特許第6335713号(P6335713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335713
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】クローラ走行装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/12 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   B62D55/12 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-159706(P2014-159706)
(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2016-37075(P2016-37075A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2016年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敬宏
(72)【発明者】
【氏名】中務 貴裕
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−008084(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0145239(US,A1)
【文献】 特開平11−208537(JP,A)
【文献】 特開2010−058535(JP,A)
【文献】 特開2010−023559(JP,A)
【文献】 特開平10−129544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラベルトを駆動する駆動スプロケットを備え、
前記駆動スプロケットは、複数のセクタスプロケットを備えて前記駆動スプロケットの周方向に分割可能に構成し、
前記セクタスプロケットのそれぞれは、駆動軸に連結するハブを形成する分割ハブと、前記クローラベルトに作用するリムを形成する分割リムと、前記分割ハブと前記分割リムとを繋ぐ所定数のスポークとを一体形成しており、
前記所定数のスポークによって前記駆動スプロケットの周方向に区画された複数の開口を有しており、
前記分割ハブが前記分割リムよりも前記駆動軸の側に偏倚しており、前記スポークの前記ハブの側が前記駆動軸から離れる方向に傾斜し、前記スポークの前記リムの側が前記リムの径方向に沿うように前記スポークを曲げ形成してあり、
前記クローラベルトが、ベルト本体と、複数の受動突起とを備え、前記複数の受動突起が、前記ベルト本体における内周側の左右中央部位に設けられており、
前記分割リムが、対応する前記クローラベルトの受動突起に押圧作用する複数の駆動突起を備えるクローラ走行装置。
【請求項2】
前記駆動スプロケットは、隣接する2つの前記セクタスプロケットの外周部を連結する連結具を備えている請求項1に記載のクローラ走行装置。
【請求項3】
前記連結具をプレートで構成し、
前記セクタスプロケットのそれぞれは、それらの前記外周部の外側面に、前記プレートの係入を許容する凹部を形成している請求項2に記載のクローラ走行装置。
【請求項4】
前記スポークのそれぞれは、リム側ほど前記周方向の幅が広くなるように形成している請求項1〜3のいずれか一つに記載のクローラ走行装置。
【請求項5】
前記駆動スプロケットは、隣接する2つの前記スポークにわたる状態で前記ハブからリム側に延出する補強部を備えている請求項1〜4のいずれか一つに記載のクローラ走行装置。
【請求項6】
前記駆動スプロケットは、隣接する2つの前記セクタスプロケットの間に隙間を有するように構成している請求項1〜5のいずれか一つに記載のクローラ走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラベルトを駆動する駆動スプロケットを備えたクローラ走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなクローラ走行装置においては、駆動スプロケットを、駆動軸にボルト連結するディスク部と、このディスク部の外周部部分にリング状に配置した状態でボルト連結する3枚のスプロケット部により構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−208537号公報(段落番号0015、図1図4図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、走行停止時にクローラベルトに作用しないスプロケット部が存在することになる。そのため、例えば、長期の使用などに起因してスプロケット部に損耗が生じた場合には、クローラベルトに作用していないスプロケット部を取り外して交換し、その後、クローラベルトが交換後のスプロケット部に作用し、交換前のスプロケット部には作用しないようにクローラベルトを回動させるようにすれば、クローラ走行装置からクローラベルトを取り外す手間を要することなく、全てのスプロケット部を交換することができる。
【0005】
つまり、上記の構成では、駆動スプロケットを、ディスク部と3枚のスプロケット部との4分割構造に構成することにより、スプロケット部の交換などの駆動スプロケットに対するメンテナンス性を向上させている。
【0006】
ところで、後部に耕耘装置などの作業装置を連結して作業を行うトラクタなどの作業車においては、湿田や軟弱な圃場などの作業地での走破力の向上などを図るために、後輪の代わりにクローラ走行装置を備えたセミクローラ仕様などに構成したものがある。このような作業車に、上記構成の駆動スプロケットを備えたクローラ走行装置を採用すると、左右の駆動スプロケットの間に位置する駆動軸ケースやトランスミッションケースなどに付着した泥などを除去する際に、駆動軸ケースやトランスミッションケースなどに対する後方からの作業は後部の作業装置によって阻害され、左右の横外方からの作業は左右の駆動スプロケットによって阻害されることになる。
【0007】
つまり、上記の構成では、左右の駆動スプロケットの間に位置する駆動軸ケースやトランスミッションケースなどに対するメンテナンス性が低下する不都合を招くことになる。
【0008】
本発明の目的は、駆動スプロケットに対する良好なメンテナンス性を確保しながら、駆動軸ケースやトランスミッションケースなどに対するメンテナンス性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題解決手段は、
クローラベルトを駆動する駆動スプロケットを備え、
前記駆動スプロケットは、複数のセクタスプロケットを備えて前記駆動スプロケットの周方向に分割可能に構成し、
前記セクタスプロケットのそれぞれは、駆動軸に連結するハブを形成する分割ハブと、前記クローラベルトに作用するリムを形成する分割リムと、前記分割ハブと前記分割リムとを繋ぐ所定数のスポークとを一体形成しており、
前記所定数のスポークによって前記駆動スプロケットの周方向に区画された複数の開口を有しており、
前記分割ハブが前記分割リムよりも前記駆動軸の側に偏倚しており、前記スポークの前記ハブの側が前記駆動軸から離れる方向に傾斜し、前記スポークの前記リムの側が前記リムの径方向に沿うように前記スポークを曲げ形成しており、
前記クローラベルトが、ベルト本体と、複数の受動突起とを備え、前記複数の受動突起が、前記ベルト本体における内周側の左右中央部位に設けられており、
前記分割リムが、対応する前記クローラベルトの受動突起に押圧作用する複数の駆動突起を備える
【0010】
この手段によると、走行停止時にクローラベルトに作用しないセクタスプロケットが存在することになる。そのため、例えば、長期の使用などに起因してセクタスプロケットに損耗が生じた場合には、先ず、クローラベルトに作用していないセクタスプロケットを取り外して交換する。次に、クローラベルトに交換後のセクタスプロケットが作用し、交換前のセクタスプロケットが作用しないようにクローラベルトを回動させる。そして、クローラベルトに作用していない未交換のセクタスプロケットを交換する。これにより、クローラ走行装置からクローラベルトを取り外す手間を要することなく、全てのセクタスプロケットを交換することができる。
【0011】
そして、各セクタスプロケットを駆動軸に連結して駆動スプロケットを構成した状態では、駆動スプロケットが、そのハブとリムとの間に、複数のスポークによって駆動スプロケットの周方向に区画された複数の開口を有するようになる。
【0012】
これにより、本発明に係るクローラ走行装置を、後部に耕耘装置などの作業装置を連結して作業を行うトラクタなどの作業車に採用すると、左右の駆動スプロケットの間に位置する駆動軸ケースやトランスミッションケースなどに付着した泥などを除去する除去作業などを行う場合には、左右のクローラ走行装置の駆動スプロケットが有する複数の開口を利用して、それらの開口から容易に行うことができる。
【0013】
その結果、駆動スプロケットに対する良好なメンテナンス性を確保しながら、駆動軸ケースやトランスミッションケースなどに対するメンテナンス性を向上させることができる。
【0014】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記駆動スプロケットは、隣接する2つの前記セクタスプロケットの外周部を連結する連結具を備えている。
【0015】
この手段によると、駆動スプロケットを周方向に分割可能に構成しながらも、駆動スプロケットにおけるクローラベルトに作用する外周部の強度及び保形性を高めることができる。又、クローラベルトの駆動時に各セクタスプロケットに掛かる負荷を、連結具を介して隣接するセクタスプロケットに分散させることができる。これにより、駆動スプロケットの外周部をクローラベルトに長期にわたって適正に作用させることができる。
【0016】
その結果、駆動スプロケットの耐久性を向上させることができ、駆動スプロケットによるクローラベルトの駆動を長期にわたって良好に行わせることができる。
【0017】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記連結具をプレートで構成し、
前記セクタスプロケットのそれぞれは、それらの前記外周部の外側面に、前記プレートの係入を許容する凹部を形成している。
【0018】
この手段によると、隣接する2つのセクタスプロケットにおける外周部の外側面をプレートで連結することから、本発明に係るクローラ走行装置を作業車に採用した場合における、車体横外方からのプレートによる隣接するセクタスプロケットの連結及び連結解除が行い易くなる。
【0019】
そして、隣接するセクタスプロケットをプレートで連結した状態では、隣接するセクタスプロケットにおける外周部同士の、駆動スプロケットの回転軸心方向での位置ずれと、駆動スプロケットの周方向での位置ずれと、駆動スプロケットの径方向での位置ずれとを規制することができる。これにより、クローラベルトに作用する駆動スプロケットの外周部の保形性を更に高めることができる。
【0020】
その結果、セクタスプロケットの交換などのメンテナンス性を確保しながら、駆動スプロケットの外周部をより適正にクローラベルトに作用させることができ、駆動スプロケットによるクローラベルトの駆動をより良好に行わせることができる。
【0021】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記スポークのそれぞれは、リム側ほど前記周方向の幅が広くなるように形成している。
【0022】
この手段によると、クローラベルトに作用する駆動スプロケットの外周部の強度を高めることができる。
【0023】
その結果、駆動スプロケットの耐久性を向上させることができる。
【0024】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記駆動スプロケットは、隣接する2つの前記スポークにわたる状態で前記ハブからリム側に延出する補強部を備えている。
【0025】
この手段によると、駆動軸に連結する駆動スプロケットのハブ側の強度を高めることができる。
【0026】
その結果、駆動スプロケットの耐久性を向上させることができる。
【0027】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記駆動スプロケットは、隣接する2つの前記セクタスプロケットの間に隙間を有するように構成している。
【0028】
この手段によると、各セクタスプロケットにおいて、駆動スプロケットの周方向に製造誤差が生じた場合には、その製造誤差を、隣接する2つのセクタスプロケットの間に確保された隙間によって吸収することができる。
【0029】
これにより、各セクタスプロケットを駆動軸に連結して駆動スプロケットを構成した状態では、各セクタスプロケットの製造誤差にかかわらず、駆動スプロケットを円形に形成することができ、駆動スプロケットの外周部をクローラベルトに適正に作用させることができる。
【0030】
その結果、駆動スプロケットによるクローラベルトの駆動を円滑に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】クローラ走行装置を備えた作業車の左側面図である。
図2】クローラ走行装置の一部縦断左側面図である。
図3】クローラ走行装置の縦断背面図である。
図4】クローラ走行装置の分解斜視図である。
図5】駆動スプロケットの分解斜視図である。
図6】セクタスプロケットの正面図である。
図7】セクタスプロケットの背面図である。
図8】連結具によるセクタスプロケットの連結状態を示す駆動スプロケットの要部正面図である。
図9】連結具によるセクタスプロケットの連結状態を示す図8のIX−IX断面図である。
図10】ガイド部材の側面図である。
図11】ガイド部材の正面図である。
図12】前側遊輪の連結構造を示す要部の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係るクローラ走行装置を、作業車の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1に示すように、本実施形態で例示するトラクタは、車体フレーム1の前半部に原動部2を備えている。又、車体フレーム1の後半部に搭乗運転部3を備えている。そして、車体フレーム1における前部側の左右両側部に駆動可能で操舵可能な前輪4を配備している。又、車体フレーム1における後部側の左右両側部に駆動可能なクローラ走行装置5を配備している。これにより、左右の前輪4と左右のクローラ走行装置5とを備えるセミクローラ仕様に構成している。
【0034】
図1〜3に示すように、車体フレーム1は、その後部側をトランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)6により構成している。T/Mケース6は、その後部の左右両側部に、T/Mケース6の内部から左右に延出する左右の駆動軸7を支持する駆動軸ケース8を装備している。
【0035】
図1に示すように、車体フレーム1の後部には、ロータリ耕耘装置やプラウなどの作業装置(図示せず)の連結装備を可能にするリンク機構9、リンク機構9を介した作業装置の昇降操作を可能にする油圧式の昇降機構(図示せず)、及び、車体フレーム1の後部にロータリ耕耘装置などの駆動型の作業装置を連結した場合に作業装置への作業用動力の取り出しを可能にするPTO軸(図示せず)、などを装備している。
【0036】
図1〜4に示すように、左右の各クローラ走行装置5は、三角形状に形成したトラックフレーム10、ゴム製のクローラベルト11、クローラベルト11を駆動する駆動スプロケット12、駆動スプロケット12の前下方に位置してクローラベルト11を回動案内する前側遊輪13、駆動スプロケット12の後下方に位置してクローラベルト11を回動案内する後側遊輪14、及び、前側遊輪13と後側遊輪14との間に位置してクローラベルト11を回動案内する3つの転輪15、などを備えている。
【0037】
左右の各クローラ走行装置5において、トラックフレーム10は、その上部から車体フレーム1に向けて延出する左右向きの連結軸16を備えている。連結軸16は、対応する駆動軸ケース8にボルト連結した支持部材17のボス部17Aに内嵌して抜け止め連結している。
【0038】
図1〜3に示すように、左右の各クローラ走行装置5において、クローラベルト11は、ベルト本体11Aと複数のラグ11Bと複数の受動突起11Cとを備えている。ベルト本体11Aは、ゴム材などから無端帯状に形成している。複数のラグ11Bは、ベルト本体11Aの外周側に所定のパターンで外向きに突出形成している。複数の受動突起11Cは、ベルト本体11Aにおける内周側の左右中央部位に、左右2列で、クローラベルト11の回動方向に一定間隔をあけた状態で内向きに突出形成している。
【0039】
駆動スプロケット12は、対応する駆動軸7に連結するハブ12Aと、対応するクローラベルト11に作用するリム12Bと、ハブ12Aとリム12Bとを繋ぐ6本のスポーク12Cとを備えている。ハブ12Aは、対応する駆動軸7の延出端に備えたフランジ状の連結部7Aにボルト連結している。リム12Bは、対応するクローラベルト11の受動突起11Cに押圧作用する複数の駆動突起12Baを備えている。複数の駆動突起12Baは、リム12Bの外周側において、クローラベルト11の左右の受動突起11Cにわたる幅広の左右幅を有して外向きに突出形成している。そして、対応するクローラベルト11の駆動時にクローラベルト11の回動方向で隣接する2つの受動突起11Cの間に入り込むように、駆動スプロケット12の周方向(回転方向)に一定間隔をあけて整列配置している。6本のスポーク12Cは、駆動スプロケット12の周方向に一定間隔をあけてハブ12Aからリム12Bにわたって放射状に延出している。
【0040】
上記の構成により、駆動スプロケット12を回転させると、その回転に伴って、駆動スプロケット12の各駆動突起12Baが、対応するクローラベルト11の回動方向で隣接する2つの受動突起11Cの間に入り込んで、それらの回転方向下手側に位置する受動突起11Cを押圧する。これにより、各クローラベルト11を駆動スプロケット12の回転方向に回動させることができる。
【0041】
図1〜4に示すように、左右の各クローラ走行装置5において、前側遊輪13は、前側遊輪13を前下方に突出付勢する付勢機構18を介してトラックフレーム10の前端部に装備することで、駆動スプロケット12の前下方に配置している。又、クローラベルト11における左右2列の受動突起11Cの間に入り込む内転輪型に構成している。これにより、クローラベルト11を緊張状態に維持するとともに、前側遊輪13に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレを防止している。
【0042】
後側遊輪14は、トラックフレーム10の後端部に装備することで駆動スプロケット12の後下方に配置している。又、クローラベルト11における左右2列の受動突起11Cの間に入り込む内転輪型に構成している。これにより、後側遊輪14に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレを防止している。
【0043】
各転輪15は、トラックフレーム10の下部に前後方向に一定間隔をあけて配備することで、前側遊輪13と後側遊輪14との間に配置している。又、クローラベルト11に形成した各受動突起11Cの左右に隣接する左右の輪体19を備えた外転輪型に構成している。これにより、各転輪15に対するクローラベルト11の左右方向への位置ズレを防止している。
【0044】
図1〜3及び図5〜9に示すように、左右の各駆動スプロケット12は、扇形に形成した3つのセクタスプロケット20を備えて、駆動スプロケット12の周方向に3等分に分割可能な3分割構造に構成している。
【0045】
これにより、走行停止時にはクローラベルト11に作用しないセクタスプロケット20が存在することになる。そのため、例えば、長期の使用などに起因してセクタスプロケット20に損耗などが生じた場合には、先ず、クローラベルト11に作用していないセクタスプロケット20を取り外して交換する。次に、クローラベルト11に交換後のセクタスプロケット20が作用し、交換前のセクタスプロケット20が作用しないようにクローラベルト11を回動させる。そして、クローラベルト11に作用していない未交換のセクタスプロケット20を交換する。これにより、クローラ走行装置5からクローラベルト11を取り外す手間を要することなく、全てのセクタスプロケット20を交換することができる。
【0046】
尚、各駆動スプロケット12の分割基準線Lは、6本のスポーク12Cのうちの一つ置きに位置する所定の3本のスポーク12Cにおける駆動スプロケット12の周方向での中心に位置するように設定している。
【0047】
図5〜9に示すように、各セクタスプロケット20は、同形状の鋳造製で、ハブ12Aを形成する分割ハブ20Aと、リム12Bを形成する分割リム20Bと、分割ハブ20Aと分割リム20Bとを繋ぐ単一の第1スポーク20C及び一対の第2スポーク20Dとを一体形成している。そして、それらの分割ハブ20Aを駆動軸7の連結部7Aに連結して駆動スプロケット12を構成した状態では、隣接する2つのセクタスプロケット20の間に隙間21を有するように構成している。
【0048】
この構成により、セクタスプロケット20のそれぞれに、分割ハブ20Aと分割リム20Bと各スポーク20C,20Dとを一体形成した共通の鋳造品を採用することができる。その結果、部品管理の容易化、及び、金型の共通化によるコストの削減、などを図ることができる。
【0049】
又、各セクタスプロケット20において、駆動スプロケット12の周方向に製造誤差が生じた場合には、その製造誤差を、各セクタスプロケット20を駆動軸7の連結部7Aに連結して駆動スプロケット12を構成した場合に隣接するセクタスプロケット20の間に確保される隙間21によって吸収することができる。
【0050】
そのため、駆動スプロケット12を構成した状態では、各セクタスプロケット20の製造誤差にかかわらず、駆動スプロケット12を円形に形成することができる。そして、駆動スプロケット12の外周部に備えた各駆動突起12Baなどを、クローラベルト11の各受動突起11Cなどに適正に作用させることができる。その結果、駆動スプロケット12によるクローラベルト11の駆動を良好に行わせることができる。
【0051】
図1〜3及び図5〜9に示すように、各セクタスプロケット20において、第1スポーク20Cは、分割ハブ20Aにおける駆動スプロケット12の周方向での中間部と、分割リム20Bにおける駆動スプロケット12の周方向での中間部とにわたっている。そして、そのリム側ほど駆動スプロケット12の周方向での幅が広くなる先拡がり形状に形成している。一対の第2スポーク20Dは、分割ハブ20Aと分割リム20Bとにおける駆動スプロケット12の周方向での同じ側の端部同士にわたっている。そして、そのリム側ほど駆動スプロケット12の周方向での幅が広くなる先拡がり形状に形成している。第1スポーク20C及び一対の第2スポーク20Dは、第1スポーク20Cにおける駆動スプロケット12の周方向での幅寸法が、第2スポーク20Dにおける駆動スプロケット12の周方向での幅寸法の約2倍になるように形成している。これにより、駆動スプロケット12を構成した状態では、対応するセクタスプロケット20の第2スポーク20Dが隣接して、第1スポーク20Cと同じ先拡がり形状の外形を有する複合スポークを形成するように構成している。
【0052】
つまり、駆動スプロケット12を構成した状態では、第1スポーク20C又は隣接する2つの第2スポーク20Dが、駆動スプロケット12の各スポーク12Cを、駆動スプロケット12の周方向に一定間隔をあけて放射状に位置する配置で、同じ先拡がり形状の外形を有するように構成している。そして、駆動スプロケット12が、そのハブ12Aとリム12Bとの間に、各スポーク12Cによって駆動スプロケット12の周方向に同幅に区画された6つの大きい開口22を有するように構成している。
【0053】
この構成により、クローラベルト11に作用する駆動スプロケット12の外周側の強度を高めることができる。その結果、駆動スプロケット12の耐久性を向上させることができる。
【0054】
又、左右の駆動スプロケット12が6つの大きい開口22を有することにより、左右の駆動スプロケット12の間に位置する駆動軸ケース8やT/Mケース6などに付着した泥などを除去する除去作業などを行う場合には、左右の駆動スプロケット12の各開口22を利用して、それらの開口22から容易に行うことができる。
【0055】
図2図3及び図5〜9に示すように、左右の各駆動スプロケット12は、隣接する2つのスポーク12C(第1スポーク20Cと第2スポーク20D)にわたる状態でハブ12Aからリム側に延出する補強部12Dを備えている。
【0056】
これにより、駆動軸7の連結部7Aに連結する駆動スプロケット12のハブ側の強度を高めることができる。その結果、駆動スプロケット12の耐久性を向上させることができる。
【0057】
図3図5図7及び図9に示すように、各セクタスプロケット20は、それらの分割ハブ20Aが分割リム20Bよりも駆動軸側に偏倚している。そして、第1スポーク20C及び一対の第2スポーク20Dを、それらのハブ側が駆動軸7から離れる方向に傾斜し、それらのリム側がリム12Bの径方向に沿うように曲げ形成している。又、第1スポーク20C及び一対の第2スポーク20Dにおける駆動スプロケット12の周方向での両端部に、分割ハブ20Aから分割リム20Bにわたる第1リブ20Eを一体形成している。更に、セクタスプロケット20のハブ側において第1スポーク20Cと第2スポーク20Dとにわたる補強部12Dのリム側端部に、対向する第1リブ20Eにわたる第2リブ20Fを一体形成している。
【0058】
つまり、各セクタスプロケット20を、それぞれが高い強度を有するように構成している。そして、各セクタスプロケット20の分割ハブ20Aを駆動軸7の連結部7Aに連結して駆動スプロケット12を構成した状態では、クローラベルト11に作用する大径のリム側が、駆動軸7に連結する小径のハブ側よりも車体の横外側に位置するように構成している。
【0059】
これにより、左右の駆動スプロケット12を、それらのリム側がハブ側よりも車体の横外側に位置する形状に構成しながら、高い強度を有するように構成することができる。その結果、左右のクローラ走行装置5の離間距離を大きくすることができ、車体の安定性を向上させることができる。
【0060】
図1〜3及び図5〜9に示すように、左右の各駆動スプロケット12は、隣接する2つのセクタスプロケット20の外周部を連結する連結具23を備えている。各連結具23は、小判形のプレートにより構成している。そして、各セクタスプロケット20における外周部の一部を形成する第2スポーク20Dの分割リム側端部20Daにボルト連結可能に構成している。
【0061】
各セクタスプロケット20は、各第2スポーク20Dにおける分割リム側端部20Daの外側面に、連結具(プレート)23の係入を許容する凹部20Gを形成している。各凹部20Gは、連結具23における長手方向の略半部に対応する半小判形に凹入形成している。又、連結具23とボルト連結可能に構成している。そして、駆動スプロケット12を構成した状態では、隣接する凹部20Gとともに、連結具23の形状に対応する小判形の凹部を形成するように構成している。
【0062】
各連結具23及び各凹部20Gは、連結具23を凹部20Gに係入してボルト連結した状態では、それらの外側面が面一になり、又、隣接する2つのセクタスプロケット20の間に前述した隙間21を確保するように構成している。
【0063】
上記の構成により、各駆動スプロケット12を、3つのセクタスプロケット20による3分割構造に構成しながらも、隣接するセクタスプロケット20の外周部を連結具23にて連結することにより、クローラベルト11に作用する駆動スプロケット12の外周部を補強することができる。又、クローラベルト11の駆動時に各セクタスプロケット20に掛かる負荷を、連結具23を介して隣接するセクタスプロケット20に分散させることができる。しかも、隣接するセクタスプロケット20の連結具23による連結及び連結解除を車体の横外方から容易に行うことができる。そして、隣接するセクタスプロケット20を連結具23で連結した状態では、隣接するセクタスプロケット20における外周部同士の、駆動軸7の延出方向での位置ずれと、駆動スプロケット12の周方向での位置ずれと、駆動スプロケット12の径方向での位置ずれとを規制することができる。
【0064】
これにより、セクタスプロケット20の交換などのメンテナンス性を確保しながら、クローラベルト11に作用する駆動スプロケット12の外周部の強度及び保形性などを高めることができる。その結果、各駆動スプロケット12における外周部の各駆動突起12Baなどをクローラベルト11に長期にわたって適正に作用させることができ、各駆動スプロケット12によるクローラベルト11の駆動を良好に行わせることができる。
【0065】
図1図2図4及び図10〜12に示すように、左右の各クローラ走行装置5は、トラックフレーム10の底部に対して着脱可能なクローラベルト用のガイド部材24を備えている。
【0066】
各ガイド部材24は、前後対称形状で左右対称形状の鋳造製で、トラックフレーム10の下方においてクローラベルト11における左右2列の受動突起11Cの間に入り込むガイド部24Aと、ガイド部24Aからトラックフレーム10に向けて延出する前後2本のアーム部24Bとを一体形成している。そして、各アーム部24Bの延出端を、トラックフレーム10の底部に対してボルト連結可能に形成している。
【0067】
各ガイド部材24において、ガイド部24Aは、クローラベルト11に対する前後方向へのガイド機能を高めるために、前後両端の転輪15にわたる長尺の前後長さを有している。そして、前後両端部24a、24bの形状を、ガイド部24Aの下方へのクローラベルト11の案内を円滑にするために、同じ状態で上方に反り上がる形状に設定している。又、前後方向視での下部側の形状を、左右2列の受動突起11Cの間に入り込み易い左右対称の下窄み形状に設定している。更に、前後方向視での上部側の形状を、泥などが堆積し難い左右対称の上窄み形状に設定している。そして、各転輪15に隣接する前後両端側と前後中間側の所定領域24cの上下幅よりも、それらの間に位置する所定領域24dの上下幅を短くすることにより、各転輪15に対するクローラベルト11の左右方向での位置ずれを防止する機能を確保しながら軽量化を図れるようにしている。
【0068】
前後のアーム部24Bは、ガイド部24Aの前後中心から等距離の位置に分散形成している。そして、前後一方のアーム部24Bと前後他方のアーム部24Bとを、同じ左右対称形状で前後を反転させた形状に形成している。
【0069】
つまり、左右のガイド部材24を、ガイド部24Aと前後2本のアーム部24Bとを一体形成した共通の鋳造品により構成している。その結果、部品管理の容易化、及び、金型の共通化によるコストの削減、などを図ることができる。
【0070】
そして、例えば、走行時間の長い前進走行時に作用するガイド部24Aの前端部24aが著しく摩耗した場合には、ガイド部材24を反転させて、摩耗の少ないガイド部24Aの後端側24bを前端部24aにした状態で使用することができる。これにより、ガイド部材24を、その全体が摩耗限界に達するまで無駄なく使用することができる。
【0071】
図4及び図12に示すように、左右の各クローラ走行装置5において、前側遊輪13は、その支軸25を支持する左右のブラケット26を、付勢機構18に備えた左右の支持部材27に着脱可能にボルト連結している。支軸25は、前側遊輪13との間に介装したベアリング(図示せず)へのグリースの供給を可能にする内部油路(図示せず)を備えている。又、車体外方側の端部に、その内部油路へのグリースの注入を可能にするグリースニップル28と、グリースニップル28を覆う袋ナット29とを備えている。つまり、このクローラ走行装置5には、グリース潤滑式の前側遊輪13を使用している。
【0072】
図示は省略するが、クローラ走行装置5に使用する前側遊輪13としては、グリースの代わりにオイルを使用するオイル潤滑式のものがある。そして、このオイル潤滑式の前側遊輪も、グリース潤滑式の前側遊輪13と同様の連結構造で、その支軸を支持する左右のブラケットを、付勢機構18に備えた左右の支持部材27に着脱可能にボルト連結するように構成している。
【0073】
つまり、グリース潤滑式の前側遊輪13とオイル潤滑式の前側遊輪との付勢機構18の支持部材27に対する連結構造を統一して互換性を持たせている。これにより、使用者の希望する潤滑仕様の前側遊輪13に容易に交換することができる。
【0074】
〔別実施形態〕
【0075】
〔1〕クローラ走行装置5は、上記実施形態で例示した、作業車の後輪に代えて使用する後部用セミタイプに構成したもの以外に、作業車の前輪に代えて使用する前部用セミタイプに構成したもの、作業車の前輪及び後輪に代えて使用するフルタイプに構成したもの、又は、歩行型作業機の車輪に代えて使用する小型に構成したもの、などであってもよい。
【0076】
〔2〕駆動スプロケット12は、分割ハブ20Aと分割リム20Bと所定数のスポーク20C,20Dとを一体形成した複数のセクタスプロケット20を備えて、駆動スプロケット12の周方向に2分割又は4分割以上に分割可能に構成してもよい。
【0077】
〔3〕駆動スプロケット12は、その分割基準線Lを隣接する2本のスポーク12Cの間に位置するように設定したものであってもよい。この構成では、各セクタスプロケット20には、第2スポーク20Dを備えずに所定数の第1スポーク20Cを備えることになる。そして、各第1スポーク20Cが駆動スプロケット12の各スポーク12Cとして機能することになる。
【0078】
〔4〕駆動スプロケット12は、隣接する2つのセクタスプロケット20の間に隙間21が生じないように構成してもよい。
【0079】
〔5〕駆動スプロケット12は、隣接する2つのスポーク20C,20Dにわたる状態でリム12Bからハブ側に延出する補強部を備えるように構成してもよい。
【0080】
〔6〕駆動スプロケット12は、隣接する2つのセクタスプロケット20の外周部を連結する連結具23を備えていないものであってもよい。
【0081】
〔7〕駆動スプロケット12は、隣接する2つのセクタスプロケット20の分割リム20Bを連結具23にて連結するように構成してもよい。
【0082】
〔8〕駆動スプロケット12は、各セクタスプロケット20にプレート(連結具23)の係入を許容する凹部20Gを形成せずに、隣接する2つのセクタスプロケット20の外周部をプレート(連結具23)にて連結するように構成してもよい。
【0083】
〔9〕駆動スプロケット12は、隣接する2つのセクタスプロケット20の一方の対向面に形成する係合凸部と他方の対向面に形成する係合凹部とから連結具23を構成するものであってもよい。
【0084】
〔10〕連結具23をノックピンで構成し、隣接する2つのセクタスプロケット20の対向面にノックピン用の係合穴を形成して、隣接する2つのセクタスプロケット20の外周部をノックピンで連結するように構成してもよい。
【0085】
〔11〕連結具23にプレートを採用し、各セクタスプロケット20にプレート係入用の凹部20Gを形成する構成においては、プレート23を凹部20Gに係入した場合に、プレート23の外周面が凹部20Gの内周面に接触するように構成してもよい。
【0086】
〔12〕セクタスプロケット20の構成及び形状などは、駆動スプロケット12の分割数などに応じて種々の変更が可能である。例えば、セクタスプロケット20を、その両端の第2スポーク20Dの間に複数の第1スポーク20Cを備えるように構成してもよい。
【0087】
〔13〕スポーク20C,20Dは、それらの駆動スプロケット12の周方向での幅が一定になるように形成してもよい。又、それらの駆動スプロケット12の周方向での幅が、ハブ側ほど広くなるように形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係るクローラ走行装置は、前輪又は後輪に代えてクローラ走行装置を採用したセミクローラ仕様のトラクタや田植機などの作業車、前輪及び後輪に代えて車体の前後にわたるクローラ走行装置を採用したフルクローラ仕様のトラクタやコンバインなどの作業車、車輪に代えてクローラ走行装置を採用した歩行型作業機、又は、推進装置としてクローラ走行装置を採用したバックホーなどの作業車、などに適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
7 駆動軸
11 クローラベルト
12 駆動スプロケット
12A ハブ
12B リム
12D 補強部
20 セクタスプロケット
20A 分割ハブ
20B 分割リム
20C スポーク
20D スポーク
20G 凹部
21 隙間
23 連結具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12