(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無端状のクローラベルトと、前記クローラベルトを回動駆動する駆動輪と、前記クローラベルトに緊張力を付与する緊張輪と、前記クローラベルトの接地側回動部分に作用する複数の接地転輪と、前記クローラベルトの上部側回動部分に作用する上側案内転輪と、前記緊張輪による緊張力を変更調整自在な緊張力調整部と、前記駆動輪、前記緊張輪、前記接地転輪、前記上側案内転輪及び前記緊張力調整部を支持するトラックフレームとが備えられ、
前記緊張力調整部は、前記トラックフレームに対して前後位置変更自在に支持されるテンションフレームと、前記テンションフレームから横側外方に片持ち状に延設され且つ前記緊張輪をベアリングを介して回動自在に支持する支軸と、前記テンションフレームと前記緊張輪との間に位置して前記トラックフレームに対する前記テンションフレームの前後位置を変更調整自在な位置調整機構とを備え、
前記緊張輪は、径方向内方側にボス部を備え、
前記支軸のうち前記支軸の軸芯方向において前記ベアリングの前記テンションフレーム側端面と前記ボス部の前記テンションフレーム側端面との間に位置する部分に、前記支軸の外周部に沿って延び、かつ、前記支軸と前記ボス部とに亘る状態でカラー部材が外嵌装着され、
前記カラー部材に、前記支軸の外周部に沿って延びる状態で前記ボス部の前記テンションフレーム側端面よりも前記テンションフレーム側に突出する突出部分が備えられているクローラ走行装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来構成では、例えば、緊張輪とクローラベルトとの間に石や他の夾雑物が挟み込まれてクローラベルトに異常に大きな張力が作用することがあると、緊張輪が強制的に傾斜して支軸が撓み変形するような力が作用して、カラー部材の径方向内方側に位置する支軸の段差部に大きな応力が掛かり、支軸が損傷するおそれがあった。
【0006】
説明を加えると、カラー部材は、テンションフレーム側の端部が緊張輪のボス部の端部と略同じ位置になるように形成されていたから、支軸の段差部における大径側の部分に対するカラー部材の掛かり代が少なく、上記したような無理な外力が掛かった場合に、少ない掛かり代でカラー部材が接当している狭い範囲に応力が集中することになる。そして、このような状態が繰り返し発生すると、支軸の段差部に亀裂が発生する等、支軸が損傷するおそれがあった。
【0007】
又、上記従来構成では、上側案内転輪がクローラベルトの上部側回動部分に対して常時作用するので、緊張輪とクローラベルトとの間に石や他の夾雑物が挟み込まれたような場合には、すぐにクローラベルトに異常に大きな張力が作用するおそれが大となっていた。その結果、緊張輪が強制的に傾斜して支軸が撓み変形するような力が作用して、支軸に無理な力が掛かることがある。そして、このような状態が繰り返し発生すると、支軸が損傷するおそれがあった。
【0008】
そこで、緊張輪とクローラベルトとの間に石や他の夾雑物が挟み込まれる等の異常が発生しても、損傷のおそれを少なくすることが可能なクローラ走行装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るクローラ走行装置の特徴構成は、
無端状のクローラベルトと、前記クローラベルトを回動駆動する駆動輪と、前記クローラベルトに緊張力を付与する緊張輪と、前記クローラベルトの接地側回動部分に作用する複数の接地転輪と、前記クローラベルトの上部側回動部分に作用する上側案内転輪と、前記緊張輪による緊張力を変更調整自在な緊張力調整部と、前記駆動輪、前記緊張輪、前記接地転輪、前記上側案内転輪及び前記緊張力調整部を支持するトラックフレームとが備えられ、
前記緊張力調整部は、前記トラックフレームに対して前後位置変更自在に支持されるテンションフレームと、前記テンションフレームから横側外方に片持ち状に延設され且つ前記緊張輪をベアリングを介して回動自在に支持する支軸と、前記テンションフレームと前記緊張輪との間に位置して前記トラックフレームに対する前記テンションフレームの前後位置を変更調整自在な位置調整機構とを備え、
前記緊張輪は、径方向内方側にボス部を備え、
前記支軸のうち
前記支軸の軸芯方向において前記ベアリング
の前記テンションフレーム側端面と前記ボス部の前記テンションフレーム側端面との間に位置する部分に、前記支軸の外周部に沿って延び、かつ、前記支軸と前
記ボス部と
に亘る状態でカラー部材が外嵌装着され、
前記カラー部材
に、
前記支軸の外周部に沿って延びる状態で前記ボス部の前記テンションフレーム側端
面よりも前記テンションフレーム側に突出する
突出部分が備えられている点にある。
【0010】
本発明によれば、支軸と緊張輪のボス部との間に位置する状態で外嵌装着されるカラー部材が、ボス部のテンションフレーム側端部よりもテンションフレーム側に突出しているので、カラー部材の軸芯方向での位置決めを行うために支軸に段差部が形成されている場合であっても、支軸における段差部の大径側部分に対して、カラー部材が重なり合う領域の軸芯方向に沿う幅が広くなる。
【0011】
その結果、緊張輪とクローラベルトとの間に石や他の夾雑物が挟み込まれて、緊張輪から支軸に対して曲げ応力が掛かることがあっても、カラー部材の支軸に対する掛かり代が幅広になって、狭い箇所に応力が集中して掛かることを回避でき、損傷のおそれが少なくなる。
【0012】
従って、緊張輪とクローラベルトとの間に夾雑物が挟み込まれる等の異常が発生しても、損傷のおそれを少なくすることが可能なクローラ走行装置を提供できるに至った。
【0013】
本発明においては、
前記突出部分の外径が、前記ボス部の内部に位置する内装部分の外径よりも小径に形成され、前記突出部分と前記内装部分との間に段差が形成されていると好適である。
【0014】
本構成によれば、カラー部材が存在する箇所に水分が降りかかっても、水分は、ボス部のテンションフレーム側の端面と、それに連なるカラー部材における突出部分と内装部分との段差で形成された端面とに沿って流動していき、ボス部とカラー部材との間の隙間からそれらの間に進入するおそれが少ないものになる。
【0015】
従って、ボス部と支軸との間に備えられるベアリングや他のシール材等が進入する水分等に起因して早期に劣化する等の不利を回避して耐久性の向上を図ることができる。
【0016】
本発明においては、
前記突出部分が、前記位置調整機構に近接する位置まで突出形成されていると好適である。
【0017】
本構成によれば、カラー部材の突出部分が位置調整機構に近接しているので、緊張輪とクローラベルトとの間に石や他の夾雑物が挟み込まれて、緊張輪から支軸に対して曲げ応力が掛かるような場合に、カラー部材の突出部分が位置調整機構に接当して支軸が大きく撓み変形することを未然に阻止することが可能となる。位置調整機構は、クローラベルトの張力に抗して緊張力を変更調整するために、大きな支持強度により緊張輪を支持するものである。
【0018】
従って、大きな支持強度を備える位置調整機構を利用して支軸が撓み変形することを未然に阻止することができ、損傷のおそれをより一層少なくすることができる。
【0019】
本発明に係るクローラ走行装置の特徴構成は、
無端状のクローラベルトと、前記クローラベルトを回動駆動する
前側の駆動輪と、前記クローラベルトに緊張力を付与する
後側の緊張輪と、前記クローラベルトの接地側回動部分に作用する複数の接地転輪と、前記クローラベルトの上部側回動部分に作用する上側案内転輪と、前記緊張輪による緊張力を変更調整自在な緊張力調整部と、前記駆動輪、前記緊張輪、前記接地転輪、前記上側案内転輪及び前記緊張力調整部を支持するトラックフレームとが備えられ、
前記クローラベルトは、前記上部側回動部分が前記トラックフレームに対して前上がりに傾斜する状態で備えられ、
前記複数の接地転輪は、前記トラックフレームに対して上下動不能な固定転輪であり、
前記複数の接地転輪のうち前後中央側に位置する接地転輪は、他の接地転輪よりも上方に位置する状態で備えられ、
前記上側案内転輪は、
前記駆動輪と前記緊張輪との前後中央部よりも前側に位置し、かつ、前記上側案内転輪の上端位置が、前記緊張輪の
うち前記上部側回動部分が巻回される部分の上端部と前記駆動輪の
うち前記上部側回動部分が巻回される部分の上端部とを直線状に結ぶ仮想線よりも下側に位置する状態で備えられている点にある。
【0020】
本構成によれば、正常な動作状態では、クローラベルトの上部側回動部分は自身の重量によって少し垂れ下がり撓んだ状態で上側案内転輪にて係合案内されながら回動する。そして、例えば、緊張輪とクローラベルトとの間に夾雑物が噛み込まれて、クローラベルトの張り具合が強くなるようなことがあると、クローラベルトの上部側回動部分における撓み分が吸収されて緊張状態になることでクローラベルトに過度な張力が作用することを回避させることが可能となる。その結果、クローラベルトに異常に大きな張力が作用して、緊張輪の支軸に無理な力が掛かることを回避できるので、支軸が損傷するおそれは少ない。
【0021】
従って、緊張輪とクローラベルトとの間に夾雑物が挟み込まれる等の異常が発生しても、損傷のおそれを少なくすることが可能なクローラ走行装置を提供できるに至った。
【0022】
【0023】
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るクローラ走行装置の実施形態を普通型コンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0026】
図1に、稲や麦などを収穫対象とする普通型コンバインが示されている。このコンバインは、機体フレーム1の下部に左右一対のクローラ走行装置2を装備した走行機体を備え、その走行機体の前部に、収穫対象の植立穀稈を刈り取って後方に向けて搬送する刈取部としての刈取搬送部3が横軸芯周りで揺動昇降自在に連結されている。そして、機体フレーム1上に、刈取搬送部3からの刈取穀稈に対して扱き処理を施すとともに、その扱き処理で得られた脱穀処理物に対して選別処理を施す脱穀装置4、脱穀装置4からの穀粒を貯留する穀粒タンク5、穀粒タンク5に貯留される穀粒を上方に搬送したのち外側外方に排出する穀粒排出装置6、操縦者が搭乗して運転操作を行う運転部7等が備えられている。又、運転部7の周囲を覆うキャビン8が備えられている。
【0027】
運転部7は機体前部右側に位置し、運転部7の後方に穀粒タンク5が位置している。脱穀装置4が左側に位置し、穀粒タンク5が右側に位置する状態で、脱穀装置4と穀粒タンク5とが左右方向に並ぶ状態で備えられている。そして、運転部7の下方側には、駆動用のエンジン9が備えられている。エンジン9の動力が、ミッションケース10を介して左右のクローラ走行装置2に伝達される一方、脱穀装置4や刈取搬送部3に伝達される。
尚、この実施形態では、左方向及び右方向を定義するときは、機体進行方向視を基準に左右を定義する。
【0028】
刈取搬送部3は、機体走行に伴って、植立穀稈を収穫対象の植立穀稈と収穫対象外の植立穀稈とに梳き分ける分草具11、収穫対象の植立穀稈を後方に向けて掻き込む回転リール12、収穫対象の植立穀稈の株元側を切断するバリカン形の刈取装置13、切断後の刈取穀稈を左右方向の中央側の所定箇所に寄せ集め後方に向けて送り出す横送りオーガ14、刈取穀稈を脱穀装置4に向けて搬送するフィーダ15等を備えて構成されている。そして、刈取搬送部3は、図示しない油圧シリンダにより横軸芯周りで昇降揺動自在に支持されている。
【0029】
前記回転リール12は、横軸芯P1周りで回転しながら掻き込み爪16により植立穀稈を機体後方側に掻き込むように構成されている。そして、横軸芯P2周りで昇降揺動自在に支持アーム17により支持されている。支持アーム17は油圧シリンダ18により昇降揺動自在に支持され、回転リール12の高さを変更調整できるように構成されている。
【0030】
図8に示すように、運転部7には、運転座席20の前方に位置するフロントパネル21に、ステアリング操作と刈取搬送部3の昇降操作とを行う十字揺動自在な操作レバー22が備えられている。この操作レバー22は、前後方向に揺動操作することで、刈取搬送部3の昇降を指令することができ、左右方向に揺動操作することで、車体の旋回方向を指令することができる。又、運転座席20の横側に位置するサイドパネル23には、機体走行速度を変更するための主変速レバー24及び副変速レバー25等が備えられている。主変速レバー24は、ミッションケース10に備えられた静油圧式無段変速装置(HST)からなる主変速装置70を変速操作することができる。副変速レバー25は、変速操作軸72を回動操作してミッションケース10の内部に備えられたギア変速式の副変速装置(図示せず)を切り換え操作することができる。
【0031】
図9(a)に示すように、回転リール12の高さを調整するための操作スイッチ26が、操作レバー22の握り部22Aの上部側に備えられている。操作スイッチ26は、回転リール12の上昇を指令する押し操作式の上昇指令スイッチ26aと、回転リール12の下降を指令する押し操作式の下降指令スイッチ26bとからなる。この操作スイッチ26により、図示しない制御装置に対して上昇あるいは下降を指令することで、制御装置が油圧シリンダ18に対する制御弁(図示せず)を制御して、回転リール12を昇降させることができる。
【0032】
リール用の操作スイッチ26としては、上記したような2つの押し操作式のスイッチ26a,26bを備えるものに代えて、
図9(b)に示すように、揺動操作式のトグルスイッチを用い、操作レバー22の握り部22Aの横側に備える構成としてもよい。又、
図9(c)に示すように、操作レバー22の代わりに、主変速レバー24の握り部24Aの横側に備える構成としてもよい。
【0033】
キャビン8の天井部8Aにおける外周部は、主にガラスによって形成された周壁部8Bよりも外方に張り出した状態となっている。そして、その外方に張り出した張り出し部8Cの下部は、
図7(a)に示すように、張り出し部8Cの最下端部よりも内方側に向かうほど上方に位置するように折り曲げ形成してあり、雨水は最下端部から下方に落下して周壁部8Bに垂れながら流れることが無いようにしている。その折り曲げ形状は、
図7の(a)に記載の構成に代えて、
図7(b)、(c)に記載の構成でもよい。
【0034】
主変速レバー24の操作連係構造について説明する。
主変速レバー24は前後方向に操作することで、主変速装置70の変速操作軸71を操作して、機体走行速度を前進方向並びに後進方向夫々に無段階に変速操作することができる。
図12,13に示すように、主変速レバー24は、縦フレーム73に固定したブラケット74に対して横軸芯P3周りで回動自在に支持された上部揺動アーム75に連動連係されている。この上部揺動アーム75の揺動端部と主変速装置70の変速操作軸71に備えられた下部揺動アーム76との夫々に、自在継手77を介して押し引き操作自在な操作リンク78が枢支連結されている。
【0035】
図12に示すように、主変速レバー24の横側には副変速レバー25が備えられており、この副変速レバー25も主変速レバー24と同様に、押し引き操作自在な操作リンク79を介して副変速操作軸72に連動連結されている。
【0036】
主変速レバー24の連係操作機構中に備えられた上部揺動アーム75と下部揺動アーム76とは、左右側面のうちの予め定めた側にのみ操作リンク78を連結することが可能であり、反対側へは誤って組み付けることがないように形状が工夫されている。
【0037】
すなわち、
図10に示すように、上部揺動アーム75には、主変速レバー24が支持されるレバー支持部75aとは反対側で操作リンク78が連結される箇所の近傍に、操作リンク78を組み付けしない側に向けて大きく略L字形に折り曲げて係止部75bが形成されている。又、
図11に示すように、下部揺動アーム76にも同様に、変速操作軸71が連結される操作部76aと反対側で操作リンク78が連結される箇所の近傍に、組み付けしない側に向けて大きく略L字形に折り曲げて係止部76bが形成されている。これらの折れ曲がり状態の係止部75b,76bは、主変速レバー24がどの操作位置にあっても、操作リンク78が組み付けできないように長めに形成されている。
【0038】
そして、
図11に示すように、下部揺動アーム76の近傍を副変速用の操作リンク79が通過するようになっており、副変速レバー25の操作や主変速レバー24の操作の際に、下部揺動アーム76と副変速用の操作リンク79とが干渉しないように、下部揺動アーム76の端部に切欠80が形成されている。
【0039】
次に、クローラ走行装置2について説明する。
図2に示すように、クローラ走行装置2は、機体フレーム1に連結フレーム27を介して連結されたトラックフレーム28を備え、そのトラックフレーム28により支持される状態で、機体前部側に位置する駆動輪29と、下部に位置して機体前後に並ぶ複数の接地転輪30と、機体後部側に位置する緊張輪31と、前後方向の中間部よりも少し前部側に位置する状態で接地転輪30の上方に位置する上側案内転輪32とを備えている。そして、それら複数の輪体の夫々にわたって巻回される状態で無端状のクローラベルト33が備えられている。トラックフレーム28は、複数の接地転輪30を支持する角パイプ状の下部トラックフレーム28Aと、この下部トラックフレーム28Aの上側に連結された角パイプ状の上部トラックフレーム28Bとを備えている。
【0040】
クローラベルト33は、内周部側に適宜間隔をあけて芯金36が埋め込み装着されており、その芯金36から内周側に突出する状態で左右一対の芯金突起37が形成されている。この芯金突起37が複数の接地転輪30や緊張輪31と横方向に沿って係合することにより、クローラベルト33が横外方に外れることを防止している。
【0041】
駆動輪29は、走行機体に備えられたミッションケース10から横向きに突出する走行駆動軸(図示せず)に備えられ、エンジン9からの動力で回転する。駆動輪29の外周部に適宜間隔をあけて形成された係止突起39が、芯金36同士の周方向での中間に形成された係止孔(図示せず)に入り込み係合しながらクローラベルト33を回動駆動するように構成されている。
【0042】
複数の接地転輪30は、クローラベルト33の接地側回動部分に作用することでクローラベルト33の横外方への外れを防止しながら回動案内するように構成されている。
複数の接地転輪30のうち、前後中央に位置する接地転輪30a以外の他の接地転輪30は、左右一対の芯金突起37の左右両側から係合する外転輪式に構成されている。中央の接地転輪30aは、左右一対の芯金突起37の間に位置してそれらに係合する内転輪式に構成されており、しかも、他の接地転輪30よりも少しだけ上方に位置する状態で備えられている。
【0043】
中央の接地転輪30a以外の他の接地転輪30は、
図3に示すように、下部トラックフレーム28Aから横方向に片持ち状に固定延設された支軸40に、ベアリング41を介して係合輪体42が自由回動自在に支持されている。
図5に示すように、係合輪体42は、ベアリング41に支持されるボス部43を備えるとともに、そのボス部43の軸芯方向両側に一連に連なる状態で係合作用部44を備えている。左右両側の係合作用部44は左右一対の芯金突起37夫々の左右外方側から係合するように構成されている。
【0044】
係合作用部44は、ボス部43の端部から連なる状態で径方向に沿って延びる縦面部分44Aと、その縦面部分44Aの外周部に連なり略円筒状に形成される外周側筒状部44B分とからなり、全体として略椀形に形成されている。そして、
図5,6に示すように、縦面部分44Aと外周側筒状部分44Bとで挟まれる横外方側領域に、それらにわたって径方向に沿って延びる補強リブ44Cが形成されている。補強リブ44Cは周方向に等間隔をあけて4個形成されている。
【0045】
このように補強リブ44Cを形成することで、長期の使用により、接地転輪30が芯金36や芯金突起37との接触により摩耗して、
図5の仮想線L1で示す位置まで摩耗が進むようなことがあっても、補強リブ44Cによって、縦面部分44Aと外周側筒状部分44Bとを接続することができ、接地転輪30としての機能を維持することが可能となる。
【0046】
次に、上側案内転輪32について説明する。
上側案内転輪32は、上部トラックフレーム28Bの上面側に固定のブラケット(図示せず)により支持される位置固定の支軸45により回転自在に支持されている。
図2に示すように、この上側案内転輪32は、駆動輪29と緊張輪31との前後中央部に対応する箇所に備えられている。具体的には、上側案内転輪32は、駆動輪29と緊張輪31との前後中央位置よりも少し前寄りに位置している。回動駆動に伴ってクローラベルト33の上部側回動部分が上下に振動するような場合、駆動輪29と緊張輪31との前後中間部に位置するので、クローラベルト33が長いスパンで大きく振動することを防止でき、しかも、上側案内転輪32が少し駆動輪29に近い側に寄っているので、例えば、振動に伴って係止突起39が適正に係止孔に係合しない等の駆動輪29の動作に対する悪影響を回避し易いものになる。
【0047】
図2に示すように、上側案内転輪32は、その上端位置が、緊張輪31の上端部と駆動輪29の上端部とを直線状に結ぶ仮想線L2よりも下側に位置する状態で備えられている。
図2では、クローラベルト33の上部側回動部分が側面視で略直線状に張られている状態を示しており、上部側回動部分の下面が上記仮想線L2に対応している。
【0048】
通常の動作状態では、クローラベルト33の上部側回動部分は少し垂れ下がった状態となり、上側案内転輪32にて案内される状態に設定される。そして、例えば、緊張輪31とクローラベルト33との間に夾雑物が噛み込まれ、クローラベルト33の張り具合が強くなるようなことがあっても、クローラベルト33の撓み分により張りを吸収することで過度な張力が作用することを回避させることが可能となる。
【0049】
クローラ走行装置には、緊張輪31によるクローラベルト33の緊張力を変更調整自在な緊張力調整部KTが備えられている。
この緊張力調整部KTは、トラックフレーム28に対して前後位置変更自在に支持されるテンションフレーム47と、テンションフレーム47から横側外方に片持ち状に延設され且つ緊張輪31をベアリング49を介して回動自在に支持する支軸48と、テンションフレーム47と緊張輪31との間に位置してトラックフレーム28に対するテンションフレーム47の前後位置を変更調整自在な位置調整機構50とを備えている。
【0050】
以下、緊張輪31の支持構造について具体的に説明する。
図28Aに示すように、上部トラックフレーム28Bの後端部により角パイプ状のガイドレール部46が構成され、このガイドレール部46に対して前端側が内嵌されて摺動自在に支持された角パイプ状のテンションフレーム47が備えられている。このテンションフレーム47の後端部から横側方に向けて支軸48が固定延設されている。そして、この支軸48に、ベアリング49を介して緊張輪31が回転自在に外嵌支持されている。
【0051】
テンションフレーム47と緊張輪31との間に位置して上部トラックフレーム28Bに対するテンションフレーム47の前後位置を変更調整自在な位置調整機構50が備えられている。
図3に示すように、位置調整機構50は、上部トラックフレーム28Bに備えられたネジ支持部51と、テンションフレーム47に備えられた雌ネジ部材52と、それらに亘る調整用ネジ軸53とを備えている。
【0052】
説明を加えると、上部トラックフレーム28B側に備えられるネジ支持部51は、調整用ネジ軸53の前端部を受け止めて前方側への移動を阻止する状態で支持するとともに、回り止め具54により調整用ネジ軸53を回り止めしている。回り止め具54は取外し可能であり、その回り止め具54を取り外して、前方側への移動を阻止した状態で調整用ネジ軸53を回動させることができるように構成されている。
一方、テンションフレーム47に備えられた雌ネジ部材52は、保持具55により回動が阻止された状態で保持されるとともに、その保持具55は、連結部材56により強固に支持される状態で支軸48に連結固定されている。
【0053】
上記構成の位置調整機構50は、回り止め具54を取り外して、調整用ネジ軸53を図示しない工具を用いて回動させることにより、雌ネジ部材52と一体的に連結された支軸48の前後方向の位置を変更することができる。つまり、緊張輪31を前後に位置変更させてクローラベルト33の緊張力を調節することができる。
【0054】
図4に示すように、緊張輪31は、径方向内方側にボス部57が備えられ、そのボス部57の外周部に左右一対の芯金突起37の中間部に入り込み係合する係合輪体58が備えられて、内転輪式に構成されている。ボス部57は、ベアリング49を介して支軸48に外嵌装着されている。ベアリング49は、ボス部57におけるテンションフレーム47側の端部の内周側に形成された段差部59により受止められてテンションフレーム47側への移動が阻止され、支軸48の先端部にボルト止めされた受け具60によりインナーレース49aが受止められて、テンションフレーム47側とは反対側への移動が阻止されている。
【0055】
支軸48におけるベアリング49よりもテンションフレーム47側箇所には、ボス部57と支軸48との間に位置する状態でオイルシール61が備えられている。そして、支軸48のうちベアリング49よりもテンションフレーム47側箇所であって且つオイルシール61よりもテンションフレーム47側の箇所において、支軸48と緊張輪31のボス部57との間に位置する状態でカラー部材62が外嵌装着されている。
【0056】
カラー部材62の径方向内方側箇所には、支軸48に形成された軸側段差部63にて受止められてテンションフレーム47側への移動を規制する内周側段差部64が形成されている。又、カラー部材62の径方向外方側箇所には、ボス部57の内周面に形成されたボス部側段差部65にて受止められてテンションフレーム47側とは反対側への移動を規制する外周側段差部66が形成されている。
【0057】
カラー部材62と、支軸48及びボス部57との間は、軸芯方向に沿っては接当規制されているが、カラー部材62の内周面と支軸48の外周面との間、及び、カラー部材62の外周面とボス部57の内周面との間には、僅かに隙間があり、それらの間は自由状態となっている。
【0058】
ベアリング49よりもテンションフレーム47側とは反対側の箇所には、ボス部57の端部開口がカバー体67により閉塞されている。このカバー体67は、テンションフレーム47側の端部がベアリング49のアウターレース49bを受止め支持しており、又、テンションフレーム47側とは反対側の外方からグリスを注入可能なグリスニップル68が備えられている。
【0059】
このように、ベアリング49が備えられるボス部57の内方側の空間は、カバー体67、オイルシール61及びカラー部材62によって閉塞されており、外部から塵埃や水分等がボス部57の内部に侵入したり、グリスが外部に漏れ出ることを防止するようにしている。
【0060】
カラー部材62は、ボス部57のテンションフレーム47側端部よりもテンションフレーム47側に突出する状態で備えられている。そして、カラー部材62におけるテンションフレーム47側への突出部分62Aの外径が、ボス部57の内部に位置する内装部分62Bの外径よりも小径に形成され、突出部分62Aと内装部分62Bとの間で、ボス部57のテンションフレーム47側の端面に連なる状態で段差が形成されている。すなわち、ボス部57のテンションフレーム47側の端面57aと、カラー部材62における内装部分62Bのテンションフレーム47側の端面62aとが、略面一になる状態で形成されている。
【0061】
又、カラー部材62におけるテンションフレーム47側への突出部分62Aは、位置調整機構50に近接する位置まで突出形成されている。このようにカラー部材62が位置調整機構50に近接しているので、緊張輪31とクローラベルト33との間に夾雑物が噛み込まれ、クローラベルト33の張り具合が強くなり、支軸48が撓み変形しようとしても、カラー部材62が位置調整機構50に接当することで、支軸48が撓み変形することを未然に防止することができる。
【0062】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態においては、カラー部材62における突出部分62Aと内装部分62Bとの間で段差が形成される構成としたが、このような構成に代えて、カラー部材62におけるテンションフレーム47側への突出部分62Aがボス部57の内部に位置する内装部分62Bと同じ外径にて構成されるものでもよい。
【0063】
(2)上記実施形態においては、カラー部材62における突出部分62Aが、位置調整機構50に近接する位置まで突出形成される構成としたが、このような構成に代えて、カラー部材62の突出部分62Aが位置調整機構50から離間する状態で備えられるものでもよい。
【0064】
(3)上記実施形態においては、上側案内転輪32の上端位置が、緊張輪31の上端部と駆動輪29の上端部とを直線状に結ぶ仮想線と同じ位置になる状態で備えられる構成としてもよい。
【0065】
(4)上記実施形態においては、カラー部材62が、ボス部57のテンションフレーム47側端部よりもテンションフレーム47側に突出する状態で備えられる構成としたが、この構成に代えて、カラー部材62は、テンションフレーム47側の端部が緊張輪31のボス部57の端部と略同じ位置になるように形成されるものでもよい。
【0066】
(5)上記実施形態では、穀粒タンク5に貯留される穀粒を上方に搬送したのち外側外方に排出する穀粒排出装置6を備えるものを示したが、穀粒排出装置としては、縦スクリューコンベア、及び、それに連なる横搬送スクリューコンベアを備えて、縦軸芯周りで旋回操作自在な、周知構造のスクリュー式搬送装置を備える構成としてもよい。
【0067】
(6)上記実施形態においては、普通型コンバインに適用したクローラ走行装置を示したが、普通型コンバインに限らず、自脱型コンバインに適用するものでもよく、又、トラクタ等に適用するものでもよい。