特許第6335375号(P6335375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キャラウェイ・ゴルフ・カンパニの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335375
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】重り付きゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20180521BHJP
【FI】
   A63B53/04 E
【請求項の数】17
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-148832(P2017-148832)
(22)【出願日】2017年8月1日
(62)【分割の表示】特願2015-190544(P2015-190544)の分割
【原出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-189700(P2017-189700A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】300044551
【氏名又は名称】キャラウェイ・ゴルフ・カンパニ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア ディー ウエストラム
(72)【発明者】
【氏名】ブルックス ロッシュ
(72)【発明者】
【氏名】クリス ジェイ ウィーランド
(72)【発明者】
【氏名】スコット アール マンワリング
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ドーソン
(72)【発明者】
【氏名】イリナ イヴァノヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル ビー エリクソン
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー シー ライス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エイ セルガ
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第08900070(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0255936(US,A1)
【文献】 特開2008−080095(JP,A)
【文献】 特開2003−325710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部ライン、ソール、ヒールサイド、トオサイド、前側開口、および突条部を有するボディと、
前記前側開口を覆う打撃フェースを有するフェース要素と
を有するアイアンタイプゴルフクラブヘッドであって、
前記突条部は、前記前側開口の近傍に位置し、前記打撃フェースに接触しないように前記フェース要素に向けて延び、
前記突条部は、前記ヒールサイドから前記トオサイドに向けて延び、いかなる空洞領域を持たないものであり、
前記フェース要素は、第1の長さを持つ上部フランジと、第2の長さを持つ下部フランジを有するフェースカップであり、ここで前記第1の長さおよび前記第2の長さは、前記打撃フェースから後方に延びる方向における長さであり、
前記第1の長さは前記第2の長さより小さく、
前記上部フランジおよび下部フランジの各々は、前記打撃フェースから後方に延び、
使用中の前記アイアンタイプゴルフクラブヘッドの音を和らげるための材料が、前記突条部の前側面に加えられ、前記打撃フェースの背面と接触しており、
前記フェース要素は前記ボディに溶接シームを形成して溶接されている、前記アイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記突条部は、前記前側開口を越えて延びる、請求項1に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記第2の長さは5mm〜10mmの範囲である、請求項1に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記前側開口は、前記ボディが背面開口を有するように前記ボディを完全に貫通している、請求項1に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
バックキャップを更に有し、前記バックキャップは前記背面開口を覆う、請求項4に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記突条部は、上部面と前側面を有し、前記上部面は、前記前側面に対して略直交して配置される、請求項1に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記下部フランジは、厚さが変化する厚みを有する、請求項1に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記突条部は、前記ボディに一体的に鋳造成形される、請求項1に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記材料は、プラスチック、複合材料、およびゴムからなる群から選択される、請求項1に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記打撃フェースは、厚さが変化する厚みを有する、請求項1に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
打撃フェース、上部フランジ、および下部フランジを有するフェースカップと、
頂部ライン、ソール、ヒールサイド、トオサイド、前側開口、および突条部を有するボディと
を有するアイアンタイプゴルフクラブヘッドであって、
前記前側開口は、前記ボディが背面開口を有するように前記ボディを完全に貫通し、
前記上部フランジは第1の長さを持ち、
前記下部フランジは、前記第1の長さより長い第2の長さを持ち、ここで前記第1の長さおよび前記第2の長さは、前記打撃フェースから後方に延びる方向における長さであり、
前記突条部は、前記前側開口の近傍に位置し、前記フェースカップのいかなる部分にも接触しない状態で前記前側開口を越えて前記フェースカップに向けて延び、
前記上部フランジと前記下部フランジの各々は前記打撃フェースから後方に延び、
前記突条部は、前記ソールの少なくとも一部を跨るように2ヶ所において前記ソールに固定されている、前記アイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
前記フェースカップは、前記ボディに溶接シームを形成して溶接されている、請求項11に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
前記溶接シームは一定の厚みを有する、請求項12に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
更に、背面キャップを有し、前記背面キャップは前記ボディに固定され、前記背面開口を覆う、請求項11に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
使用中の前記アイアンタイプゴルフクラブヘッドの音を和らげるための材料が、前記突条部の前側面に加えられ、前記打撃フェースの背面と接触している、請求項11に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
前記材料がゴムである、請求項15に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
前記材料が、前記打撃フェースの前記背面の中心から少なくとも0.5インチ離れ、前記下部フランジから垂直方向に0.075インチの位置に配置されている、請求項15に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[クロスリファレンス]
本出願は、ここに全てを参照として組み入れられる2012年4月19日に出願された米国仮出願第61/635,363号に基づいて優先権を主張した2014年9月4日に米国特許第8,257,195号として特許され、2012年5月12日に出願された米国特許出願13/475,497号の継続出願である、21012年12月11日に米国特許第8,328,661号として特許され、2012年7月26日に出願された米国特許出願第13/559,279号の継続出願である、2013年4月9日に米国特許第8,414,420号として特許され、2012年11月2日に出願された米国特許出願第13/667,692号の継続出願である、2013年4月23日に米国特許第8,425,346号として特許され、2013年1月28日に出願された米国特許出願13/751,447号の一部継続出願である、2013年3月7日に出願された米国特許出願13/788,173号の一部継続出願である、2013年3月12日に出願された米国特許出願13/797,507号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、ゴルフクラブヘッドの重心をフェースとソールに近づけて位置させる内部重りを持つゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0003】
ゴルファーはしばしば重心が低く、フェースに近い位置にあり、プレイの間、ゴルフボールをコントロールし易いゴルフクラブを使用することを好む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改良された内部重りを持つゴルフクラブヘッドに対する要求が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、頂部ライン、ソール、ヒールサイド、トオサイド、前側開口及び突条部を有するボディと、前記前側開口を覆う打撃フェースを有するフェース要素を備えるアイアンタイプゴルフクラブヘッドであり、前記突条部は前記前側開口の近傍に位置し、前記打撃フェースに接触することなく前記フェース要素の方向に延びており、前記突条部は前記ヒールサイドから前記トオサイドに向けて延び、いかなる空所部分を持たない。いくつかの実施例においては、前記突条部は、前記前側開口を越えて延びることができる。他の実施例においては、前記フェース要素は上部フランジと下部フランジを有し、各上部フランジと下部フランジは前記打撃フェースから離れる方向に延びるようにしたフェースカップとすることができる。更なる実施例においては、上部フランジは第1の長さを持ち、下側フランジは第2の長さを持ち、前記第1の長さは前記第2の長さより短くされる。更なる実施例においては、前記第2の長さは5mm〜10mmの範囲である。他の実施例においては、前記下部フランジは厚みが変化するようにしている。
【0006】
他の実施例においては、フェース要素は溶接ラインを形成してボディに溶接され、突条部は溶接ラインの上に延びるようにすることができる。他の実施例においては、前側開口はボディを完全に貫通して延びてボディが背面開口を持つようにすることができ、更なる実施例においては、アイアンタイプゴルフクラブヘッドは、前記背面開口を覆う背面キャップを持つようにすることができる。他の実施例においては、前記突条部は上部面と前側面を持ち、上部面は前側面に略直交するように配置される。ある実施例においては、前記突条部は前記ボディと一体的に鋳造される。
【0007】
本発明の他の態様は、打撃フェース、上部フランジ、下部フランジを有するフェースカップと、頂部ライン、ソール、ヒールサイド、トオサイド、前側開口及び突条部を有するボディとを備えるアイアンタイプゴルフクラブヘッドであり、前記前側開口は、前記ボディを完全に貫通して背面開口を形成し、前記上部フランジは第1の長さを有し、前記下部フランジは前記第1の長さより長い第2の長さを有し、前記打撃フェース異なる厚さを有し、前記突条部は前記前側開口の近傍に位置し、前記前側開口を通してフェース要素に向けて前記フェースカップに接触しないように延びている。ある実施例においては、前記突条部は、少なくともソールの一部に跨り、更なる実施例においては、アイアンタイプゴルフクラブヘッドは、複数のピンを有し、各ピンは前記ソールと前記突条部の間に配置される。
【0008】
ある実施例においては、前記突条部は、複数の材料で形成される。更なる実施例においては、複数の材料のうちの少なくとも1つは、タングステン合金である。他の実施例においては、前記フェースカップは、一定の厚さの溶接シームを形成するようにボディに溶接される。他の実施例においては、アイアンタイプゴルフクラブヘッドは、前記ボディに固定され、前記背面開口を覆う背面キャップを持つことができる。
【0009】
他の実施例においては、前記突条部は上部重り部分と下部支持部分を有し、前記上部重り部分は第1の密度を持つ第1材料から形成し、前記下部支持部分は第2の密度を持つ第2材料から形成することができ、前記第1の密度は前記第2の密度より大きくすることができる。
【0010】
以上、本発明の概略を述べたが、上述の及び更なる目的、特徴とそれらの利点は、以下の本発明の詳細な説明と参照図面から当業者が理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施例の前側斜視図である。
図2図1の実施例のフェース要素を除いた斜視図である。
図3図1の線3-3に沿った断面図である。
図4】本発明の第2実施例の前側斜視図である。
図5A図4における線5A,5B-5A,5Bに沿った断面図である。
図5B図4における線5A,5B-5A,5Bに沿った断面の代替的構成を示す図である。
図6】本発明の第3実施例の前側斜視図である。
図7A図6に示された実施例の線7A,7B-7A,7Bに沿った断面図である。
図7B図6のに示された実施例の線7A,7B-7A,7Bに沿った断面の代替的構成を示す図である。
図8】本発明の第4実施例の前側斜視図である。
図9図8に示された実施例のフェース要素を除いた図である。
図10図8における線10-10に沿った断面図である。
図11A図8に示された実施例に用いる重りバー構造の正面図である。
図11B図8に示された実施例に用いる重りバー構造の正面図である。
図11C図8に示された実施例に用いる重りバー構造の正面図である。
図11D図8に示された実施例に用いる重りバー構造の正面図である。
図11E図8に示された実施例に用いる重りバー構造の正面図である。
図11F図8に示された実施例に用いる重りバー構造の正面図である。
図12】本発明の第5実施例の前側斜視図である。
図13図12に示された実施例のフェース要素を除いた図である。
図14図12に示された実施例の線14-14に沿った断面図である。
図15】本発明の第6実施例の前側斜視図である。
図16図15に示された実施例の線16-16に沿った断面図である。
図17】本発明の第7実施例の実施例の前側斜視図である。
図18図17に示された実施例のフェース要素を除いた左側斜視図である。
図19図17に示された実施例のフェース要素を除いた右側斜視図である。
図20図17に示された実施例のフェース要素を除いた前側斜視図である。
図21図18に示された実施例の線21-21に沿った断面図である。
図22図17に示された実施例の線22-22に沿った断面図である。
図23A】本発明の第8実施例の前側斜視図である。
図23B】本発明の第9実施例の前側斜視図である。
図24】上述の実施例のいずれも包含するように構成されたマルチ・ピースゴルフクラブヘッドの分解図である。
図25】本発明の第10実施例の背面図である。
図26図25に示された実施例の他の背面図である。
図27図25に示された実施例のソール側からの斜視図である。
図28図26に示された実施例の線28-28に沿った断面図である。
図29】本発明の第11実施例の背面斜視図である。
図30図29に示された実施例の分解図である。
図31図29に示された実施例の線31-31に沿った断面図である。
図32図30に示されたフェースカップの線30-30に沿った断面図である。
図33】本発明の第12実施例の断面図である。
図34】本発明の第13実施例の断面図である。
図35】本発明の第14実施例の断面図である。
図36】本発明の第15実施例の断面図である。
図37】本発明の第16実施例の断面図である。
図38】本発明の第17実施例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、全体として、ゴルフクラブの重心(GC)をゴルフクラブヘッドのフェースとソールの両方に近づける内部重りを持つゴルフクラブヘッドに向けられている。特に、本発明は、特にフェアウエイウッド、ハイブリッド及びアイアンの小さいゴルフクラブヘッドの内部に一体的に形成される重りに向けられている。
【0013】
本発明の第1実施例が図1−3に示されている。第1実施例のゴルフクラブヘッド10はフェアウエイウッドヘッドであり、ソール30,クラウン40,ホーゼル50,キャビティ22及び重りリップ80を持つボディ20と、打撃フェース62,返り部分64及びキャビティ66を有するフェース要素60を含んでいる。打撃フェース62は好ましくは高い特性時間(CT)を持つ。フェース要素60は、好ましくは6-4チタニウム又はステンレススチールのような合金で一体的に鍛造により形成され、一方、ボディ60は、好ましくはそのような合金で一体的に鋳造成形される。他の実施例においては、フェース要素60とボディは、ゴルフクラブの製造に一般的に用いられる他の材料により異なる方法で製造することができる。ある実施例においては、フェース要素60とボディ20は一体的に形成される。ボディ20は、更に、重りパッド、厚くされた壁領域、或いは取り外し可能な重り螺子(図示せず)のような他の重り要素を備えることができ、製造業者やユーザーが任意の重さを調整することができるようにしている。
【0014】
一旦、ボディ20とフェース要素60が形成されると、それらはボディ20の前面の開口25に沿って一体に溶接される。図3に示される溶接シーム70は一定の比較的小さい厚み、好ましくは略0.031インチの厚みを持つ。溶接シーム70に影響を与えることなしに重心CGを低く、前側に位置させることを達成するために、重りリップ80が開口25の近傍でキャビティ22の内部に配置される。この構造は、溶接の問題を避けつつ、任意の質量をクラブヘッド内で十分に低く、前側に位置させることを可能としている。
【0015】
重りリップ80は、好ましくはボディ20内に鋳造成形されるが、他の実施例ではボディ20に溶接、或いは機械的に固定することができ、ソール30から上方に延び、ボディ20の開口25から突出するようにされている。ゴルフクラブヘッド10が組み立てられると、重りリップ80は打撃フェース62に接触しないようにフェース要素60のキャビティ66内に延びる。重りリップ80は好ましくはボディ20の質量の少なくとも20%、より好ましくはボディの30%を有する。例えば、ゴルフクラブヘッド10は、表1に示されるような重さの分布を持つことができる。
【0016】
【表1】

図4図5Aに示される他の実施例においては、本発明の突条部に対応する重りリップ80の上部重り部分84の下に溝82が延びて、オーバーハング構造を形成し、これにより重りリップ80の重量を減らしており、これにより、ゴルフクラブヘッド10の全体の重量を減らしながら、一方において、フェース要素60の近傍に十分な重量を維持して重心の位置を低く、前方に位置させている。
図5Bに示される更なる実施例においては、重りリップ80は複数材料で形成され、重りリップ80の他の部分より高い密度の材料から成る上部重り部分84を持つようにしている。特に、重りリップ80の底部の支持部分86はステンレススチールで形成され、一方。上部重り部分84はタングステン合金から成り、重りリップ80の底部の支持部分86に溶接或いは他の手段により固定される。この実施例においては、溝82は、好ましくは、フェース要素60から僅かに離れて底部支持部分86内に延び、高密度の上部重り部分によって与えられる付加的な重量をより好適に相殺するようにしている。
【0017】
図6,7A及び7Bに示されるように、他の実施例では、重りリップ80は、フェース要素60から内方に、且つクラウン40の方向に上方に延び、フック状の形状とされる溝82と共に、より大きな、四角形状の上部重り部分84とより狭い下部支持部分86を含んでいる。図5Bに示した実施例のように、図7Bに示される実施例においては、上部重り部分84はタングステン合金のような高密度材料で別片として形成され、下部支持部分86に溶接、接着、或いは他の固定手段により固定される。このことは、ゴルフクラブヘッドの製造においてより特注製造機能を可能にするものであり、重りリップ80の材料特性を調整することにより、エンドユーザーに合わせてGCや慣性モーメントを調整することができる。
【0018】
図8及び9に示される他の実施例においては、ゴルフクラブヘッド10のボディ20は突条部に対応する重りバー90を含み、この重りバー90は、ボディ20の内部のゴルフクラブヘッド10のヒールサイド24とトオサイド26のみに固定され、ソール30の全体に効果的に跨るようにしている。この構造は、ゴルフクラブヘッド10がボールにインパクトする間、重りバー90がトーションスプリングとして機能するため、質量特性に過度の影響を与えることなく、フェース要素60とソール30の活性化を可能とする。いくつかの実施例においては、重りバー90はクラウン90及びヒールサイド24とトオサイド26と一体に鋳造成形され、鋳造終了後にソール30が固定されるが、他の実施例においては、重りバー90は別体として製造され、その後に、機械的固定手段、エポキシ、溶接、蝋付け、或いは当業者に周知の固定手段によりボディ20のヒールサイドとトオサイドに固定するようにしてもよい。
【0019】
図10に示された実施例においては、重りバー90はピン100或いは他の可動要素によりヒールサイド24とトオサイド26に移動可能に固定され、重りバー90は多角形状とされ、1つの端部においてピン100に固定されるようになし、ピン100を1°〜359°のいずれかに回転させて、重りバー90の質量の大部分がボディ20内で異なる位置に移動させ、ゴルフクラブヘッドのGCの位置を調整できるようにしている。種々の重りバー90とピン100の組み合わせが図11A〜Fに示されており、これらは、1又は複数の断面形状及び/又は高密度部分又はインサート105を含んでいる。一旦、希望するGC位置が得られると、ピン100,従って重りバー90がその位置に、機械的固定手段、及び/又は除去可能な接着剤等、当業者に周知の固定手段により仮止めされるか、或いは、溶接、蝋付け及び/又は恒久的接着剤等により恒久的に固定される。
【0020】
図12−14に示される他の実施例においては、重りバー90は2カ所のみにおいてソール30に固定され、その1つはボディ20のヒールサイド24近傍であり、他の1つはボディ20のトオサイド26の近傍とされ、これによりソール30の大部分を効果的に跨ぐようにしている。この実施例及び図9−10に示された実施例においては、重りバー90は、図10に示された三角形状重りバー90,図14に示される四辺形状重りバー90、及び図16に示される台形状重りバー90のように、種々の断面形状を持つことができる。重りバー90の一部は異なる材料で造ることができ、更に、ゴルフクラブヘッド10をカスタマイズし、CGの位置を調整するとができる。
【0021】
上述の図に示されるように、本発明のフェース要素60は、種々の形状と構造をとることができ、これにより、打撃フェース62の打撃領域を最大にし、フェアウエイウッド、アイアン、ハイブリッドなどのような小さい体積のゴルフクラブにおいて戻りを最適化し、また、特性時間(CT)や反発係数(COR)のような性能を増加させることができる。特に、フェース要素60は、打撃面62の全部或いは殆どを囲んでフェースカップを形成する返り部分64を含むか、或いは返り部分64は打撃フェース62の一部のみから、例えば、トオ、ヒール、クラウン及び/又は打撃フェース62のソールエッジ61,63,65,67から延びるようにすることができる。例えば、図1,4,6,8及び12に示されるフェース要素60は、トオ、クラウン及び打撃フェースのソールエッジ61,65,67から延びる返り部分64を持つが、ヒールエッジ63からは延びてなく、部分的フェースカップとなっている。図24に示された実施例においては、フェース要素60は返り部分64の無い打撃フェース62のみを含むものである。
【0022】
図15及び16に示されるように、他の実施例においては、フェース要素60は、打撃フェース62のクラウン側から延び、他の部分からは延びていない返り部分64を有する“r(アール)”形状とされている。このようにして、溶接シーム70が打撃フェースのクラウン接合部110から離され、打撃フェース62のソール、トオ及びヒール接合部において残され、これによって、高いCOR及びCTを維持しつつクラウン接合部におけるストレスを少なくしている。溶接シーム70は平面的でないものとすることができる。
【0023】
他の実施例においては、ゴルフクラブヘッド10は追加的な重り構造を含むことができる。例えば、図17−22に示される実施例は、トオ30のヒールサイド24からソール30のトオサイド26に延びる重りバー90と、クラウン、ソール、及びトオエッジ65,67,61から延びる返り部分64を持つフェース要素60と、ゴルフクラブヘッド10のキャビティ22内部のソール30及びクラウン40との間の接合部の大部分に沿って延びる内部重りバンド120を含んでいる。この構造は、ゴルフクラブが所望の質量と薄いソール30とクラウン40を持つことを可能とし、これにより、打撃フェース62と最適のCGの整合性を増加させる。
【0024】
ここに示された重りバー90の各実施例について、図23A及び23Bに示されるように、重りバー90は1又は複数のピン92により支持されることができ、これらのピン92は、ゴルフクラブヘッド10のキャビティ22内のソール30に固定され、重りバー90の底部面に連結され、及び/又は重りバー90の背面(図示せず)に連結される。これらのピンは、プラスチックや複合材料のような強靱で軽量の別部材とすることが好ましく、それらの存在が重りバー90によって形成される質量形態に悪影響を及ばないようにするが、実施例によっては、ソール30と重りバー90と一体的に形成されてもよい。
【0025】
ここに示される全ての実施例について、フェース要素60は、性能の溶接位置による悪影響を最小にするように、高い強度と高性能の材料で形成されることが好ましい。フェース要素60は、好ましくは、打撃フェース62がその幾何学的宇中心において最大で235〜260のCTを持ち、幾何学的中心から略0.25インチ離れた全ての点、及び打撃フェース62の少なくとも高中心点及び低中心点において205〜260のCTを持つ。
【0026】
上述の重りリップ80と重りバー90の各実施例は、より良好な構造質量特性とCT及びCORのような性能特性を与えるために図24に示された4ピース、複数材料ゴルフクラブヘッド構造200に組み込むことができる。
【0027】
この構造は、ウッドタイプ及びハイブリッドタイプのゴルフクラブヘッドに使用することができる。このゴルフクラブヘッド200の1実施例において、ゴルフクラブヘッド200は、鋳造可能で溶接可能なスチールよい低密度を持つ材料で形成されたボディ220を含み、ボディ220は、クラウン開口222,ソール開口224及びフェース開口226を有している。ソール230はスチール材料、或いはスチールより緻密な材料から成り、ボディ220に溶接又は蝋付けされてソール開口224を閉鎖している。低密度カーボン或いは薄くて強靱の軽量材料から成る軽量クラウン240がボディ220に固定されてクラウン開口222を閉鎖し、高強度材料から成るフェースプレート260がボディ220に溶接或いは蝋付けされてフェース開口226を閉鎖する。この複数材料の実施例は、重心位置の最適化に寄与し、特に、フェアウエイウッドに有用である。フェース開口226とフェースプレート260は、打撃面とボディ220の可撓性領域の干渉を最小にするのに最適な接合位置を含むようにすることが好ましい。
【0028】
他の実施例において、図24に示されたゴルフクラブヘッド200は慣性モーメントの値を最適するのに寄与する材料組成をもち、特にフェアウエイウッドに有用である。この実施例においては、ボディ220はスチールより高密度の材料から成り、この材料は鋳造及び溶接ができる材料であり、ソール230はスチール又はより緻密な材料でボディ220に溶接或いは蝋付けできる材料であり、クラウン240は低密度カーボン材料で、ボディ220に接着により結合され、フェースプレート260は高強度材料でボディに溶接又は蝋付けされる。
【0029】
ここに示された実施例の重りバー90は、また、図25−28に示されるようなアイアンタイプのゴルフクラブヘッドに使用することができる。本発明のこの実施例においては、アイアンタイプゴルフクラブヘッド300は、頂部ライン310,ソール320,トオサイド330,ヒールサイド340及び後部キャビティ380を持つボディ305と、フェース要素350と、重りバー360を有する。重りバー360はソール320を跨り、重りバー360とソール320との間に狭いスロット370を形成し、、ゴルフクラブヘッド300がボールと接触するとき、フェース要素350が下方に歪むための空所与えている。図23Aと23Bに例示された1又は複数のピン92が、重りバー360を追加的に支持するために、重りバー360とソール320の間のスロット内に配置することができる。代替的な実施例において、重りバー360は、他の実施例で述べたように、後部キャビティ380内で回転可能とすることができ、また、ゴルフクラブヘッド300は、異なる種類のスチールのような複数の材料で形成することができる。重りバー360は、ゴルフクラブヘッド300の質量特性に影響を及ぼすように複数の材料で形成することができ、また、本発明の他の実施例で述べたものを含む、種々の形状の断面形状を持つことができる。
【0030】
1つの実施例においては、フェース要素350はフェースインサートであり、他の実施例においては、フェースプレート或いはフェースカップとすることができる。図25−28に示すように、フェース要素350(及び既に述べた他のフェース要素)は、好ましくは、厚さの変化するパターンを有する打撃面を持ち、これらのパターンは、ここに参照として全体が組み入れられる米国特許第7137907号、7101289号、7258626号、7422528号、7448960号、8012041号及び8376876号、及びここに全体が参照として組み入れられる米国特許出願2012021849号に記載されている。
【0031】
同様に、ウッドとハイブリッドタイプゴルフクラブヘッドに関連して述べた重りリップ80の構造は、図29―32に示される好適な実施例に示すようにアイアンゴルフクラブヘッドに用いることができる。好ましい実施例においては、アイアンゴルフクラブヘッド400は、ボディ410と、溶接シーム430を形成して溶接合体される、好ましくは一定の厚みを有するフェースカップ420を有する。
【0032】
好ましくはスチール材料で一体的に鋳造されるボディ410は、頂部ライン411,ソール412,トオエンド414,ヒールエンド415,後部壁416,及びボディ410を完全に貫通して延び、したがって、背面に開口を持つ前面開口418を有し、また、重りリップ440を含む。重りリップ440は、好ましくは、ボディ410と一体に鋳造成形されるが、代替的実施例においては、それぞれを個別に製造し、ボディ410に固定するようにしてもよい。好ましい実施例における重りリップ440は、ボディ410のソール412及び後部壁416から前面開口418に向けて延び、また、ボディ410のヒールエンド415からトオエンド414に向けて延びている。いくつかの実施例においては、重りリップ440は、トオエンド414とヒールエンド415の両方に接触するが、図30に示す好ましい実施例のように、重りリップ440は、ホーゼル413の近傍でヒールエンド415のみに接触している。
【0033】
図32に示すように、フェースカップ420は、打撃フェース422,上部フランジ424及び下部フランジ426を有し、下部フランジ426の長Lは上部フランジの長さLより長くされている。長さLは好ましくは、5〜10mm、好ましくは6〜9mmの範囲である。下部フランジ426は好ましくは変化する厚さを持ち、ゴルフクラブヘッド400の性能を高めるようにしている。フェースカップ420は、また、図30に示すように、トオサイドフランジ428を有するが、ヒールサイドに沿っては有しておらず、ここでは、フェースカップ420はホーゼル413の近傍でボディ410のヒールエンド415に直接溶接される。
【0034】
図3の実施例のように、重りリップ440の少なくとも1部が前面開口418を通して延び、ボディ410がフェースカップ420と共に組み立てられると,重りリップ440が溶接シーム430を越えて延び、打撃フェース422の背面423に接触することなく、近づいた状態となる。好ましい実施例における重りリップ440は、前側面444に略直交する上部面442を持つが、図33−37に示される本発明のアイアンタイプのゴルフクラブヘッドの他の実施例においては、重りリップ440は、これとは異なる大きさと構造を有している。図35−37に示される実施例においては、ボディ410の背面開口が背面キャップ450によって閉鎖されており、中空のアイアンタイプゴルフクラブヘッド400を形成している。背面キャップ450はボディ410及び/又はフェースカップ420と同じ材料で形成するか、或いは、プラスチックか複合材料で形成してもよい。
【0035】
図38に示される他の実施例においては、プラスチック、複合材料或いはゴムのような別体の軽量材料460が重りリップ440の前側面444に加えられており、重りリップ440が打撃フェース422に(又はフェースカップ420の他の部位)接触するようにしている。この特徴は、使用の中のゴルフクラブヘッド400の音を和らげるのに役立つ。この実施例では、軽量材料460は、好ましくは、下部フランジ426から垂直方向に略0.075インチの位置で、打撃フェース422の背面の中心から少なくとも0.5インチ離れた位置となるように配置される。
【0036】
以上の各実施例においては、ゴルフクラブヘッド10がボールにインパクトする間の重りリップ80,440或いは重りバー90,360の慣性は、ソール30の薄い領域の撓み能力を高めることにより、ソール30の追従性を増進させる。これらの図面に示された重りの構造は、また、最適の重心位置を犠牲にすることなく、フェース要素60をフェースカップ構造(打撃フェース62の周囲の全体或いは一部を囲む返り部分64)とすることを可能にし、また、ソール30から重量を減らし、したがって、薄くし、ソールが容易に撓んでフェース要素60の性能をより高めるようにゴルフクラブヘッド10の製造を可能にしている。
【0037】
上述の説明から、当業者は、本発明の多くの利点を認識することができ、また、本発明が好ましい実施例において述べられる一方において、図面を参照にした他の実施例、多くの変形例、改良例、及び均等物による置換が、添付されるクレームの記載以外は上述の記載によって限定されることのない本発明の精神と範囲を逸脱することなく、なされるものであることを容易に理解するであろう。
なお、本発明には以下の態様が含まれることを付記する。

[1]
頂部ラインと、ソールと、ヒールサイドと、トオサイドと、前側開口と突条部を有するボディと、
前記前側開口を覆う打撃フェースを有するフェース要素、
とを有するアイアンタイプゴルフクラブヘッドであって、
前記突条部は前記前側開口の近傍に位置し、前記打撃フェースに接触しないように前記フェース要素に向けて延び、
前記突条部は前記ヒールサイドから前記トオサイドに向けて延び、いかなる空洞領域を持たないものである、
アイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[2]
前記突条部は、前記前側開口を越えて延びる、[1]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[3]
前記フェース要素は、上部フランジと下部フランジを有するフェースカップであり、前記上部フランジと前記下部フランジの各々は前記打撃フェースから後方に延びる、[1]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[4]
前記上部フランジは第1の長さを持ち、前記下部フランジは第2の長さを持ち、前記第1の長さは前記第2の長さより小さい、[3]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[5]
前記第2の長さは5mm〜10mmの範囲である、[4]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[6]
前記フェース要素は、前記ボディに溶接ラインを形成して溶接され、前記突条部は、前記溶接ラインを越えて延びる、[3]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[7]
前記前側開口は、前記ボディが背面開口を有するように前記ボディを完全に貫通している、[1]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[8]
バックキャップを更に有し、前記バックキャップは前記背面開口を覆う、[7]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[9]
前記突条部は、上部面と前側面を有し、前記上部面は、前記前側面に対して略直交して配置される、[1]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[10]
前記下部フランジは、厚さが変化する厚みを有する、[3]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[11]
前記突条部は、前記ボディに一体的に鋳造成形される、[1]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[12]
打撃フェースと、上部フランジと、下部フランジとを有するフェースカップと、
頂部ラインと、ソールと、ヒールサイドと、トオサイドと、前側開口と、突条部を有するボディを有する、アイアンタイプゴルフクラブヘッドであって、
前記前側開口は、前記ボディが背面開口を有するように前記ボディを完全に貫通し、
前記上部フランジは第1の長さを持ち、
前記下部フランジは、前記第1の長さより長い第2の長さを持ち、
前記打撃フェースは、厚さが変化する厚みを有し、
前記突条部は、前記前側開口の近傍に位置し、前記フェースカップのいかなる部分にも接触しない状態で前記前側開口を越えて前記フェース要素に向けて延びる、
アイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[13]
前記突条部は、前記ソールの少なくとも一部において跨っている、[12]記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[14]
更に、複数のピンを有し、前記複数のピンの各々は、前記ソールと前記突条部の間に配置されている、[13]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[15]
前記突条部は、複数の材料から形成されている、[12]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[16]
前記複数の材料の少なくとも1つはタングステン合金である、[15]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[17]
前記フェースカップは、溶接シームを形成した前記ボディに溶接される、[12]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[18]
前記溶接シームは一定の厚みを有する、[17]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[19]
更に、背面キャップを有し、前記背面キャップは前記ボディに固定され、前記背面開口を覆う、[12]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
[20]
前記突条部は、上部重り部分と下部支持部分を有し、前記上部重り部分は、第1の密度を持つ第1材料から成り、前記下部支持部分は、第2の密度を持つ第2材料から成り、前記第1の密度は前記第2の密度より大きい、[12]に記載のアイアンタイプゴルフクラブヘッド。
【符号の説明】
【0038】
10,200,300、400 ヘッド
20,220,410 ボディ
60,350, フェース要素
80,440, 重りリップ
90,360 重りバー

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38