(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1は、一実施形態に係るエレベータ制御システムの概略構成例を示す。
図1に示すエレベータ制御システムは、乗りかご11、カメラ12、画像処理装置13、携帯端末14、呼び受信装置15及びエレベータ制御装置16によって構成される。なお、
図1では乗りかごが1台の場合を例示しているが、エレベータ制御システムには複数台の乗りかごが含まれるとしても良い。以下、各部11〜16の機能構成について説明する。
【0008】
乗りかご11の出入口上部には、カメラ12が設置されている。具体的には、カメラ12は、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中にレンズ部分を乗場20側に向けて設置されている。
【0009】
カメラ12は、例えば車載カメラなどの小型の監視カメラであり、広角レンズを有し、1秒間に数コマ(例えば30コマ/秒)の画像を連続的に撮影可能である。カメラ12は、乗りかご11が各階に到着して戸開したときに、乗場20の状態を乗りかご11内のかごドア11b付近の状態を含めて撮影する。
【0010】
カメラ12によって連続的に撮影された各画像(映像)は、画像処理装置13によってリアルタイムに解析処理される。画像処理装置13は、例えば、各画像の中から人物を抽出し、その人物の動きを追跡するなどの解析処理を行う。
【0011】
より詳しくは、画像処理装置13は、
図2(a)に示すように、各画像の中から乗りかご11内のかごドア11b付近にいる後ろ姿の人物を抽出し、当該後ろ姿の人物の動きを追跡する。これによれば、
図2(b)に示すように、後ろ姿の人物の動きが乗場20側に向かう動きである場合、画像処理装置13は、当該人物を乗りかご11から降車する乗客とみなすことができ、ひいては、乗りかご11から降車する乗客の人数(以下、「降車人数」と表記する)を算出することができる。同様に、画像処理装置13は、
図3(a)に示すように、各画像の中から乗場20にいる正面向きの人物を抽出し、当該正面向きの人物の動きを追跡する。これによれば、
図3(b)に示すように、正面向きの人物の動きが乗りかご11側に向かう動きである場合、画像処理装置13は、当該人物を乗りかご11に乗車する乗客とみなすことができ、ひいては、乗りかご11に乗車する乗客の人数(以下、「乗車人数」と表記する)を算出することができる。
【0012】
なお、画像処理装置13によって算出された降車人数を示す降車人数情報や、乗車人数を示す乗車人数情報は、エレベータ制御装置16に適宜送信される。
【0013】
携帯端末14は、呼び受信装置15と無線通信可能な端末であり、例えばスマートフォンやタブレット端末がこれに相当する。この携帯端末14には、乗場呼びを発生可能なアプリケーションが予めインストールされる。「乗場呼び」とは、乗りかご11を当該乗場20に呼ぶための信号であり、登録階と行先方向の情報を含む。なお、携帯端末14は、乗場呼びを発生可能な別のもの(例えば行先階が記録されたICカードなど)に適宜置き換えられても良い。例えば、携帯端末14が行先階を記録したICカードに置き換えられる場合、呼び受信装置15もICカード読取装置に置き換えられる。この場合、ICカードがICカード読取装置によって読み取られると、当該ICカード読取装置が設置されている階が登録階になり、当該登録階から当該ICカードに記録された行先階への方向が行先方向になることで、乗場呼びが発生する。
【0014】
呼び受信装置15は各階の乗場20にそれぞれ設置され、携帯端末14から発生した乗場呼びを受信する。また、呼び受信装置15は、受信した乗場呼びをエレベータ制御装置16に送信する。
【0015】
エレベータ制御装置16は、例えば乗りかご11の速度制御やかごドア11bの開閉制御、各種操作ボタンに対応した制御などを含むエレベータ全体の運転制御を行う。このエレベータ制御装置16には、
図1に示すように、乗場呼び登録装置17と戸開放時間演算装置18とが設けられている。
【0016】
乗場呼び登録装置17には、呼び受信装置15から送られてくる乗場呼びが登録される。エレベータ制御装置16は、乗場呼び登録装置17に乗場呼びが登録されると、当該乗場呼びの割当信号を乗りかご11に対して出力する。つまり、乗りかご11は、乗場呼び登録装置17に登録された乗場呼びに応答し、当該乗場呼びの登録階に向かって移動する。
【0017】
戸開放時間演算装置18は、呼び受信装置15から送られてくる乗場呼びの入力を受け付けると、当該乗場呼びを自装置内の図示せぬ一時メモリに登録する。このとき、一時メモリに登録された乗場呼びの数をカウントするカウンタの値に1が加算される。なお、一時メモリに登録された登録階が所定階の乗場呼びは、乗りかご11が当該乗場呼びに応答し、登録階(所定階)に移動し、当該登録階(所定階)から出発したときに削除される。これに伴い、所定階の乗場呼びの数をカウントするカウンタの値も0にリセットされる。
【0018】
また、戸開放時間演算装置18は、かごドア11bが戸開しきってから(かごドアの戸開が完了してから)その状態(戸開放状態)を維持する時間(戸開放時間)を演算(算出)する。算出された戸開放時間は、エレベータ制御装置16によるかごドア11bの戸開閉制御に利用される。
【0019】
次に、
図4のフローチャートを参照して、エレベータ制御システムによって実現される動作の一例について説明する。
【0020】
まず、携帯端末14から乗場呼びが発生すると(ステップS1)、呼び受信装置15は、当該乗場呼びを受信する(ステップS2)。受信された乗場呼びは、エレベータ制御装置16に送信される。
【0021】
エレベータ制御装置16は、呼び受信装置15から送られてくる乗場呼びの入力を受け付けると、乗場呼び登録装置17を参照して、入力を受け付けた乗場呼びが乗場呼び登録装置17に既に登録された乗場呼びであるか否かを判定する(ステップS3)。なお、既に登録されている乗場呼びであると判定された場合(ステップS3のYES)、後述するステップS6の処理に進む。
【0022】
一方、まだ登録されていない乗場呼びであると判定された場合(ステップS3のNO)、エレベータ制御装置16は、入力を受け付けた乗場呼びを乗場呼び登録装置17に登録する(ステップS4)。その後、エレベータ制御装置16は、乗場呼び登録装置17に登録された乗場呼びの割当信号を乗りかご11に対して出力する(ステップS5)。乗りかご11は、割当信号の入力を受け付けると、乗場呼び登録装置17に登録された乗場呼びの登録階に移動し始める。
【0023】
続いて、エレベータ制御装置16は、入力を受け付けた乗場呼びを戸開放時間演算装置18に登録する(ステップS6)。これに伴い、戸開放時間演算装置18は、自装置に登録された乗場呼びの数をカウントするカウンタの値に1を加算する(ステップS7)。より詳しくは、登録階が同一の乗場呼びの数をカウントするカウンタの値に1を加算する。
【0024】
次に、エレベータ制御装置16は、乗りかご11が減速開始地点に到達したか否かを判定する(ステップS8)。なお、減速開始地点とは、乗場呼びの登録階に停車するために、乗りかご11が減速を開始する地点を示す。
【0025】
乗りかご11が減速開始地点にまだ到達していないと判定された場合(ステップS8のNO)、エレベータ制御装置16は、呼び受信装置15から送られてくる新たな乗場呼びの入力を受け付けたか否かを判定する(ステップS9)。新たな乗場呼びの入力を受け付けている場合(ステップS9のYES)、上記したステップS3の処理に戻り、新たな乗場呼びの発生に対応する。一方、新たな乗場呼びの入力を受け付けていない場合(ステップS9のNO)、上記したステップS8の処理に戻り、乗りかご11が減速開始地点に到達したか否かを再度判定する。
【0026】
一方、ステップS8の処理において、乗りかご11が減速開始地点に到達したと判定された場合(ステップS8のYES)、戸開放時間演算装置18は、現時点でのカウンタの値に基づいて戸開放時間を演算する(ステップS10)。例えば、1つの乗場呼びに対しての戸開放時間が2秒と予め設定され、上記したカウンタの値が3であった場合、戸開放時間(すなわち、乗客が乗りかご11に乗車するのにかかる(乗りかご11への乗車に要する)と推定される時間)は6秒(=2*3)と求められる。
【0027】
乗りかご11が登録階に到着すると、エレベータ制御装置16はかごドア11bを戸開する(ステップS11)。かごドア11bが戸開しきって戸開放状態になると、求められた戸開放時間のカウントダウンが開始される。
【0028】
一方で、画像処理装置13は、カメラ12によって連続的に撮影された各画像の中から、かごドア11b付近にいる後ろ姿の人物を抽出し、当該後ろ姿の人物の動きを追跡して、乗りかご11からの降車人数を算出する。
【0029】
戸開放時間演算装置18は、降車人数を示す降車人数情報を画像処理装置13から取得する(ステップS12)。そして、戸開放時間演算装置18は、取得された降車人数情報によって示される降車人数に応じて戸開放時間を延長する(ステップS13)。具体的には、上記したように1つの乗場呼びに対しての戸開放時間が2秒と予め設定され、降車人数が5人であった場合、延長時間は10秒(=2*5)と求められ、当該延長時間(すなわち、乗客が乗りかご11から降車するのにかかると推定される時間)が戸開放時間に加算される。つまり、上記したように、元々6秒であった戸開放時間のカウントダウンが開始され、戸開放時間が残り2秒であった場合、戸開放時間は12秒(=2+10)まで延長される。
【0030】
この間に、画像処理装置13は、カメラ12によって連続的に撮影された各画像の中から乗場20にいる正面向きの人物を抽出し、当該正面向きの人物の動きを追跡して、乗りかご11への乗車人数を算出する。
【0031】
続いて、戸開放時間演算装置18は、乗車人数を示す乗車人数情報を画像処理装置13から取得する(ステップS14)。そして、戸開放時間演算装置18は、取得された乗車人数情報によって示される乗車人数と、自装置に登録された乗場呼びの数との差分を算出し、当該差分に応じて戸開放時間をさらに延長する(ステップS15)。具体的には、上記したように1つの乗場呼びに対しての戸開放時間が2秒と予め設定され、上記した差分が1人であった場合、延長時間は2秒(=2*1)と求められ、当該延長時間(すなわち、乗場呼びを発生させていない乗客が乗りかご11に乗車するのにかかると推定される時間)が戸開放時間にさらに加算される。つまり、上記したように、元々6秒であった戸開放時間のカウントダウンが開始され、カウントダウンの途中で戸開放時間が12秒まで延長され、その後のカウントダウンによって戸開放時間が残り4秒であった場合、戸開放時間は6秒(=4+2)まで延長される。
【0032】
なお、上記した差分は、携帯端末14を使って乗場呼びを登録していないが、乗りかご11に乗車しようとしている乗客の人数に相当する。
【0033】
戸開放時間のカウントダウンが終了すると、エレベータ制御装置16はかごドア11bを戸閉し、乗りかご11は乗客の目的階に向けて移動し始め(ステップS16)、ここでの処理は終了する。この際、乗場呼び登録装置17及び戸開放時間演算装置18に登録された当該乗場呼びは削除され、かつ当該乗場呼びに関し、戸開放時間演算装置18によってカウントされるカウンタの値は0にリセットされる。
【0034】
以上説明した一実施形態によれば、エレベータ制御システムは、携帯端末14から発生した乗場呼びの入力を受け付け、当該入力を受け付けた乗場呼びの数(一時メモリに登録された乗場呼びの数)に基づいて戸開放時間を演算する戸開放時間演算装置18と、戸開放時間演算装置18によって算出された戸開放時間にしたがって、かごドア11bの戸開閉制御を行うエレベータ制御装置16とを備えている。これによれば、携帯端末と連動して、エレベータのドアの戸開閉制御を実行し得るエレベータ制御システムを提供することができる。
【0035】
<第1の変形例>
以下、第1の変形例について説明する。
ここでは、エレベータ制御装置16が戸閉促進機能をさらに有している場合について説明する。戸閉促進機能とは、乗場呼びの発生に伴い、乗りかご11が当該乗場呼びの登録階に移動し、かごドア11bが戸開放状態になり、戸開放時間のカウントダウンが開始されたにも関わらず、乗場20に乗客がいない場合、戸開放時間のカウントダウンが終了する前に、かごドア11bを戸閉してしまう機能である。
【0036】
なお、乗場呼びが発生したにも関わらず、乗場20に乗客がいない場合としては、悪戯によって乗場呼びが発生した場合や、乗場呼びを発生させたが、乗りかご11が到着する前に、乗客が乗場20から移動してしまった場合などが考えられる。
【0037】
ここで、
図5のフローチャートを参照して、戸閉促進機能を有するエレベータ制御システムによって実現される動作の一例について説明する。但し、
図4に示した処理と同一の処理手順については同一の符号を付し、ここではその詳しい説明を省略するものとする。
【0038】
ステップS1〜S14の処理が実行された後に、戸開放時間演算装置18は、取得された乗車人数情報によって示される乗車人数が1人以上であるか否かを判定する(ステップS21)。なお、乗車人数情報によって示される乗車人数が1人以上である場合(ステップS21のYES)、ステップS15の処理に進み、上記した差分に応じて戸開放時間が延長される。
【0039】
一方、乗車人数情報によって示される乗車人数が1人未満である、つまり、0人である場合(ステップS21のNO)、エレベータ制御装置16は、カメラ12によって連続的に撮影される各画像を用いて乗りかご11から乗客が降車し終えたことを確認した後に、戸開放時間のカウントダウンが終了していなかったとしても、ステップS16の処理を実行し、ここでの処理を終了させる。
【0040】
この第1の変形例によれば、乗場呼びが発生したにも関わらず、乗場20に乗客がいない場合には、戸開放時間のカウントダウンの終了を待たずに、かごドア11bを戸閉可能な戸閉促進機能を有しているので、乗場20に乗客がいないにも関わらず戸閉しないという不都合を解消することができ、ひいては、乗客にとってより快適な環境を提供することができる。
【0041】
<第2の変形例>
次に、第2の変形例について説明する。
ここでは、戸開放時間があまりに長くなってしまうと、乗客に不便が生じてしまうので、戸開放時間に上限(閾値)を設ける場合について説明する。
【0042】
図6は、戸開放時間に上限を設けた場合にエレベータ制御システムによって実現される動作の一例について説明する。但し、
図4に示した処理と同一の処理手順については同一の符号を付し、ここではその詳しい説明を省略するものとする。
【0043】
ステップS1〜S15の処理が実行された後に、戸開放時間演算装置18は、ステップS10の処理によって算出された戸開放時間と、ステップS13,S15の処理によってそれぞれ算出された延長時間との和を算出する(ステップS31)。これによれば、最終的な戸開放時間が算出される。
【0044】
続いて、戸開放時間演算装置18は、ステップS31の処理において算出された戸開放時間が、予め設定された戸開放時間の上限を超えているかどうかを判定する(ステップS32)。なお、戸開放時間の上限を超えていないと判定された場合(ステップS32のNO)、ステップS16の処理に進み、戸開放時間のカウントダウンが終了次第、かごドア11bを戸閉する。
【0045】
一方、戸開放時間の上限を超えていると判定された場合(ステップS32のYES)、エレベータ制御装置16は、他の乗りかごに対して引き戻し呼びを発生させる(ステップS33)。「引き戻し呼び」とは、乗りかご11が現在停止している階床(引き戻し階)に他の乗りかごを引き戻す(移動させる)ための呼びの信号であり、引き戻し階の情報を含む。
【0046】
その後、エレベータ制御装置16は、図示せぬマイクを通して、別の乗りかごがもう少ししたら到着する旨を乗客に対してアナウンスした上で、戸開放時間が予め設定された上限に達し次第、戸開放時間のカウントダウンを終了させて、ステップS16の処理を実行し、ここでの処理を終了させる。
【0047】
この第2の変形例によれば、戸開放時間に上限を設け、戸開放時間がこの上限を超えた場合には、引き戻し呼びを発生させる機能を有しているので、悪戯に戸開放時間が長引くことを防ぐことができると共に、乗車しきれなかった乗客が再度乗場呼びを発生させずとも他の乗りかごを呼ぶことができる。すなわち、乗客にとってより快適な環境を提供することができる。
【0048】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。