特許第6335737号(P6335737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335737
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】中空構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20180521BHJP
   C04B 35/10 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C04B37/00 Z
   C04B35/10
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-200434(P2014-200434)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-69227(P2016-69227A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩章
(72)【発明者】
【氏名】淺野 友幸
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−261459(JP,A)
【文献】 特開昭64−072971(JP,A)
【文献】 特開昭60−054984(JP,A)
【文献】 特開2002−373873(JP,A)
【文献】 特開2008−004926(JP,A)
【文献】 特開平02−279570(JP,A)
【文献】 特開2003−128473(JP,A)
【文献】 特開2011−093779(JP,A)
【文献】 特開2007−008774(JP,A)
【文献】 特開2002−104884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00 − 37/04
C04B 35/10
H01L 21/205
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造部となる溝が接合面に形成され、前記溝と前記接合面との境界部分に、当該接合面における面取り長さが0.10mm〜5.00mmの面取り加工されたセラミックス成形体を用意する工程と、
前記セラミックス成形体の溝の内面を表面粗さRa2.0μm以下に加工する工程と、
前記セラミックス成形体と別のセラミックス成形体とを接合面に接合剤を介した状態で接合する工程と、
前記溝の底面部分だけを溶媒で洗浄する工程と、
前記接合したセラミックス成形体を焼成する工程とを備えることを特徴とする中空構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス焼結体から構成されている中空構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置に用いられるセラミックス部材は、その内部に冷媒等の熱媒体が流通可能な溝などの複雑な構造の中空部を設ける必要がある場合がある。このような場合、外からの加工で中空部を設けることはできず、予め中空部となる溝を形成したセラミックス成形体を接合して焼成することによって、中空構造部を有するセラミックス部材を得ている。
【0003】
従来、例えば特許文献1には、セラミックス成形体の研磨した各接合面にエタノールを塗布し、これら接合面を合わせた面に共素地泥しょうを流し込んで隙間を埋め、乾燥させて接合した後に焼結することが提案されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、セラミックス部材と同材質からなる粉体と樹脂とを溶媒で混合したスラリーをセラミックス成形体の接合面に塗布し、セラミックス成形体の接合面同士を当接させた状態で乾燥させて接合した後に焼成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−77635号公報
【特許文献2】特開2004−345306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載の技術では、セラミックス成形体の接合面は研磨加工されているが、接合面と中空構造部の境界部分の端面は加工されておらず、角張った形状となっている。特に、特許文献2の図面では、この部分は直角に近い角張った形状であり、端面は何ら加工されていない。
【0007】
このように境界部分が角張った形状の場合、セラミックス成形体を当接した際に染み出た接合剤が中空構造部の側面に流れ、そのまま密着して乾燥固化する。染み出した接合剤を除去するために、中空構造部内を水などの溶媒で洗浄すると、乾燥が不十分であった接合剤が欠落し、未接合な部分が生じるおそれがある。さらに、接合後は中空構造部内を追加工することは困難であるため、接合剤が染み出して固着したまま焼成せざるを得ない。中空構造部に接合剤が染み出して固着した箇所があると、中空構造部内を流れる熱媒体に由来して堆積物(スケール)の付着が進むという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、セラミックス成形体の接合時に接合面に塗布などした接合剤が中空構造部内に流れ出し難くすることを図りうる中空構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の中空構造体の製造方法は、中空構造部となる溝が接合面に形成され、前記溝と前記接合面との境界部分に、当該接合面における面取り長さが0.10mm〜5.00mmの面取り加工されたセラミックス成形体を用意する工程と、前記セラミックス成形体の溝の内面を表面粗さRa2.0μm以下に加工する工程と、前記セラミックス成形体と別のセラミックス成形体とを接合面に接合剤を介した状態で接合する工程と、前記溝の底面部分だけを溶媒で洗浄する工程と、前記接合したセラミックス成形体を焼成する工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の中空構造体の製造方法によれば、接合時に接合面から接合剤が染み出しても、面取り部の接合面側の面取りされた部分の長さが0.10mm以上と長いので、接合剤はこの部分の上に表面張力によって留まり、溝内に流れ落ちない。
【0011】
また、面取り部の接合面側の面取りされた部分の長さが5.00mm以下であるので、十分な接合強度を得るために必要な接合面の面積を確保することが可能となる。
【0012】
ところで、万が一、接合時に接合剤を過剰に塗布した場合、接合時に過剰な押圧力を加えた場合などには、接合面から過剰な接合剤が染み出し、面取り部だけに留まらず、中空構造部内に流れ落ちるおそれがある。
【0013】
そこで、本発明の中空構造体の製造方法において、前記セラミックス成形体の溝の内面を表面粗さRa2.0μm以下に加工する工程を含む。
【0014】
これにより、例え、接合面から過剰な接合剤が染み出した場合であっても、溝の内側面はRa2.0μm以下と平滑であるので、接合剤は滞りなく溝の底面側に流れ落ちる。よって、溝の底面部分だけを水などの溶媒で洗浄することにより、接合層への水などの浸入、浸透などによるダメージなく、底面に溜まった染み出した接合剤の余剰分を簡便に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態としての中空構造体の製造方法に関する説明図であり、(a)は接合前のセラミックス成形体、(b)はセラミックス成形体を接合した状態をそれぞれ示す。
図2】境界部分の拡大図であり、(a)は本発明の一実施形態、(b)は本発明の一実施形態の変形を示す。
図3】本発明の一実施形態としての中空構造体の説明図であり、(a)は全体図、(b)〜(d)はそれぞれ変形における境界部分の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(中空構造体の製造方法)
本発明の一実施形態としての中空構造体10の製造方法を図1を参照して説明する。
【0019】
まず、図1(a)に示すように、第1セラミックス成形体11と第2セラミックス12とを用意する工程を行う。これらセラミックス成形体11,12は、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素などのセラミックスからなる成形体である。この際、セラミックス成形体11,12の成形方法は何ら限定されず、CIP成形法、鋳込み成形法、押出し成形法などを適用することができる。
【0020】
これらセラミックス成形体11,12は、単一のセラミックス成形体を切断して分割したものであっても、別個のセラミックス成形体からなるものであってもよい。
【0021】
これらセラミックス成形体11,12のそれぞれの接合面11a,12aに対して、NC旋盤、MC加工機などの平面研削機を用いて、表面粗さが、好ましくはRa8.0μm以下、より好ましくは2.5μm以下となるように平面研磨する。
【0022】
さらに、これらセラミックス成形体11,12に、中空構造体10の中空構造部10d(図3(a)参照)となる溝11b,12bを、接合面11a,12aから掘り込むようにそれぞれ形成する。なお、セラミックス成形体11,12の何れか一方のみに、溝11b,12bを形成したものであってもよい。溝11b,12bの内側面は、表面粗さがRa2.0μm以下と平滑化するように研磨加工する。
【0023】
さらに、図2(a)に示すように、これらセラミックス成形体11,12の、接合面11a,12aと溝11b,12bとの境界部分11c,12cは、角張った形状とならないように、C面取り加工を施す。面取り部の接合面11a,12a側の面取りされた部分の長さ(水平方向の面取り長さ)L1は0.10mm〜5.00mmである。そして、面取り部の溝11b,12bの内側面11d,12d側の面取りされた部分の長さ(垂直方向の面取り長さ)L2も0.10mm〜5.00mmである。
【0024】
なお、図2(b)に示すように、境界部分11c,12cは、R面取りがなされていてもよい。この場合も、面取り部の接合面11a,12a側の面取りされた部分の長さ(水平方向の面取り長さ)L1は0.10mm〜5.00mmである。
【0025】
さらに、境界部分11b,12bの面取りは、C面取り、R面取りに限定されず、例えば、30度などの傾斜角を有する面取り、四分楕円形状の面取りなどであってもよい。そして、これらの場合も、面取り部の接合面11a,12a側の面取りされた部分の長さ(水平方向の面取り長さ)L1が0.10mm〜5.00mmであればよい。
【0026】
また、図1(a)に示すように、溝11b,12bの縦断面において、鋭角、鈍角など角度に関係なく、底の隅部11e,12eには、隅Rが0.10mm〜50.00mmのR隅加工を施す。
【0027】
次に、図1(b)に示すように、セラミックス成形体11,12のそれぞれの接合面11a,12aとの間に接合剤13を介在させた状態とする。
【0028】
接合剤13は、例えば、上記特許文献2に記載されたように、セラミックス成形体11,12材と同材質からなる粉体と樹脂とを溶媒で混合したスラリーであってもよい。この場合、接合剤13を接合面11a,11aに噴霧、塗布する、あるいは、接合剤13中にセラミックス成形体11,12を浸漬するなどした後、セラミックス成形体11,12の接合面11a,12a同士を当接した状態とする。
【0029】
なお、接合剤13は、上記特許文献1に記載されたように、エタノール及び共素地泥しょうからなるものなどであってもよい。
【0030】
そして、セラミックス成形体11,12の接合面11a,12a間に接合剤13を介在させた状態で乾燥させて接合する工程を行う。
【0031】
そして、接合させたセラミックス成形体11,12を、大気中で1500℃以上の温度で焼成して接合する工程を行う。これにより、図3(a)に示すように中空構造体10を得ることができる。
【0032】
この焼成時に、炉内の温度分布やセラミックス成形体11,12の密度むらなどによる中空構造体10自体の変形や反り、セラミックス成形体11,12を設置する台板の歪みに伴う変形などが生じても接合剤13とセラミックス成形体11,12が剥離しないように、接合層10cの厚みが10〜2500μmとなるように、接合剤13の厚さを調整することが好ましい。
【0033】
接合層10cの厚さが10μm以下では、接合面積が8インチを超えるなどすると、剥離や未接合が生じる傾向にある。一方、接合層10cの厚さが2500μm以上では、接合層10cの平滑性が低下し、接合むらが生じやすい。
【0034】
図1(a)及び図1(b)も参照して、接合前の境界部分11c,12cに面取り加工が施されているので、接合時に、接合剤13が染み出しても、ある程度の接合剤13は接合面11a,12a側の面取りされた部分の上に表面張力によって留まり、中空構造部10d内に流れ込まない。
【0035】
ところで、境界部分11c,12cに面取り加工が施されていない場合、接合直後から中空構造部10d内への染み出しが多くなる。さらに、半導体製造装置などに使用される製品となる構造上、中空構造部10dは、外部と通じているので、接合層10cよりも乾燥が進み、毛管作用によって接合剤13の連続的な染み出しが発生する。
【0036】
境界部分11c,12cに面取り加工が施されていない場合、これらの理由によって、中空構造部10d近傍に位置する接合層10cは、中空構造部10dから離れて位置する接合層10cと比較して、厚みが薄くなる傾向がある。そのため、中空構造体10の接合強度のばらつきが大きい。そして、前述した傾向は、中空構造体10が大型化するほど顕著であり、極端な例では、中空構造部10d近傍の接合層10cが空洞化するおそれもある。
【0037】
一方、本実施形態では、境界部分11c,12cに面取り加工が施されているので、接合時における接合層10cからの接合剤13の染み出しが表面張力の効果によって少なくなり、接合層10cの厚さのばらつきが抑制される。よって、中空構造体10の接合強度のばらつきが低減する。
【0038】
そして、万が一、接合時に接合剤13を過剰に塗布した場合、接合時に過剰な印加圧力を加えた場合などには、接合面11a,12aから過剰な接合剤13が染み出し、面取り部だけに留まらず、溝11b,12b内に流れ落ちるおそれがある。このような場合であっても、境界部分が面取り部であるので傾斜を有し、さらに溝11b,12bの内側面11d,12dは、平滑に研磨されているので、滞りなく溝11b,12bの底面側に流れ落ちる。
【0039】
よって、最終的に、中空構造部10dの底面部分だけを水などで洗浄することにより、接合層10cへの水などの浸入、浸透などによるダメージなく、底面に溜まった染み出した接合剤13の余剰分を簡便に排出することができる。
【0040】
なお、中空構造部10dに接合剤13が染み出し箇所があると、中空構造部10dに流れる熱媒体に由来して堆積物(スケール)の付着が進むという問題がある。
【0041】
さらに、境界部分11c,12c及び溝11b,12bの隅部11e,12eが角張った形状であると、クラックが発生する要因となり易い。さらに、染み出した接合剤13が溝11b,12bの内側面11d,12dに固着した状態では、セラミックス成形体11,12と接合剤13との収縮挙動の差異が顕著となり、クラックが発生し易い。
【0042】
しかし、本発明の中空構造体10では、図1(a)に示すように境界部分11c,12cに面取り加工が施され、接合剤13の溝11b,12bの内側面11d,12dへの固着が防止されるので、このようなクラックが発生することを抑制することができ、歩留まりを向上させることが可能となる。
【0043】
(中空構造体の構成)
本発明の一実施形態としての中空構造体10は、図3(a)に示すように、第1のセラミックス焼結体部10aと、第2のセラミックス焼結体部10bと、これらセラミックス焼結体部10a,10bの間に介在する接合層10cとを有し、セラミックス焼結体部10a,10bに形成された中空構造部10dに接合層10cに沿って凹部10eが形成されている。
【0044】
接合層10cの厚さは、9μm〜2250μmである。
【0045】
焼成前は、図1(a)及び図1(b)を参照して、セラミックス成形体11,12の境界部分11c,12cは、C面取りがなされている。そして、この面取り部は、焼成によって、接合面10f側の面取りされた部分の長さ(水平方向の面取り長さ)(図2(a)のL1参照)は0.09mm〜4.50mmとなっている。また、面取り部の中空構造部10dの内側面10g側の面取りされた部分の長さ(垂直方向の面取り長さ)((図2(a)のL2参照)も0.09mm〜4.50mmとなっている。
【0046】
そして、この面取りされた部分の上に接合剤13が染み出して、セラミックス焼結体部10a,10bに形成された中空構造部10dに接合層10cに沿って凹部10eが形成されている。
【0047】
この凹部10e、接合剤13の染み出し量に応じて相違する。接合剤13の染み出しが少ないときには、図3(a)又は図3(b)に示すように、接合層10cの盛り上がりを中心に上下に2本並行に形成される。このとき、セラミックス焼結体部10a,10bの両方の面取り部の中空構造部10dの内側面10g側の端部が露出している。
【0048】
一方、接合剤13の染み出しが多いときには、図3(c)に示すように、接合層10cが下方の面取り部の全面を覆い、凹部10eは1本だけ形成される。このとき、セラミックス焼結体部10aのみ、面取り部の中空構造部10dの内側面10g側の端部が露出している。
【0049】
焼成前に、図1(c)を参照して、セラミックス焼結体部10a,10bの接合面10fと中空構造部10dとの境界部分にR面取りがなされている場合、接合剤13の染み出しが少ないときには、例えば図3(d)に示すように、接合層10cの盛り上がりを中心に上下に凹部10eは2本並行に形成される。一方、接合剤13の染み出しが多いときには、凹部10eは1本だけ形成され、セラミックス焼結体部10aのみ、面取り部の中空構造部10dの内側面10g側の端部が露出する。
【0050】
焼成後は、図3(a)を参照して、中空構造部10dの内側面10gの表面粗さはRa1.2μm以下である。また、中空構造部10dの縦断面において、鋭角、鈍角など角度に関係なく隅部10hは、隅Rが0.09mm〜45.00mmのR隅となっている。
【実施例】
【0051】
(実施例及び比較例)
原料粉末として、Al粉末100質量部(昭和電工株式会社製/AL−160SG−3)に対して、バインダーとして、バインドセラム(三井東圧化学株式会社製/WA−320)を7.0質量部(外比)、分散剤として、アクリル酸系分散剤(東亞合成株式会社製/A−6114)を2.0質量部(外比)が添加された水を溶媒としたスラリーを用意した。このスラリーを真空や加圧力を付与した鋳込み成形されることによって、直径500mm、高さ60mmの円柱形状のセラミックス成形体11,12がそれぞれ作製された。
【0052】
これらセラミックス成形体11,12の接合面11a,12aに対してそれぞれ幅30mm、深さ15mmの溝11b,12bを渦巻き状となる形状に形成された。接合面11a,12aと溝11b,12bとの全ての境界部分に面取り長さが表1に記載の長さまでC面取り又はR面取りが施された。
【0053】
さらに、溝11b,12bの内側面11d,12dを表面粗さが表1に記載の表面粗さになるまで研磨された。そして、溝11b,12bの隅部11e,12eは、比較例4のみを除き、R隅となるように加工された。
また、接合面11a,12aを表面粗さが1.2μmとなるまで研磨された。
【0054】
さらに、実施例1,2,5及び比較例1,2,4,5では、接合剤13として、表1に記載したように鋳込み成形で使用したスラリーと同配合のスラリーを用意した。実施例1及び比較例1では、このスラリー状の接合剤13中に予め水中で含水させておいた成形体を浸漬させて、表1に記載の荷重を印加しながら、セラミックス成形体11,12の接合面11a,12aにそれぞれ塗布された。
【0055】
また、実施例2及び比較例5では、スラリー状の接合剤13をセラミックス成形体11,12の接合面11a,12aにそれぞれ刷毛で塗布した後、表1に記載の荷重を印加した。実施例5及び比較例2,4では、スラリー状の接合剤13をセラミックス成形体11,12の接合面11a,12aにそれぞれスプレーで噴霧した後、表1に記載の荷重を印加した。
【0056】
実施例3,6及び比較例3では、接合剤13として、Al粉末100質量部(昭和電工株式会社製/AL−160SG−3)に対して、エチルセルロース系バインダーを50.0質量部(外比)、フタル酸ジブチル系可塑剤を16.7質量部(外比)が添加されたエチレングリコール、α−テルピネオール、エタノールなどの有機溶剤を溶媒としたペーストを用意した。
【0057】
そして、このペースト状の接合剤13を、実施例3では印刷によって、実施例6及び比較例3では刷毛によって、セラミックス成形体11,12の接合面11a,12aにそれぞれ塗布した後、表1に記載の荷重を印加した。
【0058】
実施例4では、接合剤13として、Al粉末100質量部(昭和電工株式会社製/AL−160SG−3)に対して、エチルセルロース系バインダーを13.0質量部(外比)、フタル酸ジブチル系可塑剤を13.0質量部(外比)が添加されて作製されたエチレングリコール、α−テルピネオール、エタノールなどの有機溶剤を溶媒としたグリーンシートを用意した。
【0059】
そして、シート状の接合剤13を、セラミックス成形体11,12の接合面11a,12aにそれぞれ接合した後、表1に記載の荷重を印加した。
【0060】
そして、実施例6では、接合剤13を塗布した接合面11a,12aを合わせた状態で、セラミックス成形体11,12をチャンバの内部に設置された。これらセラミックス成形体11,12に対して、等方的に静水圧プレスにより表1に記載の圧力が印加された。
【0061】
成形体を十分に乾燥させた後、大気雰囲気中で1600℃で3時間にわたり熱処理された。その結果、中空構造体10が作製された(図3(a)参照)。
【0062】
そして、中空構造体10から、接合強度試験用の試験片が、接合層が中心にくるよう3mm×4mm×40mmの形状で切り出され、下部スパン30mm、上部スパン10mmの4点曲げ試験によって接合強度が測定された(JISR1624準拠)。
【0063】
表1には、各実施例及び各比較例の接合体の作製条件及び評価試験結果がまとめて示されている。
【0064】
【表1】
【0065】
(実施例1)
実施例1では、中空構造体10の凹部10eは、R面加工された固着物のない平滑な状態であった。そして、接合強度は350MPaであり、母材強度の0.95倍であって、気密性良好な接合状態であった。
【0066】
(実施例2)
実施例2では、中空構造体10の凹部10eは、実施例1同様であった。そして、接合強度は320MPaであり、母材強度の0.86倍であって、良好であった。
【0067】
(実施例3〜5)
中空構造体10の凹部10eは実施例1,2と同様であり、接合強度も良好であった。
【0068】
(実施例6)
実施例6では、接合後に1200kgf/cmの圧力を印加してCIP成形を行った。中空構造体10の凹部10eは実施例1〜5と同様であり、接合強度も良好であった。
【0069】
(比較例1)
比較例1では、接合面と溝の交点における箇所に面取り加工を施さなかった。その箇所を基点としたクラックが発生した。
【0070】
(比較例2)
比較例2では、中空構造体10の凹部10eは、R面加工された固着物のない平滑な状態であった。そして、接合強度は140MPaであり、母材強度の0.38倍しかなく劣っていた。これは、面取り長さL1が0.05mmと0.10mm未満であったため、接合剤13の染み出しにより所定量の接合剤が不足したためである。
【0071】
(比較例3)
比較例3では、接合強度は290MPaであり、母材強度の0.78倍であって、良好であった。しかし、中空構造部10dの内側面10gに接合剤13が固着したものが見出された、これは、内側面11d、12dの表面粗さが2.8μmであり、2.0μmを超えていたため、染み出した接合剤13が固着したためである。
【0072】
(比較例4)
比較例4では、中空構造体10の中空構造部10dの隅部10hを起点としたクラックが発生した。これは、セラミックス成形体11,12のそれぞれ溝11b,12bの隅部11e,12eはR隅に加工されておらず、角張った形状であったためである。
【0073】
(比較例5)
比較例5では、中空構造体10の凹部10eは、R面加工された固着物のない平滑な状態であった。そして、接合強度は160MPaであり、母材強度の0.43倍しかなく劣っていた。これは、面取り長さL1が7.00mmと5.00mmを超えていたため、スラリーの染み出しが多くなったためである。
【符号の説明】
【0074】
10…中空構造体、 10a,10b…セラミックス焼結体部、 10c…接合層、 10d…中空構造部、 10e…凹部、 10f…接合面、 10g…中空構造部の内側面、 10h…中空構造部の隅部、 11…第1のセラミックス成形体、 12…第2のセラミックス成形体、 11a,12a…接合面、 11b,12b…溝、中空構造部となる部分、 11c,12c…境界部分、 11d,12d…溝の内側面、 11e,12e…溝の隅部、13…接合剤。
図1
図2
図3