(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ドア安全装置の作動時間が前記第1の所定時間よりも短い第2の所定時間に達したときに、行先階の登録モードを前記第1のモードから前記第2のモードに切り替えることを利用者に伝える音声アナウンスを出力し、
前記音声アナウンスを出力した後に前記ドア安全装置の作動が途切れずに作動時間が前記第1の所定時間に達すると、行先階の登録モードを前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える
請求項1に記載のエレベータの行先階登録方法。
前記ドア安全装置の作動時間が前記第1の所定時間に達し、かつ、前記ドアの開閉を指示する開ボタンおよび閉ボタンが同時に操作された場合に、行先階の登録モードを前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える
請求項3に記載のエレベータの行先階登録方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係るエレベータの行先階登録方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。実施形態に係るエレベータの行先階登録方法は、利用者が視覚障害者であることを適切に判断して視覚障害者に適した方法で行先階の登録を可能とし、かつ、利用者がかご内に閉じ込められる不都合を有効に防止できるようにしたものである。
【0009】
実施形態に係るエレベータの行先階登録方法を適用可能なエレベータは、ドア安全装置を備えたエレベータである。ドア安全装置は、エレベータの乗降口に滞留する利用者または物体を検知して、その乗降口を開閉するドアの閉動作を制限するものである。ドア安全装置としては、ドアに取り付けられたセーフティシューが押されると安全スイッチがオンして閉まりかけのドアを開く機械式や、乗降口に設けられた光電管センサにより利用者を検知する光電管式、乗降口に設けられたマルチビームセンサにより利用者を多角的に検知するマルチビーム式など、様々な方式のものがある。本実施形態では、機械式のドア安全装置を想定するが、他の方式であってもよい。
【0010】
また、エレベータの行先階の登録は、一般的に、利用者がかご内に設けられたかご操作盤を操作することで行われる。本実施形態では、この利用者が操作するかご操作盤として、タッチパネルを備えたものを想定する。タッチパネルを備えたかご操作盤は、押ボタン式のかご操作盤と比べて表示能力が高く、様々な情報を利用者に提供できることに加え、表示レイアウトの柔軟性に優れるといった長所がある。
【0011】
タッチパネルを備えたかご操作盤は、通常、行先階として登録可能な階床を表示し、タッチパネルに表示した階床のうちのいずれかの階床の表示領域に対する利用者の接触を検知して、その階床を行先階に登録する。このため、利用者が視覚障害者である場合、行先階として登録したい階床の表示領域に正しく触れることが難しく、誤操作が生じやすい。そこで、本実施形態では、行先階の登録モードとして、上述のタッチパネルを備えたかご操作盤の通常の操作に基づくモード(第1のモード)のほかに、視覚障害者用のモード(第2のモード)を設ける。
【0012】
視覚障害者用の第2のモードは、利用者の視覚に依存せずに行先階を登録する操作を行えるようにしたモードであり、様々な方法が考えられる。本実施形態では、第2のモードとして、利用者が発話する音声を音声認識することで特定される階床を行先階として登録するモード(音声入力モード)と、タッチパネル上で利用者が接触した位置に表示されている階床を音声により読み上げて、利用者の接触が途切れた位置に表示されている階床を行先階として登録するモード(音声読み上げモード)とを想定するが、他の方法であってもよい。
【0013】
利用者が視覚障害者である場合、エレベータの行先階を登録する操作を行う際に、操作に手間取ってかご内に閉じ込められることがないように、乗降口を開閉するドアを手で押さえてドアが閉まらないようにしながら、かご操作盤の操作を行うことが多い。ドア安全装置が設けられたエレベータでは、利用者がドアを手で押さえている間、ドア安全装置が作動してドアの開状態が維持される。そこで、本実施形態では、利用者が視覚障害者であるか否かを判断するための情報として、ドア安全装置の作動時間を利用する。すなわち、ドア安全装置の作動時間が第1の所定時間に達すると、利用者が視覚障害者であると見做して、行先階の登録モードを第1のモードから第2のモードに切り替える。
【0014】
また、本実施形態では、行先階の登録モードを第1のモードから第2のモードに切り替えた後、第2のモードによる行先階の登録が完了するまでの間は、ドア安全装置が作動しているか否かに関わらずドアの開状態を維持する。そして、行先階の登録が完了すると、ドアの閉動作を許可する。これにより、視覚障害者がかご内に閉じ込められる不都合を有効に防止することができる。
【0015】
以下では、視覚障害者用の第2のモードとして上述の音声入力モードを用いる例を第1の実施形態、音声読み上げモードを用いる例を第2の実施形態として、より詳細な実施形態を説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
ドア安全装置は、上述したように、エレベータの乗降口に滞留する利用者または物体を検知して、その乗降口を開閉するドアの閉動作を制限するものであり、本実施形態では機械式のドア安全装置を用いるものとする。機械式のドア安全装置の一例を
図1に示す。この
図1に示すドア安全装置20は、乗降口を開閉するドア50の端縁部に沿って設けられたセーフティシュー21と、このセーフティシュー21をドア50に対してスライド可能に支持するリンク22,23と、安全スイッチ24とを備える。セーフティシュー21は、リンク22,23による支持構造によって、押されたときにドア50に対して斜め上方にスライドして、安全スイッチ24をオンにする。これによりドア安全装置20が作動し、ドア50を駆動するドア駆動装置に作動信号が送られ、ドア50が閉まりかけであっても開くようになっている。
【0017】
本実施形態では、ドア安全装置20の作動信号がドア駆動装置だけでなく、エレベータのかご内に設置されたかご操作盤にも送られる。かご操作盤は、ドア安全装置20の作動信号を監視して、ドア安全装置20の作動が継続している時間である作動時間を計測する。そして、ドア安全装置20の作動時間が第1の所定時間に達すると、行先階の登録モードを第1のモード(以下、「通常モード」と呼ぶ。)から視覚障害者用の第2のモード(音声入力モード)に切り替える。
【0018】
図2は、かご操作盤の外観の一例を示す図である。この
図2に示すかご操作盤10は、タッチパネル11と、インジケータ12と、スピーカ13と、マイク14と、開ボタン15aおよび閉ボタン15bとを備える。
【0019】
タッチパネル11は、液晶パネルなどの表示装置とタッチパッドなどの位置入力装置とを組み合わせた電子部品であり、行先階を登録する利用者の操作を受け付けるインタフェースとして機能する。タッチパネル11は、かごが着床可能な階床(停止階)ごとの階床ボタン16を表示するとともに、当該タッチパネル11に対する接触を検知する。かご操作盤10が上述の通常モードで動作する場合、タッチパネル11に表示されたいずれかの階床ボタン16に接触する操作が検知されると、その階床ボタン16に応じた階床が行先階として登録される。
【0020】
インジケータ12は、かごの運行状況を利用者に伝える表示装置であり、例えば、かごの現在位置を示す階床表示やかごの移動方向を示す方向表示などを表示する。スピーカ13は、各種の音声を出力する音声出力装置である。マイク14は、利用者が発話した音声を収録する音声入力装置である。開ボタン15aおよび閉ボタン15bは、ドア50を開閉する際に利用者が操作する押ボタンである。
【0021】
図3は、かご操作盤10の構成例を示すブロック図である。かご操作盤10は、
図3に示すように、上述のタッチパネル11、インジケータ12、スピーカ13、マイク14、開ボタン15aや閉ボタン15bなどの押ボタン15に加えて、これらの動作を制御するコントロールユニット18を備える。コントロールユニット18は、ドア安全装置20、ドア駆動装置30およびエレベータ制御装置40に接続されている。ドア駆動装置30は、モータなどの動力源を用いてドア50を駆動するものである。エレベータ制御装置40は、エレベータの運行を制御するものであり、かご操作盤10から行先階が指定されると、その行先階を登録してかごを行先階に移動させるように制御する機能を持つ。
【0022】
コントロールユニット18は、例えば、CPUやGPUなどのプロセッサと、プロセッサのワークエリアとして利用されるRAMなどの主記憶メモリと、制御プログラムを格納するROMなどのプログラムメモリとを備える。この場合、プロセッサがプログラムメモリに格納された制御プログラムを主記憶メモリ上に読み出して実行することによって、本実施形態に係るエレベータの行先階登録方法を実施するための主要な機能をコントロールユニット18にて実現することができる。
【0023】
すなわち、コントロールユニット18は、ドア安全装置20の作動時間を計測する機能を備える。また、コントロールユニット18は、ドア安全装置20の作動時間が第1の所定時間に達すると、行先階の登録モードを、タッチパネル11を用いた通常モードから、マイク14を用いた音声入力モードに切り替える機能を備える。この際、コントロールユニット18は、ドア安全装置20の作動時間が第1の所定時間よりも短い第2の所定時間に達した段階で、行先階の登録モードを通常モードから音声入力モードに切り替えることを利用者に伝える音声アナウンスをスピーカ13から出力し、その後、ドア安全装置20の作動が途切れることなく作動時間が第1の所定時間に達すると、行先階の登録モードを通常モードから音声入力モードに切り替えるようにしてもよい。なお、本実施形態では一例として、第1の所定時間を10秒、第2の所定時間を5秒として説明するが、第1の所定時間および第2の所定時間はこれに限らず、適切な時間を事前に定めておけばよい。
【0024】
また、コントロールユニット18は、行先階の登録モードを音声入力モードに切り替えると、音声入力モードにより行先階を登録する機能、すなわち、マイク14で収録した利用者の発話音声を音声認識することで特定される階床を行先階に登録する機能を備える。また、コントロールユニット18は、行先階の登録が完了するまでは、ドア安全装置20の作動に関わらずドアの開状態を維持し、行先階の登録が完了するとドアの閉動作を許可する機能を備える。
【0025】
次に、本実施形態に係るエレベータの行先階登録方法を適用したエレベータの動作を説明する。
図4は、かごがある階床のホールに着床してから行先階に向けて出発するまでの間の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、かごがホールに着床したときの行先階の登録モードは通常モードであるものとする。
【0026】
かごがある階床のホール60に着床すると、まず、ドア駆動装置30の駆動によって乗降口を開閉するドア50が開く(ステップS101)。その後、かご操作盤10のコントロールユニット18は、ドア安全装置20の作動信号を監視して、ドア安全装置20が作動したか否かを判定する(ステップS102)。ここで、ドア安全装置20が作動していなければ(ステップS102:No)、コントロールユニット18は、通常モードによる行先階の登録が完了したか否かを判定し(ステップS103)、通常モードによる行先階の登録が完了していなければ(ステップS103:No)、ステップS102に戻ってドア安全装置20の作動信号の監視を続ける。一方、通常モードによる行先階の登録が完了した場合は(ステップS103:Yes)、ステップS115に進む。
【0027】
また、コントロールユニット18は、ドア安全装置20が作動したことを検知すると(ステップS102:Yes)、ドア安全装置20の作動時間の計測を開始する(ステップS104)。そして、コントロールユニット18は、ドア安全装置20の作動が途切れることなく作動時間が5秒に達したか否かを判定し(ステップS105,ステップS106)、ドア安全装置20の作動が途切れることなく作動時間が5秒に達すると(ステップS105:No,ステップS106:Yes)、5秒後に通常モードから音声入力モードに切り替わる旨の音声アナウンスをスピーカ13から出力する(ステップS107)。一方、ドア安全装置20の作動時間が5秒に達する前に作動が途切れた場合は(ステップS105:Yes,ステップS106:No)、ステップS103に移行して通常モードによる行先階の登録を監視する。
【0028】
ステップS107で音声アナウンスを出力した場合、コントロールユニット18は、引き続き、ドア安全装置20の作動が途切れることなく作動時間が10秒に達したか否かを判定する(ステップS108,ステップS109)。そして、ドア安全装置20の作動が途切れることなく作動時間が10秒に達すると(ステップS108:No,ステップS109:Yes)、コントロールユニット18は、行先階の登録モードを通常モードから音声入力モードに切り替えて(ステップS110)、音声入力モードによる行先階登録の処理を開始する。なお、音声入力モードによる行先階登録の処理手順については後述する。一方、ドア安全装置20の作動時間が10秒に達する前に作動が途切れた場合は(ステップS108:Yes,ステップS109:No)、ステップS103に移行して通常モードによる行先階の登録を監視する。
【0029】
行先階の登録モードを音声入力モードに切り替えた後、コントロールユニット18は、音声入力モードによる行先階の登録が完了したか否かを判定する(ステップS111)。そして、行先階の登録モードを音声入力モードに切り替えてから、音声入力モードによる行先階の登録が完了することなく所定時間(例えば20秒)経過した場合(ステップS111:No,ステップS112:Yes)、コントロールユニット18は、行先階の登録モードを音声入力モードから通常モードに復帰させ(ステップS113)、ステップS102に戻って以降の処理を繰り返す。一方、音声入力モードに切り替えた後、所定時間が経過する前に音声入力モードによる行先階の登録が完了した場合は(ステップS111:Yes,ステップS112:No)、行先階の登録が完了した旨の音声アナウンスをスピーカ13から出力して(ステップS114)、ステップS115に進む。
【0030】
ステップS115では、行先階の登録がすでに完了したため、コントロールユニット18により乗降口を開閉するドア50の閉動作が許可され、ドア駆動装置30の駆動によって乗降口を開閉するドア50が閉じられる(ステップS115)。つまり、行先階の登録が完了するまではドア安全装置20が作動しているか否かに関わらずドア50の開状態が維持され、行先階の登録が完了するとドア50の閉動作が許可される。その後、エレベータ制御装置40の制御に従って、かごが行先階に向けて出発する。
【0031】
なお、以上の説明では、行先階の登録モードを通常モードから音声入力モードに切り替ると、タッチパネル11に表示された階床ボタン16に利用者が触れても行先階の登録は行われないものとしたが、音声入力モードに切り替えた後も、タッチパネル11上の階床ボタン16を触れることによる行先階の登録を行えるようにしてもよい。すなわち、行先階の登録モードとして、通常モードと音声入力モードとを組み合わせたモードを第2のモードとしてもよい。
【0032】
ここで、音声入力モードによる行先階登録の処理手順について説明する。
図5は、音声入力モードによる行先階登録の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0033】
かご操作盤10のコントロールユニット18は、行先階の登録モードを音声入力モードに切り替えると、まず、行先階を発話することによる音声入力を利用者に促す音声アナウンスをスピーカ13から出力する(ステップS201)。その後、コントロールユニット18は、マイク14をオンして(ステップS202)、マイク14で収録した音声データを記録し(ステップS203)、所定時間(例えば5秒)経過後にマイク14をオフする(ステップS204)。
【0034】
次に、コントロールユニット18は、ステップS203で記録した音声データの音量が基準値以上か否かを判定し(ステップS205)、音声データの音量が基準値未満であれば(ステップS205:No)、ステップS201に戻って以降の処理を繰り返す。一方、音声データの音量が基準値以上であれば(ステップS205:Yes)、コントロールユニット18は、ステップS203で記録した音声データに対する音声認識を行う(ステップS206)。
【0035】
音声データに対する音声認識を行った場合、コントロールユニット18は、その音声認識の結果から行先階を特定できるか否かを判定し(ステップS207)、行先階を特定できなければ(ステップS207:No)、ステップS201に戻って以降の処理を繰り返す。一方、行先階を特定できた場合は(ステップS207:Yes)、音声認識によって特定した行先階を登録して(ステップS208)、処理を終了する。
【0036】
なお、以上説明した処理手順では、マイク14で収録して記録した音声データの音量が基準値未満であったり、音声データに対する音声認識により行先階を特定できなかったりすると、利用者に音声入力を促す音声アナウンスをスピーカ13から繰り返し出力するようにしているが、このときの音声アナウンスの音量を時間の経過とともに変化させるようにしてもよい。例えば、行先階の登録モードが音声入力モードに切り替わってから所定時間(例えば10秒)が経過すると、音声アナウンスの音量を小さくすることが考えられる。
【0037】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態に係るエレベータの行先階登録方法によれば、ドア安全装置20の作動時間が第1の所定時間に達すると行先階の登録モードを通常モードから音声入力モードに切り替えて、利用者が発話した音声を音声認識することで行先階を登録できるようにしているので、利用者が視覚障害者であることを適切に判断して視覚障害者に適した方法で行先階の登録を適切に行うことができる。また、本実施形態に係るエレベータの行先階登録方法によれば、行先階の登録が完了するまでの間は、ドア安全装置20が作動しているか否かに関わらず、乗降口を開閉するドア50の開状態を維持し、行先階の登録が完了するとドア50の閉動作を許可するようにしているので、利用者がかご内に閉じ込められる不都合を有効に防止することができる。
【0038】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態は、視覚障害者用の第2のモードとして、音声入力モードに代えて音声読み上げモードを用いる点が第1の実施形態と異なる。以下では、第1の実施形態と重複する説明は適宜省略し、第1の実施形態との相違点のみを説明する。
【0039】
本実施形態では、かご操作盤10のコントロールユニット18が、ドア安全装置20の作動時間が第1の所定時間に達すると、行先階の登録モードを通常モードから音声読み上げモードに切り替えて、音声読み上げモードにより行先階の登録を行う機能を備える。音声読み上げモードは、上述したように、タッチパネル11上で利用者が接触した位置に表示されている階床ボタン16が示す階床を音声により読み上げて、利用者の接触が途切れた位置に表示されている階床ボタン16が示す階床を行先階として登録するモードである。コントロールユニット18のその他の機能は、第1の実施形態と同様である。
【0040】
ここで、本実施形態に係るエレベータの行先階登録方法を適用したエレベータの動作を説明する。
図6は、かごがある階床のホールに着床してから行先階に向けて出発するまでの間の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図6のフローチャートで示す一連の処理のうち、ステップS307の処理とステップS310からステップS312までの処理以外は、
図4に示した第1の実施形態における処理と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
本実施形態では、ステップS304でドア安全装置20の作動時間の計測を開始した後、ドア安全装置20の作動が途切れることなく作動時間が5秒に達すると(ステップS305:No,ステップS306:Yes)、かご操作盤10のコントロールユニット18が、5秒後に通常モードから音声読み上げモードに切り替わる旨の音声アナウンスをスピーカ13から出力する(ステップS307)。そして、ドア安全装置20の作動が途切れることなく作動時間が10秒に達すると(ステップS308:No,ステップS309:Yes)、コントロールユニット18は、行先階の登録モードを通常モードから音声読み上げモードに切り替えて(ステップS310)、音声入力モードによる行先階登録の処理を開始する。
【0042】
また、本実施形態では、行先階の登録モードを音声読み上げモードに切り替えてから、音声読み上げモードによる行先階の登録が完了することなく所定時間(例えば20秒)経過した場合(ステップS311:No,ステップS312:Yes)、コントロールユニット18が、行先階の登録モードを音声読み上げモードから通常モードに復帰させ(ステップS313)、ステップS302に戻って以降の処理を繰り返す。
【0043】
図7は、音声読み上げモードによる行先階登録の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0044】
かご操作盤10のコントロールユニット18は、行先階の登録モードを音声読み上げモードに切り替えると、まず、タッチパネル11をなぞるようにゆっくり触れることを促す音声アナウンスをスピーカ13から出力する(ステップS401)。そして、利用者が音声アナウンスに従ってタッチパネル11に触れると、コントロールユニット18は、タッチパネル11上の接触位置の座標を取得して(ステップS402)、タッチパネル11上に表示されたいずれかの階床ボタン16の表示領域に触れているか否かを判断する(ステップS403)。そして、利用者がいずれかの階床ボタン16の表示領域に触れていれば(ステップS403:Yes)、その階床ボタン16が示す階床を読み上げる音声をスピーカ13から出力する(ステップS404)。一方、利用者がいずれかの階床ボタン16の表示領域に触れていなければ(ステップS403:No)、ステップS402に戻って以降の処理を繰り返す。
【0045】
また、コントロールユニット18は、ステップS404で階床の読み上げを行った後に、利用者によるタッチパネル11への接触が途切れたか否かを判定し(ステップS405)、タッチパネル11への接触が途切れていなければ(ステップS405:No)、ステップS402に戻って以降の処理を繰り返す。一方、タッチパネル11への接触が途切れた場合(ステップS405:Yes)、コントロールユニット18は、接触が途切れた位置の座標がいずれかの階床ボタン16の表示領域内か否かを判定する(ステップS406)。そして、接触が途切れた位置の座標がいずれかの階床ボタン16の表示領域内であれば(ステップS406:Yes)、その階床ボタン16が示す階床を行先階として登録し(ステップS407)、処理を終了する。一方、接触が途切れた位置の座標がいずれかの階床ボタン16の表示領域内でなければ、行先階を登録できなかった旨の音声アナウンスをスピーカ13から出力し(ステップS408)、ステップS401に戻って以降の処理を繰り返す。
【0046】
以上のように、本実施形態に係るエレベータの行先階登録方法によれば、ドア安全装置20の作動時間が第1の所定時間に達すると行先階の登録モードを通常モードから音声読み上げモードに切り替えて、タッチパネル11上の接触位置にどの階床の階床ボタン16が表示されているかを音声により利用者に伝えることで、所望の行先階を登録できようにしているので、利用者が視覚障害者であることを適切に判断して視覚障害者に適した方法で行先階の登録を適切に行うことができる。また、本実施形態に係るエレベータの行先階登録方法によれば、第1の実施形態と同様に、行先階の登録が完了するまでの間は、ドア安全装置20が作動しているか否かに関わらず、乗降口を開閉するドア50の開状態を維持し、行先階の登録が完了するとドア50の閉動作を許可するようにしているので、利用者がかご内に閉じ込められる不都合を有効に防止することができる。
【0047】
<変形例>
なお、上述の第1の実施形態や第2の実施形態では、ドア安全装置20の作動時間が第1の所定時間に達したことを条件として、行先階の登録モードを第1のモードである通常モードから、視覚障害者用の第2のモードである音声入力モードまたは音声読み上げモードに切り替えるようにしているが、行先階の登録モードを第1のモードから第2のモードに切り替える条件として、他の条件を付加してもよい。
【0048】
例えば、タッチパネル11を備えたかご操作盤10の近傍に利用者が滞留している状態で、ドア安全装置20の作動時間が第1の所定時間に達した場合に、行先階の登録モードを第1のモードから第2のモードに切り替えるようにしてもよい。タッチパネル11を備えたかご操作盤10の近傍に利用者が滞留しているか否かは、例えば、かご操作盤10の近傍を検出範囲とする人感センサをかごに取り付けて、この人感センサが出力するセンサ信号をもとに判定することができる。また、かごの内部を撮影する監視用のカメラなどが設けられている場合は、このカメラにより撮影された画像を解析することで、かご操作盤10の近傍に利用者が滞留しているか否かを判定してもよい。また、かご内の乗客数などを検知するための荷重センサとは別に、かご操作盤10の近傍にかかる荷重を検出する荷重センサを取り付けて、この荷重センサが出力するセンサ信号をもとに、かご操作盤10の近傍に利用者が滞留しているか否かを判定してもよい。
【0049】
また、かご操作盤10のタッチパネル11上またはタッチパネル11の近傍に、視覚障害者による操作を補助するための点字領域が設けられている場合には、ドア安全装置20の作動時間が第1の所定時間に達し、かつ、点字領域への接触が検知された場合に、行先階の登録モードを第1のモードから第2のモードに切り替えるようにしてもよい。
【0050】
また、
図2に例示したかご操作盤10のように、タッチパネル11とは別の押ボタン15として開ボタン15aおよび閉ボタン15bが設けられている場合は、ドア安全装置20の作動時間が第1の所定時間に達し、かつ、開ボタン15aおよび閉ボタン15bが同時に操作された場合に、行先階の登録モードを第1のモードから第2のモードに切り替えるようにしてもよい。
【0051】
以上説明した変形例のように、行先階の登録モードを第1のモードから第2のモードに切り替える条件として、ドア安全装置20の作動時間が第1の所定時間に達したという条件だけでなく、他の条件も付加することにより、利用者が視覚障害者であることをより精度良く判断した上で、行先階の登録モードを視覚障害者用の第2のモードに切り替えることができる。
【0052】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、利用者が視覚障害者であることを適切に判断して視覚障害者に適した方法で行先階の登録を可能とし、かつ、利用者がかご内に閉じ込められる不都合を有効に防止できる。
【0053】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【課題】利用者が視覚障害者であることを適切に判断して視覚障害者に適した方法で行先階の登録を可能とし、かつ、利用者がかご内に閉じ込められる不都合を有効に防止できるエレベータの行先階登録方法を提供する。
【解決手段】エレベータの行先階登録方法は、エレベータの乗降口に滞留する利用者または物体を検知して該乗降口を開閉するドアの閉動作を制限するドア安全装置の作動時間を計測し、前記ドア安全装置の作動時間が第1の所定時間に達すると、行先階の登録モードを第1のモードから視覚障害者用の第2のモードに切り替え、前記第2のモードによる行先階の登録が完了するまで、前記ドア安全装置が作動しているか否かに関わらず前記ドアの開状態を維持し、前記第2のモードによる行先階の登録が完了すると、前記ドアの閉動作を許可する。