(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るケーブル特性試験システムについて図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1に示すケーブル特性試験システム1は、測定対象の芯線ペアの一端を開放(開)してケーブルの特性を測定する動作と、芯線ペアの一端を互いに接続(閉)してケーブル特性を測定する動作とを周期的に行うシステムである。なお、ケーブルの特性とは電気的特性である。
【0017】
ケーブル特性試験システム1は、開閉動作を行う開閉装置20a、20b、20c、20dと、開閉装置20a、20b、20c、20dを制御する制御装置30と、ケーブル特性を測定する計測装置40と、を備える。
【0018】
測定対象であるケーブル10は、2本の芯線11,12を有する2芯ケーブルである。ケーブル10は、黒丸で示す分岐点によって、点線で示すように途中から4本に分岐する。試験実施者から見て芯線11の遠端は一端11a、11b、11c、11dであり、試験実施者から見て芯線11の近端は、他端11eである。試験実施者から見て芯線12の遠端は一端12a、12b、12c、12dであり、試験実施者から見て芯線12の近端は他端12eである。
【0019】
なお、測定対象は、ケーブル10のような2芯ケーブルに限らず、芯線が1本のシールドケーブル又は同軸ケーブルであってもよい。この場合、2本の芯線の代わりに1本の芯線(内部導体)とシールド線(外部導体)を使用する。すなわち、ケーブル内に2本の配線(芯線又は芯線以外の導体)があれば測定対象となり得る。
【0020】
開閉装置20aには、ケーブル10の芯線11、12の遠端である一端11a、12aが接続される。開閉装置20aは、接続されている一端11a、12a間を短絡又は開放する開閉動作を行う。
【0021】
開閉装置20bには、ケーブル10の芯線11、12の遠端である一端11b、12bが接続される。開閉装置20bは、接続されている一端11b、12b間を短絡又は開放する開閉動作を行う。
【0022】
開閉装置20cには、ケーブル10の芯線11、12の遠端である一端11c、12cが接続される。開閉装置20cは、接続されている一端11c、12c間を短絡又は開放する開閉動作を行う。
【0023】
開閉装置20dには、ケーブル10の芯線11、12の遠端である一端11d、12dが接続される。開閉装置20dは、接続されている一端11d、12d間を短絡又は開放する開閉動作を行う。
【0024】
制御装置30は、開閉装置20a、20b、20c、20dと無線通信可能に接続される。制御装置30は、開閉装置20a、20b、20c、20dにリセット信号を送信して開閉装置20a、20b、20c、20dを制御する。
【0025】
計測装置40は、測定コード41,42を介してケーブル10内の芯線11,12の近端である他端11e,12e間に接続される。計測装置40は、例えば抵抗値や容量値等の測定機能を有するマルチメータやTDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射)測定装置から構成される。なお、TDR測定とは、パルス信号やステップ信号を配線に注入し、その反射波形を観測する手法である。
【0026】
ここで、上述のように、開閉装置20a、20b、20c、20dは、制御装置30によって制御される。そのため、これらをまとめて開閉制御システム2(
図1において不図示)と称する。以下、開閉制御システム2の構成について説明する。
【0027】
図2に示すように、開閉装置20aは、2つの接続用端子21a,21bと、接続用端子21a,21b間を短絡又は開放するリレースイッチ21と、リレースイッチ21を駆動する駆動回路22と、駆動回路22に電源を供給する電源回路23と、駆動回路22がリレースイッチ21を周期的に短絡させるオンオフ制御をリセットするリセット回路24と、アンテナ26を介してリセット信号を受信する受信回路25とを備える。
【0028】
リレースイッチ21はメカニカルリレーから構成される。開閉装置20aの接続用端子21a,21bには、
図1に示すケーブル10内の芯線11,12の一端11a,12aが接続される。
【0029】
駆動回路22は、リレースイッチ21のオンオフ制御を行うための開閉信号を生成するタイマ回路、開閉信号によりリレースイッチ21を駆動するドライバ回路等から構成される。タイマ回路は、電源回路23によって印加される直流電圧を周期的な開閉信号に変換する。駆動回路22の開閉信号の周期は、ユーザ又は製造業者によって予め定められる周期である(詳細は後述する)。
【0030】
電源回路23は、例えば、一次電池又は二次電池、電源スイッチ等から構成される。電源回路23は、電池の電圧を駆動回路22及び受信回路25に印加する。リセット回路24は、受信したリセット信号を駆動回路22に供給することにより、駆動回路22のオンオフ制御をリセットする。受信回路25は、無線周波数(RF:Radio Frequency)回路、ベースバンド(BB:Base Band)回路、集積回路(LSI:Large Scale Integration)等から構成される。受信回路25は、アンテナ26を介してリセット信号を受信する。
【0031】
開閉装置20b、20c、20dは、詳細な図示はしないが、開閉装置20aと同様な構成を備えている。そのため、開閉装置20b、20c、20dの構成要素には、開閉装置20aと同一の符号を付して説明する。
【0032】
開閉装置20bの接続用端子21a,21bには、芯線11,12の一端11b,12bが接続され、開閉装置20cの接続用端子21a,21bには、芯線11,12の一端11c,12cが接続され、開閉装置20dの接続用端子21a,21bには、芯線11,12の一端11d,12dが接続される。
【0033】
制御装置30は、装置全体を制御するプロセッサ、電源を供給するための電源回路、アンテナ36を介してリセット信号を送信するための送信回路等から構成される。なお、電源回路は、例えば、電池、電源スイッチ等から構成され、受信回路は、例えばRF回路、BB回路、LSI等から構成される。制御装置30は、開閉装置20a、20b、20c、20dの各々に、リセット状態の解除タイミングが異なるリセット信号を送信する(詳細は後述する)。
【0034】
以上、開閉制御システム2の構成について説明した。次に開閉制御システム2における開閉装置20a、20b、20c、20dの動作の一例を、
図3のタイミングチャート図を参照しながら説明する。この図は、横軸は左から右に向かう時間軸であり、縦軸は、出力信号がH(High)かL(Low)かを示している。なお、時間軸は、点線で示すように一定間隔(後述するT/8相当)で区切られ、時刻t
0〜t
18を示している。時刻t
0〜t
18は、開閉装置20a、20b、20c、20dが制御装置30からリセット信号を受信したタイミングを示している。
【0035】
(A)の駆動回路出力1は、開閉装置20aの駆動回路22の出力である。(B)の駆動回路出力2は、開閉装置20bの駆動回路22の出力である。(C)の駆動回路出力3は、開閉装置20cの駆動回路22の出力である。(D)の駆動回路出力4は、開閉装置20dの駆動回路22の出力である。これらの駆動回路出力は、Hであればリレースイッチ21がオン(短絡状態)となり、Lであればリレースイッチ21がオフ(開放状態)になる。すなわち、駆動回路出力はオンオフ制御のオンオフに対応する。
【0036】
ここで、上述した開閉信号の周期について説明する。開閉信号の周期をTとし、そのうち、短絡時間(閉時間)をT
H、開放時間(開時間)をT
Lとし、使用される開閉装置の台数をn台とした場合に、T
HとT
Lは、T
H=T/2n、T
L=(2n−1)T/2nとなるように設定される。本実施形態では、ケーブル特性試験システム1全体で開閉装置20a、20b、20c、20dの4台が使用されているため、T
H=T/8、T
L=7T/8となるような周期Tが設定される。このような周期Tは、すべての開閉装置20a、20b、20c、20dに設定される。
【0037】
次に、上述した制御装置30から開閉装置20a、20b、20c、20dのそれぞれに送信されるリセット信号について説明する。リセット信号は、開閉装置20a、20b、20c、20dの駆動回路22を、それぞれのリセット時間だけリセット状態に保持し、解除タイミングでリセット状態を解除する。
【0038】
リセット信号は、制御装置30から開閉装置20a、20b、20c、20dに一斉送信されるが、リセット状態に保持するリセット時間がそれぞれ異なっている。そのため、開閉装置20a、20b、20c、20dに送信されるリセット信号は、それぞれ解除タイミングが異なる。
【0039】
リセット信号のそれぞれのリセット時間は、例えば、使用される開閉装置の台数がn台である場合に、N台目の開閉装置のリセット時間T
Rが、T
R=NT/nとなるように設定される。
【0040】
本実施形態では、ケーブル特性試験システム1全体で開閉装置20a、20b、20c、20dの4台が使用されている。そのため、開閉装置20aに送信されるリセット信号のリセット時間t
R1は、T/4に設定される。開閉装置20bに送信されるリセット信号のリセット時間t
R2は、T/2に設定される。開閉装置20cに送信されるリセット信号のリセット時間t
R3は、3T/4に設定される。開閉装置20dに送信されるリセット信号のリセット時間t
R4は、Tに設定される。これにより、開閉装置20a、20b、20c、20dに送信されるリセット信号の解除タイミングは、T/4ずつずれることになる。
【0041】
以上で開閉信号の周期とリセット信号について説明した。そこで、開閉制御システム2における開閉装置20a、20b、20c、20dの動作の説明に戻る。
【0042】
まず、
図3(A)に示すように、駆動回路出力1は、リセット信号受信時である時刻t
0からT/4のリセット時間t
R1だけリセット状態(すなわちL)に保持され、時刻t
2から上述した周期Tの開閉信号が開始する。
図3(B)に示すように、駆動回路出力2は、リセット信号受信時である時刻t
0からT/2のリセット時間t
R2だけリセット状態(すなわちL)に保持され、時刻t
4から上述した周期Tの開閉信号が開始する。
【0043】
図3(C)に示すように、駆動回路出力3は、リセット信号受信時である時刻t
0から3T/4のリセット時間t
R3だけリセット状態(すなわちL)に保持され、時刻t
6から上述した周期Tの開閉信号が開始する。
図3(D)に示すように、駆動回路出力4は、リセット信号受信時である時刻t
0からTのリセット時間t
R4だけリセット状態(すなわちL)に保持され、時刻t
8から上述した周期Tの開閉信号が開始する。
【0044】
以上、開閉制御システム2における開閉装置20a、20b、20c、20dの動作の一例を説明した。次に、このような開閉制御システム2を使用したケーブル特性試験システム1によって、ケーブル10の特性を測定する手順について説明する。
【0045】
まず、試験実施者は、
図1のようにケーブル10の遠端側に移動して、開閉装置20a、20b、20c、20dを芯線11の一端11a、11b、11c、11d、12a、12b、12c、12dにそれぞれ接続する。その後、試験実施者は、計測装置40と制御装置30とを持ってケーブル10の近端側に移動して、計測装置40の測定コード41、42を芯線11の他端11e、12eにそれぞれ接続する。
【0046】
この状態で、試験実施者は、手元にある計測装置40を測定状態に操作し、制御装置30を操作して、制御装置30から開閉装置20a、20b、20c、20dにリセット信号を送信させる。
【0047】
そうすると、
図3に示すように、開閉装置20a、20b、20c、20dは、それぞれ異なるリセット時間t
R1、t
R2、t
R3、t
R4を有し、解除タイミングが異なるリセット信号を受信し、開閉装置20a、20b、20c、20dの駆動回路22の駆動回路出力1〜4は、異なるタイミングで開閉周期を開始する。
【0048】
これらの異なるタイミングで開始した開閉信号において、短絡時間(閉時間)T
Hが互いに重なることはなく、開閉装置20a、20b、20c、20dのリレースイッチ21はそれぞれ短絡時間が重なることがない。そのため、
図1において開閉装置20a、20b、20c、20dが一つずつ順次短絡することになる。
【0049】
そうすると、試験実施者は、制御装置40から開閉装置20a、20b、20c、20dにリセット信号を送信してからの経過時間とケーブル10の遠端が短絡・開放しているかを計測装置40によって確認することで、芯線11の一端11a、12a間、一端11b、12b間、一端11c、12c間、一端11d、12d間のうち、現在短絡又は開放しているものを特定することができる。
【0050】
また、芯線11の一端11a、12a間、一端11b、12b間、一端11c、12c間、一端11d、12d間は、周期的に短絡・開放されるため、試験実施者は、試験実施者から見てケーブル10の遠端側に移動すること無く、抵抗測定(断線チェック)、容量測定(芯線間の絶縁チェック)等を行うことができる。したがって、ケーブル10の特性を測定する作業の効率化を図ることが可能となる。
【0051】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、制御装置30からのリセット信号によって開閉装置20a、20b、20c、20dの開閉周期が開始するタイミングを制御している。しかし、制御装置30を使用せずに、本発明を実現することも可能である。
【0052】
以下、制御装置30を使用しない第2実施形態のケーブル特性試験システム3について説明する。なお、上記第1実施形態と共通する構成要素については同一の符号を付する。
【0053】
ケーブル特性試験システム3は、
図4に示すように、開閉動作を行う開閉装置50a、50b、50c、50dと、ケーブル特性を測定する計測装置40と、を備える。
【0054】
開閉装置50aには、ケーブル10の芯線11、12の遠端である一端11a、12aが接続される。開閉装置50aは、接続されている一端11a、12a間を短絡又は開放する開閉動作を行う。なお、開閉装置50aは、他の開閉装置50b、50c、50dと一部の構成が異なるものである(詳細については後述する)。
【0055】
開閉装置50bには、ケーブル10の芯線11、12の遠端である一端11b、12bが接続される。開閉装置50bは、接続されている一端11b、12b間を短絡又は開放する開閉動作を行う。
【0056】
開閉装置50cには、ケーブル10の芯線11、12の遠端である一端11c、12cが接続される。開閉装置50cは、接続されている一端11c、12c間を短絡又は開放する開閉動作を行う。
【0057】
開閉装置50dには、ケーブル10の芯線11、12の遠端である一端11d、12dが接続される。開閉装置50dは、接続されている一端11d、12d間を短絡又は開放する開閉動作を行う。
【0058】
開閉装置50aと開閉装置50b、開閉装置50bと開閉装置50c、開閉装置50cと開閉装置50dは、それぞれ互いに接続される。これは、後述するように、開閉装置50aで生成したリセット信号を開閉装置50b、開閉装置50c、開閉装置50dに順次伝送するためである。
【0059】
次に、開閉装置50aの構成について
図5を参照しながら説明する。開閉装置50aは、上記実施形態1の開閉装置20aと同様に、測定対象であるケーブル10内の芯線11の一端11a、12aを接続するための接続用端子21a、21bと、接続用端子21a、21b間を短絡又は開放するリレースイッチ21と、リレースイッチ21を周期的に短絡させるオンオフ制御を行う駆動回路22とを備える。
【0060】
また、開閉装置50aは、他の装置と接続するための第1の装置接続用端子56及び第2の装置接続用端子63と、駆動回路22のオンオフ制御をリセットするリセット回路60と、第1の装置接続用端子56から入力されたリセット信号の解除タイミングが駆動回路22の出力信号のリレースイッチ21を短絡させるタイミングと重複するか否かを示す信号を出力する出力回路としての判定回路57と、リセット回路60が生成したリセット信号を遅延させて第2の装置接続用端子63に出力する遅延回路61と、駆動回路22、判定回路57及びリセット回路60に電源を供給する電源回路54と、を備える。
【0061】
また、開閉装置50aは、ユーザによって押下された場合に、リセット回路60にリセット信号を生成させるためのボタン59を備える。開閉装置50aの判定回路57は、発光ダイオード58のアノード側に接続され、開閉装置50aのリセット回路60は、発光ダイオード62のアノード側に接続される。
【0062】
判定回路57とリセット回路60は、それぞれ発光ダイオード58、62を発光させるためのドライバ回路を含み、発光ダイオード58、62は、接続されている判定回路57又はリセット回路60のドライバ回路の出力信号がHighである場合に発光する。なお、発光ダイオード58、62のカソード側は、抵抗R1又はR2を介して接地されるか、電源回路54の接地側配線に接続される。
【0063】
判定回路57は、駆動回路22と第1の装置接続用端子56と発光ダイオード58とのそれぞれに接続される。また、判定回路57は、電源回路54に接続され、電圧が印加される。判定回路57は、駆動回路22の出力信号の短絡時間(閉時間)T
Hと第1の装置接続用端子56から入力されるリセット信号がHighとなる時間が重複しない場合に、電源回路54からの印加電圧でドライバ回路の出力をHighにして発光ダイオード58を発光させる。
【0064】
リセット回路60は、ボタン59と遅延回路61と発光ダイオード62と駆動回路22とのそれぞれに接続される。また、リセット回路60は電源回路54にも接続され、電圧が印加される。リセット回路60は、ボタン59が押下されるとリセット信号を生成して遅延回路61にそのリセット信号を入力し、ドライバ回路の出力信号をHighにして発光ダイオード62を発光させる。また、リセット回路60は、生成されたリセット信号を駆動回路22に入力してオンオフ制御をリセットする。
【0065】
遅延回路61は、タイマ回路から構成され、第2の装置接続用端子63に接続される。遅延回路61は、リセット回路60から入力されたリセット信号を遅延させて第2の装置接続用端子63に出力する。
【0066】
以上、開閉装置50aの構成について説明した。次に、他の開閉装置50b、50c、50dの構成について説明する。開閉装置50b、50c、50dは、同一の構成を有するため、
図6を参照しながら、それらの代表例として開閉装置50bの構成を説明する。なお、開閉装置50aと共通する構成要素には同一の符号を付する。
【0067】
開閉装置50bは、測定対象であるケーブル10内の芯線11の一端11b、12bを接続するための接続用端子21a、21bと、接続用端子21a、21b間を短絡又は開放するリレースイッチ21と、リレースイッチ21を周期的に短絡させるオンオフ制御を行う駆動回路22とを備える。
【0068】
また、開閉装置50bは、他の装置と接続するための第1の装置接続用端子65及び第2の装置接続用端子67と、駆動回路22のオンオフ制御をリセットするリセット回路66と、リセット回路66が生成したリセット信号を遅延させて第2の装置接続用端子67に出力する遅延回路61と、駆動回路22、判定回路57、リセット回路66に電源を供給する電源回路64とを備える。
【0069】
また、開閉装置50bのリセット回路66は、発光ダイオード62のアノード側に接続される。リセット回路66は、発光ダイオード62を発光させるためのドライバ回路を含み、発光ダイオード62は、接続されているリセット回路66のドライバ回路の出力信号がHighである場合に発光する。なお、発光ダイオード62のカソード側は、抵抗R2を介して接地されるか、電源回路64の接地側配線に接続される。
【0070】
リセット回路66は、第1の装置接続用端子65と駆動回路22と遅延回路61と発光ダイオード62とのそれぞれに接続される。また、リセット回路66は電源回路64にも接続され、電圧が印加される。リセット回路66は、リセット信号が入力された場合に、遅延回路61にリセット信号を入力し、電源回路64の印加電圧によりドライバ回路の出力信号をHighにして発光ダイオード62を発光させる。また、リセット回路66は、入力されたリセット信号を駆動回路22に入力してオンオフ制御をリセットする。
【0071】
遅延回路61は、タイマ回路から構成される。遅延回路61は、リセット回路66と第2の装置接続用端子67とのそれぞれに接続される。遅延回路61は、リセット回路66から入力されたリセット信号を遅延させて第2の装置接続用端子67に出力する。
【0072】
ここで、開閉装置50a、50b、50c、50dの遅延回路61の遅延時間t
d1、t
d2、t
d3、t
d4は、それぞれT/4の時間に設定される。ただし、厳密には、リセット時間t
d4だけは、後述の理由のために、わずかにT/4より小さい時間に設定される。開閉装置50aで生成されるリセット信号のリセット時間t
R1は、T/4の時間に設定される。開閉装置50a、50b、50c、50dの駆動回路22の周期T、短絡時間(閉時間)T
H、開放時間(開時間)T
Lは、上記第1実施形態と同様に設定される。
【0073】
以上、開閉装置50a、50b、50c、50dの構成を説明した。次に、このような開閉装置50a、50b、50c、50dを使用したケーブル特性試験システム3によって、ケーブル10の特性を測定する手順について説明する。
【0074】
まず、試験実施者は、
図4のようにケーブル10の遠端側に移動して、開閉装置50a、50b、50c、50dを芯線11、12の一端11a、11b、11c、11d、12a、12b、12c、12dにそれぞれ接続する。開閉装置50aの第2の装置接続用端子63と開閉装置50bの第1の装置接続用端子65を接続する。開閉装置50bの第2の装置接続用端子67と開閉装置50cの第1の装置接続用端子65を接続する。開閉装置50cの第2の装置接続用端子67と開閉装置50dの第1の装置接続用端子65を接続する。
【0075】
その後、試験実施者は、開閉装置50aのボタン59を押下する。そうすると、開閉装置50a、50b、50c、50dは、
図8のタイミングチャート図の(A)〜(M)に示すように動作する。
【0076】
まず、
図8(E)に示すように、開閉装置50aのリセット回路60は、ボタン59の押下を契機としてリセット時間t
R1を有するリセット信号を生成する。
【0077】
図8(A)に示すように、開閉装置50aの駆動回路22の駆動回路出力1は、ボタン59の押下時である時刻t
0からT/4のリセット時間t
R1だけリセット状態(すなわちL)に保持され、時刻t
2から上述した開閉信号の開閉周期である周期Tが開始する。
【0078】
開閉装置50aのリセット回路60が生成したリセット信号は、遅延回路61によって遅延時間t
d1だけ遅延され、開閉装置50aの第2の装置接続用端子63と開閉装置50bの第1の装置接続用端子65とを介して、開閉装置50bのリセット回路66に入力される。この第2の装置接続用端子63の出力信号OUT1は
図8(F)に示される。そのため、
図8(B)に示すように、開閉装置50bの駆動回路22の駆動回路出力2は、ボタン59の押下時である時刻t
0からT/2経過した時刻t
4から上述した周期Tの開閉信号が開始する。
【0079】
開閉装置50bの第1の装置接続用端子65に入力されたリセット信号は、さらに開閉装置50bの遅延回路61によって遅延時間t
d2だけ遅延され、開閉装置50bの第2の装置接続用端子67と開閉装置50cの第1の装置接続用端子65とを介して、開閉装置50cのリセット回路66に入力される。この第2の装置接続用端子67の出力信号OUT2は
図8(G)に示される。そのため、
図8(C)に示すように、開閉装置50cの駆動回路22の駆動回路出力3は、ボタン59の押下時である時刻t
0から3T/4経過した時刻t
6から上述した周期Tの開閉信号が開始する。
【0080】
開閉装置50cの第1の装置接続用端子65に入力されたリセット信号は、さらに開閉装置50cの遅延回路61によって遅延時間t
d3だけ遅延され、開閉装置50cの第2の装置接続用端子67と開閉装置50dの第1の装置接続用端子65とを介して、開閉装置50dのリセット回路66に入力される。この第2の装置接続用端子67の出力信号OUT3は
図8(H)に示される。そのため、
図8(D)に示すように、開閉装置50dの駆動回路22の駆動回路出力4は、ボタン59の押下時である時刻t
0からT経過した時刻t
8から上述した周期Tの開閉信号が開始する。
【0081】
なお、開閉装置50dの第1の装置接続用端子65に入力されたリセット信号は、さらに開閉装置50dの遅延回路61によって遅延時間t
d4だけ遅延され、第2の装置接続用端子67に出力される。この第2の装置接続用端子67の出力信号OUT4は
図8(I)に示される。
【0082】
開閉装置50a、50b、50c、50dをこのような動作状態にした後、試験実施者は、計測装置40を持ってケーブル10の近端側に移動して、計測装置40の測定コード41、42を芯線11、12の他端11e、12eにそれぞれ接続する。
【0083】
図8(A)〜(D)に示すように、開閉装置50a、50b、50c、50dの駆動回路22の駆動回路出力1〜4は、異なるタイミングで開閉信号を開始し、短絡時間(閉時間)T
Hが互いに重なることはなく、開閉装置50a、50b、50c、50dのスイッチ21はそれぞれ短絡時間が重なることがない。
【0084】
また、芯線11、12の一端11a、12a間、一端11b、12b間、一端11c、12c間、一端11d、12d間は、周期的に短絡・開放されるため、試験実施者は、試験実施者から見てケーブル10の遠端側に移動すること無く、抵抗測定(断線チェック)、容量測定(芯線間の絶縁チェック)等を行うことができる。したがって、ケーブル10の特性を測定する作業の効率化を図ることが可能となる。また、制御装置30も不要となる。
【0085】
ここで、本実施形態では、4台の開閉装置50a、50b、50c、50dが使用されることを前提としてリセット時間t
R1、遅延時間t
d1、t
d2、t
d3、t
d4、周期T、短絡時間(閉時間)T
H、開放時間(開時間)T
Lが設定されている。しかし、実際には、ケーブル10の分岐数に応じて開閉装置の数は増減する。例えば、開閉装置が5台であり、上記のようにリセット時間t
R1、遅延時間t
d1、t
d2、t
d3、t
d4、周期T、短絡時間(閉時間)T
H、開放時間(開時間)T
Lが設定されていると、開閉装置のスイッチの短絡時間が重なり、ケーブル10の特性を測定することができなくなってしまう。
【0086】
本実施形態の開閉装置50a、50b、50c、50dには、そのような事態が生じないように開閉装置50a、50b、50c、50dのリレースイッチ21の短絡時間が重なっているかどうかをチェックするための構成をも有している。そこで、以下、開閉装置50a、50b、50c、50dのリレースイッチ21の短絡時間が重なっているかどうかをチェックする方法について説明する。
【0087】
試験実施者は、まず、
図7に示すように、開閉装置50a、50b、50c、50dをデイジーチェーン状に接続する。具体的には、開閉装置50aの第2の装置接続用端子63と開閉装置50bの第1の装置接続用端子65を接続する。開閉装置50bの第2の装置接続用端子67と開閉装置50cの第1の装置接続用端子65を接続する。開閉装置50cの第2の装置接続用端子67と開閉装置50dの第1の装置接続用端子65を接続する。開閉装置50dの第2の装置接続用端子67と開閉装置50aの第1の装置接続用端子56を接続する。
【0088】
この状態で、開閉装置50aのボタン59を押下する。そうすると、
図8(E)に示すようにリセット信号が生成され、
図8(A)〜(I)に示すように、駆動回路22の出力信号と、遅延時間t
d1、t
d2、t
d3、t
d4を伴う出力信号OUTとが出力される。
【0089】
ここで、
図8(J)は開閉装置50aの発光ダイオード62(LED1)の光出力を示し、
図8(K)は開閉装置50bの発光ダイオード62(LED2)の光出力、
図8(L)は開閉装置50cの発光ダイオード62(LED3)の光出力、
図8(M)は開閉装置50dの発光ダイオード62(LED4)の光出力を示している。これらの
図8(J)〜(M)に示すように、開閉装置50a、50b、50c、50dの発光ダイオード62は、それぞれリセット回路60又はリセット回路66から入力されたリセット信号の解除タイミングで発光する。
【0090】
そして、開閉装置50aの判定回路57は、開閉装置50aの駆動回路22の出力信号である駆動回路出力1の短絡時間(閉時間)T
Hと、開閉装置50dの第2の装置接続用端子67と開閉装置50aの第1の装置接続用端子56を介して、開閉装置50dから入力されたリセット信号(出力信号OUT4)がHighとなる時間が重複しない場合に発光ダイオード58を発光させる。本実施形態では、重複しないために、
図8(N)に示すように、発光ダイオード58(LED−OK)の光出力がHighとなって発光する。
【0091】
ここで、
図8(A)と
図8(I)を参照すると、駆動回路出力1の短絡時間(閉時間)T
Hと出力信号OUT4のHighとなる時間が重複しているように見える。しかし、上述のように、厳密には、リセット時間t
d4だけは、わずかにT/4より小さい時間に設定されているため、重複はしていない。
【0092】
試験実施者は、かかる発光ダイオード58の発光状態を確認することによって、開閉装置50a、50b、50c、50dのリレースイッチ21の短絡時間が重なっているかどうかを確認することができる。
【0093】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。以下、本発明の変形例について説明する。
【0094】
上記実施形態では開閉装置20a、20b、20c、20d、50a、50b、50c、50d及び制御装置30を持ち運びしやすいように、電源回路に電池を使用している。しかし、電池を使用しなくてもよい。例えば、アダプタを介して交流電源に接続することによって得た直流電圧を印加するような電源回路にしてもよい。
【0095】
上記実施形態では、開閉装置20a、20b、20c、20d、50a、50b、50c、50dの駆動回路22にはタイマ回路が使用されている。しかし、タイマ回路の代わりに、カウンタ回路と、発振回路と、分周回路を使用されてもよい。駆動回路22がマイコンを備えていてもよい。この場合、試験実施者が周期T、短絡時間(閉時間)T
H、開放時間(開時間)T
Lを測定対象ケーブルに応じて適宜任意に設定することができる。
【0096】
上記第1実施形態では、開閉装置20a、20b、20c、20dと制御装置30とは互いに無線通信によりリセット信号を送受信する構成としている。しかし、これに限らず、
制御装置30を有線で開閉装置20a、20b、20c、20dに接続して制御装置30から開閉装置20a、20b、20c、20dにリセット信号を送信するようにしてもよい。
【0097】
上記第1実施形態のように、無線通信によってリセット信号を送受信する場合、開閉装置20a、20b、20c、20dと制御装置30との配線が不要であるため、芯線11、12の一端11a、12aと一端11b、12bと一端11c、12cと一端11d、12dとが離れた位置にある場合に適している。
【0098】
一方、有線通信によってリセット信号を送受信する場合、開閉装置20a、20b、20c、20dと制御装置30の構成を簡略化することができる。例えば、開閉装置20a、20b、20c、20dの受信回路25及びアンテナ26と、制御装置30のアンテナ36とリセット信号を送信するための送信回路等を省略することができる。また、有線通信の場合、構成が簡略化されるため、無線通信より操作も簡単になる。
【0099】
上記第2実施形態において、開閉装置50a、50b、50c、50dは上述のようにリセット信号を送受信するために配線が接続されている。この配線は、芯線11、12の一端11a、12aと一端11b、12bと一端11c、12cと一端11d、12dとの間の距離が長い場合に長くなってしまう。そのため、この配線の送電損失によってリセット信号が減衰することを考慮して、例えば、開閉装置50b、50c、50dのリセット回路66に増幅器を設けて入力されるリセット信号を増幅するように構成しても良い。
【0100】
上記実施形態のリセット回路24、60、66は、いわゆるローアクティブのリセット回路を前提としているため、リセット状態をL状態とし、L状態でリレースイッチ21が開放する構成としている。しかし、上記実施形態のリセット回路24、60、66をハイアクティブのリセット回路としてリセット状態をH状態とし、H状態でリレースイッチ21が短絡する構成としてもよい。すなわち、上記実施形態の信号のHとLが適宜反転された構成であっても、結果的にリレースイッチ21を短絡させるタイミングを制御する構成であればよい。
【0101】
上記実施形態の駆動回路22は、リレースイッチ21のオンオフ制御を行うための開閉信号を生成するタイマ回路、開閉信号によりリレースイッチ21を駆動するドライバ回路等から構成されている。
【0102】
しかし、本発明はこれに限られない。例えば、上記実施形態において、開閉装置が制御装置30又は他の開閉装置から開閉信号を受信して、その受信した開閉信号に基づいて駆動回路22がリレースイッチ21を駆動するように構成されてもよい。すなわち、上記実施形態のように開閉装置自身が開閉信号を生成するのではなく、他の装置で開閉信号が生成されてもよい。この場合、駆動回路22がタイマ回路を備える必要はなく、リセット回路24、60、66も不要となる。
【0103】
本発明のケーブル特性試験システムは、上記2芯ケーブルだけでなく、さらに3芯以上のケーブルも計測できるように拡張することができる。3芯以上のケーブルも計測可能な開閉装置は、3つ以上のリレースイッチを備える必要があり、接続されたすべての芯線ペア(配線ペア)が、それぞれ異なるタイミングで短絡又は開放させるように構成する必要がある。3芯以上のケーブルも計測可能な開閉装置は、より芯数が少ないケーブルでも計測可能となる。そのため、試験対象となるケーブルの種類が広くなり、汎用性を高くすることができる。
【0104】
また、上記実施形態において、測定対象の芯線のペアの遠端を短絡・開放するためのスイッチとしてリレースイッチ21を使用したが、他の素子を使用することも可能である。例えば、接続用端子21aと21bに電流路の一端(例えば、コレクタ、ソース)と他端(例えば、エミッタ、ドレイン)が接続されたバイポーラトランジスタやFETをスイッチとして使用してもよい。
【0105】
上記第2実施形態では、発光ダイオード58によってリレースイッチ21の短絡時間が重なっているかどうかを確認することができる。しかし、発光ダイオード58を用いて光出力をする構成ではなく、音声出力をする構成にしてもよい。また、発光ダイオード58は、重複がない場合に発光させてもよいし、重複がある場合に発光させてもよい。