【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【文献】
岡山 秀彰、他,Si細線導波路による偏波変換Braggグレーティングにおける1次モード回折に関する検討,<第62回>応用物理学会春季学術講演会講演予稿集,2015年 3月,p.04−467
【文献】
岡山秀彰、他,偏波無依存Si導波路Braggグレーティングの検討,応用物理学関係連合講演会講演予稿集,2012年 3月,p.05-124
【文献】
A.Liu, et al.,Power-Efficient Thermo-Optic Tunable Filters Based on Polymeric Waveguide Bragg Gratings,IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS,2014年 2月 1日,Vol.26, No.3,p.313-315
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、小型化や量産性に有利な光デバイスの開発に当たり、Si(シリコン)を導波路の材料として用いるSi導波路が注目を集めている。
【0003】
Si導波路では、実質的に光の伝送路となる光導波路コアを、Siを材料として形成する。そして、Siよりも屈折率の低い例えばシリカ等を材料としたクラッドで、光導波路コアの周囲を覆う。このような構成により、光導波路コアとクラッドとの屈折率差が極めて大きくなるため、光導波路コア内に光を強く閉じ込めることができる。その結果、曲げ半径を例えば1μm程度まで小さくした、小型の曲線導波路を実現することができる。そのため、電子回路と同程度の大きさの光回路を作成することが可能であり、光デバイス全体の小型化に有利である。
【0004】
また、Si導波路では、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の半導体装置の製造過程を流用することが可能である。そのため、チップ上に電子機能回路と光機能回路とを一括形成する光電融合(シリコンフォトニクス)の実現が期待されている。
【0005】
ところで、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplex)方式を利用した受動型光加入者ネットワーク(PON:Passive Optical Network)では、加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)毎に異なる受信波長が割り当てられる。局側装置(OLT:Optical Line Terminal)は、各ONUへの下り光信号を、送り先の受信波長に対応した送信波長でそれぞれ生成し、これらを多重して送信する。各ONUは、複数の波長で多重された下り光信号から、自身に割り当てられた受信波長の光信号を選択的に受信する。ONUでは、各々の受信波長の下り光信号を選択的に受信するために、波長フィルタが使用される。そして、波長フィルタを、上述したSi導波路によって構成する技術が実現されている。
【0006】
Si導波路を用いる波長フィルタとしては、例えば、マッハツェンダー干渉器を用いたものやアレイ導波路グレーティングを用いたものがある。また、Si導波路を用いる波長フィルタとして、リング共振器(例えば特許文献1〜3等)や、グレーティング型(例えば特許文献4等)又は方向性結合器型(例えば特許文献5等)の波長フィルタがある。これらの波長フィルタは、電極を設け、電極の発熱を利用することによって、出力波長を可変にできるという利点がある。
【0007】
ここで、グレーティング型又は方向性結合器型の波長フィルタでは、出力光の波長ピークが単峰性である。これに対し、リング共振器は、出力光の波長ピークが多峰性である。そのため、リング共振器では、出力光の複数の波長ピークを利用したバーニア効果によって、波長可変域を拡大することができるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0018】
(構造)
図1を参照して、この発明の実施の形態による波長フィルタについて説明する。
図1(A)は、波長フィルタを示す概略的斜視図である。
図1(B)は、
図1(A)に示す波長フィルタをI−I線で平面方向に切り取った概略的端面図である。なお、
図1(B)では、後述する光導波路コアのみを示してあり、クラッドを省略している。また、
図1(B)では、ハッチングを省略している。また、
図1(C)は、
図1(A)に示す波長フィルタをII−II線で厚さ方向に切り取った概略的端面図である。
【0019】
なお、以下の説明では、各構成要素について、光の伝播方向に沿った方向を長さ方向とする。また、支持基板の厚さに沿った方向を厚さ方向とする。また、長さ方向及び厚さ方向に直交する方向を幅方向とする。
【0020】
波長フィルタ100は、支持基板10、クラッド20、光導波路コア30及び電極40を備えて構成されている。
【0021】
支持基板10は、例えば単結晶Siを材料とした平板状体で構成されている。
【0022】
クラッド20は、支持基板10上に、支持基板10の上面10aを被覆し、かつ光導波路コア30を包含して形成されている。クラッド20は、例えばSiO
2を材料として形成されている。
【0023】
光導波路コア30は、クラッド20よりも高い屈折率を有する例えばSiを材料として形成されている。その結果、光導波路コア30は、実質的な光の伝送路として機能し、入力された光が光導波路コア30の平面形状に応じた伝播方向に伝播する。また、光導波路コア30は、伝播する光が支持基板10へ逃げるのを防止するために、支持基板10から例えば少なくとも1μm以上離間して形成されているのが好ましい。
【0024】
また、ここでは、光導波路コア30は、厚さ方向でのシングルモード条件を達成すべく、例えば150〜500nmの厚さで形成するのが好ましい。
【0025】
また、光導波路コア30は、第1変換部31、キャビティ部33及び第2変換部35がこの順に直列に接続されて構成されている。
【0026】
第1変換部31には、全長に渡ってグレーティングが形成されている。このグレーティングにより、第1変換部31は、入力される特定の波長の基本モードのTE偏波を、基本モードのTM偏波に変換して反射する。そして、第1変換部31は、その他の波長のTE偏波を、基本モードのTE偏波のままで透過させる。また、第1変換部31は、入力される特定の波長の基本モードのTM偏波を、基本モードのTE偏波に変換して反射する。そして、第1変換部31は、その他の波長のTM偏波を、基本モードのTM偏波のままで透過させる。
【0027】
グレーティングにおける位相整合条件は、グレーティング周期をΛ、基本モードのTE偏波に対する等価屈折率をn
TE0、基本モードのTM偏波に対する等価屈折率をn
TM0として、下式(1)で表される。
【0028】
2π/Λ=2π(n
TE0+n
TM0)/λ ・・・(1)
グレーティングでは、上式(1)が成立する波長λ、すなわちブラッグ波長のTE偏波又はTM偏波の一方が、TE偏波又はTM偏波の他方に変換されてブラッグ反射される。
【0029】
グレーティングは、基本領域51、第1回折領域53及び第2回折領域55を含んで構成されている。基本領域51、第1回折領域53及び第2回折領域55は、それぞれ第1変換部31の長さ方向に沿って延在して設けられている。また、第1回折領域53及び第2回折領域55は、基本領域51を挟んでそれぞれ基本領域51と隣接して設けられている。
【0030】
第1回折領域53には、基本領域51と厚さが等しい第1凸部53aと基本領域51よりも厚さが小さい第1凹部53bとが交互にかつ周期的に複数形成されている。また、第2回折領域55には、基本領域51と厚さが等しい第2凸部55aと基本領域51よりも厚さが小さい第2凹部55bとが交互に、かつ第1回折領域53と同一周期で複数形成されている。
【0031】
第1凸部53aと第2凸部55aとは、基本領域51に対して互いに反対称となる位置に形成されている。また、第1凹部53bと第2凹部55bとは、基本領域51に対して互いに反対称となる位置に形成されている。
【0032】
基本領域51、第1回折領域53及び第2回折領域55の幅、第1凹部53bと第2凹部55bの厚さ、第1凸部53a及び第1凹部53b並びに第2凸部55a及び第2凹部55bの周期(グレーティング周期)Λは、反射すべき波長λに応じて上式(1)が成立するように設計される。
【0033】
キャビティ部33は、ここでは、TE偏波及びTM偏波に対してシングルモード条件を達成する幅で形成される。
【0034】
また、キャビティ部33は、このキャビティ部33を伝播する光のうち、特定の波長の光の位相を整合させる。キャビティ部33の長さは、位相整合させる波長に応じて設計される。
【0035】
第2変換部35には、第1変換部31と同様のグレーティングが全長に渡って形成されている。このグレーティングにより、第2変換部35は、入力される特定の波長の基本モードのTE偏波を、基本モードのTM偏波に変換して反射する。そして、第2変換部35は、その他の波長のTE偏波を、基本モードのTE偏波のままで透過させる。また、第2変換部35は、入力される特定の波長の基本モードのTM偏波を、基本モードのTE偏波に変換して反射する。そして、第2変換部35は、その他の波長のTM偏波を、基本モードのTM偏波のままで透過させる。
【0036】
第2変換部35のグレーティングにおける、基本領域61、第1回折領域63及び第2回折領域65の幅、第1凹部63bと第2凹部65bの厚さ、第1凸部63a及び第1凹部63b並びに第2凸部65a及び第2凹部65bの周期Λは、第1変換部31のグレーティングと同じ条件で、反射すべき波長λに対して上式(1)を満たすように設計される。
【0037】
なお、第2変換部35の長さ(すなわちグレーティングの長さ)は、第1変換部31の長さと異なるように設定することができる。
【0038】
電極40は、クラッド20を介して、キャビティ部33を被覆する位置に形成される。電極40に電流を流すことでジュール熱を発生させることができ、この発熱による熱光学効果によって、キャビティ部33の屈折率を変化させる。その結果、キャビティ部33によって位相整合させる、第1変換部31及び第2変換部35のグレーティングからの透過光の波長を変化させることができる。
【0039】
波長フィルタ100では、第1変換部31から入力され、第1変換部31のグレーティングを透過する光、及び第2変換部35のグレーティングで反射され第1変換部31で反射される光のうち、キャビティ部33の長さに応じて位相が整合する波長の光が、第2変換部35から出力される。
【0040】
従って、波長フィルタ100は、キャビティ部33によって位相整合する、特定の波長の光を取り出す波長フィルタとして使用することができる。
【0041】
また、キャビティ部33を、出力させる所望の波長の基本モードのTE偏波及びTM偏波双方について、πの整数倍の位相が生じる長さとすることによって、TE偏波及びTM偏波双方について、共通の特定の波長の光を取り出すことができる。すなわち、波長フィルタを偏波無依存とすることができる。さらに、キャビティ部33を、基本モードのTE偏波及びTM偏波双方について、πの2以上の整数倍の位相が生じる長さとすることによって、キャビティ部33を伝播する光に対して、複数の波長の位相を整合させることができる。従って、波長フィルタ100は、出力光の波長ピークを多峰性とすることができる。
【0042】
また、波長フィルタ100では、電極40を用いてキャビティ部33に熱を与えることができる。そのため、キャビティ部33が位相整合させる光の波長を変化させることができる。従って、波長フィルタ100は、出力波長が可変である。
【0043】
また、この実施の形態では、光導波路コア30が、2つの変換部(第1変換部31及び第2変換部35)と1つのキャビティ部33を含む構成について説明した。しかし、光導波路コア30が、n個(nは2以上の整数)の変換部とn―1個のキャビティ部とを含む構成とすることもできる。
図2を参照して、波長フィルタが、n個の変換部とn―1個のキャビティ部とを含む場合の構成について説明する。
図2は、n個の変換部とn―1個のキャビティ部とを含む波長フィルタ(波長フィルタ150)を示す概略的端面図であり、
図1(B)に対応する平面に沿った端面を示している。なお、
図2では、クラッドを省略して示してある。
【0044】
n個の変換部160とn―1個のキャビティ部165とは、交互に直列に接続される。
【0045】
各変換部160には、上述した第1変換部31及び第2変換部35と同様のグレーティングが全長に渡って形成されている。このグレーティングにより、各変換部160は、入力される特定の波長のTE偏波を、TM偏波に変換して反射する。また、各変換部160は、入力される特定の波長のTM偏波を、TE偏波に変換して反射する。そして、第1変換部31は、その他の波長のTE偏波及びTM偏波を、そのままで透過させる。
【0046】
各変換部160の基本領域161、第1回折領域163及び第2回折領域165の幅、第1凹部163bと第2凹部165bの厚さ、第1凸部163a及び第1凹部163b並びに第2凸部165a及び第2凹部165bの周期Λは、反射すべき波長λに応じて上式(2)及び(3)が成立するように設計される。
【0047】
なお、各変換部160の長さ(すなわちグレーティングの長さ)は、一部又は全部が異なるように設定することができる。異なる長さのグレーティングを含むことによって、透過光の波長ピークのフラットトップ特性を向上させることができる。
【0048】
各キャビティ部165は、それぞれを伝播するTE偏波及びTM偏波のうち、キャビティ部165の長さに応じた特定の波長のTE偏波及びTM偏波の位相を整合させる。
【0049】
このように、変換部160及びキャビティ部165を多段に接続することによって、出力光の波長ピークのフラットトップ特性を向上させることができる。
【0050】
また、この実施の形態の波長フィルタは、周知のリング共振器と等価な波長フィルタと見なすことができる。ここで、
図3を参照して、この実施の形態の波長フィルタとリング共振器と動作を比較する。
図3は、波長フィルタとリング共振器の動作を説明するための概略的平面図である。
図3(A)は、波長フィルタを示す概略的端面図であり、
図1(B)に対応する平面に沿った端面を示している。また、
図3(A)では、ハッチングを省略している。また、
図3(B)は、リング共振器を示す概略的平面図である。なお、
図3(A)及び(B)では、クラッド及び支持基板を省略し、光導波路コアのみを示してある。
【0051】
図3(A)に示す構成例では、この実施の形態の波長フィルタ(波長フィルタ200)は、3つの変換部(第1変換部31、第2変換部35及び第3変換部39)及び2つのキャビティ部(第1キャビティ部33及び第2キャビティ部37)を備えている。
【0052】
一方、
図3(B)に示す構成例では、リング共振器300は、2つの入出力部(第1入出力部301及び第2入出力部307)及び2つのリング導波路部(第1リング導波路部303及び第2リング導波路部305)を備えている。第1入出力部301は、第1ポート301a及び第2ポート301bを含んでいる。また、第2入出力部307は、第3ポート307a及び第4ポート307bを含んでいる。さらに、リング共振器300では、第1入出力部301及び第1リング導波路部303間において第1方向性結合器311が、第1リング導波路部303及び第2リング導波路部305間において第2方向性結合器313が、第2リング導波路部305及び第2入出力部307間において第3方向性結合器315が、それぞれ構成されている。
【0053】
リング共振器300では、例えば第1入出力部301の第1ポート301aからTE偏波が入力される。TE偏波は、第1方向性結合器311、第2方向性結合器313及び第3方向性結合器315によって、第1リング導波路部303、第2リング導波路部305及び第2入出力部307に順次移行する。そして、第1リング導波路部303及び第2リング導波路部305の径に応じて、第1リング導波路部303及び第2リング導波路部305と共振する波長のTE偏波が、第2入出力部307の第4ポート307bから出力される。また、リング共振器300では、例えば第2入出力部307の第3ポート307aからTM偏波が入力される。TM偏波は、第3方向性結合器315、第2方向性結合器313及び第1方向性結合器311によって、第2リング導波路部305、第1リング導波路部303及び第1入出力部301に順次移行する。そして、第2リング導波路部305及び第1リング導波路部303の径に応じて共振する波長のTM偏波が、第1入出力部301の第2ポート301bから出力される。なお、光の経路は可逆なので、TE偏波及びTM偏波ともに上記とは逆の順に伝播させることもできる。
【0054】
波長フィルタ200の、偏波変換を行う3つの変換部(第1変換部31、第2変換部35及び第3変換部39)は、リング共振器300の、TE偏波とTM偏波の経路を定める3つの方向性結合器(第1方向性結合器311、第2方向性結合器313及び第3方向性結合器315)に対応する。また、波長フィルタ200の、出力させる波長について位相整合を行う2つのキャビティ部(第1キャビティ部33及び第2キャビティ部37)は、リング共振器300の、共振波長を定める2つのリング導波路部(第1リング導波路部303及び第2リング導波路部305)に対応する。従って、波長フィルタ200は、リング共振器300と等価な波長フィルタとして使用することができる。
【0055】
ここで、リング共振器300は、方向性結合器311、313及び315において作製誤差の影響を受けやすい。これに対し、波長フィルタ200は、方向性結合器を構成として含まない。従って、波長フィルタ200は、リング共振器300と等価な機能を有しつつ、リング共振器300と比べて作製誤差の影響を受けにくい。
【0056】
また、波長フィルタ200は、変換部及びキャビティ部を直列に接続した1本の直線導波路として構成することができる。従って、TE偏波とTM偏波とを別の経路を伝播させることなく、また、曲線的なリング導波路を設けることなく、TE偏波及びTM偏波双方に対して特定の波長を出力できる。
【0057】
(特性評価)
発明者は、FDTD(Finite Differential Time Domain)を用いて、この実施の形態の波長フィルタの特性を評価するシミュレーションを行った。
【0058】
このシミュレーションでは、
図3(A)に示す、3つの変換部と2つのキャビティ部を備える波長フィルタ200について、第1変換部31から基本モードのTE偏波及びTM偏波を入力し、変換部を透過して第3変換部39から出力される基本モードのTE偏波及びTM偏波の強度、及び変換部で偏波変換されつつ反射されて第1変換部31から出力される基本モードのTE偏波及びTM偏波の強度を解析した。
【0059】
このシミュレーションでは、以下のように波長フィルタを設計した。すなわち、光導波路コア30は、3つの変換部及び2つのキャビティ部を含め全体的に厚さを0.3μm、幅を0.6μmとした。また、各変換部には、第1回折領域53及び第2回折領域55の幅がそれぞれ0.15μm、第1凹部53bと第2凹部55bの厚さがそれぞれ0.22μm、第1凸部53a及び第1凹部53b並びに第2凸部55a及び第2凹部55bの周期Λがそれぞれ0.289μmのグレーティングを形成した。
【0060】
また、3つの変換部のうち両端に位置する第1変換部31及び第3変換部39は、長さを11.56μmとした。また、3つの変換部のうち中央に位置する第2変換部35は、長さを18.496μmとした。また、第1キャビティ部33及び第2キャビティ部37は、それぞれ長さを25.432μmとした。
【0061】
シミュレーションの結果を、
図4に示す。
図4では、縦軸に、出力光の強度をdB目盛で、また、横軸に波長をμm単位でとって示してある。
図4において、曲線411は、第3変換部39から出力されるTE偏波の、また、曲線413は、第1変換部31から出力されるTE偏波の、また、曲線421は、第3変換部39から出力されるTM偏波の、また、曲線423は、第1変換部31から出力されるTM偏波の強度を示している。
【0062】
図4に示すように、TE偏波及びTM偏波ともに第3変換部39から出力される出力光として、複数のフラットトップの波長ピークが確認できる。また、TE偏波及びTM偏波で、第3変換部39から出力される透過光及び第1変換部31から出力される反射光のピークが一致しており、波長フィルタを偏波無依存に使用できることが確認できる。
【0063】
(製造方法)
この実施の形態による波長フィルタは、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板を利用することによって、簡易に製造することができる。以下、波長フィルタの製造方法について説明する。
【0064】
すなわち、まず、支持基板層、SiO
2層、及びSi層が順次積層されて構成されたSOI基板を用意する。次に、例えばエッチング技術を用い、Si層をパターニングすることによって、光導波路コア30を形成する。その結果、支持基板10としての支持基板層上にSiO
2層が積層され、さらにSiO
2層上に光導波路コア30が形成された構造体を得ることができる。次に、例えばCVD法を用いて、SiO
2層上に、SiO
2を、光導波路コア30を被覆して形成する。その結果、SiO
2のクラッド20によって光導波路コア30が包含される。次に、クラッド20上に電極40を形成して、波長フィルタを製造することができる。