特許第6335255号(P6335255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6335255
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/04 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   B66B23/04 C
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-235657(P2016-235657)
(22)【出願日】2016年12月5日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】久下 敬輔
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−150138(JP,A)
【文献】 特許第072812(JP,C2)
【文献】 特開2016−104661(JP,A)
【文献】 特開2014−133645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋に支持アングルによって支持されるトラスと、
前記トラスの一端部に設けられた機械室と、
前記トラス内の長手方向に沿って配され、かつ、無端状に連結された複数の踏段と、
前記踏段の左右両側に立設された欄干と、
前記欄干の上部を走行する無端状の手摺りベルトと、
前記機械室内に配され、前記踏段を駆動させるための左右一対の主駆動スプロケットと、
左右一対の前記主駆動スプロケットと同期して回転し、前記手摺りベルトが掛け渡された左右一対のシーブと、
を有し、
前記シーブは、
回転軸と、
前記回転軸が同軸に固定された軸プレートと、
前記軸プレートに基部が回転自在に設けられ、前記軸プレートから外方に等角度で突出した複数の調整ロッドと、
複数の前記調整ロッドの外側の先端にそれぞれ設けられた円弧板状の分割輪と、
複数の前記分割輪の外周に設けられた弾性体よりなるリング状の駆動輪と、
前記軸プレートと同軸に配され、かつ、前記軸プレートと独立して回転可能な円板状の調整プレートと、
複数の前記調整ロッドと前記調整プレートとを連結する連結部と、
前記調整プレートと前記軸プレートの相対角度を変更して、複数の前記調整ロッドの径方向に対する傾斜角度を変更して、前記駆動輪の直径を調整する調整部材と、
を有し、
前記調整部材は、
前記軸プレートにおいて中心より外側に設けられ、かつ、軸方向に突出した第1調整突部と、
前記調整プレートに開口し、前記第1調整突部が露出する調整貫通孔と、
前記調整プレートの前記調整貫通孔の縁部に設けられた第2調整突部と、
前記第1調整突部と前記第2調整突部との距離を調整する調整ボルトと、
を有する乗客コンベア。
【請求項2】
建屋に支持アングルによって支持されるトラスと、
前記トラスの一端部に設けられた機械室と、
前記トラス内の長手方向に沿って配され、かつ、無端状に連結された複数の踏段と、
前記踏段の左右両側に立設された欄干と、
前記欄干の上部を走行する無端状の手摺りベルトと、
前記機械室内に配され、前記踏段を駆動させるための左右一対の主駆動スプロケットと、
左右一対の前記主駆動スプロケットと同期して回転し、前記手摺りベルトが掛け渡された左右一対のシーブと、
を有し、
前記シーブは、
回転軸と、
前記回転軸に同軸に配され、かつ、前記回転軸とは独立して回転可能なリング状の軸プレートと、
前記軸プレートに基部が回転自在に設けられ、前記軸プレートから外方に等角度毎に突出した複数の調整ロッドと、
複数の前記調整ロッドの外側の先端にそれぞれ設けられた円弧板状の分割輪と、
複数の前記分割輪の外周に設けられた弾性体よりなるリング状の駆動輪と、
前記回転軸が同軸に固定され、かつ、前記軸プレートと独立して回転可能な円板状の調整プレートと、
複数の前記調整ロッドと前記調整プレートとを連結する連結部と、
前記調整プレートと前記軸プレートの相対角度を変更して、複数の前記調整ロッドの径方向に対する傾斜角度を変更して、前記駆動輪の直径を調整する調整部材と、
を有し、
前記調整部材は、
前記軸プレートにおいて中心より外側に設けられ、かつ、軸方向に突出した第1調整突部と、
前記調整プレートに開口し、前記第1調整突部が露出する調整貫通孔と、
前記調整プレートの前記調整貫通孔の縁部に設けられた第2調整突部と、
前記第1調整突部と前記第2調整突部との距離を調整する調整ボルトと、
を有する乗客コンベア。
【請求項3】
前記連結部は、
前記各調整ロッドに開口した径方向の長孔と、
前記調整プレートから等角度毎に突出し、前記長孔にそれぞれ係合する調整ボスと、
を有する請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記連結部は、
前記調整ロッドから等角度毎に突出した調整ボスと、
前記調整プレートに等角度毎に周方向に開口し、かつ、前記調整ボスが係合する長孔と、
を有する請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記軸プレートにおいて等角度毎に突出した軸ボスと、
前記各調整ロッドの基部にそれぞれ開口し、前記軸ボスが係合する軸ボス孔と、
を有する請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記各調整ロッドが径方向と平行になったときに、隣接する前記分割輪の間に隙間が形成されている、
請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記各調整ロッドが径方向に対し傾斜しているときに、隣接する前記分割輪同士が接触している、
請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記手摺りベルトを前記シーブの径内方向に押圧する押圧部材を有する、
請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項9】
前記手摺りベルトを、前記シーブの外周部に案内する複数の第1案内ローラと、
前記手摺りベルトを、前記シーブの外周部から前記欄干の外方に案内する複数の第2案内ローラと、
を有する請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアの手摺りベルトは、走行する踏段に乗っている乗客がバランスを崩して転倒しないための手掛かりとして設けられている。したがって、手摺りベルトの走行速度は、踏段の走行速度と同期していることが重要であるが、手摺りベルトの経年劣化によって、その走行速度が踏段より遅くなる場合がある。
【0003】
これを回避するために、従来、経年劣化によって手摺りベルトが伸びることを想定し、手摺りベルトに適度な緊張を付加して維持するための緩み取り機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−95536号公報
【特許文献2】特開2014−133645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手摺りベルトの走行速度は、手摺りベルトを駆動させるシーブ(手摺り駆動スプロケット)の周速度に一致し、この周速度は、シーブの直径と円周率πと回転数の積から求められる。
【0006】
シーブの回転数は、モータを含む駆動装置によって決定されるため、経年変化による変化はない。一方、シーブの直径は、シーブの表面に取り付けられている部材が摩耗し、小さくなる場合がある。
【0007】
そのため、シーブの直径が小さくなると周速度が低下し、手摺りベルトの緩み取り手段では、その走行速度の遅延を防ぐことができないという問題点があった。
【0008】
そこで本発明の実施形態は、乗客コンベアにおける手摺りベルトを駆動するシーブの直径を変更できる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、建屋に支持アングルによって支持されるトラスと、前記トラスの一端部に設けられた機械室と、前記トラス内の長手方向に沿って配され、かつ、無端状に連結された複数の踏段と、前記踏段の左右両側に立設された欄干と、前記欄干の上部を走行する無端状の手摺りベルトと、前記機械室内に配され、前記踏段を駆動させるための左右一対の主駆動スプロケットと、左右一対の前記主駆動スプロケットと同期して回転し、前記手摺りベルトが掛け渡された左右一対のシーブと、を有し、前記シーブは、回転軸と、前記回転軸が同軸に固定された軸プレートと、前記軸プレートに基部が回転自在に設けられ、前記軸プレートから外方に等角度で突出した複数の調整ロッドと、複数の前記調整ロッドの外側の先端にそれぞれ設けられた円弧板状の分割輪と、複数の前記分割輪の外周に設けられた弾性体よりなるリング状の駆動輪と、前記軸プレートと同軸に配され、かつ、前記軸プレートと独立して回転可能な円板状の調整プレートと、複数の前記調整ロッドと前記調整プレートとを連結する連結部と、前記調整プレートと前記軸プレートの相対角度を変更して、複数の前記調整ロッドの径方向に対する傾斜角度を変更して、前記駆動輪の直径を調整する調整部材と、を有し、前記調整部材は、前記軸プレートにおいて中心より外側に設けられ、かつ、軸方向に突出した第1調整突部と、前記調整プレートに開口し、前記第1調整突部が露出する調整貫通孔と、前記調整プレートの前記調整貫通孔の縁部に設けられた第2調整突部と、前記第1調整突部と前記第2調整突部との距離を調整する調整ボルトと、を有する乗客コンベアである。
【0010】
本発明の実施形態は、建屋に支持アングルによって支持されるトラスと、前記トラスの一端部に設けられた機械室と、前記トラス内の長手方向に沿って配され、かつ、無端状に連結された複数の踏段と、前記踏段の左右両側に立設された欄干と、前記欄干の上部を走行する無端状の手摺りベルトと、前記機械室内に配され、前記踏段を駆動させるための左右一対の主駆動スプロケットと、左右一対の前記主駆動スプロケットと同期して回転し、前記手摺りベルトが掛け渡された左右一対のシーブと、を有し、前記シーブは、回転軸と、前記回転軸に同軸に配され、かつ、前記回転軸とは独立して回転可能なリング状の軸プレートと、前記軸プレートに基部が回転自在に設けられ、前記軸プレートから外方に等角度毎に突出した複数の調整ロッドと、複数の前記調整ロッドの外側の先端にそれぞれ設けられた円弧板状の分割輪と、複数の前記分割輪の外周に設けられた弾性体よりなるリング状の駆動輪と、前記回転軸が同軸に固定され、かつ、前記軸プレートと独立して回転可能な調整プレートと、複数の前記調整ロッドと前記調整プレートとを連結する連結部と、前記調整プレートと前記軸プレートの相対角度を変更して、複数の前記調整ロッドの径方向に対する傾斜角度を変更して、前記駆動輪の直径を調整する調整部材と、を有し、前記調整部材は、前記軸プレートにおいて中心より外側に設けられ、かつ、軸方向に突出した第1調整突部と、前記調整プレートに開口し、前記第1調整突部が露出する調整貫通孔と、前記調整プレートの前記調整貫通孔の縁部に設けられた第2調整突部と、前記第1調整突部と前記第2調整突部との距離を調整する調整ボルトと、を有する乗客コンベアである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1のエスカレータの側面説明図。
図2】手摺りベルトがシーブに架け渡されている状態を示す側面図。
図3】左右一対のシーブの側面図であって、左側のシーブのみ縦断面図で示した図。
図4】直径Rが小さいときのシーブの正面図である。
図5】直径Rが大きいときのシーブの正面図である。
図6】調整ロッドを径方向に対し傾斜させた状態の第1調整突部と第2調整突部の拡大図。
図7】調整ロッドを径方向と平行にした状態の第1調整突部と第2調整突部の拡大図。
図8】シーブの部材の位置関係を示す図。
図9】(a)は軸プレートの正面図、(b)はその側面図。
図10】(a)は8個の調整ロッドを等角度毎に配した正面図、(b)はその縦断面図。
図11】(a)は8個の分割輪の正面図、(b)はその縦断面図。
図12】(a)は駆動輪の正面図、(b)はその縦断面図。
図13】(a)は調整プレートの正面図、(b)はその側面図。
図14】シーブの組み立て図。
図15】実施形態2のシーブの組み立て図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態の乗客コンベアを図面を参照して説明する。
【実施形態1】
【0013】
本発明の実施形態1のエスカレータ10を図1図14を参照して説明する。
【0014】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の構造について、図1に基づいて説明する。図1はエスカレータ10を側面から見た説明図である。
【0015】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
【0016】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の主駆動スプロケット24,24、左右一対のシーブ100,100が設けられている。この駆動装置18は、モータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。この駆動チェーン22により左右一対の主駆動スプロケット24,24が回転する。左右一対の主駆動スプロケット24,24と左右一対のシーブ100,100とは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20やディスクブレーキなどを制御する制御部50が設けられている。
【0017】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内には、左右一対の従動スプロケット26,26が設けられている。上階側の左右一対の主駆動スプロケット24,24と下階側の左右一対の従動スプロケット26,26との間には、左右一対の無端の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28には、複数の踏段30が等間隔で取り付けられている。モータ20が回転すると踏段30の前輪301は、トラス12に固定された不図示の案内レールを走行し、後輪302はトラス12に固定された案内レール25を走行する。
【0018】
トラス12の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って無端状の手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。
【0019】
欄干36の側面下部には、スカートガード44が設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0020】
手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内に侵入し、案内ローラ群64を介してシーブ100に掛け渡され、その後、案内ローラ群66を介してスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部48から正面スカートガード42外に表れる。そして、手摺りベルト38は、シーブ100が主駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。また、回転するシーブ100に走行する手摺りベルト38を押圧するための押圧部材70を有する。
【0021】
上階側の左右一対のスカートガード44,44の乗降口であって、機械室14の天井面には、上階側の乗降板32が水平に設けられている。下階側の左右一対のスカートガード44,44の乗降口であって、機械室16の天井面には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。上階側の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60に踏段30が侵入する。また、下階側の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0022】
(2)シーブ100の構造
次に、シーブ100の構造について図2図14を参照して説明する。なお、シーブ100は、いわゆる「手摺り駆動スプロケット」である。左右一対のシーブ100は、図2に示すように、回転軸110に同軸に設けられている。
【0023】
シーブ100は、主として図14に示すように回転軸110と同軸に固定された軸プレート200、複数の調整ロッド300と、複数の円弧板状の分割輪400、リング状の駆動輪500、調整プレート600とより構成されている。なお、本明細書において「径方向」とは、回転軸110を中心として放射状に拡がる方向を意味する。
【0024】
(2−1)軸プレート200
軸プレート200について説明する。軸プレート200は、図9(a)(b)に示すように、円板状であって、その一面の中心に回転軸110が同軸に固定されている。軸プレート200において、回転軸110が固定された反対側の面には、複数(例えば、8個)の軸ボス202が等角度毎に突出している。軸ボス202が突出している位置は、回転軸110よりも外周である。軸プレート200において、回転軸110が突出した同じ面には、図6図7図9(a)(b)に示すように、第1調整突部204が突出している。第1調整突部204には、調整ボルト206が貫通するネジ孔212が周方向に沿って貫通している。調整ボルト206については、後から説明する。
【0025】
(2−2)調整ロッド300
調整ロッド300について説明する。調整ロッド300は、図10(a)(b)に示すように、長方形の板状であって、本実施形態では8個がほぼ径方向に沿って設けられている。調整ロッド300の径方向の基部には、図9(a)(b)に示す軸プレート200の軸ボス202が係合する軸ボス孔302が開口している。また、調整ロッド300の径方向における中央部には、径方向に延びた長孔304が開口している。この調整ロッド300の厚みは、図10(b)に示すように、軸ボス孔302から長孔304が設けられている手前までは薄く、長孔304が設けられている位置から外側の先端部まではそれよりも厚く形成されている。調整ロッド300の外側の先端部は、図10(b)に示すように、二叉に分割された二叉部306が設けられ、この二叉部306の間には接続ピン308が取り付けられる。
【0026】
(2−3)分割輪400
分割輪400について説明する。円弧板状の分割輪400は、図11(a)(b)に示すように、8個が周方向に沿って設けられ、8個を組み合わせると円形を形成する。各分割輪400の内側には、接続片402が突出している。接続片402は、図3に示すように、調整ロッド300の二叉部306に係合し、接続ピン308が貫通して回動自在に連結される。
【0027】
(2−4)駆動輪500
駆動輪500について説明する。駆動輪500は、図12(a)(b)に示すように、弾性を有するゴム又は合成樹脂製のリング状であって、図4図5に示すように、円形に組み合わされた8個の分割輪400の外周部に取り付けられる。この駆動輪500は、弾性を有しているため直径が伸縮する。
【0028】
(2−5)調整プレート600
調整プレート600について説明する。調整プレート600は、図13(a)(b)に示すように、円板状であって、中心に円形の軸貫通孔602が開口している。調整プレート600は、図3に示すように、軸プレート200に同軸に重ねるようにして配置されるものであり、そのときに回転軸110が軸貫通孔602を貫通する。そして、調整プレート600は、回転軸110と軸プレート200に対し独立して回転可能となっている。調整プレート600の直径は、軸プレート200の直径よりも大きく形成されている。調整プレート600の一面の外周部には、8個の調整ボス604が等角度毎に突出している。調整ボス604は、調整ロッド300の長孔304と係合し、長孔304の中を移動可能となっている。軸貫通孔602と調整プレート600との間には、図6図7図13(a)に示すように、円弧状に調整貫通孔606が開口している。この調整貫通孔606には、図3図6図7に示すように、第1調整突部204が嵌まり込み露出する。調整ボス604が突出した一面とは反対の面であって、調整貫通孔606の周方向の縁部に、図6図7図13(a)に示すように、第2調整突部608が突出している。第2調整突部608の周方向に沿ってネジ孔610が貫通し、図6図7に示すように、調整ボルト206が螺合する。
【0029】
(3)シーブ100の組み立て方法
シーブ100の組み立て方法について説明する。
【0030】
まず、図14に示すように、軸プレート200から突出している回転軸110に、調整プレート600の軸貫通孔602を嵌め込み、図3図6図7に示すように、軸プレート200と調整プレート600を重ね、第1調整突部204を調整プレート600の調整貫通孔606から突出させる。
【0031】
次に、8個の調整ロッド300の基部に設けた軸ボス孔302を、図3図4図5図14に示すように、軸プレート200の8個の軸ボス202に係合する。それと同時に、軸プレート200に重ねられている調整プレート600の8個の調整ボス604を、8個の調整ロッド300の長孔304にそれぞれ係合する。これにより、8個の調整ロッド300は、軸ボス202を中心に回転自在となり、径方向に対し傾斜する。
【0032】
次に、8個の調整ロッド300の外側の先端部にある二叉部306に、図3図14に示すように、接続ピン308を介して各分割輪400の接続片402をそれぞれ取り付け、分割輪400を円形にして完成させる。
【0033】
次に、リング状の駆動輪500を、図3図5図14に示すように、円形に構成した8個の円弧状の分割輪400の外方に係合する。
【0034】
次に、調整ボルト206を、図6図7に示すように、第1調整突部204と第2調整突部608の間にナット210を介して螺合させる。これにより、軸プレート200に対し調整プレート600が相対回転する。
【0035】
次に、図4図5に示すように、回転軸110に固定された軸プレート200に対し、調整プレート600が、回転軸110を中心に相対回転すると、調整ボス604が周方向に回転し、それと共に調整ロッド300が、径方向と平行な状態から傾斜し、この傾斜中に長孔304に沿って調整ボス604は移動する。調整ロッド300が径方向と平行な場合は、図5に示すように、駆動輪500の直径Rが最も大きくなる。調整ロッド300が径方向に対し傾斜している場合は、図4に示すように、8個の分割輪400の位置が径内方向に移動し、駆動輪500の直径Rが小さくなる。なお、図4に示すように、8個の分割輪400は、シーブ100の直径Rが最小になった場合に互いに接触し、図5に示すように、シーブ100の直径Rが大きくなるほど隣接する分割輪400,400の隙間が大きくなる。また、図5に示すように、隣接する分割輪400の隙間が大きくなっても、その外周にリング状の駆動輪500が設けられているため、手摺りベルト38の移動に支障が生じない。
【0036】
(4)シーブ100を構成する部材の位置関係
シーブ100を構成する部材の位置関係について図8を参照して説明する。
【0037】
寸法aは、シーブ100の中心(点A)から軸ボス202(点B)までの長さを示す。
【0038】
寸法bは、軸ボス202(点B)から接続ピン308(点C)までの長さを示す。
【0039】
寸法cは、シーブ100の中心(点A)から接続ピン308(点C)までの直線長さを示す。
【0040】
寸法dは、接続ピン308(点C)から駆動輪500の表面(点D)までの最短距離を示す。
【0041】
rは、シーブ100の半径である。
【0042】
Rは、シーブ100の直径であり、R=2rである。
【0043】
角度θは、A、B、Cを結んだ角度を示し、90°〜180°である。
【0044】
なお、寸法a、b、c、d、r、Rは長さ寸法であるため、全て整数である。以上により、下記の関係が求められる。

r=c+d ・・・(1)

寸法cは第二余弦定理により、

c^2=a^2+b^2−2ab*cosθ ・・・(2)

により求まる。
【0045】
寸法cが最大になる条件はθ=180°であり、そのときの寸法cは、

c^2=a^2+b^2−2ab*(cos180°)
=a^2+b^2−2ab*(−1)
=a^2+b^2+2ab
=(a+b)^2 ・・・(3)

寸法a、b、cは全て正の数であるため、

c=a+b ・・・(4)

となる。以上により、図6図7に示すように、調整ボルト206を回転させて第1調整突部204と第2調整突部608の距離を調整すると、図4図5に示すように、軸プレート200に対し調整プレート600が相対回転し、調整プレート600の調整ボス604に取り付けられている調整ロッド300の傾きを調整できる。そして、図4に示すように、調整ロッド300が径方向と平行になったとき(θ=180°)にシーブの直径Rが最大となる。図5図8に示すように、調整ロッド300が径方向に対し傾斜するほどシーブ100の直径Rは小さくなる。
【0046】
(5)シーブ100への押圧手段の構造
次に、シーブ100への押圧手段の構造について図2を参照して説明する。
【0047】
シーブ100の下側外周部には、上記したように押圧部材70が配されている。押圧部材70は、円弧型の基台72に複数の押圧ローラ74が所定間隔毎に回転自在に配され、全ての押圧ローラ74が、シーブ100の下外周部に架け渡された手摺りベルト38を外方から径内方向(中心方向)に押圧する。
【0048】
円弧型の基台72の下端部は、トラス12に固定され、基台72の上端部は、バネ支持部材78を介してトラス12に固定されている。バネ支持部材78は、コイルバネ80、雄ネジ棒82、固定端84及び移動端86、ナット88とより構成されている。図2に示すように、バネ支持部材78の雄ネジ棒82の下端が基台72の上端部に固定され、雄ネジ棒82の上端に移動端86が嵌合し、移動端86には縮む方向に付勢力を有するコイルバネ80の上端が固定されている。コイルバネ80の下端には固定端84が固定され、この固定端84は、トラス12に固定されている。移動端86が、ナット88の締め付け具合によって雄ネジ棒82に沿って移動し、コイルバネ80の付勢力が変化する。これにより、基台72の複数の押圧ローラ74がシーブ100の径内方向へ押圧する力を調整できる。
【0049】
シーブ100の上階側には、上記したように案内ローラ群64がトラス12に設けられている。案内ローラ群64は、円弧型の基台90に複数の案内ローラ92が回転自在に配され、インレット部46からシーブ100の下外周部に手摺りベルト38を案内する。
【0050】
シーブ100の下階側には、上記したように案内ローラ群66がトラス12に設けられている。案内ローラ群66は、円弧型の基台94に複数の案内ローラ96が回転自在に配され、シーブ100の下外周部から引き出された手摺りベルト38を下階側に向かって案内する。
【0051】
(6)シーブ100の動作状態
シーブ100の動作状態について説明する。シーブ100が回転すると、押圧部材70によってシーブ100に押圧された手摺りベルト38が走行する。この場合に、シーブ100の直径Rが大きくなれば、その周速度が早くなり、手摺りベルト38の走行速度が早くなる。シーブ100の直径Rが小さくなれば、その周速度が遅くなり、手摺りベルト38の走行速度が遅くなる。
【0052】
(7)効果
本実施形態によれば、調整ボルト206の調整により無段階にシーブ100の直径Rを調整でき、手摺りベルト38の走行速度を調整できる。すなわち、シーブ100の直径Rを大きくすると、手摺りベルト38の走行速度が早くなり、シーブ100の直径Rを小さくすると、手摺りベルト38の走行速度が遅くなる。
【実施形態2】
【0053】
次に、実施形態2の乗客コンベア10について図15を参照して説明する。本実施形態と実施形態1の異なる点は、シーブ100における回転軸110の取り付け構造にある。
【0054】
実施形態1では、回転軸110を軸プレート200に固定していたが、本実施形態ではこれに代えて調整プレート600に同軸に固定し、軸プレート200には軸貫通孔208が開口し、回転軸110が貫通する。この場合に、軸プレート200は、調整プレート600と回転軸110とは独立して回転する。その他の構成については実施形態1と同様である。
【0055】
本実施形態であっても、調整ボルト206を調整することによりシーブ100の直径Rを変更できる。
【実施形態3】
【0056】
次に、実施形態3の乗客コンベア10について説明する。上記各実施形態では、調整ロッド300に長孔304を径方向に開口し、調整プレート600の外周部から調整ボス604を突出させ、この調整ボス604を長孔304に係合していた。
【0057】
これに代えて、本実施形態では、調整プレート600に8個の長孔を周方向に等角度毎に設け、調整ロッド300にこれら長孔に係合する調整ボスを突出させる。
【0058】
本実施形態であっても、調整プレート600を回転させると、調整ロッド300の傾斜方向を変更できる。
【変更例】
【0059】
上記実施形態1では、軸プレート200と調整プレート600とはそれぞれ独立して回転させているが、軸プレート200と調整プレート600が独立してよりスムーズに回転できるように、回転軸110と調整プレート600との間にベアリングを設けてもよい。また、上記実施形態2では、軸プレート200と回転軸110との間にベアリングを設けてもよい。
【0060】
上記実施形態では、駆動輪500が、ゴム又は合成樹脂製であったが、これに代えて、弾性力を有するものであればよく、例えば、空気タイヤであってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
【0062】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10・・・エスカレータ、100・・・シーブ、110・・・回転軸、200・・・軸プレート、300・・・調整ロッド、400・・・分割輪、500・・・駆動輪、600・・・調整プレート
【要約】
【課題】乗客コンベアにおける手摺りベルトを駆動するシーブの直径を簡単に変更できる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】手摺りベルト38を駆動するシーブ100は、回転軸110に固定された軸プレート200と、軸プレート200から外方に等角度で突出した複数の調整ロッド300と、複数の調整ロッド300の外側の先端にそれぞれ設けられた円弧板状の分割輪400と、複数の分割輪400の外周に設けられた弾性体よりなるリング状の駆動輪500と、軸プレート200と同軸に配され、かつ、独立して回転可能な円板状の調整プレート600と、調整プレート600と軸プレート200の相対角度を変更して、の前記調整ロッド300の径方向に対する傾斜角度を変更して、駆動輪500の直径を調整する。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15