特許第6335708号(P6335708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335708
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20180521BHJP
   B65D 47/06 20060101ALI20180521BHJP
   B65D 47/08 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B65D47/20 300
   B65D47/06 400
   B65D47/08 100
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-157130(P2014-157130)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-33047(P2016-33047A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
(72)【発明者】
【氏名】井田 辰春
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−007066(JP,A)
【文献】 特公昭62−051825(JP,B2)
【文献】 特開2010−260578(JP,A)
【文献】 特開2009−286468(JP,A)
【文献】 特開2013−241197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 47/06
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着されるとともに、前記口部に連通する連通口を有するキャップ本体と、
前記キャップ本体に第1ヒンジ部を介して回動可能に連設されるとともに、注出口が形成された注出部材と、
前記注出部材に第2ヒンジ部を介して回動可能に連設され、前記注出口を閉塞する有頂筒状のオーバーキャップと、を備え、
キャップ軸方向から見た平面視において、前記第1ヒンジ部及び前記第2ヒンジ部は、キャップ軸を挟んで互いに反対となる位置に配置され、
前記オーバーキャップのうち、キャップ軸方向で前記第1ヒンジ部と対向する位置には、キャップ軸方向に直交する径方向において、前記第1ヒンジ部よりも外側に向けて突出する操作部が配設され、
前記第2ヒンジ部には、径方向の外側に向けて突出する指掛け部が形成され
前記指掛け部は、径方向の外側への突出量が前記第1ヒンジ部よりも大きくなっていることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記指掛け部は、キャップ軸に直交する面内に沿って延びる平坦面とされていることを特徴とする請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
前記注出部材は、キャップ軸方向に延びる筒状とされて前記キャップ本体に径方向の外側からアンダーカット嵌合される嵌合突部と、
前記嵌合突部に対して径方向の内側に位置し、前記キャップ本体に形成された第1注出筒内に嵌合するシール筒と、を有していることを特徴とする請求項1または請求項2記載のキャップ。
【請求項4】
前記注出部材は、前記注出口を開閉する弁体を備え、
前記弁体の外周縁と前記注出口の内周縁とが弾性ヒンジ部を介して連結され、前記弾性ヒンジ部が弾性変形することで、前記弁体が前記注出口を開閉し、
前記弁体の外周縁のうち、前記弾性ヒンジ部との接続部分を除いた部分が全域に亘って破断可能な第1弱化部を介して、前記注出口の内周縁に連結されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器の口部に装着されるとともに、口部に連通する連通口を有するキャップ本体と、キャップ本体に第1ヒンジ部を介して回動可能に連設されるとともに、注出口が形成された注出部材と、注出部材に第2ヒンジ部を介して回動可能に連設され、注出口を閉塞する有頂筒状のオーバーキャップと、を備えたキャップが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
このような構成において、キャップを使用する場合には、まずキャップ本体に対して注出部材を開位置とし、連通口に配設されたプルリングを除去し、キャップを開封する。その後、キャップ本体に対して注出部材またはオーバーキャップを開位置とすることで、キャップ本体の連通口または注出部材の注出口を通して容器内の内容物が注出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−286468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したキャップでは、上述した開封操作時や注出時等において、キャップ本体に対する注出部材の開操作の操作性を向上させる点で、未だ改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、開操作の操作性を向上させることができるキャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るキャップは、容器の口部に装着されるとともに、前記口部に連通する連通口を有するキャップ本体と、前記キャップ本体に第1ヒンジ部を介して回動可能に連設されるとともに、注出口が形成された注出部材と、前記注出部材に第2ヒンジ部を介して回動可能に連設され、前記注出口を閉塞する有頂筒状のオーバーキャップと、を備え、キャップ軸方向から見た平面視において、前記第1ヒンジ部及び前記第2ヒンジ部は、キャップ軸を挟んで互いに反対となる位置に配置され、前記オーバーキャップのうち、キャップ軸方向で前記第1ヒンジ部と対向する位置には、キャップ軸方向に直交する径方向において、前記第1ヒンジ部よりも外側に向けて突出する操作部が配設され、前記第2ヒンジ部には、径方向の外側に向けて突出する指掛け部が形成され、前記指掛け部は、径方向の外側への突出量が前記第1ヒンジ部よりも大きくなっていることを特徴としている。
【0007】
このような特徴により、オーバーキャップに、径方向において、第1ヒンジ部よりも外側に向けて突出する操作部が配設されているため、オーバーキャップの開操作時に指等が第1ヒンジ部に接触して、第1ヒンジ部によって開操作が妨げられるのを抑制できる。これにより、注出部材に対するオーバーキャップの開操作の操作性を向上させることができる。
また、第2ヒンジ部に、径方向の外側に向けて突出する指掛け部が形成されているため、開封操作時や注出時等の操作部として第2ヒンジ部を利用することで、キャップ本体に対する注出部材の開操作の操作性を向上させることができる。特に、第2ヒンジ部に指掛け部を形成することで、操作部を別途配設する場合に比べて構成の簡素化や見映えの向上を図ることができる。
【0008】
また、上記本発明のキャップでは、前記指掛け部は、キャップ軸に直交する面内に沿って延びる平坦面とされていてもよい。
この場合、指掛け部がキャップ軸に直交する面内に沿って延びる平坦面とされているため、指掛け部に指等を掛けやすくなり、操作性の更なる向上を図ることができる。
【0009】
また、上記本発明のキャップでは、前記注出部材は、キャップ軸方向に延びる筒状とされて前記キャップ本体に径方向の外側からアンダーカット嵌合される嵌合突部と、前記嵌合突部に対して径方向の内側に位置し、前記キャップ本体に形成された第1注出筒内に嵌合するシール筒と、を有していてもよい。
この場合、注出部材がキャップ本体にアンダーカット嵌合されているため、キャップ本体が不意に開放されるのを抑制できる。また、シール筒が嵌合突部に対して径方向の内側で第1注出筒内に嵌合しているため、仮に容器を倒しても、連通口を通って第1注出筒内に流入した内容物が外部に漏出するのを確実に抑制することができる。

【0010】
また、上記本発明のキャップでは、前記注出部材は、前記注出口を開閉する弁体を備え、前記弁体の外周縁と前記注出口の内周縁とが弾性ヒンジ部を介して連結され、前記弾性ヒンジ部が弾性変形することで、前記弁体が前記注出口を開閉し、前記弁体の外周縁のうち、前記弾性ヒンジ部との接続部分を除いた部分が全域に亘って破断可能な第1弱化部を介して、前記注出口の内周縁に連結されていてもよい。
この場合、弁体の外周縁と、注出口の内周縁とが弾性ヒンジ部を介して連結されているため、第1弱化部を破断した後に注出操作を行うと、容器内の内容物が弁体と注出口との間の隙間を通って注出される。一方、注出部材が開放された状態で、容器を倒しても、内容物が注出口から漏出するのを抑制することができる。しかも、弁体の外周縁と注出口の内周縁とが、弾性ヒンジ部との接続部分を除いた全域に亘って第1弱化部を介して連結されているので、第1弱化部を破断した後に、弁体の外周縁が、例えば第1弱化部の破断時に形成されたバリ部分上に載ったり、バリ部分に引っ掛かったりすることとなる。そのため、弁体の、注出口に対する容器の外側に向けた移動は許容される一方、容器の内側に向けた移動は抑えることが可能になる。これにより、第1弱化部の破断後に、弁体の外周縁が、上述したようにバリ部分上に載る等することから、弁体と注出口との間に径方向の隙間が形成されるのを抑制し、上述した作用効果がより奏功される。また、弁体を容器の内側から支持する弁座を注出部材に設けなくても、容器の内側に向けた弁体の移動を抑制することができ、部品点数を削減して低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るキャップによれば、開操作時の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態におけるキャップの断面図である。
図2】実施形態におけるキャップの部分展開図である。
図3】実施形態における中栓部材の平面図である。
図4】実施形態におけるキャップの開封方法を説明するための説明図であって、図1に相当する断面図である。
図5】実施形態におけるキャップの第1注出モードを説明するための説明図であって、図1に相当する断面図である。
図6】実施形態におけるキャップの第2注出モードを説明するための説明図であって、図1に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係るキャップを説明する。
図1に示すように、本実施形態のキャップ1は、内容物を大量に注出する第1注出モードと、内容物を少量で注出する第2注出モードと、に内容物の注出量を切替可能とされている。具体的に、キャップ1は、内容物が収容された容器2の口部2aに装着されるとともに、口部2aに連通する連通口3を有するキャップ本体4と、キャップ本体4に第1ヒンジ部5を介して回動可能に連設されるとともに、注出口6が形成された注出部材7と、注出部材7に第2ヒンジ部8を介して回動可能に連設され、注出口6を閉塞するオーバーキャップ9と、を備えている。また、図2に示すように、本実施形態のキャップ1において、後述する中栓部材51以外の部分は一体成形されている。そして、キャップ本体4、注出部材7、及びオーバーキャップ9は、ヒンジ部5,8の折り曲げを解除して展開させた際、ヒンジ部5,8を介して一直線上に配列される。
【0014】
なお、図1に示すように、キャップ1のうち、キャップ本体4は筒状とされ、注出部材7及びオーバーキャップ9は有頂筒状とされるとともに、これらキャップ本体4、注出部材7及びオーバーキャップ9の中心軸は共通軸上に位置している。以下、この共通軸をキャップ軸O1といい、キャップ軸O1方向に沿う容器側を単に下側、オーバーキャップ9側を単に上側という。また、キャップ軸O1方向から見た平面視で、キャップ軸O1に直交する方向を径方向といい、キャップ軸O1周りに周回する方向を周方向という。
【0015】
キャップ本体4は、口部2aに外嵌された装着筒11と、口部2aの内側に配設された第1注出筒12と、装着筒11を囲繞する連結筒部13と、第1注出筒12を閉塞する隔壁部14と、を有している。
装着筒11は、キャップ軸O1方向に沿って延びるとともに、その上端部が口部2aの上端縁上に配置された連結環15を介して第1注出筒12の上部に連結されている。連結環15には、上方に向けて突出する筒状の嵌合突部16が全周に亘って形成されている。
第1注出筒12は、装着筒11よりも上方に向けて突出するとともに、その上端部が上方に向かうに従い漸次拡径している。
【0016】
隔壁部14は、第1注出筒12の下端縁に連設されている。隔壁部14には、容器2の内外を連通させる上述した連通口3が形成されている。なお、図示の例において、連通口3は、径方向のうち、一方向を長軸方向とする長円形状とされている。連通口3は、破断可能な薄肉部17を介して封止板21により閉塞されている。封止板21には、封止板21の離脱操作(開封操作)を行うためのプルリング22が配設されている。プルリング22は、封止板21のうち、上述した一方向の一端部に位置(図面上では、第1ヒンジ部5側)する部分から上方に向けて突設された支持部23を介して封止板21に接続されている。また、本実施形態のプルリング22には、下方に向けて薄肉状の緩衝片22aが垂設され、プルリング22を引き上げる際、指の痛みを緩和することができる構造としている。
【0017】
連結筒部13は、その下端部において、連結部13a及び周方向に複数配設された破断部13bを介して装着筒11の下端部に連結されている。そして、容器2からキャップ1を取り外す際には、注出部材7を開位置とした状態(図5に示す状態)で、注出部材7をオーバーキャップ9とともに引き上げることで、破断部13bが破断される。これにより、キャップ1は、キャップ本体4において連結筒部13と装着筒11とが連結部13aのみで連結された状態で引き上げられることで、装着筒11が容器2(口部2a)から取り外されるようになっている。なお、連結筒部13は、キャップ軸O1方向における長さが装着筒11と同等になっている。
【0018】
注出部材7は、周壁部31及び頂壁部32を備え、周壁部31の下端部における周方向の一部で、第1ヒンジ部5を介して上述した連結筒部13に回動可能に連結されている。これにより、注出部材7は、第1ヒンジ部5周りに第1注出筒12を開閉可能としている。
【0019】
頂壁部32のうち、周壁部31よりも径方向の内側に位置する部分には、下方に向けて筒状の嵌合突部33が延設されている。この嵌合突部33は、注出部材7の閉位置において、上述したキャップ本体4の嵌合突部16に径方向の外側からアンダーカット嵌合されている。頂壁部32のうち、嵌合突部33よりも径方向の内側に位置する部分には、下方に向けてシール筒34が延設されている。このシール筒34は、第1注出筒12内に液密に嵌合され、第1注出筒12を閉塞している。頂壁部32のうち、嵌合突部33とシール筒との間に位置する部分には、上方に向けて突出する嵌合筒35が形成されている。
【0020】
また、頂壁部32のうち、上述した一方向の一端部寄りに位置する部分には、上方に向けて突出する多段筒状の第2注出筒41が形成されている。第2注出筒41は、下方に位置する下筒部42と、下筒部42から上方に向けて突設されるとともに、下筒部42よりも小径の上筒部43と、を有している。なお、第2注出筒41は、キャップ軸O1に対して平行な注出筒軸O2に沿って延在している。以下の説明では、注出筒軸O2方向から見た平面視で注出筒軸O2に直交する方向を注出筒径方向といい、注出筒軸O2周りに周回する方向を周方向という。
【0021】
下筒部42の上端縁には、注出筒径方向の内側に向けて内フランジ部44が突設されている。内フランジ部44の内周部分には、下方に向けて突出する環状の案内部45が形成されている。案内部45は、キャップ軸O1方向に沿う断面視において、下方に向けて突の曲面状とされ、下筒部42内の内容物を径方向の内側に向けて導く。
上筒部43は、内フランジ部44の内周縁から上方に向けて立設されている。上筒部43の上端部は、上方に向かうに従い漸次拡径している。なお、本実施形態において、上筒部43の内径は、上述した第1注出筒12の内径に比べて小さくなっている。したがって、第2注出筒41は、第1注出筒12に比べて少量の内容物を注出可能とされている。
【0022】
ここで、図1図3に示すように、下筒部42内には、容器2内と第2注出筒41内との連通及び遮断を切り替える中栓部材51が配設されている。図3に示すように、中栓部材51は、下筒部42内に嵌合された装着筒52と、装着筒52の上述した注出口6を開閉する弁体54と、を備えている。なお、本実施形態において、注出口6は装着筒52の下端開口部とされ、第2注出筒41(上筒部43)の上端開口部に注出筒軸O2方向で対向している。
装着筒52には、下方に向けて延びる脚部52aが、注出筒周方向に間隔をあけて複数配設されている。
【0023】
弁体54は、外周縁が注出口6の内周縁に弾性ヒンジ部56を介して連結され、注出筒軸O2方向に沿って弾性変位可能とされている。本実施形態では、弁体54の外周縁のうち、弾性ヒンジ部56との接続部分を除いた部分が全域にわたって破断可能な第1弱化部61を介して、注出口6の内周縁に連結されている。図示の例では、弾性ヒンジ部56が注出筒周方向に間隔をあけて複数配設され、第1弱化部61が弾性ヒンジ部56を間に挟んで注出筒周方向に複数連ねられて配置されている。
【0024】
弁体54は、注出口6内に配置された弁本体62と、注出筒周方向に沿って延びるとともに、その一端部が弁本体62の外周縁に連結され、かつ他端部が弾性ヒンジ部56に連結された弾性連結片63と、を備えている。
【0025】
弁本体62には、上方に向けて突出する突出部65が形成されている。突出部65は、注出筒軸O2と同軸状に配置された錐状を呈し、下方から上方に向かうに従い漸次縮径している。なお、突出部65の上端部は、上方に向けて突の曲面状とされ、装着筒52の上端縁よりも下方に位置している。
一方、図1に示すように、弁本体62には、上方に向けて窪む凹部66が形成されている。凹部66は、上方に向けて突の凹曲面状に形成されている。なお、弁本体62の下面において、凹部66の開口周縁部は、下方に向けて突の曲面状に形成されている。
【0026】
図3に示すように、弾性連結片63は、弁本体62の外周縁と注出口6の内周縁との間に、注出筒周方向に間隔をあけて複数配設されている。各弾性連結片63の周縁部のうち、注出筒径方向の外側を向く部分は、破断可能な第1弱化部61を介して注出口6の内周縁に連結されている。また、弾性連結片63の周縁部のうち、注出筒径方向の内側を向く部分は、破断可能な第2弱化部71を介して弁本体62の外周縁に連結されている。すなわち、第1弱化部61及び第2弱化部71は、弾性連結片63を介して注出筒径方向で互いに対向している。
【0027】
第2弱化部71は、弁本体62の外周縁のうち、弾性連結片63の一端部との接続部分を除いた部分に全域に亘って連結されている。すなわち、第2弱化部71は、注出筒周方向に間隔をあけて複数配設され、弾性連結片63の一端部を間に挟んで注出筒周方向に複数連ねられて配置されている。
【0028】
ここで、第1弱化部61及び第2弱化部71は、破断可能な第3弱化部72を介して連結されている。第3弱化部72は、第2弱化部71における注出筒周方向の他端部と、第2弱化部71に弾性連結片63を注出筒径方向に挟んで対向する第1弱化部61に対して、注出筒周方向の他端側に隣接する他の第1弱化部61における注出筒周方向の一端部と、を連結している。第3弱化部72は、注出筒周方向の他端側に向かうに従い漸次、注出筒径方向の外側に向けて延在している。第3弱化部72は、弾性連結片63の他端部及び弾性ヒンジ部56と、弾性連結片63に対して、注出筒周方向の他端側に隣接する他の弾性連結片63の一端部と、を連結している。
【0029】
そして、上述した弁体54、第1弱化部61、第2弱化部71及び第3弱化部72により、注出口6が密閉されている。なお、第1弱化部61、第2弱化部71及び第3弱化部72は、それぞれの注出筒軸O2に沿う縦断面視で、図1に示されるように、上方から下方に向かうに従い漸次、幅が狭くなるV字状を呈する溝となっている。そして、各弱化部61,71,72は、中栓部材51を注出部材7に装着する前に、弁体54を上方に向けて突き上げ、弁体54を装着筒52に対して上昇させることで破断される。
【0030】
上述した中栓部材51では、装着筒52に対して弁体54を上昇させ、第1弱化部61、第2弱化部71及び第3弱化部72を破断すると、弁体54が弾性ヒンジ部56を介して装着筒52に弾性変位可能に連結される。このとき、弁体54の外周縁が、例えば各弱化部61,71,72の破断時に形成されたバリ部分上に載ったり、バリ部分に引っ掛かったりする。
したがって、弁体54の、注出口6に対する上方(容器2の外側)に向けた移動は許容される一方、下方(容器2の内側)に向けた移動は抑えられる。
【0031】
図1に示すように、オーバーキャップ9は、周壁部74及び天壁部75を備え、周壁部74の下端部における周方向の一部で、上述した第2ヒンジ部8を介して注出部材7の周壁部31に回動可能に連結されている。これにより、オーバーキャップ9は、第2ヒンジ部8周りに第2注出筒41を開閉可能としている。
【0032】
周壁部74は、オーバーキャップ9の開閉動作に応じて上述した嵌合筒35に着脱可能に外嵌されている。周壁部74の下端部には、径方向の外側に向けて延びる操作部81が形成されている。操作部81は、キャップ軸O1方向から見た平面視で円弧状とされ、上述した第1ヒンジ部5と周方向で同じ位置(キャップ軸O1方向で対向する位置)に形成されるとともに、第1ヒンジ部5よりも径方向の外側に向けて突出している。
天壁部75には、下方に向けて栓筒82が突設され、この栓筒82が第2注出筒41(上筒部43)内に液密に嵌合されることにより、第2注出筒41が閉塞される。
【0033】
ここで、第2ヒンジ部8は、周壁部74のうち、操作部81に対して径方向で対向する位置(キャップ軸O1を挟んで第1ヒンジ部5と反対となる位置)に配設されている。本実施形態の第2ヒンジ部8は、主ヒンジ部83と、主ヒンジ部83に対して周方向の両側に位置する一対の副ヒンジ部84と、を有している。
【0034】
主ヒンジ部83は、周方向から見た側面視で三角形状を呈するように屈曲された弾性変形可能な板状であり、オーバーキャップ9を注出部材7に対して開位置または閉位置に向けて付勢しうるように構成されている。具体的に、主ヒンジ部83は、下方に向かうに従い径方向の外側に向けて延びる傾斜片85と、傾斜片85の下端部から径方向の内側に向けて延びる指掛け片86と、を有している。
【0035】
傾斜片85は、その上端部がオーバーキャップ9側の周壁部74の下端部に回動可能に連結され、下端部が指掛け片86の径方向の外側端部に連結されている。なお、傾斜片85は、下方に向かうに従い板厚が漸次厚くなっている。
指掛け片86は、その径方向の内側端部が注出部材7側の周壁部31に回動可能に連結され、径方向の外側端部が上述したように傾斜片85に連結されている。指掛け片86は、径方向の外側への突出量が上述した第1ヒンジ部5よりも大きく、かつ操作部81と同等以上となっており、その下面が指掛け操作可能な指掛け部86aとなっている。なお、図示の例において、指掛け部86aは、キャップ軸O1に直交する面内に延びる平坦面とされている。
【0036】
各副ヒンジ部84は、オーバーキャップ9側の周壁部74及び注出部材7側の周壁部31から径方向の外側に向けて各別に突出する突出部87,88と、これら各突出部87,88間を連結する薄肉の連結部89と、を有している。なお、図示の例において、各突出部87,88は、径方向の外側への突出量が主ヒンジ部83と同等とされている。
各突出部87,88のうち、オーバーキャップ9側の突出部87は、周方向から見た側面視で三角形状を呈し、その上面が径方向の外側に向かうに従い下方に向けて傾斜する傾斜面とされている。また、各突出部87,88のうち、注出部材7側の突出部88は、周方向から見た側面視で矩形状を呈し、その下面が指掛け操作可能な指掛け部88aとなっている。なお、指掛け部88aは、キャップ軸O1に直交する面内に延びる平坦面とされている。
【0037】
次に、上述したキャップ1の使用方法について説明する。なお、以下の説明では、中栓部材51において、各弱化部61,71,72は既に破断され、弁体54が装着筒52に対して注出筒軸O2方向に沿って弾性変位可能な状態であるものとする。
まず、図4に示すように、キャップ1を開封する場合には、注出部材7を開位置とする。具体的には、第2ヒンジ部8の指掛け部86a,88aに指等を掛け、第2ヒンジ部8を引き上げる。すると、注出部材7がオーバーキャップ9とともに、第1ヒンジ部5周りに回動することで、注出部材7が開位置となる。この状態でプルリング22に指等を掛け、プルリング22を引き上げる。すると、薄肉部17が破断されることで、封止板21が隔壁部14から離脱する。これにより、連通口3が開放される。
【0038】
次に、図5に示すように、キャップ1を第1注出モードで使用する場合には、上述した開封操作時と同様に、注出部材7を開位置とする。この状態で、容器2を傾けたり、容器2をスクイズ変形させたりする等の注出操作を行うと、容器2内の内容物が第1注出筒12(連通口3)を通って外部に注出される。
【0039】
また、図6に示すように、キャップ1を第2注出モードで使用する場合には、オーバーキャップ9を開位置とする。具体的には、操作部81に指等をかけ操作部81を引き上げる。すると、オーバーキャップ9が注出部材7に対して第2ヒンジ部8周りに回動することで、オーバーキャップ9が開位置となり、第2注出筒41が開放される。
【0040】
この状態で、注出操作を行うと、容器2内の内容物が第1注出筒12を流通した後、弁体54と注出口6との間の隙間を通って第2注出筒41から外部に注出される。具体的には、注出口6と弁体54との間の隙間を通過した内容物は、第2注出筒41の内フランジ部44や案内部45に衝突することで集約された後、径方向の内側に向けて流通し、上筒部43を通して外部に注出される。そのため、キャップ軸Oに直交する面内において、上筒部43内を流通する内容物の流量のばらつきを抑制して、内容物を安定した状態で注出できる(いわゆる、整流効果を奏する)。
【0041】
なお、オーバーキャップ9が開位置に向かう過程において、第2ヒンジ部8の主ヒンジ部83は、傾斜片85及び指掛け片86がオーバーキャップ9及び注出部材7に対して各別に回動することで、傾斜片85及び指掛け片86とのなす角度が拡大するように弾性変形する。そのため、開位置と閉位置との間の中間位置に向かう過程では、主ヒンジ部83にオーバーキャップ9を閉方向へ付勢する。一方、注出部材7が中間位置から閉位置に向かう過程では、傾斜片85及び指掛け片86とのなす角度が縮小するように弾性変形し、オーバーキャップ9を開方向へ付勢する。
【0042】
このように、本実施形態では、オーバーキャップ9に、径方向において、第1ヒンジ部5よりも外側に向けて突出する操作部81が配設されているため、オーバーキャップ9の開操作時に指等が第1ヒンジ部5に接触して、第1ヒンジ部5によって開操作が妨げられるのを抑制できる。これにより、注出部材7に対するオーバーキャップ9の開操作の操作性を向上させることができる。
また、第2ヒンジ部8に、径方向の外側に向けて突出する指掛け部86a,88aが形成されているため、開封操作時や注出時等の操作部として第2ヒンジ部8を利用することで、キャップ本体4に対する注出部材7の開操作の操作性を向上させることができる。特に、本実施形態では、第2ヒンジ部8に指掛け部86a,88aを形成することで、注出部材7に操作部を別途配設する場合に比べて構成の簡素化や見映えの向上を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態では、指掛け部86a,88aがキャップ軸O1に直交する面内に沿って延びる平坦面とされているため、指掛け部86a,88aに指等を掛けやすくなり、操作性の更なる向上を図ることができる。
【0044】
さらに、注出部材7がキャップ本体4にアンダーカット嵌合されているため、キャップ本体4(第1注出筒12)が不意に開放されるのを抑制できる。また、シール筒34が嵌合突部33に対して径方向の内側で第1注出筒12内に嵌合しているため、仮に容器2を倒しても、連通口3を通って第1注出筒12内に流入した内容物が外部に漏出するのを確実に抑制することができる。
【0045】
そして、本実施形態では、弁体54の外周縁と、注出口6の内周縁とが弾性ヒンジ部56を介して連結されているため、弱化部61,71,72を破断した後に、注出部材7が開放された状態で、容器2を倒しても、内容物が注出口6から漏出するのを抑制することができる。この場合、弁体54の外周縁と注出口6の内周縁とが、弾性ヒンジ部56との接続部分を除いた全域に亘って第1弱化部61を介して連結されているので、第1弱化部61を破断した後に、弁体54の外周縁が、例えば第1弱化部61の破断時に形成されたバリ部分上に載ったり、バリ部分に引っ掛かったりすることとなる。そのため、弁体54の、注出口6に対する容器2の外側に向けた移動は許容される一方、容器2の内側に向けた移動は抑えることが可能になる。これにより、第1弱化部61の破断後に、弁体54の外周縁が、上述したようにバリ部分上に載る等することから、弁体54と注出口6との間に径方向の隙間が形成されるのを抑制し、上述した作用効果がより奏功される。また、弁体54を容器2の内側から支持する弁座を注出部材に設けなくても、容器2の内側に向けた弁体54の移動を抑制することができ、部品点数を削減して低コスト化を図ることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0047】
例えば、上述した実施形態では、第2注出筒41内に中栓部材51を別体で配設した構成について説明したが、中栓部材51を配設しない構成であっても構わない。
また、上述した実施形態では、第2ヒンジ部8が主ヒンジ部83及び副ヒンジ部84を備える構成について説明したが、これに限らず、指掛け部が形成されていれば、適宜設計変更が可能である。
【0048】
また、上述した実施形態では、主ヒンジ部83及び副ヒンジ部84の双方に指掛け部86a,88aを形成した場合について説明したが、これに限らず、主ヒンジ部83及び副ヒンジ部84の少なくとも一方に指掛け部を形成しても構わない。
さらに、指掛け部は、平坦面に限らず、傾斜面等であっても構わない。
【0049】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…キャップ
2…容器
2a…口部
3…連通口
4…キャップ本体
5…第1ヒンジ部
6…注出口
7…注出部材
8…第2ヒンジ部
9…オーバーキャップ
54…弁体
56…弾性ヒンジ部
61…第1弱化部
81…操作部
86a,88a…指掛け部
O1…キャップ軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6