特許第6335356号(P6335356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6335356
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】水素充填方法及び水素充填システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   F17C5/06
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-65037(P2017-65037)
(22)【出願日】2017年3月29日
【審査請求日】2017年10月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲はい▼島 聡
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 勇斗
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−002052(JP,A)
【文献】 特開2005−315273(JP,A)
【文献】 特開2003−314763(JP,A)
【文献】 特開2003−145429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側のレセプタクルにノズルを差し込むことによって互いに連結した状態とし、前記ノズルに接続されたホースを介してプレクーラーにより冷却された水素を供給し、前記車両側のタンクに水素を充填する水素充填方法であって、
前記ホースを貫通させた状態で、前記ホースの延長方向にスライド自在に取り付けられたカバー部材を用い、
少なくとも前記レセプタクルと前記ノズルとの連結部分と共に、前記ノズルと前記ホースとの接続部分前記カバー部材で覆った状態とし、前記カバー部材の内側に不活性ガスを供給することを特徴とする水素充填方法。
【請求項2】
車両側のレセプタクルにノズルを差し込むことによって互いに連結した状態とし、前記ノズルに接続されたホースを介してプレクーラーにより冷却された水素を供給し、前記車両側のタンクに水素を充填する水素充填方法であって、
前記ホースを貫通させた状態で、前記ホースの延長方向に伸縮自在に取り付けられたカバー部材を用い、
少なくとも前記レセプタクルと前記ノズルとの連結部分と共に、前記ノズルと前記ホースとの接続部分を前記カバー部材で覆った状態とし、前記カバー部材の内側に不活性ガスを供給することを特徴とする水素充填方法。
【請求項3】
前記ホースを介して供給される水素の温度よりも低い露点温度を有した前記不活性ガスを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素充填方法。
【請求項4】
少なくとも前記連結部分を視認する透明又は半透明な部分を有する前記カバー部材を用いることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の水素充填方法。
【請求項5】
前記不活性ガスを加熱した後に、前記カバー部材の内側に供給することを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の水素充填方法。
【請求項6】
車両側のレセプタクルにノズルを差し込むことによって互いに連結した状態とし、前記ノズルに接続されたホースを介してプレクーラーにより冷却された水素を供給し、前記車両側のタンクに水素を充填する水素充填システムであって、
前記ホースを貫通させた状態で、前記ホースの延長方向にスライド自在に取り付けられたカバー部材と、
前記カバー部材の内側に不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構とを備え、
少なくとも前記レセプタクルと前記ノズルとの連結部分と共に、前記ノズルと前記ホースとの接続部分を前記カバー部材で覆った状態で、前記不活性ガス供給機構により前記カバー部材の内側に不活性ガスが供給されることを特徴とする水素充填システム。
【請求項7】
車両側のレセプタクルにノズルを差し込むことによって互いに連結した状態とし、前記ノズルに接続されたホースを介してプレクーラーにより冷却された水素を供給し、前記車両側のタンクに水素を充填する水素充填システムであって、
前記ホースを貫通させた状態で、前記ホースの延長方向に伸縮自在に取り付けられたカバー部材と、
前記カバー部材の内側に不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構とを備え、
少なくとも前記レセプタクルと前記ノズルとの連結部分と共に、前記ノズルと前記ホースとの接続部分を前記カバー部材で覆った状態で、前記不活性ガス供給機構により前記カバー部材の内側に不活性ガスが供給されることを特徴とする水素充填システム。
【請求項8】
前記不活性ガスは、前記ホースを介して供給される水素の温度よりも低い露点温度を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の水素充填システム。
【請求項9】
前記カバー部材は、少なくとも前記連結部分を視認する透明又は半透明な部分を有することを特徴とする請求項の何れか一項に記載の水素充填システム。
【請求項10】
前記不活性ガス供給機構は、前記不活性ガスを加熱する加熱部を有して、加熱された前記不活性ガスを前記カバー部材の内側に供給することを特徴とする請求項の何れか一項に記載の水素充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素充填方法及び水素充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)の車載タンクに水素を充填する水素充填システムとして、水素ステーションが利用されている。水素充填システムでは、車両側のレセプタクルに水素ステーション側のノズルを差し込むことによって互いに連結した状態とし、水素ステーション側から供給される水素を車載タンクに充填することが行われる(例えば、特許文献1を参照。)。また、車載タンクに高圧で充填される水素は、非常に高温となることから、水素ステーション側から供給される水素を予め冷却(プレクールという。)することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4895881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した車載タンクに水素を急速に充填(急速充填)するためには、水素を約−40℃まで冷却する必要である。しかしながら、充填中は、レセプタクルとノズルとの連結部分が水素により冷却されるため、この連結部分に結露した水が凍結する。これにより、ノズルがレセプタクルに固着してしまい、充填終了後にノズルの取り外しが困難となるといった問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、レセプタクルとノズルとの連結部分に結露が発生することを防止しつつ、水素の急速充填に対応可能とした水素充填方法及び水素充填システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 車両側のレセプタクルにノズルを差し込むことによって互いに連結した状態とし、前記ノズルに接続されたホースを介してプレクーラーにより冷却された水素を供給し、前記車両側のタンクに水素を充填する水素充填方法であって、
前記ホースを貫通させた状態で、前記ホースの延長方向にスライド自在に取り付けられたカバー部材を用い、
少なくとも前記レセプタクルと前記ノズルとの連結部分と共に、前記ノズルと前記ホースとの接続部分前記カバー部材で覆った状態とし、前記カバー部材の内側に不活性ガスを供給することを特徴とする水素充填方法。
〔2〕 車両側のレセプタクルにノズルを差し込むことによって互いに連結した状態とし、前記ノズルに接続されたホースを介してプレクーラーにより冷却された水素を供給し、前記車両側のタンクに水素を充填する水素充填方法であって、
前記ホースを貫通させた状態で、前記ホースの延長方向に伸縮自在に取り付けられたカバー部材を用い、
少なくとも前記レセプタクルと前記ノズルとの連結部分と共に、前記ノズルと前記ホースとの接続部分を前記カバー部材で覆った状態とし、前記カバー部材の内側に不活性ガスを供給することを特徴とする水素充填方法。
〕 前記ホースを介して供給される水素の温度よりも低い露点温度を有した前記不活性ガスを用いることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の水素充填方法。
〕 少なくとも前記連結部分を視認する透明又は半透明な部分を有する前記カバー部材を用いることを特徴とする前記〔1〕〜〔〕の何れか一項に記載の水素充填方法。
〕 前記不活性ガスを加熱した後に、前記カバー部材の内側に供給することを特徴とする前記〔1〕〜〔〕の何れか一項に記載の水素充填方法。
〕 車両側のレセプタクルにノズルを差し込むことによって互いに連結した状態とし、前記ノズルに接続されたホースを介してプレクーラーにより冷却された水素を供給し、前記車両側のタンクに水素を充填する水素充填システムであって、
前記ホースを貫通させた状態で、前記ホースの延長方向にスライド自在に取り付けられたカバー部材と、
前記カバー部材の内側に不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構とを備え、
少なくとも前記レセプタクルと前記ノズルとの連結部分と共に、前記ノズルと前記ホースとの接続部分を前記カバー部材で覆った状態で、前記不活性ガス供給機構により前記カバー部材の内側に不活性ガスが供給されることを特徴とする水素充填システム。
〔7〕 車両側のレセプタクルにノズルを差し込むことによって互いに連結した状態とし、前記ノズルに接続されたホースを介してプレクーラーにより冷却された水素を供給し、前記車両側のタンクに水素を充填する水素充填システムであって、
前記ホースを貫通させた状態で、前記ホースの延長方向に伸縮自在に取り付けられたカバー部材と、
前記カバー部材の内側に不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構とを備え、
少なくとも前記レセプタクルと前記ノズルとの連結部分と共に、前記ノズルと前記ホースとの接続部分を前記カバー部材で覆った状態で、前記不活性ガス供給機構により前記カバー部材の内側に不活性ガスが供給されることを特徴とする水素充填システム。
〕 前記不活性ガスは、前記ホースを介して供給される水素の温度よりも低い露点温度を有することを特徴とする前記〔6〕又は〔7〕に記載の水素充填システム。
〕 前記カバー部材は、少なくとも前記連結部分を視認する透明又は半透明な部分を有することを特徴とする前記〔〕〜〔〕の何れか一項に記載の水素充填システム。
10〕 前記不活性ガス供給機構は、前記不活性ガスを加熱する加熱部を有して、加熱された前記不活性ガスを前記カバー部材の内側に供給することを特徴とする前記〔〕〜〔〕の何れか一項に記載の水素充填システム。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、レセプタクルとノズルとの連結部分に結露が発生することを防止しつつ、水素の急速充填に対応可能とした水素充填方法及び水素充填システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る水素充填システムの構成を示す模式図である。
図2図1に示す水素充填システムにおいて、レセプタクルとノズルとの連結部分を拡大した斜視図である。
図3図2に示す連結部分に被せられたカバー部材の内側に不活性ガスを供給する構成を示す斜視図である。
図4図3に示すカバー部材の内側に加熱された不活性ガスを供給する構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らないものとする。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0010】
本発明の一実施形態として、例えば図1図4に示す水素充填システム1について説明する。なお、図1は、水素充填システム1の構成を示す模式図である。図2は、水素充填システム1において、レセプタクル4とノズル17との連結部分を拡大した斜視図である。図3は、連結部分に被せられたカバー部材31の内側に不活性ガスを供給する構成を示す斜視図である。図4は、カバー部材31の内側に加熱された不活性ガスを供給する構成を示す斜視図である。
【0011】
本実施形態の水素充填システム1は、図1に示すように、例えばFCV2に搭載された車載タンク3に対して水素の充填を行う水素ステーションに本発明を適用したものである。
【0012】
一方、FCV2は、水素と酸素との電気化学反応によって得られる電力によりモータを駆動して走行する車両である。FCV2は、水素充填中に開放され、充填終了後に閉止される遮断弁(図示せず。)が設けられた水素の充填口となるレセプタクル4を備えている。
【0013】
本実施形態の水素充填システム1は、複数の蓄圧器20−1〜20−N(Nは2以上の整数を表す。)と、複数の枝管11−1〜11−Nと、複数の圧力計21−1〜21−Nと、複数の遮断弁22−1〜22−Nと、供給配管12と、調節弁13と、遮断弁14と、圧力計15と、プレクーラー16と、制御装置30とを概略備えている。
【0014】
なお、以降の説明において、複数の蓄圧器20−1〜20−N、複数の枝管11−1〜11−N、複数の圧力計21−1〜21−N、複数の遮断弁22−1〜22−Nについて、特に区別しない場合には、それぞれ蓄圧器20、枝管11、圧力計21、遮断弁22としてまとめて取り扱うものとする。
【0015】
蓄圧器20は、圧縮機(図示せず。)により圧縮された高圧の水素を蓄圧した状態で貯留する容器である。一般的に、蓄圧器20には、大型のマンガン鉱製の継ぎ目なしボンベや、カードル及び複合容器などが用いられる。なお、蓄圧器20は、高圧の水素を蓄圧することができるものであればよく、その材質や形状等については特に限定されるものではない。
【0016】
枝管11は、それぞれの蓄圧器20と接続された配管である。枝管11は、その配管内を流れる水素の圧力が高圧となることから、金属製であることが望ましいものの、その材質については特に限定されるものではない。一般的に、枝管11には、ステンレス製の鋼管が用いられる。
【0017】
圧力計21は、枝管11の蓄圧器20と遮断弁22との間にそれぞれ設けられて、蓄圧器20内の水素の圧力をそれぞれ測定する。また、各圧力計21は、制御装置30と電気的に接続されて、この制御装置30に測定値を送信する。
【0018】
遮断弁22は、枝管11にそれぞれ設けられて、蓄圧器20からの水素の供給又は遮断を切り替える開閉弁である。各遮断弁22は、制御装置30と電気的に接続されて、この制御装置30の制御に応じて開閉される。
【0019】
供給配管12は、各枝管11の下流側と接続された配管である。すなわち、各枝管11は、それぞれの下流側で結合されて、供給配管12の一端と接続されている。供給配管12は、その配管内を流れる水素の圧力が高圧となることから、金属製であることが望ましいものの、その材質については特に限定されるものではない。一般的に、供給配管12には、ステンレス製の鋼管が用いられる。
【0020】
調節弁13は、供給配管12に設けられて、その開度調節により水素の流量を調整するニードル弁である。調節弁13は、制御装置30と電気的に接続されて、この制御装置30の制御に応じて開度が調節される。
【0021】
遮断弁14は、供給配管12の調節弁13よりも下流側に設けられて、水素の供給又は遮断を切り替える開閉弁である。遮断弁14は、制御装置30と電気的に接続されて、この制御装置30の制御に応じて開閉される。
【0022】
圧力計15は、供給配管12の遮断弁14とプレクーラー16との間に設けられて、供給配管12内を流れる水素の圧力を測定する。また、圧力計15は、制御装置30と電気的に接続されて、この制御装置30に測定値を送信する。圧力計15によって測定された水素の圧力値は、FCV2の車載タンク3内の圧力と略一致する。圧力計15には、例えば圧力トランスミッターが用いられている。但し、圧力計15については、圧力が測定できるものであれば、これに限定されるものではない。
【0023】
プレクーラー16は、供給配管12の遮断弁14よりも下流側に設けられて、水素を予め冷却(プレークール)するものである。本実施形態の水素充填システム1では、プレクーラー16により水素を約−40℃に冷却することで、FCV2の車載タンク3に水素を急速に充填(急速充填)することが可能となっている。
【0024】
プレクーラー16の下流側には、FCV2側のレセプタクル4に対して着脱自在に連結されるノズル17と、ノズル17に接続されたホース18とが設けられている。
【0025】
ノズル17は、図2に示すように、ワンタッチ着脱式のコネクタ構造を有し、FCV2側のレセプタクル4に差し込むことによって、レセプタクル4と連結することが可能となっている。また、ノズル17は、充填が終了しホース18内が減圧されるまで、レセプタクル4から抜き取れない仕組みとなっている。
【0026】
ホース18は、高耐圧性の水素充填用ホースからなり、プレクーラー16から延長されると共に、その先端にノズル17が取り付けられている。なお、ノズル17とホース18との接続部分には、軸回りに回転可能な回転ジョイントを設けてもよい。
【0027】
制御装置30は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)や、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含むメモリ(主記憶装置)、HDD(Hard Disk Drive)などの補助記憶装置等を備えたコンピュータである。制御装置30は、CPUがROMやHDDに格納されている制御プログラムをRAMに展開して実行し、その処理結果に応じて、各部の制御を行う。
【0028】
なお、制御装置30の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0029】
また、制御プログラムは、コンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。記録媒体としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記録媒体、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto optical)ディスク等の光学記録媒体、SSD(Solid State Drive)やUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の半導体メモリなどを挙げることができる。また、制御プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0030】
制御装置30は、各圧力計21及び圧力計15から送信された圧力の測定値を受信する。制御装置30は、受信した圧力の測定値を参照しながら、各遮断弁22及び遮断弁14を開閉する制御、並びに、調節弁13の開閉及びその開度を調節する制御を行う。
【0031】
以上のような構成を有する水素充填システム1では、図3に示すように、FCV2側のレセプタクル4にノズル17を差し込むことによって互いに連結した状態とする。この状態で、ノズル17に接続されたホース18を介してプレクーラー16により冷却された水素を供給し、FCV2側の車載タンク3に水素を充填する。
【0032】
ところで、本実施形態の水素充填システム1では、図2及び図3に示すように、少なくともレセプタクル4とノズル17との連結部分を覆うカバー部材31と、カバー部材31の内側に不活性ガスGを供給する不活性ガス供給機構32とを備えている。
【0033】
カバー部材31は、一端が開口した略有底円筒状の部材からなる。また、カバー部材31の底面中央には、ホース18を貫通させる貫通孔31aが設けられている。これにより、カバー部材31は、貫通孔31aにホース18を貫通させた状態で、このホース18の延長方向にスライド自在に取り付けられている。
【0034】
本実施形態のカバー部材31は、例えば透明又は半透明な難燃性の強化プラスチックからなる。これにより、レセプタクル4とノズル17との連結部分を覆った状態のまま、この連結部分を視認することが可能となっている。
【0035】
なお、カバー部材31は、上述した透明又は半透明な部材からなるものに限らず、その一部に透明又は半透明な部分(窓部)を設けた構成としてもよい。この場合も、窓部を通してレセプタクル4とノズル17との連結部分を視認することが可能である。なお、カバー部材31には、難燃性を有し且つ低温時でもある程度の強度持った材質のものを用いることが好ましい。
【0036】
また、カバー部材31の形状については、上述した有底円筒状に限らず、例えば有底角筒状など、その形状を適宜変更することが可能である。さらに、カバー部材31の周壁を蛇腹状に形成することによって、長さ方向に伸縮自在とすることも可能である。この場合、カバー部材31を縮めることによって、小型化を図ることが可能である。
【0037】
不活性ガス供給機構32は、ガスボンベ33と、不活性ガス供給配管34と、流量調整弁35とを備えている。ガスボンベ33は、不活性ガス供給源として、例えば窒素が充填された耐圧容器からなる。ガスボンベ33は、不活性ガス供給配管34の一端側と接続されている。不活性ガス供給配管34の他端側は、カバー部材31の内側に挿入された状態で接続されている。
【0038】
流量調整弁35は、不活性ガス供給配管34に設けられて、カバー部材31の内側に供給される不活性ガスGの流量を調整する。なお、不活性ガスGの流量は、万が一微量な水素が漏洩しても爆発限界未満となる流量とすることが望ましい。
【0039】
本実施形態の水素充填システム1では、レセプタクル4とノズル17との連結部分と共に、ノズル17とホース18との接続部分をカバー部材31で覆った状態とする。この状態で、不活性ガス供給機構32によりカバー部材31の内側に不活性ガスGを供給する。
【0040】
不活性ガスGは、ホース18を介して供給される水素の温度(例えば−40℃)よりも低い露点温度を有している。これにより、カバー部材31の内側は、不活性ガスGで満たされた状態となる。なお、本実施形態では、不活性ガスGとして窒素を用いているが、これに限定されることなく、例えばアルゴンなどの希ガスを用いることも可能である。また、不活性ガスGの圧力については、特に限定されないものの、本実施形態では、例えば不活性ガスGの圧力を0.3MPaGとしている。
【0041】
カバー部材31が連結部分を覆った状態のとき、このカバー部材31の内側は密閉されている必要はなく、カバー部材31の外側に適度に不活性ガスGが漏れ出すようにすればよい。一方、カバー部材31の内側を密閉する場合は、カバー部材31の一端側とレセプタクル4の周囲との接触部分と、カバー部材31の貫通孔31aとホース18との接触部分について、互いに封止(シール)した構造を採用すればよい。
【0042】
本実施形態では、カバー部材31の内側を不活性ガスGで満たした後に、不活性ガスGの供給を停止してもよい。一方、水素の充填時に、不活性ガス供給機構32による不活性ガスGの供給を継続することも可能である。
【0043】
これにより、水素の充填時に、レセプタクル4とノズル17との連結部分が水素により冷却されたとしても、カバー部材31の内側が不活性ガスGで満たされた状態となっているため、この連結部分に結露が発生することを防ぐことが可能である。
【0044】
また、本実施形態では、ノズル17とホース18との接続部分をカバー部材31で覆うことによって、この接続部分に折り曲げ方向の負荷が加わることを回避できる。これにより、接続部分の破損や、それに伴う水素の漏洩等を防ぐことが可能である。
【0045】
さらに、本実施形態では、仮にレセプタクル4とノズル17との連結部分から水素が漏洩したとしても、カバー部材31の内側に供給される不活性ガスGによって、水素の引火を防ぐことが可能である。
【0046】
また、不活性ガス供給機構32は、上記図3に示す構成に加えて、例えば図4に示すように、不活性ガスGを加熱する加熱部36と、不活性ガスGの温度を測定する温度測定器37と、温度測定器37が測定した不活性ガスGの温度に基づいて、加熱部36の駆動を制御しながら、不活性ガスGの温度を調整する温度制御部38とを備えた構成としてもよい。
【0047】
この構成の場合、水素の充填が終了する直前又は直後に、加熱部36を駆動させ、加熱された不活性ガスGをカバー部材31の内側に供給することが好ましい。これは、充填中の水素が加熱されないようにするためであり、充填中はレセプタクル4とノズル17との連結部分を低温とすることが望ましい。なお、水素の充填が終了するタイミング(加熱された不活性ガスGを供給するタイミング)は、上述した圧力計15が測定した水素の圧力から検知することが可能である。
【0048】
これにより、レセプタクル4とノズル17との連結部分に結露が発生することを防ぐことが可能である。また、仮に連結部分が凍結した場合でも、加熱された不活性ガスGにより凍結部分を融解できるため、ノズル17がレセプタクル4に固着し、充填終了後にノズルの取り外しが困難となるといったことを防止できる。
【0049】
以上のように、本実施形態の水素充填システムでは、レセプタクル4とノズル17との連結部分に結露が発生することを防止しつつ、水素の急速充填を適切に行うことが可能である。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、水素の充填対象となる車両として、FCV2を例示しているが、FCV2に限らず、水素を燃料ガスとして用いる車両であればよい。また、FCV2の燃料ガスとしては、上述した水素に限らず、電気化学反応によって電力を取り出させるガスであればよく、水素以外のガスを含むものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…水素充填システム 2…FCV(車両) 3…車載タンク 4…レセプタクル 11(11−1〜11−N)…枝管 12…供給配管 13…調節弁 14…遮断弁 15…圧力計 16…プレクーラー 17…ノズル 18…ホース 20(20−1〜20−N)…蓄圧器 21(21−1〜21−N)…圧力計 22(22−1〜22−N)…遮断弁 30…制御装置 31…カバー部材 32…不活性ガス供給機構 33…ガスボンベ(不活性ガス供給源) 34…不活性ガス供給配管 35…流量調整弁 36…加熱部 37…温度測定器 38…温度制御部 G…不活性ガス
【要約】
【課題】レセプタクルとノズルとの連結部分に結露が発生することを防止しつつ、水素の急速充填に対応可能とした水素充填方法を提供する。
【解決手段】車両側のレセプタクル4にノズル17を差し込むことによって互いに連結した状態とし、ノズル17に接続されたホース18を介してプレクーラーにより冷却された水素を供給し、車両側のタンクに水素を充填する水素充填方法であって、少なくともレセプタクル4とノズル17との連結部分をカバー部材31で覆った状態とし、このカバー部材31の内側に不活性ガスGを供給する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4