(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335180
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】低減された着火傾向特性を有する巻装材
(51)【国際特許分類】
A24D 1/02 20060101AFI20180521BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20180521BHJP
D21H 19/10 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
A24D1/02
D21H27/00 D
D21H19/10 B
【請求項の数】41
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-536939(P2015-536939)
(86)(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公表番号】特表2015-533499(P2015-533499A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】US2013064560
(87)【国際公開番号】WO2014059286
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2016年10月11日
(31)【優先権主張番号】61/712,621
(32)【優先日】2012年10月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/783,632
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504058248
【氏名又は名称】シュバイツァー モウドゥイ インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100147511
【弁理士】
【氏名又は名称】北来 亘
(72)【発明者】
【氏名】スノー,ラリー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】モンジョン,フランソワ・ジー
(72)【発明者】
【氏名】クレーカー,トーマス・エイ
【審査官】
長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0290436(US,A1)
【文献】
特表2011−512794(JP,A)
【文献】
特表2010−518861(JP,A)
【文献】
特表2013−527337(JP,A)
【文献】
特表2014−501532(JP,A)
【文献】
特表2001−523479(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0134631(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0179105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/02
D21H 19/10
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙品用巻装材において、
セルロース繊維と充填材を備える基板紙であって、幅と長さを有している基板紙と、
前記基板紙上を前記幅方向に延びていて前記長さ方向に沿って離間されている複数の個別の着火低減区域と、
第1の着火低減区域と第2の隣接する着火低減区域の間に配置されている少なくとも1つの燃焼加速区域であって、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を備える燃焼加速区域と、を備えており、
前記着火低減区域は20コレスタより大きい通気度を有し尚且つ23℃で約0.5cm/sより小さい拡散係数を有しており、前記着火低減区域は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を面積当たりの重量において前記少なくとも1つの燃焼加速区域中に含有される前記燃焼促進剤の量より少ない量で含有しており、当該量は約0.4重量%より少ない、喫煙品用巻装材。
【請求項2】
喫煙品用巻装材において、
セルロース繊維と充填材を備える基板紙であって、幅と長さを有している基板紙と、
前記基板紙上を前記幅方向に延びていて前記長さ方向に沿って離間されている複数の個別の着火低減区域と、
第1の着火低減区域と第2の隣接する着火低減区域の間に配置されている少なくとも1つの燃焼加速区域であって、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を備える燃焼加速区域と、を備えており、
前記着火低減区域は20コレスタより大きい通気度を有しており、前記着火低減区域は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を面積当たりの重量において前記少なくとも1つの燃焼加速区域中に含有される前記燃焼促進剤の量より少ない量で含有しており、当該量は約0.4重量%より少なく、更に前記巻装材を喫煙品の中へ組み入れASTM試験E2187−09に従って試験した場合に、当該喫煙品の少なくとも75%が自己消火する、喫煙品用巻装材。
【請求項3】
喫煙品用巻装材において、
セルロース繊維と充填材を備える基板紙であって、幅と長さを有している基板紙と、
前記基板紙上を前記幅方向に延びていて前記長さ方向に沿って離間されている複数の個別の着火低減区域であって、各々の個別の着火低減区域は、前記基板紙へ塗工されている、何れのセルロース繊維も粒子も含んでいない着火低減組成物を備えている、着火低減区域と、
第1の着火低減区域と第2の隣接する着火低減区域の間に配置されている少なくとも1つの燃焼加速区域であって、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を備える燃焼加速区域と、を備えており、
前記着火低減区域は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を面積当たりの重量において前記少なくとも1つの燃焼加速区域中に含有される前記燃焼促進剤の量より少ない量で含有しており、当該量は約0.4重量%より少ない、喫煙品用巻装材。
【請求項4】
喫煙品用巻装材において、
セルロース繊維と充填材を備える基板紙であって、幅と長さを有している基板紙と、
前記基板紙上を前記幅方向に延びていて前記長さ方向に沿って離間されている複数の個別の着火低減区域と、
第1の着火低減区域と第2の隣接する着火低減区域の間に配置されている少なくとも1つの燃焼加速区域であって、燃焼促進剤を備えていて、前記第1の着火低減区域の方を向いている第1縁と前記第2の隣接する着火低減区域の方を向いている第2縁を含んでいる、燃焼加速区域と、
少なくとも1つの未処理区域であって、前記燃焼加速区域の前記第1縁と前記第1の着火低減区域の間に設けられている未処理区域と、を備えており、
前記未処理区域及び前記着火低減区域は前記燃焼促進剤を含んでいない、喫煙品用巻装材。
【請求項5】
前記少なくとも1つの燃焼加速区域は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を約0.5重量%から約2.5重量%までの量で含有している、請求項1から4の何れか1項に記載の巻装材。
【請求項6】
前記着火低減区域は非繊維質膜形成組成物から形成されている、請求項1から5の何れか1項に記載の巻装材。
【請求項7】
前記着火低減区域はスターチ組成物を備えている、請求項1から6の何れか1項に記載の巻装材。
【請求項8】
前記着火低減区域はアルギン酸塩組成物を備えている、請求項1から7の何れか1項に記載の巻装材。
【請求項9】
前記複数の個別の着火低減区域は約3mmから約10mmまでの幅を有する円周帯を備えている、請求項1から8の何れか1項に記載の巻装材。
【請求項10】
前記巻装材は第1の未処理区域と第2の未処理区域を含んでおり、前記第1の未処理区域は前記燃焼加速区域の前記第1縁と前記第1の着火低減区域の間に設けられ、前記第2の未処理区域は前記燃焼加速区域の前記第2縁と前記第2の隣接する着火低減区域の間に設けられている、請求項4に記載の巻装材。
【請求項11】
前記第1の未処理区域及び前記第2の未処理区域は、約0.1mmから約4mmまでの幅を有する円周帯を備えている、請求項10に記載の巻装材。
【請求項12】
前記着火低減区域は、着火低減組成物が前記基板紙へ他の局所的処置を一切施されないようにして塗工されている区域のみで構成されている、請求項1から11の何れか1項に記載の巻装材。
【請求項13】
前記着火低減区域は、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を、約0.05重量%から約0.4重量%までの量、例えば、約0.1重量%から約0.2重量%まで、など、の量で、含有している、請求項1、2、又は3に記載の巻装材。
【請求項14】
前記着火低減区域中に含有される前記燃焼促進剤の量は、前記少なくとも1つの燃焼加速区域中に含有される前記燃焼促進剤の量の約5%から約60%まで、例えば、約10%から約30%まで、など、の範囲である、請求項1、2、又は3に記載の巻装材。
【請求項15】
前記少なくとも1つの燃焼促進剤は前記着火低減区域中に不連続パターンに従って含まれている、請求項1、2、又は3に記載の巻装材。
【請求項16】
第1の燃焼促進剤が前記基板紙の表面に亘って連続的に塗工されており、第2の隣接する燃焼促進剤が前記少なくとも1つの燃焼加速区域に限定して塗工されている、請求項1、2、又は3に記載の巻装材。
【請求項17】
前記着火低減区域は、23℃での、約0.15cm/sから約0.5cm/sまでの拡散係数を有している、請求項1から16の何れか1項に記載の巻装材。
【請求項18】
喫煙品において、
喫煙に適したタバコを備える円柱体と、
前記喫煙に適したタバコの前記円柱体を取り囲む巻装紙であって、上記請求項1−17の巻装材の何れかを備える巻装紙と、を備えている喫煙品。
【請求項19】
前記喫煙品は、少なくとも75%というASTM試験E2187−09による合格評定を有している、請求項18に記載の喫煙品。
【請求項20】
前記喫煙に適したタバコを備える前記円柱体は約160mg/cm3から約250mg/cm3までの密度を有している、請求項18に記載の喫煙品。
【請求項21】
喫煙品用巻装材において、
セルロース繊維と充填材を備える基板紙であって、幅と長さを有している基板紙と、
前記基板紙上を前記幅方向に延びていて前記長さ方向に沿って離間されている複数の個別の着火低減区域と、
第1の着火低減区域と第2の隣接する着火低減区域の間に配置されている少なくとも1つの燃焼加速区域であって、燃焼促進剤を備える燃焼加速区域と、を備えており、
前記着火低減区域は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を面積当たりの重量において前記少なくとも1つの燃焼加速区域中に含有される前記燃焼促進剤の量より少ない量で含有しており、前記着火低減区域は25コレスタより大きい通気度を有し尚且つ23℃で約0.5cm/sより小さい拡散係数を有している、喫煙品用巻装材。
【請求項22】
喫煙品用巻装材の調製のための基板紙の使用において、前記基板紙は、
セルロース繊維と充填材を備え、幅と長さを有しており、
前記基板紙上を前記幅方向に延びていて前記長さ方向に沿って離間されている複数の個別の着火低減区域と、
第1の着火低減区域と第2の隣接する着火低減区域の間に配置されている少なくとも1つの燃焼加速区域であって、燃焼促進剤を備える燃焼加速区域と、を備えており、
前記着火低減区域は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を面積当たりの重量において前記少なくとも1つの燃焼加速区域中に含有される前記燃焼促進剤の量より少ない量で含有しており、
前記着火低減区域は約20コレスタより大きい通気度を有している、喫煙品用巻装材の調製のための基板紙の使用。
【請求項23】
喫煙品用巻装材の調製のための燃焼促進剤の使用において、前記巻装材は、
セルロース繊維と充填材を備える基板紙であって、幅と長さを有している基板紙と、
前記基板紙上を前記幅方向に延びていて前記長さ方向に沿って離間されている複数の個別の着火低減区域と、
第1の着火低減区域と第2の隣接する着火低減区域の間に配置されている少なくとも1つの燃焼加速区域であって、燃焼促進剤を備える燃焼加速区域と、を備えており、
前記着火低減区域は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を面積当たりの重量において前記少なくとも1つの燃焼加速区域中に含有される前記燃焼促進剤の量より少ない量で含有しており、
前記着火低減区域は約20コレスタより大きい通気度を有している、喫煙品用巻装材の調製のための燃焼促進剤の使用。
【請求項24】
着火傾向の低減された喫煙品用巻装材での着火低減区域の通気度を増加させるための燃焼促進剤の使用において、前記巻装材は、
セルロース繊維と充填材を備える基板紙であって、幅と長さを有している基板紙と、
前記基板紙上を前記幅方向に延びていて前記長さ方向に沿って離間されている複数の個別の着火低減区域と、
第1の着火低減区域と第2の隣接する着火低減区域の間に配置されている少なくとも1つの燃焼加速区域であって、燃焼促進剤を備える燃焼加速区域と、を備えており、
前記着火低減区域は、前記燃焼促進剤を前記少なくとも1つの燃焼加速区域に含まれている前記燃焼促進剤の面積当たり重量に基づく量より少ない量で含有しており、
前記着火低減区域は約20コレスタより大きい通気度を有している、着火傾向の低減された喫煙品用巻装材での着火低減区域の通気度を増加させるための燃焼促進剤の使用。
【請求項25】
前記基板紙は、更に、
前記第1の着火低減区域の方を向いている第1縁と前記第2の隣接する着火低減区域の方を向いている第2縁を含んでいる燃焼加速区域と、
少なくとも1つの未処理区域であって、前記燃焼加速区域の前記第1縁と前記第1の着火低減区域の間に設けられている未処理区域と、を備えており、
前記未処理区域及び前記着火低減区域は前記燃焼促進剤を含んでいない、上記請求項22、23、又は24に記載の使用。
【請求項26】
前記基板紙は、更に、
第1の未処理区域と第2の未処理区域を含んでおり、前記第1の未処理区域は前記燃焼加速区域の前記第1縁と前記第1の着火低減区域の間に設けられ、前記第2の未処理区域は前記燃焼加速区域の前記第2縁と前記第2の隣接する着火低減区域の間に設けられている、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記着火低減区域は23℃で約0.5cm/sより小さい拡散係数を有している、請求項22、23、24、25、又は26の何れか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記巻装材を喫煙品の中へ組み入れASTM試験E2187−09に従って試験した場合に、前記喫煙品の少なくとも75%が自己消火する、請求項22、23、24、25、又は26の何れか1項に記載の使用。
【請求項29】
着火傾向の低減された喫煙品用巻装紙での着火低減区域の通気度を増加させるための方法において、
セルロース繊維と充填材を備える基板紙であって、幅と長さを有し、前記基板紙上を前記幅方向に延びていて前記長さ方向に沿って離間されている複数の個別の着火低減区域と、第1の着火低減区域と第2の隣接する着火低減区域の間に配置されて1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を備えている少なくとも1つの燃焼加速区域と、を有している基板紙を提供する工程、を備えており、
前記着火低減区域は燃焼促進剤を面積当たりの重量において前記少なくとも1つの燃焼加速区域中に含有される前記燃焼促進剤の量より少ない量で含有しており、前記着火低減区域は25コレスタより大きい通気度を有し尚且つ23℃で約0.5cm/sより小さい拡散係数を有している、着火傾向の低減された喫煙品用巻装紙での着火低減区域の通気度を増加させるための方法。
【請求項30】
前記基板紙は、更に、
前記第1の着火低減区域の方を向いている第1縁と前記第2の隣接する着火低減区域の方を向いている第2縁を含んでいる燃焼加速区域と、
少なくとも1つの未処理区域であって、前記燃焼加速区域の前記第1縁と前記第1の着火低減区域の間に設けられている未処理区域と、を備えており、
前記未処理区域は前記燃焼促進剤を含んでいない、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記基板紙は、更に、
第1の未処理区域と第2の未処理区域を含んでおり、前記第1の未処理区域は前記燃焼加速区域の前記第1縁と前記第1の着火低減区域の間に設けられ、前記第2の未処理区域は前記燃焼加速区域の前記第2縁と前記第2の隣接する着火低減区域の間に設けられている、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記着火低減区域は23℃で約0.5cm/sより小さい拡散係数を有している、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記巻装材を喫煙品の中へ組み入れASTM試験E2187−09に従って試験した場合に、前記喫煙品の少なくとも75%が自己消火する、請求項29、30、又は31の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
喫煙品用巻装材において、
セルロース繊維と充填材を備える基板紙であって、幅と長さを有している基板紙と、
前記基板紙上を前記幅方向に延びていて前記長さ方向に沿って離間されている複数の個別の着火低減区域と、
第1の着火低減区域と第2の隣接する着火低減区域の間に配置されている少なくとも1つの燃焼加速区域であって、燃焼促進剤を備えていて、前記第1の着火低減区域の方を向いている第1縁と前記第2の隣接する着火低減区域の方を向いている第2縁を含んでいる、燃焼加速区域と、
少なくとも1つの未処理区域であって、前記燃焼加速区域の前記第1縁と前記第1の着火低減区域の間に設けられている未処理区域と、を備えており、
前記着火低減区域は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を面積当たりの重量において前記少なくとも1つの燃焼加速区域中に含有される前記燃焼促進剤の量より少ない量で含有して、前記着火低減区域は20コレスタより大きい通気度を有し尚且つ23℃で約0.5cm/sより小さい拡散係数を有している、喫煙品用巻装材。
【請求項35】
喫煙品用巻装材において、
セルロース繊維と充填材を備える基板紙であって、幅と長さを有している基板紙と、
前記基板紙上を前記幅方向に延びていて前記長さ方向に沿って離間されている複数の個別の着火低減区域と、
第1の着火低減区域と第2の隣接する着火低減区域の間に配置されている少なくとも1つの燃焼加速区域であって、燃焼促進剤を備えていて、前記第1の着火低減区域の方を向いている第1縁と前記第2の隣接する着火低減区域の方を向いている第2縁を含んでいる、燃焼加速区域と、
少なくとも1つの未処理区域であって、前記燃焼加速区域の前記第1縁と前記第1の着火低減区域の間に設けられている未処理区域と、を備えており、
前記着火低減区域は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を面積当たりの重量において前記少なくとも1つの燃焼加速区域中に含有される前記燃焼促進剤の量より少ない量で含有して、前記着火低減区域は20コレスタより大きい通気度を有しており、前記巻装材を喫煙品の中へ組み入れASTM試験E2187−09に従って試験した場合に、前記喫煙品の少なくとも75%が自己消火する、喫煙品用巻装材。
【請求項36】
喫煙品用巻装材において、
セルロース繊維と充填材を備える基板紙であって、幅と長さを有している基板紙と、
前記基板紙上を前記幅方向に延びていて前記長さ方向に沿って離間されている複数の個別の着火低減区域であって、各々の個別の着火低減区域は、前記基板紙へ塗工されている、何れのセルロース繊維も粒子も含んでいない着火低減組成物を備えている、基板紙と、
第1の着火低減区域と第2の隣接する着火低減区域の間に配置されている少なくとも1つの燃焼加速区域であって、燃焼促進剤を備えていて、前記第1の着火低減区域の方を向いている第1縁と前記第2の隣接する着火低減区域の方を向いている第2縁を含んでいる、燃焼加速区域と、
少なくとも1つの未処理区域であって、前記燃焼加速区域の前記第1縁と前記第1の着火低減区域の間に設けられている未処理区域と、を備えており、
前記着火低減区域は前記燃焼促進剤を含んでいないかまたは1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を面積当たりの重量において前記少なくとも1つの燃焼加速区域中に含有される前記燃焼促進剤の量より少ない量で含有している、喫煙品用巻装材。
【請求項37】
喫煙品用巻装材において、
セルロース繊維と充填材を備える基板紙であって、幅と長さを有している基板紙と、
前記基板紙上を前記幅方向に延びていて前記長さ方向に沿って離間されている複数の個別の着火低減区域と、
第1の着火低減区域と第2の隣接する着火低減区域の間に配置されている少なくとも1つの燃焼加速区域であって、少なくとも1つの燃焼促進剤を備えていて、前記第1の着火低減区域の方を向いている第1縁と前記第2の隣接する着火低減区域の方を向いている第2縁を含んでいる、燃焼加速区域と、
少なくとも1つのバリア領域であって、前記燃焼加速区域の前記第1縁と前記第1の着火低減区域の間に設けられているバリア領域と、を備えており、
前記バリア領域及び前記着火低減区域は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を含んでいないか又は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を前記少なくとも1つの燃焼加速区域に含まれているより少ない量で含有している、喫煙品用巻装材。
【請求項38】
前記バリア領域及び前記着火低減区域は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を約0.4重量%より少ない量で含有している、請求項37に記載の巻装材。
【請求項39】
前記巻装材を喫煙品の中へ組み入れASTM試験E2187−09に従って試験した場合に、前記喫煙品の少なくとも75%が自己消火する、請求項37に記載の巻装材。
【請求項40】
前記着火低減区域は、スターチ、アルギン酸塩、又はそれらの混合物、を備えている、請求項37に記載の喫煙品用巻装材。
【請求項41】
前記着火低減区域中及び前記バリア領域中に含有される前記燃焼促進剤の量は、前記少なくとも1つの燃焼加速区域中に含有される前記燃焼促進剤の量の約5%から約60%まで、例えば、約10%から約30%まで、など、である、請求項37に記載の巻装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2013年3月14日出願の米国特許出願第61/783,632号及び2012年10月11日出願の米国特許出願第61/712,621号に基づくものであってそれらに対する優先権を主張するものであり、当該両出願をここに参考文献としてそっくりそのまま援用する。
【0002】
本発明は、概括的には、着火傾向の低減された喫煙品用巻装紙及び当該巻装材を作製するためのプロセスに向けられている。
【背景技術】
【0003】
タバコ業界では、喫煙品の着火傾向、即ち喫煙品の点火された喫煙品と接触した表面を発火させ易いという性向、を低減する巻装材を有するシガレットを作製することに継続して関心がもたれている。燃焼するシガレットが可燃性材料と接触したことに起因する火災についての報告がなされてきた。業界には、シガレット又は他の喫煙品の、家具や寝具などに使用されている表面及び材料に接触した際にそれらを発火させ易い性向を低減することの正当な利害関係が存在する。
【0004】
而して、喫煙品、特にシガレット、の望ましい特徴は、それらが自由燃焼状態で可燃性材料の上に落下或いは放置された際に自己消火し易い、ということである。
【0005】
タバコ業界では、シガレット巻装材がシガレットの燻焼特性に有意な影響を及ぼし得ることがかなり以前より認知されている。これに関し、当技術分野では、シガレットの自己消火し易いという所望の性向を実現させることを目的に、言い換えるならシガレットの着火傾向特性を低減することを目的に、シガレット巻装材を改変又は修正するための様々な試みがなされてきた。
【0006】
先行技術は、膜形成組成物又は代替的にはセルロース系繊維質組成物をシガレット巻紙に塗工して巻紙の通気度を引き下げ、燃焼速度を制御することを記載している。これらの材料がシガレットの長さに沿って個別の区域に塗工された場合、シガレットは低減された物質着火性を呈し、自己消火し易い、ということが示されている。
【0007】
ピーターソン(Peterson)らへの米国特許第5,878,753号、及びクラーカー(Kraker)への米国特許第6,779,530号、及びピーターソンらへの米国特許第6,725,867号は、ここに参考文献として援用されるものであって、例えば、喫煙品巻装材を膜形成組成物で処理して着火傾向を低減させることを記載している。ピーターソンらへの米国特許第5,878,754号は、同じくここに参考文献として援用されるものであって、溶剤可溶性ポリマーを非水溶液中に溶かした非水溶液で喫煙品巻装材を処理して着火傾向を低減させることを記載している。
【0008】
上記特許は当該技術分野における偉大な進歩をもたらしはしたが、更なる改善がなお必要である。例えば、着火傾向低減化を意図して巻装材上に形成された個別の区域が喫煙品の送達への様々な悪影響を有していることもある。例えば、個別の処理区域は概して基部巻装材よりも低い通気度を有する。処理区域の低い通気度は喫煙品の知覚特質への不都合な影響力を有することもあり、喫煙品の残部に比べ渋味のある主流煙を生じさせることもあり得る。
【0009】
過去には、上記効果の幾つかを打ち消すために、個別の処理区域が、それら区域の幅に亘って火種の方向に最小から最大まで漸進的に変化させた通気度を持たせて作製されたこともあった。この配設は様々な改善をもたらした。
【0010】
過去には、比較的低い分子量を有する膜形成材料を含有している特定の膜形成組成物が提案されたこともある。これらの膜形成組成物は、比較的高い固形成分濃度で巻装材へ塗工された。この配設もまた個別の処理区域の通気度を制御するうえでの幾つかの改善を可能にした。
【0011】
とはいえ更なる改善がなお必要である。例えば、個別の処理区域を有する喫煙品用巻装材において、個別の処理区域が比較的高い通気度を有している巻装材の必要性が存在する。具体的には、特定の膜形成材料に制限する必要に迫られることなしに処理区域の通気度を増加させる方法の必要性が存在する。
【0012】
更に、巻装材上の個別の処理区域において、通気度への影響力が最小限であって尚且つ巻装材へ添加される材料は最小限の量を使用しながらも喫煙品の着火傾向を所望レベルへ引き下げる処理区域を作製する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願第61/783,632号
【特許文献2】米国特許出願第61/712,621号
【特許文献3】米国特許第5,878,753号
【特許文献4】米国特許第6,779,530号
【特許文献5】米国特許第6,725,867号
【特許文献6】米国特許第5,878,754号
【特許文献7】米国特許第5,417,228号
【特許文献8】米国特許第5,474,095号
【特許文献9】米国特許第5,534,114号
【特許文献10】米国特許第5,997,691号
【特許文献11】米国特許公開第2011/0290436号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本開示は、概括的には、着火傾向の低減された喫煙品用巻装紙及び当該巻装材を作製するためのプロセスに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
例えば、1つの実施形態では、本開示は喫煙品用巻装材に向けられている。巻装材は、セルロース繊維と充填材を備える基板紙を備えている。複数の個別の着火低減区域が、基板紙上を幅方向に延びていて、長さ方向に沿って離間されている。少なくとも1つの燃焼加速区域が第1の着火低減区域と第2の着火低減区域の間に配置されている。燃焼加速区域は、基板紙へ塗工されている燃焼促進剤を備えている。本開示によれば、着火低減区域は燃焼促進剤を含んでいない。燃焼促進剤を着火低減区域間のみに設置することにより、要求される低減された着火性質を持ちながらも着火低減区域により大きな通気度を持たせることが可能になる。例えば、本開示によれば、着火低減区域は、基板紙の通気度より、85%しか低くない通気度、例えば、80%しか低くない、70%しか低くない、など、の通気度を有することができる。例えば、着火低減区域の通気度は、基板紙の通気度に比べ約65%しか小さくならず、例えば、基板紙に比べ、約60%しか小さくない、約55%しか小さくない、約50%しか小さくない、約45%しか小さくない、約40%しか小さくない、など、に留まる。
【0016】
1つの実施形態では、着火低減区域の通気度は、約20コレスタより大きくすることができ、例えば、約25コレスタより大きい、約30コレスタより大きい、約35コレスタより大きい、約40コレスタより大きい、約45コレスタより大きい、など、にすることができる。
【0017】
個別の着火低減区域は、上記通気特性を有しながら、なおも巻装材に所望の低減された着火性質を提供することができる。例えば、1つの実施形態では、着火低減区域は、23℃で約0.5cm/sより小さい拡散係数を有することができる。或る代わりの実施形態では、巻装材を喫煙品の中へ組み入れASTM試験E2187−09に従って試験した場合に、喫煙品の少なくとも75%は着火低減区域の存在に因り自己消火する。
【0018】
或る代わりの実施形態では、本開示は、セルロース繊維と充填材を備える基板紙を含んでいる喫煙品用巻装材に向けられている。複数の個別の着火低減区域が、基板紙の幅方向に延びていて、長さ方向に沿って離間されている。各々の個別の着火低減区域は、基板紙へ塗工されている着火低減組成物を備えている。本開示による着火低減組成物は、何れのセルロース繊維も粒子も含んでいない。少なくとも1つの燃焼加速区域が、巻装材上に設けられていて、第1の着火低減区域と第2の着火低減区域の間に配置されている。燃焼加速区域は燃焼促進剤を備えている。本開示によれば、着火低減区域は、部分的に又は全体として、燃焼促進剤を含んでいない。上記の構成を介し、着火低減区域は、上述の通気特性の様な比較的高い通気度を有することができる。
【0019】
更に別の実施形態では、本開示は喫煙品用巻装材に向けられている。巻装材は、セルロース繊維と充填材を備える基板紙を備えている。複数の個別の着火低減区域が、基板紙上を幅方向に延びていて、長さ方向に沿って離間されている。少なくとも1つの燃焼加速区域が第1の着火低減区域と第2の着火低減区域の間に配置されている。燃焼加速区域は燃焼促進剤を備えている。燃焼加速区域は、第1の着火低減区域の方を向いている第1縁と第2の着火低減区域の方を向いている第2縁を含んでいる。
【0020】
巻装材は、更に、少なくとも1つの未処理区域又は緩衝領域を含んでいる。未処理区域は燃焼加速区域の第1縁と第1の着火低減区域の間に設けられている。1つの実施形態では、巻装材は、燃焼加速区域の第2縁と第2の着火低減区域の間に設けられている第2の未処理区域を含むものとすることができる。本開示によれば、未処理区域及び着火低減区域は燃焼促進剤を含んでいない。
【0021】
上記実施形態によれば、巻装材を組み入れている喫煙品に沿って火種が進んでゆく際、火種は、個別の着火低減区域に進入し、次いで未処理区域に進入し、次いで燃焼加速区域に進入する。燃焼加速区域から、火種は別の未処理区域を通り次いで第2の個別の着火低減区域の中へと燃焼してゆく。この様にして、喫煙品の全長に沿う制御された燃焼速度プロファイルを現出させることができる。加えて、喫煙品は所望の低減された着火特性を有することができる。
【0022】
上述の実施形態の幾つかでは、着火低減区域は燃焼促進剤を含有していないものとして記述されている。但し、或る代わりの実施形態では、着火低減区域は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を面積当たり少なくとも1つの燃焼加速区域に含有される燃焼促進剤の量より少ない量で含有していてもよい。例えば、着火低減区域は、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を、約0.4重量%より少ない累積量で含有することができ、例えば、0.3重量%より少ない量、0.2重量%より少ない量、0.15重量%より少ない量、0.1重量%より少ない量、など、で含有することができる。比較的微量の1つ又はそれ以上の促進剤を着火低減区域に添加することは、上述の本開示の恩恵及び利点をなおも提供し、その上、改善された灰特性も提供することができる。少量の1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を着火低減区域に添加することは、例えば、灰の白さを改善すること、灰の凝集性を改善すること、及び/又は喫煙品が吸われてゆく際の巻装紙上の斑点を防止することができる。少量の1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を着火低減区域に添加することは、更に、ASTM試験E2187−09に従ったシガレット鎮火試験(Cigarette Extinction Test)のパーセンテージ増加を呈していることから、また自由大気自己消火試験(Free Air Self-Extinguishment Test)に従って試験されたときに減少を呈していることから、意外にも喫煙品の着火傾向特性低減化を改善している。
【0023】
上述の実施形態では、巻装材は更に着火低減区域の縁に隣接して設けられている緩衝領域を含んでいる。緩衝領域は、概して、着火低減区域に含有されている量と同じ量の1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を含有するものとすることができる。この実施形態では、巻装材を組み入れている喫煙品に沿って火種が進んでゆく際、火種は、個別の着火低減区域に進入し、次いで緩衝区域に進入し、次いで燃焼加速区域に進入する。燃焼加速区域から、火種は別の緩衝領域を通り次いで第2の個別の着火低減区域の中へと燃焼してゆく。
【0024】
本開示は、更に、着火傾向の低減された喫煙品用巻装紙の着火低減区域の通気度を増加させるための方法に向けられている。巻装材はセルロース繊維と充填材を備える基板紙を備えている。複数の個別の着火低減区域が、基板紙上を幅方向に延びていて、長さ方向に沿って離間されている。少なくとも1つの燃焼加速区域が第1の着火低減区域と第2の着火低減区域の間に配置されている。燃焼加速区域は、基板紙へ塗工されている燃焼促進剤を備えている。本開示によれば、着火低減区域は燃焼促進剤を含んでいない。
【0025】
上記方法によれば、1つの実施形態では、巻装材は第1の着火低減区域の方を向いている第1縁と第2の着火低減区域の方を向いている第2縁を含む燃焼加速区域を含んでいてもよい。巻装材は、更に、少なくとも1つの未処理区域を含んでいてもよい。未処理区域は燃焼加速区域の第1縁と第1の着火低減区域の間に設けられている。1つの実施形態では、巻装材は、更に、燃焼加速区域の第2縁と第2の着火低減区域の間に設けられている第2の未処理区域を含むものとすることができる。本開示によれば、未処理区域及び着火低減区域は燃焼促進剤を含んでいない。上記方法を介し、着火低減区域は、所望の低減された着火性質を持ちながらもより大きな通気度を持つことができる。
【0026】
本開示は、更に、喫煙品用巻装材の調製のための基板紙の使用に向けられている。1つの実施形態では、本開示は、更に、喫煙品用巻装材の調製のための燃焼促進剤の使用に向けられている。1つの実施形態では、本開示は、更に、着火傾向の低減された喫煙品用巻装材での着火低減区域の通気度を増加させるための燃焼促進剤の使用に向けられている。上記使用によれば、基板紙はセルロース繊維と充填材を備えている。複数の個別の着火低減区域が、基板紙上を幅方向に延びていて、長さ方向に沿って離間されている。少なくとも1つの燃焼加速区域が第1の着火低減区域と第2の着火低減区域の間に配置されている。燃焼加速区域は、基板紙へ塗工されている燃焼促進剤を備えている。本開示によれば、着火低減区域は燃焼促進剤を含んでいない。
【0027】
上記使用の何れかによれば、1つの実施形態では、基板紙は、更に、第1の着火低減区域の方を向いている第1縁と第2の着火低減区域の方を向いている第2縁を含む燃焼加速区域を含んでいてもよい。巻装材は、更に、少なくとも1つの未処理区域を含んでいてもよい。未処理区域は燃焼加速区域の第1縁と第1の着火低減区域の間に設けられている。1つの実施形態では、巻装材は、燃焼加速区域の第2縁と第2の着火低減区域の間に設けられている第2の未処理区域を含むものとすることができる。
【0028】
上述の実施形態に使用されている巻装紙は、概して、セルロース系繊維と充填材粒子から作ることができる。セルロース繊維は、例えば、亜麻繊維、軟木繊維、硬木繊維、及びそれらの混合物、を備えていてもよい。他方、充填材粒子は、炭酸カルシウムや酸化マグネシウム、酸化鉄、及び/又は二酸化チタンの様な金属酸化物といった様な何れの適した充填材粒子を備えていてもよい。充填材粒子は、巻装紙中に、約10重量%から約50重量%までの量で含まれていてもよく、例えば、約20重量%から約40重量%まで、など、の量で含まれていてもよい。
【0029】
意外にも、幾つかの適用では、本開示に従って作られた巻装紙を組み入れている喫煙品は、特に着火低減区域内では、一酸化炭素送達を低減させることも発見された。着火低減区域内での一酸化炭素送達低減化は、着火低減区域内の空気流量増加に起因するものであろう。例えば、それら着火低減区域は、同一の着火低減区域を含んでいるが但し着火低減区域間に含有される量と同じ量の1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を着火低減区域内に含有する同一の喫煙品に比較して、吹かし(吹かしは着火低減区域内に起こっている)当たり少なくとも3%少ない一酸化炭素を発生させ、例えば、少なくとも5%少ない、少なくとも10%少ない、など、の一酸化炭素を発生させる。
【0030】
本開示の他の特徴及び態様は以下に更に詳細に論じられている。
【0031】
明細書の残部には、本開示の完全且つ実現性のある開示が、添付図面への参照を含め、より詳しく述べられている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本開示により作られた喫煙品の斜視図である。
【
図3】本開示により作られた喫煙品の別の実施形態の斜視図である。
【
図4】以下の実施例2に得られた結果のグラフ表現である。
【
図5A】以下の実施例3により作製されたシガレットの喫煙途中の斜視図である。
【
図5B】
図5Aと共に、以下の実施例3により作製されたシガレットの喫煙途中の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書及び図面中の参照符号の繰り返し使用は、本発明の同じ又は同様の特徴又は要素を表すことが目的である。
【0034】
これより本発明の実施形態を詳細に参照してゆくが、それら実施形態の1つ又はそれ以上の実施例が以下に述べられている。各実施例は、本発明の解説を目的に提供されており、本発明の限定を目的に提供されているのではない。実際、本発明には発明の範囲及び精神から逸脱することなく様々な修正及び変型がなされ得ることが当業者には自明であろう。例えば、1つの実施形態の一部として描かれ又は説明されている特徴が別の実施形態で使用されて更に別の実施形態を生み出すこともあり得る。而して、本発明はその様な修正及び変型を網羅するものとする。
【0035】
本発明の解説を目的に、発明の実施形態及び原理をシガレットに関して論じていく。但し、これは発明の解説のみが目的であり、発明を唯一シガレットに限定しようとするものではない。何れの様式の喫煙品も本発明の範囲及び精神の内にある。
【0036】
本開示は、改善された着火傾向制御特性を有する喫煙品及び喫煙品用巻装材に関する。「着火傾向」とは、喫煙品又はシガレットの、燃焼しているシガレットが可燃性物質の上に落とされるか又はそれ以外に放置された場合に当該可燃性物質を発火させ易い性向の尺度である。
【0037】
着火傾向の試験は、「シガレット鎮火試験(Cigarette Extinction Test)」と呼称されている。シガレット鎮火試験は、10層の濾紙を使用するASTM試験番号E2187−09である。シガレット鎮火試験では、点火されたシガレットが10層の濾紙上に置かれる。シガレットが自己消火すれば、当該シガレットは試験に合格する。また一方で、シガレットがその終端までずっと燃焼すれば、当該シガレットは不合格となる。本発明により作られる喫煙品は上記試験に合格するように設計することができる。別途ここに指示されていない限り、巻装材は、ASTM試験番号E2187−09に従い、230mg/cm
3の充填密度の標準的アメリカンブレンドタバコを内包する25mmの円周を有するシガレットへ形成されることによって、試験されている。
【0038】
上記試験に加え、着火傾向の低減されたシガレットを有する喫煙品は、典型的には、「自由大気自己消火(FASE:free air self-extinguishment)」についても試験されている。自由大気自己消火試験中、喫煙品は自由大気中に(ピンによって保持された状態でヒュームフード内にて)吹かされること無く且つ隣接する表面の上に置かれること無く燃焼するがままにされる。殆どの適用では、喫煙品はシガレット鎮火試験に合格すると同時に自由大気中に燃焼したまま放置されたときに自己消火しないことが望ましい。而して、より低いFASEレートが好適である。本発明の原理に従って構築されている喫煙品は、隣接する表面の上に置かれたときに自己消火するように、但しそれでもなお比較的低いFASEレートを有するように、構成することができるのが特に好都合である。
【0039】
過去に、本願の譲受人は、着火傾向特性の低減された喫煙品に着眼した様々な特許を取得している。例えば、巻装材上に個別の処理区域を形成している膜形成組成物で処理された巻装紙が、ピーターソンらへの米国特許第6,779,530号及びクラーカーへの米国特許第6,725,867号に開示されており、両特許をここに参考文献として援用する。
【0040】
‘530号特許と‘867号特許の両方で、膜形成組成物は1つの実施形態では円周横断方向の帯として塗工されると説明されている。帯はシガレット巻装材上でシガレットの長さに沿って互いから離間されている。膜形成組成物は、連続した膜を形成することのできる組成物であり、帯を繊維質材料のみから又は主として繊維質から形成することとは区別されるべきである。両特許は、膜形成組成物を巻装紙の外部表面へ、又は巻装紙の内部表面へ処理区域がたばこ充填材に隣接するようにして、塗工することを論じている。
【0041】
本願の譲受人は、繊維材料であるセルロース系スラリーから作られた個別の処理区域を含んでいるシガレット用着火低減巻装紙も作っている。その様な巻装材は、例えば、ボールドウィン(Baldwin)らへの米国特許第5,417,228号、アーレン(Allen)らへの米国特許第5,474,095号、カットライト(Cutright)らへの米国特許第5,534,114号、及びゴータム(Gautam)らへの米国特許第5,997,691号に記載されており、それら特許全てをここに参考文献として援用する。処理区域は、繊維質のセルロース、例えば、ファイバー、フィブリル、又はマイクロフィブリル、など、から作られていてもよく、結合剤を含有していてもよい。紙へ塗工された添加スラリーが紙の上に繊維質のマットを形成する。
【0042】
過去には、シガレット巻装材は、低減された着火傾向特性を有するシガレット巻装材を含め、クエン酸塩の様な燃焼促進剤で処理されていた。クエン酸塩は、典型的には、灰の外観を改善するために紙へ塗工される。燃焼促進剤は、典型的には、巻装材上に個別の処理区域が形成される前に、紙の表面積全体に亘って塗工される。また一方で、本発明者は、意外にも、燃焼促進剤が巻装材の個別の着火低減区域の間にだけ塗工された場合若しくは着火低減区域間に含まれているより低いレベルで個別の着火低減区域中に含まれている場合、様々な恩恵及び利点が得られることを発見した。
【0043】
例えば、着火低減区域が燃焼促進剤を含有していないか又はより低い量の燃焼促進剤を含有していることが理由で、着火低減区域が所望の低減された着火特性を有しながらもより高い通気度を有することができる、ということが発見された。巻装材上の着火低減区域中に燃焼促進剤が何も含まれていないために、例えば、巻装材は着火低減区域内ではより高い温度で分解する。その結果として、着火低減区域は、より高い通気度を有することができ、尚且つ上述のシガレットへ組み入れられた場合にシガレット鎮火試験に合格する能力がある。
【0044】
究極的に、着火低減区域を作製する場合に巻装材へはより少ない材料を塗工できるようになる。より少量の着火低減組成物を巻装材へ塗工することは、風味への何らかの悪影響を最小限にする。本開示に従って作られる巻装材は、而して、過去に作られてきた着火低減区域を一切含んでいない従来式巻装材により匹敵し得る主流煙送達を現出させる。
【0045】
1つの実施形態では、本開示に従って作られる巻装材は、固有の拡散係数特性を有する着火低減区域を含むことができる。ここでの使用に際し、拡散係数は、4mmx20mmのヘッドを備えたSodim CO
2拡散係数計を使用して測定されている。拡散係数試験機は、cm/sの単位によるD
*測定値を提供する。これらの拡散係数測定値は当技術分野では拡散容量とも呼称される。本開示によれば、23℃の様な室温での比較的高い拡散係数を有する着火低減区域を作製することができる。例えば、23℃での拡散係数は0.1cm/sより大きくなり得る。着火低減区域は、上記範囲内の拡散係数値を有することができ、それでもなおASTM試験E2187−09に従って試験されたときに喫煙品の少なくとも75%に自己消火させることができる。上記特性は、着火低減区域が優れた低着火性の性質を有し尚且つ比較的高い空気流量を有することを示唆している。より高い空気流量はより優良なシガレット主流煙性質につながる。例えば、主流煙は、より低い一酸化炭素レベルを有し、またより優良な主観的風味性質を有する製品につながるより好ましい送達を有している。
【0046】
より少ない量の着火低減組成物を巻装材へ塗工すること及び/又はより高い空気流量性質を有する着火低減区域を作製することは、より低い一酸化炭素送達を有する喫煙品の設計につながり得る。一酸化炭素の低減は、ASTMシガレット鎮火試験のパーセンテージが実質的に変化していなくても観測されるであろう。而して、またもや予想外なことに、本開示の多くの実施形態はより低い一酸化炭素レベルを、特にタールレベルに対比して低い一酸化炭素レベルを、現出させるということが発見された。
【0047】
加えて、意外にも、着火低減区域内の一酸化炭素レベルは、着火低減区域が燃焼促進剤を殆ど或いは全く含有していない場合に低減されることが発見されている。例えば、着火低減区域内に起こる吹かし内の一酸化炭素について試験してみると、一酸化炭素レベルは約3%より大きく減少し、例えば、約5%より大きく、約8%より大きく、更には約10%より大きく、など、といった様に減少する。一酸化炭素低減は約50%にも上り得る。一酸化炭素低減は、同一の巻装材を有する同一の喫煙品であって燃焼促進剤が着火低減区域間の区域内と同じレベルで着火低減区域内に含まれている喫煙品と比較されている。
【0048】
デュマ(Duma)らへの米国特許公開第2011/0290436号には、着火性を低減するように適合されている被覆調合物で処理された区域を備えるシガレット用の紙が開示されている。‘436号出願は、特に、5マイクロメートル以下の中央値寸法を有するセルロースのナノ粒子から処理区域を形成することに向けられている。‘436号出願は、加速性の塩を非処理区域へ塗工してもよいことを表明している。但し、‘436号出願は、最初にくまなくクエン酸塩処理(citrated)された紙に対して行われた試験と燃焼加速塩水で離散的に被覆された紙に対して行われた試験の間の比較はこの種の被覆が低着火性(low ignition propensity)の帯の通気度に殆どといっていいぐらい影響力を有していないことを示した、と述べている。事実、‘436号出願の実施例でのLIP区域の通気度はどれも非常に低い。‘436号出願は、ASTM試験E2187−09に75%強の時間で合格するシガレットを作製するためには通気度を10コレスタ程度にする必要があることを実施例によって示唆している。
【0049】
‘436出願に照らせば、本発明者によって発見された成果はなおいっそう驚くべきことであり意外である。以下の実施例に示されている様に、本発明者は、燃焼促進剤が着火低減区域間だけに塗工されているか又はより低いレベルで着火低減区域中に含有されている場合、着火低減区域は所望の低減された着火特性を保持しながらも実質的により高い通気度を持つことができる、ということを発見した。以上に説明されている様に、‘436号出願は、処理区域がセルロースのナノ粒子を含んでいなくてはならないと教示している。本開示の多くの恩恵及び利点は、非繊維質セルロース材料及び非粒子セルロース材料の様な非セルロース材料を使用した場合に得られるものと確信している。本開示によれば、例えば、燃焼促進剤が巻装材の表面に亘って均一に塗工されないので、着火低減組成物は巻装材の燃焼促進剤を一切含んでいないか又は燃焼促進剤を引き下げられたレベルで含有する区域に塗工される。着火低減組成物は、例えば、非繊維質膜形成組成物を備えていてもよい。
【0050】
概して、本開示により作られる巻装紙は、セルロース繊維を充填材粒子と組み合わせて含有する。セルロース繊維は、例えば、亜麻繊維、軟木繊維、硬木繊維、又はそれらの混合物、とすることができる。紙ウェブの性質を所望に応じて変えるために、セルロース系繊維の各種混合物を使用することができ、どの程度まで繊維を精製するかもまた変えることができる。
【0051】
紙ウェブの中へ組み入れられる充填材粒子は、具体的な適用に依存して変わってくる。一般的に、何れの適当な充填材が使用されてもよい。充填材は、例えば、炭酸カルシウム粒子又は金属酸化物粒子とすることができる。適当な金属酸化物粒子には、酸化マグネシウム粒子、酸化鉄粒子、又は二酸化チタン粒子、が含まれる。紙ウェブへ添加される総充填材填量は、約10重量%から約50重量%までとすることができ、例えば、約20重量%から約40重量%まで、など、であってもよい。
【0052】
本開示により作られる巻装紙は、具体的な適用に基づき所望に応じて何れの適当な通気度及び坪量を有していてもよい。巻装紙の通気度は、例えば、概して約10コレスタ単位から約200コレスタ単位までとすることができる。幾つかの適用では、通気度は約15コレスタ単位から約55コレスタ単位の間とすることができる。但し、本発明の1つの実施形態では、巻装紙の初期通気度は相対的に高い。例えば、1つの実施形態では、巻装紙の通気度は、約50コレスタ単位から約110コレスタ単位までとすることができる。様々な実施形態では、例えば、巻装紙の初期通気度は、約60コレスタ単位より大きい、約70コレスタ単位より大きい、約90コレスタ単位より大きい、又は約100コレスタ単位より大きい、こともある。巻装紙の初期通気度は、概して、約160コレスタ単位より小さく、例えば、約140コレスタ単位より小さい、約120コレスタ単位より小さい、など、とされている。
【0053】
シガレット巻装紙の坪量は、大抵は約15gsmから約60gsmの間、より厳密には約15gsmから約40gsmの間であり、例えば、約20gsmから約27gsmまで、約25gsmから約27gsmまで、など、である。本発明による巻装紙はこれらの範囲の何れの範囲内で作られていてもよい。
【0054】
本開示によれば、着火低減区域を形成するために、着火低減組成物が巻装紙の離散された場所に塗工される。着火低減区域は、当該巻装材を組み入れている喫煙品が隣接する表面の上に燃焼したまま放置された場合に当該喫煙品に自己消火させるように設計されている。これに関し、着火低減組成物は、巻装材が或る特定の特性又は性質を持つのに十分な量で巻装材へ塗工される。例えば、1つの実施形態では、着火低減組成物は、巻装材を組み入れている喫煙品に自己消火させる拡散係数を有している着火低減区域、及び巻装材を組み入れている喫煙品に自己消火させる或る特定の表面積を有している着火低減区域、を作製するように巻装材へ塗工される。
【0055】
本開示によれば、1つの実施形態では、着火低減組成物は、何れかの他の化学薬品で未だ処理されていないままの巻装材又は基板紙へ塗工される。例えば、着火低減組成物は、巻装紙の、巻装紙が何れの後加工処理も施されていないその未使用状態のままである区域へ塗工されることになる。例えば、本開示によれば、着火低減区域は、巻装材の、巻装材が燃焼促進剤で処理されていない区域へ塗工される。但し、多くの巻装材は、燃焼促進剤が完成紙料繊維中や再循環水中に含まれていたり或いは何かしら織物形成機器や製紙機器上に存在していたりするせいで残存量の燃燃焼進剤と一体に製造されるものと理解しておきたい。而して、ここでの使用に際し、燃焼促進剤で未処理とは、巻装紙上の、燃焼促進剤のサイズプレス又は化学プレス、印刷、噴霧、など、による局所的塗工が起こっていない区域をいう。
【0056】
本開示によれば、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤は、巻装紙の個別の着火低減区域の間の場所に塗工される。燃焼促進剤は、喫煙品の全体としての燃焼特性を制御し尚且つ喫煙品に優れた灰調整性質を提供するために塗工される。本開示によれば、巻装材へ塗工される燃焼促進剤が個別の着火低減区域の間に含まれている場合であっても、巻装材は、なお適切な灰を呈し、低減された一酸化炭素レベルをもたらすことができる。
【0057】
本開示は、更に、着火傾向の低減された喫煙品用巻装紙中の着火低減区域の通気度を増加させるための方法に向けられている。巻装材はセルロース繊維と充填剤を備える基板紙を備えている。複数の個別の着火低減区域が、基板紙上を幅方向に延びていて、長さ方向に沿って離間されている。少なくとも1つの燃焼加速区域が第1の着火低減区域と第2の着火低減区域の間に配置されている。燃焼加速区域は、基板紙へ塗工されている燃焼促進剤を備えている。本開示によれば、1つの実施形態では、着火低減区域は燃焼促進剤を含んでいない。
【0058】
上記方法によれば、1つの実施形態では、巻装材は、更に、第1の着火低減区域の方を向いている第1縁と第2の着火低減区域の方を向いている第2縁を含む燃焼加速区域を含んでいる。巻装材は、更に、少なくとも1つの未処理区域又はバリア領域を含んでいてもよい。未処理区域は、燃焼加速区域の第1縁と第1の着火低減区域の間に設けられている。1つの実施形態では、巻装材は、燃焼加速区域の第2縁と第2の着火低減区域の間に設けられている第2の未処理区域を含むものとすることができる。本開示によれば、未処理区域及び着火低減区域は燃焼促進剤を含んでいない。
【0059】
本開示によれば、燃焼促進剤を燃焼加速区域だけに設置することによって、上記方法は着火低減区域が所望の低減された着火性質を有しながらもより大きな通気度を持つことを可能にする。
【0060】
本開示は、更に、喫煙品用巻装材の調製のための基板紙の使用に向けられている。基板紙はセルロース繊維と充填材を備えている。複数の個別の着火低減区域が、基板紙上を幅方向に延びていて、長さ方向に沿って離間されている。少なくとも1つの燃焼加速区域が第1の着火低減区域と第2の着火低減区域の間に配置されている。燃焼加速区域は、基板紙へ塗工されている燃焼促進剤を備えている。本開示によれば、1つの実施形態では、着火低減区域は燃焼促進剤を含んでいない。
【0061】
本開示は、更に、喫煙品用巻装材の調製のための燃焼促進剤の使用に向けられている。巻装材はセルロース繊維と充填材を備える基板紙を備えている。複数の個別の着火低減区域が、基板紙上を幅方向に延びていて、長さ方向に沿って離間されている。少なくとも1つの燃焼加速区域が第1の着火低減区域と第2の着火低減区域の間に配置されている。燃焼加速区域は、基板紙へ塗工されている燃焼促進剤を備えている。本開示によれば、着火低減区域は燃焼促進剤を含んでいない。
【0062】
本開示は、更に、着火傾向の低減された喫煙品用巻装材での着火低減区域の通気度を増加させるための燃焼促進剤の使用に向けられている。巻装材は、セルロース繊維と充填剤を備える基板紙を備えている。複数の個別の着火低減区域が、基板紙上を幅方向に延びていて、長さ方向に沿って離間されている。少なくとも1つの燃焼加速区域が第1の着火低減区域と第2の着火低減区域の間に配置されている。燃焼加速区域は、基板紙へ塗工されている燃焼促進剤を備えている。本開示によれば、着火低減区域は燃焼促進剤を含んでいないか又は引き下げられたレベルの燃焼促進剤を含有している。
【0063】
上記使用の何れかによれば、1つの実施形態では、基板紙は、更に、第1の着火低減区域の方を向いている第1縁と第2の着火低減区域の方を向いている第2縁を含む燃焼加速区域を含んでいてもよい。巻装材は、更に、少なくとも1つの未処理区域又はバリア領域を含んでいてもよい。未処理区域は燃焼加速区域の第1縁と第1の着火低減区域の間に設けられている。1つの実施形態では、巻装材は、燃焼加速区域の第2縁と第2の着火低減区域の間に設けられている第2の未処理区域を含むものとすることができる。
【0064】
本開示によれば、燃焼促進剤を燃焼加速区域だけに設置するか又は引き下げられたレベルで着火低減区域に設置することによって、上記使用は着火低減区域が所望の低減された着火性質を有しながらもより大きな通気度を持つことを可能にする。
【0065】
本開示を説明及び解説するのを支援するために、本開示による喫煙品の1つの実施形態が
図1及び
図2に全体的に描かれている。全体を10と表示されている、改善された着火傾向特性を有する喫煙品(シガレット)は、巻装材14内にタバコ円柱体12を含んでいる。喫煙品10はフィルタ26を含んでいてもよい。
【0066】
紙ウェブ14は、タバコ円柱体12の周りに巻装されたとき外周面16を画定する。外周面16の個別の区域18は着火低減組成物で処理されている。同様に処理区域18を巻装材14の内面に配置させるようにしてもよいことを理解しておきたい。言い換えれば、処理区域18がタバコに隣接するように巻装材14をタバコ円柱体12の周りに丸めるようにしてもよい。
【0067】
タバコ円柱体12は、概して、細かく刻まれたタバコの葉及び/又は再生タバコから作られている。タバコ円柱体12は、概して、約170mg/cm
3から約260mg/cm
3までのタバコ密度、例えば、200mg/cm
3から約250mg/cm
3まで、など、のタバコ密度を有するものとすることができる。例えば、タバコ密度は、約220mg/cm
3から約240mg/cm
3までであってもよい。タバコ円柱体は、約20mmから約30mmまでの円周、例えば、約23mmから約27mmまで、など、の円周を有するものとすることができる。
【0068】
図1及び
図2に描かれている実施形態では、処理区域18は、円周横断方向の帯24として画定されている。帯24は、シガレット10の長さに沿って長手方向に互いから離間されている。帯24は、
図2にはシルエットで表示されている。但し、処理区域は、本質的に、
図1示されている様に形成されたシガレット中に視認できない。言い換えれば、喫煙者が巻装材は個別の区域18を処理されているということを何らかの外向標示から見極めるということはない。これに関し、処理区域18は本質的に区域28と同じ滑らかで平坦な肌理を有していよう。
【0069】
帯24の幅及び間隔は、巻装材14の初期通気度、タバコ円柱体12の密度、など、の様な数多くの変数に依存する。帯24は、酸素が火種に対して火種を消すのに十分な時間の長さ又は期間に亘って制限される幅を有しているのが好適である。言い換えれば、帯24が細すぎると火種は自己消火する前に帯24を通って燃焼してしまうことになる。殆どの適用では、3mmの最小帯幅が望ましい。例えば、帯幅は、約4mmから約10mmまでとすることができる。
【0070】
帯24の間の間隔も数多くの変数のうちの一因子である。間隔は、火種が常に処置区域18の中へ燃焼してゆく前にシガレットが基板を発火させるほどの長さに亘って燃焼してしまうような広さであってはいけない。帯24の間の間隔は、火種の熱慣性、即ち、火種が自己消火することなく処理された帯24を通って燃焼してゆく能力、に影響する。試験されたシガレットでは、出願人は、5mmから50mmの間の帯の間隔(隣り合う着火低減区域の縁同士の間の距離)が適切であること、厳密には約10mmから40mmの間が適切であることを見いだした。但し、帯の間隔はいくつもの数の変数によって判断された何れかの適当な幅とすることができるものと理解しておきたい。殆どの適用について、喫煙品は上記間隔を使用する1つから約3つの帯を含むものとすることができる。
【0071】
一般的に、何れの適当な着火低減組成物が紙ウェブ14へ塗工されてもよい。1つの実施形態では、例えば、着火低減組成物は膜形成材料を含有している。例えば、本発明に従って使用することのできる膜形成材料には、アルギン酸塩、ガーゴム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチルセルロースやメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースの様なセルロース誘導体、スターチ、スターチ誘導体、など、が含まれる。
【0072】
1つの具体的な実施形態では、膜形成材料は、アルギン酸塩を単独で又はスターチと組み合わせて備えていてもよい。一般的に、アルギン酸塩は、酸性多糖類又はガムの誘導体であって、Phaeophyceae即ち褐藻類中の不溶混合カルシウム、ナトリウム、カリウム、及びマグネシウム塩として起こる誘導体である。一般的にいうと、これらの誘導体は、様々な割合のD−マンヌロン酸及びL−グルロン酸から成る高分子量多糖類のカルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及び/又はマグネシウム塩である。アルギン酸の代表的な塩又は誘導体には、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、及び/又はそれらの混合物が含まれる。
【0073】
1つの実施形態では、比較的低い分子量のアルギン酸塩が使用されてもよい。例えば、アルギン酸塩は、25℃の水溶液に3重量%含有されているときに約500cPより小さい粘度を有していてもよい。より厳密には、アルギン酸塩は、上記条件で250cPより小さい粘度、厳密には100cPより小さい粘度を有していてもよく、1つの実施形態では、約20−60cPの粘度にある。ここでの使用に際し、粘度は、粘度に基づく適当なスピンドルを備えたBrookfield LVF粘度計によって確定されている。上記低粘度レベルでは、アルギン酸塩組成物はより高い固形成分含有量に形成されているが、なおも従来の技法を使用しての組成物の巻装紙への塗工を許容するだけの低い溶液粘度にある。例えば、本発明に従って作られるアルギン酸塩溶液の固形成分含有量は、約6重量%より大きい、厳密には約10重量%より大きい、より厳密には約10重量%から約20重量%まで、とすることができる。
【0074】
上記固形成分レベルでは、本発明に従って使用されるアルギン酸塩組成物は、25℃で、約250cPより大きい溶液粘度、厳密には500cPより大きい溶液粘度、より厳密には約800cPより大きい溶液粘度、を有するものとすることができ、1つの実施形態では、約1,000cPより大きい粘度にある。一般的に、アルギン酸塩膜形成組成物の溶液粘度は、組成物を紙へ塗工する方式に依存して調節されればよい。例えば、組成物の溶液粘度は、組成物を紙の上へ噴霧するのか又は紙の上へ印刷するのかどうかに依存して調節することができる。
【0075】
他の実施形態では、適用に依っては比較的高い分子量のアルギン酸塩が使用されてもよい、ということも理解しておきたい。例えば、アルギン酸塩は、25℃の3重量%水溶液に含有されている場合、約500cPより大きい粘度を有していてもよい。
【0076】
膜形成材料に加え、巻装紙へ塗工される膜形成組成物は様々な他の成分を含有していてもよい。
【0077】
例えば、1つの実施形態では、組成物内には充填材が含有されている。充填材は、例えば、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、など、とすることができる。カルシウム化合物に加え、酸化マグネシウムの様なマグネシウム化合物、粘土粒子、など、を含む他の様々な粒子が使用されていてもよい。
【0078】
1つの実施形態での着火低減組成物は水性とすることができる。具体的には、着火低減組成物は、水性分散液又は水溶液を備えていてもよい。代わりに、着火低減組成物は、巻装紙へ塗工される前には、非水溶液又は非水性分散液を備えていてもよい。この実施形態では、例えば、組成物を巻装材へ塗工するためにアルコールが含まれていてもよい。
【0079】
膜形成組成物とは対照的に、着火低減組成物は更にセルロールスラリー(或る種の分散液)を備えていてもよい。ここでの使用に際し、製紙材料含有スラリーは膜形成組成物ではない。基板紙へ塗工されるセルローススラリーは、繊維質セルロース、1つ又はそれ以上の充填材、及び/又はセルロース粒子、を備えていてもよい。ここでの使用に際し、セルロール繊維及びセルロース粒子とは、カルボキシメチルセルロースの様な誘導体化されたセルロースとは区別されるべきである。例えば、セルロース繊維及びセルロール粒子は、水溶性ではない。1つの実施形態では、基板紙へ塗工されるセルローススラリーは微晶質セルロールを備えていてもよい。
【0080】
着火低減区域を形成するのに上述のセルロースが使用されてもよいが、これらの材料を使用した場合、幾つかの不都合が起こることもある。例えば、セルロース粒子の使用は本開示の利点及び恩恵の幾つかを実際に損なわないとも限らない。例えば、セルロース系スラリーの使用は、所望の低減された着火傾向特性でより高い通気度を有する処置区域を得る能力を損なう可能性がある。
【0081】
着火低減組成物が調合されたら、組成物は巻装紙の個別の区域に塗工されることになる。組成物を巻装紙へ塗工する方式は変えることができる。例えば、組成物は、紙の上へ、噴霧されてもよいし、刷毛塗りされてもよいし、可動オリフィスを用いて塗工されてもよいし、又は印刷されてもよい。処理区域を形成するために、組成物はシングルパス運転で塗工されてもよいし又はマルチパス運転で塗工されてもよい。例えば、組成物は、紙上に低減された着火傾向を有する区域を形成するために連続的な工程で巻装紙へ塗工されてもよい。一般的に、マルチパスプロセスでは、約2パスから約8パスまでの間、組成物を塗工することによって、処理区域を形成することができる。
【0082】
本開示によれば、
図2に描かれている区域28は燃焼促進剤で処理されている。具体的には、燃焼促進剤は処理区域18が燃焼促進剤を含まずに残された状態で区域28へ塗工される。
【0083】
燃焼促進剤の例には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びそれらの混合物が挙げられる。1つの実施形態では、燃焼促進剤は、カルボン酸の塩を備えていてもよい。具体例では、例えば、燃焼促進剤は、酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、グリコール酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、硝酸塩、リン酸塩、及びそれらの混合物、を備えていてもよい。1つの具体的な適用では、例えば、燃焼促進剤は、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸カリウム、コハク酸ナトリウム、又はそれらの混合物、を備えていてもよい。
【0084】
基板紙14上の区域28へ塗工される燃焼促進剤の量は、具体的な適用に依存して変えることができる。1つの実施形態では、例えば、燃焼促進剤は区域28へ、少なくとも約0.1重量%、例えば、少なくとも約0.3重量%、少なくとも0.5重量%、など、で且つ約5重量%未満、例えば、約2.5重量%未満、など、の量で塗工されてもよい。1つの実施形態では、燃焼促進剤は、約0.1重量%から約5重量%までの量で塗工されてもよく、例えば、約0.1重量%から約2.5重量%まで、0.5重量%から約2重量%まで、など、の量で塗工されてもよい。巻装紙へ塗工される燃焼促進剤の量は、巻装紙の総重量に基づいており、無水クエン酸又は対応する無水酸の重量に基づいている。
【0085】
基板紙へ適用される着火低減組成物の量も変えることができる。着火低減組成物を未処理の紙へ塗工することは、特に組成物が膜形成組成物を備えている場合、より少ない量の組成物が塗工されることを可能にする。例えば、組成物は、基板紙へ、約15重量%より少ない量で塗工でき、例えば、約10重量%より少ない、約8重量%より少ない、など、の量で塗工できる。一般的に、組成物は、着火低減区域内の組成物の重量に基づいて1重量%より多い量で塗工される。
【0086】
ここでの使用に際し、上記重量パーセントは、化学成分で処理されている区域に基づいている。言い換えれば、膜形成組成物又は燃焼促進剤についての上記重量パーセントは、巻装紙の表面全体に亘って塗工される総量とは対照的に処理区域内での塗工量である。
【0087】
本開示のプロセスを介し、比較的高い通気度を有し尚且つ比較的低い拡散係数を有する着火低減区域を作製することができる。例えば、着火低減区域に20コレスタより大きい通気度を持たせることができ、尚且つASTM試験E2187−09に少なくとも75%の時間で合格する喫煙品を作製することができる。
【0088】
1つの実施形態では、例えば、着火低減区域は、基板紙の通気度を、約85%しか下げない通気度を有し、例えば、約70%しか下げない、約65%しか下げない、約60%しか下げない、約55%しか下げない、約50%しか下げない、約45%しか下げない、約40%しか下げない、など、の通気度を有している。
【0089】
着火低減区域の通気度は、様々な要因、特に基板紙の通気度、に依存するものである。一般的に、着火低減区域は、約15コレスタより大きい通気度、例えば、約20コレスタより大きい、約25コレスタより大きい、約30コレスタより大きい、約35コレスタより大きい、約40コレスタより大きい、約45コレスタより大きい、など、の通気度であって、概して60コレスタより小さい通気度を有するものとすることができる。
【0090】
一般的に、着火低減区域は拡散係数が比較的低くなっている。拡散係数は、室温(23℃)で測定されている。一般的に、着火低減区域の23℃での拡散係数は、約0.5cm/sより小さく、例えば、0.4cm/sより小さい、0.3cm/sより小さい、など、である。1つの実施形態では、着火低減区域は、約0.1cm/sより大きい拡散係数、例えば、0.15cm/sより大きい、0.16cm/sより大きい、0.17cm/sより大きい、など、の拡散係数を有してはいるものの、なお所望の低減された着火傾向特性を有することができる。拡散係数はSodim CO
2拡散係数試験機を使用して測定される。
【0091】
着火低減区域の上記拡散係数特性は、着火低減区域が必須の低減された着火傾向特性を有しながらもより高い空気流量を有することを実証している。より大きい空気流量を有することによって、着火低減区域はより優良な主流性質を有することができる。例えば、着火低減区域内で生成される主流煙は、より低い一酸化炭素レベルを有することができる。加えて、着火低減区域によって生成される主流煙は、過去に作られた従来の帯無しシガレットと同様の送達を有することができる。究極的に、着火傾向特性の低減されたシガレットであって優れた主観的風味性質を有するシガレットを作製することができる。
【0092】
本開示の1つの代わりの実施形態では、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤が着火低減区域内に含まれているが、但し巻装材の残部に対比して引き下げられたレベルで含まれている。微量の1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を着火低減区域に添加することは様々な恩恵をもたらすことになる。例えば、微量の燃焼促進剤は巻装材を組み入れている喫煙品の灰特性を改善することができる。喫煙品によって発生する灰は、より凝集性があるものとなり、及び/又はより白くなる。微量の燃焼促進剤を着火低減区域内に添加することは、更に、喫煙品が吸われているときの巻装材の斑点又は変色を減少させる。上記利点は、高通気度及び空気流量増加を有する着火低減区域を作製する能力をなお持ちながら手に入れることができる。
【0093】
例えば、1つの実施形態では、着火低減区域は、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を、0.5重量%より少ない量で含有していてもよく、例えば、0.4重量%より少ない量、0.3重量%より少ない量、0.2重量%より少ない量、0.1重量%より少ない量、など、で含有していてもよい。着火低減区域内に含まれる場合、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤は着火低減区域へ0.05重量%より多い量、例えば約0.1重量%より多い量など、で添加されていてもよい。本開示によれば、着火低減区域間に配置されている燃焼促進区域中には、より多量の1つ又はそれ以上の燃焼促進剤が含まれている。例えば、燃焼加速区域中には1つ又はそれ以上の燃焼プロモータが0.5重量%より多い量で含まれていてもよく、例えば、0.6重量%より多い量、0.7重量%より多い量、0.8重量%より多い量、など、で含まれていてもよい。1つ又はそれ以上の燃焼促進剤は、燃焼加速区域中に、5重量%より少ない量、例えば2重量%より少ない量など、で含ませることができる。
【0094】
1つの実施形態では、着火低減区域中に含有される燃焼促進剤の量は、燃焼加速区域中に含有される燃焼促進剤の量の約5%から約60%まで、例えば、約10%から約30%まで、など、である。
【0095】
上述の実施形態では、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤は微量が巻装紙の表面全体へ塗工されてもよい。例えば、1回目の連続した被覆が巻装紙へ約0.05重量%から約0.5重量%までの量で、例えば約0.1重量%から約0.3重量%までの量などで、塗工されてもよい。次いでより多い量の1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を巻装材の着火低減区域の間に塗工すればよい。この方式では、着火低減区域は燃焼加速区域に対比して有意に少ない量の燃焼促進剤を含有する。
【0096】
以上に説明されている様に、1つの実施形態では、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤の比較的薄い被覆が巻装材へ連続様式で塗工されている。また一方、或る代わりの実施形態では、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤は、最初に、処理区域と未処理区域を含んでいる或るパターンの形態で巻装材へ塗工されている。パターンは、燃焼加速区域内に含有される燃焼促進剤の量について、上述の範囲に収まるように、調整が取られればよい。
【0097】
図3を参照すると、本開示に従って作られた喫煙品の別の実施形態が描かれている。同様の要素を表すのに類似の符号が使用されている。
【0098】
示されている様に、喫煙品10は、基板紙を備える巻装材14によって取り囲まれているタバコの円柱体12を含んでいることが描かれている。巻装材14はタバコの円柱体12をフィルタ26へ付着している。
【0099】
本開示によれば、巻装材14は、着火傾向特性の低減された喫煙品を提供する着火低減区域18を含んでいる。着火低減区域18は、一切の下層化学処理無しに巻装材14へ直に塗工されている。例えば、着火低減区域18は何れの燃焼促進剤も含んでいない。
【0100】
代わりに、以上に説明されている様に、微量の1つ又はそれ以上の燃焼促進剤が着火低減区域18内に含まれていてもよい。
【0101】
巻装材14は、更に、区域28を燃焼促進剤で処理されている。示されている様に、区域28は、着火低減区域18の前、間、及び後に設けられている。燃焼促進剤は、燃焼速度を制御し灰特性を改善するために巻装材へ塗工されている。
【0102】
図3に描かれている実施形態では、巻装材14は、更に、バリア領域又は未処理区域50を含んでいる。未処理区域50は、燃焼促進剤で処理されている区域28と着火低減区域18の間に設けられている。
【0103】
少なくとも1つの未処理区域又はバリア領域50を巻装材14上に含めることによって、特定の実施形態では様々な利点及び恩恵が得られるものと確信している。描かれている実施形態では、例えば、火種は燃焼促進剤で処理されている区域28を通って燃焼してゆく。火種は次いでいったん未処理区域又はバリア領域に進入してから着火低減区域18に進入する。着火低減区域18から火種は次いで未処理区域50を通って燃焼した末に燃焼促進剤で処理されている区域28に進入してゆく。この方式では、燃焼速度は、火種が着火低減区域18に進入してゆく際に漸進的に遅くなる。未処理区域50の存在は、更に、主流煙に対する制御を提供することができ、全体として喫煙者にとって好ましいとされる風味を有する喫煙品を作製することができる。未処理区域又はバリア区域は、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を含んでいないか又は微量の1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を含有している。未処理区域又はバリア領域は、例えば、燃焼加速区域中に含有されているより少ない燃焼促進剤を含有している。
【0104】
未処理区域又はバリア領域を含ませることのもう1つの利点は、未処理区域又はバリア領域は燃焼促進剤が着火低減区域へ移入する可能性を抑えることになる、ということである。従って、未処理区域又はバリア領域は、燃焼抑制区域が1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を含んでいない又は燃焼促進剤を所望量だけ含有することを確実にするために使用することができる。
【0105】
未処理区域又はバリア領域は、製造者が本開示の巻装材を生産するのを支援することもできる。例えば、シガレット巻装材は典型的に高速で生産される。未処理区域又はバリア領域を含ませることによって、燃焼抑制組成物を紙の特定の場所へ塗工する場合の許容誤差を緩和することができる。具体的には、未処理区域又はバリア領域を含ませることによって、燃焼抑制区域を燃焼加速区域と重なり合わせてしまうこと無く巻装材を製造することがより容易になるはずである。
【0106】
未処理区域又はバリア領域50は、具体的な適用に依存して何れの適当な幅を有していてもよい。1つの実施形態では、例えば、未処理区域50は幅として、少なくとも0.1mm、例えば、少なくとも0.5mm、少なくとも1mm、などであって、但し約10mm未満、例えば、約7.5mm未満、約5mm未満、約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1.5mm未満、など、の幅を有していてもよい。1つの実施形態では、処理区域又はバリア領域50は、約0.1mmから約4mmまで、例えば約0.5mmから約2.0mmまでなど、の幅を有していてもよい。
【0107】
図3に示されている巻装材14を生産する場合、1つの実施形態では、未処理の巻装材が印刷工程を通して送られてもよい。印刷プロセスは複数のステーションを含んでいてもよい。1つのステーションが燃焼促進剤を印刷して区域28を作製し、その間に、第2のステーションを使用して着火低減区域18が作製されるようになっていてもよい。異なった印刷ステーションは、基板紙の一部の特定の区域を未処理のまま残し、而して未処理区域50を形成させるために、互いに整列されていてもよい。
【0108】
或る代わりの実施形態では、印刷プロセスは追加の印刷ステーションを含んでいてもよい。この実施形態では、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤の薄い層が連続被覆か又は不連続被覆のどちらかとして巻装材へ塗工される。1つ又はそれ以上の燃焼促進剤は、上述の量の様な比較的僅かな量で塗工される。具体的には、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤は、約0.1重量%から約0.4重量%の量で塗工されてもよい。この実施形態では、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤は未処理区域50及び着火低減区域18に含まれている。燃焼加速区域28には、追加の印刷工程に因り、より多い量の1つ又はそれ以上の燃焼促進剤が含まれている。
【0109】
図3には、未処理区域又はバリア領域50は帯の形状で示されている。しかしながら、未処理区域又はバリア領域50は何れの適当な形状を有していてもよい。例えば、直線状の帯に代えて、未処理区域又はバリア領域はアーチ形状の縁を有していてもよい。
【0110】
以上に説明されている様に、1つの実施形態では、未処理区域又はバリア領域50及び着火低減区域18は、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を、燃焼加速区域に対比して相対的に僅かな量で含有することができる。1つの実施形態では、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤が未処理区域又はバリア領域内には含まれているのに対し、着火低減区域は何れの燃焼促進剤も含んでいない、ということもある。更に別の実施形態では、1つ又はそれ以上の燃焼促進剤が着火低減区域には含まれているのに対し、未処理区域は1つ又はそれ以上の燃焼促進剤を含んでいない、ということもある。
【0111】
本開示により作られる巻装材は、ひとたび喫煙品へ組み入れられたら、喫煙品の着火傾向特性を低減するうえで大変都合よくできている。例えば、本開示に従って作られる喫煙品は、少なくとも約75%のASTM試験番号E2187−09(シガレット鎮火試験)合格評定を有することができ、例えば、少なくとも約80%、少なくとも約90%、更には100%、など、の合格評定を有することができる。加えて、その様な喫煙品は、更に、約50%未満の自由大気自己消火(FASE)評定、例えば、約30%未満、約20%未満、更には10%未満、など、の評定を有することができる。
【0112】
本開示は次の実施例を参照すると更に深く理解されるであろう。
【実施例】
【0113】
実施例1
本開示の教示の幾つかを実証するべく以下の試験を行った。本実施例では、商業的に入手可能な低着火性(LIP)シガレット巻紙を本開示により作られた巻装材と比較した。商業的に入手可能な巻装材をその全表面積に亘ってクエン酸塩で均一に処理した。次いで着火低減組成物の帯を巻装材へ塗工した。比較上、燃焼促進剤を着火低減帯の間だけに塗工した巻装材を構築した。着火低減帯は、アルギン酸塩を巻装材へ塗工することによって形成した。
【0114】
市販紙は60CUの通気度を有し、0.8%混合クエン酸塩で処理した。基板紙は比較的均一な量の繊維及び充填材(炭酸カルシウム)を含有した。
【0115】
対照的に、本開示により作られた検体の帯は、燃焼促進剤を含んでいない領域へ適用された。
【0116】
上述のそれら巻装材をシガレットへ形成した。使用したタバコは、約240mg/ccの密度の標準的アメリカンブレンドであった。
【0117】
下表は、商業的に入手可能な紙(比較検体1及び比較検体3)と本開示の紙(検体2及び検体4)の間の性質の比較を示している。
【0118】
以下の試験結果の幾つかを得るために、喫煙品又はシガレットを喫煙機械の中へ設置した。Borgwaldt型番RM20キット喫煙機械を使用した。2mmx15mmヘッドを使用するBorgwaldt通気度試験機型番A10を使用して通気度を測定した。Sodim CO
2拡散係数計を使用して拡散係数(拡散容量D
*)を測定した。
【0119】
【表1】
【0120】
以上に示されている様に、本開示により作られた喫煙品は比較紙を凌いだ。主な違いは、(1)はるかに高い帯通気度、及び(2)等しい吹かし回数でより低いタール、ニコチン、及びCOの送達、であった。更に、ASTMはどちらの喫煙品についても90%より上であり、よって、LIP性能には何らの目立った低下もなかった。
【0121】
従って、検体2及び検体4は、商業的に入手可能なシガレット巻紙に関連する多数の欠点を、優良なLIP性能を維持しながらに軽減した。
【0122】
以上に示されている様に、本開示により作られた検体は、優秀な低減された着火特性(ASTM試験)を維持しながらも有意に高い帯通気度を有していた。本開示により作られた巻装材は、更に、室温でのより高い拡散係数を有しており、そのことは、更に、より優良な空気流量性質を示唆している。
【0123】
実施例2
更なる巻装材を構築し、上記実施例1に記載の試験の幾つかに従って試験した。この実施例では、下記検体5をその全表面積に亘ってクエン酸カリウムで均一に処理した。次いで着火低減組成物の帯を巻装材へ塗工した。帯はアルギン酸塩組成物から作った。巻装紙は、軟木繊維と硬木繊維と充填材の混合物から作った。
【0124】
下記検体6は、着火低減帯中に燃焼促進剤を何も含まなかった。加えて、巻装材は各着火低減帯の前と後に未処理区域を含んだ。未処理区域は何れの燃焼促進剤も含んでおらず、0.25mmの幅を有した。
【0125】
巻装材を使用してシガレットを作製した。標準的アメリカンブレンドをタバコ充填材として使用した。検体5と検体6が大凡同じASTM評定及びFASE評定を有するようにシガレットを構築した。
【0126】
以下の試験結果の幾つかを得るために、喫煙品又はシガレットを喫煙機械の中へ設置した。Borgwaldt喫煙機械型番RM04を使用した。Borgwaldt CO−分析器型番C21を使用して一酸化炭素結果を得た。
【0127】
次の結果が得られた。
【0128】
【表2】
【0129】
以上に示されている様に、検体6は検体5よりも有意に高い帯通気度を有した。この実施例では、一酸化炭素は帯付き領域で測定された。具体的には、シガレットを喫煙機械の中へ設置し、帯付き領域内の吹かしを一酸化炭素について分析した。以上に示されている様に、本開示により作られた検体は、帯内の一酸化炭素に17%の減少を示した。
【0130】
帯付き区域を更に熱重量分析にかけた。TA Instruments社によって販売されている型番TGA Q50を使用してTGAプロットを得た。TGAプロットは
図4に描かれている。示されている様に、検体6はより高い温度で崩壊しており、着火低減区域は検体5よりも長い時間的期間に亘って無傷に保たれたことを意味している。
【0131】
実施例3
更なる巻装材を構築し、試験した。検体7を実施例2の検体5と同様に作った。検体8を実施例2の検体6と同様に作った。但し、検体8には未処理区域に2mmのギャップ幅を持たせた。
【0132】
検体9は本開示に従って作られたものであり、「2基調」クエン酸塩処理を含んでいる。検体9では、巻装材全体を最初に0.3重量%のクエン酸ナトリウムで処理した。次いで追加の0.8重量%クエン酸カリウムを着火低減帯間に塗工した。加えて、未処理領域又はバリア領域を2mmのギャップ幅を持たせて作成した。
【0133】
この実施例では、巻装材を、より低い通気度を有する巻装材を用いた場合と同様の23℃での帯拡散係数を持つように構築した。下記の結果を得た。
【0134】
【表3】
【0135】
以上に示されている様に、検体8及び検体9は、同じ帯拡散係数で有意に優良なASTM評定を有した。意外にも、検体9は検体8より優良なASTM評定及びFASA評定を有した。
【0136】
巻装材から作られたシガレットを、目視観察のためのみに喫煙機械の中へ設置した。シガレットが機械に入っている間、検体8の巻装材は検体9により作られた巻装材に対比して顕著な量の染みを生じさせた。
図5A及び
図5Bは、シガレットを喫煙機械に吸わせた際の代表的な図画である。
図5Aは、検体8の巻装材で作られたシガレットを表しているのに対し、
図5Bによって示されているシガレットは検体9の巻装材で作られた。それらの図を比較することによって示される様に、
図5Bの巻装材は、喫煙中、
図5Aに描かれている巻装材ほど多くの染みを巻装材上に発生させなかった。染みの低減化は、帯付き領域の微量の燃焼促進剤の存在に因り起こったものと確信している。
【0137】
本発明に対するこれら及び他の修正又は変型が、付随の特許請求の範囲により具体的に示されている発明の精神及び範囲から逸脱すること無く当業者によって実践されることであろう。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的にも、また部分的にも、置き換えることができる。また、当業者には、上記説明は単に一例であり、本発明を付随の特許請求の範囲に更に記載されているように限定しようとするものではないことが認識されよう。
【符号の説明】
【0138】
10 喫煙品(シガレット)
12 タバコ円柱体
14 巻装材
16 巻装材の外周面
18 巻装材の着火低減組成物で処理されている区域
24 帯
26 フィルタ
28 巻装材の燃焼促進剤で処理されている区域
50 巻装材の未処理区域又はバリア領域