特許第6335514号(P6335514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335514
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】脱穀装置
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/22 20060101AFI20180521BHJP
   A01F 12/24 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A01F12/22 Z
   A01F12/24
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-3630(P2014-3630)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2015-130816(P2015-130816A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松林 智也
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 定夫
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼ 大河
(72)【発明者】
【氏名】安田 和男
(72)【発明者】
【氏名】樫田 謙一
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 卓二
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−079225(JP,A)
【文献】 特開2011−182653(JP,A)
【文献】 特開2012−205565(JP,A)
【文献】 特開2013−201964(JP,A)
【文献】 実開昭62−139242(JP,U)
【文献】 特開平02−113822(JP,A)
【文献】 特開2013−132271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/18−12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室に扱胴軸芯まわりに回転自在に支持された扱胴と、前記扱胴の外周囲に配備された受網とを備え、
前記受網の前記扱胴側の面に、扱胴周方向に対して傾斜する状態で設けられ、かつ、脱穀処理物を処理方向終端側へ送る送り部材を備え、
前記扱胴の外周部のうち、扱歯の取付け箇所以外の部位に設けられ、脱穀処理物を処理方向終端側へ送る送り羽根を備え
前記送り部材は、前記扱胴の処理方向始端部から処理方向終端部に向かう螺旋状に巻かれるように設けられ、
前記送り羽根は、前記扱胴の処理方向始端部から処理方向終端部に向かう螺旋状に巻かれるように、扱胴周方向において間欠的に設けられ、
前記送り羽根の螺旋巻き間隔は、前記送り部材の螺旋巻き間隔よりも小さく設定されている脱穀装置。
【請求項2】
前記受網が、扱胴周方向に沿った縦桟と、扱胴軸芯方向に沿った横桟とを備え、
前記送り部材が、前記縦桟及び前記横桟よりも前記扱胴側に突出している請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記送り部材は、前記扱胴に設けられた扱歯の回転軌跡よりも前記受網側に位置している請求項1又は2に記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記送り部材の形状を、前記扱胴の回転方向とは同じ回転方向巻きで処理方向終端側に向かう螺旋形状に形成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記送り部材は、扱胴周方向において、前記受網の一端側から他端側に亘っている請求項1〜4のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【請求項6】
前記受網を、扱胴周方向において、複数の分割受網に分割自在に構成し、
前記送り部材を、前記複数の分割受網に各別に支持された分割送り部材に分割自在に構成し、
少なくとも一部の前記分割送り部材が互いに連なるように構成してある請求項4又は5に記載の脱穀装置。
【請求項7】
前記受網を、前記扱胴軸芯方向及び扱胴周方向において、複数の分割受網に分割自在に構成し、
前記送り部材を、前記複数の分割受網に各別に支持された分割送り部材に分割自在に構成し、
少なくとも一部の前記分割送り部材が互いに連なるように構成してある請求項6に記載の脱穀装置。
【請求項8】
前記複数の分割受網それぞれの配置を入れ替えても、前記複数の分割受網が前記受網を形成するように、前記複数の分割受網を構成し、
前記複数の分割受網それぞれに前記分割送り部材を支持し、
前記複数の分割受網それぞれの配置を入れ替えた状態において、少なくとも一部の前記分割送り部材が互いに連なるように構成してある請求項6又は7に記載の脱穀装置。
【請求項9】
前記送り部材は、棒材によって構成してある請求項1〜8のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【請求項10】
前記送り部材は、角棒材によって構成してある請求項9に記載の脱穀装置。
【請求項11】
前記扱胴の処理方向始端部に連結された掻込み部を備え、
前記掻込み部の外周面に、脱穀処理物を処理方向終端側へ掻き込む螺旋羽根を備えてある請求項1〜10のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【請求項12】
前記螺旋羽根の掻込み始端部における外周縁の扱胴軸芯に沿う方向視での形状を、掻込み始端側ほど前記外周面に近づく傾斜形状に形成してある請求項11に記載の脱穀装置。
【請求項13】
前記扱胴は、
前記扱室に回転自在に支持された扱胴支軸と、
前記扱胴支軸の方向に沿った状態で、かつ前記扱胴支軸の周方向に間隔を空けて並んだ状態で、前記扱胴支軸に支持された複数の支持バーとを備え、
前記複数の支持バーそれぞれに、前記支持バーから前記扱胴径方向外側に向けて突出する状態で、かつ、前記扱胴支軸の方向に間隔を空けて並んだ状態で支持された複数の扱歯を備え、
前記扱胴の内部に、前記扱室に連通する内部空間を形成してある請求項1〜12のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱室に扱胴軸芯まわりに回転自在に支持された扱胴と、前記扱胴の外周囲に配備された受網とを備えた脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示される脱穀機があった。この脱穀機では、受網に、扱胴の周方向に沿う縦桟部材の複数本と、扱胴軸芯に沿う方向の第1横桟部材の複数本と、扱胴軸芯に沿う方向の第2横桟部材の複数本とを備えられている。複数本の縦桟部材のうちの受網後端側に位置する後側縦桟部材を、扱室奥側に至るほど扱室後端側に位置する状態に扱胴軸芯に対して傾斜する姿勢になるように組み付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−275939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の脱穀機にあっては、脱穀処理物を後側縦桟部材による案内で受網後端側に向かって旋回流動させるものである。しかし、受網を構成する縦桟部材の傾斜による案内では、十分な送り作用を得難く、脱穀処理物が滞留することがあった。殊に、脱穀対象物が麦の如く長稈であるなど、扱室に穀稈のボリュームが大になると、送り作用が足りず、脱穀処理物の詰まりが生じることがあった。
【0005】
本発明の目的は、受網に簡単な対策を施すものでありながら、脱穀処理物を処理方向終端側へ確実に搬送できる脱穀装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による脱穀装置は、
扱室に扱胴軸芯まわりに回転自在に支持された扱胴と、前記扱胴の外周囲に配備された受網とを備え、
前記受網の前記扱胴側の面に、扱胴周方向に対して傾斜する状態で設けられ、かつ、脱穀処理物を処理方向終端側へ送る送り部材を備え、
前記扱胴の外周部のうち、扱歯の取付け箇所以外の部位に設けられ、脱穀処理物を処理方向終端側へ送る送り羽根を備え
前記送り部材は、前記扱胴の処理方向始端部から処理方向終端部に向かう螺旋状に巻かれるように設けられ、
前記送り羽根は、前記扱胴の処理方向始端部から処理方向終端部に向かう螺旋状に巻かれるように、扱胴周方向において間欠的に設けられ、
前記送り羽根の螺旋巻き間隔は、前記送り部材の螺旋巻き間隔よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0007】
本構成によると、送り部材が受網の脱穀作用面に位置しているので、扱胴によって回動力を付与された脱穀処理物が送り部材に触れ易い。そして、送り部材は、触れた脱穀処理物を処理方向終端側に向かうよう案内するから、扱室に供給された脱穀処理物が多くても、脱穀処理物を処理方向終端側に向かわせ易い。
【0008】
従って、本発明によると、送り部材を受網の脱穀作用面に備えるだけの簡単な対策を施すものでありながら、麦の如き長稈の穀稈を脱穀処理するなど、扱室に供給される穀稈のボリュームが大になる場合でも、扱室における脱穀処理物の滞留を効果的に抑制して、円滑にかつ良好な脱穀精度で脱穀処理できる。
【0009】
本発明において、前記受網が、扱胴周方向に沿った縦桟と、扱胴軸芯方向に沿った横桟とを備え、前記送り部材が、前記縦桟及び前記横桟よりも前記扱胴側に突出していると好適である。
【0010】
本構成によると、送り部材が縦桟及び横桟よりも扱胴側に突出しているので、脱穀処理物を送り部材によって処理方向終端側へより確実に案内作用させることができ、脱穀処理物の滞留をより効果的に抑制できる。
【0011】
本発明において、前記送り部材は、前記扱胴に設けられた扱歯の回転軌跡よりも前記受網側に位置していると好適である。
【0012】
本構成によると、送り部材に扱歯との干渉を避ける凹入部を備える必要がないので、送り部材の形状を凹凸が無いとかほとんど無い形状にし、脱穀処理物を送り部材に引っ掛からないように送ることができる。
【0013】
本発明において、前記送り部材の形状を、前記扱胴の回転方向とは同じ回転方向巻きで処理方向終端側に向かう螺旋形状に形成してあると好適である。
【0014】
本構成によると、送り部材は、扱胴によって回動力を付与された状態で送り部材に触れた脱穀処理物に対して送り作用するから、そして、送り部材の形状が扱胴の回転方向とは逆回転方向巻きの螺旋形状であるから、送り部材による脱穀処理物の処理方向終端側への送りを良好に行わせることができる。
【0015】
本発明において、前記送り部材は、扱胴周方向において、前記受網の一端側から他端側に亘っていると好適である。
【0016】
本構成によると、脱穀処理物に対する送り部材の送り作用を、扱胴周方向における受網の一端側から他端側にわたる長い範囲で行わせることができる。
【0017】
本発明において、前記受網を、扱胴周方向において、複数の分割受網に分割自在に構成し、前記送り部材を、前記複数の分割受網に各別に支持された分割送り部材に分割自在に構成し、少なくとも一部の前記分割送り部材が互いに連なるように構成してあると好適である。
【0018】
本構成によると、送り部材に磨滅が発生した際、受網を分割受網に分割して脱穀部から取出す操作を行なうことにより、送り部材を分割送り部材に分割して分割受網と共に脱穀部から取出すことができ、送り部材の交換や修理を行ない易い。
【0019】
本発明において、前記受網を、前記扱胴軸芯方向及び扱胴周方向において、複数の分割受網に分割自在に構成し、前記送り部材を、前記複数の分割受網に各別に支持された分割送り部材に分割自在に構成し、少なくとも一部の前記分割送り部材が互いに連なるように構成してあると好適である。
【0020】
本構成によると、受網を扱胴軸芯方向及び扱胴周方向の一方だけにおいて複数の分割受網に分割自在に構成した場合に比べ、分割受網の形状をより取扱い易い形状にできて、送り部材を分割送り部材に分割して分割受網と共に脱穀部から取出すのにより容易に取出すことができ、送り部材の交換や修理をより行ない易い。
【0021】
本発明において、前記複数の分割受網それぞれの配置を入れ替えても、前記複数の分割受網が前記受網を形成するように、前記複数の分割受網を構成し、前記複数の分割受網それぞれに前記分割送り部材を支持し、前記複数の分割受網それぞれの配置を入れ替えた状態において、少なくとも一部の前記分割送り部材が互いに連なるように構成してあると好適である。
【0022】
本構成によると、一部の分割送り部材に磨滅が発生した際、磨滅が発生した分割送り部材を支持する分割受網を他の分割受網と入れ替えることにより、磨滅した分割送り部材を別の分割送り部材と入れ替えることができ、分割受網の配置を入れ替えるだけで簡単に送り部材の交換ができて有利である。
【0023】
本発明において、前記送り部材は、棒材によって構成してあると好適である。
【0024】
本構成によると、棒材を曲げ成形することにより、送り部材に扱胴周方向に対して傾斜した状態や螺旋形状を備えさせることができ、送り部材を製作容易に得ることができる。
【0025】
本発明において、前記送り部材は、角棒材によって構成してあると好適である。
【0026】
本構成によると、角棒材による送り部材の角張りよって、送り部材に対する脱穀処理物の滑りが発生し難く、送り部材による脱穀処理物の送り案内を良好に行なわせ易い。
【0027】
本発明において、前記扱胴の処理方向始端部に連結された掻込み部を備え、前記掻込み部の外周面に、脱穀処理物を処理方向終端側へ掻き込む螺旋羽根を備えてあると好適である。
【0028】
本構成によると、脱穀処理物が螺旋羽根によって扱胴と受網の間に掻き込まれるから、大ボリュームの脱穀処理物であっても、円滑に脱穀処理できる。
【0029】
本発明において、前記螺旋羽根の掻込み始端部における外周縁の扱胴軸芯に沿う方向視での形状を、掻込み始端側ほど前記外周面に近づく傾斜形状に形成してあると好適である。
【0030】
螺旋羽根の掻込み始端部が掻込み部の外周面から急角度で立ち上がっている場合、螺旋羽根による脱穀処理物の掻き込みが行われる際、螺旋羽根の始端部に脱穀処理物が引っ掛かり易い。本構成によると、螺旋羽根の始端部の傾斜形状により、脱穀処理物が螺旋羽根の始端部に引っ掛かり難く、スムーズに掻き込まれる。
【0031】
本発明において、前記扱胴は、前記扱室に回転自在に支持された扱胴支軸と、前記扱胴支軸の方向に沿った状態で、かつ前記扱胴支軸の周方向に間隔を空けて並んだ状態で、前記扱胴支軸に支持された複数の支持バーとを備え、前記複数の支持バーそれぞれに、前記支持バーから前記扱胴径方向外側に向けて突出する状態で、かつ、前記扱胴支軸の方向に間隔を空けて並んだ状態で支持された複数の扱歯を備え、前記扱胴の内部に、前記扱室に連通する内部空間を形成してあると好適である。
【0032】
本構成によると、扱胴と受網との間の扱き処理空間に対して内部空間が支持バーどうしの間を介して連通する。従って、扱胴は、受網との間の扱き処理空間に位置する脱穀処理物に支持バー及び扱歯の打撃による脱穀処理を施し、この脱穀処理で得た処理物が内部空間へ入り込むことを許容し、扱き処理空間の処理物と内部空間の処理物とを攪拌しながら、これらの処理物に支持バー及び扱歯の打撃による脱穀処理を施す。つまり、大ボリュームの脱穀処理物であっても、脱穀負荷が著しく増大することを防止しながらスムーズに脱穀処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】普通型のコンバインの全体を示す左側面図である。
図2】脱穀装置を示す縦断左側面図である。
図3】脱穀部を示す縦断背面図である。
図4】脱穀部を示す縦断背面図である。
図5】扱胴、受網を示す斜視図である。
図6】展開状態の扱胴を示す平面図である。
図7】掻込送り部を示す正面図である。
図8図7のVIII−VIII断面矢視図である。
図9】(a)は、第1の送り部材条の処理方向始端側の部分に位置する送り部材を示す平面図、(b)は、第1の送り部材条の処理方向始端側の部分に位置する送り部材を示す背面図である。
図10図9(b)のX−X断面矢視図である。
図11図9(b)のXI−XI断面矢視図である。
図12】(a)は、第2の送り部材条の処理方向始端側の部分に位置する送り部材を示す平面図、(b)は、第2の送り部材条の処理方向始端側の部分に位置する送り部材を示す背面図である。
図13図12(b)のXIII−XIII断面矢視図である。
図14図12(b)のXIV−XIV断面矢視図である。
図15】(a)は、第1の送り部材条の処理方向始端側の部分に位置する送り部材、及び第2の送り部材条の処理方向始端側の部分に位置する送り部材以外の送り部材を示す平面図、(b)は、第1の送り部材条の処理方向始端側の部分に位置する送り部材、及び第2の送り部材条の処理方向始端側の部分に位置する送り部材以外の送り部材を示す背面図である。
図16図15(b)のXVI−XVI断面矢視図である。
図17図15(b)のXVII−XVII断面矢視図である。
図18】送り部材の取付構造を示す斜視図である。
図19】受網を示す平面図である。
図20】分割受網を示す平面図である。
図21】旋回モード変更機構の操作部を示す側面図である。
図22】回転リールの掻込み部を示す正面図である。
図23】送風体を示す側面図である。
図24】回転刃の駆動構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る脱穀装置を、コンバインの一例である普通型のコンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、普通型のコンバインは、角パイプ材などの複数の鋼材を連結して車体フレーム1が構成された自走車を備えている。車体フレーム1における前部の右側領域に搭乗運転部2を形成してある。搭乗運転部2には、運転キャビン2aを装備してある。
車体フレーム1の下部には、左右一対のクローラ式走行装置3を装備してある。車体フレーム1における左側の前端部には、作業走行時に車体の前方に位置する水稲や麦あるいは菜種などの作物の穀稈を刈り取って搬送する刈取搬送部4を、左右向きの昇降軸芯P1を支点にした昇降揺動が可能な状態で連結してある。刈取搬送部4の昇降揺動は、車体フレーム1とフィーダ18とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ19の伸縮作動で行う。車体フレーム1の左半部には、刈取搬送部4が搬送する刈り取り後の穀稈を脱穀対象物として受け入れて脱穀処理し、脱穀処理後の処理物に選別処理を施す脱穀装置5を設けてある。車体フレーム1の右後部には、揚送装置6(図2参照)によって脱穀装置5から搬送された単粒化穀粒を回収して貯留する穀粒タンク7を設けてある。穀粒タンク7には、貯留された穀粒を搬出するスクリューコンベヤで成る搬出オーガ7aを装備してある。
【0035】
図1に示すように、搭乗運転部2には、操縦レバー100を設けてある。操縦レバー100を中立位置から車体左横方向及び車体右横方向に揺動操作することにより、左右のクローラ式走行装置3の駆動速度を相違させることができ、車体を左向きや右向きに走行させる車体の操向操作をできるように構成してある。
【0036】
図1に示すように、車体の前部に、左右一対のクローラ式走行装置3にエンジンからの駆動力を伝達する走行ミッションが内装された走行ミッションケース101を設けてある。図21に示すように、走行ミッションケース101には、旋回モード変更機構102を内装してある。旋回モード変更機構102は、操縦レバー100が車体左横方向及び車体右横方向に揺動操作されることによって発生する左右のクローラ式走行装置3の駆動速度差の大きさを変更し、操縦レバー100の揺動操作による車体の操向操作が行われた際における車体の旋回半径の大きさを変更するものである。
【0037】
図21は、旋回モード変更機構102の操作部を示す側面図である。図21に示すように、旋回モード変更機構102は、走行ミッションケース101に支持された回転操作軸102aを備えている。回転操作軸102aに揺動リンク103が一体回転するように装着され、揺動リンク103には、リターンスプリング104及び操作ロッド105が連結されている。旋回モード変更機構102は、操作ロッド105が押し引き操作されて揺動リンク103が揺動操作されることにより、回転操作軸102aが回転操作され、回転操作軸102aの操作位置に対応した形態の旋回モードを設定する。
【0038】
回転操作軸102aが所定の操作位置に位置した状態における回転操作軸102aの軸芯を通る直線Xと、操作ロッド105の軸芯との交差角Aを、操作ロッド105の操作力が回転操作軸102aに対して効率良く伝達されるように、90度、又は90度に近い角度に設定してある。
【0039】
刈取搬送部4について説明する。
刈取搬送部4は、車体の走行に伴って、その前部の左右両端に配備したデバイダ14によって未刈り穀稈を収穫対象の穀稈と収穫対象外の穀稈とに梳き分ける。又、刈取搬送部4の前部上方に配備した回転リール15によって収穫対象穀稈の穂先側を後方に向けて掻き込み、刈取搬送部4の底部に装備したバリカン型の刈取装置16によって収穫対象穀稈の株元側を切断して、収穫対象の穀稈を刈り取る。そして、刈取装置16の後方に配備した横送オーガ17によって刈取り穀稈を左右方向の所定箇所に寄せ集めて後方に送り出し、その所定箇所から脱穀装置5にわたって架設されたフィーダ18によって刈取り穀稈を脱穀装置5に供給する。
【0040】
昇降シリンダ19は、操縦レバー100の前後方向への揺動操作に基づいて伸縮作動するように構成してある。つまり、操縦レバー100を前後方向に揺動操作して昇降シリンダ19を伸縮作動させることにより、未刈り穀稈に対する刈取装置16の高さ位置を変更する刈り高さ調節などを行なうことができる。
【0041】
回転リール15について説明する。
図1に示すように、回転リール15の周方向での6箇所に、収穫対象穀稈の穂先側を後方に掻き込み処理する掻込み部15Aが設けられている。
【0042】
図22は、回転リール15の掻込み部15Aを示す正面図である。図22に示すように、掻込み部15Aは、回転リール15の左右一対のリール本体15Bに横架された車体横向きのタイン支軸110を備えている。タイン支軸110には、タイン支軸110の軸芯方向に所定間隔を空けて並んだ複数のタイン111を支持してある。全てのタイン111の背後にわたって車体横向きの掻込みガイド杆112を位置させてある。
【0043】
丈が短い大豆など、豆類を収穫する際、タイン111だけで掻き込み処理しようとすると、穀稈がタイン111から外れて刈残りが発生することがある。掻込みガイド杆112は、掻き込み処理しようとする穀稈の抜け外れを抑制し、穀稈の掻き込み性能を向上して刈残しを防止する。掻込みガイド杆112は、丸棒材によって構成してある。掻込みガイド杆112は、縦断面形状が六角や四角形の棒部材、あるいはアングル材、あるいは管部材によって構成してもよい。
【0044】
掻込みガイド杆112は、タイン支軸110の両端部から一体回転するように延出した左右一対の支持アーム113に支持されている。タイン支軸110は、回転リール15の回転にかかわらず、タイン111が常に下向き姿勢になるように回転リール15の回転に連動させて回転操作される。従って、掻込みガイド杆112は、回転リール15の回転にかかわらず、タイン111の先端部の背後側近くに位置するように操作され、所定の掻き込み処理を行なう。
【0045】
左右の支持アーム113に伸縮調節部113aを備えてある。伸縮調節部113aによって支持アーム113の長さ調節をすることにより、掻込みガイド杆112のタイン111に対する位置をタイン111の長さ方向に変更できる。
【0046】
伸縮調節部113aに替え、支持アーム113の長手方向に並ぶ複数の支持孔や支持フックを支持アーム113に設け、複数の支持孔や支持フックに掻込みガイド杆112を付け替えて、支持アーム113における掻込みガイド杆112の取付位置を変更する構成を採用することにより、掻込みガイド杆112のタイン111にタインに対する位置変更を可能にして実施してもよい。
【0047】
掻込みガイド杆112は、支持アーム113に脱着自在に支持し、不要時には取り外せるように構成してある。掻込みガイド杆112を支持アーム113と共にタイン支軸110に対して着脱するように構成してもよい。
【0048】
脱穀装置5について説明する。
図2は、脱穀装置5を示す縦断左側面図である。図1,2に示すように、脱穀装置5には、フィーダ18が供給する刈取り穀稈を脱穀処理物として、この脱穀処理物に脱穀処理を施す脱穀部5A、脱穀処理後の処理物に選別処理を施す選別部5B、及び、選別処理後の回収対象の処理物を回収する回収部5Cを備えてある。この脱穀装置5において、脱穀部5Aにおける脱穀処理方向及び選別部5Bにおける選別処理方向が車体の前後方向と一致し、脱穀処理方向の上手側及び選別処理方向の上手側が車体の前側に位置するように設定してある。
【0049】
図3,4は、脱穀部5Aを示す縦断背面図である。図2,3,4に示すように、脱穀部5Aには、脱穀装置5の上部に形成した扱室20を備えてある。扱室20には、扱胴21を脱穀装置前後向きの扱胴軸芯P2まわりに、かつ、背面視左回り方向Fに回転駆動されるように支持してある。扱胴21の前端部に、螺旋羽根40を備えた掻込送り部37を連設してある。扱室20の前下部には、フィーダ18が掻き上げ搬送した脱穀処理物の扱室20への供給を可能にする供給口22を形成してある。扱室20の後下部には、脱穀処理後の排出対象の処理物の扱室20からの排出を可能にする排塵口23を形成してある。扱胴21の周囲のうちの扱胴21の下方の領域に前後方向視U字状の受網27を配備してある。扱室20は、扱胴21を支持する前支持板24と後支持板25、扱胴21の上方に設けた上部カバー26、及び受網27などによって区画形成してある。
【0050】
従って、脱穀部5Aは、フィーダ18によって供給口22から扱室20に供給された刈取り穀稈の株元から穂先までの全体を、脱穀処理物として掻込送り部37によって扱胴21と受網27との間に送り込んで扱胴21と受網27とによって脱穀処理し、脱穀処理によって得た穀粒を受網27から選別部5Bに漏下させ、脱穀処理によって発生した脱穀排稈や切れワラなどを排塵口23から排稈細断装置10へ排出する。
【0051】
扱室20を形成する上部カバー26の内面側に、脱穀部5Aの処理方向に並んだ複数の送塵弁83を設けてある。各送塵弁83は、扱胴21によって回動力が付与された脱穀処理物が触れることにより、脱穀処理物を処理方向終端側へ移動するよう案内する。従って、送塵弁83は、脱穀処理物の排塵口23からの排出を促進する。
【0052】
図2に示すように、選別部5Bには、受網27の下方に設けた揺動選別装置29を備えてある。揺動選別装置29には、後端部に備えた偏心カム式の駆動機構28が作動することで前後方向に揺動する。又、揺動選別装置29の前下方に唐箕30aを配備し、揺動選別装置29の前方に副唐箕30bを配備してある。唐箕30a及び副唐箕30bは、左側面視左回り方向に回転する送風体によって選別風を発生させる。揺動選別装置29は、揺動しながら受網27からの処理物などを受け止め、受け止めた処理物を選別対象の処理物として選別処理方向に移送しながら篩い選別し、かつ唐箕30a及び副唐箕30bからの選別風によって風力選別する。
【0053】
回収部5Cでは、揺動選別装置29の選別処理方向上手側の下方に1番回収部31を形成してある。又、揺動選別装置29の選別処理方向下手側の下方に2番回収部32を形成してある。1番回収部31は、側面視底窄まり形状に形成してあり、揺動選別装置29の選別処理方向上手側から流下した単粒化穀粒を1番物として底部に流下案内する。1番回収部31の底部には、1番物搬出用の1番スクリュー33を左右向きに配備してある。1番スクリュー33は、1番回収部31の底部に流下した1番物を、1番スクリュー33の右端部に連通接続した揚送装置6に搬送する。2番回収部32は、側面視下窄まり形状に形成してあり、揺動選別装置29の選別処理方向下手側から流下した枝梗付き穀粒などを2番物として底部に流下案内する。2番回収部32の底部には、2番物搬出用の2番スクリュー34を左右向きに配備してある。2番スクリュー34は、2番回収部32の底部に流下した2番物を、2番スクリュー34の右端部に連通接続した2番還元装置35に供給する。2番還元装置35は、2番スクリュー34からの2番物を揚送して揺動選別装置29に還元する。
【0054】
副唐箕30bについて説明する。
図2に示すように、副唐箕30bは、横断流ファンによって構成してある。副唐箕30bは、脱穀装置5の前端部に設けられた送風ケース115を備えている。送風ケース115の内部には、送風体117を回転支軸116(図23参照)の車体横向き軸芯を回転軸芯Yとして回転方向Bに回転駆動されるように設けてある。送風ケース115には、脱穀装置5の横側壁に形成された吸気口、及び脱穀装置5の内部に形成され、脱穀装置5の後方向きに開口した送風口115aを備えてある。
【0055】
図23は、送風体117を示す側面図である。図2,23に示すように、送風体117は、回転支軸116と、回転支軸116の軸芯方向での複数個所に一体回転するように取り付けられた支持体118とを備えている。複数の支持体118の回転方向での4箇所において、複数の支持体118にわたって板状の送風羽根119を装着してある。各送風羽根119の送風面119aを、回転軸芯Yの方向視での形状が送風羽根119の背面側に凹入した湾曲面となるように構成してある。従って、送風口115aから吐出される選別風の送風口横幅方向(回転軸芯Yの方向)での風速分布が均等に近い風速分布になる。
【0056】
排稈細断装置10について説明する。
図2に示すように、排稈細断装置10は、脱穀装置5の機体後部に支持され、排塵口23に内部が連通した細断ケース120を備えている。細断ケース120の内部に、回転刃121を車体横向きの回転軸芯Zまわりに回転方向Cに回転駆動されるように支持し、かつ、固定刃122を固定してある。
【0057】
図24は、回転刃121の駆動構造を示す側面図である。図24に示すように、回転刃121の前方に駆動プーリ123を回転駆動されるように設け、駆動プーリ123と、回転刃121の回転支軸121aに一体回転するように支持された入力プーリ124とにわたり、伝動ベルト125を巻回してある。伝動ベルト125は、テンションアーム126に支持されたテンション輪体126aによる押圧作用によって伝動用の緊張状態に張り操作されるようになっている。テンションアーム126は、伝動ベルト125を緊張状態に張り操作する作用位置でのテンション輪体126aと、駆動プーリ123との間に配備された支軸127を支点軸として揺動するように支軸127に支持してある。
従って、テンション輪体126aが伝動ベルト125から受ける操作反力にかかわらず、テンション輪体126aと伝動ベルト125との間にこじれが発生し難く、こじれに起因する伝動ベルト125の損傷が発生しにくい。
【0058】
掻込送り部37について説明する。
図7は、掻込送り部37を示す正面図である。図2,5,7に示すように、掻込送り部37には、扱胴21の処理方向始端部に連結された掻込み部39を備えてある。掻込み部39の外周面に2つの螺旋羽根40を支持してある。2つの螺旋羽根40は、掻込み部39の周方向に間隔を空けて並んだ2重螺旋状に構成してある。2つの螺旋羽根40それぞれの掻込み方向下手側端部に、扱胴21に備えられた複数の送り部材57のうち、扱胴21の処理方向始端部に位置する送り部材57a,57bの送り方向上手側端部を接続してある。
【0059】
従って、掻込み部39が扱胴21と一体に回転駆動され、2つの螺旋羽根40が掻込み方向に回転する。これにより、掻込送り部37は、フィーダ18によって供給口22から扱室20に送り込まれた刈取り穀稈の株元から穂先までの全体を、脱穀処理物として、回転する2つの螺旋羽根40によって案内底板49(図2参照)に沿わせて扱胴21に向けて掻き込む。さらに、螺旋羽根40からの脱穀処理物を、送り部材57a,57bによって扱胴21と受網27との間の扱き処理空間S1に送り込む。
【0060】
掻込み部39は、円錐台状に形成された掻込み胴体によって構成してある。掻込み胴体の長径側の後端部は、扱胴21を構成する前壁部材51に連結され、前壁部材51を介して扱胴支軸50に一体回転するように連結されている。掻込み胴体の短径側の前端部は、扱胴支軸50に一体回転するように連結されている。
【0061】
2つの螺旋羽根40それぞれは、掻込み部39の外周面に立設された螺旋羽根本体43を備えている。螺旋羽根本体43の掻き込み方向上手側端部に、螺旋羽根40の掻込み始端部41を構成する板部材を連結してある。螺旋羽根本体43の側面に、螺旋羽根40の掻込み作用面44を形成するライナーとしての補強部材45を取り付けてある。補強部材45は、螺旋羽根本体43よりも優れた耐摩耗性を備え、螺旋羽根本体43よりも磨滅しにくい掻込み作用面44を形成している。螺旋羽根本体43の掻込み作用面44の側とは反対側の側面と掻込み部39の外周面とにわたり、螺旋羽根40の支持強度を高める支持体43aを取り付けてある。支持体43aは、掻込み部39の半径方向に沿った帯板によって構成してある。
【0062】
図7,8に示すように、掻込み始端部41を構成する板部材は、螺旋羽根本体43の掻き込み方向上手側端部と、掻込み部39の外周面とにわたって連結してある。図8に示すように、掻込み始端部41を構成する板部材と螺旋羽根本体43とは、板部材を掻込み作用面44に当て付けた状態で、2本の連結ボルト46と、一つの雌ネジ部材48とによる締結によって連結してある。
【0063】
一つの雌ネジ部材48は、2つの雌ネジ孔48aを備えた状態で、螺旋羽根40の掻込み作用面44が位置する側に配置してある。螺旋羽根本体43、補強部材45、及び、掻込み作用面44を形成する板部材にはネジ山が無いボルト孔を設けてある。2つの連結ボルト46は、螺旋羽根40に対して掻込み作用面44の側とは反対側から螺旋羽根本体43、補強部材45及び板部材のボルト孔に装着し、一つの雌ネジ部材48の雌ネジ孔48aに装着して雌ネジ部材48に締結してある。従って、2つの連結ボルト46それぞれの頭部46aは、螺旋羽根40の背後側に位置し、脱穀処理物に接触し難くい。雌ネジ部材48は、連結ボルト46の軸芯に沿う方向視での形状が小判形となるように構成してある。雌ネジ部材48は、螺旋羽根40の掻込み作用面44の側に位置して脱穀処理物に接触し易いが、2つの連結ボルト46に各別に装着するナットに比して大きな形状を備えるので磨滅し難い。
【0064】
掻込み始端部41を形成する板部材と、掻込み部39の外周面とは、溶接によって連結してある。掻込み始端部41を形成する板部材の扱胴軸芯P2に沿う方向視での形状を、螺旋羽根本体43から掻込み方向上手側に離れるほど、掻込み部39の外周面からの突出高さが低くなる形状に形成してあり、螺旋羽根40の掻込み始端部41の外周縁の扱胴軸芯P2に沿う方向視での形状が、掻込み始端側ほど掻込み部39の外周面に近づく傾斜形状になっている。従って、フィーダ18からの脱穀処理物は、螺旋羽根40の掻込み始端部41に引っ掛からずに螺旋羽根40による掻き込みを受け、送り部材(送り羽根)57a,57bにスムーズに案内される。
【0065】
扱胴21について説明する。
図2,3,4に示すように、扱胴21は、脱穀部5Aの処理方向での扱胴軸芯P2まわりに回転駆動されるように扱室20に支持される扱胴支軸50、及び、扱胴支軸50に支持され、扱胴支軸50によって回転駆動される扱胴本体50Aを備えている。扱胴21の外周面としての扱胴本体50Aの外周面に、複数の扱歯55を扱胴軸芯P2に沿う方向に間隔を空けて並ぶ状態で、かつ扱胴21の周方向に間隔を空けて並ぶ状態で設けてある。
各扱歯55は、扱胴本体50Aの外周面から扱胴径方向外側に向けて突出している。
【0066】
扱胴本体50Aの扱歯55が存在する領域に、脱穀処理物を脱穀部5Aの処理方向終端側(車体後方側)に送る複数の送り部材(送り羽根)57を設けてある。各送り部材57は、板状の送り作用部58(図9,12,15参照)を備え、送り作用部58が扱胴軸芯P2に沿う方向に対して傾斜すると共に扱胴本体50Aの外周面から扱胴径方向外側に向けて突出する状態で支持されている。
【0067】
図6は、展開状態の扱胴を示す平面図である。図5,6に示すように、複数の送り部材57のうちの半数、又はほぼ半数の送り部材57は、扱胴21の処理方向始端部から処理方向終端部に亘る螺旋状の第1の送り部材条J1を形成するように、扱胴軸芯P2まわりに螺旋状に配備してある。
【0068】
複数の送り部材57のうちの残りの半数、又はほぼ半数の送り部材57は、扱胴21の処理方向始端部から処理方向終端部に亘る螺旋状の第2の送り部材条J2を形成するように、扱胴軸芯P2まわりに螺旋状に配備してある。第1の送り部材条J1と第2の送り部材条J2とは、扱胴21の周方向に所定間隔を空けて並んでいる。
【0069】
第1の送り部材条J1及び第2の送り部材条J2において、送り部材57を間欠的に並べ、隣り合う一対の送り部材57どうしの間に、短い切れワラなど小サイズの脱穀処理物の流動が可能となる間隙Dを形成してある。第1の送り部材条J1及び第2の送り部材条J2の送り部材57の配列は、扱胴軸芯P2に沿う方向視において、一方の送り部材条J1,J2における送り部材57どうしの間隙Dに、他方の送り部材条J2,J1における送り部材57が位置する配列にしてあり、間隙Dの処理方向での上手側及び下手側に送り部材57が存在する。従って、第1及び第2の送り部材条J1,J2の間隙Dが扱胴軸芯P2の方向に並ぶ場合、長いサイズの脱穀処理物が複数の間隙Dにわたって位置して送り部材57に引っ掛かる事態が生じ易いが、このトラブルが生じ難い。
【0070】
図3,5に示すように、第1の送り部材条J1を形成する送り部材57のうち、第1の送り部材条J1の処理方向始端側の部分に位置する送り部材57aにおける送り作用部58の送り方向上手側は、掻込送り部37における2つの螺旋羽根40のうちの一方の螺旋羽根40に接続してある。第2の送り部材条J2を形成する送り部材57のうち、第2の送り部材条J2の処理方向始端側の部分に位置する送り部材57bにおける送り作用部58の送り方向上手側は、掻込送り部37における2つの螺旋羽根40のうちの他方方の螺旋羽根40に接続してある。
【0071】
図2〜5に示すように、扱胴本体50Aは、扱胴支軸50の方向に沿った状態で、かつ扱胴支軸50の周方向に間隔を空けて並んだ状態で扱胴支軸50に支持された6本の支持バー54を備えている。各支持バー54には、複数の棒状の扱歯55を扱胴支軸50の方向に間隔を空けた状態で、かつ扱歯55が支持バー54から扱胴径方向外側に向けて突出する状態で支持してある。扱胴支軸50の処理方向始端部に円盤状の前壁部材51を一体回転するように設け、扱胴支軸50の処理方向中間部に円盤状の中壁部材52を一体回転するように設け、扱胴支軸50の処理方向終端部に円盤状の後壁部材53を一体回転するように設けてある。各支持バー54は、前壁部材51、中壁部材52及び後壁部材53の外周部にわたって支持することにより、扱胴支軸50に一体回転するように支持されている。6本の支持バー54に外接する円筒面が扱胴本体50Aの外周面になっている。
【0072】
各支持バー54における扱胴軸芯方向での扱歯55の配列ピッチを同じに設定してある。扱胴周方向において隣り合う一対の支持バー54を前後向きが逆になる状態で前壁部材51、中壁部材52及び後壁部材53に支持し、扱胴周方向において、隣り合う一対の支持バー54の一方の支持バー54における扱歯どうしの間隙に、他方の支持バー54における扱歯55が位置するように構成してある。各支持バー54の脱着を可能に構成し、扱歯55に磨滅が発生した際、支持バー54の前後向きを入れ替えることができるようにしてある。
【0073】
支持バー54は、丸パイプ鋼材によって構成してある。支持バー54には、丸パイプ鋼材の他、丸鋼材、角棒鋼材、角パイプ鋼材などの各種の棒状部材を採用することができる。アングル材やチャンネル材も採用可能である。各扱歯55は、丸鋼材によって構成してある。扱歯55には、丸鋼材の他、角棒鋼材、丸パイプ材、各パイプ材など各種の棒状部材を採用することができる。
【0074】
扱胴21は、支持バー54どうしの間を介して扱室20に連通する内部空間S2を内部に形成した籠状に構成し、かつ、扱胴21の外周面から扱胴径方向外側に向けて突出する複数の扱歯55を扱胴21の周方向及び処理方向に間隔を空けて整列した状態で備えるように構成し、いわゆるバー形の扱胴に構成してある。
【0075】
従って、扱胴21は、処理方向の扱胴軸芯P2を支点にして背面視左回り方向Fに回転することにより、掻込み部39からの脱穀処理物を、二つの螺旋羽根40に接続している送り部材57a,57bによって脱穀部5Aの処理方向始端部における扱胴21と受網27との間に導入する。扱胴21は、受網27との間の扱き処理空間S1に位置する脱穀処理物に支持バー54及び扱歯55による打撃や扱歯55の梳き込みなどによる脱穀処理を施し、この脱穀処理で得た処理物の内部空間S2への入り込みを許容し、扱き処理空間S1の処理物と内部空間S2の処理物とを撹拌しながら、これらの処理物に支持バー54及び扱歯55の打撃や扱歯55の梳き込みなどによる脱穀処理を施す。扱胴21は、扱胴軸芯P2まわりに扱胴21と共に回転する第1の送り部材条J1及び第2の送り部材条J2の送り部材57によって脱穀処理物を扱胴21の回転方向と同じ回転方向に回動させながら、脱穀処理物に処理方向終端側への移動力を付与し、脱穀処理物の処理方向終端側への移動及び脱穀処理後の処理物の排塵口23からの排出を促進させながら脱穀処理を施す。
【0076】
送り部材57について説明する。
図9(a)は、送り部材57のうち、第1の送り部材条J1の処理方向始端側の部分に位置する送り部材57aを示す平面図である。図9(b)は、第1の送り部材条J1の処理方向始端側の部分に位置する送り部材57aを示す背面図である。
【0077】
図12(a)は、送り部材57のうち、第2の送り部材条J2の処理方向始端側の部分に位置する送り部材57bを示す平面図である。図12(b)は、第2の送り部材条J2の処理方向始端側の部分に位置する送り部材57bを示す背面図である。
【0078】
図15(a)は、第1の送り部材条J1の処理方向始端側の部分に位置する送り部材57a、及び第2の送り部材条J2の処理方向始端側の部分に位置する送り部材57b以外の送り部材57を示す平面図である。図15(b)は、第1の送り部材条J1の処理方向始端側の部分に位置する送り部材57a、及び第2の送り部材条J2の処理方向始端側の部分に位置する送り部材57b以外の送り部材57を示す背面図である。
【0079】
図9,12,15に示すように、各送り部材57,57a,57bは、板状の送り作用部58を備えている。送り作用部58の送り方向上手側及び送り方向下手側に連結部60,65,75を備えてある。送り作用部58の送り作用面58aが位置する側と反対側である背面側に、送り作用部58の長手方向に長い板状の補強リブ81を付設してある。送り部材57aは、送り作用部58が送り方向下手側の連結部65,75よりも処理物送り方向下手側に位置し、連結部65,75を送り作用部58によって処理物が接触しにくいようにカバーするよう構成してある。
【0080】
図3,5に示すように、第1の送り部材条J1の処理方向始端側の部分に位置する送り部材57a、及び第2の送り部材条J2の処理方向始端側の部分に位置する送り部材57bは、送り方向上手側の連結部60によって螺旋羽根40に支持し、送り方向下手側の連結部65によって扱歯55に支持するように構成してある。
【0081】
図10,13,18に示すように、送り部材57a及び送り部材57bの送り方向上手側の連結部60は、送り作用部58に設けた二つのネジ山が無いボルト孔61を備え、二本の連結ボルト62と一つの雌ネジ部材63とによって送り作用部58を螺旋羽根40に締結し、これによって送り部材57aの送り方向上手側端部を螺旋羽根40に支持するように構成してある。
【0082】
すなわち、送り方向上手側の連結部60は、送り作用部58を螺旋羽根40の掻き込み方向下手側端部における背面側に当て付け、送り作用部58の二つのボルト孔61、及び、螺旋羽根40に設けた二つのネジ山が無いボルト孔それぞれに、連結ボルト62を螺旋羽根40に対して螺旋羽根40の掻込み作用面44が位置する側とは反対側から装着し、この二本の連結ボルト62を、螺旋羽根40の掻き込み作用面側に位置させた一つの雌ネジ部材63が有する二つの雌ネジ孔63aに装着して締め付けることにより、送り作用部58を螺旋羽根40に締結する。
【0083】
従って、連結ボルト62の頭部62aは、送り部材57a,57b及び螺旋羽根40の背面側に位置し、脱穀処理物に触れにくい。雌ネジ部材63の連結ボルト62の軸芯方向での面積が各連結ボルト62に装着されるナットに比して広いものとなる。これにより、雌ネジ部材63は、脱穀処理物に接触し易いが、連結ボルト62よりも磨滅し難い。
【0084】
送り方向上手側の連結部60は、送り作用部58の送り方向上手側端58tが螺旋羽根40の掻き込み方向下手側端40tよりも掻き込み方向上手側に位置する状態で送り作用部58を螺旋羽根40に締結する。送り方向上手側の連結部60は、送り作用部58を螺旋羽根本体43に補強部材45と共に共締め連結する。
【0085】
図11,14,18に示すように、送り部材57a及び送り部材57bの送り方向下手側の連結部65は、送り作用部58の背面側に設けた筒体によって構成してあり、扱歯55に扱胴径方向外側から差し込むことにより、扱歯55に連結でき、送り作用部58の送り方向下手側を扱歯55に連結する。すなわち、送り部材57a及び送り部材57bの送り方向下手側の連結部65は、送り部材57aの送り方向下手側端部を扱歯55に支持する。
【0086】
図9,11,12,14に示すように、送り方向下手側の連結部65は、二つのネジ山が無いボルト孔67aを有した取付部67を備え、二本の連結ボルト69などを備えた締結具68によって送り作用部58に取り付けるように構成してある。
【0087】
すなわち、図11,14に示すように、締結具68は、二本の連結ボルト69を備える他、一つの雌ネジ部材70を備えている。取付部67を送り作用部58の背面側に位置させ、この取付部67の二つのボルト孔67a、及び、送り作用部58に設けた二つのネジ山が無いボルト孔58bそれぞれに、連結ボルト69を送り作用部58に対して送り作用部58の送り作用面58aが位置する側とは反対側から装着する。このように装着した二本の連結ボルト69を、送り作用部58の送り作用面側に位置させた一つの雌ネジ部材70が有する二つの雌ネジ孔70aに装着して締め付けることによって、取付部67を送り作用部58に締結し、これによって送り方向下手側の連結部65を送り作用部58に取り付ける。
【0088】
図3,5に示すように、送り部材57a及び送り部材57b以外の送り部材57は、送り方向上手側の連結部75、及び送り方向下手側の連結部75によって扱歯55に支持するように構成してある。
【0089】
図15,16,18に示すように、送り部材57a及び送り部材57b以外の送り部材57の送り方向上手側の連結部75は、送り作用部58の背面側に設けた筒体によって構成してあり、扱歯55に扱胴径方向外側から差し込むことにより、扱歯55に連結でき、送り作用部58を扱歯55に連結する。すなわち、送り部材57の送り方向上手側の連結部75は、送り部材57の送り方向上手側端部を扱歯55に支持する。
【0090】
送り部材57a及び送り部材57b以外の送り部材57の送り方向下手側の連結部75は、送り作用部58の背面側に設けた筒体によって構成してあり、扱歯55に扱胴径方向外側から差し込むことにより、扱歯55に連結でき、送り作用部58を扱歯55に連結する。すなわち、送り部材57の送り方向下手側の連結部75は、送り部材57の送り方向下手側端部を扱歯55に支持する。
【0091】
図16,17に示すように、送り部材57の送り方向上手側の連結部75、及び送り方向下手側の連結部75は、送り部材57a及び送り部材57bの送り方向下手側の連結部65を送り作用部58に取り付ける取付構造と同じ構成を備えた取付構造によって送り作用部58に取り付けるように構成してある。
【0092】
すなわち、送り方向上手側の連結部75及び送り方向下手側の連結部75を送り作用部58に取り付ける取付構造は、連結部75に設けた取付部77を二本の連結ボルト79などを有した締結具78によって送り作用部58に取り付けるように構成してある。
【0093】
つまり、締結具78は、二本の連結ボルト79を備える他、一つの雌ネジ部材80を備えている。取付部77を送り作用部58の背面側に位置させ、この取付部77に設けた二つのネジ山が無いボルト孔77a、及び、送り作用部58に設けた二つのネジ山が無いボルト孔58bそれぞれに、連結ボルト79を送り作用部58に対して送り作用部58の送り作用面58aが位置する側とは反対側から装着する。このように装着した二本の連結ボルト79を、送り作用部58の送り作用面側に位置させた雌ネジ部材80が有する二つの雌ネジ孔80aに装着して締め付けることによって、取付部77を送り作用部58に締結する。
【0094】
前記連結ボルト46、前記連結ボルト62、前記連結ボルト69及び前記連結ボルト79は、頭部46a,62a,79aに六角レンチ装着用の六角穴が備えられた六角穴付きボルトによって構成してある。従って、頭部46a,62a,79aの外周部に磨滅が生じても、六角レンチによって回転操作できる。前記連結ボルト46、前記連結ボルト62、前記連結ボルト69及び前記連結ボルト79としては、六角穴付きボルトに替えて、六角ボルトを採用してもよい。
【0095】
前記連結部65を送り作用部58に連結するための取付部67のボルト孔67a、及び送り作用部58のボルト孔58bの少なくとも一方は、連結ボルト69の径方向でのずれ動きを許容する大径形式あるいは長孔形式のルーズ孔に形成して、送り作用部58に対する連結部65の位置調節を可能にする調節手段を構成し、連結部65を扱歯55に差し込む際の連結部65の扱歯55に対する位置調節を調節手段によって容易にする。連結部75においても同様に構成してある。すなわち、連結部75を送り作用部58に連結するための取付部77のボルト孔77a、及び送り作用部58のボルト孔58bの少なくとも一方を、大径形式あるいは長孔形式のルーズ孔に形成し、連結部75を扱歯55に差し込む際の連結部75の扱歯55に対する位置調節を容易にできるように構成してある。
【0096】
受網27について説明する。
図2〜5に示すように、受網27は、扱胴21の周方向に沿うように扱胴軸芯P2に沿う方向視で円弧形状に形成され、扱胴軸芯P2に沿う方向に所定間隔を空けて並べられた複数本の縦桟85と、扱胴軸芯P2に沿う方向の直線形状に形成され、縦桟85と交差する状態で扱胴周方向に所定間隔を空けて並べられた複数本の横桟86とを備えている。
【0097】
複数の縦桟85のうち、受網27の扱胴軸芯P2に沿う方向での両端部に位置する縦桟85a、及び受網27の扱胴軸芯P2に沿う方向での中間部位に位置する縦桟85bは、受網フレームの機能を備えるように帯板部材によって構成し、縦桟85のうちの縦桟85a及び縦桟85b以外の縦桟は、丸棒材によって構成してある。横桟86は、帯板部材によって構成してある。
【0098】
受網27は、縦桟85の扱胴周方向での両端に連結された端受網フレーム88を備え、この端受網フレーム88で脱穀機体に支持されている。端受網フレーム88は、縦桟85が連結する縦辺部と、縦辺部のうちの縦桟85が連結している側と反対側の端部に連なり、脱穀機体に支持される横桟部とを備えている。受網27は、受網27の扱胴周方向での中間部に扱胴軸芯P2に平行又はほぼ平行に位置する中受網フレーム87を備えている。
【0099】
図2,4,5,19に示すように、受網27の扱胴側の面に送り部材91を備えてある。送り部材91は、扱胴周方向に対して傾斜する状態で設けられ、扱胴21によって回動力が付与されて受網27に沿って回動する脱穀処理物に案内作用することによって、脱穀処理物を処理方向終端側へ送り、脱穀処理物の排塵口23からの排出を促進する。
【0100】
送り部材91について詳述する。
送り部材91は、受網27の縦桟85及び横桟86よりも扱胴側に突出し、かつ、扱胴21の扱歯55の先端での回転軌跡T(図3,4参照)よりも受網側に位置している。また、送り部材91は、受網27の扱胴周方向での一端側から他端側に亘っている。
【0101】
送り部材91は、扱胴21の回転方向とは同じ回転方向巻きで脱穀部5Aの処理方向終端側に向かう螺旋形状となるように、螺旋状に屈曲成形した棒材によって構成してある。
送り部材91は、断面形状が矩形となるように、角棒材によって構成してある。
【0102】
図19に示すように、受網27は、4つの分割受網27Aを扱胴周方向に沿った縦接合面R1と、扱胴軸芯P2に平行又はほぼ平行に位置し、かつ縦接合面R1に交差した横接合面R2とで分離可能に接合させることによって構成してある。縦接合面R1は、端受網フレーム88を扱胴軸芯P2に沿う方向に分割した分割フレーム、及び中受網フレーム87を扱胴軸芯P2に沿う方向に分割した分割フレームそれぞれの接合面などによって形成してある。横接合面R2は、中受網フレーム87を扱胴周方向に分割した分割フレームの接合面によって形成してある。扱胴周方向に並ぶ一対の分割受網27Aは、一方の分割受網27Aが備える中受網フレーム87の分割フレームに設けた連結ピン87a(図3,4参照)が他方の分割受網27Aが備える中受網フレーム87の分割フレームに設けたピン孔に入り込むことによって、所定の連結状態になるように構成してある。
【0103】
従って、受網27は、縦接合面R1を縦分割面として扱胴軸芯P2に沿う方向に二つの分割受網に分割し、横接合面R2を横分割面として扱胴周方向に二つの分割受網に分割することにより、四つの分割受網27Aに分割できる。
【0104】
四つの分割受網27Aそれぞれの配置を入れ替えても、四つの分割受網27Aが所定どおりの受網27を形成する状態に、各分割受網27Aを構成してある。
ただし、四つの分割受網27Aそれぞれの配置を入れ替えるに当たり、左右の配置を入れ替えずに前後の配置だけを入れ替える場合、分割受網27Aの左右向き及び前後向きを変更せずにそのままにする。左右の配置を入れ替える場合、分割受網27Aの左右向き及び前後向きを変更する。
【0105】
図20は、分割受網27Aを示す平面図である。図19,20に示すように、送り部材91は、四つの分割受網27Aに各別に支持された分割送り部材91Aを備えている。
従って、受網27に備えてある送り部材91は、受網27を四つの分割受網27Aに分割することにより、扱胴軸芯P2の方向に二つの分割送り部材91Aに分割でき、かつ、扱胴周方向に二つの分割送り部材91Aに分割できる。すなわち、送り部材91は、四つの分割送り部材91Aに分割できる。そして、四つの分割送り部材91Aのうち、受網27の右前側の領域に位置する分割受網27Aに支持された分割送り部材91A、及び、受網27の左後側の領域に位置する分割受網27Aに支持された分割送り部材91Aは、受網27の扱胴周方向での一端と中間部とに亘っている。四つの分割送り部材91Aのうち、受網27の左前側の領域に位置する分割受網27Aに支持された分割送り部材91Aと、受網27の右後側の領域に位置する分割受網27Aに支持された分割送り部材91Aとが互いに連なり、互いに連なった二つの分割送り部材91Aは、受網27の扱胴周方向での一端から他端に亘って位置する。
【0106】
四つの分割受網27Aそれぞれの配置を入れ替えて、受網27の左前側の領域及び右後側の領域に位置する二つの分割受網27Aが入れ替わっても、受網27の左前側の領域及び右後側の領域に位置した新たな二つの分割受網27Aに支持される分割送り部材91Aが互いに連なり、この二つの分割送り部材91Aは、受網27の扱胴周方向での一端から他端に亘って位置する。
【0107】
従って、受網27の右前側及び左前側の領域に位置する分割受網27Aに支持される分割送り部材91Aに脱穀処理物との接触による磨滅が発生しやすいが、このように分割送り部材91Aに磨滅が発生した際、磨滅した分割送り部材91Aを支持する分割受網27Aだけを交換することにより、磨滅した分割送り部材91Aを新たな分割送り部材91Aに交換することができる。また、磨滅した分割送り部材91Aを支持する分割受網27Aと、この分割受網27Aと異なる箇所に配置してある分割受網27Aとを入れ替えることにより、磨滅した分割送り部材91Aを別の分割送り部材91Aと交換することができる。
【0108】
〔別実施例〕〔1〕上記した実施例では、縦桟85及び横桟86を備えた受網27を採用した例を示したが、受網フレームに網を張設して構成された受網、あるいは、金属板に複数の処理物漏下孔を形成して構成された受網を採用して実施してもよい。
【0109】
〔2〕上記した実施例では、送り部材91を螺旋状に形成した例を示した、送り作用を備えるその他の形状に形成して実施してもよい。
【0110】
〔3〕上記した実施例では、送り部材91を扱歯55の回転軌跡Tよりも受網側に位置するよう構成した例を示したが、送り部材91に扱歯55との干渉を避ける凹入部を設け、送り部材91が扱歯55の回転軌跡Tよりも扱胴側に突出するように構成して実施してもよい。
【0111】
〔4〕上記した実施例では、受網27を複数の分割受網27Aに分割自在に構成した例を示したが、分割が不可能な単一の受網27に構成して実施してもよい。上記した実施例では、送り部材91に複数の分割送り部材91Aを備えた例を示したが、送り部材91を、分割送り部材91Aを備えない単一の送り部材に構成して実施してもよい。
【0112】
〔5〕上記した実施例では、受網27を扱胴軸芯P2に沿う方向及び扱胴周方向に分割自在に構成した例を示したが、扱胴軸芯P2に沿う方向及び扱胴周方向のいずれか一方だけに分割自在に構成して実施してもよい。
【0113】
〔6〕上記した実施例では、受網27を扱胴軸芯P2に沿う方向及び扱胴周方向に二つの分割受網27Aに分割自在に構成した実施例を示したが、扱胴軸芯P2に沿う方向及び扱胴周方向に三つ以上の分割受網27Aに分割自在に構成して実施してもよい。また、扱胴軸芯P2に沿う方向及び扱胴周方向の一方に二つの分割受網27Aに分割自在に構成し、他方に三つ以上の分割受網27Aに分割自在に構成して実施してもよい。
【0114】
〔7〕上記した実施例では、二つの分割受網27Aに支持される分割送り部材91Aが互いに連なって、一つの送り部材91が形成されるように構成した例を示したが、三つ以上の分割受網27Aに支持される分割送り部材が連なって、一つの送り部材91が形成されるように構成して実施してもよい。
【0115】
〔8〕上記した実施例では、送り部材91を角棒材によって構成した例を示したが、丸棒材によって構成して実施しても良い。また、断面形状が円形や角形の鋼管、アングル材、縦断面形状がU字形になるよう形成された板部材など各種の部材によって構成して実施してもよい。
【0116】
〔9〕上記した実施例では、扱胴21の扱胴本体50Aをバー形に構成し、支持バー54に棒状の扱歯55を支持した例を示したが、扱胴本体を円筒形に成形した板金部材によってドラム形に構成し、この扱胴本体に棒状の扱歯55を設けて実施してもよい。
【0117】
〔10〕上記した実施例では、扱胴21に送り部材57,57a,57bを設け、上部カバー26に送塵弁83を設けた例を示しが、扱胴21の送り部材57,57a,57b及び上部カバー26の送塵弁83の一方あるいは両方を備えずに実施してもよい。
【0118】
〔11〕上記した実施例では、掻込み部39を備えた例を示したが、掻込み部39を備えずに実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、クローラ式走行装置を有した自走車に備えられる脱穀装置の他、走行車輪を有した自走車に備えられる脱穀装置にも利用可能である。また、扱胴軸芯が自走車の前後向きになる脱穀装置の他、扱胴軸芯が自走車の横向きになる脱穀装置にも利用可能である。また、自脱型の脱穀装置にも利用可能である。
【符号の説明】
【0120】
20 扱室
21 扱胴
27 受網
27A 分割受網
39 掻込み部
41 掻込み始端部
50 扱胴支軸
54 支持バー
55 扱歯
57 送り羽根(送り部材)
57a 送り羽根(送り部材)
57b 送り羽根(送り部材)
85 縦桟
86 横桟
91 送り部材
91A 分割送り部材
P2 扱胴軸芯
S2 内部空間
T 回転軌跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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