【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 Photonics West 2014(開催日:平成26年2月6日) [刊行物等] ウェブサイトのアドレス:http://spie.org/Publications/Proceedings/Paper/10.1117/12.2041036(掲載日:平成26年2月25日)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記走査手段は、前記複数のレーザ光源のそれぞれに対応して設けられ、対応するレーザ光源からのレーザ光を偏向させて前記投影面上を走査する複数のMEMSスキャナである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の投影装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、投影装置1の構成を説明するための模式図である。投影装置1は、並列に配置された第1のレーザプロジェクタ2aと第2のレーザプロジェクタ2bを有し、それぞれのレーザプロジェクタからレーザ光28を投影面50に投射する。以下では、第1のレーザプロジェクタ2aと第2のレーザプロジェクタ2bを区別せず単に「レーザプロジェクタ2」ともいう。
【0019】
第1のレーザプロジェクタ2aはホスト側であり、内部にタイミング制御手段60を有する。第2のレーザプロジェクタ2bはスレーブ側であり、ホスト側の第1のレーザプロジェクタ2aから同期信号等を受信して制御される。タイミング制御手段60は、複数のレーザ光源のうちの一のレーザ光源が照射する位置と他のレーザ光源が照射する位置とを異ならせるように、複数のレーザ光源の発光タイミングを制御する。
【0020】
なお、投影装置1では、一方のレーザプロジェクタ2をホスト、他方のレーザプロジェクタ2をスレーブとして、タイミング制御手段60が、ホスト側のレーザプロジェクタ2からスレーブ側のレーザプロジェクタ2に同期信号等を送信する。しかしながら、レーザプロジェクタ2とは独立してタイミング制御手段60を設け、タイミング制御手段60によって、レーザプロジェクタ2のレーザ光の走査位置や発光タイミングを制御することも可能である。
【0021】
図2は、レーザプロジェクタ2の構成を説明するための図である。レーザプロジェクタ2は、それぞれ、レーザ光源10と、出射部20と、検知部30と、制御部40とを主要な構成要素として有する。レーザプロジェクタ2は、レーザ光源10から出射された各色のレーザ光を、フェルール23により束ねられた複数のファイバ21からそれぞれ出力し、揺動するMEMSスキャナ25を介して2次元状に走査して、投影面50上に画像を投影する。
【0022】
レーザ光源10は、赤(R)、緑(G)および青(B)の各色レーザ光を出射するレーザダイオード(LD)11、12および13を有する。レーザ光源10では、各レーザダイオード11、12および13の発光タイミングや発光強度等が、投影される画像の画像データに応じて制御部40により制御される。このとき、2台のレーザプロジェクタ2のレーザ光源10によって投影面50上に画像を投影するため、1台当たりのレーザ光源10の発光強度を低減することが可能となる。
【0023】
出射部20は、レーザ光源10からの各色レーザ光を投影面50に向けて出射する。出射部20は、複数のファイバ21と、フェルール23と、投影レンズ24と、MEMSスキャナ25と、MEMSドライバ26と、遮蔽部29とを有する。
【0024】
複数のファイバ21には、レーザ光源10からの各色レーザ光をそれぞれ伝送するファイバと、図示しないダミーのファイバが含まれる。それぞれのファイバは、例えばシングルモードの光ファイバである。以下では、レーザダイオード11、12および13からのR、GおよびBのレーザ光を伝送するファイバのことを、それぞれRファイバ、Gファイバ、Bファイバという。これらのファイバをまとめて、RGBファイバともいう。また、ダミーファイバのことをDファイバという。レーザプロジェクタ2は、Rファイバ、GファイバおよびBファイバを1本ずつ有し、Dファイバを複数本有する。
【0025】
フェルール23は、固定具の一例であり、Rファイバ、Gファイバ、BファイバおよびDファイバを、レーザ光源10とは反対側の端部で束ねて固定する。RGBの各色レーザ光は、フェルール23の端部にある各ファイバ21の出射端面から出射される。
【0026】
投影レンズ24は、各ファイバ21の出射端面から出射された各色レーザ光がMEMSスキャナ25に照射されるように整形する。
【0027】
MEMSスキャナ25は、走査手段の一例であり、MEMSドライバ26によって例えば水平方向および垂直方向に高速に揺動される。水平方向には、MEMSスキャナ25は例えば約20KHzで共振駆動され、その走査角は正弦波状に時間変化する。垂直方向には、MEMSスキャナ25は鋸波状の強制駆動により例えば60Hzで駆動され、その走査角は鋸波状に時間変化する。これにより、MEMSスキャナ25は、投影レンズ24からの各色レーザ光を投影面50上に2次元状に走査する。
【0028】
MEMSドライバ26は、制御部40による制御データに応じてMEMSスキャナ25を駆動し、MEMSスキャナ25を水平方向および垂直方向に高速に揺動させる。この駆動方式は、静電方式や、電磁方式、ピエゾ方式等のどれを用いてもよい。また、水平走査と垂直走査で異なる駆動方式を組み合わせてもよい。
【0029】
遮蔽部29は、矩形の開口29a(
図1を参照)を有する枠体であり、MEMSスキャナ25により走査されるレーザ光28の走査領域の周囲を遮光する。遮蔽部29の開口29a内を通過するレーザ光28が投影面50上に画像を表示する。
【0030】
検知部30は、出射部20でのレーザ光の発光点から投影面50までの距離(以下、深度情報という)を検知する。検知部30は、赤外線照射部31と、赤外線検知部32とを有する。赤外線照射部31は、レーザプロジェクタ2が設置されている空間内に赤外線を照射する。赤外線検知部32は、例えば赤外線カメラであり、赤外線照射部31から照射された赤外線がその空間内の物体や、床、壁等により反射された反射光を受光する。検知部30は、例えばタイムオブフライト(TOF)方式を利用し、赤外線照射部31が赤外線を照射してから赤外線検知部32が反射光を受光するまでの光の飛行時間を計測することにより深度情報を検知する。検知部30は、その深度情報を制御部40に通知する。なお、投影装置1では検知部30をレーザ光源10とは別に設置しているが、後述するように、赤外線等を照射するレーザダイオードをレーザ光源10とともに設け、赤外線等用のファイバを設けることによって深度情報を検知することも可能である。
【0031】
制御部40は、レーザプロジェクタ2の動作を制御する。制御部40は、CPU41と、RAM42と、ROM43と、I/O44とを有する。I/O44は、レーザ光源10、出射部20および検知部30との間でデータの受渡しを行うためのインタフェースである。制御部40は、画像データおよび検知部30から取得した深度情報に応じて、後述するようにレーザ光源10の発光タイミングを制御する。また、制御部40は、出射部20を制御してレーザ光28を投影面50上に投影させる。
【0032】
また、
図2には示していないが、ホストとなるレーザプロジェクタ2は、内部にタイミング制御手段60(
図1を参照)を有し、スレーブとなるレーザプロジェクタ2に同期信号を送信する機能を有する。逆に、スレーブとなるレーザプロジェクタ2では、制御部40が、ホストとなるレーザプロジェクタ2からの同期信号を受信する機能を有する。タイミング制御手段60の機能は、ホスト側のレーザプロジェクタ2の制御部40により実現してもよいし、タイミング制御手段60は制御部40とは別の制御部であってもよい。
【0033】
各レーザプロジェクタ2がMEMSスキャナ25を揺動させることによって、レーザ光28の投射点51は、
図1の矢印方向に移動して、破線および実線で示した正弦波状の軌跡L1を描く。投射点51の軌跡L1は、投影面50上をほぼ水平方向に繰り返し往復しながら投影面50上を2次元状に走査する。
【0034】
図1では、水平方向をX方向とし、垂直方向をY方向としている。レーザ光28は、X方向表示幅A1とY方向表示幅B1で囲まれた矩形内で走査される。投射点51の軌跡L1は、点P1を始点として破線および実線で示す正弦波状の曲線に沿って矢印方向に移動する。軌跡L1は、開口29a内では軌跡La1,La2のようなほぼX方向の曲線を描き、遮蔽部29上では軌跡Lb1,Lb2のような曲線を描くという動きを周期的に繰り返す。軌跡L1は、最下端の点P2に到達すると、細かい点線で示す正弦波状の曲線Lc1、Lc2に沿って上方に向かい、始点P1に戻る。これにより1画面分の描画が終了する。各レーザプロジェクタ2は、以上の操作を繰り返すことによって連続的に画像を投影する。
【0035】
各レーザプロジェクタ2における走査は以上の通りである。投影装置1では、ホストとなる第1のレーザプロジェクタ2a内のタイミング制御手段60が、スレーブとなる第2のレーザプロジェクタ2bに同期信号を送信し、第2のレーザプロジェクタ2bの走査位置や発光タイミングを制御する。
【0036】
図3は、MEMSスキャナ25の概略図である。MEMSスキャナ25は、反射面となる微小ミラー251がトーションバー252,253で支持された構造を有する。微小ミラー251は、トーションバー252が捻れることにより、軸254を中心軸として水平方向(X方向)に揺動する。これにより、微小ミラー251の反射面の法線がX方向に変化するため、微小ミラー251に入射するレーザ光の反射角がX方向に変化する。また、微小ミラー251は、トーションバー253が捻れることにより、軸254に直交する軸255を中心軸として垂直方向(Y方向)に揺動する。これにより、微小ミラー251の反射面の法線がY方向に変化するため、微小ミラー251に入射するレーザ光の反射角がY方向に変化する。このようにして、MEMSスキャナ25によりレーザ光は2次元状に走査される。
【0037】
図4(A)〜
図4(C)は、フェルール23とファイババンドルを説明するための図である。
図4(A)は、フェルール23の破断斜視図である。
図4(B)は、フェルール23により固定されるファイババンドルの断面図である。
図4(C)は、
図4(B)に示した各ファイバ21がどのファイバであるかを説明するための図である。
【0038】
フェルール23は、例えばジルコニアにより円筒形に構成される。フェルール23は、円筒形の貫通孔23aの中に、Rファイバ21r、Gファイバ21g、Bファイバ21bをそれぞれ1本ずつと、Dファイバ21dを4本の、計7本のファイバを固定する。
【0039】
各ファイバ21は、コア211と、コアの周囲を覆うクラッド212とを有する。コア211は、ファイバ21の芯の中心に形成され、レーザ光を伝送する。クラッド212は、コア211の外周に形成され、コア211よりも屈折率が低い。RGBファイバのそれぞれには、
図4(A)に示した端部と反対側の端部(図示せず)に、レーザダイオード11、12および13が接続される。そして、
図4(A)に示したRGBファイバのそれぞれの端部から、各色レーザ光が出射される。
【0040】
Gファイバ21g以外の6本のファイバは、中心となるGファイバ21gを取り囲むように同心円状に配置される。さらに、Rファイバ21r、Gファイバ21gおよびBファイバ21bは、その同心円の直径上で
図4(C)のA方向に並ぶように配置される。各ファイバ21の直径は略等しく、隣接する2つのコア211間の距離も略等しくなる。フェルール23は、こうした配置で束ねられたファイババンドルを固定する。なお、フェルール23はレーザプロジェクタ2に対して固定されている。すなわち、レーザプロジェクタごと(装置ごと)に、各ファイバ21の配置は固定されている。
【0041】
このように、レーザプロジェクタ2では、RGBの各ファイバからの光を1本のファイバに結合するのではなく、RGBファイバを含む複数のファイバ21を単に束ねてファイババンドルとし、フェルール23で固定する。これにより、レーザプロジェクタ2では、融着されたファイバで起こり得るファイバ相互間での影響を抑えて、レーザ光の利用効率を向上させる。
【0042】
なお、フェルール23は、ステンレス鋼等の他の材質で構成してもよい。また、フェルール23とは別の固定具を用いて上記のファイババンドルを固定してもよい。さらに、コンバイナを用いることも可能である。
【0043】
また、
図2の検知部30をファイババンドルに組み込むこともできる。
図5(A)および
図5(B)は、ファイババンドルの変形例を示した図である。フェルール23が固定する複数のファイバ21の組合せには、
図4(C)に示したものの他に、例えば
図5(A)および
図5(B)に示す2通りがある。
【0044】
図5(A)は、ダミーのDファイバのうちの1本を、深度情報を検知するための赤外線を出力するファイバとした変形例である。以下では、このファイバのことをIRファイバという。IRファイバは赤外線照射用ファイバの一例である。この変形例では、IRファイバの位置は、Dファイバがあった(RGBファイバ以外の)4箇所のうちどこでもよい。
【0045】
図5(A)の場合、赤外線を照射するレーザダイオード(LD)(図示せず)がレーザ光源10とともに設けられる。そして、画像を投影するときにRGBのレーザ光と一緒に、または画像を投影する前に、IRファイバを介してフェルール23の端部から、そのレーザダイオードで生成された赤外線が照射される。深度情報は、IRファイバから照射された赤外線の反射光を赤外線検知部32が受光することにより検知される。この場合、検知部30の赤外線照射部31を外付けで設ける必要はなくなり、検知部30は赤外線検知部32だけを含めばよい。
【0046】
また、
図5(B)は、
図5(A)の3本のDファイバを、IRファイバから照射された赤外線の、投影面での反射光が入力されるファイバとした変形例である。以下では、このファイバのことをPDファイバという。PDファイバは赤外線受光用ファイバの一例である。この変形例では、PDファイバのフェルール23とは反対側の端部に、フォトダイオード(PD)(図示せず)が設けられる。赤外線は、投影面で反射される反射光のうち、MEMSスキャナ25の大きさに相当する立体角の分だけが各PDファイバに入り、そのフォトダイオードで受光される。
【0047】
図5(B)の場合、深度情報は、IRファイバから照射された赤外線の反射光を3本のPDファイバが受光することにより検知される。即ち、外付けの検知部30ではなく、RGBファイバとともにフェルール23で固定されたIRファイバとPDファイバにより、深度情報が検知される。このように、RGBとともに、深度情報を検知するためのIRファイバとPDファイバもフェルール23で束ねると、外付けの検知部30を設ける必要がなくなるため、レーザプロジェクタ2をさらに小型化することが可能になる。
【0048】
さらに、上記のファイバに加えて、色検出用の可視PDに接続されたファイバも束ねてもよい。また、RGB以外も含むレーザ光のファイババンドルをマルチコアファイバに置き換えてもよい。
【0049】
次に、走査型投影表示装置である投影装置1に用いられるレーザ光源に関して説明する。
【0050】
レーザ光源10では、赤色レーザダイオード11および青色レーザダイオード13には直接発光型のレーザダイオードを使用し、緑色レーザダイオード12には励起用半導体レーザとSHG(Second Harmonic Generation)素子を用いたSHGレーザを使用する。ただし、3色ともSHGレーザを用いてもよい。
【0051】
図6は、高集積度に実装されSHG素子を用いて緑色を発光する緑色レーザダイオード12を示した断面図である。
【0052】
緑色レーザダイオード12は、Siプラットホーム70と、励起用の近赤外LD71と、導波路タイプのSHG素子73と、光ファイバ75と、ベース部78と、恒温ブロック79とを有する。LD71、SHG素子73および光ファイバ75は、Siプラットホーム70上に搭載されている。恒温ブロック79は、例えばペルチェ素子であり、熱伝導性の良い金属材料からなるベース部78を介してSiプラットホーム70の下面に固着されている。近赤外LD71は、幅広い発光スペクトルを有するSLD(SuperLuminessence Diode)タイプのLDであり、グレーティング素子と組み合わせて外部共振回路を形成し、特定の波長でレーザ発振させて用いられる。なお、Siプラットホーム70は、Si基板に配線パターン、ランド、ロジックLSI、温度センサ等を形成し、さらに、光配線、回路となる導波路も形成したものである。
【0053】
緑色レーザダイオード12では、LD71とSHG素子73の導波路72、74が光結合するように、Siプラットホーム70の上面にLD71とSHG素子73が位置決め接合されている。そして、光ファイバ75も、そのコア76とSHG素子73の導波路74とが光結合するように位置決め接合されている。
【0054】
LD71とSHG素子73は極めて近接して配置固着され、LD71の導波路72から出射する近赤外光は、SHG素子73の導波路74に直接光結合により入射し、導波路74内で緑色光に変換されてSHG素子73より出力される。出力された緑色光はさらに光ファイバ75のコア76に導かれる。一方、変換されずに透過した近赤外光は、光ファイバ75に組み込まれたFBG(FiberBragg Grating)型の反射素子77により反射し、LD71とFBG反射素子77により形成される外部共振器で選択的に反射された共振波長でSHG素子73に入射する。緑色レーザダイオード12は、このようにして変換効率を高めて緑色変換光を出射する。
【0055】
次に、複数台のレーザプロジェクタ2を用いた投射方法について説明する。
【0056】
ファイババンドル型等の多重化構造とされたレーザ光源10および出射部20からRGBおよびNIR(Near Infra−Red)の任意のパターンを同じエリアに投射できるように調整されたレーザプロジェクタ2を複数台、投影面50に対して設置する。各レーザプロジェクタ2は、M−Array等のNIRの投射パターンをNIRカメラで取得して、検知部30において3角測量で深度情報を計算できる機能を有している。
【0057】
はじめに、ホスト側の第1のレーザプロジェクタ2aから投影面50の投射位置に基準点を投射する。投影面50としては、スクリーン対象物を用いることもできるし、身近にある手のひらやテーブルトップを用いることもできる。
【0058】
次に、投影面50の投射位置に投射された基準点をスレーブ側の第2のレーザプロジェクタ2bに備えられたカメラで取得して、スレーブ側の基準点を設定する。
【0059】
ホスト側の第1のレーザプロジェクタ2aの検知部30において、デプスセンシングを行い、深度情報に関する幾何補正データを取得する。
【0060】
また、スレーブ側の第2のレーザプロジェクタ2bの検知部30において、デプスセンシングを行い、深度情報に関する幾何補正データを取得する。
【0061】
ホスト側の第1のレーザプロジェクタ2aの制御部40は、幾何補正データによって幾何補正を行い、補正されたグリッドパターンを投影面50に投射させる。
【0062】
次に、スレーブ側の第2のレーザプロジェクタ2bにおいて、ホスト側で投射されたグリッドパターンを取得する。
【0063】
次に、第2のレーザプロジェクタ2bの制御部40は、スレーブ側で取得した、ホスト側で投射されたグリッドパターンに重なるように、スレーブ側のグリッドパターンを補正する。
【0064】
そして、第1のレーザプロジェクタ2aおよび第2のレーザプロジェクタ2bの制御部40は、ホスト側とスレーブ側の双方の補正パターンにより補正されたRGB画像を投影面50に投射させる。このとき、ホスト側パターンおよびスレーブ側パターンが混信しないように、ホストとスレーブは投射タイミングを同期駆動させる。以上のようにして、投影装置1のタイミング制御手段60は、デプスセンシングにより取得された深度情報に基づいて各レーザプロジェクタのレーザ光源の発光タイミングを制御することで、ホストとスレーブの投射タイミングを同期駆動させる。
【0065】
次に、2つのレーザプロジェクタ2からの表示画像、つまり表示画素を重ねる方法について説明する。
【0066】
投影装置1は、2つのレーザプロジェクタ2から、インターレースのように同じ画像・映像の奇数ラインと偶数ラインを相互に補間する画像を同時に投射する。このとき、第1のレーザプロジェクタ2aと第2のレーザプロジェクタ2bとでは、共振振動方向の位相が180゜ずれて、照射位置が相互に異なるように設定されている。2台のレーザプロジェクタ2が同時に走査して、同じ画像・映像の奇数・偶数ラインを相互に補間する形になるため、レーザプロジェクタ2が1台の場合と比べて、縦方向の走査線の本数が実質的に倍になる。
【0067】
図7は第1のレーザプロジェクタの走査線Lpを示した図であり、
図8は第2のレーザプロジェクタの走査線Lqを示した図である。
図9は、第1のレーザプロジェクタの走査線と第2のレーザプロジェクタの走査線を重ねた状態を示した図である。つまり、第1のレーザプロジェクタ2aが表示している画像(画素)と、第2のレーザプロジェクタ2bが表示している画像(画素)の照射位置は異なっているが、同一の画像が表示されている。この方法の場合、往復で走査すると中央近傍では走査線が重なってしまうため、実効的な解像度を上げることができない。そのため、それぞれのレーザプロジェクタ2は、
図1におけるLa2等ではレーザ光源10をオフとして、片側走査とすることが好ましい。
【0068】
図10は、片側走査の場合における第1のレーザプロジェクタの走査線Lpと第2のレーザプロジェクタの走査線Lqを重ねた状態を示した図である。走査線Lp,Lqのうち、実線部分ではレーザ光源10が点灯(オン)し、破線部分ではレーザ光源10が消灯(オフ)しているとする。
【0069】
共振側のフレーム周期について180゜位相をずらして2台のレーザプロジェクタ2の像を重ねる場合には、
図10のように一方のレーザプロジェクタ2の走査線を補間するように、他方のレーザプロジェクタ2の走査線が重なる。このため、レーザプロジェクタ2が1台の場合と比べて、片側走査時の垂直走査線の本数が2倍となり、垂直解像度を2倍とすることができる。また、片側走査のため、各走査線は有効表示エリアにおいてほぼ平行となるので、走査線同士が重なることもない。
【0070】
図11(A)および
図11(B)は、変形例における第1のレーザプロジェクタの走査線と第2のレーザプロジェクタの走査線を示した模式図である。本変形例においては、いわゆるインターレース方式の走査が行われ、2つのレーザプロジェクタの照射位置が相互に異なるように設定されている。
【0071】
図11(A)に示すように、奇数枚目のフレームにおいて、投影装置1は、第1のレーザプロジェクタ2aによって奇数本目の走査線を走査し(Lo1)、第2のレーザプロジェクタ2bによって偶数本目の走査線を走査する(Lo2)。また、
図11(B)に示すように、偶数枚目のフレームにおいて、投影装置1は、第2のレーザプロジェクタ2bによって奇数本目の走査線を走査し(Le2)、第1のレーザプロジェクタ2aによって偶数本目の走査線を走査する(Le1)。つまり、タイミング制御手段60は、2つのレーザプロジェクタ2のレーザ光源が互いに異なるフレーム周期において投影面上の各画素を照射するように制御する。
【0072】
図10〜
図11(A)に示す例では、タイミング制御手段60は、2つのレーザプロジェクタ2のレーザ光源が投影面上の異なる走査線を同時に照射するように制御する。さらに、
図10〜
図11(A)に示す例では、タイミング制御手段60は、連続して走査されるビーム軌道のうちで片側走査に必要な照射時間において、2つのレーザプロジェクタ2のレーザ光源が投影面上の異なる画素を照射するように制御する。
【0073】
以上のような走査を行うことで、垂直方向の解像度が2倍になるとともに、第1のレーザプロジェクタ2aからの画像と第2のレーザプロジェクタ2bからの画像とが投影面上の同じ位置に交互に表示されるため、異なる位置から同一箇所を照射することで角度多重が可能となり、多重度(本変形例の場合2)の平方根(1/√2)分だけスペックルを低減することが可能となる。なお、本変形例を3台以上のレーザプロジェクタを用いた投影装置に適用することも可能である。
【0074】
投影装置1のさらなる変形例として、一方のレーザプロジェクタ2と他方のレーザプロジェクタ2の間で水平同期信号を一画素分ずらして、同じ画像または映像を投影することもできる。つまり、2台のレーザプロジェクタ2で照射位置が一画素分ずれている。これにより、水平方向の解像度を向上させることができる。その際、フレームとして同期が取れていれば、画素をずらした状態で走査してもよい。
【0075】
投影装置1やその変形例では、2台のレーザプロジェクタ2から投影面50に投影を行っているが、さらに多くの台数のレーザプロジェクタ2を用いて投影面50に投影を行ってもよい。また、レーザプロジェクタ2ではMEMSスキャナ25を用いているが、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)を用いてもよい。
【0076】
投影装置1やその変形例では、独立した光源を持つ複数台のレーザプロジェクタから投影面に投影を行っているため、レーザのコヒーレンシーに起因するスペックルを軽減することが可能となる。特に、複数台のレーザプロジェクタからそれぞれ異なる角度でレーザ光が投射されるため、角度多重によるスペックル軽減が可能である。また、複数台のレーザプロジェクタからのレーザ光によって画像を形成しているため、所定の光量を得るための1台当たりのレーザプロジェクタの光量を低減することができる。このため、万が一レーザ光が眼に入ったとき等の安全性を向上させることができる。
【0077】
上記の投影装置1は複数台のレーザプロジェクタ2で構成され、それぞれのレーザプロジェクタ2はレーザ光源10とMEMSスキャナ25を有している。ただし、投影装置は、複数組のRGBレーザ光源と1つの走査手段を有する1台のレーザプロジェクタで実現することも可能である。以下では、このような投影装置について説明する。
【0078】
図12は、投影装置1’の概略構成図である。投影装置1’は、
図2に示したレーザプロジェクタ2と同様の1台のレーザプロジェクタにより構成され、レーザ光源10’と、出射部20’と、検知部30と、制御部40とを主要な構成要素として有する。検知部30および制御部40については、レーザプロジェクタ2のものと同様であるため、説明を省略する。投影装置1’の制御部40は、複数のレーザ光源のうちの一のレーザ光源が照射する位置と他のレーザ光源が照射する位置とを異ならせるように、複数のレーザ光源の発光タイミングを制御する。
【0079】
レーザ光源10’は、2組のRGBレーザ光源として、レーザダイオード11a、12aおよび13aと、レーザダイオード11b、12bおよび13bとを有し、さらに各組のRGBレーザ光を合波する融着型RGBコンバイナ15a,15bを有する。レーザダイオード11a,11bは赤色の、レーザダイオード12a,12bは緑色の、レーザダイオード13a,13bは青色のレーザ光をそれぞれ出射する。レーザダイオード11a〜13aからのRGBレーザ光は融着型RGBコンバイナ15aにより、レーザダイオード11b〜13bからのRGBレーザ光は融着型RGBコンバイナ15bにより、それぞれ合波される。
【0080】
出射部20’は、ファイバ22a,22bと、フェルール23’と、投影レンズ24と、MEMSスキャナ25とを主要な構成要素として有し、レーザ光源10’からの2組のRGBレーザ光を投影面50に向けて出射する。投影レンズ24およびMEMSスキャナ25については、レーザプロジェクタ2のものと同様であるため、説明を省略する。また、図示を省略するが、出射部20’も、
図2の出射部20と同様のMEMSドライバと、遮蔽部を有する。
【0081】
ファイバ22a,22bは、融着型RGBコンバイナ15a,15bにより合波された各組のRGBレーザ光をそれぞれ導波する。フェルール23’は、固定具の一例であり、
図4(A)に示すフェルール23と同様に円筒形の形状を有する。フェルール23’は、ファイバ22a,22bをレーザ光源10’とは反対側の端部で束ねて固定する。
図12に示すように、ファイバ22a,22bは、フェルール23’の円形の断面上で、互いに異なる位置に固定される。各色のRGBレーザ光は、フェルール23’の端部にあるファイバ22a,22bの出射端面から出射される。
【0082】
なお、融着型RGBコンバイナ15a,15bを用いずに、RGBレーザ光をそれぞれ導波する複数組のRファイバ、GファイバおよびBファイバをフェルール23’により束ねてファイババンドルを構成してもよい。また、レーザ光源10’には3組以上のRGBレーザ光源を設けて、フェルール23’の端部から3組以上のRGBレーザ光を出射してもよい。
【0083】
図13は、フェルール23’により固定されるファイバ22a,22bと各組RGBレーザ光による走査線Lp,Lqとの位置関係の例を示した図である。投影装置1’では、
図13に矢印Cで示すように、フェルール23’を光軸の周りに回転させることにより、ファイバ22aからのRGBレーザ光による走査線Lpと、ファイバ22bからのRGBレーザ光による走査線Lqとの間隔が調整される。フェルール23’は、2組のレーザ光の投射点が投影面50上でMEMSスキャナ25の垂直走査方向(水平走査方向に交差する方向)にずれるように、ファイバ22a,22bを固定する。このように、投影装置1’では、フェルール23’により形成されるファイババンドルの角度を微調整することで、2組のRGBレーザ光による走査線Lp,Lqの間隔を最適化することが可能になる。
【0084】
投影装置1’による2組のRGBレーザ光の走査は、
図10〜
図11(B)を用いて上述した投影装置1の場合と同様に、片側走査とすることが好ましい。
図13に示すように、フェルール23’の回転により各走査線は垂直走査方向(Y方向)にずれるため、片側走査をすれば、2組のRGBレーザ光の走査線が互いに重なることはない。
【0085】
また、投影装置1’も、投影装置1と同様に、
図11(A)および
図11(B)に示すようなインターレース方式の走査を行う。すなわち、投影装置1’は、奇数枚目のフレームでは、レーザダイオード11a〜13aで奇数本目の走査線を走査し(Lo1)、レーザダイオード11b〜13bで偶数本目の走査線を走査する(Lo2)とともに、偶数枚目のフレームでは、レーザダイオード11b〜13bで奇数本目の走査線を走査し(Le2)、レーザダイオード11a〜13aで偶数本目の走査線を走査する(Le1)。つまり、投影装置1’の制御部40は、2組のRGBレーザ光が投影面50上の異なる走査線を同時に照射し、かつ互いに異なるフレーム周期において投影面50上の各画素を照射するように、レーザ光源10’の発光を制御する。また、投影装置1’の制御部40は、連続して走査されるビーム軌道のうちで片側走査に必要な照射時間において、レーザダイオード11a〜13aとレーザダイオード11b〜13bが投影面上の異なる画素を照射するように制御する。
【0086】
このように、投影装置1’では、複数組のRGBレーザ光源であるレーザ光源10’を使用し、各組のRGBレーザ光の投射点を垂直走査方向(Y方向)にずらして走査することにより、Y方向の交互走査線の本数を増加させる。投影装置1’では、2組のRGBレーザ光による走査線の間隔をフェルール23’の回転角により微調整できるため、投影装置1と比べて垂直走査方向の高解像度化を容易に実現することができる。なお、各組のRGBレーザ光による投射点の水平走査方向(X方向)のずれは、各レーザダイオードの発光タイミングを前後させることにより打ち消すことが可能である。
【0087】
また、投影装置1’では、複数組のRGBレーザ光源から投影面に投影するため、例えば波長のわずかに異なる同色のレーザを使用するなど、使用するレーザの組合せによってスペックルの軽減も可能となる。また、複数組のRGBレーザ光源からのレーザ光によって画像を形成するため、所定の光量を得るための1組当たりのRGBレーザ光源の光量を低減することも可能である。瞬間的には、2つの光源からのビームスポットが異なる位置を走査していることになる。このため、万が一、レーザ光が眼に入ったとき等の安全性を向上させることができる。
【0088】
投影装置1’は、走査線の本数をRGBレーザ光源の多重度分だけ増やせるため、ライトフィールドディスプレイ(Light Field Display)等の光学エンジンとしても応用可能である。従来の構成では、ピコプロジェクタを水平方向および垂直方向に多数個並べてライトフィールドを形成していたが、これでは装置の小型化と高精細化を同時に実現することが難しく、製造コストも高くなっていた。しかしながら、投影装置1’では、装置自体の小型化と高精細化が可能であるため、ライトフィールドディスプレイ等への応用も考えられる。
【0089】
なお、フェルール23,23’により、ファイバ21,22a,22bに加えてRGB以外の波長の光を導波するファイバも束ねて、フェルール23,23’の端部から、RGBレーザ光に加えて、例えば近赤外線や他の波長の可視光などを一緒に出射してもよい。