(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記略平行四辺形における、橋軸と平行でない2辺の方向と、前記長尺鋼材の長手方向と、が平行となるように前記移動制限具を取り付けることを特徴とする請求項9に記載の移動制限具の施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法の場合、アンカーバーなどの柱状鋼材の曲げ及びせん断抵抗によって橋桁の移動を制限しており、柱状鋼材の寸法が大きくなったり、埋設された柱状鋼材周囲の橋台の補強が大規模になったりして、コストが増大する、という問題があった。
【0005】
また、従来の移動制限具では、地震などにより柱状鋼材又は柱状鋼材周囲の橋台が損壊した場合、これを交換、修復するための工事にも多大なコスト、時間を要する、という問題があった。
【0006】
そこで、出願人は特願2013−50121号において、長尺鋼材が長手方向に伸びることで、橋桁が移動しようとするエネルギーを吸収し、橋桁の移動を制限する技術を提案した。
【0007】
この提案においては、例えば、前記の長尺鋼材の一端を、橋台などの下部構造物上に固定されている固定ブロックに取り付け、長尺鋼材の他端を下部構造物上に固定されない可動ブロックに取り付ける構成とし、地震などによる橋桁の移動規制を、可動ブロックによって行っていた。
【0008】
しかしながら、上記のような固定ブロック及び可動ブロックの構成では、特に、上方からみて略平行四辺形をなす橋桁(斜角橋桁)の地震時の挙動に対しては十分に機能しない可能性があることがわかってきた。
【0009】
このことを、
図14を用いて説明する。
図14は斜角橋桁50の地震時の挙動を説明する図である。
図14(A)は斜角橋桁50付近を上方からみた図であり、
図14(B)は
図14(A)のX−X’断面を示す図であり、
図14(C)及び
図14(D)は地震に伴う斜角橋桁50の移動を示す図である。
【0010】
橋台10における桁座13には、X−X’上にはない支承30が設けられており、支承30の上に斜角橋桁50が載置されている。なお、斜角橋桁50は、上方からみて略平行四辺形をなす橋桁であるが、厳密な意味で平行四辺形ではないことを付言しておく。
【0011】
上記のように構成されている斜角橋桁50においては、地震による振動が加わると、(
1)略平行四辺形をなす斜角橋桁50の鈍角を有する頂点を中心として、
図14(C)に示す矢印方向に斜角橋桁50が回転したり、(2)略平行四辺形をなす斜角橋桁50の鈍角を有する頂点と、パラペット15との間ですべりが発生し、斜角橋桁50の中心付近を中心として、
図14(D)に示す矢印方向に斜角橋桁50が回転したりするような挙動を示すことがある。このような斜角橋桁50の地震時の回転挙動に対しては、先に提案した固定ブロック及び可動ブロックの構成では、追随することができず、問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するため、請求項1に係る発明は、橋台と、前記橋台の桁座上に設置される橋桁とに取り付けられ、前記橋桁が移動する際の移動を制限する移動制限具において、長尺鋼材と、前記橋桁側に設けられ、前記橋桁と前記長尺鋼材とを、回動可能に結合する橋桁側ヒンジ構造部と、前記橋台側に設けられ、前記橋台と前記長尺鋼材とを、回動可能に結合する橋台側ヒンジ構造部と、からなり、前記橋桁は上方よりみると略平行四辺形をなす橋桁であり、前記略平行四辺形をなす前記橋桁の鈍角を有する頂点の近傍の2箇所に取り付
けられることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の移動制限具において、前記長尺鋼材が、前記橋桁が移動しようとするエネルギーを吸収し、前記橋桁の移動を制限することを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の移動制限具において、前記長尺鋼材は、第1端部と第2端部と、前記第1端部と前記第2端部との間を連結する連結部とを、有しており、前記第1端部には第1貫通孔が、また、前記第2端部には第2貫通孔が設けられることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に係る発明は、請求項
3に記載の移動制限具において、前記橋桁側に取り付けられる延長部貫通孔を有する延長部材と、第1ピンと、を有しており、前記延長部貫通孔と、前記第1貫通孔との双方に前記第1ピンが貫通し、支点となることで前記橋桁側ヒンジ構造部が構成されることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、請求項
3に記載の移動制限具において、前記第1貫通孔が丸孔であり、前記第2貫通孔が長孔であ
り、前記長孔の長径方向が、前記長尺鋼材の長手方向と、平行であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に係る発明は、請求項
3乃至請求項
5のいずれか1項に記載の移動制限具において、前記橋台側に取り付けられる台座部と、前記台座部から鉛直上方に突出する第2ピンと、を有しており、前記第2貫通孔に前記第2ピンが貫通し、支点となることで前記橋台側ヒンジ構造部が構成されることを特徴とする。
【0018】
また、請求項7に係る発明は、請求項
4に記載の移動制限具において、前記延長部材は、上側延長部材と、下側延長部材とからなり、前記上側延長部材と、前記下側延長部材とで、前記橋桁の下フランジを狭持すると共に、前記上側延長部材と、前記下側延長部材と、前記下フランジとに設けた貫通孔によりボルト締めすることで、前記延長部材が前記橋桁に固着されることを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に係る発明は、請求項
4に記載の移動制限具において、前記延長部材は、2つの上側延長部材と、下側延長部材とからなり、一方の前記上側延長部材と、前記下側延長部材とで、前記橋桁の下フランジの一方側を狭持すると共に、他方の前記上側延長部材と、前記下側延長部材とで、前記下フランジの他方側を狭持し、前記下フランジが延出する一方側に配された、一方の前記上側延長部材と、前記下側延長部材とに設けた貫通孔によりボルト締めすると共に、前記下フランジが延出する他方側に配された、他方の前記上側延長部材と、前記下側延長部材とに設けた貫通孔によりボルト締めすることで、前記延長部材が前記橋桁に固着されることを特徴とする。
【0020】
また、請求項9に係る発明は、請求項1乃至請求項
8のいずれか1項に記載された移動制限具の施工方法であって、前記略平行四辺形の頂点近傍の主桁に、前記移動制限具を取り付けることを特徴とする移動制限具の施工方法である。
【0021】
また、請求項10に係る発明は、請求項
9に記載の移動制限具の施工方法において、橋軸の方向と、前記長尺鋼材の長手方向と、が垂直となるように前記移動制限具を取り付けることを特徴とする。
【0022】
また、請求項11に係る発明は、請求項
9に記載の移動制限具の施工方法において、前記略平行四辺形における、橋軸と平行でない2辺の方向と、前記長尺鋼材の長手方向と、が平行となるように前記移動制限具を取り付けることを特徴とする。
【0023】
また、請求項12に係る発明は、請求項
9乃至請求項
11のいずれか1項に記載の移動制限具の施工方法において、前記桁座が桁座拡幅部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る移動制限具は、橋桁と長尺鋼材とを、回動可能に結合する橋桁側ヒンジ構造部と、橋台と長尺鋼材とを、回動可能に結合する橋台側ヒンジ構造部と、を有しているので、橋桁の地震時の回転挙動に対して追随することが可能となり、長尺鋼材が伸びることで有効にエネルギーを吸収し、橋桁の移動を制限することが可能となる。
【0032】
また、本発明に係る移動制限具の施工方法によれば、橋桁の地震時の回転挙動に対して効果的に移動制限具が作用するように、移動制限具を設置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る移動制限具100が設置された斜角橋桁50付近を上方からみた図であり、
図2は本発明の第1実施形態に係る移動制限具100が設置された斜角橋桁50の斜視図である。
【0035】
以下、本実施形態においては、本発明に係る移動制限具100を、上方よりみると略平行四辺形をなす斜角橋桁50に設置する例について説明するが、本発明に係る移動制限具100は、これに限らず、上方よりみると長方形をなす橋桁に設置することも可能である。また、本発明に係る移動制限具100は、新設の橋桁に適用することもできるし、既設の橋桁に適用することもできる。
【0036】
図1に示すように、本発明に係る移動制限具100は、略平行四辺形をなす斜角橋桁50の鈍角を有する頂点の近傍の2箇所に、斜角橋桁50を構成する主桁60に取り付けることが望ましい。このようなレイアウトによれば、斜角橋桁50の地震時回転挙動に伴い、移動制限具100の長尺鋼材170が伸びる形で、斜角橋桁50の移動のエネルギーを吸収することができるからである。長尺鋼材170は、圧縮されることでエネルギーを吸収するより、伸ばされることでエネルギーを吸収する方が効率がよい。
【0037】
なお、本明細書においては、
図2における2点鎖線をもって、斜角橋桁50が上方よりみると略平行四辺形をなすものとして考えるが、斜角橋桁50が厳密な意味で平行四辺形をなすわけではない。
【0038】
また、本発明に係る移動制限具100は、略平行四辺形をなす斜角橋桁50の鈍角を有する頂点の近傍の2箇所に限らず、略平行四辺形をなす斜角橋桁50の全ての頂点の近傍、すなわち、4箇所に取り付けるようにしてもよい。この場合、いずれの移動制限具100も、予想される斜角橋桁50の地震時回転挙動に対して、長尺鋼材170が伸びるような形で取り付けることが好ましい。
【0039】
斜角橋桁50は、長さが共通で、互いに平行である2つの主桁60から構成されている。ただ、主桁60の端面部がそろえられていないため、斜角橋桁50を上方よりみると略平行四辺形をなすものとなっている。なお、
図2において、2つの主桁60同士を渡す構造物である、横構や端対傾構などの構造物については図示省略している。
【0040】
主桁60は、上フランジ63と、下フランジ64と、これら2つのフランジを連結している腹板65とから構成され、断面I形状をなしている。本発明に係る移動制限具100は、主桁60の下フランジ64を利用して取り付ける構成となっている。
【0041】
なお、以下の実施形態においては、上記のように、互いに平行である2つの主桁60を有するタイプの斜角橋桁50を例に説明を行うが、本発明に係る移動制限具100は、箱型形式の橋桁に適用することも可能である。
【0042】
次に、本発明に係る移動制限具100を、主桁60の下フランジ64に取り付ける具体的な方法について説明する。
図3は本発明の第1実施形態に係る移動制限具100の施工前の主桁60と橋台10の様子を示す図である。
図3に示すように、主桁60は図示していない支承上に載置されており、移動制限具100を取り付ける箇所においては、橋台10と主桁60との間には所定の空間が形成されている状態となる。
【0043】
延長部材114は、下フランジ64の上側に配される上側延長部材115と、下フランジ64の下側に配される下側延長部材116とからなっている。また、上側延長部材115、下側延長部材116には、それぞれ2つの延長部貫通孔117が設けられている。
【0044】
図4に示すように、主桁60の下フランジ64には貫通孔を設けて、上側延長部材115と下側延長部材116とにより、下フランジ64を挟み込み、延長部貫通孔117と下フランジ64の貫通孔を利用して、ボルト103、ナット105で締結することで、下フランジ64と上側延長部材115と、下フランジ64と下側延長部材116とを一体的に固着する。
【0045】
一方、橋台10の桁座13には、
図4に示す台座部134を不図示のボルトなどにより取り付ける。この台座部134には、鉛直上方に立設された雄ネジ部135が設けられている。
【0046】
なお、この台座部134を取り付ける桁座13としては、既設の桁座を拡幅した、所謂、桁座拡幅部を用いることもできる。
【0047】
次に、主桁60の下フランジ64に取り付けられた延長部材114と、桁座13に取り付けられた台座部134との間を渡す長尺鋼材170が取り付けられるが、このような長尺鋼材170について説明する。
図5は本発明の第1実施形態に係る移動制限具100に用いる長尺鋼材170を説明する図である。
【0048】
図5に示す長尺鋼材170は、例えば、所定厚さの鋼材から切り出されて製造されたものであり、主桁60の延長部材114側に配される第1端部171と、桁座13の台座部134側に配される第2端部172と、第1端部171と第2端部172と連結部177とを有している。連結部177は、断面矩形の鋼材であり、この連結部177が伸ばされることで、斜角橋桁50が移動しようとするエネルギーを吸収し、斜角橋桁50の移動を制限することが想定されている。なお、このような長尺鋼材170の機能自体は、先に出願した特願2013−50121号の記載と同様であるので、これを参照して援用することとする。
【0049】
長尺鋼材170の第1端部171には第1貫通孔175が、また、長尺鋼材170の第2端部172には第2貫通孔176が設けられている。また、第1貫通孔175が丸孔であり、第2貫通孔176が長孔であり、かつ、前記長孔の長径方向が、長尺鋼材170の長手方向と、平行とされている。
【0050】
移動制限具100として、長尺鋼材170が取り付ける場合、長孔である第2貫通孔176は、橋台10の橋桁側ヒンジ構造部110に配されることとなるが、このような構成であると、地震時の斜角橋桁50の橋軸方向への変位に基づく、長尺鋼材170への不要な応力を低減することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、第1貫通孔175が丸孔であり、第2貫通孔176が長孔である例を挙げたが、上記のように長尺鋼材170への不要な応力を低減するためには、第1貫通孔175を長孔とし、第2貫通孔176を丸孔とすることもできる。この場合には、第1貫通孔175の長孔の長径方向は、斜角橋桁50の長手方向と平行とすることが好ましい。
【0052】
図6は、上記のような長尺鋼材170を取り付ける工程を示している。長尺鋼材170の第1端部171側においては、上側延長部材115の延長部貫通孔117と、第1端部171の第1貫通孔175と、下側延長部材116の延長部貫通孔117と、にボルト103を挿通し、ナット105締めを行う。ここで、本発明に係る移動制限具100においては、延長部貫通孔117と、第1貫通孔175との双方にボルト103が貫通し、これが支点となることで橋桁側ヒンジ構造部110が構成されるようになっている。このため、ナット105締めを行う際には、必ずしも、強固にこれを行う必要はない。なお、橋桁側ヒンジ構造部110におけるボルト103を、特許請求の範囲では「第1ピン」と表現している。
【0053】
また、長尺鋼材170の第2端部172側においては、第2貫通孔176に台座部134の雄ネジ部135が挿通され、ナット105締めを行う。ここで、本発明に係る移動制限具100においては、第2貫通孔176に雄ネジ部135が貫通し、支点となることで橋台側ヒンジ構造部130が構成されるようになっている。橋台側ヒンジ構造部130においても、ナット105締めを行う際には、必ずしも、強固にこれを行う必要はない。なお、橋台側ヒンジ構造部130における雄ネジ部135を、特許請求の範囲では「第2ピン」と表現している。
【0054】
図7は本発明の第1実施形態に係る移動制限具100が設置完成図である。本発明に係る移動制限具100は以上のように構成されているために、斜角橋桁側ヒンジ構造部110は、斜角橋桁50と長尺鋼材170とを、回動可能に結合している。さらに、橋台側ヒンジ構造部130は、実質的に、橋台10と長尺鋼材170とを、回動可能に結合することとなる。
【0055】
図8は本発明の第1実施形態に係る移動制限具100の効果を説明する図であり、移動制限具100が施工された斜角橋桁50を上方から見た図である。[発明が解決しようとする課題]の欄でも説明したように、地震時においては、斜角橋桁50は回転挙動を示すことがある。すなわち、地震時においては、斜角橋桁50が
図8でみて反時計回りに回転する可能性がある。
【0056】
これに対して、これまで説明したように、本発明では、略平行四辺形をなす斜角橋桁50において、前記略平行四辺形の頂点が鈍角である、2つの頂点近傍の主桁60に、本発明に係る移動制限具100が取り付けられている。さらに、これまで説明したように、斜角橋桁側ヒンジ構造部110により、斜角橋桁50と長尺鋼材170とは、回動可能とな
っていることに加え、橋台側ヒンジ構造部130により、橋台10と長尺鋼材170も回動可能となっているので、斜角橋桁50の地震時回転挙動に対しても、長尺鋼材170が伸びつつ、斜角橋桁50が移動しようとするエネルギーを吸収することで、斜角橋桁50の移動を制限することが可能となる。
【0057】
斜角橋桁50の地震時の回転挙動に対しては、先に提案した固定ブロック及び可動ブロックの構成(特願2013−50121号)では、本発明に係る移動制限具100では、2つのヒンジ構造部を採用することで、長尺鋼材170が効果的に機能することとなる。
【0058】
以上のように、本発明に係る移動制限具100は、斜角橋桁50と長尺鋼材170とを、回動可能に結合する橋桁側ヒンジ構造部110と、橋台10と長尺鋼材170とを、回動可能に結合する橋台側ヒンジ構造部130と、を有しているので、斜角橋桁50の地震時の回転挙動に対して追随することが可能となり、長尺鋼材170が伸びることで有効にエネルギーを吸収し、橋桁の移動を制限することが可能となる。
【0059】
また、本発明に係る長尺鋼材170の施工方法によれば、橋桁の地震時の回転挙動に対して効果的に長尺鋼材170が作用するように、長尺鋼材170を設置することができる。
【0060】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、使用する長尺鋼材170の構成が先の実施形態と異なるのみであるので、この長尺鋼材170の構成について以下説明する。
図9は本発明の第2実施形態に係る移動制限具100に用いる長尺鋼材170を説明する図である。
【0061】
第1実施形態における長尺鋼材170では、その連結部177が、断面矩形の鋼材で構成されていたが、第1実施形態においては、連結部が、鉄筋からなる鉄筋連結部178で構成されている。
【0062】
本実施形態では、鉄筋連結部178は、第1端部171の上側と、第2端部172の上側とを連結するもの、及び、第1端部171の下側と、第2端部172の下側とを連結するものの2本から構成されているが、鉄筋連結部178を用いる本数については任意である。各端部と鉄筋連結部178との間は、溶接により互いを固着させるようにしている(溶接部179)。
【0063】
地震後には物資の供給が途絶える可能性があるが、本実施形態では、長尺鋼材170における重要部品に、汎用性の高い鉄筋を用いているので、第2実施形態によれば、第1実施形態による効果に加え、地震後の物資不足時にも、早急に斜角橋桁50の復旧を行うことができる、というメリットを享受することができる。
【0064】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図10は本発明の第3実施形態に係る移動制限具100が設置完成図である。第3実施形態に係る移動制限具100においては、延長部材114を主桁60に取り付ける方法が、第1実施形態に係る移動制限具100と異なるので、以下、これについて説明する。
【0065】
本発明の第1実施形態に係る移動制限具100においては、
図4に示すように、主桁60の下フランジ64に貫通孔を設けて、上側延長部材115と下側延長部材116とにより、下フランジ64を挟み込み、延長部貫通孔117と下フランジ64の貫通孔を利用して、ボルト103、ナット105で締結することで、下フランジ64と上側延長部材115と、下フランジ64と下側延長部材116とを一体的に固着していた。
【0066】
第1実施形態に係る移動制限具100では、上記のように、主桁60の下フランジ64には貫通孔を設けるようにしていたので、例えば、既設の斜角橋桁50に移動制限具100を取り付ける場合、新たに下フランジ64に貫通孔を設ける必要がある。既設の斜角橋桁50の下フランジ64に貫通孔を設ける作業は、現場においては必ずしも容易ではなく、可能であれば、このような作業を省略することが望ましい。
【0067】
そこで、第3実施形態においては、上側延長部材を、2つの独立した上側延長部材115、115’から構成すると共に、上側からは2つ上側延長部材115、115’で、下側からは下側延長部材116で、下フランジ64を挟み込み、延長部貫通孔117を利用して、ボルト103、ナット105で締結することで、2つ上側延長部材115、115’と下側延長部材116とで下フランジ64を狭持するような状態で、上側延長部材115、115’と下フランジ64と下側延長部材116とを一体的に固着するようにしている。
【0068】
すなわち、第3実施形態に係る移動制限具100は、一方の上側延長部材115と、下側延長部材116とで、斜角橋桁50の下フランジ64の一方側を狭持すると共に、他方の上側延長部材115’と、下側延長部材116とで、下フランジ64の他方側を狭持し、下フランジ64が延出する一方側に配された、一方の上側延長部材115と、下側延長部材116とに設けた貫通孔によりボルト締めすると共に、下フランジ64が延出する他方側に配された、他方の上側延長部材115’と、下側延長部材116とに設けた貫通孔によりボルト締めすることで、延長部材が斜角橋桁50に固着されることを特徴としている。
【0069】
上記のような第3実施形態に係る移動制限具100によれば、先の実施形態による効果に加え、延長部材を取り付ける際には、主桁60の下フランジ64に貫通孔を設ける必要がなくなると共に、下フランジ64に設ける貫通孔による主桁60の剛性低下を防止することができる、という効果も得ることができる。
【0070】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図11は本発明の第4実施形態に係る移動制限具100が設置完成図である。第1実施形態に係る移動制限具100と、第3実施形態に係る移動制限具100との相違点は、第1実施形態に係る移動制限具100においては、移動制限具100における橋桁側ヒンジ構造部110が設置される場所が、2つの主桁60の外側、すなわち、斜角橋桁50の外側であったのに対して、第3実施形態においては、移動制限具100における橋桁側ヒンジ構造部110が設置される場所が、2つの主桁60の間、すなわち、斜角橋桁50の内側であることである。
【0071】
橋桁側ヒンジ構造部110を斜角橋桁50の内側にレイアウトするために、本実施形態では、
図11において、上から下に順に、下フランジ64に取り付けられた上側延長部材115と、スペーサーとして機能する貫通孔を有する補完部材119と、下フランジ64に取り付けられた下側延長部材116と、スペーサーとして機能する貫通孔を有する補完部材119’と、長尺鋼材170の第1端部171とが、ボルト103及びナット105で締結されることにより構成されている。
【0072】
移動制限具100を施工する際には、様々な現場に応じた施工条件があるが、上記のような第4実施形態によれば、先の実施形態による効果に加え、斜角橋桁50の外側に橋桁側ヒンジ構造部110をレイアウトすることができないような現場にも対応することが可能となる。
【0073】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図12は本発明の第4実施形態に係る移動制限具100が設置完成図である。
【0074】
第5実施形態は、延長部材を取り付ける際には、主桁60の下フランジ64に貫通孔を設けないようにした第3実施形態の構成と、さらに、橋桁側ヒンジ構造部110を設置する場所を斜角橋桁50の内側とする第4実施形態の構成の双方を持ったものとなっている。
【0075】
橋桁側ヒンジ構造部110を斜角橋桁50の内側にレイアウトするために、本実施形態では、
図12において、上から下に順に、下フランジ64に固着している上側延長部材115と、スペーサーとして機能する貫通孔を有する補完部材119と、下フランジ64に固着している下側延長部材116と、スペーサーとして機能する貫通孔を有する補完部材119’と、長尺鋼材170の第1端部171とが、ボルト103及びナット105で締結されることにより構成されている。
【0076】
以上のような、第5実施形態に係る移動制限具100によれば、先の実施形態による効果に加え、延長部材を取り付ける際には、主桁60の下フランジ64に貫通孔を設ける必要がなくなると共に、下フランジ64に設ける貫通孔による主桁60の剛性低下を防止することができる、という効果も得ることができる。
【0077】
さらに、移動制限具100を施工する際には、様々な現場に応じた施工条件があるが、第5実施形態によれば、先の実施形態による効果に加え、斜角橋桁50の外側に橋桁側ヒンジ構造部110をレイアウトすることができないような現場にも対応することが可能となる。
【0078】
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
図13は本発明の実施形態に係る移動制限具100の設置方法のバリエーションを説明する図であり、
図13(A)は第1実施形態に係る移動制限具100の設置形態を示す図であり、
図13(B)は第6実施形態に係る移動制限具100の設置形態を示す図である。いずれの図も、移動制限具100が設置された斜角橋桁50付近を上方からみた図である。
【0079】
図13(A)に示されるように、第1実施形態に係る移動制限具100においては、橋軸の方向と、長尺鋼材170の長手方向と、が垂直となるように移動制限具100が取り付けられる構造となっている。このような取り付け方は、比較的簡便に斜角橋桁50に取り付けることができる方法であるということができる。
【0080】
一方、
図13(B)に示されるように、第6実施形態に係る移動制限具100においては、斜角橋桁50がなす略平行四辺形における、橋軸と平行でない2辺の方向と、長尺鋼材170の長手方向と、が平行となるように移動制限具100が取り付けられる構造となっている。このような取り付け方によれば、地震時回転挙動によって斜角橋桁50が反時計回りに回転しようとする力が働く方向に対して、長尺鋼材170の長手方向とが略平行となる可能性が高く、斜角橋桁50が効率よく伸びて、斜角橋桁50が移動しようとするエネルギーを吸収し、斜角橋桁50の移動を制限することが予想される。
【0081】
ただし、地震時において、斜角橋桁50が、必ずしも回転挙動を起こすばかりではないので、移動制限具100の設置形態としては、
図13(A)に示す設置レイアウトと、
図13(B)に示す設置レイアウトとの間の、中間のレイアウトについても、移動制限具100を有効に機能させ得るものと考えられる。
【0082】
以上、本発明に係る移動制限具は、橋桁と長尺鋼材とを、回動可能に結合する橋桁側ヒンジ構造部と、橋台と長尺鋼材とを、回動可能に結合する橋台側ヒンジ構造部と、を有しているので、橋桁の地震時の回転挙動に対して追随することが可能となり、長尺鋼材が伸
びることで有効にエネルギーを吸収し、橋桁の移動を制限することが可能となる。
【0083】
また、本発明に係る移動制限具の施工方法によれば、橋桁の地震時の回転挙動に対して効果的に移動制限具が作用するように、移動制限具を設置することができる。