【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の教示によれば、上記目的は、以下を含有する酸洗浄水溶液を用いてアルミニウムろう付け層の洗浄面が洗浄されたアルミニウム複合材料の使用によって達成される。
− 少なくとも1種類の鉱酸若しくは短鎖カルボン酸の群の少なくとも1種類の酸と少なくとも1種類の錯形成剤、又は
− 少なくとも1種類の錯化鉱酸。
ここで、洗浄における材料の除去が0.05g/m
2から6g/m
2、好ましくは0.1g/m
2から1g/m
2、特に好ましくは0.2g/m
2から0.4g/m
2であり、アルミニウム複合材料がフラックスフリー熱接合法に使用され、接合法が保護性ガスの存在下で実施される。
【0012】
好ましくは、鉱酸として、例えば、0.1%〜20重量%の量のH
2SO
4、0.1%〜20重量%の量のH
3PO
4、0.1%〜10重量%の量のHCl、及び更に20ppm〜3%の量のHF、又は鉱酸の組合せが使用される。錯化鉱酸としては、好ましくは20ppmから3重量%、20ppmから1000ppm又は20ppmから600ppm、特に好ましくは300ppmから600ppm又は300ppmから480ppmの量のHF、並びに0.1%〜20重量%の量のH
3PO
4が使用される。特に好ましい組合せは、0.5%〜2重量%の量のH
2SO
4、並びに20ppmから480ppmの量のHFからなる。
【0013】
ギ酸が、好ましくは、短鎖カルボン酸として使用される。錯形成剤としては、例えば、フッ化物が20ppmから3重量%、好ましくは20ppm〜1000ppm又は20ppm〜600ppm、特に好ましくは300ppm〜600ppm又は300ppm〜480ppmの量で使用される。実験では、特に、最高300ppm〜600ppm、好ましくは300ppm〜480ppmの濃度のフッ化物の使用が、工業的環境において迅速に表面処理するために十分であることが示された。
【0014】
これまで知られていたこととは反対に、今回、少なくとも1種類の鉱酸若しくは短鎖カルボン酸の群の少なくとも1種類の酸を錯形成剤と組み合わせて用いて、又は錯化鉱酸を用いて、アルミニウムろう付け層を洗浄することによって、アルミニウムろう付け層の表面一貫性(独:Oberflaechenbeschaffenheit,英:surface consistency)を得ることができ、保護性ガスの存在下での熱接合プロセスにおいて、これは、フラックスを必要とせずに優れたろう付け性又は熱接合性を有することが見いだされた。ここで重要なことが、0.05g/m
2から6g/m
2、好ましくは0.1g/m
2から1g/m
2、特に好ましくは0.2g/m
2から0.4g/m
2の量の材料の除去と、洗浄溶液による錯体形成との組合せである限り、結果は驚くべきものである。鉱酸は、洗浄中の材料の対応する除去をもたらし、これは、保護性ガス又は不活性ガス雰囲気下のフラックスフリー熱接合用表面を調製するのに必要である。錯形成剤と併せた材料の除去は、アルミニウムろう付け層の特定の表面構造をもたらし、フラックスを使用せずに、保護性ガス下でその後のろう付けを可能にすると考えられる。材料の除去が例えば0.05g/m
2未満であると、ろう付け結果は不十分なものにしかならない。6g/m
2を超える材料の除去は、ろう付け性に影響せず、製造時の材料損失が不必要に多くなる。これは、さらに、材料の除去を1g/m
2又は0.4g/m
2に削減することによって、減少させることができる。少なくとも0.05g/m
2の材料の除去によって、ろう付け性が確実に改善され、帯状加工によって良好なろう付け結果が得られる。材料の除去が最高0.4g/m
2であると、ろう付け性のプロセス信頼性が高くなり、材料の除去の不必要な増加がなくなる。
【0015】
これらの結果は、錯化鉱酸単独でも、例えば、20ppmから3重量%の量のHF、又は0.1重量%から20重量%の量のH
3PO
4などでも、材料の除去を適切に調節して得ることができる。この場合、好ましくは20ppmから1000ppm又は20ppmから600ppm、特に好ましくは300ppmから600ppm又は300ppmから480ppmのHFが使用される。表面清浄度に関する高い要求のためにこれまで減圧下でしかろう付けできなかった構造部品を、将来、フラックスフリーでより費用効果の高いCAB法でも接合できることも今回のこの発明によって可能である。
【0016】
例えば、アルミニウム複合材料を、好ましくは、フラックスフリーCAB法に使用することができる。CAB法は、ろう付け相手の加熱プロセスが、制御された不活性ガス雰囲気下で、特に主として酸素及び大気水分を排除して、実施されることを特徴とする。
【0017】
使用する鉱酸の有効性は、一実施形態によれば、さらに、アルミニウムろう付け層の表面を洗浄前又は洗浄中に脱脂すると更に高くなり得る。
【0018】
アルミニウム複合材料の使用の更なる一展開によれば、アルミニウム複合材料の表面を鉱酸と錯形成剤としてのフッ化物で前もって洗浄した。フッ化物は、保護性ガス下でのフラックスフリーろう付け又は熱接合に関して特に良好な結果を達成可能にすることが見いだされた。これは、とりわけ、中心原子としてのアルミニウムと組み合わせたフッ化物が、極めて高い錯生成定数を有し、したがって合金成分を溶液中に直接運ぶことに起因する。
【0019】
アルミニウムろう付けプロセスにおける表面が適切に酸洗浄されたアルミニウム複合材料の使用は、例えば、アルミニウムコア合金として、タイプAA1xxx、AA2xxx、AA3xxx、AA5xxx又はAA6xxxのアルミニウム合金が用意され、該アルミニウムコア合金のMg含有量が各場合において最高1.0重量%であると、更に改善される。保護性ガス下の熱接合に今回使用することができるアルミニウムコア合金のために、特にMg含有アルミニウムコア合金のためにも、ろう付け構築物の使用領域の範囲がかなり広くなった。特に、例えば、Mg含有量が最高1.0重量%の合金タイプAA5xxx、AA6xxxなど、ろう付けが困難であるMg含有アルミニウム合金も、別の一実施形態によれば、保護性ガス下でのフラックスフリー熱接合法で接合することができる。
【0020】
本発明の更なる一展開によれば、アルミニウムろう付け合金は、重量%単位の以下の組成、すなわち、
6.5%≦Si≦15%、
Fe≦1%、
Cu≦0.3%、
Mg≦2.0%、
Mn≦0.15%、
Zn≦0.15%、
Ti≦0.30%、
残りのAl、及び個々に最高0.05%、合計して最高0.15%の不可避不純物、
を有する。
【0021】
アルミニウムろう付け合金として、好ましくは、例えば、タイプAA4343、AA4045又はAA4047のアルミニウムろう付け合金を使用する。上記仕様を満たすすべてのアルミニウムろう付け合金に共通しているのは、それらがアルミニウムコア合金よりも融点が低く、その結果、ろう付けされる構造部品をアルミニウムコア合金の固相線温度よりも低い温度に加熱すると、アルミニウムろう付け層が液体又は少なくとも部分的に液体になることである。しかし、アルミニウムコア合金は溶融しない。アルミニウムろう付け合金のSi含有量は、好ましくは7.5重量%から13重量%、特に好ましくは8.5重量%から13重量%、又は10重量%から13重量%である。
【0022】
後続の使用におけるアルミニウム複合材料の機械的性質を確保するために、更なる一展開によれば、これらを洗浄前又は後に固溶化焼きなまし、軽く焼きなまし、又は再焼きなましする。
【0023】
経済的に大規模に製造することができるアルミニウム複合材料は、アルミニウム複合材料を同時鋳造又は圧延接合によって製造する場合に提供することができる。同時鋳造又は圧延接合の代替として、アルミニウムろう付け層を溶射によって塗布することも可能である。しかし、最初に言及される変形形態は、アルミニウム複合材料の製造に大きな工業規模で現在使用されている方法であり、鋳造材料は、種々のアルミニウム合金層間のそのかなりの濃度勾配のために、圧延接合材料の離散的な層組成物とは異なる。圧延接合においては、層間でわずかな拡散過程しか起こらない。
【0024】
好ましくは、少なくとも1個のアルミニウムろう付け合金層の平均厚さが少なくとも10μmであることを特徴とするアルミニウム複合材料を使用する。構造部品の形状が適切であると、平均厚さが少なくとも10μmであるアルミニウムろう付け合金層は、特に信頼でき、良好なろう付け結果が得られ、通常、ろう付け接合部の強度が十分であることが見いだされた。それぞれのろう付け層の厚さは、複合材料の全厚の好ましくは5%から25%、好ましくは10%から20%である。
【0025】
さらに、表面処理においては、例えば、成形助剤の塗布などの更なるプロセスステップを同時に組み合わせる可能性があり、したがってアルミニウム複合材料を使用すると更なるプロセスステップが削減される。
【0026】
本発明の第2の教示によれば、上記目的は、アルミニウム複合材料が、少なくとも1種類の鉱酸若しくは短鎖カルボン酸の群の少なくとも1種類の酸と少なくとも1種類の錯形成剤又は少なくとも1種類の錯化鉱酸を含む酸洗浄水溶液(独:waessrigen Beizloesung,英:aqueous picking solution)で洗浄されることを特徴とし、洗浄における材料の除去が0.05g/m
2から6g/m
2、好ましくは0.1g/m
2から1g/m
2、特に好ましくは0.2g/m
2から0.4g/m
2である、帯状アルミニウム複合材料、特に本発明に従って使用されるアルミニウム複合材料を製造する方法によって達成される。
【0027】
アルミニウム複合材料は、例えば、H
2SO
4、HCl、HF又はH
3PO
4の群からの少なくとも1種類の鉱酸と錯形成剤を含む洗浄溶液で洗浄することができる。鉱酸としては、0.1から20重量%の量のH
2SO
4、0.1から20重量%の量のH
3PO
4、0.1%から10重量%の量のHCl、又は20ppmから3%、好ましくは20ppmから1000ppm若しくは20ppmから600ppm、特に好ましくは300ppmから600ppm若しくは300ppmから480ppmの量のHF、又は上記鉱酸の組合せを使用することができる。あるいは、錯形成鉱酸としては、20ppmから3%、好ましくは20ppmから1000ppm若しくは20ppmから600ppm、特に好ましくは300ppmから600ppm若しくは300ppmから480ppmの量のHF、さらに0.1%から20重量%の量のH
3PO
4を使用することができ、又は少なくとも1種類の錯形成剤と一緒に、短鎖カルボン酸の群由来の少なくとも1種類の酸、例えば、ギ酸を含む。プロセスにおいては、良好なろう付け結果を得るための要点は、0.05g/m
2から6g/m
2、好ましくは0.1g/m
2から1g/m
2、特に好ましくは0.2g/m
2から0.4g/m
2の材料の十分な除去と、洗浄溶液による錯体形成との組合せであることが見いだされた。
【0028】
既に述べたように、それは、特に、後続の熱接合中に、特にフラックスを使用せず、熱接合が保護性ガス下で実施される場合も、ろう付け相手の極めて良好な濡れ性が得られるように、アルミニウムろう付け合金層の表面を調整することができる鉱酸と錯形成剤、例えば、キレート化化合物の組合せである。鉱酸の濃度は、通常、4未満のpH値、好ましくは0から3のpH値を生じるべきである。
【0029】
好ましくは、アルミニウム複合材料を洗浄中又は洗浄前に脱脂媒体で脱脂する。このようにして、錯形成剤と併せた鉱酸の有効性を更に高めることができる。
【0030】
別の一実施形態によれば、フッ化物、シトラート、オキサラート又はホスファートを錯形成剤として使用する。錯形成剤の濃度は、好ましくは20ppmから3重量%フッ化物、好ましくは20ppmから1000ppm又は20ppmから600ppm、特に好ましくは300ppmから600ppm又は300ppmから480ppm、0.001%から10重量%シトラート、特に好ましくは0.5%から5重量%シトラート、0.001%から5重量%オキサラート、さらに0.005%から40重量%ホスファートである。原則的には、錯形成テルペンも使用することができる。良好なろう付け結果を得るために、別のキレート化化合物及び錯形成化合物、例えば、錯滴定に使用される典型的な薬剤を使用することもできるが、通常は、経済的及び生態学的理由により許容されない。
【0031】
特に、錯化鉱酸HFは、フルオロアルミナートの錯生成定数が高いため、後で説明するように、極めて低濃度で既にろう付け結果に対する効果が大きく、短い洗浄処理でも既に保護性ガス下でのフラックスフリーろう付けにおいて良好なろう付け結果をもたらす。
【0032】
上記方法の別の一実施形態によれば、洗浄溶液中の鉱酸の濃度は、以下の範囲である。
H
2SO
4:0.1%から20重量%、
H
3PO
4:0.1%から20重量%、
HCl:0.1%から10重量%、
HF:20ppmから3重量%。
【0033】
その技術的可能性にかかわらず、より高い濃度は、経済的又は生態学的理由により許容されない。さらに、上記濃度の鉱酸H
2SO
4とHFの組合せは、ろう付け結果が特に良好であることが見いだされた。特に好ましい組合せは、0.5から2重量%の量のH
2SO
4と、好ましくは20ppmから1000ppm又は20ppmから600ppm、特に好ましくは300ppmから600ppm又は300ppmから480ppmの量のHFからなる。
【0034】
場合によっては、アルミニウム複合材料の表面を脱脂し、同時に洗浄溶液の洗浄作用の均一性及び速度を高めるために、少なくとも1種類の界面活性剤を洗浄水溶液に添加する。
【0035】
上記濃度の鉱酸は、pH値を低下させることによって、アルミニウムろう付け合金層の表面が攻撃されるようにする。錯形成剤は、上記鉱酸濃度において、溶解した合金成分が高度に水溶性であり、その程度まで反応部位から確実に除去されるようにする。場合によっては存在する界面活性剤のために、存在し得る有機コーティングが表面から除去され、アルミニウム帯板表面が脱脂される。この結果、洗浄作用が有機表面コーティングによって局所的に阻害されず、したがって極めて高い均一性で起こる。
【0036】
上記方法の更なる一展開によれば、洗浄溶液は更にHNO
3を含む。HFの有効性は、硝酸HNO
3及び別の鉱酸との組合せによって更に高めることができ、より少量のHFを使用してろう付け結果を改善することができる。HNO
3の濃度は、好ましくは0.1重量%から20重量%である。
【0037】
洗浄溶液中の帯状アルミニウム複合材料の滞留時間は、1から20秒、好ましくは2から8秒であり、例えばアルミニウム帯板全体を表面処理することができる、経済的に実現可能な表面処理ステップを実施することができる。
【0038】
洗浄溶液の温度が40℃から85℃である場合、このようにして試薬の反応性が更に増加するので、処理時間を更に短縮することができる。温度が85℃を超えると、加工速度が大きく増加しない追加の対策が必要になる。したがって、好ましい温度範囲は50℃から60℃である。
【0039】
本発明の第3の教示によれば、上記目的は、アルミニウム複合材料の本発明による使用におけるアルミニウム合金の構造部品の熱接合法であって、アルミニウム複合材料が、少なくとも1種類のアルミニウムコア合金と、アルミニウムコア合金の片側又は両側に形成されたアルミニウムろう付け合金からなる少なくとも1個の外側ろう付け層とを含み、アルミニウムろう付け層が、本発明による方法によって洗浄された表面を有し、アルミニウム複合材料がフラックスフリー熱接合法で接合され、接合法が保護性ガスの存在下で行われる、方法によって達成される。保護性ガス、例えば窒素の使用のために、液体ろう付け材料表面の酸化膜の形成が防止される。酸化膜は、融点がかなり高く、その結果、ろう付けプロセスが妨げられる。表面が鉱酸と錯形成剤の混合物又は錯化鉱酸で洗浄された酸洗浄面を有するアルミニウム複合材料の本発明による使用における保護性ガスを用いた熱接合においては、フラックスを使用しなくても高品位のろう付け結果が得られることが見いだされた。これは、特に単層構造のアルミニウムろう付け層を用いては、これまで不可能であった。
【0040】
したがって、少なくとも第1及び第2の熱接合部品を含む、上記方法によって製造された熱接合構築物も特に有利であり、該部品の少なくとも1個は、アルミニウムろう付け層を有するアルミニウム複合材料を含み、アルミニウム複合材料の少なくとも1個のアルミニウムろう付け層は、本発明による方法によって洗浄された表面を有し、保護性ガスの存在下でフラックスなしで生成された熱接合域は、第1の部品と第2の部品の間にある。フラックスを用いない保護性ガス下の熱接合の特に有利な点は、ろう付け後にフラックス残渣が構造部品の表面に残らないことである。特に、使用フラックスの残渣の存在が問題になる用途では、フラックスを使用しないことが望ましい。さらに、従来のCABプロセスにおいては構造部品表面にフラックスを塗布する必要があり、フラックス塗布場所において全表面が確実にフラックスに接触可能であるように注意しなければならないので、構造部品の形状が制限される。これは、形状の複雑さを大きく制限する。これは、フラックスフリープロセスではもはや当てはまらない。さらに、フラックスのコスト及びフラックス塗布後の乾燥ステップの運転費を全般的に回避することができる。
【0041】
好ましくは、熱接合法の更なる一展開によれば、本発明によるアルミニウム複合材料の使用によって製造された少なくとも1個のシート又はチューブをフラックスフリーCABろう付け法で接合する。既に述べたように、CABろう付け法は、特に経済的な方法であり、ろう付け接合部位は、アルミニウムろう付け材料が溶融する前に保護性ガスで完全に覆われる。特に多数のろう付け部位を有する熱交換器又は他の構造部品のろう付けにおけるアルミニウム複合材料の使用においては特に利点があり、本発明に従って使用されるアルミニウム複合材料の濡れ性によって、ろう付けによる接合溶接部のフラックスフリー製造におけるプロセス信頼性がかなり向上することが有利である。
【0042】
本発明を図面と併せて例示的実施形態を用いて以下により詳細に記述する。