(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335277
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】車両用操車装置
(51)【国際特許分類】
B62M 11/06 20060101AFI20180521BHJP
B62J 99/00 20090101ALI20180521BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20180521BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
B62M11/06 D
B62J99/00 K
F16H1/06
F16H1/16 Z
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-505747(P2016-505747)
(86)(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公表番号】特表2016-515488(P2016-515488A)
(43)【公表日】2016年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2014054557
(87)【国際公開番号】WO2014161703
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2016年9月14日
(31)【優先権主張番号】102013205829.2
(32)【優先日】2013年4月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】フーバー・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ポングラッツ・カール
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−178493(JP,A)
【文献】
米国特許第4974695(US,A)
【文献】
特開昭63−232092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 11/00−11/06
B62M 17/06,23/00
B62J 99/00
F16H 1/06, 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータ(22)と、
この電気モータ(22)を用いて、少なくとも後方に車両を移動できるように、車両の変速機と連結することが可能な被動機器(30)と、
を備えた単一又は複数トラック車両用操車装置において、
この電気モータ(22)が、曲げ易いシャフト(40)を介して被動機器(30)と連結されていること、及び、
当該の被動機器(30)が、第一の変速段(32,33)と第二の変速段(34,35)を備えており、曲げ易いシャフト(40)から第一の変速段(32,33)に、第一の変速段(32,33)から第二の変速段(34,35)に、並びに第二の変速段(34,35)から被動機器(30)の被動シャフト(37)に回転モーメントを伝達することが可能であること、
を特徴とする操車装置(10)。
【請求項2】
電気モータ(22)の被動シャフトが、歯車対を介して曲げ易いシャフト(40)と連結されていることを特徴とする請求項1に記載の操車装置(10)。
【請求項3】
本装置が、アクチュエータによって、車両の変速機と連結することが可能であるとともに、連結を解除することが可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の操車装置(10)。
【請求項4】
当該の電気モータ(22)が、車両自身の燃焼エンジンを始動するスタータモータであることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の操車装置(10)。
【請求項5】
車両の変速機がニュートラル位置にない時に、操車装置(10)と車両の変速機の連結を阻止し、変速機がニュートラル位置にある時に、操車装置と車両の変速機の連結を許容する機能ブロック部が配備されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の操車装置(10)。
【請求項6】
当該の機能ブロック部が、機械式又は電気式にアクチュエータに作用することを特徴とする請求項5に記載の操車装置(10)。
【請求項7】
当該の被動機器(30)が、連結機器(36)、噛合クラッチ又は平歯車部を介して車両の変速機と連結することが可能であることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の操車装置(10)。
【請求項8】
当該の被動機器(30)の第一の変速段が、ウォーム歯車段として構成されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の操車装置(10)。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一つに記載の操車装置(10)を備えた単一又は複数トラック車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータと、この電気モータを用いて、少なくとも後方に車両を移動できるように、車両の変速機と連結することが可能な被動機器とを備えた単一又は複数トラック車両用操車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、オートバイは、駆動部として、変速機と連結された燃焼エンジンを備えている。その変速機は、専ら前進ギヤ段を備えており、その結果、燃焼エンジンを用いて、前進方向にのみオートバイを駆動することができる。例えば、操車時に必要になることが有る通り、オートバイを後方に移動しなければならない場合、通常人の力によって、それを実行しなければならない。その場合、オートバイは、後進方向に動かされる。その際、特に、オートバイが大きな自重を有するか、或いはオートバイの車輪の少なくとも一つが障害物、例えば、縁石、溝又はそれらと同等物に突き当たった場合、困ったことになる。走行路の傾斜も、人の力がオートバイの後方移動を実行するのに十分でなくなるようにする可能性が有る。
【0003】
この問題を避けるために、従来技術では、大きな自重を有するオートバイに後進ギヤ段を備えた変速機を配備している。特許文献1により、通常燃焼機関の始動のために用いられるスタータモータを用いて、オートバイの後方移動を実現するように、変速機を駆動する車両後方走行機器が知られている。それに代わるオートバイ駆動装置用後方走行補助変速機が、特許文献2により周知である。しかし、そのようなシステムは、大きな部品数を有する。更に、そのようなシステムは、後で配備することができず、それにより、特定のオートバイモデルでの使用に限定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許第102009043326号明細書
【特許文献2】ドイツ実用新案第8336701.1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の従来技術を出発点として、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服した簡略化した操車装置を提示することである。更に、本発明の課題は、特に容易に多数の異なるオートバイ変化形態に後で配備できることを特徴とする、部品数を削減した操車装置を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、独立請求項の特徴を有する操車装置によって解決される。従属請求項は、本発明の有利な実施構成を示す。
【0007】
本課題を解決するために、本発明は、電気モータと、この電気モータを用いて、少なくとも後方に車両を移動できるように、車両の変速機と連結することが可能な被動機器とを備えた単一又は複数トラック車両用操車装置を提案する。更に、この電気モータは、曲げ易いシャフト又はカルダンシャフトを介して被動機器と連結することができる。本発明の意味において、単一トラック車両とは、オートバイとスクータである。複数トラック車両は、例えば、スノーモービル、三輪車及び四輪車などの、前車軸及び/又は後車軸に並んで平行に配置された二つの車輪又はスキッドを有する。本発明は、特に、重い重量のオートバイに使用されるが、今日比較的重い自重を有する変化形態でも入手可能なスクータまでの軽いオートバイにも制限無しに使用することができる。電気モータと被動機器の間の連結部品として曲げ易いシャフト又はカルダンシャフトを使用することによって、オートバイの実装要件に関する高い変更可能性を得ることができる。本発明の意味において、曲げ易いシャフトとは、タコメータのシャフトとしての用途又はカブリオレの幌により周知のような柔軟なシャフトである。これらのシャフトは、外側保護被覆を有し、その内部において、ワイヤーシャフトが縦軸の周りに回転することができ、それによって、シャフトの第一の終端からシャフトの第二の終端に回転運動を伝達している。
【0008】
更に、電気モータの被動シャフトは、歯車対を介して柔軟なシャフトと連結することができる。それは、電気モータと柔軟なシャフトの第一の終端を備えた駆動ユニットにおいて、増速段又は減速段を備えた第一の変速段を直接実現できるとの利点を提供する。
【0009】
更に、この被動ユニットは、第一の変速段と第二の変速段を備えることができ、曲げ易いシャフトから第一の変速段に、第一の変速段から第二の変速段に、並びに第二の変速段から被動シャフトに回転モーメントを伝達することが可能である。それによって、柔軟なシャフトの第二の終端から車両の変速機までにおいて、増速段又は減速段を実現することができる。
【0010】
更に、この操車装置は、アクチュエータによって、車両の変速機に連結することが可能であるとともに、連結を解除することが可能である。そのようなアクチュエータは、電気機械式サーボモータ又は電磁弁であり、任意選択により被動ユニットにフランジ接続するか、或いはそのユニットと一体的に構成することができる。
【0011】
本発明の第一の選択肢では、電気モータを別個の電気モータとすることができ、電気モータの駆動方向に応じて、柔軟なシャフトの回転方向も変化し、それによって、オートバイは、前進運動又は後方運動を実行することができる。
【0012】
本発明の第二の選択肢では、電気モータは、同時に車両自身の燃焼機関を始動するためにも使用されるスタータモータである。それは、燃焼エンジンに既に配備されたスタータを電気モータとして使用することができ、それによって、操車装置に用いられる部品の数が一層削減されるとの利点を提供する。通常スタータモータとして、直流モータが使用される。電気接地極は、オートバイの車体構造により構成されているので、スタータモータの極性、そのため、回転方向を変更することができない。しかし、本発明では、スタータモータの被動軸を両方向に回転できるようにしている。この場合、接地極を別に実現しなければならず、オートバイの車体構造を介して延ばしてはならない。
【0013】
それに追加して、或いはそれに代わって、車両の変速機がニュートラル位置にない時に、操車装置と車両の変速機の連結を阻止し、変速機がニュートラル位置にある時に、操車装置と車両の変速機の連結を許容する機能ブロック部を配備することができる。それによって、車両の変速機を前進ギヤ段の中の一つに投入している時に、運転者が操車装置を作動できないことを保証することができる。操車装置の阻止に関する別の判定基準をオートバイの速度とすることができる。オートバイが、所定の閾値、例えば、6km/h、有利には、3km/h、或いは特に有利には、1.6km/hを上回る速度で前進している場合、車両の変速機がニュートラル位置にあっても、操車装置の作動が機能ブロック部により阻止される。それによって、変速機が短時間ニュートラル位置にあるギヤ切換プロセス時に、操車装置を誤って作動することを防止することができる。
【0014】
更に、別個の電気モータを配備することは、オートバイの燃焼エンジンが停止している場合でも、操車装置を操作できるとの利点を提供する。それは、スタータモータが常に燃焼エンジンを始動するので、操車装置の駆動ユニットの駆動モータとしてスタータモータを使用する場合には不可能である。
【0015】
この機能ブロック部は、車両の変速機との連結を可能にするか、或いは阻止するために、機械式又は電気式にアクチュエータに作用する。
【0016】
更に、この被動機器は、連結機器、特に、第二の変速段の被動歯車に作用する噛合クラッチ又は平歯車部を介して車両の変速機と連結することができる。
【0017】
更に、この被動機器の第一の変速段をウォーム歯車として構成することができる。このウォーム歯車は、操車装置において特に大きく回転数又は回転モーメントを上昇させると同時に、それに必要な構造空間が最小限になるとの利点を提供する。
【0018】
別の観点において、本発明は、単一又は複数トラック車両、特に、請求項の中の一つに記載の操車装置を備えたオートバイに関する。
【0019】
以下において、本発明の利点を短く要約する。
【0020】
曲げ易いシャフト又はウォーム歯車段の使用又はそれらの組み合わせによって、操車装置の所要構造空間を最小限に低減するとともに、操車装置を多数の異なるオートバイ形式に極めて柔軟に組み込むことができる。それによって、操車装置を付属品として提供するとともに、別個のユニットとして後で配備することもできる。それによって、後方走行支援部を備えた、或いは備えていないオートバイを提供することができるので、それは、オートバイを製造する際の自由度も高める。
【0021】
以下において、図面の記述に基づき本発明を詳しく説明する。これらの請求項、図面及び明細書は、以下において本発明の例として述べる実施構成と関連して説明する多数の特徴を有する。当業者であれば、本発明の相応の用途に合った別の実施構成を形成するために、これらの特徴を個別的に、並びに別の組合せでも考察する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下において、先ずは
図1に基づき操車装置10の基本構成を説明する。既に前に述べた通り、オートバイ、スクータ、三輪車又は四輪車、即ち、基本的に燃焼エンジンを備えた単一又は複数トラック車両用の操車装置を考える。この燃焼エンジンは、機械式変速機を介して駆動輪と連結されて、車両の前進運動を実行することができる。この操車装置10は、駆動機器20と被動機器30を備えている。この被動機器30は、車両の機械式変速機に固定できるように構成される。この駆動機器20は、任意選択により変速機にも、さもなければ車両のそれ以外の集合体にも、例えば、燃焼エンジン又はシャーシに固定することができる。
【0024】
この駆動機器20は、電気モータ22を収容する筐体21を備えている。この電気モータ22は、その被動シャフトを介して歯車23と連結されている。この歯車23は、柔軟なシャフト40の第一の終端に配置された第二の歯車と噛み合っている。これらの電気モータ22、第一の歯車23及び第二の歯車24は、筐体21内に配置されており、柔軟なシャフト40は、貫通穴を通して筐体21から取り出されている。この電気モータ22は、電気エネルギーによって駆動され、その出力シャフトに回転運動を発生させ、その回転運動は、更に、歯車23と24を介して、柔軟なシャフト40を回転運動させる。この柔軟なシャフト40の回転運動は、被動ユニット30に伝達される。この被動ユニット30は、第一の変速段と第二の変速段が配置された筐体31を備えている。この第一の変速段は、ウォーム歯車32と平歯車33を備えている。この柔軟なシャフトの回転運動は、ウォーム歯車32から平歯車33に伝達される。第二の変速段の平歯車33の共通のシャフトと第一の平歯車34を介して、第二の変速段に、そのため、第二の変速段の第二の平歯車35に回転が伝達される。この第二の平歯車35は、連結機器36を介して被動シャフト37と連結することが可能である。この連結機器36は、噛合クラッチ又は平歯車部として構成できるとともに、回転ずれしない形で被動シャフト37を第二の変速段の第二の歯車35と連結するのに適している。
【0025】
図2には、操車装置の側面図が筐体の無い形で図示されている。
図1と同じ符号が同じ構成部分に付与されている。
図2から、第二の変速段の第二の平歯車35を被動シャフトと噛み合わせることが可能なアクチュエータ60を見ることができる。このアクチュエータは、例えば、円筒磁石として構成される。更に、操車装置の被動回転数を求めるために回転数センサ50も配備される。この被動シャフト37を介して、操車装置は、変速機の中間シャフトと連結される。