特許第6335333号(P6335333)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335333
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】溶液生成装置及び血液浄化システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20180521BHJP
   A61M 1/34 20060101ALI20180521BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61M1/16 163
   A61M1/34 143
   A61M1/36 100
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-566554(P2016-566554)
(86)(22)【出願日】2015年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2015086360
(87)【国際公開番号】WO2016104761
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-262916(P2014-262916)
(32)【優先日】2014年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515000797
【氏名又は名称】アサヒカセイメディカルヨーロッパゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真明
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−200559(JP,A)
【文献】 特許第4458346(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0084719(US,A1)
【文献】 米国特許第4814073(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0012619(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0084721(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0243094(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14 − 1/16
A61M 1/28
A61M 1/34
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化装置で使用される溶液を生成する溶液生成装置であって、
第1の液と第2の液を下から上に向けて流し、前記第1の液と前記第2の液を混合促進装置を用いて混合させる第1のラインと、
前記第1のラインの上端部に接続され、前記第1の液と前記第2の液との第1の混合液を上から下に向けて流す第2のラインと、
前記第1のラインと前記第2のラインとの接続部に設けられ、当該接続部に集まる気体を排出する気体排出部と、を有し、
前記第2のラインには、前記第1の混合液の濃度を測定するためのセンサが設けられている、溶液生成装置。
【請求項2】
前記気体排出部は、前記接続部の前記第2のライン側の上部に設けられている、請求項1に記載の溶液生成装置。
【請求項3】
前記第2のラインの下端部に接続され、前記第1の混合液と第3の液を下から上に向けて流し、前記第1の混合液と前記第3の液を混合促進装置を用いて混合させる第3のラインと、
前記第3のラインの上端部に接続され、前記第1の混合液と前記第3の液との第2の混合液を上から下に向けて流す第4のラインと、
前記第3のラインと前記第4のラインの接続部に設けられ、当該接続部に集まる気体を排出する気体排出部と、をさらに有する、請求項1又は2に記載の溶液生成装置。
【請求項4】
前記第4のラインには、前記第2の混合液の濃度を測定するためのセンサが設けられている、請求項3に記載の溶液生成装置。
【請求項5】
前記第4のラインの下端部に接続され、前記第2の混合液を下から上に向けて流す第5のラインをさらに有する、請求項3又は4に記載の溶液生成装置。
【請求項6】
前記第3のラインには、前記第3の液を供給する液体回路が接続されており、
前記液体回路の供給口は、前記第2のラインと前記第3のラインの接続部より下流側に設けられている、請求項3〜5のいずれかに記載の溶液生成装置。
【請求項7】
前記混合促進装置は、ラインに沿って配置された複数の邪魔板である、請求項1〜6のいずれかに記載の溶液生成装置。
【請求項8】
ラインの前記邪魔板により縮小される部分の管路内等価直径(回路断面積÷回路全周長)が、当該同じラインの前記邪魔板がない部分の管路内等価直径に比べて5%以上70%以下である、請求項7に記載の溶液生成装置。
【請求項9】
装置本体は、方形状の筺体を有し、
少なくとも前記第1のラインと前記第2のラインは、前記筺体内に水平方向に並べて配置されている、請求項1〜8のいずれかに記載の溶液生成装置。
【請求項10】
生成される混合液の生成速度が300mL/min以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の溶液生成装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の溶液生成装置と、
前記溶液生成装置と連通し、前記溶液生成装置で生成された溶液が貯留される溶液貯留部と、
前記溶液貯留部と連通し、前記溶液貯留部の溶液が供給される持続緩除式血液浄化装置と、を有する、血液浄化システム。
【請求項12】
前記溶液生成装置に液体を供給する液体供給装置を有する、請求項11に記載の血液浄化システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液生成装置及び血液浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば急性腎不全等の重篤患者に対する治療法の一つとして、体外循環により持続的に血液の浄化を行う持続緩除式血液濾過療法がある。持続緩除式血液濾過療法では、血液浄化装置において長時間連続して血液を浄化処理するため、この血液浄化処理に必要になる透析液や補液(以下、単に「溶液」ともいう。)を血液浄化装置に適宜補充できるとよい。この補充を行う方法として、例えば血液浄化装置に透析液作成装置を接続し、当該透析液作成装置で透析液を作成して血液浄化装置に供給することが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
例えば透析液は、2種類の原液と水から構成されており、上述の透析液作成装置では、回路内で、2種類の原液と水を混合して透析液を生成し、その生成された透析液を貯留容器に貯留し、当該貯留容器から血液浄化装置に供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4458346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、血液浄化処理で用いられる透析液や補液は、患者の体液量や体液成分に影響を与えるものであるため、正しい濃度に生成されている必要がある。
【0006】
生成溶液を正しい濃度に制御するには、例えば定量ピストンポンプを用いて2つの原液と水をそれぞれ一定量ずつ送り出し混合することが考えられる。しかしながら、定量ピストンポンプは高価であり、使い捨てにすることはできないため、血液浄化処理を行う度に回路やポンプを洗浄、滅菌する必要があり、医療従事者の負担となる。
【0007】
定量ピストンポンプを使用せずに通常のチューブポンプなどの比較的安価なポンプを用いて、生成溶液を正しい濃度に制御しようとする場合、回路においてセンサにより混合液の濃度を測定し、その測定濃度に基づいて、原液や水の各ポンプの流量を調整する必要がある。しかしながら、この場合、回路において原液や水を混合しながら、センサにより濃度を測定するので、仮に原液や水が十分に混合されていないと、濃度を正確に測定できない。また、流れる混合液中に気泡があると、センサにより濃度を正確に測定できない場合がある。この結果、生成溶液を正しい濃度に制御できない恐れがある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、使い捨て可能であり、混合液の濃度測定を正確に行うことができ、生成される溶液の濃度を正確に制御可能な溶液生成装置及び血液浄化システムを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため発明者らが鋭意研究した結果、液体を混合するラインに気体排出部を設けることにより、センサによる濃度測定を正確に行うことができ、それによってポンプの流量を正確に調整し生成溶液の濃度を厳格に制御できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の一例として下記(1)〜(12)を提供する。
(1)血液浄化装置で使用される溶液を生成する溶液生成装置であって、第1の液と第2の液を下から上に向けて流し、前記第1の液と前記第2の液を混合促進装置を用いて混合させる第1のラインと、前記第1のラインの上端部に接続され、前記第1の液と前記第2の液との第1の混合液を上から下に向けて流す第2のラインと、前記第1のラインと前記第2のラインとの接続部に設けられ、当該接続部に集まる気体を排出する気体排出部と、を有し、前記第2のラインには、前記第1の混合液の濃度を測定するためのセンサが設けられている、溶液生成装置。
(2)前記気体排出部は、前記接続部の前記第2のライン側の上部に設けられている、(1)に記載の溶液生成装置。
(3)前記第2のラインの下端部に接続され、前記第1の混合液と第3の液を下から上に向けて流し、前記第1の混合液と前記第3の液を混合促進装置を用いて混合させる第3のラインと、前記第3のラインの上端部に接続され、前記第1の混合液と前記第3の液との第2の混合液を上から下に向けて流す第4のラインと、前記第3のラインと前記第4のラインの接続部に設けられ、当該接続部に集まる気体を排出する気体排出部と、をさらに有する、(1)又は(2)に記載の溶液生成装置。
(4)前記第4のラインには、前記第2の混合液の濃度を測定するためのセンサが設けられている、(3)に記載の溶液生成装置。
(5)前記第4のラインの下端部に接続され、前記第2の混合液を下から上に向けて流す第5のラインをさらに有する、(3)又は(4)に記載の溶液生成装置。
(6)前記第3のラインには、前記第3の液を供給する液体回路が接続されており、前記液体回路の供給口は、前記第3のラインと前記第2のラインとの接続部より下流側に設けられている、(3)〜(5)のいずれかに記載の溶液生成装置。
(7)前記混合促進装置は、ラインに沿って配置された複数の邪魔板である、(1)〜(6)のいずれかに記載の溶液生成装置。
(8)ラインの前記邪魔板により縮小される部分の管路内等価直径(回路断面積÷回路全周長)が、当該同じラインの前記邪魔板がない部分の管路内等価直径に比べて5%以上70%以下である、(7)に記載の溶液生成装置。
(9)装置本体は、方形状の筺体を有し、少なくとも前記第1のラインと前記第2のラインは、前記筺体内に水平方向に並べて配置されている、(1)〜(8)のいずれかに記載の溶液生成装置。
(10)生成される混合液の生成速度が300mL/min以下である、(1)〜(9)のいずれかに記載の溶液生成装置。
(11)(1)〜(10)のいずれかに記載の溶液生成装置と、前記溶液生成装置と連通し、前記溶液生成装置で生成された溶液が貯留される溶液貯留部と、前記溶液貯留部と連通し、前記溶液貯留部の溶液が供給される持続緩除式血液浄化装置と、を有する、血液浄化システム。
(12)前記溶液生成装置に液体を供給する液体供給装置を有する、(11)に記載の血液浄化システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、混合液の濃度測定を正確に行うことができ、生成される溶液の濃度を厳格に制御できるので、血液浄化装置に正しい濃度の溶液を供給できる。また、定量ピストンポンプを用いる必要がないので、使い捨て可能であり、血液浄化処理後の洗浄や滅菌が不要となり、医療従事者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】血液浄化システムの構成の概略を示す説明図である。
図2】溶液生成装置の正面図である。
図3】溶液生成装置の側面図である。
図4】他の溶液生成装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る溶液生成装置60を備えた血液浄化システム1の構成の概略を示す説明図である。血液浄化システム1は、例えば持続緩除式の血液浄化処理を行うためのものであり、患者に対して血液浄化処理を行う血液浄化装置10と、血液浄化装置10に透析液や補液の溶液を供給し補充する溶液供給装置11を備えている。
【0014】
血液浄化装置10は、例えば血液浄化器20と、患者の血液を血液浄化器20に供給するための血液供給回路21と、血液浄化器20から患者に血液を戻すための血液返還回路22と、血液返還回路22への補液の供給、又は血液浄化器20への透析液の供給の少なくともいずれかを行う溶液供給回路23と、血液浄化器20で生成される排液を排出するための排液回路24を有している。
【0015】
血液浄化器20は、例えば中空糸膜を内蔵した中空糸モジュールであり、中空糸膜の一次側20aに供給された血液の中の老廃物等を、中空糸膜の二次側20bに通過させて、血液を濾過し浄化することができる。
【0016】
血液供給回路21は、例えば患者に穿刺される針部(図示せず)から血液浄化器20の一次側20aの入口に接続されている。血液供給回路21には、ポンプ30が設けられ、患者の血液を所定の流量で血液浄化器20に供給できる。ポンプ30には、例えば回路を構成するチューブを扱いてチューブ内の液体を送るいわゆるチューブポンプが用いられている。
【0017】
血液返還回路22は、血液浄化器20の一次側20aの出口から針部(図示せず)に接続されている。
【0018】
溶液供給回路23は、溶液貯留容器40から少なくとも血液供給回路21又は血液返還回路22又は血液浄化器20の二次側20bに接続されている。溶液供給回路23は、血液浄化処理の種類、例えば持続緩除式血液濾過(CHF:Continuous HemoFiltractrion)、持続緩除式血液透析(CHD:Continuous HemoDiaFiltration)、持続緩除式血液濾過透析(CHDF:continuous HemoDiaFiltration)に応じて血液供給回路21に接続するか血液返還回路22に接続するか、血液浄化器20に接続するか或いはその複数に接続するかを選択できる。溶液供給回路23には、チューブポンプ41が設けられ、溶液貯留容器40の透析液や補液の溶液を所定の流量で供給できる。複数に接続する場合、例えば溶液供給回路を分岐させ(図示せず)、分岐回路上に追加でチューブポンプを配置してもよい。
【0019】
排液回路24は、血液浄化器20の二次側20bから排液貯留容器50に接続されている。排液回路24には、チューブポンプ51が設けられ、血液浄化器20の排液を所定の流量で排液貯留容器50に排出できる。
【0020】
溶液供給装置11は、例えば溶液生成装置60と、溶液生成装置60に第1の液としての水を供給するための第1の回路61と、溶液生成装置60に第2の液としてのA原液を供給するための第2の回路62と、溶液生成装置60に第3の液としてのB原液を供給するための第3の回路63と、溶液生成装置60内の気体を排出するための第1の気体排出回路64及び第2の気体排出回路65と、溶液生成装置60で生成された溶液を貯留する溶液貯留容器66と、溶液生成装置60で生成された溶液を溶液貯留容器66に供給するための溶液供給回路67と、溶液貯留容器66の溶液を血液浄化装置10に補充するための溶液補充回路68と、濃度計69と、制御装置70を備えている。
【0021】
第1の回路61は、水供給源80から溶液生成装置60に接続されている。第1の回路61には、例えばチューブポンプ81が設けられ、水供給源80の水を所定の流量で溶液生成装置60に供給できる。水供給源80から供給される水としては、例えば逆浸透濾過水、限外濾過水等が用いられる。なお、水供給源80には、水を浄化する濾過膜などが設けられていてもよい。
【0022】
第2の回路62は、A原液貯留容器90から溶液生成装置60に接続されている。第2の回路62には、チューブポンプ91が設けられ、A原液貯留容器90のA原液を所定の流量で溶液生成装置60に供給できる。例えば第1の回路61と第2の回路62は、溶液生成装置60の前で合流し、一本の流路で溶液生成装置60に接続されていてもよい。A原液は、例えば重炭酸ナトリウムを含まない溶液原液である。
【0023】
第3の回路63は、B原液貯留容器100から溶液生成装置60に接続されている。第3の回路63には、チューブポンプ101が設けられ、B原液貯留容器90のB原液を所定の流量で溶液生成装置60に供給できる。B原液は、例えば重炭酸ナトリウムを含む溶液原液である。なお、A原液とB原液は、混合により互いに反応して気体が発生するもの、例えばA原液が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、ブドウ糖など、B原液が炭酸水素ナトリウムであってもよい。なお、本実施の形態では、第1〜第3の回路61〜63、ポンプ81、91、101、水供給源80、及び貯留容器90、100により液体供給装置を構成している。ここでA原液貯留容器90とB原液貯留容器は逆に配置されていても問題はなく、その配置を限定するものではない。
【0024】
第1の気体排出回路64は、溶液生成装置60から例えば溶液供給装置11の外部に連通している。第1の気体排出回路64には、チューブポンプ110が設けられている。
【0025】
第2の気体排出回路65は、溶液生成装置60から例えば溶液供給装置11の外部に連通している。第2の気体排出回路65には、チューブポンプ111が設けられている。
【0026】
溶液供給回路67は、溶液生成装置60から溶液貯留容器66に接続されている。溶液補充回路68は、溶液貯留容器66から血液浄化装置10の溶液供給回路23に接続されている。溶液補充回路68には、チューブポンプ120が設けられ、溶液貯留容器66の溶液を所定の流量で血液浄化装置10に供給できる。
【0027】
濃度計69は、例えば電導度計であり、溶液生成装置60において混合されるA原液、B原液及び水の混合液の濃度を測定できる。
【0028】
制御装置70は、溶液供給装置11全体の動作を制御するコンピュータであり、チューブポンプ81、91、101、110、111、120や開閉弁(図示せず)等の動作を制御して、溶液の生成や溶液の補充を制御できる。例えば制御装置70は、濃度計69の後述するセンサ142、152の検出結果に基づいてチューブポンプ81、91、101の流量を調整して、生成される溶液の濃度を制御できる。
【0029】
図2は、溶液生成装置60の正面図の一例を示し、図3は、溶液生成装置60の側面図の一例を示す。
【0030】
溶液生成装置60は、例えば方形の箱型形状の筺体を有し、その内部には、上下方向に向く複数本のライン(流路)が水平方向に並べて設けられている。溶液生成装置60は、複数本のラインが形成され当該ラインが露出するライン形成部60aと、ライン形成部60aの露出面を閉鎖する蓋板としての透明板60bとを有している。
【0031】
例えば溶液生成装置60は、水とA原液を下から上に向けて流し混合させる第1のライン130と、第1のライン130の上端部に接続され、水とA原液との混合液(以下、「第1の混合液」ともいう。)を上から下に向けて流す第2のライン131と、第2のライン131の下端部に接続され、第1の混合液とB原液を下から上に向けて流し混合させる第3のライン132と、第3のライン132の上端部に接続され、第1の混合液とB原液との混合液(以下、「第2の混合液」ともいう。)を上から下に向けて流す第4のライン133と、第4のライン133の下端部に接続され、第2の混合液を下から上に向けて流す第5のライン134を有している。
【0032】
ライン130〜134は、この順に左右方向の一方向に概平行に並べて設けられている。これらのライン130〜134は、隣のラインと上端部或いは下端部で接続されており、液体の流れが全体としてジグザグ状に流れるように構成されている。隣り合うライン同士(ライン130と131、ライン131と132、ライン132と133、ライン133と134)の接続は、例えば隣同士のラインの間の隔壁Rに連通口Pを設けることによって形成されている。
【0033】
第1のライン130の下端部(上流部)には、水とA原液を供給する第1の回路61(第2の回路62)が接続されている。第1のライン130は、水とA原液との混合を促進する混合促進装置として、ライン130に沿って配置された複数の邪魔板140を有している。邪魔板140は、例えば流路の右の壁から左の壁に向けて突出する邪魔板140aと、左の壁から右の壁に向けて突出する邪魔板140bを有し、それらが上流側から下流側に向けて交互に配置されている。各邪魔板140は、下流側に斜めに突出し、流路の左右方向の中央より先まで達している。
【0034】
第1のライン130は、例えば第1のライン130における邪魔板140により縮小される部分の管路内等価直径(回路断面積÷回路全周長)が、同じライン130の邪魔板140がない部分(邪魔板140がないと想定した部分も含む)の管路内等価直径に比べて5%以上70%以下になるように形成されている。
【0035】
第1のライン130と第2のライン131との上部の接続部には、その接続部に集まる気体を排出する気体排出部141が設けられている。気体排出部141には、第1の気体排出回路64が接続されている。気体排出部141は、第1のライン130と第2のライン131の接続部の第2のライン131側の上部に設けられている。
【0036】
第2のライン131には、第1の混合液の濃度を測定するためのセンサ142が設けられている。センサ142は、例えば第1の混合液の電導度を検出するセンサであり、検出した電導度は濃度計69に出力される。センサ142は、第2のライン131の上下方向の中央より下方に配置されている。
【0037】
第3のライン132の下端部(上流部)には、B原液を供給する第3の回路63が接続されている。第3の回路63の管路は、例えば第3のライン132内まで延びており、その供給口63aは、第3のライン132の途中であって第3のライン132と第2のライン131の連通口Pより上に設けられている。
【0038】
第3のライン132は、第1の混合液とB原液との混合を促進する混合促進装置として、ライン132に沿って配置された複数の邪魔板150を有している。邪魔板150は、邪魔板140と同様の構成を有し、例えば流路の右の壁から左の壁に向けて突出する邪魔板150aと、左の壁から右の壁に向けて突出する邪魔板150bを有し、それらが上流側から下流側に向けて交互に配置されている。各邪魔板150は、下流側に斜めに突出し、流路の左右方向の中央より先まで達している。
【0039】
第3のライン132は、例えば第3のライン132における邪魔板150により縮小される部分の管路内等価直径が、同じライン132の邪魔板150がない部分の管路内等価直径に比べて5%以上70%以下になるように形成されている。
【0040】
第3のライン132と第4のライン133との上部の接続部には、その接続部に集まる気体を排出する気体排出部151が設けられている。気体排出部151には、第2の気体排出回路65が接続されている。
【0041】
第4のライン133には、第2の混合液の濃度を測定するためのセンサ152が設けられている。センサ152は、例えば電導度を検出するセンサであり、検出した電導度は濃度計69に出力される。センサ152は、第4のライン133の上下方向の中央より下方に配置されている。
【0042】
第5のライン134の上端部には、第2の混合液を生成溶液として溶液貯留容器66に供給する溶液供給回路67が接続されている。
【0043】
なお、例えば溶液生成装置60、回路61〜65、67、68、容器66、90、100及びチューブポンプ81、91、101、110、111、120を含む部分は、溶液供給装置11の本体から取り外し可能であり、血液浄化処理毎に交換可能になっている。
【0044】
次に、以上のように構成された溶液生成装置60の動作を、血液浄化システム1全体の動作と共に説明する。
【0045】
図1に示す血液浄化装置10では、患者に対する持続緩除式の血液浄化処理が行われる。例えば持続緩除式血液濾過(CHF)治療が行われる場合、患者の血液がチューブポンプ30により血液供給回路21を通じて血液浄化器20に供給される。血液浄化器20において血液から膜を通じて除去された老廃物等は、チューブポンプ51により排液回路24を通じて排液貯留容器50に排出される。また、チューブポンプ41により溶液貯留容器40の補液が溶液供給回路23を通じて血液供給回路21および/または血液返還回路22に供給される。血液浄化器20で浄化された血液は、血液返還回路22を通じて患者に戻される。また、持続緩除式血液透析(CHD)治療が行われる場合には、チューブポンプ41により溶液貯留容器40の透析液が血液浄化器20の膜の二次側20bに供給される。持続緩除式血液濾過透析(CHDF)治療が行われる場合には、チューブポンプ41により補液が血液供給回路21および/または血液返還回路22に供給され、透析液が血液浄化器20に供給される。
【0046】
血液浄化装置10で血液浄化処理が行われている間、溶液供給装置11は、血液浄化装置10で必要な所定濃度の補液や透析液の溶液を生成し、血液浄化装置10に供給する。このとき、チューブポンプ81、91、101が作動し、所定流量の水が水供給源80から溶液生成装置60に第1の回路61を通じて供給され、所定流量のA原液がA原液貯留容器90から溶液生成装置60に第2の回路62を通じて供給され、所定流量のB原液がB原液貯留容器100から溶液生成装置60に第3の回路63を通じて供給される。
【0047】
図2に示す溶液生成装置60では、第1の回路61(第2の回路62)から水とA原液が第1のライン130に供給され、第1のライン130を通過しながら邪魔板140によって混合が促進される。第1のライン130を下から上に通過して混合された水とA原液との第1の混合液は、最上部で折り返し、第2のライン131を上から下に流れる。第2のライン131を通過した第1の混合液は、最下部で折り返し、第3のライン132に流入する。第3のライン132には、第3の回路63からB原液が供給され、第3のライン132を通過しながら、邪魔板150によって、第1の混合液とB原液の混合が促進される。第3のライン132を通過して混合された第1の混合液とB原液との第2の混合液は、最上部で折り返し、第4のライン133を上から下に流れる。その後、第2の混合液は、第4のライン133の最下部で折り返し、第5のライン134を下から上に流れて、溶液供給回路67に排出される。この溶液生成装置60で生成される第1及び第2の混合液の生成速度は、低速度の例えば300mL/min以下に設定されている。
【0048】
溶液生成装置60において、第1のライン130及び第2のライン131に混入した気体或いはそこで生成された気体は、第1のライン130と第2のライン131の最上部の気体排出部141に集められる。気体排出部141の気体は、チューブポンプ110により第1の気体排出回路64を通じて外部に排出される。
【0049】
また、第3のライン132及び第4のライン133に混入した気体或いはそこで生成された気体は、第3のライン132及び第4のライン133の最上部の気体排出部151に集められる。気体排出部151の気体は、チューブポンプ111により第2の気体排出回路65を通じて外部に排出される。
【0050】
第2のライン131では、センサ142により、第1の混合液の電導度が検出される。また、第4のライン133では、センサ152により、第2の混合液の電導度が検出される。
【0051】
センサ142、152により検出された電導度は、濃度計69に出力され、濃度計69で濃度が測定され、その濃度データが制御装置70に出力される。制御装置70は、濃度データに基づいて、水、A原液及びB原液が所定の割合で混合されるように各ポンプ81、91、101の流量を調整し、生成される溶液の濃度を制御する。
【0052】
溶液生成装置60で生成された溶液は、溶液供給回路67を通じて溶液貯留容器66に供給され貯留される。溶液貯留容器66の溶液は、チューブポンプ120により所定のタイミングで溶液補充回路68を通じて血液浄化装置10の溶液供給回路23に供給される。溶液供給回路23に供給された溶液は、溶液貯留容器40、血液返還回路22又は血液浄化器20に供給される。
【0053】
本実施の形態によれば、溶液生成装置60の第1のライン130に邪魔板140を設けているので、第1のライン130において水とA原液の混合を十分に行うことができる。また、第1のライン130において第1の混合液を下から上に流すことで、第1の混合液中に内在している気体が第1のライン130と第2のライン131の上部の接続部に集約され、その接続部に配置された気体排出部141により効果的に第1の混合液から気体を除去できる。加えて第2のライン131において第1の混合液を上から下に流すことで、第1の混合液に内在する気体を下流側に通過することを抑制する。これによって、第2のライン131において第1の混合液の濃度をセンサ142により正確に測定することができ、その測定結果に基づいてチューブポンプ81、91の流量を調整して第1の混合液の濃度を厳格に制御できる。よって、溶液の濃度を厳格に制御でき、血液浄化装置10に正しい濃度の溶液を供給できる。また、定量ピストンポンプを用いずに比較的安価なチューブポンプ81、91を用いることができるので、溶液生成装置60が使い捨て可能になる。よって、血液浄化処理後に回路を洗浄、滅菌する必要がなく、医療従事者の負担を軽減できる。さらに、気体排出部141は、第1のライン130と第2のライン131の接続部の第2のライン131側の上部に設けられているので、センサ142のある第2のライン131の気体を効果的に排出でき、これによって、センサ142により第1の混合液の濃度をより正確に測定できる。
【0054】
センサ142が第2のライン131に設けられているので、気体を除去した後の第1の混合液の濃度を正確に測定できる。これによって、溶液の濃度をさらに厳格に制御できる。
【0055】
また、第3のライン132と第4のライン133の上部の接続部にも気体排出部151を設けているので、第2の混合液から気体を除去できる。よって、第2の混合液の濃度をセンサ152により正確に測定でき、それによってポンプ101の流量を調整して第2の混合液の濃度を厳格に制御できる。よって、最終的に生成される溶液の濃度を厳格に制御できる。
【0056】
センサ152が第4のライン133に設けられているので、気体を除去した後の第2の混合液の濃度を正確に測定できる。これによって、溶液の濃度をさらに厳格に制御できる。
【0057】
第4のライン133には、第2の混合液を下から上に向けて流す第5のライン134が接続されているので、貯留容器66が溶液生成装置60より上方に配置されている場合、配管を簡素化できる。なお、貯留容器66は、第4のライン133の下部から回路を用いて接続されてもよい。
【0058】
第3の回路63の管路の供給口63aは、第3のライン132と第2のライン131の連通部より下流側に設けられているので、B原液に混入された気体や、第1の混合液とB原液とが化学的に反応して生成される気体が、第2のライン131側に入り込むことが防止される。この結果、気体が第2のライン131のセンサ142に影響を与えることがなく、センサ142による濃度の測定を正確に行うことができる。
【0059】
第1のライン130と第3のライン132における混合促進装置に、ラインに沿って配置された複数の邪魔板140、150を用いているので、それぞれの混合を十分かつ適切に行うことができる。
【0060】
また、邪魔板140、150により縮小される部分の管路内等価直径が、当該同じラインの邪魔板がない部分の管路内等価直径に比べて5%以上70%以下であるので、適度に乱流を形成し、混合を効果的に行うことができる。
【0061】
溶液生成装置60の本体は、方形状の筺体を有し、ライン130〜134は、筺体内に、水平方向に並べて配置されているので、装置をコンパクトで安価なものにすることができる。よって、例えば溶液生成装置60を使い捨てにしやすくなる。
【0062】
本実施の形態によれば、生成される混合液の生成速度が低速度の300mL/min以下であっても、溶液生成装置60内で十分に混合することができるので、センサ142、152による濃度測定を正確に行い、これによって溶液の濃度を厳格に制御できる。
【0063】
本実施の形態によれば、血液浄化システム1の持続緩除式の血液浄化装置10に、溶液生成装置60で生成された溶液をインラインで供給するので、長時間の連続的な血液浄化処理に正しい濃度の溶液を供給し続けることができる。この場合、低流量で溶液を生成する必要があるが、混合促進装置を有する溶液生成装置60を用いて溶液の混合を十分かつ適正に行うことができる。また、混合を十分に行うことができるので、混合液の濃度をセンサで正確に測定でき、この結果ポンプの流量調整を正確に行い、溶液の濃度の制御を厳格に行うことができる。また、定量ピストンポンプを用いずに安価な装置で実現可能であるので、使い捨てとすることができ、血液浄化処理後の洗浄、滅菌作業を行う必要がなく、医療従事者の負担を軽減できる。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
例えば以上の実施の形態では、溶液生成装置60にライン130〜134を形成し、水とA原液との混合と、その第1の混合液とB原液との混合の両方を連続的に行っていたが、それらの混合を別々に行ってもよい。かかる場合、例えば図4に示すように溶液生成装置200は、水とA原液の混合を行う第1の溶液生成部210と、第1の混合液とB原液の混合を行う第2の溶液生成部211に分けられていてもよい。第1の溶液生成部210は、第1のライン130と第2のライン131を有している。第2の溶液生成部211は、第3のライン132、第4のライン133及び第5のライン134を有している。第2のライン131の下端部には、第3のライン132の下端部或いは第3の回路63に通じる連結回路220が接続されている。かかる場合も、第1の混合液と第2の混合液の濃度を正確に測定でき、チューブポンプ81、91、101の流量を調整して、生成される溶液の濃度を厳格に制御できる。
【0066】
以上の実施の形態では第2のライン131にセンサ142を設けていたが、これに限られず、第2のライン131より下流で第3のライン132より上流であれば別の場所であってもよい。例えば図4に示したように2つの溶液生成部210、211に分かれている場合には、センサ142を連結回路220に設けてもよい。また、センサ152も第4のライン133に限られず、第3のライン132の下流であれば別の場所であってもよい。例えば第5のライン134や溶液供給回路67に設けてもよい。
【0067】
以上の実施の形態では、第4のライン133の下流側に第5のライン134が設けられていたが、第5のライン134はなくてもよい。かかる場合、溶液供給回路67が第4のライン133の下端部に直接接続されてもよい。
【0068】
第3の回路63の管路の供給口63aは、第3のライン132の途中に形成されていたが、第3のライン132の下端部に接続されていてもよい。また、第1のライン130と第3のライン132の混合促進装置は、ラインに沿って配置された複数の邪魔板140、150であったが、これに限られず、流路に壁を設け、そこに連通する穴を配置することで乱流を発生させる形状等であってもよい。
【0069】
また、溶液生成装置60内のライン130〜134は、水平方向に並べて配置されていたが、他の配置であってもよい。また、本実施の形態では、ラインの数が5本であったが、他の数であっても本発明は適用できる。また、溶液を生成するために混合する液体の種類も3つに限られず、2種類以上の他の数の場合にも本発明は適用できる。さらに本発明の溶液生成装置60は、第1の液体(水)と第2の液体(A原液)の混合にのみ用いてもよいし、第1の混合液と第3の液体(B原液)の混合にのみ用いてもよい。また溶液生成装置60の形状も他の形状を有していてもよい。
【0070】
本発明の溶液生成装置は、持続緩除式以外の血液浄化装置に溶液を供給する場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、使い捨て可能であり、混合液の濃度測定を正確に行うことができ、生成される溶液の濃度を厳格に制御可能な溶液生成装置及び血液浄化システムを提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 血液浄化システム
10 血液浄化装置
11 溶液供給装置
60 溶液生成装置
130 第1のライン
131 第2のライン
132 第3のライン
133 第4のライン
134 第5のライン
140 邪魔板
141 第1の気体排出部
142 センサ
150 邪魔板
151 第2の気体排出部
152 センサ

図1
図2
図3
図4