特許第6335245号(P6335245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335245
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】部材の組立構造および部材の組立方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/54 20170101AFI20180521BHJP
   F16B 5/07 20060101ALI20180521BHJP
   B60J 7/04 20060101ALI20180521BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20180521BHJP
   F16B 5/10 20060101ALN20180521BHJP
【FI】
   B60Q3/54
   F16B5/07 H
   B60J7/04
   B60R13/02 A
   !F16B5/10 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-212934(P2016-212934)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-69962(P2018-69962A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2017年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005430
【氏名又は名称】株式会社ホンダアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝田 和也
(72)【発明者】
【氏名】服部 弘和
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−72865(JP,A)
【文献】 特許第5387385(JP,B2)
【文献】 登録実用新案第3093741(JP,U)
【文献】 特開2007−307955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/54
B60J 7/04
B60R 13/02
F16B 5/07
F16B 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面の少なくとも一部に第1面ファスナ(21)を設けた第1部材(15,42)と、上面の少なくとも一部に第2面ファスナ(22)を設けた第2部材(16,41)とを備え、前記第1面ファスナ(21)および前記第2面ファスナ(22)を係合することで前記第1部材(15,42)および前記第2部材(16,41)を結合可能な部材の組立構造であって、
板状に形成されて上面および下面にそれぞれ第3面ファスナ(26)および第4面ファスナ(27)を設けたスペーサ(24)を備え、前記第3面ファスナ(26)を前記第1面ファスナ(21)に係合し、前記第4面ファスナ(27)を前記第2面ファスナ(22)に係合することで、前記第1部材(15,42)および前記第2部材(16,41)を前記スペーサ(24)を挟んだ状態で結合可能とし
前記スペーサ(24)の外周部に、破断可能な脆弱部(28)を介して長尺状の把手部(29)を接続したことを特徴とする部材の組立構造。
【請求項2】
下面の少なくとも一部に第1面ファスナ(21)を設けた第1部材(15,42)と、上面の少なくとも一部に第2面ファスナ(22)を設けた第2部材(16,41)とを備え、前記第1面ファスナ(21)および前記第2面ファスナ(22)を係合することで前記第1部材(15,42)および前記第2部材(16,41)を結合可能な部材の組立構造であって、
上面および下面にそれぞれ第3面ファスナ(26)および第4面ファスナ(27)を設けたスペーサ(24)を備え、前記第3面ファスナ(26)を前記第1面ファスナ(21)に係合し、前記第4面ファスナ(27)を前記第2面ファスナ(22)に係合することで、前記第1部材(15,42)および前記第2部材(16,41)を前記スペーサ(24)を挟んだ状態で結合可能とし、
前記第1部材(15)は第1開口部(15a)が設けられたルーフ部材(15)であり、前記第2部材(16)は前記第1開口部(15a)と略同一形状の第2開口部(16a)を有して前記ルーフ部材(15)の下面を覆うルーフライニング(16)であり、前記スペーサ(24)の装着により前記第1、第2開口部(15a,16a)の縁部で前記ルーフ部材(15)および前記ルーフライニング(16)間の隙間を拡大し、前記拡大した隙間に車室内を照明する照明手段(23)を配置したことを特徴とする部材の組立構造。
【請求項3】
板状に形成された前記スペーサ(24)の外周部に破断可能な脆弱部(28)を介して長尺状の把手部(29)を接続したことを特徴とする請求項2に記載の部材の組立構造。
【請求項4】
矩形状の前記第2開口部(16a)の前縁、後縁および左右側縁に沿うように相互に分離した長尺状の前部スチフナ(17)、後部スチフナ(18)および左右の側部スチフナ(19)が設けられ、前記前部スチフナ(17)および前記後部スチフナ(18)の少なくとも一方をクリップ(20)で前記ルーフ部材(15)に結合し、前記左右の側部スチフナ(19)を前記スペーサ(24)を介して前記ルーフ部材(15)に結合したことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の部材の組立構造。
【請求項5】
下面の少なくとも一部に第1面ファスナ(21)を設けた第1部材(15,42)と、上面の少なくとも一部に第2面ファスナ(22)を設けた第2部材(16,41)と、上面および下面にそれぞれ第3面ファスナ(26)および第4面ファスナ(27)を設けたスペーサ(24)とを備え、前記第1面ファスナ(21)および前記第2面ファスナ(22)を係合することで前記第1部材(15,42)および前記第2部材(16,41)を結合可能とするとともに、前記第3面ファスナ(26)を前記第1面ファスナ(21)に係合し、前記第4面ファスナ(27)を前記第2面ファスナ(22)に係合することで、前記第1部材(15,42)および前記第2部材(16,41)を前記スペーサ(24)を挟んだ状態で結合可能とした部材の組立構造を実施するための部材の組立方法であって、
結合された前記第1部材(15,42)の前記第1面ファスナ(21)および前記第2部材(16,41)の前記第2面ファスナ(22)を分離する第1工程と、
前記スペーサ(24)の前記第3面ファスナ(26)を前記第1面ファスナ(21)に係合するとともに、前記スペーサ(24)の前記第4面ファスナ(27)を前記第2面ファスナ(22)に係合する第2工程と、
を含むことを特徴とする部材の組立方法。
【請求項6】
前記第2工程において、板状に形成された前記スペーサ(24)の外周部に接続された把手部(29)を掴んで該スペーサ(24)を前記第1部材(15,42)および前記第2部材(16,41)に結合し、
前記第2工程に続く第3工程で、前記把手部(29)を前記スペーサ(24)に接続する脆弱部(28)を破断して該把手部(29)を該スペーサ(24)から分離することを特徴とする、請求項5に記載の部材の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下面の少なくとも一部に第1面ファスナを設けた第1部材と、上面の少なくとも一部に第2面ファスナを設けた第2部材とを備え、前記第1面ファスナおよび前記第2面ファスナを係合することで前記第1部材および前記第2部材を結合可能な部材の組立構造と、その部材の組立構造を実施するための部材の組立方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のサンルーフユニットの開口部と、サンルーフユニットの下面を覆うルーフライニングの開口部との間に隙間を形成し、その隙間内に配置した灯体が発する光で車室内を間接照明するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5387385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、矩形状の開口部を有するサンルーフユニットの下面に矩形状の開口部を有するルーフライニングを面ファスナで結合したルーフ構造において、開口部に沿うサンルーフユニットの下面およびルーフライニングの上面間に隙間を形成し、その隙間に長尺状の灯体を後付けで取り付けて車室内を間接照明しようとしても、そもそもサンルーフユニットの下面およびルーフライニングの上面間に灯体を収納可能な隙間が存在しない場合には、無理やりに隙間を形成しようとすると面ファスナが剥がれてしまい、サンルーフユニットに対してルーフライニングが位置ずれして美観を損ねたり、サンルーフユニットに対してルーフライニングを強固に支持できなくなったりする問題がある。
【0005】
そこで、サンルーフユニットに対してルーフライニングを確実に支持しながら、サンルーフユニットおよびルーフライニング間に間接照明用の灯体を収納可能な隙間を簡単に形成することが望まれる。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、第1、第2部材を第1、第2面ファスナで結合したものにおいて、第1、第2部材の結合状態を維持しながら第1、第2部材間に簡単に隙間を形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、下面の少なくとも一部に第1面ファスナを設けた第1部材と、上面の少なくとも一部に第2面ファスナを設けた第2部材とを備え、前記第1面ファスナおよび前記第2面ファスナを係合することで前記第1部材および前記第2部材を結合可能な部材の組立構造であって、板状に形成されて上面および下面にそれぞれ第3面ファスナおよび第4面ファスナを設けたスペーサを備え、前記第3面ファスナを前記第1面ファスナに係合し、前記第4面ファスナを前記第2面ファスナに係合することで、前記第1部材および前記第2部材を前記スペーサを挟んだ状態で結合可能とし前記スペーサの外周部に破断可能な脆弱部を介して長尺状の把手部を接続したことを特徴とする部材の組立構造が提案される。
【0008】
また請求項に記載された発明によれば、下面の少なくとも一部に第1面ファスナを設けた第1部材と、上面の少なくとも一部に第2面ファスナを設けた第2部材とを備え、前記第1面ファスナおよび前記第2面ファスナを係合することで前記第1部材および前記第2部材を結合可能な部材の組立構造であって、上面および下面にそれぞれ第3面ファスナおよび第4面ファスナを設けたスペーサを備え、前記第3面ファスナを前記第1面ファスナに係合し、前記第4面ファスナを前記第2面ファスナに係合することで、前記第1部材および前記第2部材を前記スペーサを挟んだ状態で結合可能とし、前記第1部材は第1開口部が設けられたルーフ部材であり、前記第2部材は前記第1開口部と略同一形状の第2開口部を有して前記ルーフ部材の下面を覆うルーフライニングであり、前記スペーサの装着により前記第1、第2開口部の縁部で前記ルーフ部材および前記ルーフライニング間の隙間を拡大し、前記拡大した隙間に車室内を照明する照明手段を配置したことを特徴とする部材の組立構造が提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、板状に形成された前記スペーサの外周部に破断可能な脆弱部を介して長尺状の把手部を接続したことを特徴とする部材の組立構造が提案される。
【0010】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項2または請求項3の構成に加えて、矩形状の前記第2開口部の前縁、後縁および左右側縁に沿うように相互に分離した長尺状の前部スチフナ、後部スチフナおよび左右の側部スチフナが設けられ、前記前部スチフナおよび前記後部スチフナの少なくとも一方をクリップで前記ルーフ部材に結合し、前記左右の側部スチフナを前記スペーサを介して前記ルーフ部材に結合したことを特徴とする部材の組立構造が提案される。
【0011】
また請求項5に記載された発明によれば、下面の少なくとも一部に第1面ファスナを設けた第1部材と、上面の少なくとも一部に第2面ファスナを設けた第2部材と、上面および下面にそれぞれ第3面ファスナおよび第4面ファスナを設けたスペーサとを備え、前記第1面ファスナおよび前記第2面ファスナを係合することで前記第1部材および前記第2部材を結合可能とするとともに、前記第3面ファスナを前記第1面ファスナに係合し、前記第4面ファスナを前記第2面ファスナに係合することで、前記第1部材および前記第2部材を前記スペーサを挟んだ状態で結合可能とした部材の組立構造を実施するための部材の組立方法であって、結合された前記第1部材の前記第1面ファスナおよび前記第2部材の前記第2面ファスナを分離する第1工程と、前記スペーサの前記第3面ファスナを前記第1面ファスナに係合するとともに、前記スペーサの前記第4面ファスナを前記第2面ファスナに係合する第2工程とを含むことを特徴とする部材の組立方法が提案される。
【0012】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項5の構成に加えて、前記第2工程において、板状に形成された前記スペーサの外周部に接続された把手部を掴んで該スペーサを前記第1部材および前記第2部材に結合し、前記第2工程に続く第3工程で、前記把手部を前記スペーサに接続する脆弱部を破断して該把手部を該スペーサから分離することを特徴とする部材の組立方法が提案される。
【0013】
なお、実施の形態のサンルーフフレーム15は本発明の第1部材あるいはルーフ部材に対応し、実施の形態のサンルーフ開口15aは本発明の第1開口部に対応し、実施の形態のルーフライニング16は本発明の第2部材に対応し、実施の形態のサンルーフ開口16aは本発明の第2開口部に対応し、実施の形態のフロアパネル41は本発明の第2部材に対応し、実施の形態のカーペット42は本発明の第1部材に対応する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の構成によれば、下面の少なくとも一部に第1面ファスナを設けた第1部材と、上面の少なくとも一部に第2面ファスナを設けた第2部材とを備え、第1面ファスナおよび第2面ファスナを係合することで第1部材および第2部材は結合可能である。上面および下面にそれぞれ第3面ファスナおよび第4面ファスナを設けたスペーサを備え、第3面ファスナを第1面ファスナに係合し、第4面ファスナを第2面ファスナに係合することで、第1部材および第2部材をスペーサを挟んだ状態で結合可能としたので、第1、第2部材に特別の加工を加えることなく、スペーサを介して第1、第2部材の結合関係を維持しながら、第1、第2部材間にスペーサの厚さに応じた任意の大きさの隙間を形成することができる。
【0015】
また請求項1、請求項3の構成によれば、板状に形成されたスペーサの外周部に破断可能な脆弱部を介して長尺状の把手部を接続したので、把手部を用いて第1、第2部材間の狭い空間にスペーサを容易に装着しながら、スペーサの装着完了後に脆弱部を折損して把手部を簡単に除去することができる。
【0016】
また請求項の構成によれば、第1部材は第1開口部が設けられたルーフ部材であり、第2部材は第1開口部と略同一形状の第2開口部を有してルーフ部材の下面を覆うルーフライニングであり、スペーサの装着により第1、第2開口部の縁部でルーフ部材およびルーフライニング間の隙間を拡大し、拡大した隙間に車室内を照明する照明手段を配置したので、ルーフ部材とルーフライニングとの間に隙間を形成して後付けの照明手段を取り付け、車室内を間接照明することができる。
【0017】
また請求項4の構成によれば、矩形状の第2開口部の前縁、後縁および左右側縁に沿うように相互に分離した長尺状の前部スチフナ、後部スチフナおよび左右の側部スチフナが設けられ、前部スチフナおよび後部スチフナの少なくとも一方をクリップでルーフ部材に結合し、左右の側部スチフナをスペーサを介してルーフ部材に結合したので、左右の側部スチフナの位置でスペーサによりルーフ部材とルーフライニングとの間に隙間を形成しても、その隙間が前部スチフナあるいは後部スチフナの位置における隙間の大きさに影響を及ぼすことがない。しかもルーフライニングはクリップでルーフ部材に結合されて位置決めされるので、ルーフライニングがルーフ部材に対して位置ずれするのが防止される。
【0018】
また請求項5の構成によれば、第1工程で、結合された第1部材の第1面ファスナおよび第2部材の第2面ファスナを分離し、第2工程で、スペーサの第3面ファスナを第1面ファスナに係合するとともに、スペーサの第4面ファスナを第2面ファスナに係合するので、第1、第2部材に特別の加工を加えることなく、スペーサを介して第1、第2部材の結合関係を維持しながら、第1、第2部材間にスペーサの厚さに応じた任意の大きさの隙間を形成することができる。
【0019】
また請求項6の構成によれば、第2工程において、板状に形成されたスペーサの外周部に接続された把手部を掴んで該スペーサを第1部材および第2部材に結合し、第2工程に続く第3工程で、把手部をスペーサに接続する脆弱部を破断して該把手部を該スペーサから分離するので、把手部を用いて第1、第2部材間の狭い空間にスペーサを容易に装着しながら、スペーサの装着完了後に脆弱部を折損して把手部を簡単に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】自動車のルーフの上面図。(第1の実施の形態)
図2図1の2部拡大図。(第1の実施の形態)
図3図2の3−3線断面図。(第1の実施の形態)
図4図2の4−4線断面図。(第1の実施の形態)
図5】スペーサの斜視図。(第1の実施の形態)
図6図1に対応する図(スペーサ装着状態)。(第1の実施の形態)
図7図3に対応する図(スペーサ装着状態)。(第1の実施の形態)
図8】スペーサ装着の作用説明図(その1)。(第1の実施の形態)
図9】スペーサ装着の作用説明図(その2)。(第1の実施の形態)
図10】自動車のトランクルームの縦断面図。(第2の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【第1の実施の形態】
【0021】
以下、図1図9に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。なお、本明細書において前後方向、左右方向(車幅方向)および上下方向とは、運転席に着座した乗員を基準として定義される。
【0022】
図1図4に示すように、車両のルーフは、その車幅方向両側部に沿って前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレール11,11を備えており、左右のルーフサイドレール11,11の車幅方向外側が左右一対のルーフサイドパネル12,12で覆われるとともに、左右のルーフサイドパネル12,12間が車室の上方に位置するルーフパネル13で覆われる。ルーフパネル13の中央部には矩形状のサンルーフ開口13aが形成されており、このサンルーフ開口13aに嵌合するようにサンルーフユニット14が支持される。サンルーフユニット14の下面は矩形枠状に形成された金属製のサンルーフフレーム15で構成されており、サンルーフフレーム15の中央にはルーフパネル13のサンルーフ開口13aよりも一回り小さいサンルーフ開口15aが形成される。ルーフパネル13のサンルーフ開口13aは前後方向にスライド可能なルーフガラス34で覆われるとともに、ルーフガラス34の下方には日光を遮るサンシェード35が前後方向にスライド可能に配置される。
【0023】
ルーフの下面は車室の天井を構成するルーフライニング16で覆われており、その中央にはサンルーフフレーム15のサンルーフ開口15aと略同形のサンルーフ開口16aが形成される。ルーフライニング16の車幅方向両側縁は左右のルーフサイドレール11,11の下端に固定される。
【0024】
ルーフライニング16のサンルーフ開口16aの周縁の上面には、硬質合成樹脂で帯板状に形成した前部スチフナ17、後部スチフナ18および左右一対の側部スチフナ19,19がホットメルト接着剤により接着される。サンルーフ開口16aの前縁に沿うように接着された前部スチフナ17は、車幅方向に所定間隔で設けられた3個のクリップ20…でサンルーフフレーム15のサンルーフ開口15aの前縁下面に固定される。サンルーフ開口16aの車幅方向両側縁に沿うように接着された左右の側部スチフナ19,19の各々は、サンルーフフレーム15のサンルーフ開口15aの側縁下面に前後方向に所定間隔で設けられた3個の第1面ファスナ21…と、側部スチフナ19の上面に前後方向に所定間隔で設けられた3個の第2面ファスナ22…との結合により固定される。またサンルーフ開口16aの後縁に沿うように接着された後部スチフナ18は、側部スチフナ19と同様に各3個の第1面ファスナ21…および2面ファスナ22…の結合により、サンルーフフレーム15のサンルーフ開口15aの後縁下面に固定される。この状態で、ルーフライニング16のサンルーフ開口16aの周縁はサンルーフフレーム15のサンルーフ開口15aの周縁との間に僅かな隙間α(図4参照)が形成される。
【0025】
左右の側部スチフナ19,19の前端は前部スチフナ17の車幅方向外端に連結されておらず、また左右の側部スチフナ19,19の後端は後部スチフナ18の車幅方向外端に連結されていないため、前部スチフナ17、後部スチフナ18および左右の側部スチフナ19,19の対向端部間でルーフライニング16は撓むように変形することができる。
【0026】
上述したように、車両が工場で完成して出荷されるとき、サンルーフフレーム15のサンルーフ開口15aの周縁とルーフライニング16のサンルーフ開口16aの周縁とは、その前縁において3個のクリップ20…で固定されるとともに、その車幅方向両側縁および後縁において9個の第1面ファスナ21…および9個の第2面ファスナ22…により固定される。
【0027】
図6および図7に示すように、販売店において、顧客の注文によるオプション装備として、ルーフライニング16サンルーフ開口16aの車幅方向両側縁に沿うように、車室内を間接照明するための左右一対の照明手段23,23が後付けで取り付けられる。
【0028】
照明手段23は、サンルーフフレーム15のサンルーフ開口15aの側縁と、その下方に対向するルーフライニング16のサンルーフ開口16aの側縁との間の当初の隙間α(図4参照)をスペーサ24…により上下方向に広げ、そこに形成された空間を利用して取り付けられる。
【0029】
図5に示すように、スペーサ24は、所定厚さを有する矩形板状のスペーサ本体25と、スペーサ本体25の上面に設けられた第3面ファスナ26と、スペーサ本体25の下面に設けられた第4面ファスナ27とを備えるもので、スペーサ本体25の一側縁に容易に破断可能な小径の脆弱部28を介して帯板状の把手部29が接続される。スペーサ24の第3面ファスナ26は、サンルーフフレーム15の第1面ファスナ21に結合可能であり、スペーサ24の第4面ファスナ27は、ルーフライニング16の第2面ファスナ22に結合可能である。
【0030】
照明手段23は、透明な合成樹脂で棒状に形成された導光体30と、その導光体30の前後端に設けられたLEDよりなる一対の光源31,31とを備える。
【0031】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0032】
工場から出荷された車両に後付けで照明手段23,23を取り付けるには、図8(A)に示すように、先ずサンルーフフレーム15のサンルーフ開口15aの一側縁とルーフライニング16のサンルーフ開口16aの一側縁とを結合する各3個の第1面ファスナ21…および第2面ファスナ22…を分離し、サンルーフフレーム15およびルーフライニング16間の隙間を拡大する。このとき、ルーフライニング16のサンルーフ開口16aの周縁を補強する前部スチフナ17、後部スチフナ18および側部スチフナ19は連続せずに対向端部において分離しているため、ルーフライニング16のサンルーフ開口16aの前縁および後縁の隙間に影響を及ぼすことなく、側縁の隙間だけを拡大することができる。
【0033】
続いて、図8(B)に示すように、把手部29を掴んでスペーサ24をサンルーフフレーム15およびルーフライニング16間の拡大された隙間に挿入し、スペーサ本体25の上面の第3面ファスナ26をサンルーフフレーム15の下面の第1面ファスナ21に結合するとともに、スペーサ本体25の下面の第4面ファスナ27をルーフライニング16の上面の第2面ファスナ22に結合する。そして図9(C)に示すように、脆弱部28を折り曲げて折損してから把手部29を引く抜くことで、スペーサ24から把手部29を除去する。
【0034】
このようにして、3個のスペーサ24…を装着することでルーフライニング16のサンルーフ開口16aの一方の側縁の隙間を当初のαからβ(図9(C)参照)に拡大し、サンルーフフレーム15の下面およびルーフライニング16の上面間に前後方向に延びる空間を形成する。そして上記作業を繰り返すことで、ルーフライニング16のサンルーフ開口16aの他方の側縁の隙間を当初のαからβに拡大して空間を形成する。
【0035】
続いて、図9(D)に示すように、ルーフライニング16のサンルーフ開口16aの側縁を撓ませながら前記空間に照明手段23を挿入し、両面テープ32…でサンルーフフレーム15の下面に固定するとともにルーフライニング16の上面との間にクッション材33を挿入することで、照明手段23の取り付けを完了する(図7参照)。このとき、隙間βが充分に広がらない場合には、スペーサ24の第3面ファスナ26および第4面ファスナ27の一部を一時的に剥がすことで、隙間βを必要な大きさに広げることができる。
【0036】
この状態で、光源31,31に通電すると導光体30が発光し、その光がサンルーフフレーム15のサンルーフ開口15aおよびルーフライニング16のサンルーフ開口16a間の隙間βを通って車室内に漏れることで、車室内を間接照明することができる。
【0037】
以上のように、本実施の形態によれば、下面に第1面ファスナ21…を設けたサブフレーム15と、上面に第2面ファスナ22…を設けたルーフライニング16とを、第1面ファスナ21…および第2面ファスナ22…の係合により結合した状態から、上面および下面にそれぞれ第3面ファスナ26…および第4面ファスナ27…を備えるスペーサ24…をサンルーフフレーム15およびルーフライニング16の間に挿入し、第3面ファスナ26…を第1面ファスナ21…に係合し、第4面ファスナ27…を第2面ファスナ22…に係合することで、サンルーフフレーム15およびルーフライニング16をスペーサ24…を挟んだ状態で結合可能としたので、サンルーフフレーム15およびルーフライニング16に特別の加工を加えることなく、スペーサ24…を介してサンルーフフレーム15およびルーフライニング16の結合関係を維持しながら、サンルーフフレーム15およびルーフライニング16間にスペーサスペーサ24…の厚さに応じた任意の大きさの隙間を形成することができる。そして拡大した隙間に車室内を照明する照明手段23を取り付けるので、その照明手段23で車室内を間接照明することができる。
【0038】
また板状に形成されたスペーサ24の外周部に破断可能な脆弱部28を介して長尺状の把手部29を接続したので、把手部29を用いてサンルーフフレーム15およびルーフライニング16間の狭い空間にスペーサ24を容易に装着しながら、スペーサ24の装着完了後に脆弱部28を折損して把手部29を簡単に除去することができる。
【0039】
またルーフライニング16の矩形状のサンルーフ開口16aの前縁、後縁および車幅方向両側縁に沿うように相互に分離した長尺状の前部スチフナ17、後部スチフナ18および左右の側部スチフナ19,19が設けられ、左右の側部スチフナ19,19をスペーサ24…を介してサンルーフフレーム15に結合したので、左右の側部スチフナ19,19の位置でスペーサ24…によりサンルーフフレーム15およびルーフライニング16間に隙間βを形成しても、その隙間βが前部スチフナ17あるいは後部スチフナ18の位置における当初の隙間の大きさに影響を及ぼすことがない。
【0040】
しかもルーフライニング16の前縁部は位置決め機能を有するクリップ20…でサンルーフフレーム15に固定されるので、ルーフライニング16がサンルーフフレーム15に対して位置ずれするのが防止される。
【第2の実施の形態】
【0041】
次に、図10に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0042】
自動車のトランクルームのフロアパネル41には物品を収納可能な凹部41aが形成されており、凹部41aの周囲の平坦部41bはカーペット42で覆われ、凹部41aはカーペット42にヒンジ43を介して接続されたリッド44で覆われる。図10(A)に示すように、工場出荷時には、フロアパネル41とカーペット42とはヒンジ43の近傍に設けた第1面ファスナ21および第2面ファスナ22で結合されている。販売店においてオプション装備として照明手段23を後付けするには、図10(B)に示すように、第1面ファスナ21および第2面ファスナ22を分離し、そこに第3面ファスナ26および第4面ファスナ27を有するスペーサ24を装着することでフロアパネル41とカーペット42との間に隙間を形成した後、その隙間を利用して照明手段23を取り付ければ良い。リッド44を開くと照明手段23が発光してフロアパネル41とカーペット42との間の隙間から光が漏れることで、凹部41aを間接照明することができる。
【0043】
この第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果を達成することができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0045】
例えば、本発明の適用個所は第1、第2の実施の形態の自動車のルーフやトランクルームに限定されるものではなく、自動車以外の用途として、パーティションの取り付け部、オフィスの壁の幅木の取り付け部、点検口のカバーの取り付け部、OAフロアの取り付け部、内装パネルの取り付け部等にも適用可能である。
【0046】
また第1の実施の形態では前部スチフナ17だけをサンルーフフレーム15にクリップ20…で固定しているが、後部スチフナ18だけをサンルーフフレーム15にクリップ20…で固定しても良く、前部スチフナ17および後部スチフナ18の両方をサンルーフフレーム15にクリップ20…で固定しても良い。
【符号の説明】
【0047】
15 サンルーフフレーム(第1部材、ルーフ部材)
15a サンルーフ開口(第1開口部)
16 ルーフライニング(第2部材)
16a サンルーフ開口(第2開口部)
17 前部スチフナ
18 後部スチフナ
19 側部スチフナ
20 クリップ
21 第1面ファスナ
22 第2面ファスナ
23 照明手段
24 スペーサ
26 第3面ファスナ
27 第4面ファスナ
28 脆弱部
29 把手部
41 フロアパネル(第2部材)
42 カーペット(第1部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10