特許第6335219号(P6335219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335219
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20180521BHJP
   B66B 1/06 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B66B5/00 H
   B66B1/06 D
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-118881(P2016-118881)
(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-222468(P2017-222468A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2016年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】槇岡 良祐
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−211854(JP,A)
【文献】 特開2002−145551(JP,A)
【文献】 特開2013−237515(JP,A)
【文献】 特開平09−227032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
B66B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下かご室間の相対距離を調整可能な階間調整機構を備えたダブルデッキエレベータを互いに隣接して設置し、階間で異常停止したダブルデッキエレベータの乗客を正常なダブルデッキエレベータで救出するエレベータ制御装置において、
前記異常停止したダブルデッキエレベータの上下かご室に乗っている乗客の情報を取得する乗客情報取得手段と、
前記乗客情報取得手段で取得した乗客の情報に基づいて、正常なダブルデッキエレベータの上下かご室の一方のみで救出できるか否かにより、上下かご室の一方または双方のいずれで救出するかを判断する判断手段と、
前記判断手段で上下かご室双方で救出すると判断した場合、前記異常停止したダブルデッキエレベータの上下かご室間の距離情報を取得する距離取得手段と、
前記距離取得手段で距離情報が取得できなかった場合、正常なダブルデッキエレベータの上下かご室間の相対距離を、前記異常停止したダブルデッキエレベータの停止位置を含む停止時の運転情報から予め設定された演算により類推する代表値に基づいて前記階間調整機構で調整させるかご室間距離調整手段と、
を備えることを特徴とするエレベータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
故障が発生したエレベータの上下かご室間の距離に合わせて、救出するエレベータ側の上下かご室間の距離を調整し、安全かつ確実にかご室の側壁を連結、開口するサイド救出運転が行なえるダブルデッキエレベータの救出運転装置および方法が提案されている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−145551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献では、故障側のエレベータの階間調整値を取得することで、救出側のエレベータが相当する階間調整を行ない、サイド救出運転時におけるサイド救出口の位置のズレを解消し、上下かご室内の乗客を安全に且つ迅速に同時に救出するものとしている。
【0005】
ところで、救出側のダブルデッキエレベータの上下かご室の一方、例えば下かご室のみを用い、故障したダブルデッキエレベータの上下のかご室に順番に隣接させて救出するものとすれば、救出作業自体に時間は要するものの、作業員が1名でも救出作業を開始できる。
【0006】
但し、前記一方のかご室のみにより救出作業を行なう場合、2つのかご室分の乗客を1つのかご室で救出することになるため、収容できる人数が制限される。2つのかご室分の乗客が1つのかご室に乗り切れない場合、一旦救出した乗客を基準となる階まで移動して降ろした後に、再度残る乗客を救出するべく故障したエレベータまで移動する必要があり、現実的ではない。
【0007】
本発明は前記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、故障したダブルデッキエレベータのサイド救出運転を統括的且つ迅速に開始して実施することが可能なエレベータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のエレベータ制御装置は、上下かご室間の相対距離を調整可能な階間調整機構を備えたダブルデッキエレベータを互いに隣接して設置し、階間で異常停止したダブルデッキエレベータの乗客を正常なダブルデッキエレベータで救出するエレベータ制御装置において、前記異常停止したダブルデッキエレベータの上下かご室に乗っている乗客の情報を取得する乗客情報取得手段と、前記乗客情報取得手段で取得した乗客の情報に基づいて、正常なダブルデッキエレベータの上下かご室の一方のみで救出できるか否かにより、上下かご室の一方または双方のいずれで救出するかを判断する判断手段と、前記判断手段で上下かご室双方で救出すると判断した場合、前記異常停止したダブルデッキエレベータの上下かご室間の距離情報を取得する距離取得手段と、前記距離取得手段で距離情報が取得できなかった場合、正常なダブルデッキエレベータの上下かご室間の相対距離を、前記異常停止したダブルデッキエレベータの停止位置を含む停止時の運転情報から予め設定された演算により類推する代表値に基づいて前記階間調整機構で調整させるかご室間距離調整手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るエレベータ制御装置全体の構成を示すブロック図。
図2】同実施形態に係る救出運転の全体の処理内容を示すメインルーチンのフローチャート。
図3】同実施形態に係る図2の両かご救出処理の詳細な内容を示すサブルーチンのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係るエレベータ制御装置10全体の構成を示す図である。なお、ここで言う「エレベータ」とは、基本的には「乗りかご」のことであり、複数台ある場合に「号機」という言い方をするもので、本実施形態でも同様の呼称を用いる。
【0011】
同図中、1はA号機の上下2階構造の乗りかご、2はB号機の上下2階構造の乗りかご2である。ここではA号機の乗りかご1の上方を上かご1U、下方を下かご1Dと称する。同様に、B号機の乗りかご2の上方を上かご2U、下方を下かご2Dと称する。
【0012】
各かご1U,1D,2U,2D内には、乗客が降りる階を操作するためのボタン等と階数表示部とを備えた表示操作パネル1UP,1DP,2UP,2DPを備える。さらに各かご1U,1D,2U,2D内には、隣接するエレベータ間で乗客が移動するためのサイド救出口1US,1DS,2US,2DSを備える。
【0013】
A号機の乗りかご1とB号機の乗りかご2は、ビル内の同一の昇降路内で隣接してそれぞれ上下に走行する。また、前記乗りかご1,2は、同図中では「日」字状の断面構成となるかごフレーム1F,2F内で、上かご1Uと下かご1D、上かご2Uと下かご2Dの各上下方向の階間幅が変化する階間調整機構を有しており、それぞれ次に停止する階の位置によって階間幅の調整が行なわれる。
【0014】
同図では、階間調整機構の1つとして、1つのかごフレーム1F(2F)内で、両端に上下に延在して設けられる一対の軸部がモータ1M1,1M2(2M1,2M2)によって回転駆動され、上かご1U(2U)と下かご1D(2D)とが当該軸方向に沿って繰出され、互いに上下逆方向に移動することで離間または近接し、階間幅の調整を行なう構造を例にとって示している。
【0015】
そして、A号機の乗りかご1に対してエレベータ制御部3が、B号機の乗りかご2に対してエレベータ制御部4がそれぞれ設けられる。
【0016】
エレベータ制御部3は、乗りかご1の運転状態を制御するためのものであり、救出運転に係る機能的な構成要素として、救出運転モード選択部11、情報送受信部12、救出運転制御部13、及び荷重情報/階間調整幅検出部14を有する。
【0017】
救出運転モード選択部11は、情報送受信部12から与えられる情報に基づいて、隣接するB号機の乗りかご2に故障が発生した場合の救出運転のモード選択を行なうもので、その選択結果は救出運転制御部13に通知される。
【0018】
情報送受信部12は、隣接するB号機のエレベータ制御部4が備える情報送受信部22と各種の送受信を行ない、受信した情報を前記救出運転モード選択部11へ送信する。
【0019】
救出運転制御部13は、救出運転モード選択部11で選択した救出モードと、後述する監視盤5からの制御指示とに基づいて、A号機の乗りかご1が故障したB号機の乗りかご2に対する救出運転を行なう際の動作を制御する。
【0020】
荷重情報/階間調整幅検出部14は、A号機の乗りかご1に故障が生じた場合、及び故障を生じたB号機の乗りかご2をA号機の乗りかご1で救出する場合においても、乗りかご1の荷重情報と階間調整幅を検出し、前記情報送受信部12へ送信する。
【0021】
これら救出運転モード選択部11、情報送受信部12、救出運転制御部13、及び荷重情報/階間調整幅検出部14は、電気/電子的なハードウェア回路またはコンピュータソフトウェアまたはそれらの組合せによって実現されるもので、乗りかご1に対する制御全般を実行するエレベータ制御部3にあって、図1では本実施形態で特徴的な動作を行なう機能的な回路構成を抽出してブロック化して示している。
【0022】
B号機側のエレベータ制御部4においても、A号機側のエレベータ制御部3と同様に、救出運転モード選択部21、情報送受信部22、救出運転制御部23、及び荷重情報/階間調整幅検出部24を有する。これらの機能はエレベータ制御部3と同様であり、エレベータ制御部3,4は協働して乗りかご1,2の一方に故障が発生した場合に他方を用いて救出運転を実行する。
監視盤5は、乗りかご1,2を含めて他の号機がある場合にも全体を統括して監視する。
【0023】
次に前記実施形態の動作について説明する。
図2は、A,B号機の乗りかご1,2のいずれかで故障が発生して階間で停止した場合に、監視盤5の制御の下で、救出側となるB号機のエレベータ制御部4またはA号機のエレベータ制御部3により実行される、救出側の号機の救出運転の全体の処理内容を示すメインルーチンのフローチャートである。
【0024】
以下では、説明を容易にするために、例えばA号機の乗りかご1で故障が発生し、これに対してB号機のエレベータ制御部4が監視盤5の制御の下に救出運転を実行するものとして説明を行なう。
【0025】
その当初にエレベータ制御部4では、乗りかご2内の表示操作パネル2DP,2UPのいずれかで救出運転の開始を指示するボタンが操作されたか否かにより、救出運転の処理に移行するか否かを判断する(ステップS101)。
【0026】
ここで乗りかご2内の表示操作パネル2DP,2UPのいずれにおいても救出運転の開始を指示するボタンが操作されていないと判断した場合(ステップS101のNO)、エレベータ制御部4は再び前記ステップS101の判断処理に戻る。
【0027】
こうしてステップS101の判断を繰返し実行することで、救出運転の開始を指示するボタンが操作されるのを待機する。
【0028】
そして、表示操作パネル2DP,2UPのいずれかで救出運転の開始を指示するボタンが操作されたと判断した時点で(ステップS101のYES)、エレベータ制御部4は救出運転制御部23により乗りかご2を予め設定されている基準階、例えば下かご2Dが1階、上かご2Uが2階に位置するように引き戻し運転を実施した上で(ステップS102)、その引き戻し運転が完了して上かご2Uと下かご2Dそれぞれが基準階に到着したか否かを判断する(ステップS103)。
【0029】
ここで前記引き戻し運転が完了していないと判断した場合(ステップS103のNO)、救出運転制御部23は前記ステップS102の処理に戻って、引き戻し運転を続行する。
【0030】
そして引き戻し運転が完了したと判断した時点で(ステップS103のYES)、次にエレベータ制御部4の救出運転制御部23は、上かご2Uと下かご2Dの戸を開いて、それら基準階で救出を実施する作業員が乗り込むのを待機する(ステップS104)。
【0031】
ここで救出運転制御部23は、上かご2Uの表示操作パネル2UPと、下かご2Dの表示操作パネル2DPの双方でそれぞれ救出移動スイッチがオンされたか否かにより、上かご2Uと下かご2Dの双方に作業員が乗り込んで救出処理に移行できるかどうかを判断する(ステップS105)。
【0032】
双方の少なくとも一方で救出移動スイッチがオンされず、上かご2Uと下かご2Dの少なくとも一方には作業員が乗り込んでいないと判断した場合(ステップS105のNO)、エレベータ制御部4の救出運転制御部23は前記ステップS105に戻り、上かご2Uと下かご2Dの戸を開いた状態を維持して、作業員が乗り込むのを待機する。
【0033】
そして、乗りかご2の上下双方の表示操作パネル2UP,2DPで共に救出移動スイッチがオンされ、上かご2Uと下かご2Dの双方に作業員が乗り込んだと判断すると(ステップS105のYES)、その時点で故障側のA号機の乗りかご1の上かご1Uと下かご1Dそれぞれの荷重情報その他を、エレベータ制御部3の荷重情報/階間調整幅検出部14、情報送受信部12を介して情報送受信部22により取得する(ステップS106)。
【0034】
ここで具体的に、情報送受信部22が故障側のエレベータ制御部3側から取得する情報としては、上かご1Uと下かご1Dそれぞれの荷重情報の他に、上かご1Uと下かご1Dが故障して停止している各階間位置の情報と、その時点で乗りかご1が上かご1Uと下かご1Dの階間調整機能を実行できるか否かを示す機能故障情報を含む。
【0035】
エレベータ制御部3側から情報送受信部22が取得した、故障したA号機の乗りかご1の上かご1U及び下かご1Dの各荷重情報の合算値が、救出を行なうB号機の乗りかご2側の一方、例えば下かご2Dでさらに乗せることのできる荷重より大きいか否かにより、下かご2Dのみでの救出はできないかどうかを救出運転モード選択部21が判断する(ステップS107)。
【0036】
ここで、故障したA号機の乗りかご1の上かご1U及び下かご1Dの各荷重情報の合算値が、救出を行なうB号機の乗りかご2側の下かご2Dでさらに乗せることのできる荷重以下であり、下かご2Dのみでの救出が可能であると救出運転モード選択部21が判断した場合には(ステップS107のNO)、救出運転制御部23が下かご2Dのみによる救出運転を実施する(ステップS109)。
【0037】
この乗りかご2の下かご2Dのみによる救出運転に関しては、一般的なシングルデッキエレベータでの救出運転を、基準階に戻る前に上かご1Uと下かご1Dに連続して実施する動作と同様であるため、その詳細な動作についての説明は省略する。
【0038】
また前記ステップS107において、故障したA号機の乗りかご1の上かご1U及び下かご1Dの各荷重情報の合算値が、救出を行なうB号機の乗りかご2側の下かご2Dでさらに乗せることのできる荷重を超えており、下かご2Dのみでの救出は不可能であると判断した場合(ステップS107のYES)、救出運転モード選択部21は上かご2Uと下かご2D両方のかごを用いた救出運転を選択し、救出運転制御部23によりその救出運転を実施させる(ステップS108)。
【0039】
図3は、この両かご2U,2Dを用いた救出運転制御部23による救出運転の詳細な処理内容を示すサブルーチンのフローチャートである。
【0040】
その当初に救出運転制御部23は、前記ステップS104の状態から引き続き乗りかご2の上かご2Uと下かご2D双方の戸を開いた待機状態を維持しながら(ステップS301)、上かご2Uの表示操作パネル2UPと、下かご2Dの表示操作パネル2DPの双方でそれぞれ戸閉ボタンが操作されたか否かにより、上かご2Uと下かご2D双方の作業員が救出に向かうべく準備できたかどうかを判断する(ステップS302)。
【0041】
双方の少なくとも一方で戸閉ボタンがオンされず、上かご2Uと下かご2Dの少なくとも一方では作業員がまだ準備できていないと判断した場合(ステップS302のNO)、エレベータ制御部4の救出運転制御部23は前記ステップS301に戻り、上かご2Uと下かご2Dの戸を開いた状態を維持して、作業員の準備ができるのを待機する。
【0042】
そして、乗りかご2の上下双方の表示操作パネル2UP,2DPで共に戸閉ボタンが操作され、上かご2Uと下かご2Dの双方の作業員の準備ができたと判断すると(ステップS302のYES)、上かご2Uと下かご2Dの両かご共に戸を閉じた上で(ステップS303)、故障したA号機の乗りかご1に隣接させるべく、救出側の乗りかご2の移動が開始されたか否かを判断する(ステップS304)。
【0043】
ここで救出側の乗りかご2の移動が開始されていない場合(ステップS304のNO)、再度前記ステップS303からの処理に戻って、上かご2U及び下かご2Dの戸閉状態を維持しながら、乗りかご2の移動が開始されるのを待機する。
【0044】
そして、乗りかご2の移動が開始されたと判断した時点で(ステップS304のYES)、次に救出運転制御部23は前記情報送受信部22により、故障したA号機の乗りかご1の階間調整幅の情報をエレベータ制御部3の荷重情報/階間調整幅検出部14、情報送受信部12を介して取得する(ステップS305)。
【0045】
ここで救出運転制御部23は、階間調整幅の情報を取得することができたか否かを判断する(ステップS306)。
【0046】
階間調整幅の情報が取得できたと判断した場合(ステップS306のYES)、乗りかご2が移動している間に、救出運転制御部23が取得した乗りかご1の階間調整幅の情報に合わせて乗りかご2の階間調整幅を合致するように調整させる(ステップS307)。
【0047】
また前記ステップS306において、階間調整場の情報が取得できなかったと判断した場合(ステップS306のNO)、救出運転制御部23は乗りかご2の階間調整幅を予め設定された代表値、例えば階間調整値の最大値の1/2となるように調整させる(ステップS308)。
【0048】
前記ステップS307またはステップS308での階間調整の処理後に、救出運転制御部23は故障したA号機の乗りかご1と隣接する位置に、救出を行なうB号機の乗りかご2を停止させる(ステップS309)。
【0049】
なお前記ステップS308において、乗りかご2の階間を代表値、例えば階間調整値の最大値の1/2に調整した場合、救出運転制御部23は、救出するB号機の乗りかご2の下かご2Dが、故障したA号機の乗りかご1の下かご1Dと隣接するように乗りかご2を停止させる。
【0050】
その後、故障したA号機の乗りかご1の上かご1Uと下かご1D、救出するB号機の乗りかご2の上かご2Uと下かご2Dとでサイド救出口1US,1DS,2US,2DSを開いて乗りかご1側の乗客を乗りかご2側に移動させる救出作業が実施される。
【0051】
救出運転制御部23は、乗りかご2の上かご2U、下かご2Dの各表示操作パネル2UP,2DPで、共に救出移動スイッチがオフされたか否かにより、救出作業が終了したかどうかを判断する(ステップS310)。
【0052】
ここで各表示操作パネル2UP,2DPの少なくとも一方で救出移動スイッチがオフされていないと判断した場合(ステップS310のNO)、救出運転制御部23はまだ救出作業が終了していないものとして、前記ステップS309の処理に戻り、乗りかご2を停止させた状態を維持する。
【0053】
こうしてステップS309,S310の処理を繰返し実行し、乗りかご2を停止させた状態を維持しながら、救出作業が終了して各表示操作パネル2UP,2DPで共に救出移動スイッチがオフされるのを待機する。
【0054】
そして、乗りかご2の上かご2U、下かご2Dの各表示操作パネル2UP,2DPで、共に救出移動スイッチがオフされたと判断した時点で(ステップS310のYES)、救出運転制御部23は救出作業が終了したものとして、救出したB号機の乗りかご2を基準階まで引き戻す運転を実施し(ステップS311)、以上で図3の両かご救出運転の処理を終了してメインルーチンに戻る。
【0055】
図2のメインルーチンにおいては、前記ステップS108での乗りかご2の上かご2U及び下かご2Dの双方を用いての救出運転処理後、または前記ステップS109での乗りかご2の一方、例えば下かご2Dを用いての救出運転処理後、エレベータ制御部4は例えば救出運転を完了した旨を登録されている連絡先に通知するなど、予め設定されている救出運転の後処理を実行した上で(ステップS110)、次の救出運転に備えて前記ステップS101からの処理に戻る。
【0056】
なお、前記実施形態では、故障が発生した号機の乗客の情報を知る手段として、上下各かごの乗客の荷重情報を取得するものとしたが、乗客の情報を取得する手段はこれに限らない。
【0057】
例えば、かご室に防犯カメラが設けられていれば、そのカメラで得られるかご室内の画像を用い、得られる画像情報に対して輪郭抽出処理を伴う顔認識処理を施すことで、乗客の数のみならず、性別や年齢層、体型等の情報を取得できる。
【0058】
画像情報から取得した乗客の各種情報、及び画像そのものを、乗客の荷重情報に加えて利用すれば、救出作業を行なう作業員に救出すべき乗客の状態を作業前に認識させておくことができ、より効率的に救出作業を実施できる。
【0059】
以上詳述した如く本実施形態によれば、故障したダブルデッキエレベータのサイド救出運転を統括的且つ迅速に開始して実施することが可能となる。
【0060】
なお、前記実施形態では、上下かご室の荷重情報を乗客の情報として取得するものとしたが、乗客の荷重情報を取得すること自体は、救出運転に限らず、エレベータの運転で定常的に実施してもので、救出運転用の専用のセンサ等を用いることなく、救出すべき乗客の情報を正確に検知できる。
【0061】
また、前記実施形態では、故障した号機から階間調整幅の情報を取得できなかった場合に、予め設定された代表値、例えば階間調整値の最大値の1/2となるように調整させるものとしたので、故障した号機のダブルデッキエレベータの階間調整幅が分からない状態であっても、より高い確率で救出作業に必要な開口面積を確保できる。
【0062】
さらに、故障した号機から階間調整幅の情報を取得できなかった場合に設定する代表値は、故障した号機の停止している階位置と、故障する直前に走行していた方向または次に停止しようとしていた階数の情報が得られれば、それらの内容に応じて、故障している号機の階間調整幅を類推する演算により算出することも考えられる。
【0063】
以上、実施形態を説明したが、前記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1,2…乗りかご、1D,2D…下かご、1DP,1UP,2DP,2UP…表示操作パネル、1US,1DS,2US,2DS…サイド救出口、1F,2F…かごフレーム、1M1,1M2,2M1,2M2…モータ(M)、1U,2U…上かご、3,4…エレベータ制御部、11,21…救出運転モード選択部、12,22…情報送受信部、13,23…救出運転制御部、14,24…荷重情報/階間調整幅検出部、5…監視盤。
図1
図2
図3