特許第6335292号(P6335292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335292
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】質量センサ
(51)【国際特許分類】
   G01G 21/24 20060101AFI20180528BHJP
   G01G 23/01 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   G01G21/24 A
   G01G23/01 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-528928(P2016-528928)
(86)(22)【出願日】2014年6月26日
(86)【国際出願番号】JP2014066932
(87)【国際公開番号】WO2015198433
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2017年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000127570
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】出雲 直人
(72)【発明者】
【氏名】須崎 聡
【審査官】 細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/031286(WO,A1)
【文献】 実開平6−072034(JP,U)
【文献】 特開2003−057127(JP,A)
【文献】 独国特許発明第19741584(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 21/24
G01G 23/01
G01G 21/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
秤量物の荷重を受ける浮き枠と、前記浮き枠と対向配置される固定部とが、両端部近傍に薄肉部が形成され上下に平行に配置された上下の副桿で連結されたロバーバル機構と、前記上下の副桿の平行調整をするための四隅調整機構と、を含む質量センサであって、
前記四隅調整機構は、
前記上下の副桿のいずれか一方の固定部側端部に上下方向に挿通し、前記固定部に螺着する調整ネジと、
前記調整ネジのネジ部に、前記固定部側端部を挟持して上下方向に直列的に配置された上弾性部材である板バネおよび下弾性部材であるコイルバネと、を有し、
前記板バネは、一枚板金が曲げられて上板部及び下板部が鋭角をなす形状で、前記上板部が片持ちばね状に形成され、前記下板部の端部が下方に屈曲され、支点となる屈曲部がセンサ内側、力点となる開放部がセンサ外側となるよう、圧縮状態で介装され、前記下板部が前記固定部側端部に沿って配置され前記下板部の端部が前記固定部側端部の側面にネジ固定されることを特徴とする質量センサ。
【請求項3】
前記上弾性部材の弾性係数は前記下弾性部材の弾性係数よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の質量センサ。
【請求項4】
前記四隅調整機構が設けられた前記副桿は、前記固定部と結合する結合部を有し、前記結合部は、前記副桿の前記薄肉部と前記四隅調整機構の間に形成されることを特徴とする請求項1に記載の質量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロバーバル機構を有する質量センサの四隅調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ロバーバル機構は、秤量物の荷重をセンサ本体に伝達する機構として、電磁平衡式天秤、歪ゲージを使用した電子天秤、静電容量の変化を利用した静電容量式天秤などに幅広く利用されている。
【0003】
ロバーバル機構は、秤量物の荷重を受ける浮き枠と、浮き枠と対向配置されケース等に固定される固定部とが、両端部近傍にヒンジとなる薄肉部が形成され上下に平行に配置された上下副桿で連結された構造を有し、仮に浮き枠に支持された計量皿上で偏置荷重(四隅誤差)が発生しても、偏置荷重により発生するセンサ部の受けるモーメント荷重の水平成分は上下副桿に伝達してキャンセルされ、垂直成分のみがセンサ本体に伝達される原理である。
【0004】
したがって、上下副桿の平行が狂うと、水平成分の誤差がそのまま計量値にあらわれるため、ロバーバル機構を有する高精度な質量センサでは、上下副桿の上下高さを一致させる平行調整がなされるのが通常である。
【0005】
この高さ調整は、一般的には、調整点(薄肉部)を切削することにより行われている。しかし、この切削法は、可逆的ではなく、また摩擦熱による調整誤差が懸念されるため、ネジを用いた可逆的な四隅調整機構が設けられているものがある。
【0006】
例えば特許文献1の質量センサは、固定部の一端部からセンサ内側に向けて延設された片持ち梁状のアーム部の上方に上副桿が固定され、調整ネジが該アーム部の略中央部に挿通され固定部に螺着された四隅調整機構を有している。アーム部と固定部の間には、調整ネジを緩めたときのアーム部の復元を付勢するためのコイルバネが設けられている。この四隅調整機構によれば、調整ネジを回転することで、上副桿が上下し、上下副桿の平行調整が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−315774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような調整ネジを利用した四隅調整機構によって、可逆的な四隅調整が可能となったが、近年、質量センサの高性能化が進んでおり、特に分解能の高い天秤に対しては、上下副桿の平行調整に、よりいっそうの厳密さが求められるようになった。
【0009】
ここで、短絡的に考えれば、四隅調整の感度を下げるには、ロバーバル機構を大型化したり、また四隅調整部の剛性を下げればよい。この考え方に立てば、四隅調整を行う部位の厚みを低減したり、切削部を形成することが考えられる。しかし一方で、天秤の製品性能を維持する観点からは、質量センサの剛性は出来る限り高くあることが好ましい。四隅調整の感度を低下させることとロバーバル機構の剛性を高く保つことには相反する関係があり、両者を満足させることは難しいという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、ロバーバル機構の剛性を下げることなく四隅調整の感度を下げられる四隅調整機構を有する質量センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の質量センサは、秤量物の荷重を受ける浮き枠と、前記浮き枠と対向配置される固定部とが、両端部近傍に薄肉部が形成され上下に平行に配置された上下の副桿で連結されたロバーバル機構と、前記上下の副桿の平行調整をするための四隅調整機構と、を含む質量センサであって、前記四隅調整機構は、前記上下の副桿のいずれか一方の固定部側端部に上下方向に挿通し、前記固定部に螺着する調整ネジと、前記調整ネジのネジ部に、前記固定部側端部を挟持して上下方向に直列的に配置された上弾性部材および下弾性部材と、を有することを特徴とする。
【0012】
この態様によれば、四隅調整機構として、調整ネジと2つの弾性部材を用い、平行調整を行う副桿に対し、調整ネジを挿通するとともに、調整ネジのネジ部において、高さ調整方向となる上下方向に副桿を挟持して2つの弾性部材を直列配置した。これにより、調整ネジを締めると、調整ネジによる変位量は上下の弾性部材の変位量に分配され、結果、上弾性部材と下弾性部材の中間に位置する副桿は、上弾性部材の変位量を差し引いた分しか変位しない。すなわち、調整ネジの変位量に対し、上弾性部材の変位量を差し引いた変位量がロバーバル機構の高さ調整量として機能するため、この分四隅調整機構の構造を拡大することなく、四隅調整の感度を下げられる。
【0013】
また、この態様によれば、2つの弾性部材を、調整対象となる副桿の上下に配置するものであるので、四隅調整機構を設ける部位の厚みや形状を変更するものではない。これにより、四隅調整機構を付加しても、ロバーバル機構の剛性は維持される。
【0014】
上記態様において、前記上弾性部材の弾性係数は前記下弾性部材の弾性係数よりも小さいことが好ましい。これにより、四隅調整機構の調整ネジの変位は、上下の弾性部材の弾性係数比に反比例して分配されるので、上下の弾性部材の弾性係数に差を設け、上弾性部材よりも下弾性部材の弾性係数を大きく設定することにより、上弾性部材の変位量相殺分が大きくなり、上記態様が良好に機能し、よりいっそう四隅調整の感度を下げられる。
【0015】
上記態様において、前記四隅調整機構が設けられた前記副桿は、前記固定部と結合する結合部を有し、前記結合部は、前記副桿の前記薄肉部と前記四隅調整機構の間に形成されるのが好ましい。これにより、力点(四隅調整機構)と調整点(薄肉部)の間に支点が形成されるため、ロバーバル機構に純粋に垂直成分を伝えることができる。
【0016】
上記態様において、上弾性部材、下弾性部材には共に板バネ又はコイルバネを利用するのがよい。より好ましくは、上弾性部材は板バネ又はコイルバネ、下弾性部材はコイルバネを利用するのがよい。これにより、センサ構成の全高を低く抑えることが容易となり小型化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の質量センサによれば、ロバーバル機構の剛性を下げることなく四隅調整の感度を下げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る質量センサの後方斜視図、図2は同質量センサの正面図、図3は同質量センサの平面図、図4は同質量センサの右側面図、図5は同質量センサの縦断面図(図3に示すV−V線に沿う断面図)、である。なお、図2図5では、皿受け部210の記載を省略している。
【0020】
質量センサ1は、直方体状であり、ロバーバル機構2と、センサ本体3と、を有する。ロバーバル機構2には、四隅調整機構4が設けられている。センサ本体3には、一例として電磁平衡式センサが用いられている(図1等参照)。
【0021】
ロバーバル機構2は、秤量物の荷重を受ける柱状の浮き枠21と、秤のケース等に固定される固定部22とが対向配置され、浮き枠21と固定部22との間は上下に平行に配置された平板状の上副桿23と下副桿24によって連結されている。これら浮き枠21、固定部22、上副桿23及び下副桿24は、アルミダイカスト、アルミの押し出し材、アルミの鍛造等により成形された一体の金属ブロックからフライスマシン等の切削により形成されている(図2等参照)。浮き枠21の上面には、計量皿を支持するための皿受け部210がネジ固定されている。
【0022】
固定部22には、ロバーバル機構2の構造内空間に張り出す荷重伝達部29が形成されている。荷重伝達部29は、浮き枠21に対し、上吊りバンド30a、一次ビーム体31及び支点バンド30bを介して連結されている(図5等参照)。浮き枠21に作用する荷重は、荷重伝達部29の側面にネジ止めされた二次ビーム体28を介してセンサ本体3に伝達される。センサ本体3は、枠体26を介してロバーバル機構2に保持されている(図2等参照)。荷重伝達部29には、図示しないショックアブソーバ受け部を取り付けるための受け孔5´が設けられている。荷重伝達部29、一次ビーム体31及び上副桿23には、それぞれ、質量センサ1を組み付ける際の位置決め孔29´,31´,23´が設けられている(図5等参照)。
【0023】
上下副桿23、24の両端部の近傍には、センサ幅方向に亘り、薄肉部23a,23b,24a,24bが形成されている(図2図3等参照)。
【0024】
上副桿23の固定部側端部23Eは、薄肉部23b形成位置よりもセンサ内側位置から二股に分岐して、固定部22の上面と所要の距離をおいて水平に延出している(図3図5等参照)。以降、この固定部側端部23Eの延出部のうち一方(図3の図面下側)を第1の延出部2301、他方(図3の図面上側)を第2の延出部2302と称する。第1の延出部2301及び第2の延出部2302には、薄肉部23b形成位置よりもセンサ外側位置において、下方に延出し固定部22の上面と一体となって結合する結合部230が形成されている(図5等参照)。
【0025】
第1の延出部2301及び第2の延出部2302には、後述する調整ネジ41のための挿通孔が形成されている。固定部22には、この挿通孔と対向する位置に、調整ネジ41を螺合する雌ネジ部が形成されている。
【0026】
四隅調整機構4は、第1の延出部2301と第2の延出部2302に設けられている。以下、四隅調整機構4の構成について、第1の延出部2301を用いて説明する。第2の延出部2302に対しても、同様に四隅調整機構4が設けられている。なお、本実施形態では、上副桿23の固定部側端部23Eの延出部2301,2302に四隅調整機構4が設けられているが、四隅調整機構4は、下副桿24の固定部側端部に設けられていてもよい。
【0027】
四隅調整機構4は、調整ネジ41と、上方に配置される板バネ42u(上弾性部材)と、下方に配置されるコイルバネ(下弾性部材)42dと、からなる。
【0028】
調整ネジ41は、ネジ頭410と、雄ねじ部が切られたネジ部411を有するものであれば、一般に市販されているものでよい。好ましくは、ロバーバル機構2を構成する材料と同一材料である方が、熱変化に対する寸法変化の差が小さく性能が安定し、また、螺子ピッチの細かい方が四隅調整感度を低く設定でき、調整が容易となる。
【0029】
調整ネジ41は、第1の延出部2301の挿通孔を挿通し、固定部22に形成された雌ネジ部に螺着されている。調整ネジ41のネジ部411には、固定部22と第1の延出部2301の間位置にコイルバネ42dが、第1の延出部2301とネジ頭410の間位置に板バネ42uが介装されている。
【0030】
コイルバネ42dは、治具により圧縮された状態で、調整ネジ41の挿通時に上記の位置に介装される。
【0031】
板バネ42uは、長方形状の一枚板金が円弧状(円弧部略4分の3)に曲げられて上板部及び下板部が鋭角をなす形状に形成され、上板部が片持ちばね状に機能するように形成されている。下板部の端部は、第1の延出部2301に固定するために下方に屈曲されている。板バネ42uの上板部及び下板部の所要位置には、調整ネジ41の挿通孔が形成されている。板バネ42uは、調整ネジ41の挿通時に、圧縮状態で介装され、支点となる屈曲部がセンサ内側、力点となる開放部がセンサ外側となるよう、下板部が第1の延出部2301に沿って配置され、下板部の端部が第1の延出部2301の側面に対しネジ固定される。なお、板バネ42uの上記形状は一例であって、バネ定数の設計が容易で成形加工に無理のない形状であればよいであればよい。
【0032】
上記板バネ42u及びコイルバネ42dはいずれも、圧縮状態で装着されているため、常に四隅調整機構4を一定方向に押し付ける付勢力がかかり、調整ネジ41の回動時に発生するバックラッシュを防ぐことができる。
【0033】
以上の通り、四隅調整機構4は、平行調整を行う上副桿23に対し、調整ネジ41を挿通するとともに、調整ネジ41のネジ部411に対し、高さ調整方向となる上下方向に、上副桿23の第1の延出部2301及び第2の延出部2302を挟持して、上方に板バネ42u、下方にコイルバネ42dを直列的に配置したものである。
【0034】
四隅調整は、調整ネジ41の回動により行われる。調整ネジ41の回動による、調整ネジ41の上下方向変位(ネジ変位)を受けて、四隅調整機構4を介して上副桿23が変位し、調整点(薄肉部23b)が高さ調整される。ここで、四隅調整機構4のコイルバネ42d及び板バネ42uはいずれも、常にオフセット荷重を受けた状態となっているため、四隅調整時によるバネによる応力変化は無視できるとする。すると、四隅調整時の調整ネジ41のネジ変位は、上下のバネのバネ定数比に反比例して分配される。すなわち、調整ネジ41を締めても、調整ネジ41のネジ変位に対し、板バネ42uとコイルバネ42dの間に位置する上副桿23は、板バネ42uの変位量を差し引いた変位量分しか影響を受けない。
【0035】
ここで、上方に配置された板バネ42uのバネ定数Kuは、下方に配置されたコイルバネ42dのバネ定数Kdよりも小さく設計されている。四隅調整機構4の調整ネジ41の変位は、上方の板バネ42uと下方のコイルバネ42dのバネ定数比に反比例して分配されるので、上方のバネ定数Ku<下方のバネ定数Kdと設定することにより、上方の板バネ42uの変位量相殺分が大きくなる。
【0036】
以上により、調整ネジ41を締めると、調整ネジ41の変位量は、上方の板バネ42u及び下方のコイルバネ42dの変位量に分配され、上方の板バネ42uの変位量を差し引いた変位量がロバーバル機構2の高さ調整量として機能する。特に、上方の板バネ42のバネ定数Kuよりも下方のコイルバネ42dのバネ定数Kdを大きく設定しているので、副桿23の上方に調整代を大きくとることができ、逆の設定(上方の板バネ42のバネ定数Kuを下方のコイルバネ42dのバネ定数Kdをよりも大きく設定する構成)とするよりも、より良好に四隅調整機構4の感度を下げることができる。
【0037】
また、この態様によれば、2つの弾性部材42u,42dを、調整対象となる上副桿23(第1の延出部2301及び第2の延出部2302)の上下に配置するものであるので、四隅調整機構4を設けた第1の延出部2301(第2の延出部2302)の厚みを低減させたり、切削等するものではない。すなわち、四隅調整機構4の構成によって、ロバーバル機構2の剛性が低下することはない。
【0038】
また、この態様によれば、四隅調整機構4と薄肉部23bの間に結合部230が設けられたことにより、力点(四隅調整機構4)と調整点(薄肉部23b)の間に支点が形成されている。すなわち、この位置に結合部230を設けたことで、「調整点・支点・力点」の関係ができ、四隅調整機構4の調整ネジ41の回動に伴って上副桿23にねじれ成分が発生しても、結合部230(支点)を介することで垂直成分以外は伝達しにくくなり、ロバーバル機構2には純粋な垂直成分のみが伝わりやすくなるため、質量センサ1の性能低下を防止できる。
【0039】
比較例として、結合部230をセンサ外側位置に形成し、四隅調整機構4を結合部230と薄肉部23bの間位置に設ける構成を取ったものを試作したが、このような「調整点・力点・支点」の並びの場合は、四隅誤差がキャンセルされないことを確認した。
【0040】
以上、この態様において、実際に以下の効果が確認できた。結果として、本実施形態の四隅調整機構4により、四隅調整の感度は従来の2分の1に落とすことができた。実施例と比較例におけるこの差は、天秤の性能に換算すれば、例えばひょう量10[kg]の天秤で、ひょう量×1/2の分銅における、皿上1/4の位置での四隅調整の感度を最適化し、例えば、±0.01gまでしか調整できなかったものを、±0.05gに調整可能とする。
【0041】
実施例:上記ロバーバル機構2において、四隅調整機構4は、調整ネジ41の1ピッチ(ねじ変位0.5[mm])、板バネ42uのバネ定数Ku=5[kgf/mm]、コイルバネ42dのバネ定数Kd=10[kgf/mm]、で設計した。この実施例において、調整ネジ41を1ピッチ落とすと、ロバーバル変位(調整点となる薄肉部23bの変位)は0.05[mm]であった。
【0042】
比較例:従来の態様(特許文献1の構成の質量センサ:下方に付勢用に配置されたコイルバネのバネ定数=10[kgf/mm])において、実施例と同様の調整ネジ41を用いて1ピッチ落とした場合、ロバーバル変位(調整点となる薄肉部の変位)は0.1[mm]であった。
【0043】
(第2の実施の形態)
図6は発明の第2の実施の形態に係る質量センサの後方斜視図、図7は発明の第2の実施の形態に係る正面図、図8は発明の第2の実施の形態に係る質量センサの右側面図、図9は発明の第2の実施の形態に係る質量センサの縦断面図(図8示すIX-IX線に沿う断面図)である。
【0044】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態における上弾性部材を、コイルバネ420uとしたものである。本態様においても、上方に配置されるコイルバネ420uのバネ定数K´uは、下方に配置されるコイルバネ42dのバネ定数Kdよりも小さく設定されるのが好ましい。第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を引用して説明を略す。
【0045】
上方に配置するコイルバネ420uは、治具により圧縮された状態で、第1の延出部2301及び第2の延出部2302に固定されたコイル保持部421内に、圧縮状態で収容されている。コイル保持部421は、コイルを上下から狭持し、螺子の回転力を直接コイルに伝達させず、コイルに上下方向の変位のみを安定して伝える構造となっている。第2の実施の形態であっても、第1の実施の態様と同様の効果らが得られる。
【0046】
以上、いずれの四隅調整機構4であっても、ロバーバル機構2の剛性を下げることなく四隅調整の感度を下げるという相反する問題を解決することができる。また、いずれの四隅調整機構4であっても、2つの弾性部材を、調整対象となる副桿の上下に配置するものであるので、従来一般的に行われている切削調整は必要なく、質量センサ1の生産性の観点からも好適である。すなわち、いずれの四隅調整機構4の採用によっても、質量センサ1は、計量器としての性能向上と生産性改善を達成した。
【0047】
なお、上弾性部材と下弾性部材にはバネ材を用いることで、上バネ材と下バネ材とのバネ定数の差分設計が容易となるため、好適である。ただし、上弾性部材及び/又は下弾性部材は、変形自在な気密容器に封印されたゾル・ゲルや 樹脂系ポリマー材料等の弾性素材が用いられる態様であってもよく、弾性体、好ましくは可逆的な性質を持つ弾性体であれば、本願発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る質量センサの後方斜視図
図2】本発明の第1の実施の形態に係る質量センサの正面図
図3】本発明の第1の実施の形態に係る質量センサの平面図
図4】本発明の第1の実施の形態に係る質量センサの右側面図
図5】本発明の第1の実施の形態に係る質量センサの縦断面図
図6】本発明の第2の実施の形態に係る質量センサの後方斜視図
図7】本発明の第2の実施の形態に係る正面図
図8】本発明の第2の実施の形態に係る質量センサの右側面図
図9】本発明の第2の実施の形態に係る質量センサの縦断面図
【符号の説明】
【0049】
1 質量センサ
2 ロバーバル機構
4 四隅調整機構
21 浮き枠
22 固定部
23 上副桿
23a、23b 薄肉部
23E 固定部側端部
230 結合部
2301 第1の延出部
2302 第2の延出部
24 下副桿
24a、24b 薄肉部
41 調整ネジ
411 ネジ部
42u、420 上弾性部材(板バネ、コイルバネ)
42d 下弾性部材(コイルバネ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9