特許第6335537号(P6335537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335537翼振動制御装置、翼振動制御方法、及び回転機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335537
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】翼振動制御装置、翼振動制御方法、及び回転機械
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/06 20060101AFI20180521BHJP
   F01D 5/26 20060101ALI20180521BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F01D25/06
   F01D5/26
   F01D25/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-24606(P2014-24606)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-151895(P2015-151895A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】梅原 隆一
(72)【発明者】
【氏名】大山 宏治
【審査官】 金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0102701(US,A1)
【文献】 特開2013−61224(JP,A)
【文献】 特開2004−011458(JP,A)
【文献】 特開2003−138904(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0254940(US,A1)
【文献】 特開平08−061003(JP,A)
【文献】 特開2010−025187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/26,25/00,25/06
F16F 15/18
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転する動翼の振動をステータ側から非接触で検出する振動検出部と、
電流が供給されることで、前記動翼に対してステータ側のケーシングから非接触による加振力を付与することにより該動翼を加振する加振器と、
前記振動検出部による前記振動の検出値に基づいて、前記動翼に振動が変化する加振力が付与されるように、前記加振器に供給される電流供給を制御する制御装置と、
を備え
前記加振器は、前記ケーシングの周方向において前記動翼の周方向のピッチで1つおきの間隔に相当する位置に配置され、かつ前記ケーシングの周方向の一部に集中的に配置されていることを特徴とする翼振動制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は前記振動検出部により特定の前記動翼の振動速度を検出し、前記振動速度をフィードバックして、前記動翼の振動を変化させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の翼振動制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は前記振動検出部により振動変位を検出し、前記振動変位をフィードバックして、前記動翼の固有振動数を変化させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の翼振動制御装置。
【請求項4】
前記振動検出部及び前記加振器は、前記動翼の側面側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の翼振動制御装置。
【請求項5】
タービン動翼の振動を電磁式振動センサによってケーシングから非接触で検出する工程と、
電流が供給されることで、前記タービン動翼に対して、前記ケーシングの周方向において前記タービン動翼の周方向のピッチで1つおきの間隔に相当する位置に配置され、かつ前記ケーシングの周方向の一部に集中的に配置された電磁加振器によって非接触による加振力をケーシングから付加することにより前記タービン動翼を加振する工程と、
前記電磁式振動センサによる振動の検出値に基づいて、
前記タービン動翼に振動レベルが変化する加振力が付与されるように、前記電磁加振器に供給される電流供給を制御する工程と、
を有することを特徴とする翼振動制御方法。
【請求項6】
ケーシングと、
該ケーシング内に回転自在に支持されたロータと、
翼部の基端部が前記ロータに支持されると共に前記翼部の先端部側にシュラウドが固定されて前記ロータの周方向に複数並設されることで前記シュラウドが環状をなすように接触して組付けられる複数段の動翼と、
前記動翼の振動制御を行う翼振動制御装置と、
基端部が前記ケーシングに固定されると共に先端部が前記ロータ側に延出して前記動翼と交互に配設される複数段の静翼と、
を備える蒸気タービンにおいて、
前記翼振動制御装置は、軸線回りに回転する動翼の振動をステータ側から非接触で検出する振動検出部と、
電流が供給されることで、前記動翼に対してステータ側の前記ケーシングから非接触による加振力を付与することにより該動翼を加振するとともに、前記ケーシングの周方向において前記動翼の周方向のピッチで1つおきの間隔に相当する位置に配置され、かつ前記ケーシングの周方向の一部に集中的に配置された加振器と、
前記振動検出部による前記振動の検出値に基づいて、前記動翼に振動が変化する加振力が付与されるように、前記加振器に供給される電流供給を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタービン等に用いられる翼振動制御装置、翼振動制御方法、及び回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タービンにおいては、軽量化を図るため、腹側部と背側部との各裏面によって空洞部が画成された中空構造としたタービン翼が知られている。このようなタービン翼では、振動を抑制する技術として、タービン翼の振動応答レベルを低減するため、シュラウドダンパや,板バネダンパ,シールピンダンパが採用されている。これらのダンパでは、翼内部や翼間に設置されており、共振時にダンパと翼が接触することから、摩擦による減衰効果を有している。
【0003】
また、振動の抑制方法として、例えば特許文献1に示されているように、動翼に取り付けた振動センサにより振動を検知し、それをテレメーターで回転側から静止側へ伝送し、この振動データに基づいて、この振動を打ち消すような加振力を回転側に伝送し、動翼に備えられているアクチュエータで動翼の振動を押さえ込むように動翼を加振する制御装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−61003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のダンパを用いたタービンでは、タービンの実稼働時において、動翼とダンパ間の接触面の状態が安定しないため、接触部の特性(剛性、減衰)が変化し、動翼の固有振動数のばらつきが生じる。そのため、翼設計において過大な離調マージンを設ける必要があり、翼形状設計の制約となることから、その点で改善の余地があった。
【0006】
また、特許文献1の翼振動の制御方法では、加振力を制御するために翼振動が計測されるが、振動センサおよび加振用のアクチュエータを各翼に設置する必要がある。このことから、翼全体の制御が複雑となり難しく、しかも振動センサやアクチュエータの数量が増えるのでコストがかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、動翼の振動を外部から非接触で制御することで、翼の安定性を向上することができる翼振動制御装置を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、低コストで動翼の振動制御を行うことができる翼振動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る翼振動制御装置は、軸線回りに回転する動翼の振動をステータ側から非接触で検出する振動検出部と、電流が供給されることで、前記動翼に対してステータ側のケーシングから非接触による加振力を付与することにより該動翼を加振する加振器と、前記振動検出部による前記振動の検出値に基づいて、前記動翼に振動が変化する加振力が付与されるように、前記加振器に供給される電流供給を制御する制御装置と、を備え、前記加振器は、前記ケーシングの周方向において前記動翼の周方向のピッチで1つおきの間隔に相当する位置に配置され、かつ前記ケーシングの周方向の一部に集中的に配置されていることを特徴としている。
【0009】
本発明では、動翼の外方となるステータ側の振動検出部で回転する動翼の振動を検出し、その検出値に基づいて制御装置で加振器により非接触で動翼の振動が変化するように加振力を付与する制御をすることができ、これにより動翼の振動を低減することができる。具体的には、低減したい振動(振動レベルや固有振動数)に重み付けをしたり、ミスチューンにより振動が特に大きな動翼を特定しすることで、振動を制御することができる。
この場合、振動検出部が静止座標系であるとともに、動翼に対して振動検出部や加振器が直接的に設置されることがないので、制御が複雑化することがなく、精度の高い振動抑制制御を行うことができ、翼の安定性を高めることができる。
【0010】
また、本発明では、動翼に対して、非接触で振動を検出し、且つ加振力を付与する構成であるので、振動検出部や加振器の設置数を動翼の数量に一致させる必要はない。そのため、動翼の枚数よりも少ない数量を配置して、前述の制御を行うことが可能となり、コストの低減を図ることができる。
【0011】
また、本発明に係る翼振動制御装置は、前記制御装置は前記振動検出部により特定の前記動翼の振動速度を検出し、前記振動速度をフィードバックして、前記動翼の振動を変化させる制御を行うことが好ましい。
【0012】
この場合には、振動検出部で特定の動翼の振動速度を検出し、その振動速度をフィードバックして、その動翼の振動を変化させる制御を行うことができる。具体的には、動翼の振動モード毎に振幅規定値をデータベースとして制御装置に記録しておき、その振幅規定値を超えた動翼の振動モードの振動のみを低減するように制御することができる。
【0013】
また、本発明に係る翼振動制御装置は、前記制御装置は前記振動検出部により振動変位を検出し、前記振動変位をフィードバックして、前記動翼の固有振動数を変化させる制御を行うことが好ましい。
【0014】
この場合には、振動検出部で振動変位を検知し、その振動変位をフィードバックして、その動翼の固有振動数を変化させる制御を行うことができる。つまり、動翼の外側から動翼の固有振動数のばらつきを制御することができ、定格運転時には励振力の周波数と動翼の固有振動数が一致しないように、共振を回避する設計を行うことができる。
【0015】
また、本発明に係る翼振動制御装置は、前記振動検出部及び前記加振器は、前記動翼の側面側に配置されていることが好ましい。
【0016】
この場合には、動翼の側面が振動の検出対象であるとともに加振力を付与する対象となることから、動翼の先端部を径方向外側から振動検出及び加振力の付与を行う場合に比べて、より安定的な制御を行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る翼振動制御方法は、タービン動翼の振動を電磁式振動センサによってケーシングから非接触で検出する工程と、電流が供給されることで、前記タービン動翼に対して、前記ケーシングの周方向において前記タービン動翼の周方向のピッチで1つおきの間隔に相当する位置に配置され、かつ前記ケーシングの周方向の一部に集中的に配置された電磁加振器によって非接触による加振力をケーシングから付加することにより前記タービン動翼を加振する工程と、前記電磁式振動センサによる振動の検出値に基づいて、前記タービン動翼に振動レベルが変化する加振力が付与されるように、前記電磁加振器に供給される電流供給を制御する工程と、を有することを特徴としている。
【0018】
本発明では、タービン動翼の外方となるケーシング側の電磁式振動センサで回転するタービン動翼の振動を検出し、その検出値に基づいて電磁加振器に供給される電流供給を制御するにより非接触でタービン動翼の振動が変化するように加振力を付与する制御をすることができ、これによりタービン動翼の振動を低減することができる。具体的には、低減したい振動レベルに重み付けをしたり、ミスチューンにより振動が特に大きな動翼を特定しすることで、振動を制御することができる。
これにより、前述したように電磁式振動センサが静止座標系であるとともに、タービン動翼に対して電磁式振動センサが直接的に設置されることがないので、制御が複雑化することがなく、精度の高い振動抑制制御を行うことができ、翼の安定性を高めることができる。
【0019】
また、本発明に係る回転機械では、ケーシングと、該ケーシング内に回転自在に支持されたロータと、翼部の基端部が前記ロータに支持されると共に前記翼部の先端部側にシュラウドが固定されて前記ロータの周方向に複数並設されることで前記シュラウドが環状をなすように接触して組付けられる複数段の動翼と、前記動翼の振動制御を行う翼振動制御装置と、基端部が前記ケーシングに固定されると共に先端部が前記ロータ側に延出して前記動翼と交互に配設される複数段の静翼と、を備える蒸気タービンにおいて、前記翼振動制御装置は、軸線回りに回転する動翼の振動をステータ側から非接触で検出する振動検出部と、電流が供給されることで、前記動翼に対してステータ側の前記ケーシングから非接触による加振力を付与することにより該動翼を加振するとともに、前記ケーシングの周方向において前記動翼の周方向のピッチで1つおきの間隔に相当する位置に配置され、かつ前記ケーシングの周方向の一部に集中的に配置された加振器と、前記振動検出部による前記振動の検出値に基づいて、前記動翼に振動が変化する加振力が付与されるように、前記加振器に供給される電流供給を制御する制御装置と、を備えることを特徴としている。
【0020】
本発明の回転機械では、動翼の外方となるステータ側の振動検出部で回転する動翼の振動を検出し、その検出値に基づいて加振器により非接触で動翼の振動が変化するように加振器に供給される電流供給を制御することにより加振力を付与することができ、これにより動翼の振動を低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の翼振動制御装置、翼振動制御方法、及び回転機械によれば、動翼の振動を外部から非接触で制御することで、翼の安定性を向上することができるとともに、低コストで翼の振動制御を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態による翼振動制御装置の概略構成を模式的に示した図である。
図2】(a)はケーシングに設けられる電磁式振動センサの配置状態を示す図、(b)は同じく電磁式振動センサの配置状態を示す図である。
図3図1に示す翼振動制御装置による制御方法を説明するためのブロック図である。
図4】第2の実施の形態による翼振動制御装置による制御方法を説明するためのブロック図である。
図5】他の実施の形態による翼振動制御装置の概略構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態による翼振動制御装置、翼振動制御方法、及び回転機械について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本実施の形態の翼振動制御装置は、タービン動翼1、及び図示しないステータ(タービン静翼)を構成するガスタービンに適用されている。例えば、このようなガスタービンは、ステータ側に位置するケーシング2内に設けられる圧縮機、燃焼器及びタービンにより構成され、圧縮機で圧縮された圧縮空気が燃焼器で燃料とともに燃焼され、燃焼ガスがタービンに導入されてタービンが駆動される。タービンの動力により圧縮機を作動させ、発電機で発電される。
【0025】
この圧縮機には、ケーシング2に固設された前記ステータ、及びディスク3に固設されたタービン動翼1が軸線O方向に沿って配置されている。これらステータ及びタービン動翼1は、各々を通過した空気(気体)の流れ角度を変えるものであって、それぞれ軸線O周りに複数固設されている。
【0026】
翼振動制御装置は、軸線O回りに回転するタービン動翼1の振動をステータ側のケーシング2から非接触で検出する電磁式振動センサ4(振動検出部)と、電流が供給されることで、タービン動翼1に対してケーシング2から非接触による加振力を付与することによりタービン動翼1を加振する電磁加振器5(加振器)と、電磁式振動センサ4による振動の検出値に基づいて、タービン動翼1に振動レベル(振動)が変化する加振力が付与されるように、電磁加振器5に供給される電流供給を制御する振動制御装置6と、を備えている。
【0027】
電磁式振動センサ4は、タービン動翼1の径方向外側のケーシング2内に埋め込まれた状態で配置され、タービン動翼1の先端部1aの振動を非接触で検出するものである。ここでは、図2(a)に示すように、ケーシング2の周方向に所定間隔(ここでは均等なピッチで3箇所)をあけて配置されている。電磁式振動センサ4は、振動制御装置6に接続されており、検知された振動検出値が振動制御装置6に伝送されるようになっている。
電磁式振動センサ4は、ナイキスト周波数より、回転数rpm/60×設置個数/2の数量があれば、タービン動翼1の振動を確実に検知できるが、それ以下の設置数でも適切な推定器を利用すれば検知することが可能である。
【0028】
ここで、図1に示すように、タービン動翼1の先端部1aには、永久磁石又は磁石体などの磁石部材7が貼り付けられている。なお、磁石部材7は、全てのタービン動翼1に設ける必要はない。例えば、タービン動翼1の周方向に1つおきに磁石部材7を設けて、隣り合う磁石部材7同士の間隔を大きくすることで、電磁加振器5による加振力を目的のタービン動翼1に対して確実に付与することができる効果があり、より精度の高い振動制御を行うことができる。
【0029】
図3に示す振動制御装置6は、タービン動翼1の回転数、及び振動速度を直接計測、又は他の物理量の場合にはオブザーバなどを利用して振動速度に換算し、振動低減で一般的なスカフック制御理論などを適用してタービン動翼1の振動を低減するための制御力を演算する構成となっている。
また、制御理論には、最適制御理論や、H∞制御などの現在制御理論も適用することができる。また、振動制御は振動の制御値を超えたタービン動翼1の翼振動モードなどに限定することで、制御エネルギーを小さくすることが可能である。
【0030】
電磁加振器5は、アクチュエータが用いられ、タービン動翼1の径方向外側のケーシング2内に断熱材5aを介して埋め込まれた状態で配置されている。この電磁加振器5は、振動制御装置6で演算され制御力指令値に基づいてタービン動翼1の先端部1aに加振力を発生させ、タービン動翼1の振動を低減するものである。ここで、電磁加振器5は、図2(b)に示すように、ケーシング2の周方向の一部(ここでは3箇所)に集中的に配置されている。そして、電磁加振器5も、それぞれ振動制御装置6に接続されて前記制御力指令値が受信されるようになっている。
【0031】
なお、電磁式振動センサ4と電磁加振器5は、ケーシング2の周方向になるべく多く設置した方が、計測精度、制御性能は向上するが、本実施の形態のように数量を減らすことも可能である。
【0032】
次に、上述した構成の翼振動制御装置の作用について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1及び図2に示すように、本実施の形態では、タービン動翼1の外方となるステータ側の電磁式振動センサ4で回転するタービン動翼1の振動を検出し、その検出値に基づいて振動制御装置6で電磁加振器5により非接触でタービン動翼1の振動が変化するように加振力を付与する制御をすることができ、これによりタービン動翼1の振動を低減することができる。
【0033】
具体的には、低減したい振動(振動レベルや固有振動数)に重み付けをしたり、ミスチューンにより振動が特に大きなタービン動翼1を特定しすることで、振動を制御することができる。
ここで、本実施の形態の翼振動制御装置では、振動制御装置6で変化させる振動が振動レベルであることから、電磁式振動センサ4で特定のタービン動翼1の振動速度を検出し、その振動速度をフィードバックして、そのタービン動翼1の振動を変化させる制御を行うことができる。つまり、タービン動翼1の振動モード毎に振幅規定値をデータベースとして制御装置に記録しておき、その振幅規定値を超えたタービン動翼1の振動モードの振動のみを低減するように制御することができる。
【0034】
このように、本実施の形態の翼振動制御装置では、電磁式振動センサ4が静止座標系であるとともに、タービン動翼1に対して電磁式振動センサ4や電磁加振器5が直接的に設置されることがないので、制御が複雑化することがなく、精度の高い振動抑制制御を行うことができ、翼の安定性を高めることができる。
【0035】
また、本実施の形態では、タービン動翼1に対して、非接触で振動を検出し、且つ加振力を付与する構成であるので、電磁式振動センサ4や電磁加振器5の設置数をタービン動翼1の数量に一致させる必要はない。そのため、タービン動翼1の枚数よりも少ない数量を配置して、前述の制御を行うことが可能となり、コストの低減を図ることができる。
【0036】
上述した本実施の形態による翼振動制御装置では、タービン動翼1の振動を外部から非接触で制御することで、タービン動翼1の安定性を向上することができるとともに、低コストでタービン動翼1の振動制御を行うことができるという効果を奏する。
【0037】
次に、本発明の翼振動制御装置、翼振動制御方法、及び回転機械による他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0038】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態による翼振動制御装置は、図4に示すように、振動制御装置6において、ばらついているタービン動翼1の振動数を目標とする固有振動数となるように、変位フィードバック制御を行う構成となっている。
なお、制御理論には、最適制御理論、H∞制御などの現在制御理論も適用できる。また、振動制御はタービン動翼1の固有振動数が制御値を超えた翼の翼振動モードなどに限定することで、制御エネルギーを小さくすることもできる。
【0039】
図4に示すように、本実施の形態では、電磁式振動センサ4で非接触により振動変位を検知し、その振動変位をフィードバックして、そのタービン動翼1の固有振動数を変化させる制御を行うことができる。具体的には、タービン動翼1と振動モード毎の固有振動数の閾値をデータベースとして振動制御装置6に記録しておき、その閾値を超えたタービン動翼1に対して、その振動数を閾値内に入るように制御力指令値を電磁加振器5に送る制御をすることができる。
【0040】
なお、固有振動数が低く共振領域に入った場合には、変位制御により剛性を付加する制御として、振動数を上げる。一方で、固有振動数が高く共振領域に場合には、変位制御により剛性を低下する制御として、振動数を下げる。結果的に、共振回避により振動モードを低下することができる。
このように、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態のように振動レベルを低減するのではなく、タービン動翼1の固有振動数を変化させる制御となる。
【0041】
以上、本発明による翼振動制御装置、翼振動制御方法、及び回転機械の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では、振動検出部として電磁式振動センサ4を採用しているが、電磁式であることに制限されることはなく、レーザー式の振動センサを用いることも可能である。
【0042】
また、本実施の形態では、タービン動翼1の先端部をケーシング2内に設けられた電磁式振動センサ4で振動検出し、及び電磁加振器5で加振力を付与しているが、この位置であることに限定されることはない。
例えば、図5に示すように、電磁式振動センサ4(振動検出部)及び電磁加振器5(加振器)は、タービン動翼1の側面1b側に配置されていてもよい。この場合には、タービン動翼1の側面1bが振動の検出対象であるとともに加振力を付与する対象となることから、タービン動翼1の先端部1aを径方向外側から振動検出及び加振力の付与を行う場合(前述の実施の形態)に比べて、より安定的な制御を行うことができる。
【0043】
また、電磁加振器5は、タービン動翼1の回転方向の所定の設置位置で2つ配置されているが、とくに数量が制限されるものではなく、1つであってかまわない。
【0044】
なお、上述した実施の形態の他の回転機械として、ケーシングと、ケーシング内に回転自在に支持されたロータと、翼部の基端部がロータに支持されると共に翼部の先端部側にシュラウドが固定されてロータの周方向に複数並設されることでシュラウドが環状をなすように接触して組付けられる複数段の動翼と、動翼の振動制御を行う翼振動制御装置と、基端部がケーシングに固定されると共に先端部がロータ側に延出して動翼と交互に配設される複数段の静翼と、を備える蒸気タービンに適用することが可能である。この場合、翼振動制御装置は、軸線回りに回転する動翼の振動をステータ側から非接触で検出する振動検出部と、電流が供給されることで、動翼に対してステータ側から非接触による加振力を付与することにより動翼を加振する加振器と、振動検出部による振動の検出値に基づいて、動翼に振動が変化する加振力が付与されるように、加振器に供給される電流供給を制御する制御装置と、を備える構成とすることができる。
【0045】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施の形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 タービン動翼
1a 先端部
1b 側面
2 ケーシング
3 ディスク
4 電磁式振動センサ(振動検出部)
5 電磁加振器(加振器)
6 振動制御装置(制御装置)
O 軸線
図1
図2
図3
図4
図5