特許第6335392号(P6335392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335392ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法、重合性組成物、樹脂、光学材料およびレンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335392
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法、重合性組成物、樹脂、光学材料およびレンズ
(51)【国際特許分類】
   C07C 319/12 20060101AFI20180521BHJP
   C07C 323/52 20060101ALI20180521BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20180521BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20180521BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20180521BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C07C319/12
   C07C323/52
   C08G18/38 076
   G02B1/04
   G02C7/00
   G02C7/02
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-524990(P2017-524990)
(86)(22)【出願日】2016年6月24日
(86)【国際出願番号】JP2016068788
(87)【国際公開番号】WO2016208707
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2017年7月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-126417(P2015-126417)
(32)【優先日】2015年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】隈 茂教
(72)【発明者】
【氏名】古屋 政幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 雄
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/052329(WO,A1)
【文献】 特開平11−290089(JP,A)
【文献】 特開平1−215293(JP,A)
【文献】 特開2012−188437(JP,A)
【文献】 特公昭33−3869(JP,B1)
【文献】 特公昭37−6503(JP,B1)
【文献】 REICHLE, Walter T.,Catalytic reactions by thermally activated, synthetic, anionic clay minerals,Journal of Catalysis,1985年,Vol.94, No.2,P.547-557,特にTABLE 1, ISSN 0021-9517
【文献】 DIMROTH, Karl,Beziehungen zwischen den Absorptionsspektren im Ultraviolett und der Konstitution organischer Verbin,Angewandte Chemie,1939年,Vol.52, No.34,P.545-556,特にTabelle 11., ISSN 1521-3757
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 319/12
C07C 323/52
C08G 18/38
G02B 1/04
G02C 7/00
G02C 7/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンタエリスリトールと、メルカプトカルボン酸とを反応させ、ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルを得る工程を含み、
光路長50mmの石英セルにて測定された、前記ペンタエリスリトールの5重量%水溶液の波長270nmにおける吸光度が0.003以上0.07以下であ
前記ペンタエリスリトールのビスペンタエリスリトールの含有量は、前記ペンタエリスリトール全重量に対して、0.01重量%以上7重量%以下である、ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
前記メルカプトカルボン酸は、3−メルカプトプロピオン酸またはチオグリコール酸である、請求項1に記載のペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法によって得られるペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルと、ポリイソ(チオ)シアナート化合物とを含む、重合性組成物。
【請求項4】
請求項に記載の重合性組成物を硬化させた樹脂。
【請求項5】
請求項に記載の樹脂を含む、光学材料。
【請求項6】
請求項に記載の樹脂を含む、レンズ。
【請求項7】
ペンタエリスリトールとメルカプトカルボン酸とを反応させるペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法において、
前記ペンタエリスリトールとして、該ペンタエリスリトールの5重量%水溶液を調製し、光路長50mmの石英セルにて測定された当該水溶液の波長270nmの吸光度が0.003以上0.07以下であり、前記ペンタエリスリトールのビスペンタエリスリトールの含有量が、前記ペンタエリスリトール全重量に対して、0.01重量%以上7重量%以下のものを選択する、ペンタエリスリトールの選別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法、重合性組成物、樹脂、光学材料およびレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難く、染色が可能なため、近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等を構成する候補材として急速に普及してきている。
【0003】
また、プラスチックレンズ用樹脂には、さらなる高性能化が要求されてきており、高屈折率化、高アッベ数化、低比重化、高耐熱性化等が求められてきた。これまでにも様々なレンズ用樹脂素材が開発され使用されている。
【0004】
その中でも、ポリウレタン系樹脂に関する技術開拓が盛んに行われてきており、本発明者らも、このポリウレタン系樹脂を用いたプラスチックレンズに関する技術開発を種々行っている(たとえば特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照)。
【0005】
その中の代表的な樹脂としてペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルとポリイソ(チオ)シアナート化合物とを反応させて得られる樹脂が挙げられる。この樹脂は、無色透明で高屈折率低分散であり、衝撃性、染色性、加工性等に優れたプラスチックレンズに最適な樹脂の一つである。
【0006】
ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルは、通常の多価アルコールとメルカプトカルボン酸とをエステル化触媒存在下にて副生する水を系外に留去しながら行う、いわゆる直接エステル化法によって製造されている(特許文献4参照)。
【0007】
このエステル化合物の原料であるペンタエリスリトールは、通常、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドとを縮合して製造される。その純度は通常、約90重量%で数種類の不純物を含む。その中でもペンタエリスリトールのホルムアルデヒド2分子縮合体であるビスペンタエリスリトールが挙げられる。このビスペンタエリスリトールが、5重量%を超えて含まれると、ポリイソシアナート化合物との重合終了後にモールドからの離型が困難であったり、得られたレンズの内部に気泡を生じるなどの問題が生じる可能性があることが知られている(特許文献5、6参照)。
【0008】
また、原料として用いられるペンタエリスリトールに関し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量について、特定量以下に制御することで、ポリ(イソ)チオシアネートと反応させても白濁しないペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルが得られることが知られている(特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60-199016号公報
【特許文献2】特開昭60-217229号公報
【特許文献3】特開昭63-46213号公報
【特許文献4】特公昭39-9071号公報
【特許文献5】特開昭56-20530号公報
【特許文献6】特開平10-120646号公報
【特許文献7】国際公開公報第2007/052329号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これら特許文献1〜7に記載の従来の方法を用いれば、ある程度、着色や脈理の発生を抑えた樹脂が得られ、また、この樹脂を用いてプラスチックレンズを生産することができる。
【0011】
しかしながら、近年、プラスチックレンズ等の光学部材について、さらに外観特性等を優れたものとすることが求められている。
ここで、光学部材についての外観特性を向上させるためには、たとえば、重合して樹脂を得る段階において、改質剤を加えることや、重合条件を調整する等の改善をすることが考えられる。
しかしながら、これらの方法では、改質剤を加えることで他の物性が損なわれることや、また、重合条件を調整することにより、プロセス効率が低下すること等が懸念される。
このことから、樹脂を得る際の重合に寄与する原料そのものについての改良を行うことが好ましいものと考えられる。
【0012】
このような事情を鑑み、本発明は、色相等の外観に優れた無色透明な樹脂成形体を得ることができるペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルを得る際の、原料となるペンタエリスリトールについて、特定の吸光度を満足するように管理することで、得られる樹脂成形体の色相等が改善されることを見出した。
すなわち、このペンタエリスリトールを用いることで、色相等の外観に優れた無色透明な樹脂成形体を安定的に製造できることを見出し、発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は以下に示すことができる。
[1] ペンタエリスリトールと、メルカプトカルボン酸とを反応させ、ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルを得る工程を含み、
光路長50mmの石英セルにて測定された、前記ペンタエリスリトールの5重量%水溶液の波長270nmにおける吸光度が0.003以上0.07以下であ
前記ペンタエリスリトールのビスペンタエリスリトールの含有量は、前記ペンタエリスリトール全重量に対して、0.01重量%以上7重量%以下である、ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法
[2] 前記メルカプトカルボン酸は、3−メルカプトプロピオン酸またはチオグリコール酸である、[1]に記載のペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法。
] [1]または[2]に記載の製造方法によって得られるペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルと、ポリイソ(チオ)シアナート化合物とを含む、重合性組成物。
] []に記載の重合性組成物を硬化させた樹脂。
] []に記載の樹脂を含む、光学材料。
] []に記載の樹脂を含む、レンズ。
] ペンタエリスリトールとメルカプトカルボン酸とを反応させるペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法において、
前記ペンタエリスリトールとして、該ペンタエリスリトールの5重量%水溶液を調製し、光路長50mmの石英セルにて測定された当該水溶液の波長270nmの吸光度が0.003以上0.07以下であり、前記ペンタエリスリトールのビスペンタエリスリトールの含有量が、前記ペンタエリスリトール全重量に対して、0.01重量%以上7重量%以下のものを選択する、ペンタエリスリトールの選別方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルを得る際の、原料となるペンタエリスリトールについて、特定の吸光度を満足するように管理することで、得られる樹脂成形体の色相等の外観を向上させることができる。
さらに、このような方法で得られたペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルを用いることで、光学物性等の品質にも優れる樹脂を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を以下の実施の形態に基づいて説明する。
なお、本明細書中において、「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0017】
(ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法)
まず、本実施形態に係るペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法について説明する。
本実施形態のペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法は、以下の条件を満たすペンタエリスリトールと、メルカプトカルボン酸とを反応させる工程を含む。
光路長50mmの石英セルにて測定された、ペンタエリスリトールの5重量%水溶液の波長270nmにおける吸光度が0.07以下である。
【0018】
すなわち、本実施形態のペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法は、ペンタエリスリトールの5重量%の水溶液を作製し、光路長50mmの石英セルにて吸光度を測定した場合、波長270nmの吸光度が特定の値となるものが原料として用いられる。
なお、本明細書において、「ペンタエリスリトール」や「メルカプトカルボン酸」、「ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステル」等が不純物を含む場合には、「ペンタエリスリトール組成物」、「メルカプトカルボン酸組成物」、「ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステル組成物」のように記載することができる。
【0019】
以下、本実施形態のペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法に用いられる各原料について説明する。
【0020】
(ペンタエリスリトール)
本実施形態おいて、ペンタエリスリトールとしては、5重量%の水溶液を作製し、当該水溶液を光路長50mmの石英セルにて測定した場合、波長270nmにおける吸光度が、0.07以下であるものが用いられる。
ペンタエリスリトールが、上記数値を満足することで、樹脂成形体の色相等の外観を向上させることができる。
【0021】
ここで、この波長270nmはいわゆる可視領域に相当する波長ではなく、この波長270nmにおける吸光度の値に寄与する物質そのものが、樹脂成形体の可視領域における光学特性に変化をもたらすものではない。しかしながら、本発明者らは、この波長270nmの吸光度の値に寄与する物質が、重合して樹脂を得る際において、何らかの相互作用をもたらし、得られる樹脂成形体としての光学特性等に影響を及ぼすことを見出している。
すなわち、本発明者らは、原料として用いられるペンタエリスリトールについて、上記値を満足するよう管理することが、原料として用いるペンタエリスリトールの品質を担保する上で重要な事項であることを見出し、また、本願の課題が解決できることを知見したものである。
また、本実施形態のペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法に用いられるペンタエリスリトールは、波長270nmにおける5重量%ペンタエリスリトール水溶液の吸光度を、好ましくは0.06以下、さらに好ましくは0.055以下、より好ましくは0.035以下、特に好ましくは0.015以下とすることができる。
このような値を満足することで、得られる樹脂成形体の色相等の外観をさらに改善することができる。
【0022】
ここで、この波長270nmにおける吸光度の測定にあたっては、以下の条件を採用することができる。
まず、ペンタエリスリトールから5重量%の水溶液を調製し、この水溶液について、ろ過を行うことで測定試料を作製する。この測定試料について、光路長50mmの石英セルに装入することで、波長270nmにおける吸光度を求める。
なお、この吸光度の測定にあたっては、島津製作所社製の分光光度計(機器名:UV−1600)を用いることができる。
【0023】
また、本実施形態のペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法に用いられるペンタエリスリトールは、波長270nmにおける5重量%ペンタエリスリトール水溶液の吸光度が、0.003以上であることが好ましく、0.005以上であることがより好ましく、0.01以上であることがさらに好ましい。
5重量%ペンタエリスリトール水溶液の波長270nmにおける吸光度を、上記値以上とする場合においては、過度な精製が不要となり、全体としてのプロセス効率の向上を図ることができる。このように、全体のプロセス効率の向上を図ることにより、得られる製品としての品質の担保が可能となる。
【0024】
本実施形態においては、ペンタエリスリトールを精製することにより、波長270nmにおける5重量%ペンタエリスリトール水溶液の吸光度を上記範囲にすることができる。
精製方法としては、例えば、ペンタエリスリトールを溶媒に溶解させた後、晶析により精製する方法が挙げられる。溶媒としては通常、水が使用される。溶媒として使用する水は、蒸留水やイオン交換水を使用しても良い。また、ペンタエリスリトールを溶解させた溶液からペンタエリスリトールを晶析させる前に、ペンタエリスリトール溶液を、特定の処理剤を使用して処理した後、ペンタエリスリトールを晶析させても良い。処理剤としては、例えば、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、モレキュラシーブ等の各種吸着剤、イオン交換樹脂、キレート樹脂等が挙げられる。晶析は複数回繰り返し実施しても良く、また、処理剤を変更して複数回実施しても良い。
なお、市販のペンタエリスリトールや製造したペンタエリスリトールの吸光度が、上記の測定方法において本発明の範囲内である場合や範囲外である場合がある。そのような場合に、本発明における吸光度範囲内であるペンタエリスリトールを選別して使用することもできる。
【0025】
また、本実施形態に用いられるペンタエリスリトールは、不純物であるビスペンタエリスリトールの含有量が特定量以下であることが好ましい。例えば、ペンタエリスリトール全重量に対するビスペンタエリスリトールの含有量は、好ましくは0.01重量%〜7重量%、より好ましくは0.1重量%〜5重量%、さらに好ましくは1重量%〜5重量%とすることができる。
本実施形態においては、前記吸光度が上記範囲内であり、さらにビスペンタエリスリトール含有量が上記範囲内であるペンタエリスリトールを用いることにより、得られる樹脂成形体の色相等の外観をさらに改善することができる。
【0026】
本実施形態に用いられるペンタエリスリトールは、不純物である金属の含有量が特定量以下であることが好ましい。ペンタエリスリトール全重量に対する金属含有量の合計は、1重量%未満とすることができる。
本実施形態においては、前記吸光度が上記範囲内であり、さらに金属含有量が上記範囲内であるペンタエリスリトールを用いることにより、得られる樹脂成形体の色相等の外観をさらに改善することができる。
金属としては、Li、Na、K、RbおよびCs等のアルカリ金属、Mg、Ca、SrおよびBa等のアルカリ土類金属、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等が挙げられる。具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、特にNaおよびCa含有量が抑制されたものが望ましい。
【0027】
ビスペンタエリスリトールの含有量が上記の範囲内であり、かつ金属含有量の合計が上記の範囲内であると、得られるペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルとポリイソ(チオ)シアナート化合物との重合終了後に、モールドからの樹脂成形体の離型が容易になり、得られる樹脂成形体における気泡の発生を抑制できる。
さらに、前記吸光度が上記範囲内であり、ビスペンタエリスリトールの含有量が上記の範囲内であり、かつ金属含有量の合計が上記の範囲内であると、得られる樹脂成形体の色相等の外観をさらに改善することができる。
続いて、本実施形態に用いられるメルカプトカルボン酸について説明する。
【0028】
(メルカプトカルボン酸)
本実施形態に用いられるメルカプトカルボン酸としては、例えば、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオ乳酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸等が挙げられる。
なお、本実施形態においては、得られる樹脂の耐熱性(Tg)、メルカプトカルボン酸としての入手容易性、さらにペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルを製造する際の反応性等の観点等から、このメルカプトカルボン酸として、3−メルカプトプロピオン酸またはチオグリコール酸であることが好ましい。
【0029】
ここで、本実施形態のメルカプトカルボン酸としては、分子間縮合チオエステル化合物の含有量が抑制されたものを用いることが好ましい。
【0030】
分子間縮合チオエステル化合物とは、メルカプトカルボン酸のメルカプト基とカルボキシル基が分子間でチオエステル結合により縮合した化合物であり、二分子、三分子またはそれ以上の分子間で結合した化合物である。メルカプト基とカルボキシル基が二分子間でチオエステル結合により縮合した化合物を二分子間縮合チオエステル化合物という。例えば、3−メルカプトプロピオン酸が二分子間で縮合したチオエステル化合物は、3−(3−メルカプトプロパノイルチオ)プロピオン酸である。
【0031】
具体的に、高速液体クロマトグラフィー測定におけるメルカプトカルボン酸とその分子間縮合チオエステル化合物との面積合計を100%とした場合、メルカプトカルボン酸の二分子間縮合チオエステル化合物含有量が5%以下(面積百分率)であれば、当該メルカプトカルボン酸を用いて製造されたペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの色相は無色透明なものとなりやすいため好ましい。また、このペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルとポリイソ(チオ)シアナートとを混合させて得られる重合前の重合性組成物は低粘度で、得られる樹脂は、白濁の抑制された無色透明な樹脂となりやすい。
白濁の抑制の観点からは、本実施形態に用いるメルカプトカルボン酸の二分子間縮合チオエステル化合物含有量は、高速液体クロマトグラフィー測定における面積百分率で、好ましくは0.01%〜5%、より好ましくは0.01%〜3%、さらに好ましくは0.01%〜1%である。
【0032】
本実施形態で示す二分子間縮合チオエステル化合物の含有量は、例えば、以下の分析法により測定する。島津製作所社製 高速液体クロマトグラフ装置(LC−6A、SPD−10A、CTO−10A)に関東化学製カラムMightysil RP−18GPを接続し、0.01M KHPO/アセトニトリル(40/60)水溶液を溶離液とし、カラム温度40℃、溶離液の流速を0.95ml/分、230nmの波長で、メルカプトカルボン酸中の二分子間縮合チオエステル化合物の含有量を分析する。二分子間縮合チオエステル化合物の含有量は、高速液体クロマトグラフィー測定におけるメルカプトカルボン酸とその分子間縮合チオエステル化合物との面積合計を100%とした場合の面積百分率で表される。
【0033】
本実施形態においては、前記吸光度が上記範囲内であるペンタエリスリトールを用い、さらに二分子間縮合チオエステル化合物の含有量が上記範囲内であるメルカプトカルボン酸を用いることにより、得られる樹脂成形体の色相等の外観をさらに改善することができる。
【0034】
ここで、メルカプトカルボン酸中の、メルカプトカルボン酸の分子間縮合チオエステル化合物含有量増加の要因として、メルカプトカルボン酸の保管方法が挙げられる。メルカプトカルボン酸は、鉄分の混入や空気中の酸素との接触、また保管温度が高温になるとメルカプトカルボン酸の分子間縮合チオエステル化合物の生成が促進される。よってメルカプトカルボン酸は、窒素雰囲気下、鉄との接触を避けた容器中で低温に温度管理された状態で保管されることが望ましい。例えば、保管に適した温度は、10℃以上、60℃以下の範囲内、より好ましくは15℃以上、50℃以下の範囲内、さらに好ましくは20℃以上、40℃以下の範囲内である。
また、精製により、メルカプトカルボン酸中の二分子間縮合チオエステル化合物の含有量を低減させてもよい。精製方法としては特に限定されないが、例えば、蒸留による精製が挙げられる。
続いて、ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法について説明する。
【0035】
[ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法]
本実施形態においては、ペンタエリスリトールとメルカプトカルボン酸とを反応させ、ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルを得ることができる。
ペンタエリスリトールとメルカプトカルボン酸とを反応させるため、通常使用するエステル化触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、燐酸、アルミナ等の鉱酸、またはp−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、ジブチル錫ジオキサイド等の有機系酸に代表される酸触媒が好ましく用いられる。
【0036】
ペンタエリスリトールとメルカプトカルボン酸との好ましい使用割合は、特に限定されないが、例えば、モル比がメルカプトカルボン酸/ペンタエリスリトール=3.5〜6.0の範囲内であり、より好ましくは3.7〜5.0の範囲内、さらに好ましくは3.8〜4.5の範囲内である。使用割合が上記範囲内であると、効率よく、高純度のペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルを製造することができる。得られたペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルは無色透明で低粘度となりやすく、当該ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルとポリイソ(チオ)シアナート化合物とを含む重合性組成物も低粘度となりやすい。当該重合性組成物を硬化させて得られる樹脂も、色相が良好であり、光学特性や耐熱性等に優れた品質となりやすい。
【0037】
また、ペンタエリスリトールとメルカプトカルボン酸との好ましい反応条件は、例えば、温度が80℃〜140℃の範囲内であり、より好ましくは100℃〜125℃の範囲である。温度が上記範囲内であると、ペンタエリスリトールとメルカプトカルボン酸との反応がより促進される。
また、得られたペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルは無色透明で低粘度となりやすく、当該ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルとポリイソ(チオ)シアナート化合物とを含む重合性組成物も低粘度となりやすい。また、当該重合性組成物を硬化させて得られる樹脂も、色相が良好であり、光学特性や耐熱性等に優れた品質となりやすい。
【0038】
ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルを製造する際には、共沸剤の使用は必須条件ではない。しかしながら、共沸剤を用いて加熱還流下、連続的に副生する水を系外に除いていく方法が一般的である。通常用いられる共沸剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、メチレンクロライド、クロロホルム、ジクロロエタン等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して用いてもよく、その他の溶媒と混合して用いてもよい。
【0039】
上述の方法によって得られるペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルは、ペンタエリスリトールとメルカプトカルボン酸とが縮合した化合物であれば特に限定されないが、例えば以下の化合物が挙げられる:ペンタエリスリトールチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトール3−メルカプトプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールチオ乳酸エステル、ペンタエリスリトールチオサリチル酸エステル等。
また、これらエステル化合物は、ペンタエリスリトールのヒドロキシ基が完全にエステル化された化合物または一部しかエステル化されていない化合物でもよい。
ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルとして、好ましくは、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオラクテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオサリチレート)、さらに好ましくは、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)が挙げることができる。
さらに、これらのエステル化合物は、ポリイソ(チオ)シアナート化合物と重合させてポリウレタン系樹脂を得る場合、単独または2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
[重合性組成物]
本実施形態の重合性組成物は、上記の製造方法によって得られるペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルと、ポリイソ(チオ)シアナート化合物とを含むものである。
【0041】
なお、「イソ(チオ)シアナート」とは、「イソシアナート又はイソチオシアナート」を意味する。
【0042】
ポリイソ(チオ)シアナート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ブテンジイソシアナート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート化合物;
2,5−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート等の脂環族ポリイソシアナート化合物;
1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,3−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアナート)、4,4'−メチレンビス(2−メチルフェニルイソシアナート)、ビベンジル−4,4'−ジイソシアナート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、ビス(イソシアナトメチルフェニル)エーテル、ビス(イソシアナトエチル)フタレート、2,6−ジ(イソシアナトメチル)フラン等の芳香環化合物を有するポリイソシアナート化合物;
ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアナト−2−イソシアナトメチル−3−チアペンタン、1,2,3−トリス(イソシアナトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(イソシアナトエチルチオ)プロパン、3,5−ジチア−1,2,6,7−ヘプタンテトライソシアナート、2,6−ジイソシアナトメチル−3,5−ジチア−1,7−ヘプタンジイソシアナート、2,5−ジイソシアナートメチルチオフェン、4−イソシアナトエチルチオ−2,6−ジチア−1,8−オクタンジイソシアナート等の含硫脂肪族ポリイソシアナート化合物;
2−イソシアナトフェニル−4−イソシアナトフェニルスルフィド、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−イソシアナトメチルフェニル)スルフィドなどの芳香族スルフィド系ポリイソシアナート化合物;
ビス(4−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(2−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メチル−6−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシ−3−イソシアナトフェニル)ジスルフィド等の芳香族ジスルフィド系ポリイソシアナート化合物;
2,5−ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナトメチルテトラヒドロチオフェン、3,4−ジイソシナトメチルテトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ジイソシアナトメチル−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ジイソシアナトメチル−2−メチル−1,3−ジチオラン等の含硫脂環族ポリイソシアナート化合物;
1,2−ジイソチオシアナトエタン、1,6−ジイソチオシアナトヘキサン等の脂肪族ポリイソチオシアナート化合物;
シクロヘキサンジイソチオシアナート等の脂環族ポリイソチオシアナート化合物;
1,2−ジイソチオシアナトベンゼン、1,3−ジイソチオシアナトベンゼン、1,4−ジイソチオシアナトベンゼン、2,4−ジイソチオシアナトトルエン、2,5−ジイソチオシアナト−m−キシレン、4,4'−メチレンビス(フェニルイソチオシアナート)、4,4'−メチレンビス(2−メチルフェニルイソチオシアナート)、4,4'−メチレンビス(3−メチルフェニルイソチオシアナート)、4,4'−ジイソチオシアナトベンゾフェノン、4,4'−ジイソチオシアナト−3,3'−ジメチルベンゾフェノン、ビス(4−イソチオシアナトフェニル)エーテル等の芳香族ポリイソチオシアナート化合物;
さらには、1,3−ベンゼンジカルボニルジイソチオシアナート、1,4−ベンゼンジカルボニルジイソチオシアナート、(2,2−ピリジン)−4,4−ジカルボニルジイソチオシアナート等のカルボニルポリイソチオシアナート化合物;チオビス(3−イソチオシアナトプロパン)、チオビス(2−イソチオシアナトエタン)、ジチオビス(2−イソチオシアナトエタン)等の含硫脂肪族ポリイソチオシアナート化合物;
1−イソチオシアナト−4−[(2−イソチオシアナト)スルホニル]ベンゼン、チオビス(4−イソチオシアナトベンゼン)、スルホニル(4−イソチオシアナトベンゼン)、ジチオビス(4−イソチオシアナトベンゼン)等の含硫芳香族ポリイソチオシアナート化合物;
2,5−ジイソチオシアナトチオフェン、2,5−ジイソチオシアナト−1,4−ジチアン等の含硫脂環族ポリイソチオシアナート化合物;
1−イソシアナト−6−イソチオシアナトヘキサン、1−イソシアナト−4−イソチオシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−4−イソチオシアナトベンゼン、4−メチル−3−イソシアナト−1−イソチオシアナトベンゼン、2−イソシアナト−4,6−ジイソチオシアナト−1,3,5−トリアジン、4−イソシアナトフェニル−4−イソチオシアナトフェニルスルフィド、2−イソシアナトエチル−2−イソチオシアナトエチルジスルフィド等のイソシアナト基とイソチオシアナト基を有するポリイソ(チオ)シアナート化合物;
が挙げられる。
【0043】
さらに、これらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できる。これらの化合物は単独または2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
本実施形態においては、ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステル以外の他のチオール化合物またはポリオール化合物を含むことができる。ここで、チオール化合物とは、同一分子内にヒドロキシ基を有するチオール化合物も含む。
他のチオール化合物としては、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、2−ヒドロキシメチル−2−(((3−((3−メルカプトプロパノイル)チオ)プロパノイル)オキシ)メチル)プロパン−1,3−ジイルビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−(((3−メルカプトプロパノイル)オキシ)メチル)−2−(((3−((3−メルカプトプロパノイル)チオ)プロパノイル)オキシ)メチル)プロパン−1,3−ジイルビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)のホルマリン縮合物、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;
1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;
2−メチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物等が挙げられる。
【0045】
同一分子内にヒドロキシ基を有するチオール化合物としては、例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、4−メルカプトフェノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール等を挙げることができるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0046】
ポリオール化合物としては、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ブタントリオール、 1,2−メチルグルコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロース、ジグリペロール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−ジメタノール、ビシクロ[4,3,0]−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ[5,3,1,1]ドデカンジオール、ビシクロ[4,3,0]ノナンジメタノール、トリシクロ[5,3,1,1]ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ[5,3,1,1]ドデカノール、スピロ[3,4]オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1'−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、マルチトール、ラクトース等の脂肪族ポリオール;
ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA−ビス−(2−ヒドロキシエチルエーテル)等の芳香族ポリオール;
ジブロモネオペンチルグリコール等のハロゲン化ポリオール;
エポキシ樹脂等の高分子ポリオールが挙げられる。本実施形態においては、これらから選択される少なくとも1種を組み合わせて用いることができる。
【0047】
また、ポリオール化合物として他に、シュウ酸、グルタミン酸、アジピン酸、酢酸、プロピオン酸、シクロヘキサンカルボン酸、β−オキソシクロヘキサンプロピオン酸、ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、3−ブロモプロピオン酸、2−ブロモグリコール、ジカルボキシシクロヘキサン、ピロメリット酸、ブタンテトラカルボン酸、ブロモフタル酸などの有機酸と上記ポリオールとの縮合反応生成物;
上記ポリオールとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどアルキレンオキサイドとの付加反応生成物;
アルキレンポリアミンとエチレンオキサイドや、プロピレンオキサイドなどアルキレンオキサイドとの付加反応生成物;さらには、
ビス−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルフィド、ビス−[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルフィド、ビス−[4−( 2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルフィド、ビス−[4−(4−ヒドロキシシクロヘキシロキシ)フェニル]スルフィド、ビス−[2−メチル−4−(ヒドロキシエトキシ)−6−ブチルフェニル]スルフィドおよびこれらの化合物に水酸基当たり平均3分子以下のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが付加された化合物;
ジ−(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、1,2−ビス−(2−ヒドロキシエチルメルカプト)エタン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ジオール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4−ヒドロキシ−2−チアブチル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(商品名ビスフェノールS)、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4'−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオエチル)−シクロヘキサンなどの硫黄原子を含有したポリオール等が挙げられる。本実施形態においては、これらから選択される少なくとも1種を組み合わせて用いることができる。
【0048】
[樹脂]
上記のようにして得られるペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルとポリイソ(チオ)シアナート化合物と、必要に応じて含まれるその他のポリチオール化合物とを含む重合性組成物は、硬化させることで樹脂を得ることができる。
【0049】
ここで、ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステル、ポリイソ(チオ)シアナート化合物、および必要に応じて含まれるその他のポリチオール化合物の使用割合は、特に限定されないが、通常、モル比がSH基/NCO基(またはNCS基)=0.3〜2.0の範囲内であり、好ましくは0.7〜2.0の範囲内、さらに好ましくは0.8〜1.3の範囲内である。モル比が上記範囲内であると、重合性組成物を硬化させて得られる樹脂からなる成形体は、色相が良好で、光学特性や耐熱性等に優れた品質となる。
【0050】
また、本実施形態の樹脂の諸物性、操作性、および重合反応性等を改良する目的で、樹脂を形成するエステル化合物とイソ(チオ)シアナート化合物に加えて、その他の物質を加えてもよい。例えば、イソ(チオ)シアナート化合物に加えて、アミン等に代表される活性水素化合物、エポキシ化合物、オレフィン化合物、カーボネート化合物、エステル化合物、金属、金属酸化物、有機金属化合物、無機物等の1種または2種以上を加えてもよい。
【0051】
また、目的に応じて、公知の成形法と同様に、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤、離型剤、ブルーイング剤などの種々の物質を添加してもよい。所望の反応速度に調整するために、チオカルバミン酸S−アルキルエステル、またはポリウレタン系、あるいはポリチオウレタン系樹脂の製造に用いられる公知の反応触媒を適宜に添加してもよい。また、本実施形態においては、上述の製造方法で得られたペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステル以外にも、一部他のポリチオール化合物を重合性組成物に加えて重合反応を行うこともできる。
また、本実施形態の樹脂により構成されるレンズは通常、注型重合により得られる。
【0052】
具体的には、ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルと、ポリイソ(チオ)シアナート化合物と、必要に応じて含まれるその他のポリチオール化合物とを混合する。この混合液を必要に応じ、適当な方法で脱泡を行った後、モールド中に注入し、通常、低温から高温へ徐々に加熱し重合させる。
【0053】
このようにして得られる本実施形態の樹脂からなる成形体は、高屈折率で低分散であり、色相、耐熱性、耐久性に優れ、軽量で耐衝撃性に優れた特徴を有しており、さらには白濁の発生が抑制されており無色透明である。本実施形態の樹脂成形体の色相は、Y.I.(イエローインデックス)で表すことができる。本実施形態の樹脂成形体のY.I.は、4以下、好ましくは3.6以下、さらに好ましくは3.3〜3.6であり、色相に優れる。
このことから、当該樹脂からなる成形体は、眼鏡レンズ、カメラレンズ等のレンズ、その他、発光ダイオード等の光学材料として好適に用いることができる。
【0054】
また、本実施形態の樹脂成形体は、必要に応じ反射防止、高硬度付与、耐磨耗性向上、耐薬品性向上、防雲性付与、あるいはファッション性付与等の改良を行うため、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理等の物理的、化学的処理を施してもよい。
【0055】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. ペンタエリスリトールと、メルカプトカルボン酸とを反応させ、ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルを得る工程を含み、
光路長50mmの石英セルにて測定された、前記ペンタエリスリトールの5重量%水溶液の波長270nmにおける吸光度が0.07以下である、ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法。
2. 前記吸光度が0.003以上である、1.に記載のペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法。
3. 前記メルカプトカルボン酸は、3−メルカプトプロピオン酸またはチオグリコール酸である、1.または2.に記載のペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法。
4. 1.〜3.のいずれかに記載の製造方法によって得られるペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルと、ポリイソ(チオ)シアナート化合物とを含む、重合性組成物。
5. 4.に記載の重合性組成物を硬化させた樹脂。
6. 5.に記載の樹脂を含む、光学材料。
7. 5.に記載の樹脂を含む、レンズ。
8. ペンタエリスリトールとメルカプトカルボン酸とを反応させるペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法において、
前記ペンタエリスリトールとして、該ペンタエリスリトールの5重量%水溶液を調製し、光路長50mmの石英セルにて測定された当該水溶液の波長270nmの吸光度が0.07以下のものを選択する、ペンタエリスリトールの選別方法。
【実施例】
【0056】
つづいて、本発明を実施例により具体的に説明する。以下の実施例および比較例では、ペンタエリスリトールについて、以下の方法で分析を行った。
また、得られたペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの色相(Y.I.)、重合性組成物を重合して得られたポリチオウレタン系樹脂成形体の色相(Y.I.)と透明度(失透度)は以下の試験法により評価した。
【0057】
・ビスペンタエリスリトールの含有量:ペンタエリスリトールを水に溶解後、当該水溶液を高速液体クロマトグラフィーにかけ、ビスペンタエリスリトールの含有量を測定した。
・ナトリウムおよびカルシウム含有量:ペンタエリスリトールを水に溶解後、当該水溶液を高速液体イオンクロマトグラフィーにかけ、ナトリウムおよびカルシウム含有量を測定した。
・ペンタエリスリトール水溶液の吸光度:ペンタエリスリトール2重量部に、蒸留水を加え40重量部に調整した。ついで60℃に加温して溶解させ、5重量%のペンタエリスリトール水溶液とした。20℃まで冷却し、0.45μmのフィルターでろ過した水溶液を測定試料とした。
次いで測定試料溶液を光路長50mmの石英セルに装入し、島津製作所社製の分光光度計(機器名:UV−1600)にて波長270nmの吸光度を求めた。
・ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルのY.I.(イエローインデックス):ペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの色相を評価する分析項目としてY.Iを採用した。Y.I.値は小さいほどペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの色相が良く、Y.I.値が大きいほど色相が悪くなる相関が得られている。より具体的には、MINOLTA社製色彩色差計CT−210を用いて、CIE−1391表色系の三刺激値Yと色度座標x、yを測定した。まず、光路長20mmのセルCT−A20に蒸留水を入れて、Y=100.00、x=0.3101、y=0.3162として白色校正を行った。その後、同じセルに試料を入れて色彩測定を行った。測定結果であるxとyの値を元に次式によりY.I.を算出した。
Y.I=(234*x+106*y+106)/y (1)
・ポリチオウレタン系樹脂成形体のY.I.(イエローインデックス):ポリチオウレタン系樹脂を含むプラスチックレンズの色相を評価する分析項目としてY.I.を採用した。Y.I.値は小さいほどプラスチックレンズの色相が良く、Y.I.値が大きいほど色相が悪くなる相関が得られている。厚さ9mm、φ75mmの円形平板プラスチックレンズを作成し、MINOLTA社製色彩色差計CT−210を用いて色度座標x、yを測定した。測定結果であるxとyの値を元に上記式(1)によりY.I.を算出した。
・失透度:ポリチオウレタン系樹脂を含むプラスチックレンズの透明度を評価する分析項目として失透度を採用した。失透度は、以下の手順により得た。厚さ9mm、φ75mmの円形平板のレンズ板を作成する。次に、レンズ板に光源(HAYASHI社製Luminar Ace LA−150A)を照射し、濃淡画像装置で測定を行う。捉えた画像を濃淡画像処理により数値化し、失透度を得た。
【0058】
[実施例1]
(ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)の合成)
攪拌機、還流冷却水分離器、窒素ガスパージ管、および温度計を取り付けた2リットル4つ口反応フラスコ内に、3−(3−メルカプトプロパノイルチオ)プロピオン酸を0.2%(面積百分率)含んだ純度99.7%の3−メルカプトプロピオン酸641.5重量部(6.00mol)、ビスペンタエリスリトール4.7重量%とナトリウム0.1重量%およびカルシウム0.02重量%を含んだ純度95.2%ペンタエリスリトール214.6g(1.5mol)、p−トルエンスルホン酸・一水塩5.7g、トルエン278.3gを加えた。尚、使用したペンタエリスリトールは5%水溶液の波長270nmにおける吸光度は、0.032であった。ついで加熱還流下で副生する水を連続的に系外に留去、7.0時間(内温96〜121℃)反応を行い、その後室温まで冷却した。系外に抜き出した水量は、理論生成水に対して99.3%であった。反応液を、塩基洗浄、続いて水洗浄を行い、加熱減圧下でトルエンおよび微量の水分を除去した。その後、濾過し、得られた生成物を同定したところペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)が716.8g得られた。得られたペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)のY.I.は0.9であった。
【0059】
(プラスチックレンズ(樹脂成形体)の製造)
十分に乾燥させたフラスコにジブチル錫ジクロリド0.042g、ゼレックUN(商品名、Stepan社製酸性リン酸エステル)0.084g、バイオソーブ583(商品名、共同薬品社製紫外線吸収剤)0.07gを正確に仕込み、イソシアネート化合物として2,5(6)−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン35.4gを仕込み、25℃で1時間攪拌して溶解させた。その後、この調合液に、チオール化合物として、上記の方法で合成されたペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)16.7g、および4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト―3,6―ジチアオクタン17.9gを装入混合して均一な重合前の重合性組成物とした。
この重合前の重合性組成物を600Paにて1時間脱泡を行った後、3μmPTFEフィルターにて濾過を行った。その後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃から120℃まで徐々に昇温して、18時間で重合させた。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体を更に130℃で4時間アニールを行った。得られた樹脂成形体は、Y.I.が3.5、透明度を表す失透度が19であった。
用いた原料の分析結果および得られたプラスチックレンズの評価結果について、表1に示す。
【0060】
[実施例2]
実施例1で用いたペンタエリスリトールに代えて、ビスペンタエリスリトール4.7重量%とナトリウム0.1重量%およびカルシウム0.01重量%を含んだ純度95.2%で5重量%水溶液の波長270nmにおける吸光度が0.011のペンタエリスリトールを用いた他は、実施例1と同様にペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を合成した。得られたペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)のY.I.は1.0であった。得られたペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を用いて、実施例1と同様にプラスチックレンズを製造した。用いた原料の分析結果および得られたプラスチックレンズの評価結果を表1に示す。
【0061】
[実施例3]
実施例1で用いたペンタエリスリトールに代えて、ビスペンタエリスリトール4.7重量%とナトリウム0.1重量%およびカルシウム0.03重量%を含んだ純度95.2%で5重量%水溶液の波長270nmにおける吸光度が0.06のペンタエリスリトールを用いた他は、実施例1と同様にペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を合成した。得られたペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)のY.I.は0.9であった。得られたペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を用いて、実施例1と同様にプラスチックレンズを製造した。用いた原料の分析結果および得られたプラスチックレンズの評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例4]
十分に乾燥させたフラスコにジブチル錫ジクロリド0.0035g、ゼレックUN(商品名、Stepan社製酸性リン酸エステル)0.063g、バイオソーブ583(商品名、共同薬品社製紫外線吸収剤)0.035gを正確に仕込み、m−キシリレンジイソシアネート30.5gを仕込み、20℃にて混合溶解させた。その後、この調合液に実施例1に記載の方法で合成したペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)39.5gを装入混合して均一な重合前の重合性組成物とした。
この重合前の重合性組成物を600Paにて1時間脱泡を行った後、3μmPTFEフィルターにて濾過を行った。その後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃から120℃まで徐々に昇温して、18時間で重合させた。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体を更に130℃で4時間アニールを行った。得られた樹脂成形体は、Y.I.が3.6、透明度を表す失透度が20であった。
【0063】
[実施例5]
実施例1における、プラスチックレンズ(樹脂成形体)の製造において、チオール化合物として、
ペンタエリスリトールジ(3−メルカプトプロピオネート)と、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)と、2−ヒドロキシメチル−2−(((3−((3−メルカプトプロパノイル)チオ)プロパノイル)オキシ)メチル)プロパン−1,3−ジイルビス(3−メルカプトプロピオネート)と、2−(((3−メルカプトプロパノイル)オキシ)メチル)−2−(((3−((3−メルカプトプロパノイル)チオ)プロパノイル)オキシ)メチル)プロパン−1,3−ジイルビス(3−メルカプトプロピオネート)と、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)のホルマリン縮合物と、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)との混合物16.7g、および4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト―3,6―ジチアオクタン17.9gを用いた他は、実施例1と同様に樹脂成形体の製造を行った。実施例1と同様な樹脂物性の樹脂成形体が得られた。
【0064】
[比較例1]
実施例1で用いたペンタエリスリトールに代えて、ビスペンタエリスリトール4.7重量%とナトリウム0.1重量%およびカルシウム0.03重量%を含んだ純度95.2%で5重量%水溶液の波長270nmにおける吸光度が0.091のペンタエリスリトールを用いた他は、実施例1と同様にペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を合成した。得られたペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)のY.I.は1.5であった。得られたペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を用いて、実施例1と同様にプラスチックレンズを製造した。用いた原料の分析結果および得られたプラスチックレンズの評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示される結果から、ペンタエリスリトール5重量%水溶液の波長270nmにおける吸光度が特定の値以下となるペンタエリスリトールを用いることにより、得られるエステル体のY.I.を良化させることができる。さらに、このエステル体を用いて樹脂を作製した場合においても、その光学特性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルの製造方法によれば、色相等の外観に優れた樹脂成形体を得ることができるペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルを提供することができる。
このペンタエリスリトールメルカプトカルボン酸エステルは、外観等に優れる樹脂を与えるため、種々の光学部材の製造に有効である。
【0068】
この出願は、2015年6月24日に出願された日本出願特願2015−126417号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。