特許第6335344号(P6335344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東日本高速道路株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社富士テックの特許一覧 ▶ JFE建材株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6335344-防音パネル 図000002
  • 特許6335344-防音パネル 図000003
  • 特許6335344-防音パネル 図000004
  • 特許6335344-防音パネル 図000005
  • 特許6335344-防音パネル 図000006
  • 特許6335344-防音パネル 図000007
  • 特許6335344-防音パネル 図000008
  • 特許6335344-防音パネル 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335344
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】防音パネル
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   E01F8/00
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-9966(P2017-9966)
(22)【出願日】2017年1月24日
(62)【分割の表示】特願2013-228459(P2013-228459)の分割
【原出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2017-66865(P2017-66865A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513276499
【氏名又は名称】株式会社富士テック
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広地 豪
(72)【発明者】
【氏名】山崎 敏史
(72)【発明者】
【氏名】今村 巧
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 智
(72)【発明者】
【氏名】成見 良介
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−124483(JP,A)
【文献】 特開平05−112913(JP,A)
【文献】 特開2006−241966(JP,A)
【文献】 特開2003−306909(JP,A)
【文献】 特許第4684048(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーバーが形成された正面板と、背面板と、側面板とを縦断面形状が平行四辺形となるように箱状に形成したものからなり、上面および下面が前記正面板に向かってそれぞれ上り傾斜に傾斜しているパネル本体を備えた防音パネルにおいて、
前記パネル本体の前記下面は、前記正面板側に下り傾斜に配された導水板を備え、前記正面板には、排水口が形成され、前記導水板の背面板側端部は、止水材を介して前記背面板に接合されていることを特徴とする防音パネル。
【請求項2】
前記排水口は、前記導水板と前記正面板とがなすコーナー部に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の防音パネル。
【請求項3】
前記止水材は、ゴム製であることを特徴とする、請求項1または2に記載の防音パネル。
【請求項4】
前記正面板は、アルミニウム製で、前記背面板および前記導水板は、亜鉛メッキ鋼板製であることを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の防音パネル。
【請求項5】
前記導水板の正面板側端部は、絶縁材を介して前記正面板の下縁部に接合されていることを特徴とする、請求項4に記載の防音パネル。
【請求項6】
前記絶縁材は、ゴム製であることを特徴とする、請求項5に記載の防音パネル。
【請求項7】
前記排水口と正対する前記導水板の正面板側縁部に、弧状の切り欠きが形成されていることを特徴とする、請求項1からの何れか1つに記載の防音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防音パネル、特に、パネル本体内に浸入した雨水等を確実にパネル本体外に排水することができることは勿論、電蝕による腐食を防止することができ、しかも、強度が高い防音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路を走行する車両が発する騒音を低減するために、道路に沿って構築される防音フェンスは、例えば、H形鋼からなる支柱のフランジ間に複数枚の防音パネルの左右端部を落とし込んで段積みすることにより構築されていた。
【0003】
従来の防音パネルの一例が特許文献1に開示されている。以下、この防音パネルを従来パネルAといい、図面を参照しながら説明する。
【0004】
図4は、従来パネルAを示す正面図、図5は、従来パネルAを示す断面図、図6は、従来パネルAを示す部分拡大断面図、図7は、従来パネルAを示す部分拡大斜視図である。
【0005】
図4から図7に示すように、従来パネルAは、パネル本体21と、パネル本体21内に入れられた吸音材22とからなっている。パネル本体21は、正面板23と背面板24と側面板25とを、図5に示すように、縦断面形状が平行四辺形となるように箱状に形成したものからなっている。パネル本体21の上面21aおよび下面21bは、正面板23に向かってそれぞれ上り傾斜に傾斜している。
【0006】
防音パネルAによれば、正面板23に形成されたルーバー26からパネル本体21内に入り込んだ音は、吸音材22により吸収されることによって、防音効果が得られる。
【0007】
図5に示すように、パネル本体21の上面21aは、正面板23の上部と背面板24の上部とを互いに内側に折り曲げて重ね合わせ、リベット接合することにより形成されている。
【0008】
図5に示すように、パネル本体21の下面21bは、背面板24の下部を内側に折り曲げ、その端部と正面板23の下部とをはぜ折りにより接合することにより形成されている。はぜ折り部を27で示す。はぜ折り部27は、パネル本体21の下面21bより下方に突出している。
【0009】
パネル本体21の下面21bには、排水口28が形成され、ルーバー26からパネル本体21内に入り込んだ雨水等がパネル本体21外に排水されるようになっている(図6図7参照)。また、はぜ折り部27の下部にも排水口29が形成され、はぜ折り部27内に入り込んだ雨水等がパネル本体21外に排水されるようになっている(図6図7参照)。
【0010】
パネル本体21の上面21aのルーバー26側の上端には、凹部33が形成され、防音フェンスを構築する際に、上段の防音パネルのはぜ折り部27が下段の防音パネルの凹部33内に入り込むように段積みされる。
【0011】
従来パネルAを使用した防音フェンスは、図4に示すように、従来パネルAの左右端部をH形鋼からなる支柱32のフランジ間に落とし込み、段積みすることにより構築される。
【0012】
上記従来パネルAによれば、ルーバー26からパネル本体21内に入り込んだ雨水等は、排水口28からパネル本体21外に排水され、はぜ折り部27内に入り込んだ雨水等は、排水口29からパネル本体21外に排水されるようにはなっているが、はぜ折り部27内の空間は、非常に狭いので、雨水等は、排水口29から排水されにくい。
【0013】
そこで、この問題を解決した別の防音パネルが特許文献2に開示されている。
【0014】
以下、この防音パネルを従来パネルBといい、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図8は、従来パネルBを示す部分斜視図である。
【0016】
従来パネルBと従来パネルAとは、パネル本体21の下面21bの構成と、下面21bに形成された排水口の位置とが異なる。
【0017】
図8に示すように、従来パネルBにおけるパネル本体21の下面21bは、背面板24の下部を正面板23側に下り傾斜に折り曲げて下部折り曲げ部24aを形成し、正面板23の下部を背面板24側に登り傾斜に折り曲げて下部折り曲げ部23aを形成し、間隔材30を背面板24の下部折り曲げ部24aと正面板23の下部折り曲げ部23aとの間にリベットにより固定したものからなっている。
【0018】
間隔材30は、断面コ字状に形成され、その両フランジに正面板23側にそれぞれ下り傾斜に折り曲げた折り曲げ部30a、30bを形成したものからなっている。一方の折り曲げ部30aは、背面板24の下部折り曲げ部24aの下面にリベット止めされ、他方の折り曲げ部30bは、正面板23の下部折り曲げ部23aを介して背面板24の下部折り曲げ部24aの下面にリベット止めされている。
【0019】
正面板23の下部折り曲げ部23aのコーナー部には、排水口31が形成され、ルーバーからパネル本体21内に入り込んだ雨水等がパネル本体21外に排水されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特許第4684018号公報
【特許文献2】意匠登録第1433663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、従来パネルBによれば、正面板23と背面板24とはぜ折りにより接合されていないので、はぜ折り部27内の雨水等がパネル本体21外に排水されにくいといった問題は生じない。
【0022】
しかし、従来パネルBを用いて段積みした場合、上下の連結部においてパネル同士が密着せず、また、はぜ折部による嵌合がされないため、連結強度に不安があった。
【0023】
また、正面板23は、アルミニウム製で、背面板24および間隔材30は、亜鉛メッキ鋼鈑で構成されているので、電蝕によるパネル本体21の腐食の問題があった。しかも、間隔材30の接合は、リベット止めのみであるので、この接合部から雨水等が間隔材30内に浸入するおそれがあった。
【0024】
従って、この発明の目的は、パネル本体内に浸入した雨水等を確実にパネル本体外に排水することができることは勿論、電蝕による腐食を防止することができ、しかも、強度が高い防音パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とする。
【0026】
請求項1に記載の発明は、ルーバーが形成された正面板と、背面板と、側面板とを縦断面形状が平行四辺形となるように箱状に形成したものからなり、上面および下面が前記正面板に向かってそれぞれ上り傾斜に傾斜しているパネル本体を備えた防音パネルにおいて、前記パネル本体の前記下面は、前記正面板側に下り傾斜に配された導水板を備え、前記正面板には、排水口が形成され、前記導水板の背面板側端部は、止水材を介して前記背面板に接合されていることに特徴を有するものである。
【0027】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記排水口は、前記導水板と前記正面板とがなすコーナー部に形成されていることに特徴を有するものである。
【0028】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記止水材は、ゴム製であることに特徴を有するものである。
【0029】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1つに記載の発明において、前記正面板は、アルミニウム製で、前記背面板および前記導水板は、亜鉛メッキ鋼板製であることに特徴を有するものである。
【0030】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記導水板の正面板側端部は、絶縁材を介して前記正面板の下縁部に接合されていることに特徴を有するものである。
【0031】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記絶縁材は、ゴム製であることに特徴を有するものである。
【0032】
請求項7に記載の発明は、請求項1からの何れか1つに記載の発明において、前記排水口と正対する前記導水板の正面板側縁部に、弧状の切り欠きが形成されていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、パネル本体内に浸入した雨水等を、パネル内部に設けた導水板、および、正面板下部折り曲げ部のコーナー部に設けた排水口により、確実にパネル本体外に排水することができる。
【0035】
また、この発明によれば、排水口と正対する導水板の正面板側縁部に、弧状の切り欠きを形成することによって、雨水等をより確実に排水することができる。
【0036】
また、この発明によれば、導水板を設けることによって、パネル本体の強度を向上させることができる。
【0037】
また、この発明によれば、導水板の正面板側端部を絶縁材を介して正面板下部折り曲げ部に接合することによって、パネル本体の電蝕を防止することができる。
【0038】
また、この発明によれば、導水板の背面板側端部を止水材を介して背面板に接合することによって、この接合部分からのパネル本体内への雨水等の侵入を確実に防止することができる。
【0039】
なお、導水板自体を非金属、例えば、樹脂、硬質ゴム等にて製作し、絶縁の効果を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】この発明の防音パネルを示す断面図である。
図2】この発明の防音パネルを示す部分拡大断面図である。
図3図2のA矢視図である。
図4】従来パネルAを示す正面図である。
図5】従来パネルAを示す断面図である。
図6】従来パネルAを示す部分拡大断面図である。
図7】従来パネルAを示す部分拡大斜視図である。
図8】従来パネルBを示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
この発明の防音パネルの一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0042】
図1は、この発明の防音パネルを示す断面図、図2は、この発明の防音パネルを示す部分拡大断面図である。
【0043】
図1および図2に示すように、この発明の防音パネルは、パネル本体1とパネル本体1内に入れられた吸音材2とからなっている。
【0044】
パネル本体1は、正面板3と、背面板4と、側面板5とを縦断面形状が平行四辺形となるように箱状に形成したものからなっている。正面板3には、ルーバー6が形成されている。パネル本体1の上面1aおよび下面1bは、正面板3に向かってそれぞれ上り傾斜に傾斜している。正面板3は、アルミニウム製で、背面板4および側面板5は、亜鉛メッキ鋼板製である。
【0045】
パネル本体1の下面1bは、背面板4の下部を正面板3側に登り傾斜に折り曲げて形成した背面板下部折り曲げ部7と、背面板下部折り曲げ部7と間隔をあけて正面板4側に下り傾斜に配された導水板8と、背面板4側に登り傾斜に折り曲げられた正面板下部折り曲げ部3aの下面に接合された逆L形の嵌合板9とからなっている。
【0046】
導水板8は、正面板3側に下り傾斜に取り付けられているので、ルーバー6からパネル本体1内に浸入した雨水等は、導水板8上を流れて、後述する排水口12からパネル本体1外に排水される。また、導水板8を設けることによって、パネル本体1の下部の強度が向上するため、段積みした際の上下連結部の強度向上にも効果がある。
【0047】
嵌合板9は、この発明の防音パネルを段積みして防音フェンスを構築する際に、下段の防音パネルの正面板3に形成された凹部3b内に、上段の防音パネルの嵌合板9を入り込ませて防音パネルの位置決めを図るものである。防音フェンスの構築の際、この発明の防音パネルの左右端部をH形鋼からなる支柱のフランジ間に落とし込んで段積みする点は、従来と同様である(図4参照)。
【0048】
導水板8は、亜鉛メッキ鋼板製で、嵌合板9は、アルミニウム製である。
【0049】
導水板8の背面板側端部8aは、ゴム等からなる止水材10を介して背面板5の内面にリベットにより接合されている。導水板8の正面板側端部8bは、絶縁材11を介して正面板下部折り曲げ部3aの上面にリベットにより接合されている。
【0050】
導水板8を絶縁材11を介して正面板3の正面板下部折り曲げ部3aに接合することによって、パネル本体1の電蝕を防止することができる。また、導水板8の背面板側端部8aを止水材10を介して背面板5に接合することによって、この接合部分からパネル本体1内への雨水等の侵入を確実に防止することができる。
【0051】
背面板下部折り曲げ部7の先端7aは、導水板8の下面にリベットにより接合されている。正面板下部折り曲げ部3aのコーナー部には、排水口12が形成されている。
【0052】
図3に示すように、排水口12と正対する導水板8の正面板側縁部8cには、弧状の切り欠き13が形成されている。切り欠き13を形成することによって、雨水等は、より流れやすくなるので、排水口12から確実に排水することができる。
【0053】
以上、説明したように、この発明によれば、正面板下部折り曲げ部3aのコーナー部に排水口12を形成することによって、パネル本体1内に浸入した雨水等を確実にパネル本体1外に排水することができる。
【0054】
また、この発明によれば、排水口12と正対する導水板8の正面板側縁部8cに、弧状の切り欠き13を形成することによって、雨水等をより確実に排水することができる。
【0055】
また、この発明によれば、導水板8を設けることによって、パネル本体1の強度を向上させることができる。
【0056】
また、この発明によれば、導水板8を絶縁材11を介して正面板3の正面板下部折り曲げ部3aに接合することによって、パネル本体1の電蝕を防止することができる。
【0057】
また、この発明によれば、導水板8の背面板側端部8aを止水材10を介して背面板4に接合することによって、この接合部分からパネル本体1内への雨水等の侵入を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:パネル本体
1a:上面
1b:下面
2:吸音材
3:正面板
3a:正面板下部折り曲げ部
3b:凹部
4:背面板
5:側面板
6:ルーバー
7:背面板下部折り曲げ部
7a:背面板下部折り曲げ部の先端
8:導水板
8a:背面板側端部
8b:正面板側端部
8c:正面板側縁部
9:嵌合板
10:止水材
11:絶縁材
12:排水口
13:切り欠き部
21:パネル本体
21a:上面
21b:下面
22:吸音材
23:正面板
23a:下部折り曲げ部
24:背面板
24a:下部折り曲げ部
25:側面板
26:ルーバー
27:はぜ折り部
28:排水口
29:排水口
30:間隔材
30a:一方の折り曲げ部
30b:他方の折り曲げ部
31:排水口
32:支柱
33:凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8