(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
尿道カテーテルは、集中治療室から産科まで病院の多様な領域において頻繁に使用されている。病院は、患者が院内感染によるカテーテル関連尿路感染症を発症する危険を低減するために、尿道カテーテルに特異的な滅菌プロトコールを実施している。しかしながら、CAUTIは、未だ重大で損害の大きい類の院内感染症(「HAI」)であり続けており、CAUTIの原因は、患者側の危険因子、看護行動、データ分析、日常的なサーベイランス、カテーテル材料および洗浄製品を含む多因子性のものであると考えられている。
【0004】
The University of Chicago Pressによる雑誌「Infection Control and Hospital Epidemiology」2008年10月号S41頁に発表のDr.Evelyn Lo,M.D.他によって書かれた論文「Strategies to Prevent Catheter−Associated Urinary Tract Infections in Acute Care Hospitals」によれば、尿路感染症は、全ての院内感染症のうちで最も一般的なものであり、尿路感染症の80%は、尿道留置カテーテルに起因するものである。同誌2002年1月号のPaul A.Tambyah,MBBS他による論文「The Direct Costs of Nosocomial Catheter−Associated Urinary Tract Infection in the Era of Managed Care」は、27頁にて、カテーテル使用のために作成された滅菌プロトコールにもかかわらず、CAUTIは依然として米国の病院における年間100万件を超える感染の原因となっていることが報告されている。また、Centers for Disease Controlによれば、2014年1月に発表の「Device−associated Module CAUTI」にて報告されている通り、それらの100万件の感染は、年間約13,000件の尿路感染症による死亡をもたらしている。尿道カテーテルは、CAUTIによる死亡率に関係しているだけでなく、非細菌性の尿道炎、尿道狭窄、医療的な外傷(medical trauma)、病的状態、長期入院、および抗生物質の使用量増大を含む、その他の負のアウトカムにも関係している。
【0005】
The University of Chicago Pressにより2002年1月号の「Infection Control and Hospital Epidemiology」において発表された「The Direct Costs of Nosocomial Catheter−Associated Urinary Tract Infection in the Era of Managed Care」にて報告されているように、尿道留置カテーテルの使用を5日以上必要とする患者の最大半数が、細菌尿症またはカンジダ尿症を発症する。カンジダ尿症は一般に、酵母感染症と考えられている。細菌尿症は、尿サンプル収集に関係しない尿中に細菌が存在するものである。細菌尿は、酵母、メチシリン耐性のブドウ球菌(staphylococcus aureus)、バンコマイシン耐性の腸球菌(enterococci)、および多耐性基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ産生グラム陰性菌(multi-resistant, extended spectrum beta-lactamase-producing gram-negative bacteria)を含めて、抗生物質耐性菌(antibiotic-resistant organisms)を多く蓄積して含むことがあるため、病院は細菌尿の存在に起因するCAUTIにより重大な危険にさらされている。
【0006】
トップレベルドメイン名「.org」およびファイル拡張子SHTMLを有するサイト名「hospitalinfection」のファイル「objective」にてワールドワイドウェブから入手可能である2013年のウェブベース記事「What is RID?」において非営利組織Committee to Reduce Infection Deathsによれば、CAUTIは、患者にとって負の健康アウトカムを生じるだけでなく、年間300億ドル程度の巨額の財務コストをもたらしている。より多くの細菌およびその他の微生物が薬剤耐性になるにつれて、人的コストおよび財務コストは増大すると予想され得る。病院は、この費用を単独で負担するか、コスト転嫁またはその他の手段を用いてこのコストを無保険の追加コストとして患者に負担させることが予想され得る。2008年の時点で、Centers for Medicare and Medicaid Servicesは、ケアのコストを削減するための措置を取ることを促す目的もあって、入院中にCAUTIを発症する患者のためのケアの追加コストを病院に払い戻すことを止めた。
【0007】
人的および経済的損失の両観点からCAUTIの問題の重大性を考慮して、CAUTIを低減し根絶するための方法および器具が開発されてきた。当分野での実践は、1)消毒剤、典型的には、ポビドンヨード水溶液、通常は10%溶液、最も一般的にはBetadine(登録商標)ブランドの消毒溶液製剤による、典型的には挿入前における挿入領域の処置、2)抗菌材料からカテーテルを作製すること、または例えばBetadine(登録商標)を含むカテーテルの内面または外面に抗菌もしくは消毒物質を適用することを含む、カテーテル器具の処置、ならびに3)通常はタウロリジン(Tauroldine)を含む抗菌化合物により、CAUTIを予防または低減するための、膀胱および膀胱内容物の処置という3つの領域に焦点を当ててきた。
【0008】
尿道カテーテルの維持がもたらす固有の問題は、会陰、尿道口(meatus)、および周辺粘膜(contiguous mucosa)のより繊細な皮膚を含む周囲組織の性質に少なくとも部分的に起因している。通常、病院は、カテーテルを清拭すること、および尿道カテーテルが挿入される領域を、消毒化合物、通常はBetadine(登録商標)等のポビドンヨード溶液により前処置することを含む、カテーテル挿入のための滅菌手技を採用している。Centers for Disease Control(「CDC」)によって発表された2009 Guidelines for Prevention of Catheter−Associated Urinary Tract Infectionsは、滅菌水と比較して、CAUTI予防のためのカテーテル留置前後の消毒清浄化措置(antiseptic cleaning regimens)について文書で証明された有益性はないことを特に指摘している。米国の病院内で発生するCAUTI率の高さを考えると、消毒剤を使用する一般的な滅菌手技は、水と比較して、感染率を低減するのにほとんど役に立っていないように思える。
【0009】
部分的には、病院および救急外来の実践的な性質のために、問題が生じている。救急外来の手技は、理想的な条件下で行われることはほとんどないが、患者の入院中のずっと後になって、そのアウトカムに影響を及ぼす可能性がある。患者の当面の生命維持の必要に焦点を当て、長期的な結果に対する考慮が排除除外される場合がある。緊急外来ケアの迅速さのため、時間をかけて推奨プロトコールに完全に従うことなく、より緊急の事態に対処する場合がある。例えば、来院患者は来院時に既に尿路感染症(「UTI」)に罹患していることがあり、理想的な条件下では、既存UTIを確認するためのプロトコールが実施される。場合によって、このステップが省略される。Betadine(登録商標)溶液は3分間乾燥させるべきであるが、緊急の状況ではこの時間は長すぎるため、カテーテルを挿入するときの無菌操作が不十分になることがある。一部の患者は、少なくともすぐにはカテーテルを必要とさえせず、排尿のための他の選択肢を選択することもあり得る。救急外来患者にカテーテルを挿入する傾向は、不適切なサイズのカテーテルの使用、急いだ状態でのカテーテルの挿入、不十分なカテーテルの配置、およびその他の要因により、更に複雑になり得る。その結果、個々の集中治療室によってCAUTI率が大きく変化することがあり、CAUTI率は変動し得る。CAUTI率の上昇は集団ごとに生じる傾向がある。
【0010】
感染の機会を低減するための別の手法としては、カテーテル本体を抗菌材料から作製するか、例えば銀等の抗菌性物質でカテーテルを被覆することであった。前述のCDC Guidelinesに引用された研究の39頁によれば、銀合金被覆フォーリーカテーテルは、標準的ラテックスカテーテルと比較して、無症候性細菌尿の危険を低減した。1週間未満のカテーテル留置を必要とした患者内に銀被覆カテーテルが留置されているとき、結果はより顕著となった。しかし、このような短期間のカテーテル使用は、全ての患者にとって実行可能な選択肢ではない場合もある。2009 CDC Guidelinesは、抗菌剤または消毒剤含浸フォーリーカテーテルを使用する有益性を示唆する「低質または超低質のエビデンス」に言及し、更なる研究を勧告している。
【0011】
別の処置方法として、カテーテル挿入後、抗菌化合物でカテーテルを洗浄するか、カテーテルを介して抗菌化合物を膀胱に滴下させることにより、感染が処置され得ることが提案されている。提案された方法のいくつかでは、抗菌特性を有し感染率を低減させ得るタウロリジンを使用するが、タウロリジンは約10mg/mlほどの低濃度で殆どの組織において激痛を生じさせる。タウロリジンは、一般的に、処置中に意識のある患者にとって実行可能な選択肢であると考えられていない。
【0012】
Infectious Disease Society of Americaは、2009年3月に、カテーテル留置中の患者のCAUTIを抑制する目的での抗菌剤による定期的カテーテル洗浄が困難な成人における、カテーテル関連尿路感染の診断、予防、および処置に関するガイドラインを発表した。前記ガイドラインの628頁は、CAUTI低減のための膀胱洗浄を推奨するにはデータが不十分であることを指摘している。CDCは前述の2009 Guidelinesにおいて同様の推奨を行っている。
【0013】
洗浄化合物(cleansing compounds)は、CAUTI低減にとって問題となる。一般的に使用される多くの洗浄化合物は、繊細な会陰の皮膚、尿道口、挿入部位の周囲の粘膜にとって刺激が強すぎる。一般的に言って、特にポビドンヨード溶液、アルコール、およびクロルヘキシジンを含む消毒化合物、ならびに石鹸および水でさえ、やや刺激が強く、それらの使用は問題になり得る。アルコールおよびクロルヘキシジンは、繊細な粘膜または会陰への使用には推奨されていない。これらの化合物のほとんど全てにより潜在的な汚染物質を低減することができるが、実際には、これらの化合物は皮膚を乾燥させるか塩基性pHをもたらすことにより後の感染に寄与することがある。これに対して、正常な皮膚はやや酸性のpHを有し、微生物の増殖を制限することによりバリア機能を果たす湿分含量を有する。塩基性のpHは、特に時間経過に伴い抗菌性の成分の効果が低下している際に、微生物の増殖を促進すると考えられている。皮膚から天然由来の保護脂質を奪うことは、化学的な微細表皮の剥脱(micro-abrasion)を生じさせ、表皮を通じた水分喪失を引き起こし、皮膚を乾燥させると考えられている。汚染物質は、乾燥し裂傷を起こした皮膚により容易に入り込み、これらの条件下で感染を引き起こし得る。皮膚を回復させるために専用ローションを適用してもよいが、通常、専用ローションは健康な皮膚ほどには効果的なものではない。
【0014】
CAUTIを低減するための現在の方法および器具にもかかわらず、感染数および処置費用は依然として高いままであり、患者および病院にとって問題となっている。CAUTI問題の多因子性の性質は、その問題の解決を困難にしている。依然として、より管理しやすいレベルまでCAUTIを低減するために改良された方法を開発することが望ましい。改良された方法は、既存のプロトコールと比較して、病院職員が受容し実施するうえで、より問題が少なく、より効率的であり、患者によって、より容易に受け入れられるものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、上記図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。図中には本発明に係るいくつかの概念を示すが、それらが全てではない。実際、本発明は多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、本開示に示されている実施形態は、適用可能な法的要件を満たすことが意図されている。
【0027】
図1は、本発明の実践に際して使用される方法ステップを一般的に示している。第1のステップであるステップ番号10では、本発明に従い、皮膚洗浄溶液が、周辺粘膜を含む皮膚に適用され、任意選択的におよび好ましくはカテーテルに適用される。カテーテルは通常、滅菌されている。しかし、滅菌されていたカテーテルが挿入時に感染性の微生物を尿道および膀胱内に運ぶことがある。したがって消毒抗菌剤(antiseptic antimicrobial agent)でカテーテルを清拭することが好ましい。洗浄溶液は、皮膚の最外層のバリアおよび保湿特性を保持するように、両性イオン性で酸性pHの水溶液であることも好ましい。カテーテルは、皮膚洗浄溶液を十分にしみ込ませた柔らかいリントフリー布により清拭される。
【0028】
一般的に会陰と呼ばれ、尿道口および周辺粘膜を含む、挿入部位周囲の領域も、皮膚洗浄溶液を十分にしみ込ませた柔らかいリントフリー布で清拭される。尿道カテーテルに関して挿入部位周囲の領域を「皮膚」と呼ぶとき、周辺の露出粘膜(contiguous exposed mucosa)を包含することをも意味していると理解されるべきである。尿道の入口であり尿が身体から排出されるときに通る開口部である尿道口を清拭することに特に注意を払うことが有用である。通例、清拭は、女性の場合は前から後へ行い、男性の場合は陰茎亀頭周囲に同心円を描いて行う。溶液は通常、30秒間乾燥させるべきであり、その後は洗い流さない。
【0029】
従来技術の通常の滅菌挿入操作では、会陰は石鹸および水により洗浄され、次いで、10%ポビドンヨード溶液、多くの場合Betadine(登録商標)ブランドの溶液が、尿道口を含む会陰に適用されることが理解されるべきである。ポビドンヨード溶液は、3分間乾燥させることが望ましいが、実際には、特に救急外来の状況では、溶液は一般的には乾燥させることができない場合があると考えられる。カテーテルは通常、滅菌されているが、ポビドンヨード溶液で清拭されない場合がある。
【0030】
本発明は、通常、
図1に記載されたステップ10を行うこと、および次いでステップ10の前または後にポビドンヨード溶液を適用することにより、従来技術の手法と共に使用することができる。ただし、ステップ10で適用された皮膚洗浄溶液は、滅菌水またはその他の液で洗い流されるべきではない。
【0031】
ステップ10における皮膚洗浄溶液の適用後に、および任意選択的に滅菌プロトコールに使用される10%ポビドンヨード溶液またはその他の溶液(ただし、ステップ10の後には適用されない滅菌水を除く)の適用後に、カテーテルが尿道内に挿入される。当業者に周知である手袋等の着用を含む追加の滅菌操作が実践されるべきである。
【0032】
カテーテル挿入後、ステップ14に従い、本発明に従って使用される皮膚洗浄溶液を十分にしみ込ませた別の柔らかいリントフリー布で、皮膚および周辺の露出粘膜含む会陰周辺、ならびにカテーテルの露出部分を好ましくは下方向に清拭する。この場合も、挿入前のように、清拭は、女性の場合は前から後へ行い、男性の場合は陰茎亀頭周囲に同心円を描いて行う。
【0033】
挿入および挿入直後のカテーテルケアを行った後、ステップ16に記載されているように本発明に従い皮膚洗浄溶液を使用して、カテーテル維持手技を実施する。カテーテルは、挿入後少なくとも12時間ごとにまたはより頻繁に、留置期間全体にわたり、カテーテルの露出領域および周囲の皮膚に対する皮膚洗浄溶液の適用を継続的に繰り返すことにより、維持されるべきである。特定の状況またはおそらくCAUTIの原因不明の群にも応じて、維持ステップ間の上記時間間隔は、8、6、あるいは4時間に短縮され得る。
【0034】
カテーテルが挿入されている時間内に、腸失禁またはその他の特定の汚染による1つ以上の事象が発生した場合、全てステップ18に従い、皮膚洗浄溶液を使用し、通常の定期的な連続洗浄スケジュールを再開して、可能な限り早く、会陰およびカテーテルの露出部分を含めて患者を完全に洗浄するべきである。この時点で、維持ステップ間の時間間隔を短縮する医療判断を下すことができる。
【0035】
カテーテル留置はもはや必要でなく、カテーテルは抜去されるべき場合、任意選択的に、ステップ20に従って、以前行ったようにカテーテルの露出部分および会陰に対して抜き取り直前に、皮膚洗浄溶液を再度適用することが好ましい。任意選択的に、更にステップ20に従い、抜き取り直後に、尿道口、周辺の露出粘膜、および会陰周囲の皮膚を含む会陰部に対して、皮膚洗浄溶液を再度適用することが好ましい。その後、任意選択的に、カテーテルの存在による感染の危険が過ぎ去ったと考えられるまで、尿道口、周辺の露出粘膜、および会陰周囲の皮膚を含む会陰部に対する皮膚洗浄溶液の適用を継続することが好ましい。
【0036】
留置カテーテルの抜去は、潜在的感染部位となる尿道および尿道口の繊細な粘膜に、微細表皮の剥脱および小さな裂傷を残す可能性があることが理解されるべきである。したがって、カテーテルが厳密な意味で留置されなくなった後でも、CAUTIは発生すると考えられ、粘膜が治癒する見込みが出るまで、通常5〜7日は、処置における注意が必要であるが、所望の場合、本発明による方法ステップの実践における使用が好ましい低刺激の皮膚洗浄溶液による有害な副作用がない状態で、処置を1か月間継続することもできる。通常、抜き取り後の処置は、少なくとも最初のカテーテル抜き取りの後に、自宅環境でのセルフケアにおいて患者により行われる。
【0037】
続いて、皮膚のバリア機能について議論を移すと、
図2は一般に、21の分解斜視図において、表皮22である外層および下にある真皮24を含む高度に模式化した皮膚の切片を示している。
図2には、表皮を通過して真皮に至る種々の物質の流れを示している。26の矢印は、石鹸および水が表皮に侵入することもできないことを示している。30の矢印は、グルコン酸クロルヘキシジン(chlorohexadrine gluconate)が表皮に微細表皮の剥脱28を生じさせ、表皮に侵入し真皮に至ることができることを示している。表皮の剥脱は皮膚を損傷し、32の矢印により示される水分喪失と、34の矢印で示されるように感染体が表皮に侵入して真皮に入り込む潜在的経路の両方を可能にする。
【0038】
クロルヘキシジンは、露出粘膜への使用が承認されるとは考えられていない。その他の承認済み消毒剤、抗菌剤、または抗菌化合物は、微細表皮の剥脱の形成において同様の影響を及ぼし得る。これらの溶液は粘膜への使用が潜在的に承認され得、したがって本発明による方法の実践に使用され得るが、これらの結果は必ず同等であって最終的に感染が起きやすい環境を生じさせ得るとは考えられていない。下記で詳述するより低刺激の溶液が好ましく、特に皮膚のpHおよびそのバリアならびに保湿特性を、長期間、少なくとも3〜12時間保持できる溶液が好ましいことは強調されるべきである。
【0039】
本発明の実践およびカテーテル維持プロトコールの遵守は、尿道カテーテルの滅菌挿入用キットにおいて、使用指示書と共に、好ましいスキンケア洗浄溶液を供給することにより促進され、使用指示書は、挿入前プロトコール、カテーテルが挿入された状態での2〜6回の日常的な維持プロトコール、失禁プロトコール、抜き取りプロトコール、および必要に応じて2〜6回の毎日の抜き取り後プロトコールを含む。通常、洗剤を投与するには布が好ましく、本発明による方法の試行では布2枚のパックが有用であることが判明しているが、スプレー剤および発泡体を使用してもよい。布から洗剤を適用する場合、清拭のたびに清潔な新しい布表面を使用できるように布を折りたたむことが有用である。
【0040】
本方法のステップは、感染体の一次および二次除菌(decolonization)の両方を含んでいると記述され得る。除菌により説明される内容は、一次的には、皮膚の天然バリア特性を維持しながら皮膚上の感染性の微生物の量および種類を低減することであり、二次的には、皮膚の酸性pHを含む皮膚の天然バリア特性を長期間維持または支持し続けることであると理解されるべきである。本明細書で直接解決される問題は特にCAUTI率に関するものであるが、これらに限定されず、座瘡、創傷、およびその他の身体上の感染領域の処置等を含む活動性感染が発生する多くの異なる領域、ならびに他の種類のカテーテル、例えば静脈内カテーテル、獣医学において使用されるカテーテル、入浴による患者の汚染除去、更には環境表面の汚染除去に対して、必ずしも同等の結果が得られるわけでもないが、同様の概念を適用することもできると理解されるべきである。患者が新しい環境または部屋に移動し新規患者がその部屋に収容される前に患者を除菌するために、改変された方法が適用されてもよく、その方法は、感染が除去されない場合に感染の機会が低減されることを確実にするため、必要に応じて追加的処置を含む。このような実践は、CRE、MRSA、およびVREの拡散を防止するため、患者を病院からリハビリテーションセンターに移すときに、またはナーシングホームから病院に移すときに、特に有用である。CRE、MRSA、およびVREは、汚染された患者によって拡散されることが知られており、病院または高度な看護施設全体に感染を拡散し、解決困難な問題となる虞がある。
【0041】
したがって、本発明による方法のステップの背景にある基本的な概念は、他の種類の留置カテーテル、実際には小さな創傷であり細菌感染部位である、座瘡の処置、およびその他の創傷を含む他の適用、または身体もしくは環境全体からの細菌の除菌にも適しており、それによって細菌感染を防止または除去することができる。これらの概念は、感染または感染の危険がなくなるまでの十分な期間にわたり、溶液の継続的で規則的な適用の必要に応じて、本明細書に記載の溶液を使用する洗浄プロトコールおよび改変プロトコールに組み込むことができる。当然ながら、カテーテルが使用されない場合、カテーテル洗浄、カテーテル挿入、およびカテーテル維持のステップは実施されないことが理解されるべきである。特定の実施形態において、皮膚またはその他の表面は、スキンケア洗浄剤で予め湿らせた布で清拭される。通常、布は予め湿らせ、予め包装された不織布ワイプとなる。発泡洗剤も有用であり、より経済的であり得る。
【0042】
続いて皮膚の酸外套について議論を移すと、酸外套の効果の維持は、良好な皮膚の健康状態を促進する。損傷した酸外套は、乾燥肌、粉吹き肌(flaky skin)、皮脂の過剰産生(oil overproduction)、過敏性、および座瘡などの、皮膚に関する多くの問題につながり得る。皮膚の自然なpHを促進しない製品は、酸外套の分解に寄与し、それにより感染が拡大する可能性を高め得る。酸外套が損傷すると、その修復に最大14〜17時間かかることがあり、この期間中に細菌がより効果的に繁殖することが予想され得る。したがって、皮膚pHは、CAUTIを効果的に処置する重要な要素である。CAUTIのインシデントの発生および重篤度を低減および防止するために、本発明の実践および皮膚pHを維持する本発明による方法の継続的遵守が推奨される。
【0043】
皮膚は、最外層である表皮;毛包、毛穴、皮脂腺、汗腺および結合組織を含む中間層である真皮;ならびに隔離された脂肪層を含む皮下組織という、3つの主要な層からなる。最外層である角質層(SC)は、温度および湿度、ならびにこの層に損傷を与え得る種々の衛生ケア製品を含む条件にさらされる。その結果生じた損傷は、SCの乾燥を引き起こすことが多く、更にSCのひび割れを引き起こし、皮膚細胞の正常な脱落に干渉し、損傷細胞の自然治癒を妨げる場合がある。SCは、死んだ皮膚細胞を含み、感染、脱水、化学物質、および表皮の剥脱から下層組織を保護する重要なバリア層を形成する。角質層の破壊は、留置カテーテル使用のためのプロトコールにおいて回避されるべきである。
【0044】
本発明のプロトコールに関連して使用される溶液は、通常、皮膚のバリア機能を保持するものでなければならず、前記溶液は、任意選択的に、CAUTIを引き起こし得る多くの種類の細菌に対処する抗菌および消毒特性を有することに加えて、酸性pH外套膜および一定の湿分含量を構成要素として有している。本発明による方法の実践において使用されるスキンケア溶液の酸性pHは、4.0という低い値から6.5という高い値まで変化し得るが、これは感染していない自然の皮膚の範囲である。前記溶液は、皮膚から天然由来の保護脂質を奪わず、したがって皮膚が水和した状態にとどまることができるように、両性イオン性であることが好ましい。前記溶液はまた、抗菌性および消毒性であり、一般に非抗生物質性であり、菌株の耐性に寄与する抗生物質使用は不要となる。前記溶液は、正常な皮膚に関連する菌叢の量がある程度減少しても菌叢のバランスを維持できる場合、特に有用である。前記溶液は、感染体の侵入口となり得る微細表皮の剥脱を生じさせることがない状態で、表皮を通じて、少なくとも真皮の深い層にまで、容易に吸収されることも望ましい。
【0045】
洗浄は、種々のスキンケア溶液を使用して本発明による方法ステップに従って行うことができる。本発明の実践において効果的な水性スキンケア溶液の1つは、Avadim Technologies,Inc.、Asheville、North Carolinaから入手可能なTHERAWORX(登録商標)ブランドの皮膚洗浄剤である。THERAWORX(登録商標)および類似の皮膚洗浄剤は、米国特許第6,358,516号明細書に記載されており、その全ての内容は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0046】
本発明に使用する溶液は、皮膚から脂質を奪わない両性イオン性界面活性剤特性を促進するための成分、抗菌特性または少なくとも消毒特性、皮膚浸透特性、ならびに皮膚の自然状態のpHに近く定期的適用により正常な皮膚のpHを3〜12時間および限定のない長期間わたり維持できる弱酸性のpHを有することが望ましい。通常、抗生物質を組み込む必要はない。米国特許第6,358,516号明細書に記載の湿潤剤および軟化剤ならびに治癒を促進する薬剤が望ましい。
【0047】
本発明に有用であるスキンケア洗浄剤は、米国特許第6,358,516号明細書に記載されるような洗浄剤であって、その他の成分のうち特に、
(a)少なくとも1種の界面活性剤(surfactant)と、
(b)少なくとも1種の抗炎症剤(anti-inflammatory)と、
(c)少なくとも1種の消泡剤(anti-foaming agent)と、
(d)少なくとも1種の細胞増殖促進剤(cell growth-promoting agent)と、
(e)少なくとも1種の速効性の抗菌剤(fast-acting antimicrobial agent)であって、前記成分のそれぞれが皮膚適合性であり前記組成物の他の成分とは異なる抗菌剤を含み、
(f)少なくとも1種の免疫系強化剤(immune system-enhancing agent)がアロエベラ、βグルカン、コロイド銀、またはアラントインである、複数の免疫系強化剤(immune system-enhancing agents);
(g)少なくとも1種の吸収促進剤(absorption facilitation agents)がβグルカン、アロエベラ、またはコロイド銀である、複数の吸収促進剤;
(h)少なくとも1種の湿潤剤(humectants)または軟化剤(emollients)が、アロエベラ、ビタミンE、またはコカミドプロピルである、複数の湿潤剤および軟化剤;
(i)少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤(free radical-scavenging agents)が、
バイオフラボノイド、ポリフェノール化合物、グレープフルーツ由来の四級化合物、βグルカン、アラントイン、ビタミンE、ピクノジェノール(pycnogenol)、またはブドウ種子エキスである、複数のフリーラジカル捕捉剤;ならびに
(j)皮膚に適用したとき素早く空気乾燥し、洗浄し、治療可能な状態とし(therapeutically conditions)、一段階の適用で皮膚を処置する、安定したすすぎのいらない(no-rinse)放射線殺菌の可能な組成物を形成するために選択される前記成分が選択され、少なくとも1種の治癒促進剤(healing-promoting agent)がアロエベラ、アラントインまたはβグルカンであり、複数の治癒促進剤
の群から選択される少なくとも1種の異なる成分を含んでもよい。ある化合物が2つの異なるカテゴリ内で言及される場合、その化合物は製剤中で2つ両方の機能を果たし、その化合物が存在するとき各機能が存在することが理解されるべきである。
【0048】
洗浄剤は石鹸を含む界面活性剤であり、酸または塩基のいずれかとして作用できる界面活性剤である両性界面活性剤を含むが、これに限定されず、例えば、コカミドプロピルベタイン、アルキルポリグルコシド、ラウリルグルコシド、およびそれらの組合せを含むものである。発赤した皮膚は、感染およびその他の皮膚の問題の最初の兆候であり、皮膚がその天然のリソースを増殖およびその他の通常の機能から防御および修復に振り向けていることを示す。発赤の低減または除去は、より健康な新しい皮膚の増殖を増大させることがある。抗炎症剤は、皮膚の発赤を低減することが知られる薬剤を含み、洗浄中に有効であることが判明している量で、これらに限定されないがアロエベラ、アラントイン、コカミドプロピルベタイン、βグルカン、およびそれらの組合せを含むものである。皮膚適合性の消泡剤は、シリコーンベース消泡剤、ジメチコンコポリオール等を含むものである。増殖促進剤は、好ましい組合せおよび濃度で存在する場合、新しい皮膚の増殖を促進または刺激し、以前に観察されていたよりも大規模に治癒を促進するものである。細胞増殖を刺激または促進する薬剤は、これらに限定されないが、アロエベラ、グリオキシルジウレイド(Glyocyldiureide)または5−ウレイドヒダントインであるアラントイン、βグルカン、Citricidal(登録商標)等のポリフェノール化合物、およびそれらの組合せを含むものである。Citricidal(登録商標)および同等の化合物は、幅広い細菌に対して効果的であることが実証されている。これらの化合物は、グリセリン等の不活性成分と共に、グレープフルーツまたはその他のバイオフラボノイドに由来する四級化合物を含有するものである。
【0049】
皮膚の免疫系を強化または刺激するか、二次的な免疫系を実現するのに効果的な薬剤は、これらに限定されないが、アロエベラ、βグルカン、コロイド銀、アラントイン、およびそれらの組合せを含むものである。組成物中に好ましい量で存在するとき、これらの薬剤は治癒を促進し、感染の発生を低減することにも役立つ。
【0050】
コロイド銀、Citricidal(登録商標)、βグルカン、アロエベラおよび同等の成分は、治療的価値を有し、既存の免疫系を促進および刺激し、感染を低減および治癒を促進することに役立つと考えられている。コロイド銀およびCitricidal(登録商標)は、自然免疫系の負担を低減することにより、自然免疫系を支援することができる。また、Citricidal(登録商標)は、未だ不明の機序により治癒を促進すると考えられている。
【0051】
β−1としても知られるD−グルコースポリマーであるβグルカン、抽出液または酵母誘導体は、フリーラジカル消去活性をも示す非特異的な免疫刺激因子である。βグルカンは、身体の免疫系T細胞を刺激し、マンノプロテインおよびアロエベラなどの多糖類は、効果的となるT細胞を提供する。マンノプロテインは、酵母およびオオムギ細胞壁中のβグルカンと結合した糖タンパク質(a sugar-protein, a glycoprotein)である。マンノプロテインは、構造的な完全性、反応性(alertness)および免疫細胞数を直接的に増大させる。速効性の皮膚適合性の抗菌剤は、少なくとも1種または全ての細菌、ウイルス、酵母、および真菌に対して効果的であり、皮膚上および皮膚内の細菌、ウイルス、酵母、および真菌を含む感染性の生物を死滅させるのに効果的な量で、これらに限定されないがコロイド銀、Citricidal(登録商標)、ピクノジェノール、ブドウ種子エキス、抗生物質、およびそれらの組合せを含む。
【0052】
皮膚には多種多様な微生物が生息しており、これらのいくつかは潜在的に有害であり、その他のものは有益である。理想的には、この正常細菌叢は洗浄では破壊されない。しかしながら、皮膚上に存在する細菌および真菌の蓄積を低減する洗浄剤は、特に病院環境内で、感染の発生を低減することに役立つことができる。選択された抗菌剤は速効性であり、細菌、真菌および同等の微生物に作用する。洗浄および急速な空気乾燥中の抗菌剤の作用は、死んだ角質層または表皮内に移動したか、そこに生息するウイルス、細菌、真菌、および酵母に加えて、皮膚の生きた基底細胞層および真皮内に存在するウイルス、細菌、真菌、および酵母も実質的に死滅させる。この作用は、小さな裂傷か微細表皮の剥脱かを問わず、皮膚の裂け目に入り込んだ細菌、ウイルス、および同等の感染性の微生物による感染の発生または重篤度を低減する役割を果たす。
【0053】
コロイド銀およびCitricidal(登録商標)などのいくつかの抗菌剤は、正常な菌叢と適合性があり、真皮に入り込むことができ、有用な抗菌特性を提供する。コロイド銀は、身体のT細胞と同じように細胞壁に入り込むことにより、細菌等の単一細胞微生物を死滅させる。したがって、多くの他の抗菌剤の場合とは異なり、これらの生物は、耐性菌に突然変異することはできない。しかし、コロイド銀は、効力が限定されており、好ましくは本発明に従う組成物の調剤時に他の抗菌剤で補完しなければならない。加えて、コロイド銀は、真皮に入り込むうえで十分に小さい、約0.005〜0.02μm、より好ましくは約0.01〜0.1μmの粒子で調剤することが好ましい。
【0054】
多数の研究が、Citricidal(登録商標)は、生体適合性が高く、その他の利益を皮膚に与える一方、HIV、肝炎およびその他のウイルス、ならびに広い範囲の細菌、真菌、および酵母に対する少なくともある程度の効果を含む、多くの固有の望ましい抗菌特性を有していることを実証している。
【0055】
試験は、2%以下のCitricidal(登録商標)とコロイド銀などの他の薬剤との組合せは、通常皮膚に存在し医療機関に広まっている有害な微生物を死滅させるのに約99.9%以上効果的であることを示している。
【0056】
適合性のある湿潤剤および軟化剤は、これらに限定されないが、アロエベラ、アラントイン、ビタミンE(トコフェロール)、βグルカン、コカミドプロピルベタイン、およびそれらの組合せを含むものである。これらの薬剤は、死んだ角質層、表皮、および/または真皮を、毛穴を詰まらせずに自然に再加湿することができる。
【0057】
組成物中の湿潤剤および軟化剤は、皮膚表面(すなわち真皮)を自然に再加湿するように作用し、乾燥を防止し、弾性を高め、皮膚裂傷の発生を低減し、皮脂腺の活性を補完して毛穴を詰まらせずに皮脂を再生させる。湿潤剤および/または軟化剤の過度の使用は、皮膚の発疹、炎症、および座瘡の主要な原因であり、したがって、より長期間持続する保護バリアを与えるために湿潤剤および/または軟化剤の量を単純に増やすことは、皮膚の問題を促進させ得る。したがって、これらの成分の量は、特に会陰および尿道口に関して望ましくない効果を最小限に抑えるように調整される。
【0058】
フリーラジカルを捕捉し皮膚の解毒に役立つ薬剤は、これらに限定されないが、Citricidal(登録商標)、βグルカン、アラントイン、ビタミンE、ピクノジェノール、ブドウ種子エキス、およびそれらの組合せを含むものである。新しい皮膚の増殖および皮膚の治癒を促進および/または刺激する薬剤は、これらに限定されないが、アロエベラ(ale vera)、アラントイン、Citricidal(登録商標)、βグルカン、調合薬、およびそれらの組合せを含む。生体適合性のある保存剤は、これらに限定されないが、メチルパラベン、プロピルパラベン、EDTAと呼ばれるエチレンジアミン四酢酸、および同等の薬剤ならびにそれらの組合せを含むものである。生体適合性のある芳香剤は、これらに限定されないが、自然のオレンジ、レモン、ラベンダー、およびそれらの組合せを含むものである。また、その他の有益な薬剤は、これらに限定されないが、ビタミンA、カロテン、クリプトキサンチン、レチノール、3−デヒドロレチノール、ビタミンCまたはアスコルビン酸、ビタミンEまたはトコフェロール等を含む、ビタミンおよびビタミン前駆体含有の薬剤、カモミール、ラベンダー、朝鮮人参、イチョウ等を含む薬用植物、および酸化防止剤、コラーゲン、pH平衡剤(pH-balancing agents)、ならびにそれらの組合せを含むものである。なお、組成物の各成分は、組成物の総重量に対する百分率として、所望の結果を得るために単独または他の成分との相乗作用により効果的である量で存在する。
【実施例】
【0059】
以下の実施例は、本発明の理解を促すために提供されたものであり、本発明を制限するものではない。
【0060】
[実施例1]
2013年8月〜10月に、First Health Moore County Regional Hospital(病床数395、Pinehurst、NC)にて治験を行った。治験前に、First HealthのCAUTI率は、ノースカロライナ州の他の同規模の病院と同様のものだった。First Healthにて発生したCAUTIを検討したところ、CAUTIの大部分はフォーリーカテーテルが5日間超にわたり留置された後に発生したことが判明し、病院はカテーテルのケアおよび維持に問題があったと確信するに至る。病院はその後、2013年7月に集中治療室(ICU)にてTheraworx(登録商標)ブランドの溶液を使用し、8月に治験を開始した。病院職員は、前処置ステップとして、上記に記載されているように挿入前および直後に、Theraworx(登録商標)ブランドの溶液を会陰に適用し、カテーテルが挿入されている間8時間ごとに維持処置ステップを実施するように指示された。
【0061】
1年前の同じ期間に、病院でのカテーテル留置日数1728日におけるICUでのCAUTI件数は4件であり、カテーテル留置日数1000日当たり2.3の感染率だった。本発明に従いTheraworx(登録商標)ブランドの溶液を使用した治験中は、病院でのカテーテル留置日数1667日におけるICUでのCAUTI件数は0件であった。これは、カテーテル留置日数1000日当たり0の感染率である。
【0062】
この研究の結果は、病院ICUスタッフにより検討され、石鹸および水の最も新しい文献において推奨されている最新のベストプラクティスがあるにもかかわらず、病院全体で実施するために本プロトコールが承認された。
【0063】
カテーテル挿入およびカテーテルケアの方針が検討され、エビデンスベースのベストプラクティスが検討され、病院の方針およびプロトコールが2013年12月に改訂されて、カテーテルの抜去後にTheraworx(登録商標)ブランドの洗浄剤で会陰を清拭する追加ステップを含め、会陰およびカテーテルに適用された布上でTheraworx(登録商標)ブランドの発泡洗浄剤を使用して、スタッフが挿入前および直後ならびにその後留置期間にわたり8時間ごとにカテーテルケアを行うことになった。
【0064】
[実施例2]
Baptist Hospital(病床数383、Lexington、Kentucky)の5つの集中治療室にてTheraworx溶液を使用して治験が行われた。本病院内研究の目的は、コロイド銀含浸ワイプおよびTheraworx(登録商標)ブランドの溶液である発泡洗浄剤が、病院により実践されている現行のフォーリーカテーテルのケアプロトコール内で洗浄プロトコールの一部として使用されたとき、集中治療環境におけるCAUTI発生を低減するうえで効験があるかどうかを判断することだった。
【0065】
2012年における5つのICU内での平均感染率は、器具装着日数1000日当たり感染数1.2件から器具装着日数1000日当たり感染数5.9件の範囲だった。病院は、2013年4月に開始したプロトコールのステップを行った。このステップは、Theraworx(登録商標)により挿入前に会陰を洗浄して溶液を30秒間空気乾燥させ、滅菌フォーリーカテーテルを開封してTheraworx(登録商標)でフォーリーカテーテルを洗浄し、Betadine(登録商標)により尿道口を清拭し、一般に受容されている無菌操作を使用してカテーテルを挿入することを含む。尿道口、会陰、およびカテーテルの露出部分は、挿入後にTheraworx(登録商標)で再度洗浄した。Theraworx(登録商標)に浸漬した布を維持清拭(maintenance wiping)のために毎日2〜3回使用し、失禁に対する最終洗浄として追加清拭を行った。その結果、研究2か月目までに5つのICUのうち4つでCAUTI感染数0件が報告され、4か月目までに5つ全てのICUでCAUTI感染数が器具装着数1000件当たり0件にまで低減した。一部のICUでは研究開始前にCAUTI感染率0を達成していたが、同じ月に5つ全ての集中治療室がCAUTI感染率0を維持したのは研究開始後に初めてであった。これらの結果は2012年の平均CAUTI率を超えるものであり、器具装着日数1000日当たり感染数1.4件というNational Healthcare Safety NetworkのCAUTIベンチマークより低いものであった。
【0066】
下表1は、2013年6月から2013年7月までの病院内研究の結果をまとめ、2013年1月から2013年7月までの5つのICUそれぞれのCAUTI率および2012年の5つのICUそれぞれの平均CAUTI率を含むものである。対応する結果は
図3にグラフで示されている。
【0067】
【表1】
【0068】
病院は、(a)CAUTIに関連する危険因子、および(b)フォーリーカテーテルのケアに関する看護行動について3か月間にわたり1,282名の患者について収集された詳細情報も報告している。データは、入院期間に応じて患者ごとに1〜10日間収集された。救命救急治療中の患者の年齢、性別、体重、便失禁、および関係する看護実践を含む、CAUTIの潜在的危険因子を評価するために、記述統計が計算された。
【0069】
ICUは少数のカテーテル留置患者しか収容しない場合があったこと、およびスタッフによる規定プロトコールの遵守を含む複数の変数がCAUTI率に影響し得ることが理解されるべきである。例えば、ICUに少数のカテーテル留置患者しかいない場合、CAUTI率は0まで下がることがある。しかしながら、全体として、CAUTI率を低減し規定プロトコールと比較して新しいプロトコールの遵守を増進するための、本発明によるプロトコールの影響は、明らかに証明されている。
【0070】
フォーリーケアの看護実践を評価するため、看護師に対して以下の質問がなされた。1)会陰を清浄化するためにTheraworx(登録商標)を使用したか。2)フォーリーカテーテルを清浄化するためにTheraworx(登録商標)を使用したか。3)カテーテルの構成部品を正確に取り付けたか。および4)フォーリーカテーテルを正確に留置したか。フォーリーケアの看護実践に関する情報を下表2にまとめている。文字「n」は器具を留置した日数を意味している。
【0071】
【表2】
【0072】
[実施例3]
John Muir Medical Center(Walnut Creek、California)が、同病院の救急治療部の質改善プロジェクトとしての研究、2013年4月から2014年7月10日まで、入院患者におけるCAUTI予防のための尿道カテーテル挿入および維持のプロトコールにおいて使用されたTheraworx(登録商標)ブランドの消毒剤の影響を評価するために請け負われた研究を行った。CAUTIは、Centers for Disease Control and Prevention National Healthcare(Heathcare) Safety Networkの定義に従って定義された。John Muirの研究は、Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee (HICPAC)のPrevention GuidelinesおよびGould C.V.、Umscheid C.A.、Agarwal R.K.らを特に参照している。
【0073】
John Muir Medical Centerにより2014年に利用された「Guideline for Prevention of Catheter−Associated Urinary Tract Infections 2009」は、John Muirにて研究された本発明による方法および本明細書に記載の本発明の主題とは対照的に、エビデンスベースの判断を下すためのエビデンスの不足により定期的カテーテル維持のために消毒溶液を使用しないことを推奨している。しかしながら、尿道の周囲の領域を消毒剤で清浄化することが推奨されている。
【0074】
John Muir Medical Centerの研究は、完全なTheraworxプロトコール使用の実施後間もなく、ガイドラインに一致し認識の重大な相違を埋める完全な実施後の効果的なCAUTI予防介入を示し得る、明白な傾向が見られたと結論付けた。
【0075】
John Muir Medical Centerのプロトコールは、フォーリーカテーテル挿入前にTheraworx(登録商標)ブランドの消毒剤を含浸させた布を使用し、尿道口の入口に集中して会陰を清拭すること、女性の場合は前から後へ清拭し、男性の場合は陰茎亀頭周囲に同心円を描いて清拭することを含んでいた。この第1の適用薬は30秒間乾燥させ洗い流さなかった。その後、フォーリーカテーテルキットを開封し、Betadine(登録商標)ブランドの消毒綿棒を使用して尿道口領域を洗浄し、一般に受容されている滅菌操作を実践しながらフォーリーカテーテルを挿入した。Theraworx(登録商標)ブランドの消毒剤を含浸させた新しい第2の布を使用して、挿入後カテーテルケアのために下方向に尿道口周囲およびカテーテルを清拭し、ここでも、女性の場合は前から後へ清拭し、男性の場合は陰茎亀頭周囲に同心円を描いて清拭した。その後、真新しいワイプまたは清潔なタオルに適用した発泡溶液を、定期的カテーテルケアおよび頻繁な会陰ケアのために、全て本発明に従って8〜12時間ごとに使用し、失禁またはその他の汚染事象の各発生後の最終清浄化のために使用した。高危険因子が特定された場合、カテーテルが抜去されるまで4時間ごとに維持を行うように頻度を上げた。
【0076】
図4は、Walnut Creek施設における治験期間中の月ごとのカテーテル留置日数当たりのCAUTI率をグラフで示したものである。
図5は、月ごとに、時間経過に沿ってCAUTI間の日数をグラフで示したものである。
【0077】
John Muir Medical Centerは、看護スタッフの行動改善に関連してTheraworx(登録商標)を含浸させた布の使用により、入院時にUTIが存在せず挿入後3日以前に陽性の尿培養が発生するCAUTIである、挿入関連CAUTIの数が劇的に低減したことを報告した。質改善が実施された4か月後には、記録された救急治療部関係CAUTIの数は3〜1.5未満に減少し、コストもそれに相応して低下した。1か月間で、CAUTIの数は0であり、CAUTIに起因するコストは発生しなかった。
【0078】
[実施例4]
Cleveland Clinic Hospital系列の病院であるEuclid Hospital(Cleveland Ohio)が、2014年6月〜8月に、John Muir Medical Centerのものと同様の質改善プロジェクトを請け負った。ただし、6月は本発明のプロトコールの研修のために利用されたと考えられた。2013年1月〜2014年8月のCAUTI率が、統計解析の結果として
図6にグラフで示されている。Euclid Hospitalは、Theraworx(登録商標)消毒溶液および本発明のプロトコールは効果的なCAUTI予防介入であり得、他の消毒剤と比較したTheraworx(登録商標)消毒剤の利益は、幅広い活性、言わば角質層を保護する皮膚の自然なpHを維持する能力、および直腸周囲領域内および粘膜上で使用するのに十分低刺激であることを含むと述べている。
図6の統計的プロセス制御グラフでは、特別な原因による変動は特定されなかったが、Euclid Hospitalは、本発明のプロトコール実施後、CAUT0件に到達し維持することができた。
【0079】
Theraworx(登録商標)ブランドの消毒洗浄剤を含む、本発明による実践に使用するための消毒溶液は、クロルヘキシジンおよびアルコールとは異なり、顔面、粘膜、尿道口、または会陰および直腸領域への適用に制限がなく、必要と考えられる場合に応じて頻繁に使用することができる。このような製剤は、幅広い抗菌活性、抗酵母特性、および抗真菌特性を有する一方で、皮膚に滋養分および水分を与え、皮膚の外套(mantel)の自然なpHを維持し、角質層を支持して皮膚から感染体が除菌される際にもバリア機能が保持されるようにする。抗菌活性の持続は、最長で約3時間に及ぶことが実証されている。臭気も感染の1つの指標であり、本発明による実践はCAUTIに伴う臭気を低減または除去することに留意すべきである。細菌細胞死の様式は、結果的に細胞質成分が失われたのにもかかわらず、皮膚または生組織に損傷がないことによる細胞膜の破壊であると考えられている。シトラス系の抗菌安定剤、四級アンモニウムカチオンを含有する両性イオン性界面活性剤、およびコロイド銀という3つの物質が寄与していると考えられている。製剤は、ビタミンE、アロエベラ、アラントイン、コロイド銀、およびβグルカン1を含有し、グラム陰性およびグラム陽性の細菌に対して99.9%超高い効果を持つと言われている。
【0080】
本発明は、特許請求の範囲に記載の通り定義される。