【実施例】
【0037】
具体的な実施形態の実施例は、発泡硫黄アスファルトおよび発泡硫黄アスファルト安定化土の使用のより良好な理解を容易にする。実施例は、本発明の範囲を決して限定したり定義したりするものではない。
【0038】
東サウジアラビアからの3種の主要な土を、異なる2種の発泡アスファルト組成物−発泡硫黄アスファルト(実施例)および発泡アスファルト(比較例)−に関連して発泡アスファルトへの硫黄添加の影響の物理的な比較試験用の一連の実験用安定化土試料を形成するために使用する。
【0039】
[混合装置]
混合装置で実施例および比較例の発泡アスファルト組成物の両方を形成する。発泡アスファルトの実物規模生産を精密にシミュレートする、実験室規模の発泡アスファルトプラントである混合機付きWLB10(Wirtgenグループ;独国)を実験に使用する。
【0040】
混合機付きWLB10は、アスファルト結合剤を加熱し維持するための温度制御を有する断熱釜を備える。混合装置はまた、発泡アスファルト組成物を形成するためにアスファルト結合剤、水および空気を互いに導入するための較正分配システムを備える。混合装置は、所定容量のアスファルト結合剤、水および空気を発泡ミキサーに注入して発泡アスファルト組成物を形成する。膨張室である発泡ミキサーは温度調節される。発泡アスファルト組成物は閉鎖系で形成される。潜在的に有害または有毒な硫黄ガスの発生による煙霧は、環境に、または混合装置の運転者に放出されない。
【0041】
実験のために、WLB10の空気流ゲージは、周囲温度で約5バールの空気導入圧に較正する。空気導入圧は約5バール〜約9バールの範囲であってもよい。実験について、水流ゲージは、周囲温度で約6バールの水導入圧に較正する。起泡水導入圧は、空気の侵入を回避するために発泡空気圧より少なくとも1バール高い圧力に維持する。飲料水は導入水として役立つ。アスファルト結合剤の流速は、アスファルト結合剤の導入温度の操作により維持する。
【0042】
発泡アスファルト組成物は、発泡ミキサーから発泡アスファルトノズルを通って排出される。一定量の発泡アスファルト組成物は、実験骨材混合容器の骨材の試料に直接排出される。実験室混合機は、骨材および発泡アスファルト組成物の組み合わせを攪拌して試験用の発泡硫黄アスファルト安定化土を形成する。
【0043】
[土の種類]
比較例の安定化土試料の形成に使用する、東サウジアラビアからの3種の主要な土は、砂丘砂、サブカ土および泥灰土である。骨材試料はすべて導入前に風乾してある。
【0044】
[砂丘砂]
砂は、サウジアラビアだけでなく世界中の多数の国においても広く入手可能で安価な資源である。適切に安定化させれば砂の効果的使用が道路建設用に可能になる。未処理の砂丘砂の試料の粒径加積曲線を
図1に示す。集めた未処理の砂丘砂の特性は、標準骨材および土質試験によって求め、表1に要約する。砂丘砂の最適な含水比は約0%である。
【表1】
表1:未処理の砂丘砂の標準骨材および土質試験結果。
【0045】
[サブカ土]
サブカ土はアル・アジジャ・サブカ平原から採取される。未加工の土は、地下水面より上の層すべてを含むが、地表の外皮を除外している。風乾するために、土を実験室外のビニールシートに広げる。プラスチックハンマーを使用して結晶および塊を壊し、結果として得られた土は、ASTMふるいNo.4に通す。ふるいにかけた土を、混合および試験までプラスチックドラム中で混合し保持する。
【0046】
サブカ土の粒度分布曲線を
図2に示す。2種類の湿式ふるい分析を遂行してサブカ土を特性評価する。1つの試験は、蒸留水を使用し、他方は「サブカブライン」、すなわち土が回収されるのと同じ採掘場に存在する塩水を使用する。両試験は、2本の曲線で、サブカ土の砂の組成を明示する(
図2)。これらの結果に基づいて、サブカ土は、統一土質分類法(Unified Soil Classification System、USCS)に従って「SP」、およびAASHTO分類に従って「A−3」と分類することができる。
【0047】
サブカ土の試験は、モールドの中の土の含水比と乾燥密度値の間の関係を求めるために修正プロクター締固め試験(ASTM D1557)を使用し、サブカ土もCalifornia Bearing Ratio(CBR)(ASTM D1883)に関して試験する。CBR試験値をプロクター締固め試験結果に重ねて、材料の強度挙動と含水比の変化との関係を求める。結果は
図3に提示する。乾燥密度の最大値の約95%に対応する最適非水浸CBR値での含水比(MC)は、サブカ土の乾燥重量に対して約11.5%である。
【0048】
[泥灰土]
図4は、採取した泥灰土の粒度分布曲線を示す。土の粒度は1.0インチ未満である。そのサイズの半量の土がNo.200ふるいを通る。
図5は、最適な含水比が泥灰土の乾燥重量に対して約11.8%であることを示す、修正プロクターの締固め曲線を示す。この土は、78の非水浸CBRおよび8の水浸CBRを有する。表2に与えられた結果は、砂の量が少ないことを示す。
【表2】
表2:泥灰土の標準骨材および土質試験結果。
【0049】
[土の含水比]
各土を実施例または比較例の発泡アスファルトと混合する前に、湿潤水を風乾土試料に導入して、土試料の含水比を、締固めに最適な含水比(OMC)に、そうでなければその近くにする。風乾土試料に導入される湿潤水の量は、その種類および骨材中の含水比の程度に依存する。この実験に関して、導入するべき湿潤水の量は式1を使用して求められる:
W
添加=1+(0.5W
OMC−W
風乾)(式1)
式中、W
添加は、湿潤水の導入により風乾した骨材試料に加えられる含水比(風乾土の重量パーセント)であり、W
OMCは、土試料に決められた最適な含水比(重量パーセントで)であり、W
風乾は、水添加前の風乾土試料に決められた含水比(重量パーセントで)である。例えば、前述のとおり砂丘砂のW
OMCは約0%であり、風乾した砂丘砂は約0%の含水比を有する。そのため、発泡アスファルトを受け、次いで圧縮されるために砂丘砂に導入される湿潤水の量は、砂丘砂が風乾土重量で約1重量%の含水比を有するようにする。水の添加は、湿らせてすぐの骨材を実施例および比較例の発泡アスファルト組成物と組み合わせる直前に行う。
【0050】
[ポルトランドセメント]
土試料への湿潤水の導入に加えて、約2%の風乾土重量相当のポルトランドセメントを導入し土試料とブレンドする。ポルトランドセメントは硬化および強度増進を高めるために加える。ポルトランドセメントの導入は、実施例または比較例の発泡アスファルトを土試料に導入する前に行う。
【0051】
[通常のアスファルト結合剤]
比較例の発泡アスファルトを形成するために使用するプレーン、ニートまたは無添加アスファルトをWLB10の断熱釜に導入し、起泡に使用するまで約180℃の温度で加熱し撹拌する。この実験については、通常のアスファルトは、パフォーマンスグレード64−10(PG64−10)アスファルト結合剤である。
【0052】
無添加アスファルトに関しては、温度は180℃未満に維持されないが、それは、発泡プレーンアスファルトが不安定であり、少なくとも約8の膨張比係数、または少なくとも約6秒の最小発泡半減期のいずれか、またはその両方の最小限の特性を満たすことができないからである。
【0053】
[硫黄アスファルト結合剤]
硫黄アスファルト結合剤は、アスファルト硫黄結合剤の合計重量で約30重量%の遊離硫黄および約70重量%のプレーンアスファルト(PG64−10)を均質になるまで混合することにより製造する。前もってブレンドした30/70重量%の硫黄アスファルト(他の改質添加剤を含まない)を硫黄アスファルト結合剤として実験に使用する。
【0054】
前もってブレンドした30/70重量%の硫黄アスファルト結合剤を145℃でオーブン中で形成し、溶融状態の間に一緒にブレンドする。溶融硫黄アスファルト結合剤はWLB10の断熱釜に導入し、約150℃の温度に加熱し、起泡に使用するまで撹拌する。
【0055】
[起泡水]
発泡硫黄アスファルトが硫黄アスファルト結合剤の約3.45重量%の含水比を有するように、起泡水を硫黄アスファルト結合剤に導入する。
【0056】
[安定化土の実施例および比較例の形成]
常温ミックス用のマーシャル配合設計法を、実施例または比較例の発泡アスファルト安定化土混合物を設計するために用いる。合計6種の安定化土ミックス試料−それぞれ、異なる量の実施例または比較例の発泡アスファルトを含む−を各土試料の種類について作り、これらは表3に報告する。
【0057】
硫黄アスファルト結合剤、起泡水および起泡空気を、混合機内部で互いに導入し、混合機を、発泡硫黄アスファルトの実施例が混合機中で形成されるように運転する。硫黄アスファルト結合剤の3.45重量%の含水比では、発泡硫黄アスファルトの発泡膨張比は、排出される硫黄アスファルト容量の約8.8倍であり、発泡半減期は約9.1秒である。通常のアスファルト、起泡水および起泡空気を混合機内で互いに導入し、混合機を、発泡アスファルトの比較例が混合機中で形成されるように運転する。混合機の内部温度は約150℃に維持される。
【0058】
実施例および比較例の発泡アスファルトは、発泡アスファルトノズルを介して混合機から生成される。実施例および比較例の発泡アスファルトは約130℃未満の温度を有し、それによって潜在的に有毒または危険な硫黄化合物の発生を防止する。
【0059】
無添加および硫黄の発泡アスファルト安定化土の土試料を作るために、式1を使用して作る決まりを満たすように、湿潤水を風乾土試料に導入する。さらに、風乾した骨材の重量で約2%のポルトランドセメントもまた導入し、約30秒間ブレンドする。
【0060】
混合装置は、各土試料を調製する前に、単位時間当たりの、実施例または比較例の発泡アスファルトの一定量の排出を較正する。土試料をHobart実験室混合機で攪拌しながら、発泡アスファルトの規定容量を土試料に直接排出する。土試料に導入される実施例または比較例の発泡アスファルトの量は、発泡アスファルト添加前後に混合ボウルの中味の差異を秤量することにより検証する。実施例または比較例の発泡アスファルトと土試料の組み合わせの混合は、約30秒〜約1分の範囲の間に行う。
【0061】
[安定化土の実施例および比較例の物理的試験]
安定化土の実施例(発泡硫黄アスファルトを含む)および比較例(発泡プレーンアスファルトを含む)を、各安定化土試料に標準マーシャルのハンマーを1面当たり75打施すことにより作る。各安定化土試料を硬化し、試験を行うのに必要な場合、試験前に水に漬ける。各安定化土試料で行う試験は、マーシャル安定度およびマーシャル安定度損失(または耐久性)(ASTM D1559)、間接引張強度および最適発泡瀝青質含有率(ASTM D4867およびAASHTO T−245)、レジリエントモジュラス(ASTM D4123)、およびわだち掘れ(永久変形)が含まれる。最適な結合剤含有率は、水浸強度が最も高い結合剤含有率である。耐久性は、類似のマーシャル安定度試料および同じ試験手順を使用して、ただし試料を室温で24時間水に水浸した後、求める。結果は、安定化土の実施例および比較例の両方について表3に提示する。
【0062】
[間接引張強度]
間接引張強度(ITS)試験は、亀裂進展に対するミックスの耐性を求めるのを助ける。ITS試験は、高さ2・1/2インチ直径4インチ(高さ63.5mm直径101.6mm)の円柱形試供体で行う。試供体はマーシャル締固め法に従って調製する。破損する前の試供体が担持する最大荷重が、その結果である。試験は25℃で実行した。
【0063】
ITS試験(室温で24時間水に水浸した試料)の水浸試料バージョンは、各安定化土の実施例の最適結合剤含有率の決定に対する主要な指標である。
【0064】
[レジリエントモジュラス]
レジリエントモジュラス試験は、舗装構造の機構的設計手法に重要な可変要素である。これは、動的応力およびそれに応じて生じた変形に対する舗装反応の測定である。HMAのレジリエントモジュラスは、直径方向のパルス荷重を加えることにより遂行する。荷重は、高さ2・1/2インチ直径4インチ(高さ63.5mm直径101.6mm)の円柱形試供体の垂直直径面に加える。試供体はマーシャル締固め方法に従って調製する。結果として得られた試供体の水平変形を測定し、レジリエントモジュラスを計算する。試験は25℃で行った。
【0065】
[わだち掘れ試験(永久変形)]
安定化土の実施例および比較例は、円盤状の安定化土試料の平面に加重した車輪を繰り返し前後に跡つける多重車輪付き装備であるアスファルト舗装アナライザを30℃で使用して、わだち掘れ耐性を評価する。車輪荷重は100lb
fに設定し、車輪圧は100psiに設定する。旋回式締固め機は、マーシャル締固め試料と同じ密度に円盤の平面に沿って6インチの丸い安定化土試料を締固める。車輪付き装備は、各安定化土の輪の直径で横断する。試験の前に、実施例および比較例の安定化土は、試験温度で4時間調整する。
【表3】
表3:安定化した砂丘砂、泥灰およびサブカ土の試験結果。
【0066】
発泡硫黄アスファルトの使用は、発泡ニートアスファルトの使用と比較して泥灰およびサブカ土試料のわだち掘れを50%低下させた。理論によって束縛されたくないが、砂丘砂のわだち掘れ耐性は砂を他の種類の骨材と混合することにより向上し得ると考えられる。
【0067】
泥灰発泡硫黄アスファルト安定化土は、示した6種のうち、最も好ましい安定化土組成物であるように見える。この組成物に関しては、マーシャル安定度は6.672kNを超え(30)、間接引張強度は200kPaを超え(640)、70%を超える(72)耐久性を有する。これは、アスファルトコンクリートに求められる最小限の日常使用要件を満たす。