特許第6335715号(P6335715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335715
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】印刷を行う機械の色制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/00 20060101AFI20180521BHJP
   B41F 33/10 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B41F33/00 238
   B41F33/10 S
   B41F33/00 246
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-166376(P2014-166376)
(22)【出願日】2014年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-39888(P2015-39888A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2017年2月22日
(31)【優先権主張番号】10 2013 014 154.0
(32)【優先日】2013年8月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート シュナイダー
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−223322(JP,A)
【文献】 特開2006−110962(JP,A)
【文献】 米国特許第03393618(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 33/00
B41F 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷すべき表面(20)上の色面(22)を色測定装置(30)により捕捉することによって、コンピュータ(41)を用いて実施される、印刷を行う機械の色制御方法において、
前記印刷すべき表面は被印刷材(20)であり、
前記被印刷材(20)を不透明白色で被覆し、
前記色測定装置(30)は、不透明白色の複数の色測定値を捕捉し、
前記コンピュータ(41)は、捕捉した不透明白色の前記複数の色測定値を、相互にまたは不透明白色値の参照色値と比較し、比較により検出された偏差を該コンピュータ(41)に格納し、
不透明白色により被覆された前記被印刷材(20)の上に、色測定フィールド(26)を上塗りし、
上塗りした該色測定フィールド(26)を、前記色測定装置(30)により捕捉し、
前記コンピュータ(41)は、着色を制御するために、不透明白色が下塗りされた前記色測定フィールド(26)の色測定値を印刷原稿の目標色値と比較する際、検出され記憶された前記偏差の影響を考慮する、
ことを特徴とする、
コンピュータ(41)による印刷機の色制御方法。
【請求項2】
印刷すべき表面(20)上の色面(22)を色測定装置(30)により捕捉することによって、コンピュータ(41)を用いて実施される、印刷を行う機械の色制御方法において、
前記印刷すべき表面は被印刷材(20)であり、
前記被印刷材(20)を不透明白色で被覆し、
前記色測定装置(30)は、不透明白色の複数の色測定値を捕捉し、
前記コンピュータ(41)は、捕捉した不透明白色の前記複数の色測定値を、相互にまたは不透明白色値の参照色値と比較し、
不透明白色により被覆された前記被印刷材(20)の上に、色測定フィールド(26)を上塗りし、
前記コンピュータ(41)は、不透明白色の前記複数の色測定値相互間の偏差または前記複数の色測定値と不透明白色の参照色値との偏差を補償制御し、
前記不透明白色の補償制御後、該不透明白色が下塗りされた前記色測定フィールド(26)を、色測定装置(30)により捕捉する、
ことを特徴とする、
コンピュータ(41)による印刷機の色制御方法。
【請求項3】
付加的にシーケンシャルまたはパラレルに、前記コンピュータ(41)は、不透明白色の前記複数の色測定値相互間の偏差または前記複数の色測定値と不透明白色の参照色値との偏差を補償制御する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記不透明白色の補償制御後、該不透明白色が下塗りされた前記色測定フィールド(26)を、色測定装置(30)により捕捉する、請求項記載の方法。
【請求項5】
色測定フィールド(26)を備えた色測定バー(22)内の不透明白色を、または該色測定バー(22)の隣りに位置する不透明白色を、前記色測定装置(30)により捕捉する、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記参照色値は、予め定められた記憶された値、または記憶された印刷ジョブの値、または前記被印刷材(20)の幅全体において最も明るい不透明白色測定値である、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記被印刷材(20)を複数のインキゾーン(28)に分けて印刷し、
前記色測定装置(30)は、前記被印刷材(20)上の各インキゾーン(28)ごとに、または1つおきのインキゾーン(28)ごとに、1つの不透明白色測定値と、不透明白色が下塗りされた色測定フィールド(26)とを捕捉する、
請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
覆った状態の不透明白色に対する参照色値をデータベースに格納し、前記コンピュータ(41)により呼び出す、請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記コンピュータ(41)は、不透明白色の測定値を表示装置に表示し、オペレータに操作させるため該表示装置において、最も明るい不透明白色測定値を参照色値として提示する、請求項6から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
色制御において最初に、被印刷材(20)において不透明白色の着色を均質にし、その後ではじめて、不透明白色が下塗りされた色測定バー(22)の色測定フィールド(26)における色を制御する、請求項2または3記載の方法。
【請求項11】
不透明白色が下塗りされた色測定フィールド(26)の色測定値に対する不透明白色の偏差の作用を、不透明白色背景の色変動をスペクトルとして考慮することにより、前記コンピュータ(41)において考慮し、不透明白色が下塗りされた色測定フィールド(26)の色測定値の色制御の際に、前記コンピュータ(41)において考慮する、請求項1または3記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷すべき表面上の色面を色測定装置により捕捉することによって、コンピュータを用いて実施される、印刷を行う機械の色制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被印刷材上に塗布されるインキの色測定のために、色測定バーを用いてスペクトル測定を行うことは、定評のある慣用の手法である。このための前提条件となるのは、被印刷材が印刷すべき色よりも明るい一方、インキは層厚が厚くなるにつれて暗く見えるようになることである。後者は、オフセット印刷インキの場合にあてはまる。この関連において、Heidelberger Druckmaschinen AG社がImage Control(登録商標)および/またはAxis Control(登録商標)および/またはInpress Control(登録商標)の名称で、印刷機用として特にオフセット印刷機用として販売している制御方法が、当業者に知られている。
【0003】
スペクトル測定において被印刷材と塗布されたインキとの明度差を測定することにより、層厚が求められる。標準的には、被印刷材として白色の枚葉紙が用いられる。この場合には、スペクトル測定は問題なく動作する。なぜならば、薄く塗布されたインキであっても、枚葉紙の白色よりも暗く見えるからである。しかしながら被印刷材が暗い場合には、常に問題なく動作するとはかぎらない。その理由は、インキが被印刷材よりも場合によっては明るく見えてしまうからである。金属や透明シート上でのスペクトル色測定の場合にも、同じ問題が発生する。金属は反射特性を有しているので、スペクトル測定装置にとって、標準条件(0°もしくは45°の角度測定)のもとで金属は黒く見えてしまう。透明シート上でのスペクトル測定では、透明シートの下の載置面が常に透けて見えてしまう。印刷機外部で測定する場合にはそのような載置面は暗い印刷台であり、インライン測定の場合には金属シリンダである。
【0004】
このような問題は、実際の運用において、色測定バーに不透明白色ないしは乳白色を下塗りすることによって回避することができる。このようにすれば、色測定および色制御を色測定バー内で行うことができる。ただし、インキの精密かつ適正な測定と制御を保証するためには、不透明白色を均質に塗布しなければならない。不透明白色の下塗りは手作業で行われ、つまりたとえばカラーインキを用いた印刷ユニットの前段に接続された印刷ユニットにおいて、自動的な色測定および制御が実施されることなく行われる。この場合、測定バー間においても個々の測定バーのインキゾーン間においても、必然的に偏差が生じてしまう。このような偏差によって測定値の差が引き起こされ、同じ背景に基づいていることから、それらの差がインキの層厚偏差に誤って換算されてしまう。
【0005】
実際の運用において、既述の問題点に対する別の回避手法として挙げられるのは、色測定バーの所定の網目(グリッド)を、たとえば70%の網目を、不透明白色にすることである。測定過程において、不透明白色と基材とが入れ替えられる。この場合、網目は、不透明白色が背景であり、基材がインキであるかのようにみなされる。つまりこのことは、黒色の網目の階調値が、ここでは30%の階調値が、白色の被印刷材の上で測定される、ということを意味する。たしかにこのやり方によれば、ゾーン式印刷機における複数のインキゾーンを互いに比較することができ、印刷機稼働中に変動を識別することができるけれども、不透明白色自体は外部の測定機器によって、印刷機が稼働していないときに測定しなければならない。しかもこの方法は、慣用の色制御によっても機能しない。なぜならば、誤った方向に向かって制御されてしまうからである。その理由は、カラーインキの場合、層厚が厚くなるにつれて色が暗くなるのに対し、暗い背景上の不透明白色の場合、層厚が厚くなるにつれて明るくなることにある。
【0006】
さらに透明な被印刷材の場合に、紙、プラスチックなどから成る白色のバーを下敷きにすることもできる。ただし、透明でない被印刷材の場合には、このようなオプションは採用できない。
【0007】
DE 10 2007 005 018 A1には、印刷機の複製品の色制御を行う方法が開示されている。これによれば、規格に準ずる色測定において暗く見える基材が、その基材よりも明るいインキによって印刷され、インキの少なくとも1つの色値が測定量から求められる。この方法の特別な点は、少なくとも1つのインキの色値が、そのインキよりも明るい、色空間内における色位置の規定の参照値を用いて制御されることである。
【0008】
DE 197 24 171 A1には、印刷機における着色ないしは色調を制御する方法が開示されている。これによれば、印刷後に色を測定する際、印刷されていない被印刷材の不均質性が考慮される。この目的で最初に、印刷されていない被印刷材が複数の個所で測定されて、印刷されていない被印刷材における汚れなどのような、被印刷材の不均質性が検出される。次に、印刷された被印刷材が測定される。その後、印刷された被印刷材上で求められた色測定値が、印刷されていない被印刷材の測定値によって補正され、印刷されていない被印刷材上の汚れが色制御に誤った作用を及ぼさないようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE 10 2007 005 018 A1
【特許文献2】DE 197 24 171 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、印刷機のための色制御において、印刷された色よりも暗い表面または透過性の表面におけるインキも、信頼性を伴ってスペクトル測定して補償制御できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によればこの課題は、請求項1および請求項2の特徴を備えた色制御方法によって解決される。従属請求項には、本発明の有利な実施形態が記載されている。
【0012】
本発明による色制御方法によれば最初に、不透明白色で覆われた印刷すべき表面において、複数の色測定値が色測定装置により捕捉される。不透明白色面におけるこれらの色測定値が、コンピュータにおいて互いに比較され、または不透明白色の参照色値と比較される。比較において求められた偏差が、コンピュータに格納される。ついで、不透明白色により被覆された被印刷材が、色測定フィールドによって上塗りされる。そして今度はそれらの色測定値が、色測定装置によって捕捉される。不透明白色が下塗りされた色測定フィールドの着色を制御するために、印刷見本の目標値と比較する際、検出され記憶された偏差がコンピュータにより考慮される。この実施形態によれば、反射性が強く著しく暗い表面においても、インキないしは印刷色を制御することができる。
【0013】
本発明の択一的または付加的な実施形態によれば、被印刷材上で色測定装置を用いて不透明白色の複数の色測定値が捕捉される。ついで、求められた不透明白色の色測定値が、コンピュータによって互いに比較され、または不透明白色の参照色値と比較される。その後、比較によって求められた色測定値相互間の偏差が、あるいはそれらの色測定値と不透明白色参照値との偏差が、コンピュータによって補償制御されて、所定の値にされる。この方法を、先に挙げた補正方法と組み合わせることができる。この組み合わせは、たとえば第1のステップで不透明白色が制御され、制御ステップ後、理想の不透明白色に対し依然として存在している偏差が、インキを制御する際の、すなわちカラーインキと黒色を制御する際の補正値として考慮されるようにして行われる。したがって、両方の方法をパラレルにもシーケンシャルにも組み合わせることができる。しかも不透明白色とインキも、パラレルにまたはシーケンシャルに制御することができる。パラレルに制御する場合、不透明白色の予期される変化がインキに及ぼす影響を、不透明白色制御ステップにおいてインキを同時に制御するために、合わせて考慮する必要がある。インキないしは印刷色と不透明白色を同時に制御することの利点は、そのようにすることで材料と時間を節約できることである。
【0014】
本発明の別の有利な実施形態によれば、不透明白色の補償制御後、不透明白色が下塗りされた色測定フィールドが、色測定装置により捕捉される。本発明のさらに別の有用な実施形態によれば、色測定フィールドを備えた色測定バー内で、またはこの種の色測定バーの隣りで、不透明白色が捕捉される。したがってこの場合、色測定に必要とされる色測定バーは、不透明白色フィールドを補うことで、不透明白色制御にも利用される。
【0015】
本発明の目的に適ったさらに別の実施形態によれば、上述の参照色値は、予め定められた記憶された値、または記憶された印刷ジョブの値、あるいは被印刷材の幅全体において最も明るい不透明白色の値である。
【0016】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、被印刷材が複数のインキゾーンに印刷され、色測定装置は、被印刷材上の各インキゾーンごとに、または1つおきのインキゾーンごとに、1つの不透明白色測定値と、不透明白色が下塗りされた色測定フィールドとを捕捉する。
【0017】
さらに本発明の1つの有利な実施形態によれば、覆った状態の不透明白色に対する参照色値がデータベースに格納され、コンピュータにより呼び出される。
【0018】
本発明の格別有利な実施形態によれば、コンピュータは、不透明白色の測定値を表示装置に表示し、オペレータによって操作させるため、この表示装置において、最も明るい不透明白色測定値を参照色値として提示する。
【0019】
本発明によるさらに別の格別有利な実施形態によれば、色制御にあたり最初に、被印刷材上における不透明白色の着色が均質化される。その次にはじめて、不透明白色が下塗りされた色測定バーの色測定フィールドにおける色が制御される。
【0020】
本発明のさらに別の著しく有利な実施形態によれば、不透明白色が下塗りされた色測定フィールドの色測定値に対する不透明白色の偏差の作用が、不透明白色下塗りの色変動をスペクトルとして考慮することにより、コンピュータにおいて考慮され、不透明白色が下塗りされた色測定フィールドの色測定値の色制御の際に、コンピュータにおいて考慮される。別の選択肢として、色濃度値または色座標として考慮することもできる。
【0021】
次に、図面を参照しながら、実現可能な1つの実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による色測定装置の1つの実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には、本発明による色測定装置の1つの実施形態が示されている。オフセット印刷機において印刷される被印刷材20の印刷物は、色測定バー22を有している。色測定バー22の下には、不透明白色24が設けられている。色測定バー22は各インキゾーン28において、不透明白色測定のためにギャップを含んでおり、さらに他のインキ特に標準インキの測定フィールド26を有している。ギャップの代わりに色測定バー22の下に、不透明白色が印刷された測定ゾーンを設けることもできる。このようにして不透明白色と他のインキを、1つの測定プロセスにおいて測定し制御することができる。測定装置30は、被印刷材20に対し相対運動32を行い、それによって色測定バー22における測定フィールド26と不透明白色24を、個々のインキゾーン28ごとに制御装置34のために測定できるようにする。
【0024】
最初に、不透明白色24のラインが印刷される。ついで、色測定装置30により測定された種々のインキゾーン28の不透明白色24に対する色測定値が、コンピュータ41において不透明白色の参照色値と比較される。これに続いて、不透明白色24の色測定値と不透明白色参照色値との偏差がコンピュータ41により識別され、制御装置34によって制御される。その後、カラーの測定フィールド26が、これまで不透明白色24だけで形成されていた色測定バー22の上に設けられ、その際に同時に、色測定バー22以外のところに印刷画像も印刷される。ついで、それらのカラーの測定フィールド26も色測定装置30によって測定され、コンピュータ41によって、コンピュータ41内部に記憶されている目標値と比較される。カラーの色測定フィールド26と個々の色目標値との偏差が、コンピュータ41によって識別され、制御装置34によって補償制御される。
【0025】
不透明白色制御のための参照色値として、予め定められた記憶された値または記憶された印刷ジョブの値が用いられ、あるいは被印刷材20の幅全体において最も明るい不透明白色測定値が用いられる。制御装置34の記憶ユニット36に、目標値または参照値がデフォルト値38として供給される。印刷画像とともに、色測定バー22における不透明白色24ならびに色測定フィールド26内の各色の色制御のために、オフセット印刷機の調整部材に対する信号出力40が行われる。
【符号の説明】
【0026】
1 測定テーブル
2 測定テーブル表面
20 被印刷材
22 色測定バー
24 不透明白色面
26 色測定バー内の測定フィールド
28 インキゾーン
30 色測定装置
32 相対運動
34 制御装置
36 記憶ユニット
38 参照値のデフォルト値
40 調整部材に対する信号出力
41 制御コンピュータ
図1