特許第6335297号(P6335297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335297フライホイールを備えたトルク供給動力工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335297
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】フライホイールを備えたトルク供給動力工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20180521BHJP
   B25B 21/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B25B23/14 630H
   B25B21/00 520A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-532274(P2016-532274)
(86)(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公表番号】特表2016-527094(P2016-527094A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2014062911
(87)【国際公開番号】WO2015018556
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年6月12日
(31)【優先権主張番号】1350945-0
(32)【優先日】2013年8月8日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】マクゴーガン,ロビン
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−511348(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第3331356(DE,A1)
【文献】 特表2002−534274(JP,A)
【文献】 特開2007−50488(JP,A)
【文献】 特表2001−506545(JP,A)
【文献】 特開平4−176574(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第1292537(GB,A)
【文献】 実公昭45−21198(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00− 23/18
B25D 9/00−17/32
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクを連結具に供給する手持ち式動力工具(10)であって、
該動力工具(10)がハウジング(15)を有し、
前記ハウジング(15)に、
・入力軸(13)を駆動するよう配置されたモータ(11)と
・連結具にトルクを供給するように配置された出力軸(12)と
・前記入力軸(13)を前記出力軸(12)に連結する遊星ギヤ(14)と
が収容され、
前記遊星ギヤ(14)が、サンホイール及びリムギヤ(33)、並びに前記サンホイールとリムギヤ(33)との間に配置された少なくとも一つの遊星ホイール(31)を備え、前記少なくとも一つの遊星ホイール(31)が、遊星ホイールキャリア(32)上に配置され、前記遊星ギヤ(14)を介して前記出力軸(12)を駆動するために入力軸(13)が前記サンホイールに連結され、出力軸(12)が前記遊星ホイールキャリア(32)に連結される
手持ち式動力工具において、
フライホイール(16)が、ハウジング(15)に対して自由に回転するように配置され、フライホイール(16)が回転するように設定され得、
カムブロック(18)がハウジング(15)の内側に緩く嵌められ、カムブロック(18)が、リムギヤ(33)に回転連結され、かつ、カムプロファイル(19)とカムフォロワ(23)との間の相互作用を介してハウジング(15)に連結され、
前記カムプロファイル(19)が、カムブロック(18)がハウジング(15)に対して回転させられた時に、カムフォロワ(23)とカムプロファイル(19)との間の相互作用が、カムブロック(18)に対して軸方向の動きを与えるように傾斜され、
前記回転の結果、カムブロック(18)が、フライホイール(16)との接触を強いられるようにされている
ことを特徴とする手持ち式動力工具。
【請求項2】
トルクを連結具に供給する手持ち式動力工具(10)であって、
該動力工具(10)がハウジングを有し、
前記ハウジングに、
・入力軸(13)を駆動するよう配置されたモータ(11)と
・連結具にトルクを供給するように配置された出力軸(12)と
・前記入力軸(13)を前記出力軸(12)に連結する遊星ギヤ(14)と
が収容され、
前記遊星ギヤ(14)が、サンホイール及びリムギヤ、並びに前記サンホイールとリムギヤとの間に配置された少なくとも一つの遊星ホイールを備え、前記少なくとも一つの遊星ホイールが、遊星ホイールキャリア上に配置され、前記遊星ギヤ(14)を介して前記出力軸(12)を駆動するために入力軸(13)が前記サンホイールに連結され、出力軸(12)が前記リムギヤに連結される
手持ち式動力工具において、
フライホイール(16)が、ハウジング(15)に対して自由に回転するように配置され、フライホイール(16)が回転するように設定され得、
カムブロック(18)がハウジング(15)の内側に緩く嵌められ、カムブロック(18)が、リムギヤ(33)に回転連結され、かつ、カムプロファイル(19)とカムフォロワ(23)との間の相互作用を介してハウジング(15)に連結され、
前記カムプロファイル(19)が、カムブロック(18)がハウジング(15)に対して回転させられた時に、カムフォロワ(23)とカムプロファイル(19)との間の相互作用が、カムブロック(18)に対して軸方向の動きを与えるように傾斜され、
前記回転の結果、カムブロック(18)が、フライホイール(16)との接触を強いられるようになるようにされている
ことを特徴とする手持ち式動力工具。
【請求項3】
フライホイール(16)が両方向に回転するように設定され得、
カムプロファイル(19)が、最初の位置から両方向に傾斜され、
前記最初の位置からのカムブロック(18)が何れの方向に回転しても、カムブロック(18)が、フライホイール(16)と接触するように軸方向に押されることになるようにされている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の動力工具。
【請求項4】
フライホイール(16)が、モータ(11)によって回転されるように設定され得る
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の動力工具。
【請求項5】
選択ギヤ(17)が設けられ、選択ギヤ(17)によって、モータ(11)が、入力軸(13)か、又はフライホイール(16)の何れかに選択的に接続され得る
ことを特徴とする請求項4に記載の動力工具。
【請求項6】
カムフォロワ(23)とカムプロファイル(19)との間の相互作用が、少なくとも三つのカムフォロワ(23)から成り、前記カムフォロワ(23)が、少なくとも三つの対応するカムプロファイル(19)に対抗する位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の動力工具。
【請求項7】
カムプロファイル(19)が、カムブロック(23)が、フライホイール(16)と接触しない初期位置にある時に、カムフォロワ(2)を受けるように配置された凹み(34)を有し、
カムフォロワ(23)が動いて凹み(34)から出るために、所定の閾値トルクが必要とされる
ことを特徴とする請求項6に記載の動力工具。
【請求項8】
カムプロファイル」(19)が、ハウジング(15)の内側に配置され、
カムフォロワ(23)がカムブロック(18)に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の動力工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結具を締め付けるためにトルクを供給するための手持ち式動力工具に関する。具体的には、本発明は、工具を操作している作業者によって感じられる反力を低減するよう構成されたフライホイールを備えた手持ち式動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ナットランナーのような手持ち式トルク供給動力工具は、その効率を良くし、かつ、使用者が心地良く使用できるようにするために多数の基準を満たすことを必要とする。第一に、それは、所定の種類の連結具を締め付けるために十分に高いトルクを提供するように適合されるべきであり、かつ、前記連結具を特別な所望のトルク及び/又はクランプ力まで締め付けるよう適合されるべきである。
【0003】
さらに、動力工具に対する使用者の使い心地を良くするようにするために、作業者によって打ち消されなければならない反力の大きさは、可能な限り低く維持されるべきである。
【0004】
反力は、ネジ又はナットが締め付けられ、連結具にクランプ力が生じた時に生成される。ナット締付作業は、通常、二つの段階を含む。第一段階ではネジがねじ込まれ、第二段階では、ネジが締め付けられて、連結具にクランプ力を生じさせる。ねじ込み段階が締付段階に移行する時点は、通常、「サング(sung)」と表示される。サングの後のみ、即ち、締付行程の間、反力が動力工具で生じることになる。この反力は、ネジの回転によって連結具を締め付けるために必要とされるトルクの増加に応じて生成される。
【0005】
手持ち式トルク供給動力工具の殆どのタイプで対処する必要がある問題は、たとえ相当大きなトルクが連結具に加えられた時でも、反動力を可能なかぎり低く維持することにある。
【0006】
上記した問題の解決法が、米国特許明細書US7,311,027B1に示されている。この公報で説明されている動力工具では、ビットホルダが、第一モータで第一の方向に回転駆動され、フライホイールが、第二モータで反対方向に回転駆動される。ブレーキが、連結具から動力工具に伝達される反力に応じてフライホイールを減速させるように配置されている。反力の増加に伴い、前記反力の増加を相殺するようフライホイールの減速が大きくされ、作業者が感じる反力全体が可能な限り低くされる。この構成の欠点は、例えば、第二モータがフライホイールを駆動する必要があること、及びその作業工程においてエネルギが浪費されることにある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、作業者に伝達されることになる反力が可能な限り低く維持され、同時に、締付トルクを必要とする連結具に十分なトルクを供給する動力工具を提供することにある。この目的は、請求項1に記載の本発明によって達成される。
【0008】
第一の特徴によれば、本発明は、連結具にトルクを供給するための手持ち式動力工具に関し、この動力工具はハウジングを有し、該ハウジングは、入力軸を駆動するよう設けられたモータと、連結具にトルクを供給するよう設けられた出力軸と、前記入力軸を前記出力軸に接続する遊星ギヤとを収容する。前記遊星ギヤは、サンホイールとリムギヤとを有し、前記サンホイールとリムギヤとの間には少なくとも一つの遊星ホイールが配置されている。少なくとも一つの遊星ホールは、遊星ホイールキャリア上に配置され、入力軸は、前記遊星ギヤを介して前記出力軸を駆動するために前記サンホイールに接続されている。出力軸は、前記遊星ホイールキャリアに接続されている。フライホイールが、ハウジングに対して自由に回転するよう設けられ、フライホイールは回転するように設定され得る。カムブロックはハウジングの中に緩く嵌めこまれる。カムブロックは、リムギヤに回転可能に接続され、かつ、カムプロファイルとカムフォロワとの間の相互作用を介してハウジングに接続される。前記カムプロファイルは、カムブロックがハウジングに対して回転させられた時に、カムフォロワとカムプロファイルとの間の相互作用が軸方向の動きをカムブロックに与えるように傾斜されており、その結果、カムブロックは、前記回転の結果として、フライホイールに接触するように強いられることになる。
【0009】
第二の特徴によれば、本発明は、同様の手持ち式動力工具に関し、この手持ち式動力工具では、リムギヤが出力軸に接続され、かつ、遊星キャリアがカムブロックに接続される。
【0010】
両方の特徴による本発明の利点は、反力の除去が自己調整されることになることにある。出力軸上の反力が高くなればなるほど、フライホイールと遊星ギヤの相互結合する部分との間の接触がより緊密になる。従って、作業者は、バランスをとるために反力を受けないか、又は非常に低い反力を受けることになり、フライホイールに蓄積されたエネルギは、バランスをとるために必要とされる何等かの反力がある場合に、使用されることになる。
【0011】
本発明の特別な実施例では、フライホイールは両方向に回転するよう構成され、カムプロファイルは、初期位置から両方の方向に傾斜させられ、カムブロックが前記初期位置からどちらの方向に回転させられても、カムブロックをフライホイールと接触する方向に向けて軸方向に押すことになる。
【0012】
この特別な実施例では、フライホイールは、締付行程及び緩め行程の両方の行程を補助するように配置され得る。
【0013】
本発明の別の実施例では、フライホイールは、モータによって回転するように構成され得る。それにより、追加のモータが必要なくなる。
【0014】
具体的には、モータを入力軸又はフライホイールの何れかに選択的に連結することができるようにするための選択ギヤが設けられ得る。
【0015】
本発明の一つの具体的実施例では、カムフォロワとカムプロファイルとの間の相互作用が、ハウジングの内部で、少なくとも三つの対応するカムプロファイルに当たるように設けられた少なくとも三つのカムフォロワを有する。
【0016】
少なくとも三つのカムフォロワと、少なくとも三つの対応するカムプロファイルを使用することによって、カムブロックは、何時でも軸方向に調節されることになる。
【0017】
本発明の別の実施例では、カムプロファイルは、カムブロックがフライホイールと接触しない初期位置にある時に、カムフォロワを受けるように配置された凹みを有し、カムフォロワを凹みから出すために所定の閾値トルクが必要とされる。
【0018】
凹みとカムフォロワとの間の相互作用は、カムブロックが回転してその初期位置から外れ、フライホイールと接触する前に、所定の閾値トルクを越えなければならないことになることを暗示している。
【0019】
本発明の具体的実施例では、カムプロファイルはハウジングの内部に設けられ、カムフォロワはカムブロックに設けられる。別の実施例では、カムフォロワがハウジングの内部に配置され、カムプロファイルがカムブロックの外側に配置される。
【0020】
本発明の複数の具体的実施例及び利点は、詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の概略的な実施例の第一動作モードを示している。
図2図1に示した実施例の第二動作モードを示している。
図3】本発明の具体的実施例を示している。
図4a図3において符号IVで示す部分の詳細図であり、三つの異なるモードの一つを示している。
図4b図3において符号IVで示す部分の詳細図であり、三つの異なるモードの一つを示している。
図4c図3において符号IVで示す部分の詳細図であり、三つの異なるモードの一つを示している。
図5図3に示した実施例の前側部分の分解図である。
図6図5のVIで示す部分の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び図2には、本発明が、概略的な方法で図式的に示されている。本発明は、ハウジング15を備えた動力工具10に関し、その内部には、遊星ギヤ14を介して出力軸12に連結された入力軸13を駆動するようモータ11が配置されている。カムプロファイル19がハウジング15の中に、好ましくは、ハウジングの前側部分の中に配置されている。このカムプロファイル19は、前記ハウジングに回転可能に配置されたカムブロック18と相互作用するよう配置されている。カムブロック18が何れかの方向に回転させられた時に、それがカムプロファイル19を追従し、軸方向に移動されるように、カムブロック18とカムプロファイル19とは相互作用する。
【0023】
遊星ギヤ14は、ギヤの中心に配置されたサンホイール、少なくとも一つの遊星ホイール、及び外側ギアリムを備え、前記外側ギアリムは、少なくとも一つの遊星ホイールと噛み合い接触する。本発明の具体的実施例では、遊星ギヤは、三つの遊星ホイールを備え、これら遊星ホイールは、遊星ホイールキャリアによって相互に連結されている。
【0024】
出力軸12は、ギヤリム又は遊星ホイールキャリアの何れかに接続され得る。出力軸12が遊星ホイールキャリアに接続される場合、ギヤリムはカムブロック18に接続され、該カムブロックと連動して回転され得る。他方、出力軸12がギヤリムに接続される場合、遊星ホイールキャリアがカムブロック18に接続されることになる。
【0025】
さらに、本発明に係る動力工具はフライホイール16を有し、該フライホイール16は、ハウジング15に対して自由に回転するように配置され得る。また、選択ギヤ17が設けられ、この選択ギヤ17はモータ11をフライホイール16に接続するように設けられ得る。動力工具10は、制御ユニット21に接続されるトリガ20を有する。動力工具は、さらに、ハウジングの中に収容されたバッテリのような動力ユニット22及び/又は外部動力ユニットへの接続部を有し得る。トリガ20が押されると、エネルギが動力ユニット22からモータ11へ供給され、モータ11が、入力軸13及び遊星ギヤ14を介して出力軸12を駆動する。しかし、第一ステップでは、選択ギヤ17はフライホイール16に接続され、フライホイール16を、全速力で回転させる。
【0026】
フライホイール16が回転するように設定されている時に、選択ギヤ17は、遊星ギヤ14を介して出力軸を駆動するように、入力軸13に接続される。ここで、出力軸12が、低トルクで駆動され得る限り、例えば、連結具にクランプ力が生じない限り、カムブロック18は回転しない。具体的な実施例では、弾性を有する要素が、カムブロック18と、遊星ギヤ14の相互連結された部材とを回転させないように配置されている。
【0027】
トルクが、特定の閾値Tthresholdを超えるとすぐに、反力が出力軸12から遊星ギヤ14の相互連結された部材及びカムブロック18へ伝達され、カムブロック18は、反時計回りに回転し始める。カムブロック18とカムプロファイル19との間の相互作用が、カムブロック18を後方へ押しやり、フライホイール16の接触面に接触させる。この接触により、カムブロック18とフライホイール16とが摩擦連結し、運動エネルギが、フライホイール16からカムブロック18へ伝達されることになる。これにより、カム18は、フライホイール16との相互作用により、軸方向前方に押されることになる。
【0028】
典型的な締付行程では、所定の時点の後、所望のトルクTtargetに達する最終時点に向けて、トルクは連続的に増加する。このような行程では、カムブロック18は、締付の最終段階の間、フライホイール16に接触し続けることになる。この行程において、従来の動力工具では伝達されたであろう反動力はハウジングに伝達されない。代わりに、反動力は、フライホイール16に取り込まれ、締付の最終工程の間中ずっと防がれる。従って、工具を持っている作業者に対して与えられるトルクはないか、又は非常に低くなる。
【0029】
本発明の具体的実施例が図3に示されている。図1及び図2に示した特徴部分に対応する図3の特徴には同じ符号を付す。図3に示した具体的実施例では、選択ギヤ17が、軸方向に移動可能なギヤピンであり、その第一端部でモータ軸24によって駆動され、反対側の端部で遊星ギヤ14に接続されている。具体的には、選択ギヤ17の前端部は、入力軸13によって構成されている。図3では、ハウジング15は、前側ハウジング部分15aと、内側ハウジング部分15bとから成る。
【0030】
図3に示すように、入力軸13は、遊星ギヤ14のサンホールを構成する。サンホイールは、遊星ホイール31を駆動し、遊星ホイール31は遊星ホイールキャリア32によって相互に結合されている。遊星ホイールキャリア32は、出力軸12に接続されている。従って、サンホイールが時計回りに駆動される時、遊星ホイール31は、その軸線を中心に反時計回りに回転することになり、それにより、遊星ホイールキャリア32は、少なくともサンホイールより遅い速度で時計回りに回転することになる。外側ギヤリム33は、カムブロック18に接続され、カムブロック18は前側のハウジング部分15aの中に回転可能に配置されている。
【0031】
フライホイール16は、出力軸12が回転されている時に、同じ方向に回転するよう配置されている。従って、従来の連結具を締め付ける時、フライホイール16は時計方向に回転するように配置される。ギヤリム33及びカムブロックは、出力軸12に作用している反力が、所定の閾値トルクTThresholdより低い限りは回転しない。
【0032】
図3に示したカムブロック18は、ピン23の形態の少なくとも一つのカムフォロワを有し、前記ピン23は、前側ハウジング部分15aの内部でカムプロファイル19と相互に作用するように設けられている。図3に示した具体的実施例の作用が、図4a〜図4cを参照して以下に説明される。図4a〜図4cには、工具10の前側部分の詳細図が、三つの異なるモードで示されている。
【0033】
図4aには、フライホイール加速モードにある工具が示されており、図4bには、中間モードにある工具が示されており、図4cには、プロダクションモードにある工具が示されている。異なるモードで、選択ギヤ17が異なる位置を採る。
【0034】
図4aに示したフライホイール加速モードでは、選択ギヤ17は、モータ24をフライホイール16に接続するように位置している。フライホイール加速モードは、締付行程の第一ステップとして使用され、連結具が締め付けられる前にフライホイール16が回転していることを確実にする。モータ軸24は、スプライン結合部25を介して選択ギヤ17に接続される。スプライン結合部25は、選択ギヤ17がハウジング15に対して軸線方向に移動することを可能にする。選択ギヤ17は、フライホイール16の内側部分27と相互作用するアウタースプライン26を有する。フライホイール16は、ベアリング28によって、内側ハウジング部分15bに対して支持されている。入力軸13を形成する選択ギヤ17の前側部分は、遊星ギヤ14と係合していない。
【0035】
選択ギヤ17は、それが軸方向に移動され得、そして、その位置がソレノイド(図示せず)によって制御され得るように配置される。フライホイール16が、モータによって、所望の回転速度まで加速された時、選択ギヤ17は、図4bに示す中間モードまで、軸方向に移動される。中間モードでは、選択ギヤ17は、フライホイール16の内側部分27にも、遊星ギヤ14にもギヤ接触していない。
【0036】
選択ギヤ17は、径方向ピン29を備え、選択ギヤ17が所定の回転数より高い回転数で回転する時に、径方向ピン29は選択ギヤ17の表面から径方向にのびる。選択ギヤ17が、フライホイール16との相互作用によって軸方向に移動される時、選択ギヤ17は、フライホイール16と同じ回転数で回転し、径方向ピン29は、それらの各孔からのび出し、フライホイール16の内側部分27の包囲内面と接触する。選択ギヤ17が、フライホイール16との相互作用によって軸方向に移動させられているので、径方向ピン29は、フライホイール19の内側部分27の内面にある開口30の中に入ることになる。径方向ピン29と開口30との間の相互作用により、その回転速度が、径方向ピン29が選択ギヤ17の中に後退し、開口30から出て、選択ギヤ17が中間モードに対応する位置から動かされ得るようになる閾値速度より低い速度に達するまで、選択ギヤ17がさらに軸方向に移動することが遮られることになる。後退は、径方向ピン29が、開口30の縁部と相互作用することになる丸くされた縁部を有することによって達成され得る。回転速度が、特定の閾値速度より低い速度に達する時のある時点で、ソレノイドの作用が、径方向ピン29を外側に押す遠心力を上回ることになる。この時点で、選択ギヤ17は、中間モードに対応する位置から動かされることになる。
【0037】
出力軸12を加速するために、選択ギヤ17は、プロダクションモードまで動かされる必要がある。このプロダクションモードでは、選択ギヤ17は、遊星ギヤ14を介してモータ11を出力軸12に接続する。図4cでは、選択ギヤ17は、プロダクションモードで示されている。このモードでは、入力軸13は、遊星ギヤ14のサンホイールとして作用することになる。入力軸13は、従って、複数の遊星ホイール31を回転駆動する。実際には、一つの遊星ホイールが必要とされるだけだが、好ましくは、少なくとも三つの遊星ホイールが使用される。遊星ホイール31は、遊星ホイールキャリア32を用いて、相互に連結され、順番に出力軸12に接続される。ギヤリム33は、遊星ホイール31と、遊星ホイールの外側で、ギヤ接続するように設けられている。
【0038】
サンホイール、言い換えれば、入力軸13が時計回りに回転させられるので、遊星ホイール31は、それら自身の軸の周りを反時計方向に回転させられることになる。遊星ホイールキャリア32は、それにより、入力軸13の回転速度より約3〜5倍遅い回転速度で時計回りに回転することになる。遊星ホイールキャリア32が出力軸12に接続されるので、出力軸12は、遊星ホイールキャリア32と同じ回転速度で回転することになる。
【0039】
ギヤリム33は、カムブロック18に接続される。出力軸12が、実質的に力を加えることなく回転させられ得る限りはずっと、ギヤリム33及びカムブロック18は回転しない。出力軸12に作用する反力が、特別な閾値Tthresholdを超えると、例えば、クランプ力が締め付けられる連結具に生じた時に、ギヤリム33及びカムブロック18は反時計回りに回転するようにされる。カムプロファイル19を追従する少なくとも一つのカムフォロワ23の相互作用により、カムブロック18は、フライホイール16に向けて軸方向後方に強いられることになり、カムブロック18に時計方向に作用する力を与える。
【0040】
図示実施例では、カムフォロワ23はカムブロックの一部であり、カムプロファイル19はハウジング15の内側に配置されている。しかし、逆に構成すること、言い換えれば、カムプロファイル19をカムブロックの外側に設け、カムフォロワ23をハウジング15の内側から伸ばすように構成することも可能である。その機能は同じになる。
【0041】
図5は、カムブロック18及びフライホイール16の分解図を示している。図面の右側から、内側ハウジング部材15b及びフライホイール16が示されている。フライホイール16の内側部材を内側ハウジング部材15bに接続するベアリング28が、それらの間に配置されている。遊星ギヤのギヤリム33は、カムブロック18の内側に堅固に嵌められている。左側に、前側ハウジング部材15a及び出力軸12が示されている。カムブロック18は、四つのカムフォロワ23を有する。前記カムフォロワ23は、ピンの形態であり、前側ハウジング部材15aの内側にある四つの対応するカムプロファイル19と相互に作用する。カムブロック18とカムプロプロファイル19との間の相互作用が、図5の円で囲まれた部分VIが詳細に示された図6を参照して説明される。
【0042】
カムプロファイル19は凹み34を有し、カムブロック18がその初期位置にある時に、その凹み34の中にカムブロック18のカムフォロワ23が配置される。カムブロック18が初期位置にある時に、それはフライホイールに接触していない。カムフォロワ23と凹み34との間の相互作用により、カムブロック18の回転が制限され、それが低いトルクを受けている限りは、カムブロック18が動かないことが確実にされる。カムブロック18に作用するトルクが所定の閾値Tthresholdを超えると、カムブロックは回転させられ、カムフォロワ23が凹み34から出て、カムブロック18がフライホイール16に向けて軸方向後方に移動させられるようになる。図6から明らかなように、カムプロファイル19は、連続的に傾斜させられており、どちらの方向にしても、カムブロック18のさらなる回転運動により、カムブロック18は、さらに後方へ動かされ、フライホイール16とより緊密に接触するようにされる。図示実施例は、平衡がとられ得ることを暗示する機能を示しており、実施例では、全ての瞬間で必要とされる非常に多くのエネルギが、フライホイール16からカムブロック18及び相互連結ギヤリム33へ提供される。
【0043】
以上、本発明を具体的実施例を参照して説明した。しかし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。当業者は、具体的実施例の様々な特徴に変わる別の特徴を見出すことができ、それらは、特許請求の範囲によって限定された本発明の範囲に入る。
【符号の説明】
【0044】
10 動力工具
11 モータ
12 出力軸
13 入力軸
14 遊星ギヤ
15 ハウジング
15a 前側ハウジング部分
15b 内側ハウジング部分
16 フライホイール
17 選択ギヤ
18 カムブロック
19 カムプロファイル

20 トリガ
21 制御ユニット
22 動力ユニット
23 ピン(カムフォロワ)
24 モータ軸
25 スプライン結合部
26 アウタースプライン
27 フライホイールの内側部分
28 ベアリング
29 径方向ピン
30 開口
31 遊星ホイール
32 遊星ホイールキャリア
33 外側ギヤリム
34 凹み
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6