(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の液体経口製剤は、以下の(A)成分及び(B)成分を含有する。
【0010】
<(A)成分>
(A)成分は、水溶性薬効成分(α)が、被覆成分(β)に内包され、体積中位径が150〜1000μmであるマイクロカプセルである。
本発明に用いられる(A)成分は、芯物質である(α)成分の塊が、(A)成分中に一つだけ存在する単核型構造であっても、(A)成分中に複数分散した多核型構造であってもよい。
【0011】
(A)成分の体積中位径は、150〜1000μmである。該体積中位径は、200〜900μmが好ましく、300〜750μmがより好ましい。
(A)成分の体積中位径が、上記下限値以上であれば、(A)成分中の(α)成分の溶出がより長期に抑えられる。また、(A)成分の体積中位径が、上記上限値以下であれば、液体経口製剤の服用性が良好になる。
なお、本明細書において体積中位径とは、体積基準で求めた粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径(D50)を意味する。また、粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LS13320型、ベックマン・コールター(株)製)により測定される。
【0012】
・水溶性薬効成分(α)
本発明において「水溶性」とは、25℃の水100mLに、対象が0.1g以上溶解することを意味する。
(α)成分は、水溶性の薬効成分であれば特に限定されないが、本発明による作用効果をより享受できる点から、不快臭、不快味を有するものや水溶液中で安定性が低いものが好ましい。
薬効成分としては、医薬成分及び機能性成分等が挙げられる。
医薬成分としては、通常の医薬の他、生薬等が挙げられる。
機能性成分としては、例えば、グルクロノラクトン、カフェイン、ビタミンB1、ビタミンB2及びアスコルビン酸等のビタミン、システイン、メチオニン、アルギニン、アラニン及びアスパラギン酸等のアミノ酸、ラクトフェリン、コラーゲン及び酵素等のタンパク質、ラクトミン、ビフィズス菌及び乳酸菌等の生菌等が挙げられる。これらの中でも、アミノ酸が好ましく、含硫アミノ酸がより好ましい。含硫アミノ酸としては、システイン、メチオニン、シスチン、シスタチオニン、タウリン等が挙げられる。
(α)成分は、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0013】
(A)成分中の(α)成分の含有量は、50質量%以下が好ましく、1〜50質量%がより好ましく、5〜40質量%がさらに好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。(A)成分中の(α)成分の含有量が、上記下限値以上であれば、液体経口製剤中の(A)成分の濃度を低くでき、液体経口製剤の服用性がより良好になる。また、(A)成分中の(α)成分の含有量が、上記上限値以下であると、(A)成分中の(α)成分の溶出をより長期に抑制しやすくなる。
また、(α)成分の体積中位径は、0.1〜20μmである。該体積中位径は、0.1〜10μmがより好ましく、0.1〜5μmが最も好ましい。
(α)成分の体積中位径が、前記上限値以下であれば、水溶性薬効成分の溶出がより長期に抑えられやすく、また、経口製剤の不快臭、不快味も抑えられやすい。一方、0.1μm以上であれば、粉砕時の取り扱いが容易である。
なお、(α)成分の体積中位径とは、(A)成分の体積粒子径と同様の定義である。
また、上記体積中位径とするために、(α)成分をピンミル粉砕機等を用いて粉砕することも出来る。
【0014】
・被覆成分(β)
被覆成分(β)は、融点が50℃以上であり、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル、植物油及びその水素添加油、動物油及びその水素添加油、高級脂肪酸並びに高級アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
なお、本発明において「高級脂肪酸」とは、炭素数が6以上の脂肪酸を意味し、「高級アルコール」とは、炭素数が6以上のアルコールを意味する。高級脂肪酸としては、炭素数6〜30の脂肪酸が好ましい。高級アルコールとしては、炭素数6〜30の1価又は2価のアルコールが好ましい。
上記高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルは、合成品でも、天然物であってもよい。前記合成品としては、炭素数6〜30の脂肪酸と炭素数6〜30の1価又は2価アルコールとのモノエステル又はジエステルが挙げられる。前記天然物としては、例えばセロチン酸ミリシル(CH
3(CH
2)
24COO(CH
2)
29CH
3)を主成分として含有するカルナバロウ等が挙げられる。
上記植物油もしくはその水素添加油としては、硬化パーム油、硬化菜種油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。上記動物油もしくはその水素添加油としては、硬化豚脂油、硬化牛脂油等が挙げられる。上記高級脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。上記高級アルコールとしては、ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0015】
これらの中でも、容器に対する(A)成分の付着を良好に抑制できる点、さらに(α)成分の溶出をより長期に抑制できる点から、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル、植物油もしくはその水素添加油、動物油もしくはその水素添加油、高級アルコールが好ましく、植物油もしくはその水素添加油がより好ましい。植物油もしくはその水素添加油の中でも、硬化パーム油が好ましい。
(β)成分は、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
(A)成分中の(β)成分の含有量は、50質量%以上が好ましく、50〜99質量%であることがより好ましく、60〜95質量%であることがさらに好ましく、70〜90質量%であることが特に好ましい。
(A)成分中の(β)成分の含有量が上記下限値以上であれば、(α)成分の溶出をより長期に抑制しやすくなる。また、(β)成分の含有量が、上記上限値以下であれば、(A)成分中の(α)成分の含有割合を高められ、液体経口製剤中の(A)成分の濃度を低くできることから、液体経口製剤の服用性がより良好になる。
【0017】
・任意成分
(A)成分は、必要に応じて、(α)成分及び(β)成分以外の任意の成分を含有することができ、例えば、各種甘味剤(白糖、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等)、保存剤(安息香酸等)、安定化剤(エデト酸ナトリウム等)、増粘剤、酸化防止剤、着香剤・香料、清涼化剤、着色剤、pH調整剤、及び緩衝剤等が挙げられる。
これら任意成分の含有割合は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜設定することができる。
【0018】
(A)成分は、スプレークーリング法、滴下法等の従来公知のマイクロカプセルの製造方法により製造できる。
スプレークーリング法としては、例えば、(β)成分をその融点より10〜30℃高い温度まで加熱して溶融した溶融液に、(α)成分を添加し撹拌して分散液とした後、当該分散液を、噴霧冷却機を用いて、噴霧しつつ冷却凝固させる方法が挙げられる。前記噴霧冷却機としては、食品又は医薬品の製造において通常用いられる噴霧冷却機、例えば、OUDT−25型(大川原化工機株式会社製)等を用いることができる。
【0019】
上記分散液中の(α)成分の含有量は、5〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。分散液中の(α)成分の含有量が上記下限値以上であれば、(α)成分の含有量が少量になりすぎず、(A)成分中の(α)成分の含有量を制御しやすくなる。また、(α)成分の含有量が、上記上限値以下であれば、分散液の粘度が高くなりすぎないため、スプレークーリング法で造粒しやすくなる。
【0020】
上記分散液中の(β)成分の含有量は、50〜95質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましい。分散液中の(β)成分の含有量が上記下限値以上であれば、(β)成分を分散させた際、分散液の粘度が高くなりすぎず、スプレークーリング法で造粒しやすくなる。また、(β)成分の含有量が、上記上限値以下であれば、(α)成分の配合量が少量になりすぎず、(A)成分中の(α)成分の含有量を制御しやすくなる。
また、上記分散液には、必要に応じて、上記任意成分を添加することができる。
【0021】
スプレークーリング法においては、例えば、噴霧速度(噴霧液圧力)、冷却温度、噴霧方式等を調節することにより、得られるマイクロカプセルの体積中位径、粒子の真球度等を制御することができる。
噴霧速度は、10〜500kg/時間が好ましい。噴霧速度が前記下限値以上であれば、マイクロカプセルの体積中位径を150μm以上に調整しやすい。また、噴霧速度が、前記上限値以下であれば、(A)成分の体積中位径を1000μm以下に調整しやすい。なお、噴霧速度は、噴霧液圧力を調節することにより制御できる。例えば、マイクロカプセルの体積中位径を大きくするには、噴霧速度を上記範囲内で大きくすればよい。
冷却温度は、(β)成分の融点未満であればよく、5℃以上50℃未満が好ましく、10〜40℃がより好ましい。冷却温度が、前記下限値以上であれば、噴霧ノズルのつまりの発生を抑えやすくなる。また、冷却温度が、前記上限値以下であれば、硬化できなかった噴霧液が装置に付着することを防止しやすくなる。
噴霧方式は、(A)成分中の(α)成分の溶出をより長期に抑制できる点から、加圧噴霧が好ましい。
【0022】
スプレークーリング法により得られたマイクロカプセルは、体積中位径が150〜1000μmの範囲にあれば、そのまま本発明の(A)成分とすることができる。
また、得られたマイクロカプセルの体積中位径を所望の粒度分布にするために、食品又は医薬品の製造で通常用いられる篩機を用い、篩分してもよい。
【0023】
滴下法としては、例えば、特開昭58−22062号公報、及び特開昭59−131355号公報に開示される多重ノズルを用いる方法等が挙げられる。
滴下法においては、予め、(β)成分を含むマイクロカプセル被膜調整液及び(α)成分を含むマイクロカプセル内包液を調整する。
二重ノズルを用いる場合、例えば、(α)成分を含むマイクロカプセル内包液を第1ノズルに、(β)成分を含むマイクロカプセル被膜調整液を第2ノズルに供給する。そして、各ノズルの環状孔先端からこれらの液を同時に押出し、冷却液に滴下することにより、(β)成分に(α)成分が内包されたマイクロカプセルを得ることができる。前記マイクロカプセルは、体積中位径が150〜1000μmの範囲にあれば、そのまま本発明の(A)成分とすることができる。また、得られたマイクロカプセルの体積中位径を所望の粒度分布にするために、食品又は医薬品の製造で通常用いられる篩機を用い、篩分してもよい。
ノズルから押出される各液の温度は、(β)成分の融点以上であればよく、50℃超95℃以下が好ましく、55〜85℃がより好ましい。
上記冷却液としては、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、植物油脂(ヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ゴマ油、ナタネ油、グレープ種子油等)、流動パラフィン及びこれらの混合物等が挙げられる。冷却液は、典型的には20℃以下であり、好ましくは1〜18℃である。
【0024】
(A)成分は、(α)成分の溶出をより長期に抑える点から、スプレークーリング法で製造されたものが好ましい。
(A)成分は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
液体経口製剤中の(A)成分の含有量は、0.03〜20w/v%(w/v%=g/100mL)が好ましく、0.1〜10w/v%がより好ましく、0.15〜5w/v%がさらに好ましい。
(A)成分の含有量が、上記の好ましい範囲であると、容器に対する(A)成分の付着の抑制効果がより得られやすくなる。
【0026】
<(B)成分>
(B)成分は、キサンタンガムである。
(B)成分は、キサントモナス キャンペスティリス(Xanthomonas campestiris)により産生される天然多糖であり、主としてD−グルコース、D−マンノース及びD−グルクロン酸の繰り返し単位からなるものである。
本発明における(B)成分は、食品又は医薬品に使用されるいずれのものでも使用可能であり、市場において入手することができる。
(B)成分としては、例えばDSP五協フード&ケミカル株式会社製の商品名「モナートガムDA」、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の商品名「サンエースPH」、三晶株式会社製の商品名「KELTROL CG」等が挙げられる。
これらの(B)成分は、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
液体経口製剤中の(B)成分の含有量は、0.03〜0.5w/v%が好ましく、0.05〜0.5w/v%がより好ましく、0.06〜0.3w/v%がさらに好ましい。
液体経口製剤中の(B)成分の含有量が、上記の好ましい範囲であると、容器に対する(A)成分の付着の抑制効果がより得られやすくなる。
【0028】
<水性媒体>
水性媒体は、水と相溶性を有する媒体である。水性媒体としては、水、水と水溶性溶剤(エタノール、グリセリン等)との混合物等が挙げられる。
【0029】
<その他の成分>
本発明の液体経口製剤は、必要に応じて、上記成分以外に、その他の成分を含有することができ、例えば、各種甘味剤(白糖、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等)、保存剤(安息香酸等)、安定化剤(エデト酸ナトリウム等)、増粘剤、酸化防止剤、果汁、着香剤・香料、清涼化剤、着色剤、pH調整剤、及び緩衝剤等が挙げられる。
【0030】
本発明の液体経口製剤は、25℃における粘度が、10〜1000mPa・sであることが好ましく、100〜800mPa・sであることがより好ましい。
25℃における粘度が上記下限値未満であると、(A)成分の分散性が悪くなり、液体経口製剤の安定性が損なわれるおそれがある。また、25℃における粘度が上記上限値を超えると、液体経口製剤の粘度が高くなり、容器からの液体経口製剤の排出性が悪くなるおそれがある。
なお、本発明の液体経口製剤の25℃における粘度は、液体経口製剤を25℃に調整し、B型粘度計(TOKIMEC社製、ローターNo.2)を用い、20rpm、10回転後の粘度を測定したものである。
【0031】
本発明の液体経口製剤の25℃におけるpHは、pH1.5〜6.0が好ましく、pH1.5〜4.0がより好ましく、pH1.5〜2.8がさらに好ましい。
25℃におけるpHが上記下限値以上であると、液体経口製剤の服用性が良好になりやすい。また、25℃におけるpHが上記上限値以下であると、容器に対する(A)成分の付着が抑制しやすくなる。
なお、本発明の液体経口製剤の25℃におけるpH値は、液体経口製剤を25℃に調整し、pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製の製品名「HM−30G」)を用いて測定したものである。
【0032】
本発明の経口液体製剤を収納する容器としては、通常、食品又は医薬品の収納容器として用いられているものであればよい。容器の材質としては、ガラス、紙、アルミニウム等の金属、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)等の樹脂等が挙げられる。これらの中でも、容器に対する(A)成分の付着抑制の点からは、容器の材質がガラスであることが好ましい。
【0033】
本発明の液体経口製剤は、従来公知の製造方法により製造される。例えば、水性媒体である水に、(A)成分及び(B)成分を添加し、必要に応じて任意成分を加え、これを混合する方法等が挙げられる。
【0034】
以上、説明したとおり、本発明の液体経口製剤は、(α)成分が、特定の被覆成分(β)に内包され、体積中位径が特定の範囲であるマイクロカプセル(A)と、キサンタンガム(B)とが、水性媒体に分散されてなるため、(A)成分中の(α)成分の溶出を抑制でき、且つ、容器に対する(A)成分の付着を抑制することができる。また、本発明の液体経口製剤は、25℃における粘度が、10〜1000mPa・sであれば、容器に対する(A)成分の付着をより抑制することができる。さらに、本発明の液体経口製剤が収納された容器入り経口製剤は、容器の材質がガラスであれば、容器に対する(A)成分の付着をさらに抑制することができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例において使用した原料は下記の通りである。
【0036】
<(α)成分>
α−1:システイン、日本プロテイン株式会社製、L−システイン、日本薬局方「製造専用」。
α−2:ラクトフェリン、森永乳業株式会社製。商品名「ラクトフェリン」。
α−3:グルクロノラクトン、湖北益泰薬業社製。商品名「グルクロノラクトン」。
α−4:カフェイン、BASFジャパン株式会社製。商品名「カフェイン」。
α−5:アスコルビン酸、岩城製薬株式会社製、商品名「日本薬局方アスコルビン酸」。
<(β)成分>
β−1:硬化パーム油、理研ビタミン株式会社製、商品名「スプレーファットPM」。
β−2:硬化ヒマシ油、伊藤製油株式会社製、商品名「ヒマシ硬化油A」。
β−3:硬化菜種油、理研ビタミン株式会社製、商品名「スプレーファットNR−100」。
<(β’)成分、(β)成分の比較成分>
β’−1:シェラック、腸溶性樹脂、株式会社岐阜セラツク製造所製、商品名「日本薬局方精製セラックPEARL−N811医薬用」。
β’−2:ツエイン、腸溶性タンパク質、小林香料株式会社製、商品名「小林ツエインDP―N」。
β’−3:エチルセルロース、ダウケミカル日本社製、商品名「エトセルスタンダード45プレミアム」。
【0037】
<(B)成分>
B−1:商品名「モナートガムDA」、DSP五協フード&ケミカル株式会社製。
B−2:商品名「サンエースPH」、三栄源・エフ・エフ・アイ株式会社製。
B−3:商品名「KELTROL CG」、三晶株式会社製。
<(B’)成分、(B)成分の比較成分>
B’−1:カラギーナン、CP KELCO社製、商品名「カラギニンPH−K」。
B’−2:プルラン、株式会社林原製、商品名「日本薬局方プルラン「製造専用」」。
<その他の成分>
pH調整剤:塩酸、和光純薬工業株式会社製。商品名「塩酸」
【0038】
[(A)成分及び(A’)成分の調製]
(α)成分を、ピンミル粉砕機(株式会社パウレック製)を用いて乾式粉砕した。粉砕後の(α)成分の体積中位径は5μmであった。
次に、(β)成分をその融点以上の温度に加熱し、ここに前記(α)成分を分散させて分散液を得た。
前記分散液を、冷却噴霧機「OUDT−25型」(大川原化工機株式会社製)を用いて、スプレークーリング法(噴霧液圧力0.15MPa)により造粒を行い、(β)成分に(α)成分が内包されたマイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルは、体積中位径が300μmであった。これを(A)成分とした。
また、(β)成分に代えて、(β’)成分を用いて上記と同じ操作を行い、(β’)成分に(α)成分が内包されたマイクロカプセルを得た。これを(A’)成分とした。
【0039】
<実施例1〜26、比較例1〜6>
表1〜3に示す組成に従い、水に、(A)成分及び(B)成分を添加し混合した後、pH調整剤でpHを表中の値に調整して、各例の液体経口製剤を得た。
得られた各例の液体経口製剤の組成(配合成分、含有量(w/v%))を表1〜3に示す。
表中、空欄の配合成分がある場合、その配合成分は配合されていない。
表中、pH調整剤の含有量「適量」は、各例の液体経口製剤のpHを表中の値にするのに要した量である。
表中、水の含有量「バランス」は、液体経口製剤の総体積を100mLとするのに要した量である。
表中、比較例4〜6の「(A)成分の含有量」及び「(A)成分の体積中位径」については、(A)成分に代えて用いた(A’)成分の含有量及び体積中位径をそれぞれ意味する。
【0040】
<液体経口製剤の評価方法>
各例の液体経口製剤について、容器に対する(A)成分の付着抑制性、及び(A)成分中の(α)成分の溶出抑制性を、以下のように評価した。
ただし、比較例4〜6については、(A)成分に代えて用いた(A’)成分の容器に対する付着抑制性、及び(A’)成分中の(α)成分の溶出抑制性の評価である。
評価結果を表1〜3に示す。
【0041】
[容器に対する(A)成分の付着抑制性の評価]
各例の液体経口製剤を、表中の材質の飲料容器に90v/v%(体積%)となるように充填し、室温で24時間保存後、容器の開口部を下にして、30秒間静置させ、液体経口製剤を容器から排出した。排出後の容器を水で洗浄しながら、容器に付着した(A)成分をろ過により分離回収した。分離回収した(A)成分の質量を計量し、下式により容器に対する(A)成分の付着率を算出した。
付着率(%)=容器に付着した(A)成分の質量/液体経口製剤に含まれる(A)成分の質量×100
かかる付着率(%)を指標として、下記基準に基づいて容器に対する(A)成分の付着抑制性を評価し、△、○及び◎を合格とした。
◎:付着率3%未満
○:付着率3%以上4%未満
△:付着率4%以上5%未満
×:付着率5%以上
【0042】
[(A)成分中の(α)成分の溶出抑制性の評価]
(A)成分中の(α)成分の溶出抑制性の評価は、40℃で1ヶ月間保存した後における(A)成分中に残存する(α)成分量を、保存前のものと比較することにより行った。
具体的には、保存の前後における(A)成分中の(α)成分を定量した。定量手順としては、まず、定量分析用ろ紙「No.5C」(アドバンテック社製)を用いたろ過により、各例の液体経口製剤から(A)成分を分離・洗浄し、40℃で1時間乾燥させた。次いで、該(A)成分にクロロホルムを加え、被覆成分を溶解させた。次いで、アスコルビン酸を5質量%含む水50mLを添加し、充分に混合した後、静置して、水相と油相に相分離させた。
HPLC((株)島津製作所社製)を用いて、水相に分配した(α)成分量を定量した。
保存前の(A)成分中の(α)成分量を「X」、保存後の(A)成分中の(α)成分量を「Y」として、下式により(A)成分中の(α)成分の残存率(%)を算出した。
残存率(%)=(Y/X)×100
残存率は、値が高いほど、保存中に(α)成分が液体経口製剤に溶出した量が少ないことを意味する。
かかる残存率(%)を指標として、下記基準に基づいて(A)成分中の(α)成分の溶出抑制性を評価し、△、○及び◎を合格とした。
◎:残存率80%以上
○:残存率75%以上〜80%未満
△:残存率50%以上〜75%未満
×:残存率50%未満
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
表1〜3に示す結果から、本発明を適用した実施例1〜26の液体経口製剤は、(A)成分中に内包された水溶性薬効成分(α)の溶出を抑制でき、且つ、容器に対する(A)成分の付着を抑制できることが確認できた。
一方、(B)成分を含まない又は(B’)成分を用いた液体経口製剤(比較例1〜3)は、容器に対する(A)成分の付着の抑制効果が充分に得られなかった。また、(α)成分が(β’)成分で被覆された(A’)成分を用いた液体経口製剤(比較例4〜6)は、容器に対する付着抑制性は△であったが、(α)成分の溶出の抑制効果が充分でなかった。
以上の結果から、本発明を適用した液体経口製剤は、(A)成分中に内包された水溶性薬効成分(α)成分の溶出を抑制でき、容器に対する(A)成分の付着が抑制できることが確認できた。