特許第6335439号(P6335439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335439コンピュータ支援設計システムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのための、初期条件を設定するためのコンピュータ実装方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335439
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】コンピュータ支援設計システムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのための、初期条件を設定するためのコンピュータ実装方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   G06F17/50 602B
   G06F17/50 612C
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-120907(P2013-120907)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-2730(P2014-2730A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2016年5月31日
(31)【優先権主張番号】12305655.8
(32)【優先日】2012年6月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500102435
【氏名又は名称】ダッソー システムズ
【氏名又は名称原語表記】DASSAULT SYSTEMES
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローレント サンティクエット
(72)【発明者】
【氏名】バートランド フォール
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0243456(US,A1)
【文献】 特開2001−056872(JP,A)
【文献】 特開平09−190467(JP,A)
【文献】 特開2001−222572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
G06T 17/00 −19/20
G06F 3/048 − 3/0489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ支援設計システムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのための初期条件を設定するためにコンピュータが実行する方法であって、
オブジェクトの前記アセンブリに、前記アセンブリのオブジェクトを連結する運動関節に関連する情報を提供するステップ(S1)と、
前記三次元シーンに組み込まれた操作ツール(M)を提供するステップであって、前記操作ツール(M)は、各軸に関して移動自由度および回転自由度が選択されることを可能にする三軸の参照を備える、提供するステップ(S2)と、
前記アセンブリの一つのオブジェクトに前記操作ツール(M)を取り付けるステップ(S3)と、
前記アセンブリの前記オブジェクトに取り付けられた前記操作ツール(M)の前記移動自由度および/または回転自由度を選択するステップ(S4)であって、前記選択された移動自由度および/または回転自由度は、前記三軸のうちの1つの軸を含む、選択するステップと、
前記選択された移動自由度および/または回転自由度に従って、少なくとも1つの初期条件(IC)を入力するステップであって、前記初期条件は、前記オブジェクトの前記アセンブリの初期速度および/または初期加速度を備え、前記入力するステップは、前記操作ツールの動きの実行により実行され、前記動きは、速度または加速度により特徴付けられ、前記速度または加速度は、前記初期条件とされる、入力するステップ(S5)と、
記初期条件(IC)に基づいてオブジェクトの前記アセンブリについての動的シミュレーションを計算し、および表示するステップであって、前記シミュレーションされたオブジェクトのアセンブリは、前記選択された初期速度および/または加速度で前記軸の方向に移動または回転する、計算し、および表示するステップ(S6)
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記少なくとも一つの初期条件を入力するステップ(S5)は、
初期条件(IC)値の大きさを選択する、第1のサブステップ(S5a)と、
前記大きさの中から初期条件(IC)の値を決定する、第2のサブステップであって、前記第2のサブステップは、前記操作ツールの動きの前記実行により行われる、第2のサブステップ(S5b)とを備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項に記載の方法であって、
前記操作ツール(M)の動作を実行することは、マウスによって押下されたボタンによって、またはディスプレイスクリーン上への指の接触によってなされることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法であって、
前記少なくとも一つの初期条件を入力するステップ(S5)は、前記初期条件(IC)の値を、直接的に供給することにより実行されることを特徴とする方法。
【請求項5】
コンピュータシステムに、請求項1から請求項のいずれかに記載のコンピュータ支援設計システムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのための、初期条件(IC)を設定するための方法を実行させる、コンピュータ実行可能命令を記録した、コンピュータ可読媒体。
【請求項6】
コンピュータ支援設計システムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのための、初期条件(IC)を設定するために、前記システムに、請求項1から請求項のいずれかに記載のステップを実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項7】
コンピュータ支援設計システムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのための、初期条件(IC)を設定するための装置であって、
請求項1から請求項のいずれかに記載の方法の前記ステップを実行する手段を備えることを特徴とする、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンピュータプログラムおよびシステムの分野に関連し、より具体的にはコンピュータ支援設計(CAD:Computer-Aided Design)アプリケーションにおけるオブジェクトのアセンブリの設計に係る分野に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ支援技術は、製品設計を作成するためのソフトウェアソリューションに関連する、コンピュータ支援設計またはCADを含むことが知られている。同様に、CAEは Computer-Aided Engineering の頭文字であり、例として、CAEは未来の製品の物理的な挙動をシミュレーションするための、ソフトウェアソリューションに関連する。CAMは、コンピュータ支援製造(Computer-Aided Manufacturing)の略称であり、ならびに典型的に製造プロセスおよび動作を定義するための、ソフトウェアソリューションを含む。
【0003】
登録商標CATIAとしてダッソーシステムズによって提供されるもののような、製品を形成するオブジェクト(もしくは部品)の設計またはオブジェクトのアセンブリのためのいくつかのシステムおよびプログラムが市場に提供されている。これらCADシステムによって、ユーザは複雑な三次元またはオブジェクトの3Dモデルまたはオブジェクトのアセンブリを構築し、および操作することが可能となる。CADシステムは、このように、辺または線、ある特定の場合では、表面を使用してモデル化されたオブジェクトの表現を提供する。線または辺は、例として、非一様有理Bスプライン(NURBS:Non-Uniform Rational B-Spline)のように、様々な態様において表現されることができる。これらCADシステムは、部品または部品のアセンブリを、モデル化されたオブジェクトとして管理するが、これらモデル化されたオブジェクトは主にジオメトリの仕様である。
具体的には、CADファイルは仕様を含み、この仕様からジオメトリが生成され、同様に当該仕様により、表現が生成されることを可能とする。ジオメトリおよび表現は、単一のCADファイルまたは複数のファイルに格納されることができる。CADシステムは、モデル化されたオブジェクトを設計者に対して表現するためのグラフィックツールを含み、これらツールは複雑なオブジェクトの表示に専門のものであり、CADシステムにおけるオブジェクトを表現するファイルの典型的な容量は、部品につき1メガバイトの大きさになり、そしてアセンブリは数千の部品を備える可能性がある。CADシステムはオブジェクトのモデルを管理し、それらは電子ファイルに格納される。
【0004】
コンピュータ支援技術において、当該技術の効率に関しては、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)が重要な役割を果たす。モデル化されたオブジェクトを操作および/またはナビゲートするために要求される動作のほとんどは、ユーザ(例として、設計者)によって、GUI上で実行することができる。特に、ユーザは、製品を形成するモデル化されたオブジェクトを作成し、修正し、そして削除することができ、および、例えば製品構造を介して、どのようにモデル化されたオブジェクトが相互に関連するかを理解するために、当該製品の調査も行う。伝統的に、これら操作は、GUIの横に位置する専用のメニューおよびアイコンを通じて実行される。最近では、CATIAのようなCADシステムは、製品の表現の近くで、これら操作の呼び出しを可能とする。設計者は、もはやメニューおよびアイコン方向にマウスを動かす必要はない。操作は、このようにマウスが届く範囲内で利用可能である。加えて、操作は意味的に動作する。すなわち、設計者によって選択された所与の操作について、CADシステムは、依然としてマウスの近くで、以前に選択された操作に従って、設計者が選択しそうな新しい操作のセットを、設計者に対して提案する。
【0005】
近年まで、例えば、自動車および航空宇宙産業において使用される、幾つかのコンピュータソフトウェアは、ジオメトリに基づいており、故に、機械技術者は、彼らの作成物を空間においてまたは三次元表示において見ることができる。
【0006】
このドメインにおいて、CATIAのようなコンピュータソフトウェアは、三次元空間における設計ジオメトリを可能とする。このようなメニューおよびツールバーは、ユーザが選択可能なアイコンのセットを包含し、各々のアイコンは一つまたは複数の操作もしくは機能に関連付けられている。これらアイコンの幾つかは、ソフトウェアツールに関連付けられ、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)において表示されるような、3Dジオメトリ上のモデル化された製品もしくは製品の部品に関し編集および/または作業するために適合される。以下の発明の詳細な説明において、用語「製品」、「部品」、「アセンブリ」などは、簡潔に記載するために「部品」と呼ぶことがある。当該「部品」の概念はまた、「オブジェクト」の概念に一般化される。オブジェクトは、最終デジタルモックアップの何れの構成要素をも包含し、例えば、アセンブリを考慮すると、このアセンブリのオブジェクトはサブアセンブリ、部品、運動関節、素材、ECU(Electronic Control Unit)上で実行される組み込みソフトウェア、または読者が飛行機の飛行性能を研究したい場合における空気のモデリングのような、アセンブリの全体環境を表示するために必要な任意のオブジェクトとすることができる。
【0007】
動的シミュレーションにおいて知られているが、Dymolaのようなコンピュータソフトウェアにおける例では、図1に図示されるように、ユーザーインターフェイスは、値を数値的に入力しなければならないパネルを通じて、初期条件を設定することができる。
【0008】
数値を入力することによって初期条件を設定することは苦痛である。なぜならば、この場合、例えば、回転の初期速度のためのベクトルにおける3つの引数を入力する必要があるからである。このようなタスクは長くて単調である。ミスを犯しやすくなるので、修正は注意を要する。
【0009】
ユーザが、回転に関連する初期条件、例えば、位置(角度)、回転速度または加速度を入力するとき、方向付けられた系における数値的な入力を設定する必要がある。このような回転を記述するために、一般的に使用される系は、ヨー(yaw)、ピッチ(pitch)およびロール角(roll angle)、オイラー角(Euler angle)または異なる順番におけるオイラー角に基づく。このような数学的な精巧さはかなり複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7823085号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、一つまたは幾つかの初期条件を考慮して、簡単な態様において、コンピュータ支援設計システムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのための、初期条件を設定するためのコンピュータ実装方法およびシステムを提供することである。
【0012】
本発明の一態様によれば、コンピュータ支援設計システムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのための、初期条件を設定するためのコンピュータ実装方法は、以下を備えることが提案される。
−オブジェクトのアセンブリに、アセンブリのオブジェクトを連結する運動関節に関連する情報を提供するステップ
−シーンに組み込まれた操作ツールを提供するステップであって、各軸の移動自由度および回転自由度を可能にする三軸の参照を備える、提供するステップ
−アセンブリの一つのオブジェクトに操作ツールを取り付けるステップ
−アセンブリのオブジェクトに取り付けられた、操作ツールの自由度を選択するステップ
−選択された自由度に従って、少なくとも一つの初期条件を入力するステップであって、初期条件は、初期位置および/または初期速度および/または初期加速度を備える、入力するステップ
−以前に設定された初期条件を考慮に入れて、リアルタイムで動的シミュレーションを計算し、および表示するステップ
換言すると、初期条件は、適用される位置、および/または最初に適用される速度および/または加速度を備える。
【0013】
したがって、このようなコンピュータ実装方法により、ユーザは初期条件を簡単に入力することが可能となる。
【0014】
実施形態によれば、少なくとも一つの初期条件を入力するステップは、以下を備える。
−初期条件値の大きさまたは範囲を選択する、第1のサブステップと
−大きさの中から初期条件の値を決定する、第2のサブステップ
したがって、ユーザにとって、オブジェクトのアセンブリに対する初期条件の値を直接的に決定することが簡単である。
【0015】
実施形態によれば、少なくとも一つの初期条件を入力するステップは、操作ツールの動作を行うことにより実行され、動作は初期条件に変換される。
【0016】
したがって、ユーザは、例えば、ビデオゲームにおけるジョイスティックで行うように、マウスで初期条件を入力することができる。
【0017】
操作ツールの移動を実行することは、マウスによって押下されたボタンによって、またはディスプレイスクリーン上への指の接触によってなされる。
【0018】
したがって、ユーザにとって、一つまたは複数の初期条件を入力することが非常に簡単である。
【0019】
あるいはまた、少なくとも一つの初期条件を入力するステップは、初期条件の値を、直接的にタイプすることにより実行される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、コンピュータシステムに、上述のコンピュータ支援設計システムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのための、初期条件を設定するための方法を実行させる、コンピュータ実行可能命令を有する、コンピュータ可読媒体が提案される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、コンピュータ支援設計システムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのための、初期条件を設定するための、コンピュータ可読媒体上に格納される、コンピュータプログラム製品であって、システムに、上述のステップを実行させるためのコード手段を備える、コンピュータプログラム製品が提案される。
【0022】
本発明の別の態様によれば、コンピュータ支援設計システムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのための、初期条件(IC)を設定するための装置であって、上述の方法のステップを実装するための手段を備える、装置が提案される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は、非限定的な例によって説明され、および添付の図面によって図示される、幾つかの実施形態を検討することで、より深く理解されよう。
図1】背景技術に係る基本的なユースケースにおける、コンピュータ支援設計システムの、初期条件の入力例を図示する図である。
図2】シミュレーションにおける初期条件を入力することができる必要性を図示する図である。
図3】本発明の一態様に係る、コンピュータ支援設計のシステムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのために初期条件を設定する例を図示する図である。
図4】本発明の一態様に係る、コンピュータ支援設計のシステムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのために初期条件を設定する例を図示する図である。
図5】本発明の一態様に係る、コンピュータ支援設計のシステムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのために初期条件を設定する例を図示する図である。
図6】本発明の一態様に係る、コンピュータ支援設計のシステムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのために初期条件を設定する例を図示する図である。
図7】本発明の一態様に係る、コンピュータ支援設計のシステムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのために初期条件を設定する例を図示する図である。
図8】本発明の一態様に係る、コンピュータ支援設計のシステムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのために初期条件を設定する例を図示する図である。
図9】本発明の一態様に係る、コンピュータ支援設計のシステムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのために初期条件を設定する例を図示する図である。
図10】本発明の一態様に係る、ユーザが幾つかの初期条件をどのように入力することが出来るかを示す、段階的なシナリオを図示する図である。
図11】本発明の一態様に係る、ユーザが幾つかの初期条件をどのように入力することが出来るかを示す、段階的なシナリオを図示する図である。
図12】本発明の一態様に係る、ユーザが幾つかの初期条件をどのように入力することが出来るかを示す、段階的なシナリオを図示する図である。
図13】本発明の一態様に係る、ユーザが幾つかの初期条件をどのように入力することが出来るかを示す、段階的なシナリオを図示する図である。
図14】本発明の一態様に係る、ユーザが幾つかの初期条件をどのように入力することが出来るかを示す、段階的なシナリオを図示する図である。
図15】本発明の一態様に係る、ユーザが幾つかの初期条件をどのように入力することが出来るかを示す、段階的なシナリオを図示する図である。
図16】本発明の一態様に係る、ユーザが幾つかの初期条件をどのように入力することが出来るかを示す、段階的なシナリオを図示する図である。
図17】本発明の一態様に係る、ユーザが幾つかの初期条件をどのように入力することが出来るかを示す、段階的なシナリオを図示する図である。
図18】本発明の一態様に係る、ユーザが幾つかの初期条件をどのように入力することが出来るかを示す、段階的なシナリオを図示する図である。
図19】本発明の一態様に係る、ユーザが幾つかの初期条件をどのように入力することが出来るかを示す、段階的なシナリオを図示する図である。
図20】本発明の一態様に係る、ユーザが幾つかの初期条件をどのように入力することが出来るかを示す、段階的なシナリオを図示する図である。
図21】本発明の一態様に係る、ユーザが幾つかの初期条件をどのように入力することが出来るかを示す、段階的なシナリオを図示する図である。
図22】速度、加速度またはその双方としての初期条件ICを図示する図である。
図23】本発明の一態様に係る、方法を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本方法のステップは、入力されたデータを操作し、および出力を生成することにより、本発明の機能を行うためのコンピュータプログラムを実行する、一つまたは複数のプログラム可能なプロセッサによって、実行されることができる。
【0025】
コンピュータプログラムは、コンパイルまたはインタープリタ言語を含む、プログラミング言語の何れの形式でも記述されることができ、およびコンピュータプログラムは、何れの形態においても実施することができ、スタンドアロンプログラムとして、またはサブルーチン、エレメントまたはコンピューティング環境における使用に適したその他ユニットとして実施することを含むことができる。コンピュータプログラムは、一つのサイトにて、または分散した複数サイトにわたる、一つのコンピュータ上で、または複数コンピュータ上に展開されて実行されることができ、および通信ネットワークによって相互接続されることができる。
【0026】
以下の図により、本発明の機能をより詳細に説明する。
【0027】
図2は、シミュレーションにおける初期条件ICを入力することができる必要性を図示する。
【0028】
図2の上部に、公知のコンピュータ実装方法で作成された、ブレーキフェーズをシミュレートする前の、所望の速度
【0029】
【数1】
【0030】
に達するまでの車の加速の第1フェーズの車のシミュレーションが表現される。
【0031】
図2の下部に、本発明の一態様によれば、コンピュータ実装方法で実現化された、同様のシミュレーションが表現され、当該シミュレーションは、初期条件ICとして入力された速度
【0032】
【数2】
【0033】
を有する車で、直ちに開始する。
【0034】
シミュレーションにおいて、初期条件ICによって、一つの動作フェーズ(この例では、ブレーキフェーズ)に、直ちに注力し、この動作フェーズに至る興味の無いフェーズ(この例では、加速フェーズ)は省略することを可能にする。
【0035】
複数の初期条件が入力されたとき、幾つかの初期条件が両立しない場合は、ソルバは最も可能性のある物理法則のルールを尊重する。
【0036】
本発明によって、ベクトル引数の数値を手入力することなく、オブジェクトのアセンブリの三次元部品上に、直接的に初期条件を設定することの支援を可能とする。
【0037】
図3から図9は、本発明の一態様によれば、コンピュータ支援設計システムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのための、初期条件の例を設定するための例を図示したものである。
【0038】
図3で、当該方法は、停止したもしくは静止したオブジェクトの3Dモデルまたは三次元モデル、またはアセンブリから開始する。この例で、オブジェクトのアセンブリまたは3Dモデルは、遠心力利用の「フライボール」調速機CGであり、当該調速機の支柱の回転が、アセンブリの2つの球体を、ニュートンの基礎的な運動の法則によって設定されるように、平衡状態になるまで広げる。
【0039】
最初に、図3に図示されるように、動的シミュレーションは、表示されたBSTARTボタンにより開始の準備がされる。ステップ1の間、公知のシステムのように、通常の対話方法は、アセンブリの部品の3Dの位置を変化させることが可能な、3DマニピュレータMである。
【0040】
マニピュレータは、マウスまたはタッチスクリーンへの指の接触によって、制御可能なグラフィカルアーティファクト(米国特許第7823085号を参照)である。マニピュレータは、部品上に表示され、異なる方法の操作を示す。マニピュレータMは、3つの直交する軸を有する軸の系、および異なる操作の方向を与える円の3つの円弧、すなわち、3つの軸方向の各々に沿った3つの移動、および3つの円弧に沿った、または換言すると、3つの軸の周りの3つの回転、から構成される。要約すると、マニピュレータMは、6つの自由度を備え、および提供する。
【0041】
軸上における対話は、マニピュレータが配置される位置に部品を移動し、および円弧上における対話は、マニピュレータが配置される位置に部品を回転させる。このマニピュレータは、マニピュレータが配置される位置に、アセンブリの部品を回転および移動させることができる、すなわち、これは配置マニピュレータである。
【0042】
初期条件ICを設定するユーザの意図を表示するために、ユーザは、開始ボタンBSTARTを押下して動的シミュレーションを開始する前に、ユーザが初期条件ICを設定したいと希望する位置の、3Dアセンブリの部品上に、マニピュレータMをドラッグアンドドロップする。システムは、ユーザの意図を理解し、および一時停止された状態におけるシミュレーション(時間=0秒)を開始し、ここでユーザは再び開始ボタンBSTARTを押下する前に、初期状態ICを入力し、そしてシミュレーションは最終的に、ICを考慮に入れて再生する。
【0043】
このようにステップ1において、図4に図示されるように、ユーザは、マニピュレータMのドラッグアンドドロップを、ユーザが初期条件ICを適用したいと思うアセンブリの部品上に行うことができる。
【0044】
次いでステップ2において、ユーザは開始ボタンBSTARTを押下し、結果は図5に表される。ここでマニピュレータMは、操作が要求されることを示し、例えば、マニピュレータMは点滅することができる。シミュレーションは依然として開始せず、モデルCGは動かない。システムは、ユーザが、マニピュレータMを用いて部品上の初期条件を設定することを要求する。システムはまだ一時停止中の状態のままである。
【0045】
初期パネルIPが、例えば、画面右側に表示される。初期パネルIPは、各々が速度または加速度の大きさの表示である、例えば3つのアイコンで、初期条件ICの大きさのセレクタSELを備える。本例において、カタツムリの第1のアイコンは、移動速度が0.1から1m/s、移動加速度が0.1から1m/s2、回転速度が0.1から1rad/s、回転加速度が0.1から1rad/s2、を表示し、野うさぎの第2のアイコンは、移動速度が1から10m/s、移動加速度が1から10m/s2、回転速度が1から10rad/s、回転加速度が1から10rad/s2、を表示し、および飛行機の第3のアイコンは、移動速度が10から100m/s、移動加速度が10から100m/s2、回転速度が10から100rad/s、回転加速度が10から100rad/s2、を表示する、3つのアイコンが表示される。
【0046】
初期パネルIPは、初期条件ICの値を監視するために、ユーザが操作軸、およびゲージGAUを選択しなければならないことを示す、ラインLを備える。さらに、初期パネルIPは、速度、加速度またはその双方として、初期条件ICの選択肢を備える。ステップ3において、ユーザは、マウスまたはタッチスクリーンの場合は指の操作で、マニピュレータMの回転角を選択する。
【0047】
図6に表示されるように、ユーザは、第1の値の大きさに対応する第1のアイコン(カタツムリ)SELを選択し、およびラインL上に示されるように、自由度にZ軸回転を選ぶ。この場合において、Z軸は垂直軸に対応する。ユーザは、選択肢CH上に示されるように、速度として、初期条件ICを適用するために選ぶ。
【0048】
表示された結果は図7に表され、ゲージGAUは、即座に測定された初期条件ICを、リアルタイムに示す。ステップ5において、ユーザは、速度を適用することを停止する。
【0049】
図8は、結果において、それ以上の操作がなされないために、ゲージGAUの針は0を示し、およびゲージGAUの下部に表示される値は、操作シーケンスの間計算される平均値である。インジケータ、この場合において、「Keep」という言葉を備える矢印KPは、初期パネルIPの背景に現れ、ユーザに対して、ユーザが設定した初期条件ICを、ユーザが保持することができることを示し、次いで、マニピュレータMの操作で別軸を選択することにより、別の初期条件ICを設定し、およびオプションで、マニピュレータを別の部品上に配置する。この場合、ステップ6において、0.8の値は、0.85の値に上書きされ、0.8の値は、操作シーケンスの間計算される平均値である。
【0050】
次いで、ユーザは、開始ボタンBSTARTを押下し、入力された初期条件ICを考慮して、最終的にシミュレーションを開始する。
【0051】
結果として、図9に表されるように、シミュレーションは開始し、および実行する。シミュレーションは、ポーズボタンPAUを押下することによって、一時停止することができる。モデルCGは動いており、およびシミュレーションの開始当初の回転速度は0.8rad/sであり、初期条件ICにおいてこの値は固定される。この場合において、シミュレーションの間、モデルCGと対話するために使用することができる、動的マニピュレータDMが現れる。
【0052】
図10から図21に、ユーザがどのように幾つかの初期条件を入力するかを示す、段階的なシナリオが図示される。
【0053】
図10にて、方法は、オブジェクトの3Dモデルもしくは三次元モデルまたはアセンブリが停止され、または静止状態で、開始する。本例では、オブジェクトのアセンブリまたは3Dモデルは、テーブルTAB上のボールBALLである。
【0054】
ステップ1において、ユーザは、マニピュレータMのドラッグアンドドロップを、部品、この場合、アセンブリのボールBALL上に行うことができ、そこは、ユーザが初期条件ICを適用したいと思う場所である。この操作の結果は、図11に表示される。
【0055】
次いでステップ2において、ユーザは、ボタンBSTARTを押下し、および結果は図12に表されるように表示される。システムは、ボールBALL上の初期条件ICを設定するユーザの意図を捕捉し、時間=0秒の一時停止モードにおいて、シミュレーションモードを保持する。このモードにおいて、ユーザは初期条件ICを入力する。
【0056】
図12にて、ステップ2の結果として、初期パネルIPが現れ、操作軸の選択が明確に完了する。ステップ3にて、ユーザは移動軸としてY軸を選択し、および第1の値の大きさに対応するSELの第1のアイコン(カタツムリ)を選択する。ユーザは、選択肢CHに示されるように、移動の速度(velocity)または速度(speed)として、最初の初期条件IC1を適用することを選ぶ。
【0057】
次いで、ステップ4において、図13に図示されるように、ユーザは、マウスまたはタッチスクリーンの場合は指の操作で、移動速度を適用する。
【0058】
表示された結果は図14に表され、ゲージGAUは、最初の初期条件IC1の即座に測定された値を、リアルタイムで示し、この場合においては0.85m/sである。
【0059】
ステップ5において、ユーザは、移動速度を適用することを停止する。
【0060】
図15にて、結果として、それ以上の操作がなされないために、ゲージGAUの針は0を示し、およびゲージGAUの背景に表示される値は、操作シーケンスの間に計算される平均値であり、この場合においては、0.56m/sである。インジケータ、この場合において、「Keep」という言葉を備える矢印KPは、初期パネルIPの背景に現れ、ユーザに対して、ユーザが設定した最初の初期条件IC1を、ユーザが保持することができることを示す。
【0061】
ステップ6にて、ユーザは矢印KPを押下する。
【0062】
結果として、図16にて、バックラインLRは、Y軸上で、0.56m/sの初期移動速度であるという最初の初期条件IC1を表示したままとなる。
【0063】
ステップ7において、ユーザは、マニピュレータMの円弧を選択し、X軸周囲の回転の、第2の初期条件IC2を設定する。システムはユーザの意図を理解し、および図17に表されるように、ゲージ以下の0.1から1rad/sの取り得る値の大きさを示す。
【0064】
このように、ステップ8において、ユーザは、マウスまたはタッチスクリーンの場合では指での操作で、速度または回転を適用する。
【0065】
表示された結果は図18に表され、ゲージGAUは、即座に測定された第2の初期条件IC2の値を、リアルタイムで示し、この場合においては0.56rad/sを示す。
【0066】
ステップ9において、ユーザは回転速度を適用することを停止する。
【0067】
図19にて、結果として、それ以上の操作がなされないために、ゲージGAUの針は0を示し、およびゲージGAUの背景上に表示される値は、操作シーケンスの間に計算される平均値であり、この例においては0.42rad/sとなる。
【0068】
このように、ユーザは、幾つかの初期条件ICを設定し、および保持することができる。
【0069】
この例では、ステップ10において、ユーザはキープボタンKPを押下し、および結果は、図20に表示されるように、2行目を示し、ユーザに対して、2番目の初期条件ICがまさに追加されたことを表示する。最後に入力された初期条件ICのために、ボタンKPを押下することは、オプションである。
【0070】
次いで、ステップ11において、ユーザは、最終的にBSTARTボタンを押下し、および結果として、図21に図示されるように、ボールBALLは、以下の初期条件の双方の効果によって、テーブルTAB上を跳ね返り、そして上昇する。
−ボールBALLを右方向に放るための移動速度
−ボールBALLへの回転の初期条件ICによるスピン効果
図22にて図示されるように、初期条件ICは速度、加速度またはその双方であることができる。
【0071】
さらに、マウスまたはタッチスクリーンの場合では指での操作での、初期条件ICの値の設定は、セレクタSELによって選択される値または範囲の大きさに依存する。
【0072】
あるいはまた、初期条件ICの値は、直接的に入力することができる。
【0073】
上記を要約するために、本発明の一態様に係る方法は、図23にて例示されるステップを備える。
【0074】
最初のステップS1において、方法は、オブジェクトのアセンブリに、アセンブリのオブジェクトを連結する運動関節に関連する情報を提供する。
【0075】
次いで、2番目のステップS2において、方法は、シーンに組み込まれた操作ツールMを提供し、各軸の移動自由度および回転自由度を可能にする三軸の参照を備え、および3番目のステップS3において、方法は、アセンブリの一つのオブジェクトに上記の操作ツールMを取り付けることを備える。
【0076】
このように、4番目のステップS4において、方法は、アセンブリのオブジェクトに取り付けられた操作ツールMの自由度を選択し、および5番目のステップS5において、方法は、選択された自由度に従って、少なくとも一つの初期条件ICを入力し、初期条件ICは、初期位置および、さらには、初期速度および/または初期加速度を備える。
【0077】
次いでステップS5の後に、ユーザは、別の初期条件ICを入力することができ、方法は3番目のステップS3に戻り、またはユーザは、シミュレーションを開始することができ、および方法は、6番目のステップS6において、リアルタイムで計算を行い、および動的シミュレーションの結果をリアルタイムで表示する。
【0078】
このように本発明は、初期条件を考慮した、コンピュータ支援設計システムの三次元シーンにおける、オブジェクトのアセンブリの動的シミュレーションのための、コンピュータ実装方法およびシステムを提供する。
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