特許第6335700号(P6335700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335700
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】虫刺されによるかゆみ抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/737 20060101AFI20180521BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20180521BHJP
   A61Q 17/02 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61K31/737
   A61P33/00
   A61P29/00
   A61P17/00
   A61K8/73
   A61Q17/02
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-145960(P2014-145960)
(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公開番号】特開2016-23139(P2016-23139A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390016953
【氏名又は名称】株式会社海産物のきむらや
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆行
(72)【発明者】
【氏名】阿部 直
(72)【発明者】
【氏名】三木 康成
(72)【発明者】
【氏名】笠木 健
【審査官】 砂原 一公
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−21247(JP,A)
【文献】 特開2005−2013(JP,A)
【文献】 特開2010−214278(JP,A)
【文献】 OHTSUKA, Eiji et al.,Roles of mast cells and histamine in mosquito bite-induced allergic itch-associated responses in mice,Japanese Journal of Pharmacology,2001年 5月,Vol.86, No.1,p.97-105,PMID: 11430478,URL,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjp/86/1/86_1_97/_pdf
【文献】 阿部直ほか,フコイダン塗布による虫刺傷の掻痒軽減効果,日本農芸化学会大会講演予稿集(Web),2015年 3月 5日,Vol.2015,p.2F26p08
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/737
A61K 8/73
A61K 8/9711
A61K 36/03
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコイダンを含有する虫刺されによる痒みの抑制のための外用剤。
【請求項2】
フコイダンを含有する虫除けのための外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虫刺されによる痒みの抑制剤および虫除け剤に関する。詳細には、本発明は、フコイダンを含有する虫刺されによる痒みの抑制剤および虫除け剤に関する。
【背景技術】
【0002】
虫刺されは、蚊、アブ、ブユ、ヌカカ、ハチ、サシバエ、トコジラミ、ノミ、シラミ、ケムシなどの昆虫類、そしてダニ、クモ、ムカデなどの昆虫以外の節足動物などに刺されたり、咬まれたり、触れたりして生じる痒みや痛みおよび腫れを伴う皮膚症状である。
【0003】
とりわけ蚊、アブ、ブユ、ヌカカ、トコジラミ、ノミ、シラミ、ダニ、サシバエのような吸血動物による虫刺されは日常的に頻繁に起こる。これらの吸血動物は、吸血する際にヒトの体表面に血液凝固を阻止する成分を注入する。この成分に対するアレルギー反応などでその部位がかゆくなったり腫れたりする。
【0004】
虫刺されの痒みに対して痒み止め薬が広く用いられている。痒み止め薬の主な有効成分は、抗ヒスタミン薬(マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン)、アミノ安息香酸エチル、ジブカイン、リドカイン、アンモニアなどである。一般的なかゆみ止め薬はごく短い期間しか効果を示すことができないものが多い。また、これらの痒み止め薬の有効成分は副作用や毒性の心配もある。
【0005】
天然成分を配合した痒み止めも開発されている。しかしながら、その効果は限定的なものが多い。そして本発明のようにフコイダンを有効成分とする虫刺されによる痒み抑制剤は報告されていない。それどころか、培養細胞実験においてコンパウンド48/80で刺激したときのフコイダンによるヒスタミンの抑制効果は殆ど認められなかったという報告がある(非特許文献1参照)。また、フコイダンによるアトピー性皮膚炎の改善効果について論じられているが(非特許文献1参照)、アトピー性皮膚炎の改善効果はフコイダンの経口投与による作用で、虫刺されによる痒みの抑制効果はフコイダン塗布による効果であるので(本願実施例参照)、両者は異なる。なお、アトピー性皮膚炎がIgE量の増加を伴うものであり、虫刺されによる痒みはIgG量の増加を伴うものであるから、これらは明確に区別される。
【0006】
虫刺されを引き起こす虫を寄せ付けないために虫除け剤が用いられている。虫除け剤の主な有効成分はディート(N,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド)やハーブ類などである。最近ディートの有害性が指摘され始めたことから、ハーブ類などの天然成分を用いる薬剤も増えてきたが、防虫効果は弱いものが多い。ましてや本発明のようにフコイダンを有効成分とする虫除け剤は報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】山田信夫 著「海藻フコイダンの科学」(成山堂書店)、131〜133頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
副作用や毒性の心配がなく、効果が長時間持続する痒みの抑制剤および虫除け剤、とりわけ虫刺されによる痒みの抑制剤を提供することが本発明の解決しようとする課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決せんと鋭意研究を重ね、天然由来の多糖類であるフコイダンが痒みを抑制する作用を有することを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0010】
したがって、本発明は、
(1)フコイダンを含有する虫刺されによる痒みの抑制のための外用剤、および
(2)フコイダンを含有する虫除けのための外用剤
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フコイダンを含有する痒みの抑制のための外用剤および虫除けのための外用剤が提供される。フコイダンは天然由来の多糖類であるので、本発明の剤は、副作用や毒性の心配がなく、極めて安全なものである。したがって、乳幼児から老人まで、そして皮膚の弱い人でも安心して使用することができる。しかも、本発明の剤は、優れた効果が長時間持続するという特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、1つめの態様において、フコイダンを含有する痒みの抑制のための外用剤、とりわけフコイダンを含有する虫刺されによる痒みの抑制のための外用剤を提供する。ここで、痒みとは、引っ掻きたいという欲求を引き起こす不快な皮膚感覚をいう。
【0013】
フコイダンは、モズク、ワカメ、メカブ、昆布などの褐藻類やナマコ、ウニ、ヒトデなどの棘皮動物等に多く含まれる硫酸化フコース含有多糖類である。フコイダンは特に褐藻類に多く含まれ、多くの褐藻類は食用である。本発明に用いられるフコイダンの起源は特に限定されないが、好ましくは褐藻類に由来するものであり、より好ましくはモズクに由来するものである。モズクの例としては、イトモズク(細モズク)(モズク科モズク:Nemacystus decipiens)、オキナワモズク(ナガマツモ科オキナワモズク:Cladosiphon okamuranus)、フトモズク(Tinocladia crassa)等の各種モズクが挙げられる。
【0014】
フコイダンは、上述のごとくモズク、ワカメ、メカブ、昆布などの食用となる海藻に多く含まれる天然成分であるため、極めて安全な物質である。皮膚への塗布による異常についての報告もないため、副作用の心配もなく、皮膚の弱い人でも安心して使用できる。したがって、本発明の痒みの抑制剤は極めて安全なものであり、乳幼児から老人まで安心して使用することができる。
【0015】
本発明の痒み抑制剤中の有効成分であるフコイダンは、いずれの生物から抽出して得てもよい。好ましくは海藻から、より好ましくはモズクから抽出する。海藻からのフコイダンの抽出方法は公知であり、例えば熱水抽出法などが用いられる。フコイダンは粗精製品であってもよく、あるいは精製品であってもよい。フコイダン抽出物の精製の程度は、剤形や適用部位などに応じて適宜決定することができる。
【0016】
本発明の痒みの抑制剤によって抑制される痒みの原因は特に限定されるものではない。好ましくは、本発明の痒みの抑制剤により抑制される痒みは虫刺されによる痒みである。
【0017】
ここで、虫とは、ヒトや動物に対して痒みを引き起こす虫をいい、蚊、アブ、ブユ、ヌカカ、ハチ、サシバエ、トコジラミ、ノミ、シラミ、ケムシなどの昆虫類、そしてダニ、クモ、ムカデなどの昆虫以外の節足動物などをいうが、これらに限定されない。特に、本発明において、虫とは、蚊、アブ、ブユ、ヌカカ、トコジラミ、ノミ、シラミ、ダニ、サシバエのような吸血昆虫をいう。
【0018】
本発明の痒み抑制剤を、ヒトを含む哺乳動物に投与することができる。本発明の痒み抑制剤の投与は、通常は局所的かつ経皮的に行われる。
【0019】
本発明の痒み抑制剤の剤形は特に限定されずいずれの剤形であってもよいが、好ましくは、ローションなどの液剤、軟膏、クリーム、ゲル、スプレイ、パッチなどの皮膚外用剤の形態である。これらの剤形の製法は公知である。
【0020】
例えば、無水ラノリン、モノステアリン酸エチレングリコール、鉱物油、カルボマー、カーボポール、プロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、蜜ロウ、ホウ砂、無水アルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンの混合物、エチレンジアミン四酢酸、モノステアリン酸グリセリル、ベンゾフェノン、ベンジルアルコール、ポリソルベート20、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ポリエチレングリコール−40−硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ソルビトン、グリセリンまたはブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などのから選択される1またはそれ以上の物質をフコイダンと混合し、さらに水を混合することによって、適宜、上記のような剤形を調製することができる。さらに、香料、清涼剤、着色料などの公知の物質を添加してもよい。
【0021】
本発明の痒み抑制剤の投与量は、患部の痒みが抑制される量とすることができ、その量は特に制限されない。皮膚外用剤とする場合、通常は患部1cmにつき1回当たり2.7mg〜13.5mgのフコイダン(乾燥重量として)が適用される量である。この量を痒みが軽減または消失するまで複数回適用してもよい。これらのフコイダンの投与量は、患部の状態や大きさ、痒みの程度、虫の種類、対象の体重などに応じて適宜変更することができる。
【0022】
本発明の痒み抑制剤は、公知の痒み止め剤と併用してもよい。例えば、抗ヒスタミン薬(マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン)、アミノ安息香酸エチル、ジブカイン、リドカイン、アンモニアなどとの併用も可能である。これらの薬剤を本発明の痒み抑制剤中に混合してもよい。
【0023】
本発明の痒み抑制剤は、医薬部外品または医薬品である。
【0024】
本発明は、もう1つの態様において、フコイダンを含有する虫除けのための外用剤を提供する。
【0025】
本発明の虫除け剤に用いられるフコイダンについては、本発明の痒み抑制剤に関して説明したとおりである。
【0026】
本発明の虫除け剤の対象となる虫は、本発明の痒み抑制剤に関して上で説明した虫が該当する。
【0027】
本発明の虫除け剤中の有効成分であるフコイダンは、モズクなどの海藻からの抽出物であってもよい。海藻からのフコイダンの抽出方法は公知であり、例えば熱水抽出法などが用いられる。フコイダンは粗精製品であってもよく、あるいは精製品であってもよい。フコイダン抽出物の精製の程度は、剤形や適用部位などに応じて適宜決定することができる。
【0028】
本発明の虫除け剤を、ヒトを含む哺乳動物に投与することができる。本発明の痒み抑制剤の投与は、通常は局所的に行われる。本発明の虫除け剤の剤形は、ローションなどの液剤、軟膏、クリーム、ゲル、スプレイなどの皮膚に適用しやすい剤形とすることができるが上記剤形に限定されない。これらの剤形の製法は公知である。香料、清涼剤、着色料などの公知成分を、本発明の虫除け剤に適宜添加してもよい。
【0029】
本発明の虫除け剤の投与量は、虫刺され回数が軽減される量とすることができ、その量は特に制限されない。皮膚に外用する場合、通常は皮膚1cm当たり2.7mg〜13.5mgのフコイダン(乾燥重量として)が適用される量であるが、対象となる虫や適用部位などに応じて適宜変更することができる。虫除け効果を持続させるために、本発明の虫除け剤を複数回適用してもよい。
【0030】
本発明の虫除け剤を公知の虫除け剤と併用してもよい。例えば、N,N−ジエチル−3−メチルベンズアミドやハーブ類などとの併用も可能である。これらの薬剤を本発明の虫除け剤中に混合してもよい。
【0031】
以下に実施例を示して本発明をより詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものと解してはならない。
【実施例1】
【0032】
実施例1:虫刺されの痒みに対するフコイダンの塗布効果
試験方法は蚊に2ヶ所以上刺された後、一方に刺された直後にフコイダン水溶液を1cm当たり2.7mg〜13.5mg(乾燥重量として)塗布し、もう一方には何も塗布せず皮膚の状態を観察し、問1、2について自筆評価させた。
回答のあった11名に、フコイダンありとなしに対してt検定を行い、有意差あり(p<0.05)をで示した。
【0033】
問1では、かゆみについて以下の4段階で記入させた。
1:かゆみはない
2:かゆみはあるが、我慢できる程度である
3:かゆみはやや強いが、たまにかく程度で収まる
4:かゆみが強く、かかずにはいられない
記入する時間は蚊に刺されてから10分以内、20分後、1時間後、翌日でそれぞれ記入させた。表1の症状(目安)はそれぞれの時間における一般的なかゆみの状態を示し、数値は平均値を示す。
【表1】
【0034】
問2では、赤みについて以下の3段階で記入させた。
1:赤みがない
2:赤みはあるが、気にならない程度である
3:赤みが強く、熱を持った感じがする
記入する時間は問1と同様とした。表1の症状(目安)はそれぞれの時間における一般的な赤みの状態を示し、数値は平均値を示す。
表1より、20分後、1時間後でフコイダン塗布によるかゆみの抑制がみられた。
【表2】
表2より、1時間後でフコイダン塗布による赤みの抑制がみられた。
【0035】
以上の結果より、フコイダンの塗布によって虫刺されによる痒みおよび赤みが抑制されることが明らかになった。また、その効果も1時間以上持続することが明らかになった。
【実施例2】
【0036】
実施例2:虫刺されの痒みおよび起痒物質による痒みに対するフコイダンの塗布効果
虫刺されについて、フコイダン塗布によるかゆみ軽減効果を確認するため、モデル動物による行動評価試験を行った。
雄性ICRマウスに起痒物質を投与し、かゆみによって行動変化(掻き回数や掻き時間)を生じ、状態変化を数値化できる動物である。今回の動物試験では、かゆみの軽減効果は掻き回数と掻き時間の両方が減少した場合と定義した。
起痒物質とは、直接的に細胞や神経のレセプターを刺激してかゆみを起こす物質と、細胞や神経内部で新たに物質を生成し、これがレセプターを刺激してかゆみを起こす物質のことをいう。
【0037】
プリックテストとは、食物アレルギーなどの体質を検査するために幼児に対して行われている皮内注射による反応テストである。皮内注射とは薬剤を表皮と真皮の間の皮内に注射することで、局在的な刺激応答を確認する方法である。例えばツベルクリン反応やアレルゲンテストである。皮膚と筋肉の間に注入する皮下注射と異なり、全身症状であるアナフィラキシーショックなどは起こり辛い。
今回モデルマウスへの薬剤投与に、従来行われていた皮下注射ではなくプリックテストを採用したことにより、アトピー性皮膚炎のような免疫反応を介した全身症状(急性ショック症状なども含む)ではなく、局在的な刺激応答のみを再現性良く安全に評価した。
【0038】
虫刺されモデルマウスに対してプリックテストによる掻き回数と掻き時間の変化を、ビデオによって記録し、起痒物質の投与前後における15分間の行動を評価した。さらに同一個体に対して起痒物質の投与後にフコイダン水溶液を1cm当たり0.27mg(乾燥重量として)塗布し同様に評価した。
投与した物質は、直接的にかゆみを生じさせるヒスタミン、間接的にかゆみを生じさせるサブスタンスPとコンパウンド48/80、かゆみとともに痛みも生じさせるブラジキニンとした。かゆみ軽減物質のコントロールとして、ヒスタミン投与時に抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン)を塗布し同様に評価した。
解析においては、起痒物質の投与前との掻き回数の差を比較して、投与後に掻き行動が誘導されなかった個体は除外した。誘導された個体数は、サブスタンスPが6匹、コンパウンド48/80が4匹、ブラジキニンが4匹、ヒスタミンが5匹だった。
【0039】
その結果、フコイダンの塗布でヒスタミンよりも虫刺されに関連する起痒物質であるサブスタンスPとコンパウンド48/80とブラジキニンにおいてかゆみによる掻き回数の減少と掻き時間の短縮がみられ、かゆみ軽減効果が確認された。結果を表3〜表6に示す。
【0040】
【表3】
表3より、起痒物質に対してフコイダンが掻き回数を減少することが確認された。またヒスタミンに対しては、抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン)より顕著な掻き回数を減少することが確認された。
【0041】
【表4】
表4より、平均掻き回数が抗ヒスタミン剤よりフコイダンで軽減されることが確認された。
【0042】
【表5】
表5より、ヒスタミン以外の起痒物質に対してフコイダンが掻き時間を短縮することが確認された。またヒスタミンに対しては、フコイダンよりも抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン)において掻き時間を短縮することが確認された。
【0043】
【表6】
表6より、平均掻き時間が抗ヒスタミン剤よりもフコイダンで軽減されることが確認された。
【0044】
以前の研究では、コンパウンド48/80で刺激した時のフコイダンによるヒスタミンの抑制効果はほとんど認められなかった(山田信夫 著「海藻フコイダンの科学」(成山堂書店)、131頁)。しかし今回の動物行動による評価では、コンパウンド48/80による刺激で掻き回数・掻き時間の減少がありかゆみの軽減がみられたことから、フコイダンが細胞における炎症を抑制するのではなく、皮膚からの虫刺されに特異的なシグナルを抑制し、かゆみを軽減することが分かった。
【実施例3】
【0045】
実施例3:フコイダンを含有する虫刺されによる痒みの抑制剤の調製
表7に示す成分を混合してクリーム剤を得た。
【表7】
【実施例4】
【0046】
実施例4:フコイダンの虫除け効果
虫除けについて、肌へのフコイダン塗布の効果を確認するため、アンケート試験を行った。試験方法は、フコイダン水溶液を1cm当たり2.7mg〜13.5mg(乾燥重量として)塗布した場所と塗布しなかった場所で、1時間以内に蚊に刺されたかどうかを記入させた。結果を表8に示す。
【表8】
表8よりフコイダン塗布による虫に刺された人数の減少がみられた。その結果、フコイダンの塗布による虫除け効果が確認された。
【実施例5】
【0047】
実施例5:フコイダンを含有する虫除け剤の調製
表9に示す成分を混合してローションを得た。
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、医薬品、医薬部外品などの分野に利用可能である。