(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明による手術用訓練デバイスを上方から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明による訓練器の上カバーを上方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、腹壁の断面を模すようになった、本発明による挿入体の側面図である。
【
図4】
図4は、円形の開口部を持つ本発明による挿入体を上方から見た部分斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、円形の開口部を持つ本発明による挿入体を上方から見た斜視図である。
【
図5B】
図5Bは、円形の開口部を持つ本発明による挿入体を上方から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明による挿入体の単一ポートデバイスを上方から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明による内視鏡を上方から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明による内視鏡の遠位端の一部を透明であるように示す斜視図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明によるレンズアッセンブリチップの一部を透明であるように示す斜視図である。
【
図9B】
図9Bは、本発明による内視鏡の遠位端に取り付けられたレンズアッセンブリチップの断面図である。
【
図10A】
図10Aは、本発明による内視鏡の遠位端のスリーブの一部を透明であるように示す斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明による可撓性チップを持つ内視鏡の遠位端の断面図である。
【
図12】
図12は、本発明による腹腔鏡訓練器の別の態様の斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明による挿入体の部分断面斜視図である。
【
図17】
図17は、本発明による、挿入体及びチューブが取り付けられたレッグを持つ腹腔鏡訓練器の斜視図である。
【
図18】
図18は、チューブ及び挿入体が取り付けられた本発明によるレッグの斜視本発明の概略図である。
【
図19】
図19は、本発明による挿入体を持つレッグの斜視図である。
【
図20】
図20は、アクセスデバイス、挿入体及び人工腫瘍が設けられたチューブを含む、本発明による腹腔鏡訓練器の斜視図である。
【
図21】
図21は、本発明に従って前方に角度をなした腹腔鏡訓練器の斜視図である。
【
図22】
図22は、本発明に従って後方に角度をなした腹腔鏡訓練器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中に開示した実施例と同様のハンドアクセスデバイス、単一ポート(single-port) デバイス、及び回収デバイスは、米国特許第7,473,221号、米国特許第6,958,037号、米国特許第7,650,887号、公開された米国特許出願第2009−0187079号、公開された米国特許出願第2010−0094227号に開示されている。出典を明示することにより、これらの文献に開示された全ての内容は本明細書の開示の一部とされる。
【0012】
図1は、開示のポータブル骨盤/腹腔鏡手術訓練器の一実施例を示す。訓練器は、トルソー形状の上カバー1を含む。カバー1は、折り畳み式ヒンジ3で下プレート即ちベース2に連結されている。モニタ4が上カバー1に取り付けられており、持ち運び又は収容を低プロファイル配向で行うため、上カバー1上に折り畳むことができる。
【0013】
図1に示すように、挿入体5の一実施例が上カバー1の開口部に嵌着してある。この実施例では、挿入体5は、固定された多数の穴6を有する。これらの穴は、随意であるが、トロカール又は手術器具挿入部位として機能する。挿入体5は、更に、一つの大きな開口部7を有し、この穴にハンドアクセスデバイス、単一サイト(single-site) デバイス、又は組織シミュレーション領域を挿入できる。挿入体5は、使用中にハンドアクセスデバイス又は単一サイトデバイスに対する機械的支持を提供するため、十分な強度及び剛性を持つ材料で形成されている。一つの好ましい材料は硬質プラスチックである。これは十分な剛性及び強度を提供するが軽量であり、訓練器ユニットの持ち運びを容易にする。別の態様では、穴6及び開口部7を上カバー1に直接形成する。
【0014】
図2に示すように、上カバー8の別の実施例は、挿入体の他の実施例、例えば、皮膚又は皮膚及び組織の幾つかの層に模したフォームパッドを受け入れるようになった開口部9を有する。別の実施例では、挿入体は、フォーム又は他の適当な材料でできた、好ましくは腹壁の様々な層に模して色分けした多数の層を含んでいてもよい。
【0015】
腹壁に模したパッド又は挿入体5を
図3に概略に示す。挿入体5のこの態様では、フォーム又はフォーム状材料でできた多数の層を使用し、腹壁の様々な層の外観、手触り、及び密度をシミュレートする。例えば、皮膚に模した上層10は、ピンク色の材料、ベージュ色の材料、黄褐色の材料、褐色の材料、又は黒色の材料から形成されていてもよい。一つの適当な材料はベージュ/黄褐色、オレンジ色又はピンク色のフォームシート、クリエーティブハンド(クリエーティブハンズ(CREATIVE HANDS)は登録商標である)であり、2mm厚のシートで入手できる。
【0016】
皮下脂肪層に模した第2層11をパッドに追加してもよい。この層についての一つの適当な材料は、布や織物を販売している多くの店で入手できる、2.54cm(1インチ)厚のシートクッションフォームである。別の態様では、多くの金物店でパッド入りラップとして入手できる、独立気泡充填材料でできた約3.18mm(約1/8インチ)厚の二枚乃至三枚のシートを使用してもよい。
【0017】
腹壁の筋肉層に模した一枚又は数枚のシートでできた第3層12をパッドに追加する。この層についての一つの適当な材料はレッドフォーミークリエーティブハンズ(レッドフォーミークリエーティブハンズ(Red Foamie CREATIVE HANDS)は登録商標である)であり、好ましくは、二枚乃至三枚が互いに重ねられている。好ましくは、疑似筋肉の二枚乃至三枚の層をパッドで使用する。
【0018】
一つ又はそれ以上の疑似筋膜の第4層13が疑似筋肉層12間に配置されている。疑似筋膜についての一つの適当な材料は、多くの文具店や金物店で入手できる薄いディッシュパックである。
【0019】
腹膜前脂肪層を模した第5層14もまた、二枚乃至三枚の独立気泡充填材料製シートで形成されていてもよい。
【0020】
本明細書中に説明したように、トロカールを挿入するための適当な技術についてオペレータを訓練する上で、腹壁を模した挿入体を使用してもよい。詳細には、光学トロカール(optical trocars) を使用することにより、皮膚への挿入プロセス及び腹腔内への突出プロセスを視覚化できる。使用者は、トロカールの先端に焦点を合わせるようになったカメラ又は内視鏡を使用し、疑似腹壁の様々な層を通したトロカールの挿入の進捗状況を訓練器のディスプレーモニタ上で追跡できる。
【0021】
図4は、ハンドアクセスデバイス又は単一サイトデバイスを受け入れるようになった大きな円形の開口部16を持つ挿入体5の別の態様の拡大図を示す。ハンドアクセスデバイスを非臨床訓練環境で使用するため、挿入体が安定しており且つ剛性であることが必要とされ、被訓練者が使用中に縁部17と接触すると、縁部17は、被訓練者にとって不自然であると感じられる。同様に、疑似組織で単一サイトデバイスを使用すると、訓練環境での使用中に縁部17が腹腔鏡ツールと接触したとき、被訓練者にとって固く不自然であると感じられる。更に自然な感じを提供するため、
図5Aは、挿入体5の開口部16の内側に配置された、即ち訓練器の上カバー1の開口部7内に直接的に配置された開創器18を示す。開創器18は、比較的柔らかく更に自然な感じの縁部20を提供する環状リング19を含む。同様に、
図5Bは、比較的柔らかく更に自然な感じの縁部23を提供する比較的小径の環状リング22を持つ開創器21を示す。一態様では、環状リング19、22はシリコーン製であるが、当業者には理解されるように、切開傷部位、特に開創器によって保護された切開傷部位の触感及び密度を模擬的に再現するこの他の材料を使用してもよい。大径の開口部が設けられた開創器18は、ハンドアクセスデバイスで使用するのに特に有用であるが、小径の開口部が設けられた開創器21は、単一サイトデバイスで使用するのに特に有用である。単一サイトデバイスは、患者の臍のところに形成された一つの切開部に挿入した進入入口であり、これを通して内視鏡及び他の手術用手用器具を挿入し、最新の低侵襲性腹腔鏡−内視鏡手術を行う。
【0022】
図6は、
図5Bの挿入体開創器21に固定した単一サイトデバイス24を示す。内視鏡、及びグラスパ(把握器)や鋏等の作業ツールをトロカールポート25、26、27を通して訓練器のキャビティに挿入する。使用者が内視鏡カメラ及び手用ツールをトロカールポート25、26、27内で操作するとき、ツール及び/又はカメラが開創器21の縁部23と接触する。これは、より自然に感じられるが、挿入体5の下側の表面又は大きな開口部7は、それでも、使用中に単一サイトデバイス24又はハンドアクセスデバイスに対して機械的支持を提供するのに十分な剛性を提供する。
【0023】
図7は、本発明に開示の腹腔鏡訓練器の部分である腹腔鏡の概略図である。腹腔鏡は、シャフト29の遠位端に取り付けられたカメラ28を含む。シャフト29はハンドル30に連結されている。カメラ28に電力を提供し、ケーブル31を通してビデオ信号を供給する。ケーブルは、コンピュータ、ビデオディスプレー、及び電源に接続するプラグ32で終端する。プラグ32は、訓練器に直接接続される。ここで、電源及びモニタディスプレーに接続する。電源は、訓練器の外部にあってもよいし、内部にあってもよい。
【0024】
図8に示すように、カメラシャフト33の遠位端には、CMOS又はCCDを用いたカメラ34が収容されている。このカメラには焦点深度が10.16cm(4インチ)乃至無限大のレンズシステムが組み込まれているが、訓練器についての代表的な焦点深度は、約10.16cm(4インチ)乃至15.24cm(6インチ)である。スコープ先端35には、更に、一般的な使用中に強力に照明するため、発光ダイオード(LEDs)が組み込まれている。訓練器の疑似組織を通した光学トロカールの挿入を見るための透明な遠位端を持つ光学トロカールに、内視鏡や腹腔鏡等のスコープを挿入できる。ここでは、全ての周囲光は遮られている。このような場合、LEDsが形成するスコープ先端の照明は、手術手技を見るのに役立つ。照明の他に、光学トロカール挿入手順を見ることができるようにするには、カメラの焦点深度を約5mm乃至10mm、好ましくは約7mmまで減少する必要がある。これは、スコープを光学トロカール内に挿入した場合のスコープの先端と栓子(obturator) の先端との間の代表的な距離である。本発明の一態様では、スコープの端部にレンズアッセンブリチップ又はキャップ36、36’を追加することによって、カメラの焦点距離を変化する。カメラ34、34’のレンズアッセンブリチップ36、36’を
図9A及び
図9Bに夫々示す。これらの図では、レンズ38、38’がチューブ37、37’に取り付けられている。これらのチューブは、連結ピン39、39’を介してスコープシャフト40、40’に連結されている。一態様では、レンズアッセンブリチップ36、36’は、疑似皮膚への挿入後にスコープを栓子から引っ込めるときにレンズアッセンブリが外れないように、ねじ及びスナップ嵌め係合によってスコープシャフト40に取り付けられる。
図9A及び
図9Bは、スコープシャフト40の外部にあるレンズアッセンブリチップ36、36’を示すが、別の態様では、レンズアッセンブリチップ36、36’は、全体がスコープシャフト40内に配置されるということに着目されるべきである。更に別の態様では、
図10A及び
図10Bの夫々に示すようにスコープシャフト43、43’に被せた薄いスリーブ41、41’の端部にレンズ42、42’に取り付け、スリーブをシャフト上で引っ張ることによってカメラの焦点距離を変化する。
【0025】
上文中に説明した二つの実施例のいずれでも、訓練器スコープ/カメラを、単一サイトデバイスでの使用からハンドアクセスデバイスでの使用に手早く且つ容易に変化できるということは当業者には理解されよう。疑似腹壁を通した挿入を監視するため、光学トロカールで使用するための作動的焦点距離は約10.16cm(約4インチ)乃至約15.24cm(約6インチ)である。チップをスコープの端部にスナップ嵌め又は通すのいずれかによって、又はスリーブをスコープのシャフト上で摺動することによって、作動的焦点距離は約5mm乃至10mmである。
【0026】
図11は、本発明の更に別の実施例を示す。この実施例では、スコープの遠位端の角度を様々に変えるため、カメラ34及び/又はLEDsを収容したシャフトの遠位端を、可撓性コネクタ44を介してスコープシャフト40の残りの部分に連結できる。別の態様では、スコープの遠位端はシャフト40の近位端に関して約30°乃至45°の角度で固定されており、別の態様では、シャフトの遠位端がシャフト40の近位端に関して角度をなしていないが、シャフト40の内部の光学系が、角度が固定された又は角度が可変の視野を提供するように形成されている。
【0027】
次に、
図12及び
図13を参照すると、これらの図には、本発明による手術訓練器50が示してある。内視鏡訓練器50は、複数のレッグ56によってベース54に連結された上カバー52を含む。腹腔鏡訓練器50は、腹部領域等の患者のトルソーに似せた形態を備えている。上カバー52は、患者の前面を表し、上カバー52とベース54との間の間隔は、患者の内部、即ち臓器が入った体腔を表す。訓練器50は、様々な外科手術手技及びこれらの手技と関連した器具を患者のシミュレーションで教育し、実践し、及び証明する上で有用なツールである。上カバー52に予め形成した穴を通して手術器具を体腔に挿入する。様々なツール及び技術を使用して上カバー52を貫き、上カバー52とベース54との間に配置されたモデル臓器に疑似手順を実行する。ベース54は、疑似組織又は生組織を保持するためのトレー(図示せず)を含む。トレーは、ベース54のトレー受け入れ部分60に配置される。ベース54のトレー受け入れ部分60は、トレーを所定の場所に保持するためのフレーム状エレメントを含む。疑似組織又は生組織をベース上に保持するのを補助するため、引っ込め可能なワイヤに取り付けられたクリップを位置61に設ける。
【0028】
上カバー52にヒンジ止めしたビデオディスプレーモニタ62は、
図12及び
図13に閉鎖配向で示してあり、
図1、
図21、及び
図22に開放配向で示してある。ビデオモニタ62は、画像をモニタに送出するための様々なビジュアルシステムに接続できる。例えば、画像を使用者に提供するため、予め形成した穴の一つに挿入した内視鏡、又は体腔内に配置され、疑似手順を観察するのに使用されるウェブカメラをビデオモニタ62及び/又はモバイルコンピュータに接続できる。更に、音響機能及びビジュアル機能を提供するため、音響記録又は送出手段が訓練器50に設けられ、これと一体化されていてもよい。更に、訓練手順を記録し、及び/又はデモンストレーションの目的で前に記録したビデオをモニタで再生するため、フラッシュドライブ、スマートホン、デジタル式オーディオ又はビデオプレイヤー、又は他のデジタル式モバイルデバイス等のポータブルメモリー記憶デバイスを接続するための手段が設けられている。勿論、モニタでなく比較的大型のスクリーンにオーディオ−ビジュアル出力を提供するための接続手段が設けられている。別の態様では、上カバー52にはビデオディスプレーが含まれておらず、ラップトップコンピュータ、モバイルデジタルデバイス、又はiパッド(iパッド(IPAD)は登録商標である)等のタブレットを支持し、これを訓練器に有線又は無線で接続するための手段が設けられている。
【0029】
組み立てたとき、上カバー52は、実質的に上カバー52及びベース54の周囲に亘って配置されており、これらを相互連結するレッグ56でベース54の真上に位置決めされる。上カバー52及びベース54はほぼ同じ形状及び大きさであり、周囲輪郭がほぼ同じである。訓練器50には側壁がないけれども、レッグ56が内部キャビティを部分的に見えないようにしており、訓練器50のその他の側部は開放している。
図12に示す態様では、レッグには、環境光により内部キャビティをできるだけ照明できる開口部が設けられている。更に、これらの開口部により、有利には、持ち運びを容易にするため、重量をできるだけ減らす。上カバー52はレッグ56から取り外し自在であり、レッグ56は取り外し自在であるか或いはヒンジ等によってベース54に関して折り畳むことができる。従って、組み立てられていない状態の訓練器50は高さが低く、これにより持ち運びが容易になる。
【0030】
図12及び
図13を更に参照すると、上カバー52は
第1挿入体70を含む。
第1挿入体70は、上カバー52に関して取り外したり交換したりでき、詳細には、上カバー52に形成された開口部に挿入でき、及びこれから取り外すことができる。
第1挿入体70には、様々な器具用の固定挿入ポートとして役立つ複数の穴66が設けられている。これらの穴66には様々なシールが設けられている。
第1挿入体70は、更に、皮膚又は組織の幾つかの層に模すための組織シミュレーション領域68を含む。
【0031】
一実施例では、組織シミュレーション領域68は、
第1挿入体70内に設けられた
第2挿入体64として形成されている。
第2挿入体64は、スナップ嵌め、摩擦嵌め、又は螺合、又は他の手段により、上カバー52に関して、又はもしも設けられている場合には
第1挿入体70に関して、取り外し自在であり且つ交換自在である。
図12及び
図13に示す実施例では、
第2挿入体64は、
第1挿入体70に関して取り外し自在であり且つ交換自在である。勿論、一つ又はそれ以上の
第2挿入体64又は組織シミュレーション領域68が、
第1挿入体70に、又は上カバー52の任意の場所に直接的に、
第1挿入体70を使用して又は使用せずに、設けられていてもよい。組織シミュレーション領域68は上カバー52に連結され、取り外し自在であり且つ交換自在である。
【0032】
次に、
図14乃至
図16を参照すると、これらの図には、
第2挿入体64の一態様が示してある。
第2挿入体64は全体に円筒形であり、円形の断面を持つが、
第2挿入体64は、上カバー52又は
第1挿入体70の相補的形状の開口部に関して挿入可能であり且つ取り外し自在であるように、任意の形状を使用してもよい。
第2挿入体64は、螺合により下リング即ち下部分74に連結された上リング即ち上部分72を含む。これにより、これらの上下の部分間に挿入体材料76を箱詰めにし、使用者に対して組織シミュレーション領域68を提供する。上リング72は、上面78及び外面にねじ山が設けられた側壁80を含む。上面78は内方に延び、開口部を取り囲む上押縁を形成する。上面78は、更に、外方に延び、
第1挿入体70又は上カバー52に載止するためのリップを形成する。一態様では、上押縁は、挿入体材料76に食い込んでこれを所定位置に保持するのを補助する下方に延びる少なくとも一つの突出部即ち釘状部(spur)(図示せず)を含む。下リング82は内方に延び、開口部を取り囲む下押縁を形成する。この下押縁は、上押縁とともに、疑似組織の層を挿入体70内に保持する。一つの態様では、下押縁は、挿入体材料76に食い込んでこれを所定位置に保持するのを補助する上方に延びる少なくとも一つの突出部即ち釘状部(図示せず)を含む。別の態様では、挿入体70は、リング構造の内側に嵌着する大きさの支持リング86を含む。上リング72及び下リング74は螺合によって連結され、挿入体材料76及び支持リング86が使用される場合には支持リング86を上下の押縁間にリング構造内に捕捉する。上リング72及び下リング74は、更に、スナップ嵌め係合及び締り嵌め係合等のその他の手段によって連結できる。上押縁の内側の挿入体材料76の一部は露呈されたままであり、上方からアクセスでき、下押縁の内側の挿入体材料76の一部は露呈されており、下からアクセスでき、見ることができる。露呈された部分は、トロカールやメス等の様々な器具を組織に貫入するのに適している。
第2挿入体64は、上カバー52の相補的形状の穴に挿入でき、別の態様では、
第1挿入体70をこれに固定的にしかし取り外し自在に連結する。挿入体材料70は、貫入可能な組織層を模したものであり、これに器具を通すことができ、体腔にアクセスでき、疑似体腔に配置された、上カバー52によって実質的に見えないように隠された疑似臓器に様々な手術手技を行う。
【0033】
特に
図16A及び
図16Bに注目すると、挿入体材料76は、貫入されるべき人体の当該部分と外観及び触感が似るように選択される。挿入体の形成対象である人体の様々な領域に最も良く似るように、様々なコンシステンシー、組成、及び色彩の様々な数の層を選択する。別の態様では、器具を通すことができる貫入可能なゲル層又はシリコーン層を提供するアクセスデバイスを模すように挿入体材料76を選択してもよい。
図14、
図15、及び
図16に示すように、貫入されるべき人体の様々な領域をシミュレートするため、多数の層を使用できる。例えば、
図16Aでは、腹部組織を模すため、多数の層が示してある。第1層88は皮膚層であり、第2層90は皮下脂肪層を模した層であり、第3層92は筋膜層を表し、第4層94は筋肉層を表し、第5層96は別の筋膜層を表し、第6層98は腹膜前脂肪層を表し、第7層100は腹膜を模した層である。様々な種類の層は、実際の腹部組織に概ね近い様々な厚さ、組成、及び色彩を有する。更に、エチルビニルアセテート(EVA)で形成された第8層102が含まれる。この態様では、黄色のセルローススポンジで形成された脂肪層及び透明なポリオレフィンで形成された腹膜層を除く全ての層がEVAフォームで形成されている。EVA製の第8層102によって支持された場合、ポリオレフィンは、光学栓子を貫入し、光学栓子内に配置された内視鏡で観察するとき視覚的に及び触感的に実際の腹膜と似たものとなる。これに対し、セルローススポンジは、有利には、実際の人間の脂肪に代表的な不規則な外観を呈する。
【0034】
図16Bを参照すると、腹部組織を模した別の態様では、挿入体材料76は、互いに重ねた複数の層を含む。第1層88は皮膚層に模した最も上の層である。第1層88は、褐色に着色したEVAフォームで形成されている。第2層90は皮下脂肪層を模した層であり、黄色のセルローススポンジで形成されている。第3層92は筋膜層表し、白色のEVAフォームで形成されている。第4層94は筋肉層を表し、赤色のEVAフォームで形成されている。第3層92は第4層94と隣接している。第5層96は、ピンク色の半透明のフォームで形成された支持層であり、独立気泡ポリエチレンフォームで形成されている。第6層98は別の筋肉層であり、赤色のEVAフォームで形成されている。半透明でピンク色の独立気泡ポリエチレンフォーム層が赤色のEVAフォーム層と隣接している。第7層100は、別の筋膜層を模した層であり、白色のEVAフォームで形成されている。第8層102は腹膜層を表し、半透明で白色の独立気泡ポリエチレンフォームで形成されている。第9層103は白色のEVAフォームで形成されている。白色のEVAフォーム層は、半透明で白色の独立気泡ポリエチレンフォーム層と隣接している。挿入体材料76で二つの筋肉層間の支持層96として使用された独立気泡ポリエチレンフォームは、有利には外科医が栓子を使用して貫入したとき、現実的な触感応答を提供する。内視鏡手術は、組織、血液、流体、及び結露によって画像が隠される場所で、術野を内視鏡で見ることに基づいて行われるため、外科医の被訓練者は、特定の体組織を取り扱い、又は手術器具を差し込むとき、鋭い触覚感覚を養うことを学ぶ。本発明の挿入体材料は、触覚間隔を養うために外科医に教えるための効果的な方法を提供する。同様に、腹膜に模した第8層102もまた、独立気泡ポリエチレンフォームで形成されている。これは、有利には、腹膜を貫入した実際的な触覚フィードバックを外科医の被訓練者に提供する。第8層102が挿入体の底部に近いため、触覚応答は、触覚応答を鈍くする両側の多くの層によって緩衝された即ち取り囲まれた第5層96等のポリエチレン層が発生する触覚応答と比較して顕著である。
【0035】
支持リング86は、挿入体材料76に対して支持を提供し、器具を挿入したときに挿入体材料76が下リング74の開口部を通って押し出されないようにする随意の手段である。支持リング86は、更に、リング構造に挿入したとき、挿入体材料76を或る程度圧縮し、実際の組織のレジリエンシーを模す。支持リング86は相互交換自在であり、貫入されるべき身体の様々な領域を模すため、厚さが異なる別の支持リング86に代えてもよい。例えば、比較的薄い組織層を表す比較的薄い挿入体材料76は、比較的厚い支持リング86をリング構造に挿入することを必要とする。従って、有利には、
第2挿入体64の全厚を一定に保つが、所望の組織特徴を模すため、挿入体材料及び支持リングの厚さを必要に応じて変化してもよい。支持リング86は、様々な厚さの挿入体材料76に対し、厚さ調節層を提供する。挿入体材料76の多数の層は、接着剤で、又は
図16Bに示すようにプラスチック製の一つ又はそれ以上の値札ホルダ(price tag holder)105等の他の手段で連結されている これらの手段は、代表的には、I字形状であり、全ての層を通過し、これらの層を互いに保持する。別の態様では挿入体材料76の多数の層を、上下が開放した熱収縮性プラスチックスリーブに捕捉する。
【0036】
使用者は、貫入されるべき身体の部分について、適当な挿入体材料76及び関連した支持リング86を選択できる。先ず最初に支持リング86を下リング74に挿入し、次いで挿入体材料76を、一枚ずつ、又は
図16Bに示すように全ての層が一つ又はそれ以上の値札ホルダ105で互いに連結された一つの塊として、支持リング86上に置く。次いで上リング72を下リングに連結し、挿入体材料及び支持リング86をこれらのリング間に捕捉する。次いで、
第2挿入体64を訓練器50の上カバー52の対応する穴に配置し、螺合、スナップ嵌め、圧縮嵌め、又は当業者に周知の他の手段によって連結する。次いで、使用者は、挿入体材料76を貫入する様々な器具を使用して様々な手術手技のデモンストレーション、実践、又は教示を行い、貫入及び手術手技をカメラ及び/又はスコープを介して、ビデオモニタ62に表示されたビデオ画像ディスプレーで観察する。同じ又は異なる器具で挿入体材料76を何回も貫入した後、使用者は
第2挿入体64を上カバー52から外し、上リング72を下リング74と螺合した状態から外し、挿入体材料76を取り出して廃棄し、別のデモンストレーション又は更に多くの実践を積むため、新たな挿入体材料76をリング構造に入れる。使用者は、構成する層が様々に組み合わせられた多数の挿入体層76を持ち運び、
第2挿入体64を所望の通りに再構成する。これには、比較的大きな挿入体を再構成する必要も、又は挿入体70を製造者に送って再構成する必要もない。勿論、別の態様では、
第2挿入体64全体をなくし、
第1挿入体70を、上文中に説明した
第2挿入体64の製造方法と全く同じ方法で形成し、比較的大きなシミュレート組織領域を提供してもよい。
【0037】
図12に戻ると、この図には、5つのレッグによってベースの上方に支持された上カバーが示してある。一態様では、
図17乃至
図20に示すように、6つのレッグが設けられている。訓練器50は、経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(TEMS)のシミュレーションを行うように形成された随意の第6支持構造即ちレッグ106を備えて組み立てられてもよい。TEMSは、経肛門的低侵襲性手術(TAMIS)としても周知である。
【0038】
TEMSレッグ又はTAMISレッグ106は、内面が訓練器の内部に面し、外面が使用者に向かって外方に面した平らなプレート108を含む。プレート108は、内面から外面まで貫通した穴110を有する。
図18及び
図19に示すように、プレート108は、更に、上カバー52を支持し且つ離間するのを補助するため、TEMSレッグ又はTAMISレッグ106を上カバー52及びベース54に挿入し連結するためのタブ112又はU字形状チャンネル114等の手段を含む。TEMSレッグ又はTAMISレッグ106には、肛門に模した括約筋挿入体116が設けられている。括約筋挿入体116は、レッグ106の穴110に挿入でき、プレートの穴110と同軸の穴118を含む。別の態様では、挿入体116は、挿入体116が実質的に使用者に向かって外方に面するように、レッグ106に接着されるか或いはレッグ106に被せて形成される。レッグ106の内面にはチューブ120が連結されている。これは、チューブ120の内面がレッグ106の穴110と連通し、括約筋挿入体116を使用する場合、チューブ120の内腔が括約筋挿入体116の穴118と連通するようにチューブ120の内腔が連結されるように行われる。別の態様では、コネクタ(図示せず)がレッグ106の内面に取り付けられる。コネクタは、半径方向に延びる遠位フランジを持つ円筒形形状の延長部である。コネクタは、遠位フランジ上で、及び弛緩状態のチューブの直径よりも大きいコネクタ直径を持つコネクタ上でチューブ120を引っ張ることによって、チューブ120をコネクタに取り付けるように形成されている。これにより、チューブ120がレッグ106に固定された状態を保持する。チューブ120は、
図20に示すように紐付きクリップ122が連結された上カバー52の下面から吊り下げられていてもよい。チューブ120は、子牛の結腸等の生命のない組織で形成されていてもよい。別の態様では、チューブ120は、腸や結腸を模すように設計されており、シリコーン製である。更に、
図20に示す人工腫瘍124がチューブ120に配置されている。これにより、使用者は、これらの腫瘍の位置を探知し、除去する練習を行うことができる。一態様では、人工腫瘍124は、チューブよりも暗い色をしており、チューブの内腔内に配置されている。プレート108の外面には、アクセスデバイス126が設けられていてもよい。アクセスデバイスは、
図20に示すように、括約筋挿入体116内に及び穴110内に挿入される。アクセスデバイス126は、レッグ106のところでチューブ120の近位開口部をシールし、ガス注入ポート128を形成する。ガス注入ポート128は、ガス注入流体をチューブ120内に送出し、チューブ120を拡張し、実際のTEMS/TAMIS手術手技のシミュレーションを行うための作業空間をチューブ120内に形成するためのポートである。ガス注入を使用する場合、ガス注入ガスを収容するため、遠位端をシールしたチューブ120が提供される。予め膨張させた結腸を模してチューブ120を形成したガス注入のシミュレーションは、加圧やガスを使用せずに使用できる。こうしたチューブ120は、あたかもガスを注入したように、比較的大きく膨張された形態をしている。レッグ106は、有利には、横方向アプローチ即ち肛門アプローチを必要とする更に別の手術手技に対して訓練器50の体腔への横方向アプローチを提供する。チューブ120の切開部を、上カバー52を通して又はレッグ106を通して横方向に縫合糸で閉鎖する練習を行う使用者にとって、レッグ106及びこれと関連したチューブの取り付けが特に有用である。シリコーン製チューブは、チューブの切開部を縫合糸で閉鎖するとき、その他の材料程容易には裂けず、理想的練習環境及び練習手段を提供する。体腔を照明するため、上カバー52の下面にLEDs(図示せず)等の照明装置が取り付けられている。訓練器50は、婦人科及び泌尿器科の手術手技を含む腹腔鏡手術手技の練習又はデモンストレーションに限定されないシミュレーションに適しているが、横方向アプローチを必要とする、整形外科の用途を含むこの他の外科手術手技についても使用できる。
【0039】
次に
図21及び
図22を参照すると、これらの図には、ベース54に関して角度をなす上カバー52を持つ訓練器50の別の態様が示してある。この態様は、上カバー52及びベース54を連結し、離間する二つのレッグ130、132を含む。これらの二つのレッグ130、132は、ベース54に関する上カバー52の角度を調節できるように形成されている。訓練器を傾けることにより、有利には、トレンデレンブルグ体位又は逆トレンデレンブルグ体位の患者をシミュレートする。トレンデレンブルグ体位では、背中を下にし、足を頭よりも高くして横たわるように身体を傾ける。トレンデレンブルグ体位により、骨盤臓器に良好にアクセスできる。これは、重力により腸が骨盤から遠ざかる方向に引っ張られ、これによって骨盤手術野での腸のエンクローチメント(encroachment)が阻止され、外科医が臓器を比較的容易に操作できる比較的大きな作業空間を腹腔内に提供するためである。訓練器の傾けの程度は約0°±60°である。レッグ130、132に設けられた蝶ねじを締め付けることによって選択された角度を係止する。疑似腹腔内の疑似組織又は生体組織を保持するためのトレーは、ベースに関して独立して角度をなすように形成されており、又は上カバー52を傾けることによりこれと同時に組織トレーを傾けるように上カバー52に連結されている。
図21及び22には、上カバー52だけがベース54に関して角度をなすことが示してあるが、別の態様では、訓練器50全体が台の天板に関して角度をなす。このような訓練器50には、一つ又はそれ以上のジャッキねじ又は当業者に周知のこの他の高さ調節機構等の傾斜手段が設けられている。ジャッキねじは、例えば、ベース54の各隅部に設けられ、訓練器50全体を台の天板に関して注文通りに傾けるため、調節自在である。
図21及び22では、訓練器50を前方及び後方に傾けることが示してあるが、訓練器50は、側方に傾けることができるように形成されていてもよい。
【0040】
特定の実施例をその例示の実施例を参照して詳細に示し且つ説明したが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細ついての様々な変更を行ってもよいということは当業者には理解されよう。
なお、以下は、出願時の請求項12乃至20である。
(請求項12)
手術用訓練デバイスにおいて、
ベースと、
前記ベースに連結されており且つ前記ベースから間隔が隔てられ、前記ベースとの間に内部キャビティを形成する上カバーと、
前記上カバー及び前記ベースを相互連結し且つ離間する、前記内部キャビティに面した穴を持つ少なくとも一つのレッグと、
近位端及び遠位端を持つチューブと、
を含み、
前記近位端は、前記穴が前記チューブの内腔へのアクセスポートを提供するように前記穴に相互連結されており、
前記チューブの前記遠位端は、前記内部キャビティ内に延びている、手術用訓練デバイス。
(請求項13)
請求項12に記載の手術用訓練デバイスにおいて、
開口部を持ち、前記レッグに連結された挿入体、を更に含み、
前記挿入体の前記開口部は、前記チューブの前記内腔と連通しており、実際の組織のようなインターフェースを提供するように形成されている、手術用訓練デバイス。
(請求項14)
請求項13に記載の手術用訓練デバイスにおいて、
前記挿入体は実質的に環状形状であり、前記挿入体の前記開口部は円形である、手術用訓練デバイス。
(請求項15)
請求項12に記載の手術用訓練デバイスにおいて、
前記チューブは、当該チューブに取り付けられた人工腫瘍を含む、手術用訓練デバイス。
(請求項16)
請求項12に記載の手術用訓練デバイスにおいて、
前記チューブはガス注入が行われるようになっており、ガス注入流体が漏出しないように、前記チューブの前記遠位端が閉鎖され、前記チューブの前記近位端がシールされる、手術用訓練デバイス。
(請求項17)
請求項16に記載の手術用訓練デバイスにおいて、
前記チューブの前記近位端は、前記チューブ内にガス注入流体を送出するためのガス注入ポートを持つ取り外し自在のアクセスデバイスでシールされる、手術用訓練デバイス。
(請求項18)
請求項12に記載の手術用訓練デバイスにおいて、
ガス注入された結腸に模して前記チューブが膨張される、手術用訓練デバイス。
(請求項19)
請求項12に記載の手術用訓練デバイスにおいて、
前記少なくとも一つのレッグは、前記上カバー及び前記ベースの両方の周囲に沿って配置されている、手術用訓練デバイス。
(請求項20)
請求項12に記載の手術用訓練デバイスにおいて、
前記チューブは、前記上カバーから吊り下げられている、手術用訓練デバイス。