(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記管状部材における前記一端部に接続されて、該管状部材の内部に前記接続部に向かって水を流入させる第一フラッシング管、及び、該第一フラッシング管を開閉する第一開閉装置と、
前記接続部に接続されて、該接続部の内部に該接続部に向かって水を流入させる第二フラッシング管、及び、該第二フラッシング管を開閉する第二開閉装置と、
前記第二フラッシング管が接続された位置とは異なる位置で前記接続部に設けられ、該接続部に流入した前記水を排出させる排出部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガス回収装置。
前記第一フラッシング管及び前記第二フラッシング管は前記減圧部に接続され、該減圧部の動力によって、前記水を前記管状部材及び前記接続部の内部に流入させることを特徴とする請求項4に記載のガス回収装置。
前記生産井内に設置され、該生産井からの前記混合流体を積極的に前記分離装置へ向けて前記吸込管に吸い込ませる吸込補助部をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のガス回収装置。
前記吸込補助部は、前記吸込管に挿入されて軸線を中心とした棒状に延びる本体部、及び、前記本体部の外周面から突出して設けられ、前記軸線の方向に向かって螺旋状に形成された羽根部を有するオーガーと、
前記本体部を前記軸線回りに回転可能に支持する駆動部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載のガス回収装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような減圧法、加熱法のいずれの方法を用いて生産井からメタンガスの回収を行う場合であっても、メタンガスとともに、海底(又は湖底)の砂や水が産出されてしまう。そして、このように砂や水が混じったメタンガスを洋上や陸上まで吸い上げた後に、メタンガスを分離する場合には手間を要し、コストアップにつながる。さらに、砂や水が混じったメタンガスを吸い上げる管の距離が長くなると、途中で砂によって管内が閉塞されてしまう可能性があり、継続的にメタンガスの回収を行うことが難しい。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、コストを抑えつつ、メタンガスの継続的な回収が可能なガス回収装置、ガス回収方法、および、ガス回収方法で回収されるメタンガスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
即ち、本発明の一の態様に係るガス回収装置は、海底又は湖底に設けられた生産井を通じて、該海底又は湖底に存在するメタンハイドレートからメタンガスを回収するガス回収装置であって、前記生産井内に挿入されて、
前記メタンハイドレート中の前記メタンガス、水、及び砂を含む混合流体を吸い込む吸込管と、前記海底又は湖底の水面下に設けられて前記吸込管に接続され、前記混合流体が導入されて該混合流体から前記メタンガス、水、及び砂を比重差によって互いに分離する分離装置と、前記分離装置に接続されて該分離装置内の減圧を行う減圧部と、を備え、前記分離装置は、前記吸込管の一端部が接続されて鉛直方向に沿って延びる空間を画成する第一気体分離部と、前記
第一気体分離部の上部で前記空間に連通して該第一気体分離部内の前記メタンガスを回収する第一回収部と、前記海底又は湖底に沿って延びる管状部材を有する固体分離部と、前記管状部材に連通するとともに、前記第一気体分離部の下部に連通する接続部と、を有することを特徴としている。
【0010】
このようなガス回収装置によれば、分離装置が減圧部によって減圧されることで、この分離装置を介して生産井内が減圧されるため、いわゆる減圧法によってメタンハイドレートの分解が行われ、メタンガスが生じる。そして、このメタンガスが水及び砂とともに混合流体として分離装置に導入される。ここで、分離装置は水面下に設けられており、吸込管を通じて混合流体を水面上や陸上まで吸い上げる必要がなく、水面下で混合流体の分離を行ってメタンガスのみを水面上に回収することが可能となる。
また、この分離装置では、第一気体分離部が鉛直方向に延びる空間を画成していることで、空間内で混合流体からメタンガスのみを比重差によって分離し、第一気体分離部の上部に集めることが可能となる。よって、第一回収部を通じてメタンガスのみを回収することができる。
さらに、固体分離部は海底又は湖底に沿って延びる管状部材を有しているため、この管状部材に第一気体分離部からの混合流体が流入すると、混合流体が管状部材を流通する間に、砂が管状部材の内部で比重差によって沈降することで砂が混合流体から分離される。
【0011】
また、上記のガス回収装置における前記管状部材は、複数が設けられ、複数の前記管状部材は、各々が前記接続部から分岐するように該接続部に接続されていてもよい。
【0012】
このように固体分離部では、管状部材が接続部から複数に分岐するように設けられている。このため、第一気体分離部を通過した混合流体が各々の管状部材に分岐して流通することになる。よって、管状部材が一つのみ設けられている場合に比べて、各々の管状部材を流通する混合流体の流速を遅くすることができる。
この結果、混合流体が固体分離部を通過する時間を長くすることができ、砂の沈降時間を長くできる。よって、管状部材の長さを短くしても十分な砂の沈降時間を確保することができるため、管状部材の長さを短くすることでコンパクト化を図ることができる。また、管状部材を複数設けることで、管状部材が一つのみ設けられている場合に比べて、各々の管状部材の管径を小さくすることが可能となる。この結果、固体分離部の水圧に対する耐圧性を高めることができる。そして、耐圧性の向上にともなって、管状部材の肉厚を小さくすることができ、コストの低減につながる。
【0013】
また、上記のガス回収装置は、前記管状部材における前記第一気体分離部から離間する側の一端部に連通するとともに、前記海底又は湖底に沿って延びる空間を画成する第二気体分離部と、前記第二気体分離部の上部で前記空間に連通して該第二気体分離部内の前記メタンガスを回収する第二回収部と、をさらに備えていてもよい。
【0014】
このような第二気体分離部を設けることで、固体分離部を通過した混合流体を海底又は湖底に沿って流通させ、分離時間を稼ぎながら混合流体中に残存するメタンガスを比重差によって分離し、第二気体分離部の上部に集めることが可能となる。さらにこのメタンガスを、第二回収部を通じて回収することが可能となる。
【0015】
さらに、上記のガス回収装置は、前記管状部材における前記一端部に接続されて、該管状部材の内部に前記接続部に向かって水を流入させる第一フラッシング管、及び、該第一フラッシング管を開閉する第一開閉装置と、前記接続部に接続されて、該接続部の内部に該接続部に向かって水を流入させる第二フラッシング管、及び、該第二フラッシング管を開閉する第二開閉装置と、前記第二フラッシング管が接続された位置とは異なる位置で前記接続部に設けられ、該接続部に流入した前記水を排出させる排出部と、をさらに備えていてもよい。
【0016】
このように第一フラッシング管、第二フラッシング管、及び排出部が設けられているため、第一開閉装置によって第一フラッシング管を開放することで管状部材、即ち、固体分離部に水を流入させることができる。よって、管状部材の内部で沈降した砂を接続部に向かって水とともに押し流すことが可能となる。その後、第二開閉装置によって第二フラッシング管を開放することで接続部に水を流入させ、この水とともに排出部によって接続部内の砂を排出することが可能となる。即ち、フラッシングによって砂を分離装置から排出することができる。
【0017】
また、上記のガス回収装置では、前記第一フラッシング管及び前記第二フラッシング管は前記減圧部に接続され、該減圧部の動力によって、前記水を前記管状部材及び前記接続部の内部に流入させてもよい。
【0018】
このように減圧部の動力を利用して分離装置内のフラッシングを行うことができ、別途で固体分離部及び接続部に水を送り込むポンプ等を設ける必要がなくなる。
【0019】
さらに、上記のガス回収装置は、前記生産井内に設置され、該生産井からの前記混合流体を積極的に前記分離装置へ向けて前記吸込管に吸い込ませる吸込補助部をさらに備えていてもよい。
【0020】
このような吸込補助部によって、生産井からの混合流体を積極的に、強制的に分離装置に導入することができる。よって、吸込管内で砂が滞留し、吸込管を閉塞してしまうことを抑制できる。
【0021】
前記吸込補助部は、前記吸込管に挿入されて軸線を中心とした棒状に延びる本体部、及び、前記本体部の外周面から突出して設けられ、前記軸線の方向に向かって螺旋状に形成された羽根部を有するオーガーと、前記本体部を前記軸線回りに回転可能に支持する駆動部と、を有していてもよい。
【0022】
このような吸込補助部によって、オーガーを回転させ、オーガーにおける羽根部の回転に応じて生産井内の砂を上方に持ち上げるようにして、吸込管での砂の吸い込みを促進することができる。
【0023】
前記吸込補助部は、前記生産井に挿入された噴出管と、前記第一回収部に接続されて前記メタンガスが流通する流通管と、前記吸込管と前記流通管とを接続するとともに、前記メタンガスを、前記噴出管を通じて前記生産井内に吹き込む噴出装置と、を有していてもよい。
【0024】
このような吸込補助部によって、第一気体分離部から第一回収部によって回収したメタンガスを生産井内に吹き込むことで、生産井内の砂を撹拌し、吸込管による砂の吸い込み量を増大させることができる。
【0025】
また、本発明の一の態様に係るガス回収方法は、上記のガス回収装置を用いて、前記混合流体から前記水及び前記砂を分離し、前記メタンガスを回収するガス回収方法であって、前記第一気体分離部に前記混合流体を導入する第一導入工程と、前記第一気体分離部で前記混合流体から、比重差によって前記メタンガスを分離する第一分離工程と、前記第一回収部を通じて前記第一気体分離部で分離された前記メタンガスを回収する回収工程と、前記第一気体分離部からの前記混合流体を、前記接続部を介して前記固体分離部に導入する第二導入工程と、前記固体分離部における前記管状部材で前記砂を沈降させて分離する第二分離工程と、を含むことを特徴としている。
【0026】
このようなガス回収方法によれば、いわゆる減圧法によってメタンハイドレートの分解が行われ、メタンハイドレート中のメタンガスが水及び砂とともに混合流体として分離装置に導入される。ここで、この分離装置は水面下に設けられており、吸込管を通じて混合流体を水面上や陸上まで吸い上げる必要がなく、水面下で混合流体の分離を行ってメタンガスのみを水面上に回収することが可能となる。
【0027】
また、上記のガス回収方法は、前記固体分離部における前記管状部材の各々の内部に前記接続部に向かって水を流入させる第一フラッシング工程と、前記接続部に向かって前記水を流入させた後に流出させる第二フラッシング工程と、をさらに含んでいてもよい。
【0028】
このような第一フラッシング工程によって、固体分離部のフラッシングを行って固体分離部から接続部へ砂を水とともに押し流すことができる。また、第二フラッシング工程によって接続部のフラッシングを行って接続部から砂を排出することが可能となる。この結果、固体分離部内で砂が滞留してしまうことを抑制でき、分離装置を正常に機能させ、メタンガスの回収が可能となる。
【0029】
また、本発明の一の態様に係るメタンガスは、上記のガス回収方法によって回収されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
請求項1のガス回収装置によれば、砂や水が混じったメタンガスを洋上や陸上まで吸い上げた後にメタンガスを分離する必要がなくなり、コストを抑えつつ、継続的にメタンガスの回収が可能となる。
【0031】
また、請求項2のガス回収装置によれば、複数の管状部材によって、固体分離部での砂の分離効果を向上することができる。
【0032】
また、請求項3のガス回収装置に第二気体分離部によって分離装置でのメタンガスの分離効果をさらに向上することができ、メタンガスのさらなる生産性向上につながる。
【0033】
また、請求項4のガス回収装置によれば、固体分離部内で砂が滞留することを抑制でき、分離装置を継続的に正常に機能させてメタンガスの回収が可能となる。
【0034】
また、請求項5のガス回収装置によれば、分離装置内を減圧する減圧部を用いて分離装置のフラッシングを行うことで、コストを抑制しながら、分離装置からの砂の排出が可能となる。
【0035】
また、請求項6のガス回収装置によれば、吸込補助部によって生産井からメタンガスを継続的に回収することができる。
【0036】
また、請求項7のガス回収装置によれば、オーガーによって、より効果的に吸込管を閉塞してしまうことを抑制でき、生産井からメタンガスを継続的に回収することができる。
【0037】
また、請求項8のガス回収装置によれば、噴出管によってより効果的に吸込管を閉塞してしまうことを抑制でき、生産井からメタンガスを継続的に回収することができる。
【0038】
また、請求項9のガス回収方法によれば、砂や水が混じったメタンガスを洋上や陸上まで吸い上げた後にメタンガスを分離する必要がなくなり、コストを抑えつつ、メタンガスの継続的な回収が可能となる。
【0039】
また、請求項10のガス回収方法によれば、固体分離部内で砂が滞留することを抑制でき、分離装置を継続的に正常に機能させてメタンガスの回収が可能となる。
【0040】
また、請求項
9又は10のガス回収方法によって回収されるメタンガスによれば、コストを抑えつつ、継続的に回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
〔第一実施形態〕
以下、本発明に係る実施形態のガス回収装置1について、図面を参照して詳細に説明する。
ガス回収装置1は、例えば海底BSに存在するメタンハイドレートを減圧法によって分解し、発生したメタンガスGを回収する装置である。
【0043】
図1に示すように、ガス回収装置1は、海底BSに形成された縦穴内に設けられた生産井100に挿入された吸込管2と、海底BSに設置されて吸込管2に接続された分離装置3と、分離装置3に接続されたポンプ4(減圧部)と、生産井100内に設けられた吸込補助部5とを備えている。
【0044】
ここで、生産井100は、海底BSの地盤中のメタンハイドレートが存在するメタンハイドレート層Hまで延びるように、海底BSから下方に掘削された縦穴の内部に設けられている。この生産井100は、主に、縦穴の内面を覆うように設けられた金属管101等を有して構成されている。生産井100の上部における金属管101の内側には、吸込管2が生産井100に挿入された状態で、生産井100を密閉可能なパッカー102が設けられている。
【0045】
吸込管2は、生産井100に挿入されて、メタンハイドレート層HからのメタンガスG、海水W、及び砂Sを含む混合流体Fが流通可能となっている。また、この吸込管2における生産井100から海中に突出する側の端部は、海底BSに沿うように屈曲する屈曲部2aを介して延びて、分離装置3に接続されることで、分離装置3に連通している。吸込管2と生産井100との間の隙間は、上述したパッカー102によって密閉可能となっている。
【0046】
吸込補助部5は、吸込管2内に挿入されて設けられたオーガー11と、オーガー11を回転可能に支持する駆動部12とを有している。
【0047】
オーガー11は、吸込管2に挿入されて軸線Oを中心とした棒状に延びる本体部11aと、本体部11aの外周面から突出して設けられ、軸線Oの方向に向かって螺旋状に形成された羽根部11bとを有している。
【0048】
本体部11aは、生産井100の底面近くまで延びている。
羽根部11bは、本体部11aの周方向に、軸線Oの方向の一方側に向かって捩れるように形成されている。
【0049】
駆動部12は、オーガー11の本体部11aを回転可能に支持するモータ等であって、本体部11aを軸線O回りに回転させることでオーガー11全体を回転させる。オーガー11の回転方向は、羽根部11bが右ネジ状に形成されている場合には、上方からオーガー11を見て反時計回りとなる。一方で、羽根部11bが左ネジ状に形成されている場合には、上方からオーガー11を見て時計回りとなる。
また、本実施形態では、この駆動部12は、吸込管2における屈曲部2aの上方に配されて、屈曲部2aで吸込管2を貫通するようにして吸込管2内に挿入されている。
【0050】
ポンプ4は、分離装置3内の海水Wを吸い出すことで分離装置3内を減圧し、これに応じて、吸込管2を通じて生産井100内の減圧を行う。
ここで、ポンプ4には、吐出管38が接続されるとともに、この吐出管38を開閉する吐出弁39が設けられている。
【0051】
次に、
図2から
図4を参照して、分離装置3について詳細を説明する。
分離装置3は、吸込管2が接続された第一気体分離部21と、第一気体分離部21よりも混合流体Fの流れの下流側に接続された分岐部22(接続部)と、分岐部22の下流側に接続された固体分離部23と、固体分離部23の下流側に接続された第二気体分離部24と、第二気体分離部24の下流側に接続された吐出部25とを有している。
【0052】
また、この分離装置3は、第一気体分離部21の上部に接続された第一回収部26と、第二気体分離部24の上部に接続された第二回収部27と、固体分離部23及び分岐部22に海水Wを流入させるフラッシング部28とを有している。
【0053】
第一気体分離部21は、鉛直方向に沿って延在するとともに、下部で海底BSに沿うように屈曲する円管状をなす第一気体分離管21aを有している。そして第一気体分離管21aの内部の空間には、生産井100からの混合流体Fが吸込管2を通じて流入する。また、流入した混合流体FのうちのメタンガスGを、比重差によって砂S、海水Wから分離し、分離したメタンガスGを上部に集めるようになっている。
【0054】
第一回収部26は、第一気体分離管21aの内部の空間に連通する円管状をなす第一回収管26aと、第一回収管26aに設けられて第一回収管26aを開閉する第一弁装置26bとを有している。
そして、第一弁装置26bを開放すると、第一気体分離管21a内の上部に集められたメタンガスGが第一回収管26aを通じて分離装置3の外部に流出するようになっている。
【0055】
分岐部22は、円管状をなして第一気体分離管21aに直交するように海底BSに沿って延在する分岐管22aを有している。分岐管22aは第一気体分離管21aの下部の屈曲する部分に接続されて連通し、第一気体分離管21aからの混合流体Fが流入するようになっている。
なお、この分岐部22が第一気体分離管21aに接続される鉛直方向の位置は、第一気体分離部21内の混合流体Fの液面、即ち、気相と液相との境界面よりも下方に位置するように第一回収部26における第一弁装置26bの開閉の制御等を行うことが好ましい。
【0056】
固体分離部23は、分岐部22に接続されて連通し、海底BSに沿って延びる複数(本実施形態では二つ)の円管状をなす固体分離管23a(管状部材)を有している。
本実施形態では、これら固体分離管23aは、分岐管22aの両端部側の位置から、分岐管22aの延在方向の中央位置を通り、分岐管22aの延在方向に直交する中心軸を基準として軸対称に、かつ、互いに平行に分岐部22の延在方向に直交するように延びている。
【0057】
そして、この固体分離管23aの内部の空間には、分岐部22から混合流体Fが流入する。また、流入した混合流体Fのうちの砂Sを比重差によって海水Wから分離し、分離した砂Sを各固体分離管23aの下部に沈降させるようになっている。
【0058】
第二気体分離部24は、各々の固体分離管23aに接続されて連通する円管状をなす斜管24bと、これら斜管24bを集約するように、斜管24bに接続されて連通する円管状をなす第二気体分離管24aとを有している。
【0059】
斜管24bは、固体分離管23aにおける第一気体分離部21から離間する側の端部に接続され、この端部から鉛直方向に沿って上方に向かうに従って、漸次互いに近接するように傾斜して設けられている。
【0060】
第二気体分離管24aは、一端部が斜管24bに接続され、海底BSに沿って第一気体分離管21aに向かって延びている。即ち、この第二気体分離管24aは、固体分離管23aの上方に固体分離管23aと平行となるように設けられている。また本実施形態では、この第二気体分離管24aは二つの固体分離管23a同士の間に挟まれる位置であって、分岐管22aの延在方向の中央位置を通る上記の中心軸上に一つが配されている。
【0061】
そして、この第二気体分離管24aの内部の空間には、固体分離部23から斜管24bを通じて混合流体Fが流入する。また、流入した混合流体Fのうち、第一気体分離部21で分離されずに混合流体F中に残留しているメタンガスGを、比重差によって海水Wから分離し、分離したメタンガスGを上部に集めるようになっている。
【0062】
第二回収部27は、第二気体分離管24aの内部の空間に連通する円管状をなして鉛直方向の上方に延びる第二回収管27aと、第二回収管27aに設けられて第二回収管27aを開閉する第二弁装置27bとを有している。
【0063】
第二回収管27aは、第二気体分離管24aにおける第一気体分離部21に近接する側の端部で、第二気体分離管24aに接続されている。
【0064】
第二弁装置27bは、第二回収管27aを開放することで、第二気体分離管24a内で上部に集められたメタンガスGを、第二回収管27aを通じて分離装置3の外部に流出させる。
【0065】
吐出部25は、第二気体分離管24aにおける第一気体分離部21に近接する側の端部で、即ち、第二回収管27aが接続された位置で、第二気体分離部24に接続された円管状をなす縦管25aと、縦管25aの下端部に接続されて連通する円管状をなす横管25bとを有している。
【0066】
縦管25aは、第二回収管27aとは反対方向となる鉛直方向の下方に延びており、その下端部は固体分離管23aが設けられた鉛直方向位置よりも、さらに下方に位置している。
【0067】
横管25bは、縦管25aに接続されて海底BSに沿って第一気体分離部21から離間するように延びている。即ち、この横管25bは、固体分離管23aの下方に固体分離管23aと平行となるように設けられている。また本実施形態では、この横管25bは二つの固体分離管23a同士の間に挟まれる位置であって、分岐部22の延在方向の中央位置を通る上記の中心軸上に一つが配されている。
【0068】
そして、この横管25bの第一気体分離管21aから離間する側の端部にポンプ4が接続され、横管25bを通じて分離装置3から海水Wが外部(海中)に吐出されるようになっている。
【0069】
フラッシング部28は、固体分離管23aにおける第一気体分離部21から離間する側の端部に接続された第一フラッシング管31と、第一フラッシング管31を開閉する第一開閉装置32と、分岐管22aの一端部に接続された第二フラッシング管33と、第二フラッシング管33を開閉する第二開閉装置34と、分岐管の他端部に接続された排出部35とを有している。
【0070】
第一フラッシング管31は、海水Wを、各々の固体分離管23aに流入させるように、各固体分離管23aに一つずつ設けられている。
【0071】
第一開閉装置32は、弁装置であって、海水Wの固体分離管23aへの流入の有無を切り替える。
【0072】
第二フラッシング管33は、海水Wを分岐管22aに流入させる。
【0073】
第二開閉装置34は、弁装置であって、海水Wの分岐管22aへの流入の有無を切り替える。
【0074】
ここで、分岐管22aの他端は開口しており、排出部35は、この開口を開閉可能な蓋部材となっている。
この排出部35では、不図示の制御部によって電気的に蓋部材が開閉制御されるものであってもよいし、分岐管22aから流出しようとする海水Wが所定の圧力を超えた際に、この圧力によって蓋部材が開口を開放し、所定の圧力以下で閉塞するように機械的に制御されるものであってもよい。
また、排出部35は、このような蓋部材に代えて、分岐管22aの開口に接続された配管と、この配管に設けられた弁装置とを有して構成されていてもよく、この場合は、弁装置を開閉制御することで、分岐管22aから海水Wを排出することが可能である。
【0075】
さらに、第一開閉装置32及び第二開閉装置34は、弁装置ではなく、排出部35と同様の蓋部材を用いたものであってもよい。
【0076】
また、本実施形態では、第一フラッシング管31と第二フラッシング管33とは、接続管40を介してポンプ4に接続されている。より具体的には、この接続管40は、ポンプ4と吐出弁39との間で吐出管38から分岐するように延び、二つの第二フラッシング管33、及び第一フラッシング管31を並列に接続している。
【0077】
次に、本実施形態のガス回収装置1の作用について、
図5に沿ってメタンガスGの回収方法とともに説明する。
【0078】
図5(a)に示すように、まず、分離装置3がポンプ4によって減圧される。生産井100の内部は、吸込管2を介して分離装置3と連通していることで、分離装置3の減圧にともなって生産井100内も減圧されるため、いわゆる減圧法によってメタンハイドレートの分解が行われ、メタンガスGが生じる。
【0079】
そして、このメタンガスGが、海水W及び砂Sとともに混合流体Fとして分離装置3における第一気体分離部21に導入される(第一導入工程S1)。
【0080】
その後、第一気体分離部21内では、混合流体FからメタンガスGのみを比重差によって分離し、第一気体分離部21の上部に集める(第一分離工程S2)。このように分離されたメタンガスGを第一回収部26を通じて回収する(第一回収工程S3)。
【0081】
次に、第一気体分離部21でメタンガスGが分離された後の混合流体Fが、分岐部22に流入し、さらに固体分離部23における固体分離管23a内に分岐して導入される(第二導入工程S4)。
【0082】
このように、この固体分離管23aに第一気体分離部21からの混合流体Fが流入すると、混合流体Fが固体分離管23aを流通する間に、砂Sが固体分離管23aの内部で比重差によって沈降することで、砂Sが混合流体Fから分離される(第二分離工程S5)。
【0083】
そして、固体分離部23を通過した混合流体Fが、斜管24bを通じて各固体分離管23aから集約され、第二気体分離管24aに導入される(第三導入工程S6)。第二気体分離管24aでは、第一気体分離部21で分離されずに混合流体F中に残存するメタンガスGを、比重差によって分離し、第二気体分離管24aの上部に集める(第三分離工程S7)。
【0084】
第二気体分離管24aの上部に集められたメタンガスGを、第二回収部27を通じて回収する(第二回収工程S8)。
【0085】
その後、混合流体Fのうちの海水Wが、吐出部25における縦管25a及び横管25bに導入され、ポンプ4に接続された吐出管38によって分離装置3の外部に吐出される(吐出工程S9)。
【0086】
そして、このように分離装置3で混合流体Fの分離を行う定常運転状態では、吐出弁39は開放状態であり、第一開閉装置32及び、第二開閉装置34は閉塞状態である。
【0087】
一方で、
図5(b)に示すように分離装置3のフラッシング運転を行う場合、まず、ポンプ4に設けられた吐出弁39を閉塞状態とするとともに、第一開閉装置32を開放状態とする(第一弁調整工程S11)。
【0088】
そして、ポンプ4の動力によって吐出部25から吐出した海水Wを固体分離管23aに流入させる。これによって、固体分離管23a内で沈降した砂Sを分岐部22に向かって、海水Wとともに押し流す(第一フラッシング工程S12)。
【0089】
そして、第二開閉装置34を開放状態とし(第二弁調整工程S13)、ポンプ4の動力によって吐出部25から吐出した海水Wを分岐管22a内に流入させる。そして、第一フラッシング工程S12によって分岐部22に押し流され、分岐管22a内に滞留した砂Sを海水Wとともに、排出部35を介して分岐部22から排出する(第二フラッシング工程S14)。
【0090】
なお、第一弁調整工程S11と第二弁調整工程S13とは、順序が逆であってもよいし、同時に実行してもよい。また、第一弁調整工程S11は実行されなくともよい。即ち、第一開閉装置32を開放状態としたまま、第二開閉装置34を開放状態としてもよい。
【0091】
このようなガス回収装置1によると、分離装置3は海底BS上、即ち水面下に設けられており、吸込管2を通じて混合流体Fを水面上まで吸い上げる必要がなく、水面下で混合流体Fの分離を行ってメタンガスGのみを水面上に回収することが可能となる。
【0092】
また、この分離装置3では、鉛直方向に延びる第一気体分離管21aによって、混合流体FからメタンガスGのみを比重差によって分離し、第一気体分離管21aの上部に集めることが可能となる。よって、第一回収部26を通じてメタンガスGのみを回収することができる。
【0093】
さらに、固体分離部23は海底BSに沿って延びる複数の固体分離管23aを有し、これら固体分離管23aが分岐部22から複数に分岐するように設けられている。このため、第一気体分離部21を通過した混合流体Fが各々の固体分離管23aに分岐して流通することになる。即ち、固体分離管23aが一つのみ設けられている場合に比べて、各々の固体分離管23aを流通する混合流体Fの流速を遅くすることができる。
【0094】
この結果、混合流体Fが固体分離部23を通過する時間を長くすることができ、砂Sの沈降時間を長くして砂Sの分離効果を向上することができる。よって、固体分離管23aの長さを短くしても十分な砂Sの沈降時間を確保することができるため、固体分離管23aの長さを短くすることが可能となり、コンパクト化を図ることができる。
【0095】
また、固体分離管23aを複数設けることで、固体分離管23aが一つのみ設けられている場合に比べて、各々の固体分離管23aの管径を小さくすることが可能となる。この結果、固体分離管23aの水圧に対する耐圧性を高めることができる。そして、耐圧性の向上にともなって、固体分離管23aの肉厚を小さくすることができ、コストの低減につながる。
【0096】
また、第二気体分離部24として第二気体分離管24aを設けることで、固体分離部23を通過した混合流体Fを海底BSに沿って流通させることで、分離時間を稼ぎながら混合流体F中に残存するメタンガスGを比重差によって分離し、第二気体分離管24aの上部に集めることが可能となる。さらにこのメタンガスGを第二回収部27を通じて回収することが可能となる。よってメタンガスGの分離、回収の効果を向上でき、メタンガスGの生産性向上につながる。また、ポンプ4へのメタンガスGの流入量を低減でき、ポンプ4内でのキャビテーションの発生を抑制でき、ポンプ4の損傷を抑制することが可能となる。
【0097】
またフラッシング部28を設けたことで、固体分離管23a内に沈降した砂Sを、分岐管を通じて分離装置3の外部に排出するフラッシングを行うことができる。これにより、固体分離部23内で砂Sが滞留することを抑制でき、分離装置3を継続的に正常に機能させてメタンガスGの回収が可能となる。
【0098】
また、本実施形態ではポンプ4の動力によってフラッシングを行っているため、別途で固体分離部23及び分岐部22に海水Wを送り込むポンプ等を設ける必要がなくなり、コストを抑制しながら、分離装置3からの砂Sの排出が可能となる。
【0099】
さらに、吸込補助部5としてのオーガー11を回転させることで、オーガー11の羽根部11bの回転に応じて生産井100内の砂Sを上方に持ち上げるようにして、吸込管2での砂Sの吸い込みを促進することができる。従って、吸込管2が混合流体F中の砂Sによって閉塞されてしまうことをより効果的に抑制でき、生産井100からメタンガスGを継続的に回収することができる。
【0100】
本実施形態のガス回収装置1によると、砂Sや海水Wが混じったメタンガスGを洋上や陸上まで吸い上げた後にメタンガスGを分離する必要がなくなり、コストを抑えつつ、メタンガスGの回収が可能となる。
【0101】
〔第二実施形態〕
以下、
図6を参照して、本発明の第二実施形態に係るガス回収装置51について説明する。
なお、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、吸込補助部55が第一実施形態と異なっている。
【0102】
吸込補助部55は、生産井100に挿入された噴出管55aと、第一回収管26aに接続されてメタンガスGが流通する流通管55bと、噴出管55aと流通管55bとを接続するとともに、メタンガスGを、噴出管55aを通じて生産井100内に吹き込む噴出装置55cとを有している。
【0103】
流通管55bは、第一気体分離部21で回収されたメタンガスGが流通する。
【0104】
噴出装置55cは、本実施形態では、吸込管2における屈曲部2aの上方に配されている。そして流通管55bからのメタンガスGを噴出管55aに向けて圧送する圧縮機等である。
【0105】
噴出管55aは、噴出装置55cに接続されるとともに、本実施形態では、吸込管2における屈曲部2aで吸込管2を貫通するようにして吸込管2内に挿入され、メタンハイドレート層Hの位置、即ち、生産井100の底部まで延びている。そして噴出装置55cによって圧送されたメタンガスGを生産井100内に吹き込む。
【0106】
本実施形態のガス回収装置51によると、吸込補助部55によって、第一気体分離部21から第一回収部26によって回収したメタンガスGを生産井100内に吹き込むことで、生産井100内の砂Sを撹拌し、吸込管2によって砂Sの吸い込み量を増大させることができる。よって、より効果的に吸込管2を閉塞してしまうことを抑制でき、生産井100からメタンガスGを継続的に回収することができる。
【0107】
なお、本実施形態では噴出管55aは吸込管2の内部に挿入されなくともよく、吸込管2と噴出管55aとが並列に、生産井100の内部に挿入されていてもよい。
【0108】
また、噴出管55aには、メタンガスGとともに海水Wが流入するようにしてもよい。さらに、流通管55bを第二回収管27aに接続し、第二気体分離部24から回収したメタンガスGを噴出管55aに流入させてもよい。また、分離装置3以外から、即ち、ガス回収装置51の系外から、メタンガスGや海水W、その他の流体を流入させてもよい。
【0109】
以上、本発明のガス回収装置1、51の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態で示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。
例えば、第一フラッシング管31及び第二フラッシング管33はポンプ4に接続されていなくともよい。即ち、これら第一フラッシング管31及び第二フラッシング管33が海中に開口し、第一開閉装置32及び第二開閉装置34を開放状態とすることによって、海中と分離装置3内との差圧のみによって固体分離部23、及び分岐部22に海水Wを流入させてもよい。また、フラッシングを行うためのポンプをポンプ4とは別に設けてもよい。
【0110】
また、第一気体分離部21、第二気体分離部24、固体分離部23、分岐部22、及び吐出部25の設置位置の相対関係は上述の場合に限定されない。例えば、吐出部25における横管25bが固体分離部23における固体分離管23aよりも上方に配置されていてもよい。
【0111】
第一気体分離部21、第二気体分離部24、固体分離部23、分岐部22、及び吐出部25における各管は円管状の部材を有するものに限定されず、内部に混合流体Fが流通可能な空間が画成された部材であれば形状は限定されない。
【0112】
また、第二気体分離管24aは各々の固体分離管23aに対応するように複数設けられていてもよい。
【0113】
また、固体分離管23aは必ずしも複数設けられていなくともよい。
【0114】
また、上述の実施形態では、減圧部としてポンプ4を用いていたが、例えばポンプ4に代えてエアリフト装置を設けてもよい。このエアリフト装置は、空気を水中に吹き込むことで水の比重を小さくし、この比重の小さくなった水を水圧によって揚水管を通じて吸い出すものである。
【0115】
さらに、メタンハイドレート層が湖底に存在する場合であっても、上述のガス回収装置1、51を適用可能である。