(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335706
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】沈砂池
(51)【国際特許分類】
B01D 21/24 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
B01D21/24 G
B01D21/24 M
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-153784(P2014-153784)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-30235(P2016-30235A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】綿引 綾一郎
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−056807(JP,U)
【文献】
特開2014−024055(JP,A)
【文献】
特開平09−141007(JP,A)
【文献】
特開2005−342568(JP,A)
【文献】
特開昭57−053209(JP,A)
【文献】
米国特許第04376048(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00 − 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
池底に堆積した沈砂を揚砂ピットに移送する集砂装置と、揚砂ピット内の沈砂を水と共に吸い上げる揚砂管を有する揚砂装置とを備えた沈砂池において、
前記揚砂ピットは、平面視矩形状で、中央部に前記揚砂管の下端部を開口させ、該揚砂管の下端部から揚砂ピットの各側壁の中央部に至る中央部集砂水ガイド流路と、各中央部集砂水ガイド流路の先端から同一方向にそれぞれ屈曲して各側壁に沿って揚砂ピットの各角部に至る側壁部集砂水ガイド流路とによって平面視卍形の集砂水ガイド流路を形成し、
各側壁部集砂水ガイド流路の上方には各側壁に向かって上り勾配となる側壁部傘状部材を設け、各中央部集砂水ガイド流路の上方には中央部傘状部材を設け、
少なくとも揚砂ピットの各角部に前記側壁部集砂水ガイド流路に沿って集砂水を噴射する第1の噴射ノズルをそれぞれ設けるとともに、各第1の噴射ノズル側に、前記側壁部傘状部材の先端から揚砂ピット底面に至るガイド部材を設けたことを特徴とする沈砂池。
【請求項2】
前記集砂装置は、池底に堆積した沈砂を前記揚砂ピットに向けて移送するための集砂水を噴射する複数の第2の噴射ノズルと、該第2の噴射ノズルから前記揚砂ピットに至る集砂水ガイド流路と、前記第2の噴射ノズル及び前記集砂水ガイド流路の上方を覆って第2の噴射ノズル及び集砂水ガイド流路への沈砂の堆積を抑制する傘状部材とを備えていることを特徴とする請求項1記載の沈砂池。
【請求項3】
前記集砂水ガイド流路は、沈砂池の池底に形成された揚砂ピット方向に向かう集砂溝の幅方向中央部に設けられており、前記集砂溝の上部開口の幅方向中央部に前記傘状部材が設けられていることを特徴とする請求項2記載の沈砂池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈砂池に関し、詳しくは、池底に堆積した沈砂を揚砂ピットに向けて移送する集砂装置及び揚砂ピット内の沈砂を水と共に吸い上げる揚砂管有する揚砂装置を備えた沈砂池に関する。
【背景技術】
【0002】
取水設備や下水処理設備、ポンプ場等に設けられる沈砂池には、池底に沈降した砂や小石等の沈砂を沈砂池の上流側に形成した揚砂ピットに集める集砂装置と、揚砂ピットに集めた沈砂を揚砂管で水と共に吸い上げて沈砂池から排出する揚砂装置とが設けられている。集砂装置としては、揚砂ピットの方向に向けて集砂水を噴射する多数の噴射ノズルを沈砂池の池底に配置したものが知られている。また、揚砂装置としては、沈砂池の上部から揚砂ピットの底部に向けて揚砂管を配置し、ポンプなどを駆動源として沈砂を水と共に揚砂管の下端部から吸い上げるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−38208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている集砂装置は、沈砂池内に水が入っている状態で噴射ノズルから集砂水を噴射すると、池底に堆積した沈砂に集砂水が勢いよく衝突するため、堆積した沈砂が舞い上がって水中に浮遊した状態になり、沈砂池から下流側に流出する処理水に同伴されて砂が流出してしまうことがある。このため、噴射水の噴射によって池底に堆積した沈砂を移送する際には、沈砂池内の水を抜いてから集砂装置を作動させる必要があった。また、揚砂装置では、揚砂ピットの全体から沈砂を吸い上げるためには、揚砂管を移動可能に形成したりする必要があった。
【0005】
そこで本発明は、池底に堆積した沈砂を揚砂ピットに移送する集砂装置を備えるとともに、揚砂管を移動させたりすることなく揚砂ピットの全体から沈砂を吸い上げることができる揚砂装置を備えた沈砂池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の沈砂池は、池底に堆積した沈砂を揚砂ピットに移送する集砂装置と、揚砂ピット内の沈砂を水と共に吸い上げる揚砂管を有する揚砂装置とを備えた沈砂池において、
前記揚砂ピットは、平面視矩形状で、中央部に前記揚砂管の下端部を開口させ、該揚砂管の下端部から揚砂ピットの各側壁の中央部に至る中央部集砂水ガイド流路と、各中央部集砂水ガイド流路の先端から同一方向にそれぞれ屈曲して各側壁に沿って揚砂ピットの各角部に至る側壁部集砂水ガイド流路とによって平面視卍形の集砂水ガイド流路を形成し、各側壁部集砂水ガイド流路の上方には各側壁に向かって上り勾配となる側壁部傘状部材を設け、各中央部集砂水ガイド流路の上方には中央部傘状部材を設け、少なくとも揚砂ピットの各角部に前記側壁部集砂水ガイド流路に沿って集砂水を噴射する第1の噴射ノズルをそれぞれ設けるとともに、各第1の噴射ノズル側に、前記側壁部傘状部材の先端から揚砂ピット底面に至るガイド部材を設けたことを特徴としている。
【0007】
さらに、
前記集砂装置は、池底に堆積した沈砂を前記揚砂ピットに向けて移送するための集砂水を噴射する複数の第2の噴射ノズルと、該第2の噴射ノズルから前記揚砂ピットに至る集砂水ガイド流路と、前記第2の噴射ノズル及び前記集砂水ガイド流路の上方を覆って第2の噴射ノズル及び集砂水ガイド流路への沈砂の堆積を抑制する傘状部材とを備えていることを特徴としている。
【0008】
また
、前記集砂水ガイド流路が、沈砂池の池底に形成された揚砂ピット方向に向かう集砂溝の幅方向中央部に設けられており、前記集砂溝の上部開口の幅方向中央部に前記傘状部材が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の沈砂池によれば、噴射ノズルから噴射した集砂水は、傘状部材によって沈砂の堆積が抑制された集砂水ガイド流路に沿って流れるので、堆積した沈砂を水中に大きく舞上げることはなく、逆に、集砂水ガイド流路の周辺に堆積している沈砂を集砂水の流れの中に吸い込む状態になる。したがって、揚砂ピットに適宜な集砂水ガイド流路を形成して噴射ノズルを設けることにより、揚砂管を移動させることなく、集砂水の流れで揚砂ピット内のほとんどの沈砂を揚砂管で吸い上げることができる。また、沈砂池の池底の状態に応じて集砂水ガイド流路を適切に形成して噴射ノズルを設けることにより、沈砂池の水を抜かずに集砂水による集砂を行うことができる。特に、集砂溝を形成することにより、集砂水の流れへの沈砂の吸い込みと移送とをより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の沈砂池の第1形態例を示す断面側面図である。
【
図3】本発明の沈砂池の第2形態例を示す揚砂ピットの平面図である。
【
図4】同じく揚砂途中の揚砂ピットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び
図2は、本発明を適用した沈砂池の第1形態例を示している。流入部11a及び流出部11bを備えた沈砂池11は、水の流れ方向に対して上流側の池底に揚砂ピット12を形成するとともに、この揚砂ピット12の下流側に、池底に沈降した砂や小石等の沈砂を、揚砂ピット12に向けて移送するための集砂装置13を設けている。揚砂ピット12には、集砂装置13によって揚砂ピット12に集められた沈砂を水と共に吸い上げて沈砂池11の外部に排出するための揚砂管14を有する揚砂装置が設けられている。
【0012】
集砂装置13は、前記揚砂ピット12の方向に向けて集砂水を噴射する複数の噴射ノズル15を有しており、該噴射ノズル15からの集砂水の噴射方向に集砂水ガイド流路16が形成されるとともに、噴射ノズル15及び集砂水ガイド流路16の上方を覆う傘状部材17が設けられている。
【0013】
本形態例に示す集砂水ガイド流路16は、沈砂池11の池底に形成された揚砂ピット12の方向に向かう複数の集砂溝18の幅方向中央部にそれぞれ設けられており、該集砂溝18の上部開口の幅方向中央部で、前記集砂水ガイド流路16の上方に対応する位置に前記傘状部材17を設けている。
【0014】
左右対称の山形に形成された前記傘状部材17は、沈砂池11内の水中を沈降する砂や小石が、噴射ノズル15や集砂水ガイド流路16の部分に堆積しないようにするとともに、傘状部材17の幅方向両端縁と集砂溝18の側壁との間の隙間19から集砂溝18の内部に砂などが沈降して溝底部に堆積するようにしている。
【0015】
このような傘状部材17を設けることにより、噴射ノズル15から噴射した集砂水は、傘状部材17の下方の集砂水ガイド流路16に沿って勢いよく揚砂ピット12の方向に向かって流れる状態になる。このとき、集砂水ガイド流路16に沈砂が堆積しており、集砂水によって沈砂を舞上げたとしても、傘状部材17が上方への沈砂の舞上がりを防止するので、沈砂池11から流出部11bを通って下流側に流出する処理水中に同伴されて砂が流出することはない。
【0016】
また、集砂溝18内に大量の沈砂が侵入した場合でも、上部が閉塞した傘状部材17の内側上部まで沈砂が侵入することはなく、傘状部材17の内側上部には、集砂水の逃げ道となる空間が残るため、噴射ノズル15から噴射した集砂水は、この空間を通って流れることができ、集砂溝18内の沈砂が集砂溝18外に噴出させるようなことはない。
【0017】
したがって、噴射ノズル15から集砂水ガイド流路16に直線状に噴射した集砂水は、傘状部材17の下方を揚砂ピット12に向かって流れ、集砂水ガイド流路16に侵入した沈砂や、集砂水ガイド流路16の周囲の沈砂を水と共に吸い込みながら流れていく。さらに、傘状部材17の上面に堆積した沈砂を水と共に集砂溝18内に落下させて揚砂ピット12に向けて移送することができる。また、集砂水の流れ方向に複数個が所定ピッチで設けられている噴射ノズル15からの集砂水の噴射順序を適宜設定することにより、沈砂池11の池底に堆積した沈砂を、水中に舞上げることなく、揚砂ピット12に向けて確実に移送することができる。
【0018】
図3乃至
図5は、本発明の沈砂池の第2形態例を示している。本形態例では、平面視矩形状の揚砂ピット20の中央部に揚砂管14の下端部を開口させ、該揚砂管14の下端部から揚砂ピット20の各側壁20aの中央部に至る4本の中央部集砂水ガイド流路21と、各中央部集砂水ガイド流路21の先端から同一方向にそれぞれ屈曲して各側壁20aに沿って揚砂ピットの各角部20bに至る4本の側壁部集砂水ガイド流路22とによって平面視逆卍形の集砂水ガイド流路を形成している。
【0019】
各側壁部流路22の上方には各側壁20aに向かって上り勾配となる側壁部傘状部材23を設け、側壁20aに沿って沈降する砂などを揚砂ピット20の中央側に落下させるようにしている。また、各中央部流路21の上方には、前記側壁部傘状部材23に連続する方向の傾斜を有する傾斜部24aと、該傾斜部24aの上端から鉛直方向に垂下した鉛直部24bとを有する中央部傘状部材24を設けている。
【0020】
各側壁部流路22の端部である揚砂ピット20の各角部20bには、前記側壁部流路22に沿って集砂水を噴射する噴射ノズル15がそれぞれ設けられるとともに、各側壁部集砂水ガイド流路22の噴射ノズル15側には、前記側壁部傘状部材23の先端から揚砂ピット底面に至る鉛直方向のガイド部材25が設けられている。このガイド部材25は、噴射ノズル15から噴射した集砂水の流れ方向を揚砂ピット20の中央側にガイドするもので、一つの噴射ノズル15から噴射した集砂水が他の噴射ノズル15に当たらないようにしている。
【0021】
このように、中央部集砂水ガイド流路21と側壁部集砂水ガイド流路22とによって卍形の集砂水ガイド流路を形成するとともに、ガイド部材25を設けた揚砂ピット20に、
図3に示すように沈砂が堆積した状態で各噴射ノズル15から集砂水を噴射すると、集砂水は、側壁部傘状部材23によって覆われて沈砂がほとんど堆積していない側壁部流路22に沿って流れ、側壁部流路22の先端方向に堆積した沈砂に衝突することにより、集砂水の流れ方向が、中央部傘状部材24の下方で沈砂がほとんど堆積していない中央部集砂水ガイド流路21から揚砂管14の下端部に向かう方向に屈曲する。
【0022】
4箇所の各側壁部流路22の先端部で前記同様の集砂水の屈曲が発生することにより、堆積した沈砂は、集砂水が衝突した部分から徐々に削られ、集砂水に伴われて揚砂管14の下端部に向かって流れ、揚砂管14の下端開口から吸い上げられて沈砂池11の外部に排出される。集砂水の衝突による堆積した沈砂の削り取りが進行すると、集砂水は、ガイド部材25に衝突して流れ方向が変わり、全体として、揚砂ピット20内の沈砂と水とが混合しながら、
図4において反時計回りの渦を巻いて揚砂ピット20の底部を流れ、揚砂管14の下端開口から吸い上げられていく。
【0023】
両形態例に示したように、各集砂水ガイド流路の上方に、上端部が閉塞した傘状部材をそれぞれ設けることにより、集砂水ガイド流路の周囲に大量の沈砂が堆積した場合でも、傘状部材の下方に集砂水が流れる空間を形成することができるので、集砂水の流れを阻害することがなく、集砂水による沈砂の移送を確実に行うことができる。
【0024】
なお、傘状部材の形状や大きさについては、噴射ノズルの位置及びピッチ、集砂水の量及び圧力などの条件に応じて適宜設定することができる。また、沈砂池の最上流側に設けられた揚砂ピットでは、少量の沈砂が舞い上がったとしてもほとんど問題はなく、さらに、揚砂ピットを深く形成しておくことにより、舞い上がった沈砂が揚砂ピットから流出することを防止できる。また、本発明においては、集砂装置として機械式の集砂装置を使用することもできる。
【符号の説明】
【0025】
11…沈砂池、11a…流入部、11b…流出部、12…揚砂ピット、13…集砂装置、14…揚砂管、15…噴射ノズル、16…集砂水ガイド流路、17…傘状部材、18…集砂溝、19…隙間、20…揚砂ピット、20a…側壁、20b…角部、21…中央部集砂水ガイド流路、22…側壁部集砂水ガイド流路、23…側壁部傘状部材、24…中央部傘状部材、24a…傾斜部、24b…鉛直部、25…ガイド部材