと前記ディフューザとの間に配置され、前記インフレータから前記ディフューザの所定部分に放出された微粒子が前記エアバッグクッションに侵入するのを阻止するように構成されるデフレクタと、を備え、
前記デフレクタは、本体部と長方形フラップとを含むパネルを備え、
前記本体部は、前記膨張ガスが前記デフレクタに侵入するための入口を形成し、
前記長方形フラップは、前記インフレータより放出された微粒子が前記ディフューザの中心に侵入するのを妨げるように、前記膨張ガスを前記ディフューザの所定部分に偏向するように構成された偏向面を形成する、
ことを特徴とするエアバッグアセンブリ。
【請求項2】
前記ディフューザは、第一パネルと第二パネルとを備え、前記第一パネル及び前記第二パネルは布製パネルである、請求項1に記載のエアバッグアセンブリ。
【請求項3】
前記ディフューザの前記第一パネル及び前記第二パネルは、それぞれ前記膨張ガスが通り抜ける開口部を少なくとも一つ備え、前記第二パネルは、前記第二パネル上の少なくとも一つの前記開口部と前記第一パネル上の少なくとも一つの前記開口部とが重ならないように、前記第一パネルに重ねられる、請求項2に記載のエアバッグアセンブリ。
【請求項4】
前記ディフューザの前記第一パネル及び前記第二パネルは、それぞれ前記膨張ガスが通り抜ける開口部を備え、前記第一パネルにおける前記開口部の配列は前記第二パネルにおける前記開口部の配列の鏡像である、請求項2に記載のエアバッグアセンブリ。
【請求項5】
前記デフレクタは一枚の布製パネルを含む、請求項1に記載のエアバッグアセンブリ。
【請求項6】
前記デフレクタは実質的に前記ディフューザに内包される、請求項1に記載のエアバッグアセンブリ。
【請求項7】
エアバッグクッションと、
前記エアバッグクッションを膨張させる膨張ガスを提供するように構成されるインフレータと、
前記インフレータと前記エアバッグクッションとの間に配置され、前記膨張ガスが排出され前記エアバッグクッションに入る前に、少なくとも2度、前記膨張ガスの流れ方向を強制的に変更するように構成される複数のパネルを備えるディフューザと、
前記インフレータと前記ディフューザとの間に配置され、前記インフレータから前記ディフューザの所定部分に放出された微粒子が、前記エアバッグクッションに侵入するのを阻止するように構成されたデフレクタと、を備え、
前記デフレクタは、本体部と長方形フラップとを含むパネルを備え、
前記本体部は、前記膨張ガスが前記デフレクタに侵入するための入口を形成し、
前記長方形フラップは、前記インフレータより放出された微粒子が前記ディフューザの中心に侵入するのを妨げるように、前記膨張ガスを前記ディフューザの所定部分に偏向するように構成された偏向面を形成し、
前記複数のパネルは、それぞれ前記膨張ガスが通り抜ける複数の開口部を備え、あるパネル上の前記開口部は、隣接するパネル上の前記開口部と一致しない、
ことを特徴とするエアバッグアセンブリ。
【請求項8】
前記ディフューザのあるパネル上の前記複数の開口部の配列は、前記ディフューザの隣接するパネル上の前記複数の開口部の配列と鏡像である、請求項7に記載のエアバッグアセンブリ。
【請求項9】
前記デフレクタは一枚の布製パネルを含む、請求項7に記載のエアバッグアセンブリ。
【請求項10】
前記デフレクタは実質的に前記ディフューザに内包される、請求項7に記載のエアバッグアセンブリ。
【請求項11】
エアバッグアセンブリの製造方法において、
前記エアバッグアセンブリは、エアバッグクッションと、前記エアバッグクッションを膨張させる膨張ガスを提供するように構成されるインフレータと、前記インフレータと前記エアバッグクッションとの間に配置され、前記膨張ガスが排出され前記エアバッグクッションに入る前に、少なくとも一度、前記膨張ガスの流れ方向を強制的に変更するように構成されるディフューザと、前記インフレータと前記ディフューザとの間に配置され、前記インフレータから前記ディフューザの所定部分に放出された微粒子が前記エアバッグクッションに侵入するのを阻止するように構成されるデフレクタと、を含み、
前記デフレクタは、本体部と長方形フラップとを含むパネルを備えること、
前記長方形フラップは第一目印線、第二目印線及び第三目印線を備えること、
偏向面を形成するため前記長方形フラップを前記第一目印線、前記第二目印線及び前記第三目印線に沿って折り畳むこと、
前記パネルを前記パネルの長手方向の中心線に沿って折り畳むこと、
折り畳んだ前記パネルを前記インフレータ、前記ディフューザ又はそれらの組合せに取り付けること、
を含むことを特徴とするエアバッグアセンブリの製造方法。
【請求項12】
前記パネルの前記長方形フラップと前記本体部の端部とを縫い合わせることをさらに含む、請求項11に記載のエアバッグアセンブリの製造方法。
【請求項13】
前記デフレクタは、前記インフレータより放出された微粒子が前記ディフューザの偏向面から所定部分に偏向するように構成される、請求項11に記載のエアバッグアセンブリの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2012年8月23日に出願された米国非仮特許出願第13/593,135号に対する利益を主張する。非仮特許出願は本明細書において参照によりその全体が組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本願は、概して車両用エアバッグの分野に関する。より具体的に本願は、インフレータから放出される微粒子を偏向し、車両用エアバッグに穴が形成されることを防ぐ、膨張式エアバッグのデフレクタに関する。
【背景技術】
【0003】
火工品の点火によりガスを発生する膨張装置、貯蔵ガス又はそれらの組合せを用いる膨張式エアバッグは、通常、エアバッグクッションを適切に膨張し、クッション生地の健全性を保つため、エアバッグクッション内へガスを拡散させる必要がある。通常の膨張式エアバッグにおいて、膨張装置は、液化してから気化する固形火薬に点火してエアバッグクッションを膨張させる。この方法は、85度、100度の静的展開試験においてサイドエアバッグクッションの腰部チャンバに、結果として展開後に複数の穴を開けることが知られており、好ましくない健全性の問題を生じる。デフレクタの必要性は、高圧システム、急展開システム又は燃焼プロセスのガス発生によって大量の熱及び/又は微粒子を発生するシステムにおいて特に顕著である。
【0004】
従来のエアバッグが備えるディフューザは、ガスディフューザの排出経路に対し膨張ガスは直接的な視線を有するオープンパスの拡散方法を採用している。この視線は、複数方向、左右方向(例えば、
図8に示した環状ディフューザ)、一方向(例えば、
図9に示した底方向)又は多方向(例えば、
図10に示したガススリーブ)に形成され得る。しかしながら、現存する種類のディフューザでは、膨張ガスはディフューザから排出される前に一度しか方向を変更しない。ディフューザは、エアバッグの膨張前に膨張ガスを方向転換させることにより、ガス発生プロセスによりインフレータから放出されるあらゆる微粒子副産物がエアバッグクッションに侵入しないように設計されている。しかし、ディフューザには、インフレータより放出された微粒子副産物がエアバッグクッションに到達しエアバッグに大きな穴を形成する漏洩箇所又は漏洩領域がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディフューザの特定部分に、インフレータから放出されるあらゆる微粒子副産物も逸らすように、角度を有する形状に展開するデフレクタを提供し、あらゆる微粒子副産物がエアバッグクッションに到達するのを防ぐことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態はエアバッグアセンブリに関する。エアバッグアセンブリは、エアバッグクッションと、前記エアバッグクッションを膨張させる膨張ガスを提供するインフレータと、前記インフレータと前記エアバッグクッションとの間に配置されるディフューザと、前記インフレータと前記ディフューザとの間に配置されるデフレクタと、を備える。前記ディフューザは、膨張ガスが前記ディフューザから排出され、前記エアバッグクッションに入る前に、少なくとも一度流れ方向を変更するように膨張ガスを強制する。前記デフレクタは、前記インフレータより放出された微粒子をディフューザの所定部分へ偏向し、微粒子がエアバッグクッションに侵入するのを阻止する。
【0007】
他の実施形態はエアバッグアセンブリに関する。エアバッグアセンブリは、エアバッグクッションと、前記エアバッグクッションを膨張させる膨張ガスを提供するインフレータと、前記インフレータと前記エアバッグクッションとの間に配置されるディフューザと、前記インフレータと前記ディフューザとの間に配置されるデフレクタと、を備える。前記ディフューザは、膨張ガスが前記ディフューザから排出され、前記エアバッグに侵入する前に、少なくとも二度流れ方向を変更するように膨張ガスを強制する、複数のパネルを備える。前記複数のパネルは、それぞれ膨張ガスが通り抜ける複数の開口部を備える。あるパネル上の開口部は、隣接するパネルの開口部と一致しない。前記デフレクタは、前記インフレータから放出された微粒子を前記ディフューザの所定部分に偏向し、微粒子が前記エアバッグクッションに侵入するのを阻止する。
【0008】
さらに他の実施形態は、エアバッグアセンブリの製造方法に関する。エアバッグアセンブリの製造方法は、本体部及び長方形フラップを備えるパネルを提供することを含む。前記長方形フラップは、第一目印線と、第二目印線と、第三目印線と、を含む。前記長方形フラップは、偏向面を形成するように、前記第一、第二及び第三目印線に沿って折り畳まれる。その後、前記パネルは、パネルの長手方向の中心線に沿って折り畳まれる。折り畳まれたパネルは、インフレータ、ディフューザ又はそれらの組合せに取り付けられる。
【0009】
上述した概要及び後述する詳細な説明は具体例であり、例示のみを目的としており、特許請求されている本発明を限定しないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明に組み込まれ本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、本明細書とともに本発明の原理を説明する。
【0011】
【
図1A】
図1Aは、例示的な実施形態によるディフューザを含むエアバッグアセンブリを備える車両内部の一部を示す斜視図である。
【0012】
【
図1B】
図1Bは、例示的な実施形態によるディフューザを含むエアバッグアセンブリを備える車両を示す斜視図である。
【0013】
【
図2】
図2は、従来技術のエアバッグアセンブリを示す断面図である。
【0014】
【
図3】
図3は、例示的な実施形態による出入口間に複雑な経路を持つディフューザ用の第一パネルを示す正面図である。
【0015】
【
図4】
図4は、例示的な実施形態による出入口間に複雑な経路を持つディフューザ用の第二パネルを示す正面図である。
【0016】
【
図5】
図5は、例示的な実施形態による
図3及び
図4に示したパネルを重ねた状態を示す正面図である。
【0017】
【
図6】
図6は、例示的な実施形態による出入口間に複雑な経路を持つディフューザを示す正面図であり、
図5に示した重ねられたパネルを中心線で折り畳んだ状態を示す。
【0018】
【
図7】
図7は、
図6に示したディフューザの7−7線矢視断面図であり、ディフューザがエアバッグクッション及びインフレータとともにエアバッグアセンブリに配置された場合における膨張ガスの出入口間の複雑な経路を示す。
【0019】
【
図8】
図8は、両側に出口を備えるディフューザの従来技術を示す正面図である。
【0020】
【
図9】
図9は、底に沿った一方向の出口を備えるディフューザの従来技術を示す正面図である。
【0021】
【
図10】
図10は、多方向の出口を備えるディフューザの従来技術を示す正面図である。
【0022】
【
図11】
図11は、例示的な実施形態によるデフレクタ用のパネルを示す正面図である。
【0023】
【
図12A】
図12Aは、偏向面を形成する本体部及び長方形フラップを含む、
図11に示したパネルの等角投影図である。
【0024】
【
図12B】
図12Bは、偏向面を形成する本体部及び長方形フラップを含む、
図11に示したパネルの等角投影図である。
【0025】
【
図12C】
図12Cは、偏向面を形成する本体部及び長方形フラップを含む、
図11に示したパネルの等角投影図である。
【0026】
【
図12D】
図12Dは、デフレクタの例示的な実施形態を示す等角投影図であり、
図11に示したパネルを中心線に沿って折り畳んだ状態を示す。
【0027】
【
図13】
図13は、例示的な実施形態による
図12Dに示したデフレクタを
図6に示したディフューザに重ねた状態を示す正面図である。
【0028】
【発明を実施するための形態】
【0029】
例示的な実施形態による車両10を示した
図1A及び1Bを参照する。車両10は、乗員を受け入れるように構成される一つ以上のシートを含み、それらは車両に連結されている。エアバッグ及びエアバッグモジュール20は、あらゆる衝撃事象において、車両の乗員を保護するため車両のあらゆる位置に配置される。例えば、エアバッグは、ダッシュボード、ステアリングホイール付近、車両シート内、ドアトリムパネル内、ヘッドライナー内等に配置される。例示的な実施形態によれば、
図1Aに示したように、ステアリングホイールのエアバッグアセンブリ20はステアリングコラムに連結されている。他の例示的な実施形態によれば、
図1Bに示したように、サイドのエアバッグアセンブリ20は車両シートに連結されている。
【0030】
図2に示した従来技術のエアバッグアセンブリ120は、インフレータ124(例えば、ガス発生器)と、ディフューザ130と、エアバッグクッション122と、を備える。例えば、火口ガス発生器等のインフレータ124は、衝撃時又は車両衝突時に迅速にエアバッグクッション122を膨張させるガスを発生する。ディフューザ130は、インフレータ124とエアバッグ122との間に配置される。火口式点火によりガスを発生する膨張装置(例えば、インフレータ124)、貯蔵ガス又はそれらの組合せを用いるエアバッグアセンブリ120は、通常、エアバッグクッション122を適切に膨張し、クッション生地の健全性を保つため、エアバッグクッション122内へガスを拡散させる必要がある。ディフューザ130の必要性は、高圧システム、急展開システム又はガス発生によって大量の熱を生じる及び/又は燃焼プロセスによって微粒子を生ずるシステムにおいて特に顕著である。このようなディフューザ130は、一般的に、ガス発生器124からのガス経路と垂直な偏向面又はプレート136を備えている。その結果、ガスは方向を変え出口経路138を通り、エアバッグクッション122内へ向かい、エアバッグクッション122を膨張させる。ディフューザ130は、膨張ガスを拡散し、ガス発生器124から発生する全ての微粒子副産物を捕捉するように構成される。しかしながら、そのような従来のディフューザ130は、膨張ガスが共通の向きを持ち、インフレータ124から出口138へ直接的な視線を有することを許容している。
【0031】
エアバッグアセンブリ20を示した
図3〜7を参照する。エアバッグアセンブリ20は、アセンブリ120と類似していてもよいが、インフレータ24の複数の出口間に複雑な経路を作成し、膨張ガスが強制的に複数回方向変換する(例えば、
図7の矢印で示したように)ように改良されたディフューザ30を備える。 ディフューザ30は、エアバッグクッション22の内部容積内に配置され、インフレータ24により生成された燃焼ガスをエアバッグクッション22へ向け、エアバッグ22を膨張させる。方向を複数回変更することは、燃焼プロセスにおいて形成されるあらゆる微粒子を捕捉するのに役立つ。ディフューザ30は、実施形態において、膨張ガスを拡散し、ガスの流れ方向を捉え、ガスの流れを不特定方向に変換するように構成される。ディフューザ30は、ガスの無指向性半層流を効果的に形成することができる。
【0032】
例示的な実施形態によれば、膨張ガスはエアバッグクッション22に侵入し、エアバッグクッション22は外皮又はエアバッグアセンブリ20のカバーを突き破り、車両の乗員とステアリングホイール、ダッシュボード又は車両の構造物との間に膨張する。例えば、エアバッグクッション22は、ステアリングホイールのアウターカバー下方、トリムパネルの切口、トリムパネルの後方、二つのパネル間又はシーム等から飛び出す。各種実施形態によれば、エアバッグアセンブリ20は、グローブボックスアセンブリ又はルーフレールに沿ったトリムパネル下方、縦ピラー(Aピラー、Bピラー及びCピラー)に沿ったトリムパネル、シートアセンブリ内等、車両内の他の位置に構成されてもよい。エアバッグアセンブリ20は、種々のパッケージ要件で用いられるように、任意に構成可能であり、車両製造者の特定のニーズを満たすように仕立てられてもよい。
【0033】
例示的な実施形態によれば、ディフューザ30は一対の布製パネル32,34を接続することで形成されてもよい。
図3に示した第一布製パネル32及び
図4に示した布製パネル34は柔軟な部材であり、高ストレッチナイロン等、従来のエアバッグ素材によって形成されてもよい。これらのパネルは柔軟な部材により形成されるため、エアバッグアセンブリ20がトリム内又はカバー要素内に収容される場合、パネル32,34はエアバッグクッション22内に小さく折り畳むことができる。
【0034】
第一パネル32及び第二パネル34は、それぞれ一般に円形状に示される入口及び複数の開口部38を形成するネック部36を備える。
図5に示したように、第一パネル32及び第二パネル34は重ねられる。第一パネル32及び第二パネル34の開口部38は、パネル32,34が重ねられたときに、第一パネル32の開口部38が第二パネル34の開口部38と一致しないように構成される。例示的な実施形態によれば、第一パネル32の孔配列は第二パネル34の孔配列の鏡像である。パネル32,34は、それぞれ同一の開口部38を四つ含み、互いに鏡像となるように配列されているが、多様な配列が可能であることを理解されたい。例えば、開口部38は、円形ではなく、長方形、楕円形又は他の形状でもよい。第一パネル32又は第二パネル34の開口部38は、均一な大きさでなくてもよい。パネル32,34は、それぞれ複数の異なる形及び大きさの開口部38を含んでいてもよい。第二パネル34の開口部38は、第一パネル32の開口部38と比較して異なる大きさ、形、数又は配列であってもよい。
【0035】
ディフューザ30を構成するため、重ねられたパネル32,34はそれぞれの中心線35で半分に折り畳まれ、端部37で縫い合わされる。第一パネル32の二つの端部37及び第二パネル34の二つの端部37 は、縫合シームに沿って連結される。半分に折り畳まれ縫い合わされると、
図7に最もよく示されるように、第一パネル32は、第二パネル34により形成されたアウターチャンバ42内に内包されたインナーチャンバ40を形成する。パネル32,34のネック部36は、インフレータ24からの膨張ガスが第一パネル32により形成されるインナーチャンバ40に侵入することを許容する入口を形成する。取付タブ39は、ディフューザ30をインフレータ24及び車両フレーム(例えば、リテーナ又はその他の取付装置)へ連結するのを容易にする。パネル32,34は縫い合わされるように説明したが、他の実施形態において、37は、接着剤や感熱材等、他の方法で連結されてもよい。
【0036】
他の実施形態において、ディフューザ30は二枚以上のパネルで構成されていてもよい。インナーチャンバ40を形成するため一枚以上のパネルを用いてもよく、アウターチャンバ42を形成するため一枚以上のパネルを用いてもよい。例えば、他の例示的な実施形態によれば、
図3及び
図4に示した第一パネル32及び第二パネル34は、それぞれ二枚のパネルに置き換えてもよい。四枚のパネルを重ねて端部を連結することで、
図7に示したものと同様に、インナーチャンバ40及びアウターチャンバ42を形成してもよいが、断面から見た場合に一つのサイドではなく、二つのサイドが連結されることとする。実施形態において、ディフューザ30を形成するために適切な数のパネルが用いられてもよい。例えば、ディフューザ30は、三枚、四枚、五枚、六枚又はそれ以上の数のパネルを含んでいてもよい。パネルは、上述した構造と同様の鏡像及びオフセットされた孔配列構造であってもよい。ディフューザ30を構成するパネルの数が増えるほど、ガス拡散及び微粒子捕捉のための層が増える。
【0037】
インフレータ24からのガスは、ネック部36を通り第一パネル32によって形成されるインナーチャンバ40に侵入する。その後、ガスは第一パネル32の開口部38を通って、第二パネル34と第一パネル32との間のアウターチャンバ42に入る。アウターチャンバ40に入ると、ガスは第二パネル34の布により方向を変更するように強制され、第一パネル32と第二パネル34との間で横方向に流れる。膨張ガスが第二パネル34の開口部38に到達すると、ガスは再度方向を変更し、エアバッグクッション22内へ逃げ、エアバッグクッション22を膨張させる。ガスは、ディフューザ30上部及びディフューザ30底部の左右対称経路をたどるように示される。他の実施形態において、第一パネル32及び第二パネル34における開口部38の大きさ、形、配列、数によっては、より多くの割合のガス総流量が、ディフューザ30上部又はディフューザ30底部の開口部38を通過してもよい。他の実施形態において、開口部38はディフューザ30上部又はディフューザ30底部のどちらかに配置されてもよい。さらに他の実施形態において、ガスはディフューザ30の一方側の開口部38を通りインナーチャンバ40から外部に導かれ、ディフューザ30の他方側の開口部38を通りディフューザ30から出るために、アウターチャンバ42のより長い経路に導かれてもよい。
【0038】
膨張ガスが、複雑で間接的な経路をたどりエアバッグクッション22に入るよう強制することで、ディフューザ30は、
図8〜10に示した、膨張ガスがインフレータからガスフィルタの出口経路へ直接的な視線を有する従来のディフューザと比べて、より効果的に微粒子を捕捉することが可能となる。より効果的に微粒子を捕捉することにより、微粒子がエアバッグクッションに逃げ込み、クッションに対する好ましくない損傷の発生を低減することができる。
【0039】
さらに、
図3〜7に示したディフューザ30は、エアバッグクッション22がさらされる熱量を減らす。熱い膨張ガスがインフレータ24から複雑な経路を通り、インナーチャンバ40及びアウターチャンバ42を通り抜けることで、ディフューザ30はガスによる熱をより多く吸収することができる。
【0040】
ディフューザ30を布製のパネル32,34により形成することで、プラスチック又は金属製のガス拡散器と比べて、費用を低減し、エアバッグパッケージ全体を小型化することができる。さらに、パネル32,34の柔軟な特性は、エアバッグ22とともにディフューザ30を折り畳み、丸め又は他の方法で圧縮することを可能にする。このようにして、収納されるエアバッグアセンブリ20全体の大きさを縮小し、収納されるエアバッグアセンブリ20の形状を多種多様な取付位置に合うように適応させることができる。
【0041】
図示したディフューザ30は、ステアリングホイール(
図1A)又はシート内蔵サイドエアバッグ(
図1B)に取り付けられる運転席用エアバッグアセンブリに用いられるように構成されるが、ディフューザ30に組み込まれる新規なアイデアは、多種多様な他のエアバッグアセンブリに適用することができる。例えば、複雑な経路を含むディフューザ30は、助手席用エアバッグに用いられてもよく、車両ダッシュボードに取り付けられてもよい。他の例示的な実施形態によれば、複雑なガス経路を含むディフューザ30は、ニーエアバッグアセンブリ又はサイドもしくは後部カーテンエアバッグアセンブリに用いられてもよい。
【0042】
例示的な実施形態によれば、ディフューザ30は、インナーチャンバ40に位置するデフレクタ50を含んでいてもよい。
図13に示したように、ディフューザは第一パネルにより形成されてもよい。
図11に示したように、デフレクタ50は単一のパネル43により形成されてもよい。デフレクタパネル43は、柔軟な部材で、従来のエアバッグ素材、例えば、高ストレッチナイロン等で形成される。デフレクタパネル43は、柔軟な布素材により形成されるので、エアバッグアセンブリ20がトリムやカバー部品内に収納される際に、エアバッグクッション22とともに小さく折り畳むことができる。デフレクタ50は、エアバッグアセンブリ20の動作を妨げることなく、エアバッグ22を補強する柔軟な布素材である別の層として作用するように構成される。このように、デフレクタ50の追加は、エアバッグアアセンブリ20の動作を害することはない。実際に、デフレクタ50の追加は、エアバッグアセンブリ20の健全性を改善する。
【0043】
デフレクタパネル43は、長方形フラップ44と、入口を形成する本体部46と、第一タブ48と、第二タブ49と、を備える。
図11に示したように、長方形フラップ44は、組立を容易にするための三角形44A',44B',44C'を形成する目印線44A,44B,44Cを含んでいてもよい。
図12Aに示したように、デフレクタ50を構成するには、まず長方形フラップ44がパネル43の本体部46に対して垂直になるように、長方形フラップ44を目印線44Cに沿って折る(
図12A)。次に、
図12Bに示したように、長方形フラップ44を目印線44Aに沿って折り、三角形44A'を本体部46に縫合する。目印線44Aはパネル43の端部と中心線45の反対側で一致する。長方形フラップ44は、
図12Cに示したように、パネル43の本体部46で44B',44C'が三角になるように、さらに目印線44Bに沿って内側に折られる。三角形44B',44C'は、形状を保つために本体部46に縫合される。その後、
図12Dに示したように、パネル43は中心線45に沿って折り畳まれ、端部47が縫合される。
【0044】
図13に示したように、デフレクタ50は、重ねられたパネル32,34がそれぞれの中心線に沿って半分に折り畳まれる前に、第二タブ49が取付タブ39に重ねられ、中心線45が中心線36と一致するように重ねられたパネル32,34上に位置付けされる。第二タブ49は取付タブ39に縫合される。
図6に示したように、重ねられたパネル32,34はそれぞれの中心線に沿って半分に折り畳まれ、端部37は縫合される。パネル43の本体部46は、インフレータ24からの膨張ガスを第一パネル32によって形成されるインナーチャンバ40の特定部分に偏向可能にする入口を形成する。
図14は、組み立てられたインフレータ24と、ディフューザ30と、デフレクタ50と、を示している。パネル32,34,42は縫合されると説明したが、他の実施形態において、パネル32,34,42、三角形44A',44B',44C'及び端部47は、接着剤や感熱材等、他の方法で接続されてもよい。
【0045】
デフレクタ50は、インフレータ24から放出された微粒子副産物をディフューザ30の所定部分に偏向するように、インフレータ24の出口経路に直接位置付けられ、角度を有する形状に展開される。例えば、実施形態において、微粒子副産物はディフューザ30の角部に偏向されてもよい。言い換えると、微粒子副産物をディフューザ30の角部へ偏向することにより、デフレクタ50が開口部38を備えるディフューザ30の中心に微粒子副産物が侵入するのを妨げるようにしてもよい。デフレクタ50をエアバッグアセンブリ20のディフューザ30に追加することにより、クッションの布に微粒子副産物が衝突してエアバッグクッション22の展開後に穴が形成される可能性を低減又は防止する。デフレクタ50は、インフレータ24からの微粒子副産物をディフューザ30の角部へ偏向することが可能であり、それによって、例えば、微粒子副産物がサイドエアバッグクッションの腰部から胸部領域へ侵入するのを防ぐことができる。デフレクタ50を備えることにより、膨張式エアバッグフィルタの必要性を除去できる場合がある。
【0046】
例示的な実施形態において、ディフューザ30は、膨張ガスがディフューザを出てエアバッグクッションへ侵入する前に、少なくとも二度、膨張ガスの流れ方向を強制的に変更するように構成される複数のパネルを含むと説明したが、デフレクタ50と既存のディフューザを併用してもよい。例えば、デフレクタ50は、左右ディフューザ(例えば、
図8に示した環状ディフューザ)、単一方向ディフューザ(
図9に図示)又は多方向ディフューザ(例えば、
図10に示したガススリーブ)等、膨張ガスがガスディフューザの出口経路に対して直接的な視線を有するオープンパス拡散方法を採用するディフューザと併用されてもよい。言い換えると、デフレクタ50は、膨張ガスがディフューザを出てエアバッグクッションへ侵入する前に一度だけ流れ方向を強制的に変更するように構成されるディフューザと併用されてもよい。
【0047】
上述した概要及び詳細な説明は具体例であり例示のみを目的としており、本発明を限定しないことを理解されたい。
【0048】
開示の目的として、用語“接続”は二つの構成要素(電気的又は機械的)の、直接的、間接的又は他の接合を意味する。このような接合は、定常性質又は可動性質であってもよい。このような接合は、二つの構成要素(電気的又は機械的)と他の追加的中間部材とが単一単位として一体に形成される、又は二つの構成要素もしくは二つの構成要素及び追加的部材が互いに付着することで得てもよい。このような接合は、永久的な性質又は選択的でもよく、取外し可能又は解放可能な性質でもよい。
【0049】
好ましい実施形態及びその他の例示的な実施形態において示した、ディフューザの構成及び配置は図示にすぎない。本開示では本発明のエアバッグアセンブリについて幾つかの実施形態を詳細に説明したが、ここに説明する本発明の新規な教示及び効果から大きく逸脱することなく、様々な変形が可能であることを当該技分野における技術者であれば容易に理解されるだろう(例えば、様々な要素の大きさ、寸法、構造、各種要素の形及び割合、パラメータの値、取付方法、使用する部材、向き等)。従って、本開示によって本分野を熟知した人物により達成可能であるこれら全ての変形例は、本発明の範囲内で本発明の更に他の実施形態として含まれる。処理又は方法の順序及び配列は、代替の実施形態により変更又は並び替えられてもよい。好ましい実施形態及びその他の例示的な実施形態の設計、処理状況及び配置は、本発明の範囲を逸脱することなく、代替、変形、変更、省略してもよい。