(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335215
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】市場深度の直観的グリッド表示を有するクリックに基づく取引
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/04 20120101AFI20180521BHJP
【FI】
G06Q40/04
【請求項の数】37
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-103424(P2016-103424)
(22)【出願日】2016年5月24日
(62)【分割の表示】特願2014-133568(P2014-133568)の分割
【原出願日】2001年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-177833(P2016-177833A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2016年6月3日
(31)【優先権主張番号】60/186,322
(32)【優先日】2000年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】09/590,692
(32)【優先日】2000年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502317459
【氏名又は名称】トレーディング テクノロジーズ インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】ギャリー・アラン・ケンプ
(72)【発明者】
【氏名】イェンス−ウーヴェ・シュリュッター
(72)【発明者】
【氏名】ハリス・ブラムフィールド
【審査官】
山本 雅士
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第98/013778(WO,A1)
【文献】
次期先物オプション売買システム参加者説明会資料,日本,東京証券取引所業務システム部,1997年 9月,p1−18
【文献】
東京証券取引所業務システム部,先物/オプション売買システム 取引用端末操作要領,日本,東京証券取引所業務システム部,1998年 8月,7-17,7-21〜22,7-25〜26,9-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引注文の入力を促進する方法であって、
コンピューティングデバイスによって、商品に関する市場データを受信するステップ、ここで、市場データは、商品について利用可能な現在の最高のビッド価格および最低のアスク価格を含む、
コンピューティングデバイスによって、市場データに基づいて、商品に関する複数の連続的な価格レベルを特定するステップ、ここで、複数の連続的な価格レベルは、現在の最高のビッド価格および最低のアスク価格を含む、
コンピューティングデバイスによって、価格軸に沿って複数のグラフィカル位置を表示するステップ、ここで、それぞれのグラフィカル位置は、ユーザ入力デバイスの単一アクションによって選択されると、電子取引所に取引注文を送信するように構成され、その取引注文の価格は、選択されたグラフィカル位置に基づくものである、
コンピューティングデバイスによって、複数の連続的な価格レベルを複数のグラフィカル位置にマッピングするステップ、ここで、それぞれのグラフィカル位置は複数の連続的な価格レベルのうちの1つの価格レベルに対応し、それぞれの価格レベルは複数のグラフィカル位置のうちの少なくとも1つに対応し、現在の最高のビッド価格および最低のアスク価格のうちの少なくとも1つが変化しても、価格レベルのマッピングは変更されない、
コンピューティングデバイスによってユーザアクションに基づくコマンドを受信することに応じて、価格を設定し、電子取引所に取引注文を送信するステップ、ここで、ユーザアクションは、(1)ユーザ入力デバイスに関連付けられたカーソルを複数のグラフィカル位置のうちの所望のグラフィカル位置に配置すること、(2)ユーザ入力デバイスの単一アクションを通じて所望のグラフィカル位置を選択すること、からなる、
方法。
【請求項2】
複数の連続的な価格レベルは、現在の最高のビッド価格および最低のアスク価格のうちの少なくとも1つを含まなくなっている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、
1つのグラフィカル位置が現在の最高のビッド価格に対応し、別の1つのグラフィカル位置が現在の最低のアスク価格に対応するように、複数のグラフィカル位置に対する複数の連続的な価格レベルのマッピングを変更するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
複数の連続的な価格レベルは、現在の最高のビッド価格および最低のアスク価格を含まなくなっている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに、
複数のグラフィカル位置のうちの少なくとも1つが現在の最高のビッド価格又は最低のアスク価格に対応するように、複数のグラフィカル位置に対する複数の連続的な価格レベルのマッピングを変更するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
さらに、
コンピューティングデバイスによって手動の再センタリングコマンドを受信することに応じて、複数のグラフィカル位置に対する複数の連続的な価格レベルのマッピングを変更するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
さらに、
コンピューティングデバイスによって手動の再センタリングコマンドを受信しない限り、複数のグラフィカル位置に対する複数の連続的な価格レベルのマッピングを変更しないように制御するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さらに、
コンピューティングデバイスによって再センタリングコマンドを受信することに応じて、複数のグラフィカル位置に対する複数の連続的な価格レベルのマッピングを変更するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
再センタリングコマンドは、手動の再センタリングコマンドからなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、
所定期間、複数のグラフィカル位置に対する複数の連続的な価格レベルのマッピングを維持するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
さらに、
コンピューティングデバイスによって再センタリングコマンドを受信しても、複数のグラフィカル位置に対する複数の連続的な価格レベルのマッピングを維持するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
さらに、
複数のグラフィカル位置が垂直に表示されるように、価格軸を垂直に配置するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
さらに、
コンピューティングデバイスによって、複数のグラフィカル位置のうちの1つの位置に第1のインジケータを表示するステップ、ここで、第1のインジケータは、現在の最高のビッド価格で商品を買う少なくとも1つの注文に関連する数量を表す、
コンピューティングデバイスによって、複数のグラフィカル位置のうちの1つの位置に第2のインジケータを表示するステップ、ここで、第2のインジケータは、現在の最低のアスク価格で商品を売る少なくとも1つの注文に関連する数量を表す、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
さらに、
複数の連続的な価格レベルに対して異なるグラフィカル位置に第1のインジケータを移動させるステップ、ここで、移動後のグラフィカル位置は、新たな最高のビッド価格に対応する、
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
さらに、
複数の連続的な価格レベルに対して異なるグラフィカル位置に第2のインジケータを移動させるステップ、ここで、移動後のグラフィカル位置は、新たな最低のアスク価格に対応する、
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
さらに、
コンピューティングデバイスによって、複数のグラフィカル位置のうちの1つの位置にインジケータを表示するステップ、ここで、インジケータは、現在の最高のビッド価格で商品を買う少なくとも1つの注文に関連する数量を表す、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
さらに、
コンピューティングデバイスによって、複数のグラフィカル位置のうちの1つの位置にインジケータを表示するステップ、ここで、インジケータは、現在の最低のアスク価格で商品を売る少なくとも1つの注文に関連する数量を表す、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
さらに、
複数のグラフィカル位置の第1のナンバーをビッド表示領域に表示するステップ、ここで、取引注文は、所望のグラフィカル位置がビッド表示領域で選択された場合には買い注文となる、
複数のグラフィカル位置の第2のナンバーをアスク表示領域に表示するステップ、ここで、取引注文は、所望のグラフィカル位置がアスク表示領域で選択された場合には売り注文となる、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
単一アクションは、ユーザ入力デバイスの単一クリックからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
単一アクションは、ユーザ入力デバイスのダブルクリックからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
さらに、
商品を買う又は売る取引注文を電子取引所に送信するステップ、
動作中注文インジケータを表示するステップ、ここで、動作中注文インジケータは、電子取引所で係属中の商品を買う又は売る取引注文を表す、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
さらに、
複数の連続的な価格レベルを動作中注文表示領域における複数のグラフィカル位置に表示およびマッピングするステップ、
動作中注文インジケータを動作中注文表示領域における複数のグラフィカル位置のうちの1つの位置に表示するステップ、ここで、当該1つの位置は、商品を買う又は売る取引注文の価格に対応する、
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
さらに、
ユーザ入力デバイスのポインタを動作中注文インジケータ上に配置することによるユーザ入力デバイスの単一アクションを通じて動作中注文インジケータを選択することに応じて、電子取引所で係属中の取引注文を削除するコマンドを受信するステップ、
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
動作中注文インジケータを選択する単一アクションは、ユーザ入力デバイスの単一クリックからなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
動作中注文インジケータを選択する単一アクションは、ユーザ入力デバイスのダブルクリックからなる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
さらに、
デフォルト数量パラメータを受信するステップ、ここで、取引注文は、デフォルト数量パラメータに基づく数量に関するものである、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
デフォルト数量パラメータは、価格の設定および電子取引所への取引注文の送信の前に受信される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
複数の連続的な価格レベルを特定するステップはさらに、市場データに基づいて価格レベルを生成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
複数の連続的な価格レベルを特定するステップはさらに、市場データおよびチック値に基づいて価格レベルを生成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
複数の連続的な価格レベルは、電子取引所で現在ペンディング中の取引注文がない少なくとも1つの価格レベルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
複数の連続的な価格レベルのそれぞれは、電子取引所で現在ペンディング中である少なくとも1つの取引注文を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
さらに、
コンピューティングデバイスによって、複数の連続的な価格レベルを複数のグラフィカル位置に並べて表示するステップ、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
複数のグラフィカル位置のそれぞれは、グリッドのグラフィカルセルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
複数のグラフィカル位置は、第1のカラムに表示される第1の複数のグラフィカル位置と、第2のカラムに表示される第2の複数のグラフィカル位置とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
コマンドは、1つ又は複数の命令を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか1つに記載の方法をコンピューティングデバイスに実行させる命令を記憶した、コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項37】
請求項1から35のいずれか1つに記載の方法をコンピューティングデバイスに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本出願は、2000年3月2日出願の「市場深度表示のクリックによる取引及びマーキュリー表示」(Market Depth Display Click Based Trading and Mercury Display)という名称の米国仮特許出願に対する優先権を主張し、この出願の内容は、言及することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、商品の電子取引を対象とする。具体的には、本発明は、取引を実行するための汎用性のある効率的なツールをトレーダに提供する。本発明は、商品に取引量および/または価格で取引することが可能なあらゆるものが含まれる商品の市場取引深度内で取引注文を表示し、迅速に取引注文をエントリするのを容易にする。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
世界中で少なくとも60の取引所が、株式、債権、先物、オプション、およびその他の商品を取引するため、様々な度合いで電子取引を利用している。これらの電子取引は、次の3つの構成要素に基づく。メインフレーム・コンピュータ(ホスト)、通信サーバ、および取引参加者のコンピュータ(クライアント)。ホストは、完全にコンピュータ化された電子取引システムの電子的中心部を形成する。システムの動作は、注文を照合すること、注文簿および持高を維持すること、価格情報、ならびにオンライン取引日および夜間バッチ処理に関してデータベースを管理し、更新することをカバーする。また、ホストは、相場ベンダおよびその他の価格情報システムに対する不断のオンライン・コンタクトを維持する外部インターフェースを備えている。
【0004】
トレーダは、次の3つのタイプの構造を介してホストにリンクすることができる。高速データ回線、高速通信サーバ、およびインターネット。高速データ回線は、クライアントとホストの間で直接接続を確立する。トレーダが物理的に位置する場所で世界中の戦略的アクセス・ポイントに高速ネットワークまたは通信サーバを構成することにより、別の通信を確立することもできる。データは、専用の高速通信回線を介してトレーダと取引所の間で双方向で伝送される。ほとんどの取引参加者は、障害の可能性に備える安全措置として、取引所とクライアント・サイトの間、または通信サーバとクライアント・サイトの間に2つの回線を設置する。また、取引所の内部コンピュータ・システムも、しばしば、システム可用性を確保する冗長措置としてバックアップを装備している。第3の接続は、インターネットを利用する。この場合、取引所およびトレーダは、インターネットに接続された高速データ回線を介して通信をやり取りする。これにより、トレーダが、インターネットに対して接続を確立することができる場所であればどこにでも位置することが可能になる。
【0005】
接続が確立される仕方に関わらず、取引参加者のコンピュータにより、トレーダは、市場に参加することができる。トレーダは、自身のデスクトップ上に特化した対話式取引スクリーンを作成するソフトウェアを使用する。取引スクリーンにより、トレーダは、注文をエントリして実行し、市場相場を入手し、持高を監視することができるようになる。スクリーン上でトレーダが利用できる機能の範囲および品質は、実行される特定のソフトウェア・アプリケーションに応じて異なる。取引所の電子戦略の開発にオープン・インターフェースを設置することは、ユーザが、自身の取引スタイルおよび内部規定に応じて、自身が取引所にアクセスする手段を選択できることを意味する。
【0006】
世界の株式取引所、債権取引所、先物取引所、およびオプション取引所は、急速に変化し乱高下する商品を有する。これらの市場で利益を上げるには、トレーダは、迅速に反応することができなければならない。最も機敏なソフトウェア、最速の通信、および最も高度な分析手法を有する熟練したトレーダは、自分または自身の会社の総決算を相当に向上させることができる。ほんの僅かな速度の利点が、動きの速い市場で相当な利益を生む可能性がある。今日の証券市場では、技術的に進んだインターフェースを欠いているトレーダは、競争上ひどく不利な立場にある。
【0007】
市場に注文をエントリするのにトレーダがどのインターフェースを使用するかに関わらず、各市場は、すべてのトレーダに同じ情報を供給し、またすべてのトレーダに同じ情報を求める。市場における買いおよび売りが、市場データを構成し、取引所がこの情報を提供する場合、取引にログオンしたすべての人がこの情報を取得することができる。同様に、すべての取引所は、各注文にある情報が含められることを必要とする。例えば、トレーダは、商品の名称、取引量、制限、価格、および複数のその他の変量などの情報を供給しなければならない。この情報のすべてがなければ、市場は、その注文を受け付けない。情報のこの入力および出力は、すべてのトレーダに対して同じである。
【0008】
これらの変量が一定である場合、競争上の速度の利点は、取引サイクルのその他の態様からもたらされなければならない。所与の商品に関して取引注文をエントリするのにかかる時間を分析すると、様々なステップが、必要とされる全体の時間に対して異なる量で寄与している。注文をエントリするのにかかる全体の時間のおよそ8%が、商品に関する価格をホストが生成した時点とクライアントがその価格を受け取った時点の間に経過する。クライアント・アプリケーションが価格をトレーダに表示するのにかかる時間が、およそ4%に相当する。取引注文がホストに伝送されるのにかかる時間が、およそ8%に相当する。注文をエントリするのにかかる全体の時間の残りの部分、およそ80%は、トレーダが表示された価格を読み取り、取引注文をエントリするのに必要とされる時間に帰することが可能である。本発明は、取引サイクルの最も遅い部分の間、すなわち、トレーダが、手作業で自身の注文をエントリしている間に、相当な利点を提供する。この部分における時間の節約の価値が、年に数百万ドルにも相当する可能性があることをトレーダは、理解している。
【0009】
既存のシステムでは、注文が市場に送られるのに先立って、注文の複数の要素が入力されなければならず、このことは、トレーダにとって時間がかかる。そのような要素には、商品記号、所望の価格、取引量、ならびに買い注文が所望されているのか、売り注文が所望されているのかが含まれる。トレーダが注文をエントリするのに時間がかかるほど、トレーダが買いたい価格、売りたい価格が市場で変化する、または利用できない可能性が高くなる。多数のトレーダが市場に同時に注文を送っているため、市場は流動的である。実際、成功している市場は、注文をエントリすることを望むどのトレーダも照合を見出し、注文が、即時ではないにしても迅速に満たされるような高い出来高を有するように努力する。そのような流動的な市場では、商品の価格は、急速に変動する。取引スクリーン上で、このことは、市場グリッド内の価格フィールドおよび取引量フィールドの急速な変化をもたらす。トレーダが、特定の価格で注文をエントリしようとするが、注文をエントリすることができる前に市場価格が動いたためにその価格を逸した場合、そのトレーダは、数百ドル、数千ドル、さらには数百万ドルを失う可能性がある。トレーダが取引できる速度が速いほど、トレーダが、自身の価格を逸する可能性が低くなり、また儲ける可能性が高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(発明の概要)
本発明者は、既存の取引システムの欠点を克服し、取引所において電子取引を行っているときにトレーダが取引を発注するのにかかる時間を劇的に短縮する本発明を開発した。これにより、トレーダの注文が所望の価格および所望の取引量で満たされる可能性が高まる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による「マーキュリー」表示及び取引方法は、垂直平面上または水平平面上に市場深度を表示することにより、取引の高速で正確な実行を確実にし、市場深度は、市場価格が変動するのにつれて平面全体を上下、左右に論理に従って変動する。これにより、トレーダは、迅速かつ効率的に取引を行うことができる。
【0012】
具体的には、本発明は、市場で取引される商品の市場深度を表示するためのグラフィカル・ユーザ・インターフェースを対象とし、商品に対する市場における複数の買値および複数の呼値に関する動的表示、ならびに複数の買値および複数の呼値に対応する価格の静的表示を含む。この実施形態では、複数の買値および複数の呼値が、それに対応する価格と整列して動的に表示される。また、本明細書では、そのような表示を使用して取引注文をエントリするための方法およびシステムも説明する。
【0013】
これらの実施形態、および本明細書でより詳細に説明するその他の実施形態は、電子取引において商品に関する取引注文をエントリする際、したがって、取引注文を実行する際により高い効率およびより高い汎用性をトレーダに提供する。本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から当分野の技術者には明白となる。ただし、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示してはいるが、例として提供され、限定するものではないことを理解されたい。本発明の趣旨を逸脱することなく、本発明の範囲内で多くの変形および変更を行うことが可能であり、本発明は、すべてのそのような変更形態を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】複数の取引所とクライアント・サイトの間のネットワーク接続を示す図である。
【
図2】取引されている所与の商品の内部市場および市場深度を示すスクリーン表示を示す図である。
【
図3】本発明の「マーキュリー」表示を示す図である。
【
図4】
図3と比較して後の時点における値の動きを示す「マーキュリー」表示を示す図である。
【
図5】「マーキュリー」取引方法を例示するために設定されたパラメータを有する「マーキュリー」表示を示す図である。
【
図6】「マーキュリー」表示及び取引のためのプロセスを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
添付の図面に関連して説明するとおり、本発明は、垂直平面上または水平平面上に市場深度を表示することによって取引の高速で正確な実行を確実にする表示及び取引方法を提供し、市場深度は、市場価格が変動するにつれて平面全体を上下、左右に論理に従って変動する。これにより、トレーダは、迅速かつ効率的に取引注文をエントリすることができる。商品の市場深度は、市場における現在の買値および呼値、ならびに買いの取引量および売りの取引量である。本発明の表示及び取引方法は、トレーダが、所望の価格および取引量で注文を実行することができる可能性を高める。
【0016】
好ましい実施形態では、本発明は、コンピュータ上または電子端末上で実施される。コンピュータは、取引所と直接または間接に(中間デバイスを使用して)通信して、市場情報、商品情報、および取引注文情報を受信および送信することができる。コンピュータは、トレーダと対話し、取引所に送信される取引注文の内容および特性を生成することができる。本発明のシステムは、本明細書で説明する機能を行う処理能力を備えた任意の既存の、または将来の端末上またはデバイス上に実装できるものと想定されている。本発明の範囲は、使用する端末またはデバイスのタイプで限定されるものではない。さらに、本明細書は、端末表示に対するユーザ入力およびユーザ対話のための手段としてマウスの単一回のクリックをユーザの単一のアクションの例として記載している。これは、対話の好ましいモードを説明するが、本発明の範囲は、入力デバイスとしてマウスの使用に限定されることも、ユーザの単一のアクションとしてマウス・ボタンのクリックに限定されることもない。反対に、マウス・ボタンまたはその他の入力デバイスの1回のクリックを含むか、または複数回のクリックを含むかに関わらず、短い期間中のユーザによる任意のアクションが、本発明ではユーザの単一のアクションと見なされる。
【0017】
システムは、単一の取引所において取引を可能にする、または複数の取引所において同時に取引を可能にするように構成することができる。複数の取引所との本発明のシステムの接続を
図1に示している。この図は、ルータ104〜106を介してゲートウェイ107〜109に接続された複数の主取引所101〜103を示している。取引ステーションとして使用するための複数のクライアント端末110〜116が、ゲートウェイ107〜109に対する自らの接続を介して複数の取引所において取引を行うことができる。システムが、複数の取引所からデータを受信するように構成されている場合、好ましい実施形態は、様々な取引所からのデータを単一の形式に変換することである。この「変換」機能を
図1に関連して以下に説明する。アプリケーション・プログラム・インターフェース(図に描いた「TT API」)が、異なる取引所からの着信データ形式を単一の好ましいデータ形式に変換する。この変換機能は、ネットワークの中の任意の場所に配置することができ、例えば、ゲートウェイ・サーバに、個々のワークステーションに、またはゲートウェイ・サーバと個々のワークステーションの両方に配置することができる。さらに、ゲートウェイ・サーバにおける記憶装置およびクライアント・ワークステーションにおける記憶装置、および/またはその他の外部記憶装置が、市場におけるクライアントのアクティブな注文、つまり、満たされても、取消されてもいない注文をリストする注文簿などの過去のデータをしまっておく。異なる取引所からの情報をクライアント・ワークステーションにおいて1つのウィンドウで表示する、または複数のウィンドウで表示することが可能である。したがって、本明細書の以降では取引端末が接続されている単一の取引所に言及するが、本発明の範囲は、本明細書で説明する取引方法に従い、単一の取引端末を使用して複数の取引所において取引を行う能力を含む。
【0018】
本発明の好ましい実施形態は、「市場深度」の表示を含み、トレーダが、商品の市場深度を閲覧し、その市場深度の中で取引をコンピュータ・マウス・ボタンの単一回のクリックで実行することができるようにする。市場深度は、市場における現在の買値および呼値、ならびに買いの取引量および売りの取引量を有する注文簿を表す。言い換えれば、市場深度は、内部市場に加え、以下に記載する制限を受ける市場に入札されたそれぞれの買いおよび売りである。取引される商品に関して、「内部市場」とは、最高の買値および最低の呼値である。
【0019】
取引所は、その取引所における各トレーダに価格情報、注文情報、およびエントリ情報を送信する。本発明は、この情報を処理し、簡単なアルゴリズムおよびマッピング・テーブルを介して、またはスクリーンにデータをマップする他の任意の同等のマッピング技法を介して、理論グリッド・プログラムの中の位置に情報をマップする。スクリーン・グリッドに対するそのような情報の物理マッピングは、当分野の技術者に周知の任意の技法で行うことができる。本発明は、データをスクリーン表示にマップするのに使用する方法で限定されるものではない。
【0020】
本発明がどれだけの市場深度まで表示できるかは、どれだけの市場深度を取引所が提供するかに依存する。いくつかの取引所は、無限の市場深度を供給し、一方、他の取引所は、全く市場深度を提供しないか、または内部市場から数次までの深度しか提供しない。また、本発明のユーザは、どれだけの市場深度まで自身のスクリーン上に表示するかを選択することができる。
【0021】
図2は、 に出願された出願番号 の「市場深度表示によるクリック・ベース取引」(Click Based Trading with Market Depth Display)という名称の本出願の所有者によって共通に所有される同時係属出願で説明される発明のスクリーン表示を示し、この同時係属出願の内容は、言及することにより本明細書に組み込まれる。この表示は、取引される商品の内部市場および市場深度を示している。行1は、最良の(最高の)買値およびその取引量、ならびに最良の(最低の)呼値およびその取引量である商品に関する「内部市場」を表している。行2〜5は、取引される商品に関する「市場深度」を表している。本発明の好ましい実施形態では、市場深度の表示(行2〜5)は、提供される次善の買いを列203の中に、売りを列204の中にリストしている。また、各価格レベルに対する有効な買いの取引量および有効な売りの取引量もそれぞれ、列202および205の中に表示されている(内部市場−行1)。内部市場および市場深度に関する価格および取引量は、そのような情報が市場から中継されるにつれ、リアルタイムで動的に更新される。
【0022】
図2に示すスクリーン表示において、取引されている商品(契約)が、文字列「CDH0」によって行1の中に示されている。深度列208が、異なるカラーを表示することにより、ステータスをトレーダに知らせる。イエローは、プログラム・アプリケーションが、データを待っていることを示す。レッドは、市場深度が、サーバからデータを受信することに失敗し、「タイムアウト」になったことを示す。グリーンは、データが更新されたばかりであることを示す。この図およびその他のすべての図におけるその他の列の見出しは、次のとおり定義される。BidQty(Bid Quantity):各有効な買いに関する取引量、BidPrc(Bid Price):各有効な買いに関する価格、AskPrc(Ask Price):各有効な売りに関する価格、AskQty(Ask Quantity):各有効な売りに関する取引量、LastPrc(Last Price):市場で照合した最新の買いと売りに関する価格、およびLastQty(Last Quantity):最新の価格で取引された取引量。Totalは、所与の商品の取引された取引量を表す。
【0023】
スクリーン表示の構成自体が、既存のシステムよりも便利で効率的な仕方でユーザに通知を行う。トレーダは、市場深度を閲覧することによって相当な利点を得る。その理由は、トレーダが、市場における注文の動向を見ることができるからである。市場深度表示は、異なる価格レベルで市場が所与の商品に対して有する関心をトレーダに示す。大量の買いまたは売りが、市場においてトレーダの持高付近にある場合、トレーダは、内部市場が注文の泥沼に達する前に売る、または買うべきであると感じる可能性がある。内部市場を上回る、または下回る注文の欠如が、内部市場の付近で注文をエントリするようにトレーダに促す可能性がある。市場深度を見ることなしには、そのような戦略を全く利用することができない。動的市場深度が、取引される商品の買いの取引量および売りの取引量、ならびに買値および呼値を整列して、その商品の現在の内部市場の下に表示されることにより、直観的で容易に理解可能な仕方で情報がユーザに伝えられる。本発明の使用を介して、ユーザが、商品の取引の動向およびその他の関係のある特性をより容易に特定できる。
【0024】
様々な省略語がスクリーン表示で使用され、具体的には、本明細書に再現したスクリーン表示の列の見出しで使用される。いくつかの省略語は、前に説明した。一般的な省略語およびその意味のリストを表1に提供する。
【表1】
【0025】
本明細書で説明するとおり、本発明の表示及び取引方法は、
図2に示すような市場深度の表示が使用されるシステムに優るある利点をユーザに提供する。本発明の「マーキュリー」表示及び取引方法は、垂直平面上または水平平面上に市場深度を表示することによって取引の高速で正確な実行を確実にし、市場深度は、市場価格が変動するにつれて平面全体を上下、左右に論理に従って変動する。これにより、トレーダが、迅速で効率的に取引することが可能になる。そのような「マーキュリー」表示の例を
図3のスクリーン表示に示している。
【0026】
市場深度の表示、および市場深度の中でトレーダが取引を行う仕方は、多くのトレーダが実質的によりよく、より高速で、より正確であると感じる異なる仕方で実現することができる。さらに、いくらかのトレーダは、市場深度の表示が分かり難いと感じる可能性がある。
図2に示した表示では、市場深度が垂直に表示され、したがって、買値と呼値がともにグリッドを下降する。買値は、価格が下がるにつれて市場グリッドを下降する。また、呼値も、価格が実際に上昇するのにつれて市場グリッドを下降する。いくらかのトレーダは、この組み合わせを直観に反し、分かり難いと考える可能性がある。
【0027】
「マーキュリー」表示は、この問題を革新的で論理的な仕方で克服する。また、「マーキュリー」は、注文エントリシステム、市場グリッド、エントリウィンドウ、および市場注文の要約を1つの簡単なウィンドウの中で提供する。そのような凝縮された表示は、極めて効率的な仕方で取引をエントリし、追跡することによって取引システムを実質的に単純化する。「マーキュリー」は、市場深度を論理的に、垂直にまたは水平に、または他の何らかの好都合な角度または構成で表示する。便宜のために垂直フィールドを図に示し、説明しているが、フィールドは、水平であること、またはある角度にあることが可能である。「マーキュリー」は、取引の速度、ならびに所望の価格において所望の取引量で注文をエントリする可能性をさらに高める。本発明の好ましい実施形態では、「マーキュリー」表示は、価格の静的な垂直列であり、買いの取引量および売りの取引量が、価格の列の隣りの垂直列の中に表示され、対応する買値および呼値と整列される。この表示の例を
図3に示している。
【0028】
買いの取引量は、BidQとラベル付けされた列1003の中にあり、また売りの取引量は、AskQとラベル付けされた列1004の中にある。所与の商品に関する価格からの代表的ティック(tick)を列1005の中に示している。列は、価格全体(例えば、95.89)をリストせず、代りに、最後の2桁(例えば、89)だけをリストする。示した例では、内部市場は、セル1020で、89(最善の買値)において18(最善の買いの取引量)であり、90(最善の呼値)において20(最善の売りの取引量)である。本発明の好ましい実施形態では、これら3つの列は、異なるカラーで示され、トレーダが、それらの列を迅速に区別することができるようになっている。
【0029】
価格の列の中の値は、静的であって、再センタリングコマンドを受けない限り(後に詳細に説明する)、通常、変化しない。ただし、Bid列およびAsk列の中の値は、動的であって、所与の商品に関する市場深度を反映するように(垂直の例では)上下に動く。LTQ列1006は、商品の最新の取引量を示す。価格値に対する取引量値の相対ポジションが、その取引量が取引された価格を反映する。E/W(エントリされた/有効な)とラベル付けされた列1001が、トレーダの注文の現在のステータスを表示する。各注文のステータスは、エントリされた価格の行の中で表示される。例えば、セル1007の中で、Sの隣りの数字が、特定の行の中の価格において売却されたトレーダの注文したロットの数を示す。Wの隣りの数字は、市場にあるが、満たされていない、すなわち、システムがその注文を満たそうとしているトレーダの注文したロットの数を示す。この列の中のブランクは、その価格でエントリされた注文または有効な注文を示す。セル1008の中で、Bの隣りの数字は、その特定の行の中の価格において購入されたトレーダの注文したロットの数を示す。Wの隣りの数字は、市場にあるが、満たされていない、すなわち、システムがその注文を満たそうとしているトレーダの注文したロットの数を示す。
【0030】
様々なパラメータが設定され、情報が列1002において提供される。たとえば、セル1009の「10:48:44」は実際の時間を示す。セル1010のLおよびRフィールドは取引量の値を示し、これを、エントリ済の注文取引量に追加することができる。このプロセスを以下で、「マーキュリー」での取引に関して説明する。セル1011で、LおよびRフィールドの下に、現在の市場数量を表す数が表示される。これは、選択された契約について取引されているロットの数である。セル1012「X10」は正味取引量を表示し、これは選択された契約におけるトレーダの現在のポジションである。数「10」は、トレーダの買いから売りを差し引いたものを表す。セル1013は「現在取引量」であり、このフィールドは、トレーダが市場に送る次の注文の取引量を表す。これを左右のクリック(上および下)により、あるいはセル1014の「現在取引量」の下に表示されるボタンをクリックすることによって調整することができる。これらのボタンは現在取引量を、指示された量だけ増加させ、たとえば、「10」では10だけ増加させ、「1H」では100だけ増加させ、「1K」では1000だけ増加させる。セル1015は「クリア」・ボタンであり、このボタンをクリックすると「現在取引量」フィールドがクリアされる。セル1016は「取引量明細」であり、これは、トレーダが3つの「取引量明細」から選択することができるプル・ダウン・メニューである。このプル・ダウン・メニューは、ウィンドウの矢印ボタンがクリックされたときに表示される。ウィンドウには、「NetPos」、「オフセット」、およびトレーダが数を入力することができるフィールドが含まれる。数をこのフィールドに入れると、デフォルトの買いまたは売りの取引量が設定される。このフィールドで「オフセット」を選択すると、セル1010のL/Rボタンが使用可能になる。このフィールドで「NetPos」を選択すると、現在の正味取引量(トレーダのネット・ポジション)がトレーダの次の取引のための取引量として設定される。セル1017は+/−ボタンであり、これらのボタンは画面のサイズを、より大きく(+)あるいはより小さく(−)変更する。セル1018はNet 0を呼び出すために使用され、このボタンをクリックすると「正味取引量」(セル1011)がゼロにリセットされる。セル1019は、Net Realを呼び出すために使用され、このボタンをクリックすると「正味取引量」(セル1011)がその実際のポジションにリセットされる。
【0031】
内部市場および市場深度は、市場の価格が増減するにつれて上昇かつ下降する。たとえば、
図4は、
図3のものと同じ市場であるが、後のインターバルで、内部市場、セル1101、が3チック上がったときを表示する画面を示す。ここでは、商品のための内部市場が92(最適な買値)で43(最適な買いの取引量)であり、93(最適な呼値)で63(最適な売りの取引量)である。
図3および4を比較すると、価格列が静的なまま残っているが、対応する買いおよび売りは価格列を上がったことがわかる。市場深度は同様に価格列を上昇かつ下降し、市場の垂直的履歴を残す。
【0032】
市場が価格列を上昇あるいは下降するにつれて、内部市場はトレーダの画面上に表示された価格列より上に行くか下に行く可能性がある。通常、トレーダは内部市場を見て将来の取引を査定できることを望む。本発明のシステムは、1クリックセンタリング機能によりこの問題に対処する。「Net Real」ボタンの下のグレーのエリア1021内でいずれかのポイントを単一回クリックすると、システムが内部市場をトレーダの画面上で再センタリングする。また、3つのボタン付きのマウスを使用しているとき、中央のマウス・ボタンをクリックすると、マウス・ポインタの位置にかかわりなく、内部市場がトレーダの画面上で再センタリングされる。
【0033】
同じ情報および機能を水平方式で表示かつ使用可能にすることができる。市場が、
図3および4に示す垂直「マーキュリー」表示を上昇かつ下降するように、水平「マーキュリー」表示においては市場が左右に移動する。データの動的表示から収集された同じデータおよび同じ情報が提供される。他の向きを使用してデータを動的に表示することができ、このような向きは本発明の範囲内に入るように意図されることは想定される。
【0034】
次に、商品取引、および特に「マーキュリー」表示を使用した取引発注について記載する。「マーキュリー」表示および取引方法を使用して、トレーダは最初に所望の商品、および適用可能である場合はデフォルトの取引量を指定する。次いで、トレーダは右または左マウス・ボタンを単一回クリックして取引することができる。以下の式をシステムが使用して、取引注文を生成し、取引注文に関連付けられる取引量および価格を決定する。以下の略語がこれらの公式で使用される。すなわち、P=クリックされた行の価格の値、R=Rフィールドの値、L=Lフィールドの値、Q=現在の取引量、Qa=AskQ列においてPに等しいかそれよりよい価格の総取引量の合計、Qb=BidQ列においてPに等しいかそれより良好な価格の総取引量の合計、N=現在ネット・ポジション、Bo=市場に送られた買い注文、およびSo=市場に送られた売り注文である。
【0035】
右マウス・ボタンを使用してエントリされた注文
Bo=(Qa+R)P (式1)BidQフィールドがクリックされた場合。
So=(Qb+R)P (式2)AskQフィールドがクリックされた場合。
【0036】
左マウス・ボタンを使用してエントリされた注文
取引量明細フィールドで「オフセット」モードが選択された場合、
Bo=(Qa+L)P (式3)BidQフィールドがクリックされた場合。
So=(Qb+L)P (式4)AskQフィールドがクリックされた場合。
取引量明細フィールドで「数」モードが選択された場合、
Bo=QP (式5)
So=QP (式6)
取引量明細フィールドで「NetPos」モードが選択された場合、
Bo=NP (式7)
So=NP (式8)
【0037】
市場において使用可能な取引量、トレーダによってあらかじめ設定された取引量、およびどのマウス・ボタンをトレーダがクリックするかに従って変化する取引量について、注文を市場へ送ることもできる。この機能を使用して、トレーダは市場における買いまたは売りのすべてを、選択された価格またはそれより良好な価格で、1クリックにより売買することができる。トレーダはまた、あらかじめ設定された取引量を、市場において発行済の取引量から加算あるいは減算することもできる。トレーダが取引セル、すなわちBidQまたはAskQ列をクリックした場合、トレーダは市場に注文をエントリする。注文のパラメータは、どのマウス・ボタンをトレーダがクリックするか、およびどのような値をトレーダがあらかじめ設定したかによって決まる。
【0038】
図5の画面表示および値を使用して、「マーキュリー」表示および取引方法を使用した取引発注を、以下で実施例を使用して記載する。BidQ列1201の18を左クリックすると、17ロット(取引量明細プル・ダウン・メニュー・セル1204上で選択された取引量の数)の商品を89の価格(Prc列1203において対応する価格)で売るための注文が市場に送られる。同様に、AskQ列1202の20を左クリックすると、17ロットを90の価格で買うための注文が市場に送られる。
【0039】
右マウス・ボタンを使用して注文が市場に送られ、これは市場においてその行における価格と等しいかそれより良好な価格の注文の合計取引量についてクリックされた行に、Rフィールド1205の取引量を加算したものに対応する価格である。したがって、87の価格行のAskQ列1202を右クリックすると、87の価格で150の取引量の売り注文が市場に送られる。150は、取引量30、97、18および5のすべての合計である。30、97および18は、市場において、トレーダの売り注文価格の87を満たすか、それよりよい取引量のすべてである。これらの取引量がBidQ列1201に表示される。なぜならこの列が、市場において商品を対応する各価格で購入するための発行済の注文を表すからである。取引量5は、Rフィールド1205であらかじめ設定された取引量である。
【0040】
同様に、同じ87の価格レベルのBidQ列1201を右クリックすると、87の価格で5の取引量についての買い指値注文が市場に送られる。この取引量は上記と同じ方法で決定される。しかし、この実施例では、市場において、選択された価格に等しいかそれよりよい注文はなく、AskQ列1202にはこの価格に等しいかそれよりよい取引量はない。したがって、等しいかそれよりよい取引量の合計はゼロ(「0」)である。トレーダによってエントリされた合計注文は、Rフィールドの値である5となる。
【0041】
左マウス・ボタン、および取引量明細フィールド1204において選択された「オフセット」オプションによりエントリされた注文は、上記と同じ方法で計算されるが、Lフィールド1206の取引量が、Rフィールド1205の取引量の代わりに加算される。したがって、92の価格行のBidQ列1201を左クリックすると、92の価格で96の取引量の買い注文が市場に送られる。96は、取引量45、28、20および3のすべての合計である。45、28および20は、市場において、トレーダの買い注文価格の92を満たすか、それよりよい取引量のすべてである。これらの取引量がAskQ列1202に表示される。なぜならこれはこの列が、市場において商品を対応する各価格で売るための発行済の注文を表すからである。取引量3は、Lフィールド1206であらかじめ設定された取引量である。
【0042】
LまたはRフィールドの値は負の数になる可能性がある。これは実際上、市場に送られる合計取引量を減少させる。すなわち、87の価格行のAskQ列1202を右クリックする実施例では、Rフィールドが−5であった場合、市場に送られる合計取引量は140(30+97+18+(−5))となる。
【0043】
トレーダが取引量明細フィールド1204で「NetPos」オプションを選択した場合、右クリックをするとなお上に説明したように動作する。左クリックをすると、クリックされた価格行に対応する価格およびトレーダの現在のネット・ポジションに等しい取引量の注文がエントリされる。トレーダのネット・ポジションは、選択された契約におけるトレーダの現在のポジションである。すなわち、トレーダが、自分が売ったものより10だけ多い契約を買っていた場合、この値が10となる。NetPosは、右クリックにより送られた注文の取引量には影響を与えない。
【0044】
トレーダが取引量明細で数値を選択した場合、左クリックをすると、トレーダによって選択された現在取引量についての注文が市場に送られる。現在取引量のデフォルト値は、取引量明細フィールドに入力された数となるが、これを、現在取引量フィールド1204の数字を調整することによって変更することができる。
【0045】
本発明のこの実施形態により、トレーダが自分の有効な取引のすべてを、右または左のマウス・ボタンを最終取引量(LTQ)列1207内の任意の場所で単一回クリックすることにより、削除することもできる。これにより、トレーダが市場から即時に出ることができる。トレーダはこの機能を、自分が資金を失いつつあり、かつ損失が増えることを止めたいときに使用する。トレーダはまたこの機能を使用して、所望の収益が生じたときに市場からすぐに出ることもできる。本発明により、トレーダは特定の価格レベルの自分の注文のすべてを市場から削除することもできる。いずれかのマウス・ボタンでエントリ済/有効(E/W)列1208内をクリックすることにより、クリックされたセルにおけるすべての有効な注文が削除される。したがって、トレーダが、先に送った特定の価格の注文でまだ満たされていないものが不十分な取引になるだろうと考えた場合、トレーダはこれらの注文を単一回のクリックで削除することができる。
【0046】
上述の本発明の「マーキュリー」表示および取引方法を使用した取引発注のプロセスを、
図6の流れ図に示す。最初にステップ1301で、トレーダが「マーキュリー」表示を取引端末画面上に出し、これが所与の商品についての市場を示す。ステップ1302で、パラメータが、LおよびRフィールドおよび「現在取引量」、「NetPos」または「オフセット」・フィールドなど、適切なフィールドにプル・ダウン・メニューから設定される。ステップ1303で、マウス・ポインタが「マーキュリー」表示におけるセル上に、トレーダによって位置付けられ、クリックされる。ステップ1304で、システムが、クリックされたセルが取引可能なセルである(すなわち、AskQ列またはBidQ列にある)かどうかを決定する。そうでなかった場合、ステップ1305で、取引注文が作成あるいは送信されず、むしろ選択されたセルに基づいて他の取引量が調整されるか、あるいは機能が実行される。そうでない場合、ステップ1306で、システムが、クリックされたものがマウスの左ボタンであったか右ボタンであったかを決定する。これが右であった場合、ステップ1307で、システムがステップ1310で注文の合計取引量を決定するときにRフィールドの取引量を使用する。左ボタンがクリックされた場合、ステップ1308で、システムが、オフセット、NetPosまたは実際の数のうちどの取引量明細が選択されたかを決定する。
【0047】
オフセットが選択された場合、ステップ1309で、システムがステップ1310で注文の合計取引量を決定するときにLフィールドの取引量を使用する。NetPosが選択された場合、ステップ1312で、システムが、取引注文のための合計取引量が現在のNetPos値、すなわち所与の商品におけるトレーダのネット・ポジションになることを決定する。実際の数が取引量明細として使用された場合、ステップ1311で、システムが、取引注文のための合計取引量がエントリ済の現在取引量になることを決定する。ステップ1310で、システムは、取引注文のための合計取引量が、Rフィールドの値(ステップ1307が取られた場合)またはLフィールドの値(ステップ1309が取られた場合)に、市場においてクリックされた行の価格より良好か、あるいはそれに等しい価格についてのすべての取引量を加算したものになることを決定する。これにより、市場においてトレーダによってエントリされている注文を満たすであろう各注文のための取引量(これにLまたはRの値を加算)を合計する。
【0048】
ステップ1310、1311または1312の後、ステップ1313で、システムが、BidQまたはAskQのうちどちらの列がクリックされたかを決定する。AskQがクリックされた場合、ステップ1314で、システムが売り指値注文を、すでに決定された合計取引量についての行に対応する価格で市場に送る。BidQがクリックされた場合、ステップ1315で、システムが買い指値注文を、すでに決定された合計取引量についての行に対応する価格で市場に送る。
【0049】
上の本発明および特定の実施例の説明は、本発明の好ましい実施形態を示すものであるが、限定ではなく例として与えられるものであることを理解されたい。本発明の範囲内の多数の変更および修正を、その精神から逸脱することなく行うことができ、本発明はこのような変更および修正のすべてを含む。