(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記回転検知部からの出力に応じて、前記動作部の動作モードを通常モードと前記通常モードより消費電力が少ない節電モードとのいずれかに設定する、請求項1に記載の電子機器。
前記バネ接点は、前記回転錘の回転方向において、当該電子機器の使用形態に応じた前記回転錘の停止位置の近傍に配置される、請求項12または13に記載の電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。各実施形態において、同一の構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0015】
図2は、電子機器1のブロック図である。電子機器1は、筐体10、発電部20、回転検知部30A、充電部40、蓄電部50、時計表示部60および制御部70を有する。本明細書では、電子機器が腕時計などの携帯用の電子時計である場合の例を説明する。この場合、筐体10は、時計のハウジング(ケーシング)である。ただし、本発明の電子機器は電子時計には限定されない。
【0016】
電子機器1は、発電部20の発電状態から機器の携帯状態を間接的に判断するのではなく、回転検知部30Aにより発電部20の回転部材の動きを直接検知して、機器の携帯状態を判断する。そして、その携帯状態に応じて、電子機器1は、時計表示部60による時刻表示(針の動作)を制御したり、充電部40の動作を制御したりする。
【0017】
発電部20は、筐体10に対して回転自在な回転部材を有し、回転部材が回転することにより静電誘導を利用した発電を行う。発電部20のエネルギー源は、人体の運動、機械などの振動、その他環境に広く存在する運動エネルギーである。ここでの「振動」には、規則的な振動のみならず、不規則的な振動も含まれる。また、本明細書でいう「回転」には、一方向の回転のみならず、回転振動や揺動運動も含まれる。
【0018】
回転検知部30Aは、発電部20の回転部材の回転を直接検知し、その結果に応じた信号を制御部70に出力する。充電部40は、発電部20が発生させた電力を後述する降圧回路42(
図16(A)を参照)により降圧して蓄電部50に充電させるための回路である。蓄電部50は、発電部20が発生させた電力を蓄積する2次電池、大容量のコンデンサなどであり、充電部40によって充電され、電子機器1の電源として機能する。時計表示部60は、動作部の一例であり、蓄電部50から供給される電力を利用し、指針を機械的に駆動して時刻を表示する。
【0019】
制御部70は、回転検知部30Aからの出力信号に基づいて電子機器1の携帯状態を判定し、その結果に応じて、充電部40や時計表示部60など、電子機器1の全体の動作を制御する。制御部70は、CPU、RAM、ROMなどを含み、ROMに予め記憶されたプログラムをRAMにロードして実行することにより、
図21〜
図23を用いて後述する各処理を実行する。
【0020】
図3は、筐体10の内部構造を示す模式的な断面図である。
図3に示すように、筐体10の内部には、回転軸11、軸受12および補助基板13が配置される。回転軸11は、筐体10の内部の中央に、上下の軸受12を介して固定される。補助基板13は、回転軸11に対して垂直に配置され、筐体10の側壁に固定される。
【0021】
図4は、回転錘21、回転部材22および対向基板24の斜視図である。筐体10の内部には、発電部20として、さらに回転錘21、回転部材22、帯電膜23、対向基板24および発電電極25が配置される。発電部20は、帯電膜23と発電電極25の間で発生した電力を充電部40に出力する。
【0022】
回転錘21は、回転軸11の周りに筐体10に対して矢印C方向に回転自在な、重量バランスの偏りを有する錘である。回転錘21は、筐体10の内部において、補助基板13の上側に配置される。回転錘21は、使用者が電子機器1を携帯して歩行などの動作をすることにより回転駆動される。また、電子機器1では、補助基板13と回転錘21の間に、後述するバネ接点31が配置される。
【0023】
回転部材22は、補助基板13の下側に配置される円板状の部材である。回転部材22は、回転錘21が回転駆動されることで、その動力により回転軸11に対して矢印C方向に回転する。回転部材22は、金属またはガラスエポキシ基板などの周知の基板材料で構成される。なお、回転軸11に回転錘21を取り付ける代わりに、回転部材22に錘を取り付けて、回転部材22自体を回転錘としてもよい。
【0024】
帯電膜23は、回転部材22の下面に配置されたエレクトレット膜である。本実施形態で帯電膜23として用いられるエレクトレット材料には、例えば、マイナスに帯電する材料として、シリコン酸化物(SiO2)や、フッ素樹脂材料などのエレクトレット材料がある。具体的には、マイナスに帯電する材料の一例として、旭硝子製のフッ素樹脂材料であるCYTOP(登録商標)などがある。さらに、その他にも、エレクトレット材料としては、高分子材料としてポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルデンジフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などを、無機材料としては前述したシリコン酸化物(SiO2)やシリコン窒化物(SiN)などを使用してもよい。その他、周知の帯電膜を使用することができる。
【0025】
対向基板24は、固定基板の一例であり、回転部材22に対向して筐体10の内側底面に固定される。対向基板24は、金属またはガラスエポキシ基板などの周知の基板材料で構成される。
【0026】
発電電極25は、対向電極の一例であり、対向基板24の上面に、帯電膜23に対向して配置される。なお、帯電膜23は回転部材22と対向基板24のいずれか一方に配置し、発電電極25は回転部材22と対向基板24のうちの他方に配置すればよい。このため、上記とは逆に、帯電膜23を対向基板24の上面に配置し、発電電極25を回転部材22の下面に配置してもよい。
【0027】
図5Aおよび
図5Bは、帯電膜23および発電電極25のパターンならびに発電電流の取り出し方の例を示す図である。まず、
図5Aについて説明する。帯電膜23は、
図5Aの上部に示すように、円形領域内に等間隔に配置された複数の放射部23’により形成される。回転軸11は導電部材で構成され、帯電膜23は、放射部23’ごとに電気接点を介して回転軸11に接続される。ただし、帯電膜23からの電気配線は、各放射部23’を連結配線した後に回転軸11に接続してもよい。あるいは、回転部材22が金属の場合には、各放射部23’はそれぞれ回転部材22の基板を通して回転軸11に直接接続される。
【0028】
一方、発電電極25も、
図5Aの下部に示すように、円形領域内に等間隔に配置された複数の放射部25’により形成される。帯電膜23と発電電極25は、互いに相対的に回転したときに重なり面積が増減するのであれば、
図5Aに示す放射状とは異なる他の形状にパターニングされていてもよい。
【0029】
帯電膜23と発電電極25からの出力は、充電部40の整流回路41に接続される。整流回路41は、4個のダイオードを有するブリッジ式であり、帯電膜23と発電電極25から入力を、平滑回路を介して後述する降圧回路42に出力する。
【0030】
回転軸11に固定された回転錘21が歩行などの使用者の運動によって駆動されると、回転錘21の回転に伴い、同じく回転軸11に固定された回転部材22が回転して、帯電膜23(エレクトレット膜)と発電電極25の間の重なり面積が増減する。例えば帯電膜23の内面に負電荷が保持されているとすると、回転部材22の回転に伴い、発電電極25に引き寄せられる正電荷が増減して、帯電膜23と発電電極25の間に交流電流が発生する。このようにして電流を発生させることにより、発電部20は静電誘導を利用した発電を行う。
【0031】
次に、
図5Bについて説明する。
図5Bの上部の帯電膜23のパターンは、
図5Aに示したものと同じであるが、出力端子が不要となっている。
図5Aの例では発電電極25’および回転軸11から発電電流を取り出すのに対して、
図5Bの例では、隣り合う発電電極25’から発電電流を取り出す点が異なっている(特許文献7の
図9および
図10の原理説明を参照。特許文献7を引用補充する。)。この場合には、静止する対向基板24上の発電電極25のみから電流を取り出せばよいので、回転する回転部材の電気的接続が不要になって便利である。
【0032】
次に、発電電極25とは別体に回転検知部を設けて、回転部材22の回転、すなわち発電が行われているか否かを検知し、降圧回路42、蓄電部50、時計表示部60などの動作を制御する実施形態を説明する。
【0033】
図6(A)および
図6(B)は、回転検知部30Aのバネ接点31A,31Bの説明図である。これらの図では、筐体10内部の構成要素のうち、回転軸11、補助基板13、回転錘21およびバネ接点31A,31Bを上から見た図を示している。
【0034】
回転検知部30Aは、回転錘21が回転するときに回転錘21と接触するバネ接点31Aまたはバネ接点31Bを有する。バネ接点31A,31Bと回転錘21の接触状態は、回転錘21の位置によって変化する。そこで、バネ接点31A,31Bを通して出力される信号から回転錘21の動作状態を把握できるように、回転検知部30Aは、回転錘21とバネ接点31A,31Bとの接触・非接触に応じて異なる信号を出力する。このような回転検知部30Aであれば、検知に必要な消費電流量は少なく、構造も単純なので、電子機器1のサイズを大型化させることもない。また、回転錘21と回転部材22が一体ではなく、双方の間に回転錘21の回転を増速して回転部材22へ伝達する増速輪列機構が設けられる場合には、回転錘21は回転部材22よりもトルクが大きいため、回転部材22ではなく回転錘21にバネ接点31Aまたは31Bを接触させることにより、機械的負荷の影響を抑えることができる。
【0035】
回転部材22にバネ接点31A,31Bとの導通部分を設けて回転錘21の動作状態を把握することも可能であるが、効率よく発電するためには帯電膜23と発電電極25とのギャップを厳密に管理する必要があり、バネ接点31A,31Bが回転部材22に接触した際の押し力でギャップが変化する可能性がある。一方、回転錘21については前述のギャップ管理は必要なく、金属であるため電気を導通させやすい。このため、バネ接点31A,31Bは、回転錘21と導通させる方が適している。
【0036】
バネ接点31の方式には、シングル接点とダブル接点の2通りがある。
図6(A)は、シングル接点のバネ接点31Aの配置位置を示し、
図6(B)は、ダブル接点のバネ接点31Bの配置位置を示す。以下、それぞれの構成における動作について説明する。なお以降の説明では、電源電圧をVssとし電源接地電圧をVddと呼ぶことにする。
【0037】
図7(A)および
図7(B)は、回転検知部30Aの回路構成の例を示す図である。
図7(A)は、シングル接点のバネ接点31Aを用いた場合の例である。
【0038】
図7(A)に示すように、回転検知部30Aは、バネ接点31Aと抵抗32を有し、回転錘21の回転の有無に応じて異なる信号を制御部70に出力する。回転軸11に別のバネを当てるなどしてVddと導通させ、回転軸11に接続する回転錘21もVddの電位にする。制御部70への入力信号は、バネ接点31Aと回転錘21が接触していないときには抵抗32を介してVssの電位となり、バネ接点31Aと回転錘21が接触しているときには、回転錘21を介してVddの電位となる。回転錘21が停止しているときには、バネ接点31Aと回転錘21が接触している状態と、接触していない状態との両方が考えられる。このため、入力信号の電位がVddからVssに、またはVssからVddに変化することを検知することで、制御部70は、回転錘21が回転しているか否かを判断する。制御部70は、回転錘21が回転していることを示す信号が回転検知部30Aから一定時間入力されないか、または回転検知部30Aからの入力電圧に変化がないときには発電終了と判断し、充電部40の動作を停止させる。なお、回転検知部30Aの形態に応じて、VssとVddとを入れ替えても構わない。
【0039】
図7(B)は、ダブル接点のバネ接点31Bを用いた回転検知部30Aの回路構成の例を示す図である。
図7(A)との違いは、バネ接点31Bの接続構成であり、回転錘21がVddと制御部70への入力信号とを導通させる点にある。
【0040】
図6(B)のように並列に配置された2つのバネ接点31Bは、一方がVddと接続しており、他方が補助基板13の回転検知部30Aに接続されている。回転錘21が回転して2つのバネ接点31Bに接触すると、回転錘21が2つのバネ接点間を短絡するため、補助基板13の回転検知部30AにVddが入力される。すると、それまで抵抗32を通してVssの電位であった制御部70への入力信号はVddに変化し、回転錘21が回転したことを検出することが可能になる。
図7(B)の形態では、
図7(A)とは異なり、回転錘12をVddに接続する必要がなく、別の接触バネを回転軸11に接触させることはないため、その分、回転部材22における接触抵抗を低減させることができる。
【0041】
バネ接点31の位置が回転錘21の外縁21Eに近い場合には、バネ接点31の配置位置が軸中心付近であるときに比べて、回転錘21が回転したときにバネ接点31が回転錘21と接触する距離が長くなるため、接触抵抗が大きくなり回転錘21の回転力が下がる。そこで、バネ接点31は回転錘21の軸中心付近に配置することが好ましい。すなわち、バネ接点31は、回転錘21の径方向において、回転錘21の外縁21Eよりも回転錘21の回転軸11に近い位置で回転錘21に接触させることが好ましい。回転錘21の中心付近は最もトルクが大きく、バネ接点31の機械的負荷の影響を抑えることができる。
【0042】
また、バネ接点31は、回転錘21の中心角の大きさに合わせて回転錘21の回転軸11の周りに均等な角度で周方向に複数個配置される。このように複数個のバネ接点31を周方向に均等に配置することによって、回転錘21の回転状態の検知の応答性を早めることができる。しかしながら、バネ接点31の個数は、多すぎると回転錘21の回転に負荷を与えることになるため、360度/(回転錘の中心角)(個)が好ましい。また、回転錘21の中心角の大きさは、回転効率を考慮すると軸中心から120度程度が理想的である。このため、バネ接点31の個数は3個が理想的であり、各々が120度ごとに均等配置されることが好ましい。
【0043】
補助基板13のスペース制約やコストダウンなどにより、バネ接点31を3個以上配置できない場合には、回転錘21の停止位置に近い部位にバネ接点31を配置すると、小さな回転錘21の振動も検出しやすくなる。以下、本実施手段を腕時計に適用した例で説明する。
【0044】
図24のように金属バンド210が装備された時計200を平置きする場合には、金属バンド210を折り合わせて時計文字板面を上方に向けた状態にすることが多い。この場合、金属バンド210の構造的な理由から時計文字板面は水平にならず、時計の12時方向か6時方向に傾くことになる。よって、回転錘21もその円弧中心が12時か6時位置で停止している。矢印300は重力方向を示している。バネ接点31’の配置位置を、回転錘21の円弧中心が12時か6時位置に停止しているときには回転錘21と接触せず回転錘21が少しでも動いた際に接触する位置とすることで、時計の携帯状態を鋭敏に検知することが可能となる。
【0045】
図25のように時計200を腕に携帯して腕を下げている状態(例えば歩行中など)では、右手携帯の場合は9時、左手携帯の場合は3時方向に回転錘21の円弧中心が位置していることが多い。ここでも、矢印300は重力方向を示している。したがって、バネ接点31’’の配置位置を、回転錘21の円弧中心が3時か9時位置で停止しているときに回転錘21とは接触せず回転錘21が少しでも動いた際に接触する位置とすることで、時計の携帯状態を鋭敏に検知することが可能となる。
【0046】
また、ある程度の回転錘21の回転がないときには降圧回路などの重負荷機能を起動させたくない場合には、回転錘21が少し動いたくらいでは接触しない位置にバネ接点31’’を配置することで、時計の携帯状態に対して検知性能を引き下げることが可能となる。つまり、定常停止する位置における回転錘21と、バネ接点31の配置位置との離間距離により、時計の携帯状態に対する検知性能を選択可能となる。
【0047】
これまで、回転錘21にバネ接点31を接触させることにより回転錘21の動作状態を検知する方法を示したが、バネ接点31A,31Bの代わりに、回転錘21と接触する部分が非導通のプッシュスイッチを用いて、回転錘21がスイッチ直上を通過する際にスイッチを押す方法であってもよい。また、バネ接点31Aまたは31Bの代わりに光や磁気などを用いて回転錘21の動作を検知してもよい。この場合には、回転錘21に接触による負荷がかからないため、発電量を低下させることがない。
【0048】
図8は、電子機器1’のブロック図である。電子機器1’は、
図2に示す電子機器1と同様の筐体10、発電部20、回転検知部30A、充電部40、蓄電部50、時計表示部60および制御部70に加えて、充電部40と蓄電部50の間に充電検知部80を有する。
【0049】
図9は、充電検知部80の回路構成の例を示す図である。充電検知部80は、発電が終了したか否かを判断するための回路であり、
図9に示すように、抵抗81と電圧モニタ部82を有する。電子機器1’では、制御部70は、抵抗81に発生する電圧値を電圧モニタ部82にてモニタすることによって、蓄電部50への充電電流量を把握する。そして、制御部70は、蓄電部50への充電電流量が基準値以下になった場合には、発電が終了したと判断し、電力消費を抑えるために、充電部40の降圧回路42の動作を終了させる。また、制御部70は、充電電流量のみならず、回転検知部30Aにおける信号電圧が一定時間以上にわたり変化しなかった場合にも、発電が終了したと判断し、降圧回路42の動作を終了させてもよい。
【0050】
図10は、電子機器2のブロック図である。電子機器2は、筐体10、発電部20、回転検知部30B、充電部40、蓄電部50、時計表示部60および制御部70を有する。電子機器2の構成は、回転検知部30Bを除いて、
図2に示す電子機器1の構成と同一である。回転検知部30Bは、回転部材22の回転に応じて静電誘導により発生する電圧を検知するための回転検知電極33および回転検知回路34を有する。
【0051】
電子機器1の回転検知部30Aでは、回転錘21が動くときにバネ接点31が負荷になるため、発電効率が悪くなる。そこで、電子機器2では、バネ接点31を設ける代わりに、発電部20の対向基板24上に、発電電極25とともに回転検知電極33が配置される。すなわち、電子機器2では、エレクトレットの発電基板(対向基板24)上に、発電電極25とは別系統の、発電電極25と同期した信号を出力する回転検知電極33が設けられる。そして、回転検知電極33の出力信号に応じて制御部70が電子機器2の携帯状態を認識し、機器の動作を制御する。対向基板24上に回転検知電極33を設ければ、回転検知電極33用のスペースを新たに確保する必要はなく、回転部材22の回転からエレクトレットによる発電の状態を瞬時に認識することができる。
【0052】
なお、回転検知電極33は、回転部材22と対向基板24のうち、発電電極25が設けられている方の部材に設けられる。したがって、対向基板24ではなく、回転部材22上に、発電電極25と回転検知電極33を配置してもよい。
【0053】
図11(A)は、
図5Bの形態における、発電電極25、発電出力端子251、回転検知電極33および回転検知出力端子331の配置例を示す図である。
図11(B)は、
図11(A)における配線部分の拡大図であり、
図11(C)は、
図11(A)における回転検知電極が配置された部分の拡大図である。
図11(A)では、対向基板24の上面図に、回転部材22の外縁22Eを破線で重ねて示している。
図11(A)に示すように、対向基板24の上面には、発電電極25、発電出力端子251、回転検知電極33および回転検知出力端子331が2つずつ設けられる。以下では、2つの発電電極25のことをそれぞれVin1,Vin2ともいい、2つの回転検知電極33のことをそれぞれVinS1,VinS2ともいう。また、2つの発電出力端子251のことをそれぞれVin11,Vin21ともいい、2つの回転検知出力端子331のことをそれぞれVinS11,VinS21ともいう。
【0054】
Vin1とVin11とは配線301により、Vin2とVin21とは配線302により、VinS1とVinS11とは配線303により、VinS2とVinS21とは配線304により、それぞれ導通している。Vin1,Vin2で発電した電荷は、Vin11,Vin21を介して充電部40に運ばれて電子機器1の動作に用いられる。一方、VinS1,VinS2で発電した電荷は、VinS11,VinS21を介して回転検知回路34に運ばれ、回転部材22の回転検知に用いられる。
【0055】
VinS1はVin1と同期して、VinS2はVin2と同期して、それぞれ電圧を発生させる。これにより、VinS1、VinS2の電圧波形を監視することで、回転部材22の回転による発電状況の把握が可能になる。さらに、この同期をより正確にするためには、発電電極25の側面の延長線上に回転検知電極33の側面を配置することが好ましい。ここでいう側面とは、回転軸11を中心とする回転部材22、または対向基板24の半径方向における境界面のことを指している。
【0056】
図11(C)を用いて詳しく説明する。Vin1(25)の側面Aの延長線上にVinS1(33)の側面AAが、Vin1(25)の側面Bの延長線上にVinS1(33)の側面BBが、Vin2(25)の側面Cの延長線上にVinS1(33)の側面CCが、Vin1(25)の側面Dの延長線上にVinS1(33)の側面DDが、それぞれ配置される。これより、回転部材22の帯電膜23に対するVin1とVinS1との近接距離が同等になるため、双方で電荷の発生するタイミングが一致し、VinS1の発電波形とVin1の回転検出波形が精密に同期する。すなわち、回転検知電極33の側面は、発電電極25の側面と平行であることが好ましい。
【0057】
また、回転検知電極33は、発電電極25の放射部25’の中間(回転部材22の回転中心と外縁22Eの中間地点)ではなく、放射部25’の内側端部または外側端部に配置することが好ましい。すなわち、回転検知電極33は、回転軸11の近傍か、または回転部材22の外縁22Eに沿って配置することが好ましい。これは、回転部材22の回転中心と外縁22Eの中間地点に回転検知電極33を設けると、発電電極25が分割されて発電効率が落ちるためである。また、回転検知電極33を放射部25’の中間に配置すると、分割された発電電極25同士をスルーホールを介して配線接続する必要があり、配線上も不都合であるためである。回転検知電極33は、電位の変化のみを検出できればよく、多くの電流量を必要としないため、発電面積が小さく発電への寄与度が小さい回転中心の付近か、または回転部材22の外縁22Eの付近に配置することが適している。
【0058】
図12Aは、発電電極25と回転検知電極33の別の配置例を示す図である。
図12Aは、回転検知電極33が1個の場合の例を示す。放射部25’の回転軸11近傍に回転検知電極33が1個配置され、そこで発電した信号が配線により回転検知出力端子VinS11に入力される。回転検知電極33は1個あれば振動状態の検知は可能であるため、回転検知部30Bは回転検知電極33を1個だけ有してもよい。ただし、精度良く回転部材22の振動状態を検出するためには、回転検知部30Bは、回転検知電極33を複数個有することが好ましい。回転検知電極33が2個あれば、より精密に回転部材22の回転状態を検知することができる。この理由について以下に述べる。
【0059】
回転検知電極33の発電波形は、回転部材22の回転により帯電膜23が回転検知電極33に近接することで生じる電荷によるものであり、VinS1に帯電膜23が近接すると、VinS1の発電波形はVssからVdd方向に変化する。一方、VinS2は帯電膜23が遠ざかり始めるために、VinS2の発電波形がVdd方向からVssに変化する。しばらくして、VinS1から帯電膜23が遠ざかり始めると、VinS1の発電波形はVdd方向からVssに変化し、その一方でVinS2に帯電膜23が近接するので、VinS2の発電波形はVssからVdd方向に変化する。このように、回転検知電極33に対する帯電膜23の接近状態、すなわち回転部材22の回転状況を、2個の回転検知電極33による発電波形から交互に検出することができる。
【0060】
回転検知電極33が1個の場合には、回転検知電極33が帯電膜23と近接していない期間において、回転部材22の振動状態を発電波形から検知することができないが、回転検知電極33が2個の場合には、得られた2つの発電波形を例えば加算することにより連続的に回転検知ができるため、前述のような回転部材の振動状態を把握できない期間が生じることなく、回転検知の精度が向上する。さらに、2個の回転検知電極33の大きさを変えて、両者の発電量に差をつければ、回転検知部30Bの出力電圧値から、回転部材22の回転方向を判定することも可能である。
【0061】
図12B(A)は、発電電極25と回転検知電極33の別の配置例を示す図である。また、
図12B(B)は、
図12B(A)の部分拡大図である。
図11(A)との違いは大きく2点ある。1点目は、発電出力端子Vin11,Vin21が配置されていた位置に回転検出出力端子VinS11,VinS21が配置され、回転検知出力端子VinS11が配置されていた位置に発電出力端子Vin11が配置されるとともに、VinS21の側に発電出力端子Vin21が配置されている点である。また、2点目は、Vin11とVin1およびVin21とVin2がそれぞれスルーホールを介して配線301,302で接続されている一方で、VinS1とVinS2が外縁22Eの近傍に配置され、VinS1とVinS11、さらにVinS2とVinS21が、それぞれ配線303,304により短距離で接続されている点である。
【0062】
図11(A)では、配線301に対して対向基板24背面側の配線304が上面視でクロスしており、この部分を変更したものが
図12B(A)である。
図11(A)の配置構造では以下の状況が生じる。回転検出電極VinS1と発電電極Vin1は、同じ放射部の区画に配置されており、回転部材20が回転したときに、同じタイミングで帯電膜23に近接し同じ極性に帯電するため、配線301と配線303との電圧波形は同じVdd方向に変化し、相互の電位差が少ない。このとき、回転検出電極VinS2から帯電膜23が遠ざかっていくため、VinS2の電位はVdd方向からVssに変化し配線304も同様の電位に変化する。つまり、配線301はVdd方向、配線304はVssに変化するため、配線301と304とには大きな電位差が生じる。さらに、上面視で配線301と304がクロスする部位での双方の間隙は、対向基板24の厚み分しかない。静電誘導発電で発生する電流は、一般の電子回路に比べて流れる電流が格段に少ないため、配線301に電位差の大きい配線が近接すると電荷が影響を受け、発電電流量が低下してしまう可能性がある。
【0063】
そこで、
図12B(A)に示す構成にすることで、配線301が配線303と、配線302が配線304と上面視ではクロスするが、それぞれ同じタイミングで帯電膜に近接して同じ極性に帯電しており、電位差は少ないため相互の影響を少なくすることができる。
【0064】
図12C(A)は、発電電極25と回転検知電極33のさらに別の配置例を示す図である。また、
図12C(B)は、
図12C(A)の部分拡大図である。
図12B(A)の配置例では、配線301と配線302の一部がスルーホールになっているため、わずかながらインピーダンスが上がってしまう。これに対し、
図12C(A)の配置例では、発電に関係のない回転検知電極33にのみスルーホールを設けている。
図11(A)と異なる点は、配線302がスルーホールを介さずにVin21とVin2を接続しており、その配線302を挟むように外縁22Eの近傍に分割されたVinS2が配置され、発電に寄与しない部位に設置されたスルーホールを介した配線304で、分割されたVinS2とVinS21とが接続されている点である。このような構成にすることにより、配線302にスルーホールを用いる必要がないため、配線インピーダンスによる発電電流の減少を防止することができるとともに、配線304用のスルーホールを、発電用の放射部25’に設けないため発電面積を最大限に確保することができる。したがって、発電効率の観点からは、
図11(A)〜
図12C(A)に示した4つの配置例の中では、
図12C(A)の配置が最も好ましい。
【0065】
図13(A)および
図13(B)は、エレクトレットによる回転検知電極33の電位変化の説明図である。
図13(A)に示す状態では、エレクトレット(帯電膜23)が回転検知電極33から離れているため、回転検知電極33の電位はV1のままとなる。一方、
図13(B)に示す状態では、エレクトレット(帯電膜23)が回転検知電極33に接近しており、回転検知電極33がエレクトレットによる影響を受けているため、回転検知電極33の電位はV1より+方向に高くなる。
【0066】
図14(A)および
図14(B)は、回転検知回路34の回路構成の例を示す図である。回転検知回路34は、回転検知電極33からの入力信号を検知するための回路であり、その信号の電位が閾値を超えたか否かに応じて、異なる2値の信号を出力する。
【0067】
図14(A)に示すように、回転検知回路34は、ダイオード35による保護回路、抵抗36および比較器37を有する。VinS1からの信号は、抵抗36を介して電源V1を接続することでバイアスされ、電源Vssと接地電圧Vddの間に配置された保護回路を介して比較器37に入力される。また、比較器37には、Vin1の電位からの振動の有無を判定するための閾値となる電位V2も入力される。比較器37は、VinS1の電位をV2と比較し、その結果を2値で出力する。なお、図示しないが、VinS2からの信号についても、
図14(A)と同じ回路により、電位V2との比較結果が2値で出力される。ここで、電位V1,V2は、Vdd>V2>V1>Vssの関係を満たすものとする。
【0068】
図15(A)〜
図15(D)は、回転検知電極33の出力波形の例を示す図である。
【0069】
図15(A)は、VinS1から回転検知回路34への入力波形を示し、
図15(B)は、VinS1から入力され回転検知回路34の保護回路を通過した後の波形を示す。保護回路によって、
図15(B)に示すように、入力信号のうち、電源電位を超える部分はカットされる。また、
図15(C)は、比較器37の(すなわち回転検知回路34の)出力波形を示す。比較器37の出力は閾値としての電位V2を基準に決定されるので、その出力波形は、VinS1からの入力電圧が閾値V2を超えるか否かに応じて矩形波になる。VinS1からの入力波形は正弦波であるため、
図15(A)と
図15(C)を比べるとわかるように、比較器37の出力波形における立下りから立上りまでの時間間隔は、VinS1の出力波形における立上りから立下りまでの時間間隔より若干短くなる。
【0070】
図15(D)は、VinS2についての回転検知回路34からの出力波形を示す。VinS1とVinS2で発生する電圧の波形は位相が互いに180度ずれているため、回転検知回路34からの出力波形も同様に、VinS1とVinS2の間で位相が180度ずれる。回転部材22が回転していれば、
図15(C)と
図15(D)に示すような波形が回転検知回路34から出力され、回転部材22が回転していなければ、回転検知回路34からの出力波形に電位の変化は生じない。したがって、
図15(C)と
図15(D)に示すVinS1,VinS2についての回転検知回路34からの出力をモニタすることによって、発電部20の回転部材22の回転状態、すなわちエレクトレットの発電状態がわかる。
【0071】
なお、
図14(B)に示すように、比較器37を用いる代わりに、V1の電位をVssに設定し、インバータ370などを用いてもよい。
【0072】
図16(A)〜
図16(D)は、充電部40の回路構成の例を示す図である。
【0073】
図16(A)に示すように、充電部40は、整流回路41および降圧回路42を有する。発電部20にて発生した交流電圧は、整流回路41により全波整流され降圧回路42にて降圧されて、蓄電部50に出力される。
【0074】
図16(B)〜
図16(D)は、それぞれ、降圧回路42の異なる回路構成を示す。降圧回路42は、直並列の接続を切換え可能な複数組のコンデンサで構成される。ここでは、互いに直並列に接続されたCa1〜Ca10とCb1〜Cb10の10個ずつ2組のコンデンサで降圧回路42が構成される場合の例を示している。
図16(B)は、降圧回路42が動作していない状態を示し、このとき、降圧回路42の各コンデンサは蓄電部50に並列に接続される。一方、
図16(C)および
図16(D)は降圧回路42が動作している状態に対応する。
【0075】
降圧回路42は、制御部70による制御の下で、回転検知電極33からの出力波形の周期に合わせて、
図16(B)〜
図16(D)に示すいずれかの状態に切り換えられる。例えば、回転検知部30Bにより回転部材22の回転(すなわち発電部20の発電)が検知されると、降圧回路42は、(B)→(C)→(B)→(D)→(B)→(C)→・・・の順に切り換えられる。すなわち、発電のない
図16(B)の状態から、
図16(C)の状態に切り替えて、直列に接続されたCb1〜Cb10を直流電圧Vinで充電させ、
図16(B)の状態に戻して並列に接続されたCb1〜Cb10の電荷を蓄電部50に流し、続いて
図16(D)の状態に切り替えて直列に接続されたCa1〜Ca10を直流電圧Vinで充電させ、再度
図16(B)の状態に戻して並列に接続されたCa1〜Ca10の電荷を蓄電部50に流す、という動作が繰り返される。
【0076】
これは、コンデンサに蓄えられた電荷を蓄電部50に流すには時間がかかるので、一方の組のコンデンサが放電している最中にも他方の組のコンデンサで充電ができるようにするためである。発電電極25と回転検知電極33はともに対向基板24の放射部25’の上に設けられているため、両者の電圧変化の周期は一致している。このため、回転検知回路34からの出力波形の周期に合わせてコンデンサの接続を切り換えれば、発電電極25の電圧変化のピークに合わせて常にどちらかの組のコンデンサに電荷を入れることができる。これにより、発電部20から蓄電部50への効率的な充電を行うことが可能になる。
【0077】
図17(A)〜
図17(D)は、発電部20の発電状態と、回転検知回路34の出力波形と、降圧回路42の状態との対応関係をまとめた図である。
図17(A)は、発電部20(発電電極25)からのVin1−Vin2の出力波形であり、
図17(B)は、充電部40の整流回路41を通過した後の、
図16(A)に示すVinにおける波形である。
図17(C)および
図17(D)は、それぞれ、
図15(C)および
図15(D)と同じ、VinS1,VinS2についての回転検知回路34からの出力波形である。また、
図17(E)は、
図16(B)〜
図16(D)に示す降圧回路42の状態を表している。
【0078】
なお、回転検知電極33からの信号と同期して降圧回路42の状態を切り替える代わりに、回転検知電極33からの信号のエッジを基準に、遅延回路などを用いてその切替えタイミングを変化させてもよい。
【0079】
図18(A)および
図18(B)は、回転検知電極の配置の変形例を示す図である。これらの図では、
図3と同様に、筐体10の内部構造の模式的な断面を示している。回転検知電極33は、必ずしも発電電極25と同じ面(上記の説明では対向基板24の上面)に設けなくてもよい。
【0080】
例えば、
図18(A)に示すように、回転部材22の上面、すなわち、帯電膜23が形成されている面とは反対側の面に、回転検知電極33’を配置してもよい。この場合、例えば、回転検知電極33’と対向する補助基板13の下面に、回転検知用の別の帯電膜38を設ければ、回転検知電極33’と帯電膜38の間の静電誘導現象により、回転部材22の回転を検知可能である。また、上記の回転検知用の別の帯電膜38と回転検知電極33’との配置を入れ替えてもよく、この構成であれば回転検知電極33’が発電した電流を補助基板13に設置された電気配線を通じて回転検知回路34に導きやすく、電気配線のインピーダンスを低くすることができる。
【0081】
また、
図18(B)に示すように、回転部材22の回転軸11と動力的に接続された別輪列に、回転検知用の別の帯電膜38を配置してもよい。
図18(B)では、回転軸11に設置された歯車14を介して回転軸15の周りに回転する別の回転部材16の上面に帯電膜38が配置された例を示している。この場合には、回転部材16に対向する基板17の下面に回転検知電極33’を設ければよい。この構成であれば、回転検知電極33’で発生した信号を基板17の配線で回転検知部30に導くことができるため、配線長を最小限にすることが可能でノイズの影響を受けにくくすることができる。前述の配線長を長くしても問題ない場合には、帯電膜38と回転検知電極33’の配置を入れ替えてもよい。なお、上記のいずれの場合でも、回転検知電極33’と帯電膜38の形状は特に制限されない。
【0082】
また、図示しないが、回転検知電極33は、帯電膜23に対向して配置され回転検出信号が作られる位置であれば、回転部材22または対向基板24の外周部分や、回転軸11、その他のデッドスペースに回転検知電極33を配置してもよい。この場合、回転検知電極33の面積分だけ発電部20の発電量が減少することを防止できるという利点がある。
【0083】
図19は、電子機器3のブロック図である。電子機器3は、筐体10、発電部20、回転検知部30C、充電部40、蓄電部50、時計表示部60、制御部70および直流除去部90を有する。電子機器3の構成は、回転検知部30Cおよび直流除去部90を除いて、
図10に示す電子機器2の構成と同一である。
【0084】
電子機器3では、回転検知部30Cは、直流除去部90を介して発電部20と電気的に接続され、発電部20で発生した電流の交流成分を取り出してその電圧変化を検出することにより、回転部材22の回転(発電部20の発電)を検知する。静電誘導により発電した電圧は高電圧になることが多く、発電部20からの出力電圧によって回転検知部30Cの回路の耐圧を超えてしまい、ICが破壊される恐れがある。そこで、電子機器3では、発電部20と回転検知部30Cの間に直流除去部90を設けることにより、発電部20から回転検知部30Cに流れ込む電流の直流成分を除去し、ICの破壊を防止する。なお、電子機器3では、電子機器2とは異なり対向基板24上に回転検知電極33を配置しないため、回転検知電極33の面積分だけ発電部20の発電量が減少することがなく、電子機器2よりも発電部20の発電能力を向上させることが可能である。
【0085】
図20は、直流除去部90の回路構成の例を示す図である。直流除去部90は、一般的なハイパスフィルタ回路であり、発電部20から回転検知部30Cに流れ込む直流電流を除去する。このハイパスフィルタ回路のカットオフ周波数と回路素子定数との関係は、f=1/(2πCR)の式から求められる。ここで、fはカットオフ周波数、Cはコンデンサの容量、Rは抵抗である。エレクトレットの最も低い周波数を10Hzとすると、例えば、周波数fをその周波数以下のf=5Hzに設定し、容量Cと抵抗RをC=330pF,R=96.50646593MΩにすればよい。このような回路定数により、回転検知部30Cへの入力信号のうち、5Hz以下の成分を除去することが可能である。また、本実施形態に用いられるコンデンサは、入力される高電圧の信号に対応するために高い耐圧特性を備える必要があるが、集積回路に高耐圧特性を持たせると製造コストが上がってしまう。したがって、直流除去部90は回転検知部30Cと一体化した集積回路でもよいが、コンデンサのみ集積回路でなく別部品にして印加電圧の耐圧が高い部品を用い、他の回路は耐圧が低い集積回路で構成することで、製造コストの削減を図ることができる。
【0086】
以下では、回転検知部30A,30B,30Cの検知結果に応じた、制御部70による時計表示部60の動作の制御について説明する。この制御は、上記した電子機器1,1’,2,3のいずれについても共通である。以下の
図21〜
図23に示すフローは、制御部70内のROMに予め記憶されたプログラムに従って、制御部70内のCPUにより実行される。
【0087】
図21は、制御部70による動作モードの切替え制御のフローチャートである。時計表示部60は、通常通りの運針を行って時刻を表示する通常モードと、運針を行わずに内部で計時処理を行うことで消費電力を削減する節電モードとのいずれかのモードで動作する。そこで、制御部70は、以下で説明する動作モード切替え制御により、回転検知部からの出力に応じて、時計表示部60の動作モードを、通常モードと通常モードより消費電力が少ない節電モードとのいずれかに設定する。
【0088】
電子機器の電源が入ると、まず、制御部70は、回転部材22の回転状態が継続している回転時間と、回転部材22が回転しない状態(非回転状態)が継続している非回転時間を表すカウンタを0に初期化し、電子機器が節電モードにあることを示す節電フラグをオフにする(ステップS11)。
【0089】
そして、節電フラグがオフの場合(ステップS12でYes)には、制御部70は、時計表示部60は通常モードであると判断し、時計表示部60に時刻計時処理と運針処理を実行させる(ステップS13)。一方、節電フラグがオンの場合(ステップS12でNo)には、制御部70は、時計表示部60は節電モードであると判断し、時計表示部60に時刻計時処理のみを実行させる(ステップS14)。なお、ここでいう時刻計時処理は、時刻データを算出して求める処理のことである。また、運針処理とは、時刻計時処理で算出された時刻データに基づく時分秒を指し示すため、モータを駆動して指針を移動させる処理のことをいう。つまり、節電モードのフラグがオンしたときには、時刻算出は継続して行われるが、その時刻を指針で表示するためのモータ駆動が行われないので、消費電流を低減することができる。節電フラグがオンからオフに移行したときには、時刻計時処理で求められた現在時間に合致するように時分秒の針を移動させる運針が行われる。
【0090】
そして、回転検知部30A,30B,30Cによる回転状態のモニタタイミングになったとき(ステップS15でYes)に、制御部70は以下の処理を実行し、モニタタイミングでないとき(ステップS15でNo)には、処理はステップS12に戻る。モニタタイミングにおいて、制御部70は、回転検知部30A,30B,30Cの出力から、回転部材22が回転状態であるか否かを判定する(ステップS16)。例えば、電子機器2では、制御部70は、回転検知電極VinSの入力があるか否かを判定する。
【0091】
回転検知部30A,30B,30Cの出力が回転状態を示している場合(ステップS16でYes)には、制御部70は、電子機器が携帯状態にあると判断し、回転時間のカウンタをアップさせるとともに、非回転時間のカウンタを初期化する(ステップS17)。ここで、回転部材22の回転状態が一定時間の間継続していない場合(ステップS18でNo)には、処理はステップS12に戻る。回転状態が一定時間の間継続している場合(ステップS18でYes)のみ、制御部70は、ステップS19にて降圧回路42の動作を開始させる。
【0092】
そして、節電フラグがオンの場合(ステップS20でYes)には、制御部70は、節電フラグをオフにして(ステップS21)、処理はステップS12に戻る。節電フラグがオフの場合(ステップS20でNo)には、そのまま処理はステップS12に戻る。すなわち、回転状態が一定時間だけ継続した場合に、制御部70は、降圧回路42の動作を開始させて、時計表示部60を通常モードに移行させる。
【0093】
一方、ステップS16において回転検知部30A,30B,30Cの出力が回転状態を示していない場合(ステップS16でNo)には、制御部70は、電子機器が非携帯状態にあると判断し、非回転時間のカウンタをアップさせるとともに、回転時間のカウンタを初期化する(ステップS22)。ここで、非回転状態が第1の時間の間継続していない場合(ステップS23でNo)には、処理はステップS12に戻る。非回転状態が第1の時間の間継続している場合(ステップS23でYes)のみ、制御部70は、ステップS24にて降圧回路42の動作を停止させる。
【0094】
そして、非回転状態が第1の時間より長い第2の時間の間継続している場合(ステップS25でYes)には、制御部70は、節電フラグをオンにして(ステップS26)、処理はステップS12に戻る。非回転状態が第2の時間の間継続していない場合(ステップS25でNo)には、そのまま処理はステップS12に戻る。すなわち、制御部70は、非回転状態が第1の時間だけ継続した場合に、降圧回路42の動作を停止させ、非回転状態がさらに長い第2の時間だけ継続したときに、時計表示部60を節電モードに移行させる。
【0095】
このように、制御部70は、回転検知部からの出力に応じて、非携帯状態と判断したときには時計表示部60を節電モードに移行させ、携帯状態と判断したときには時計表示部60を通常モードに移行させる。時計表示部60の動作モードを切り換えることで、電子機器の消費電力を削減することが可能になる。
【0096】
図22は、制御部70によるモータ駆動制御のフローチャートである。時計表示部60の運針は、消費電流量が比較的小さい通常のパルスと、消費電流量が比較的大きい負荷補償パルスのいずれかで、時計表示部60内のモータを駆動することにより行われる。消費電力を削減するためには負荷補償パルスをなるべく使わないようにしたいが、回転部材22が回転しているときには、ユーザが電子機器を携帯して活動している状態であるから、モータが駆動する歯車機構への負荷が変動し、通常のパルスではモータが回転しない場合がある。そこで、制御部70は、以下で説明するモータ駆動制御により、回転検知部30A,30B,30Cが回転部材22の回転を検知したときには、回転検知部30A,30B,30Cが回転部材22の回転を検知していないときより強いパルス、すなわち通常のモータ駆動パルスより駆動力の高いパルスで時計表示部60を駆動させる。
【0097】
まず、制御部70は、現在が運針タイミングであるか否かを判定し(ステップS31)、運針タイミングのときのみ以下の処理を実行する。
【0098】
運針タイミングのとき(ステップS31でYes)には、制御部70は、回転検知部30A,30B,30Cの出力から、回転部材22が回転状態であるか否かを判定する(ステップS32)。
【0099】
回転検知部30A,30B,30Cの出力が回転状態を示している場合(ステップS32でYes)には、電子機器が携帯状態にあり、機器の振動により通常のパルス出力ではモータが回転しない可能性がある。そこで、確実に運針させるために、制御部70は、負荷補償パルスを出力させる(ステップS36)。そして、処理はステップS31に戻り、制御部70は次の運針タイミングまで待機する。
【0100】
一方、回転検知部の出力が回転状態を示していない場合(ステップS32でNo)には、電子機器は非携帯状態であり、機器の振動がないため、安定してモータを駆動させることができる。そこで、消費電力を削減するために、制御部70は、通常のパルスを出力させる(ステップS33)。
【0101】
続いて、制御部70は、時計表示部60における図示しないモータの回転検出回路の電流波形を検知する(ステップS34)。モータが回転しているか否かでその電流波形が異なるため、回転検出部30A,30B,30Cの電流波形からモータの回転が検知されなければ(ステップS34でNo)、確実に運針させるために、制御部70は、負荷補償パルスを出力させる(ステップS36)。そして、処理はステップS31に戻り、制御部70は次の運針タイミングまで待機する。
【0102】
一方、モータの回転が検知されれば(ステップS34でYes)、制御部70は、もう一度、回転検知部30A,30B,30Cの出力から、回転部材22が回転状態であるか否かを判定する(ステップS35)。これは、回転部材22が回転している場合には、エレクトレットの発電ノイズにより、ステップS32のモータ回転検出過程で誤検知が生じる可能性があり、また、ステップS34で、モータが実際には回転していないのに回転しているとの誤検知が生じる可能性があるためである。
【0103】
回転検知部30A,30B,30Cの出力が回転状態を示している場合(ステップS35でYes)には、確実に運針させるために、制御部70は、念のためもう一度負荷補償パルスを出力させる(ステップS36)。その後、処理はステップS31に戻る。一方、回転検知部30A,30B,30Cの出力が回転状態を示していない場合(ステップS35でNo)には、電子機器は非携帯状態であり、機器の振動がないため、負荷補償パルスは出力させず、そのまま処理はステップS31に戻る。
【0104】
上記の制御により、機器の振動があるときでも時計表示部60内のモータをより確実に回すことが可能になる。また、ステップS32の判定でステップS36に進むことにより、機器の振動があるときには、ステップS33とステップS36で2回のパルスが出力されることがなくなるため、消費電力を削減することができる。
【0105】
図23は、制御部70による電波受信制御のフローチャートである。時計表示部60は、例えば1日に1回など、定期的に外部から電波を受信することにより表示時刻を修正する機能を有しており、電波を受信する受信部としても機能する。ただし、機器の振動があるときには、エレクトレットの発電ノイズにより、電波の受信に失敗する可能性がある。そこで、制御部70は、以下で説明する電波受信制御により、回転検知部30A,30B,30Cが回転部材22の回転を検知したときには、時計表示部60による電波の受信を中止させる。
【0106】
まず、制御部70は、現在が受信タイミングであるか否かを判定し(ステップS41)、受信タイミングのときのみ以下の処理を実行する。
【0107】
受信タイミングのとき(ステップS41でYes)には、制御部70は、強制的に受信処理を行うように使用者が電子機器を設定しているか否かを判定する(ステップS42)。強制受信の設定がなされている場合(ステップS42でYes)には、電波を受信できる可能性があるため、ステップS44に進んで、制御部70は受信動作を実施させる。
【0108】
一方、強制受信の設定がなされていない場合(ステップS42でNo)には、制御部70は、回転検知部30A,30B,30Cの出力から、回転部材22が回転状態であるか否かを判定する(ステップS43)。
【0109】
回転検知部の出力が回転状態を示している場合(ステップS43でYes)には、エレクトレットの発電ノイズにより受信に失敗する可能性がある。また、回転部材22が回転状態にあるときには、電子機器を携帯している状態であるから、電波を受信するアンテナの方向が一定にならず、受信電波強度が変動するため時刻データの受信に失敗する確率が高くなる。このため、制御部70は、回転部材22が回転状態にあると電波の受信を中止させ(ステップS48)、受信失敗の処理を行って(ステップS49)、電波受信制御を終了する。
【0110】
一方、回転検知部の出力が回転状態を示していない場合(ステップS43でNo)には、エレクトレットの発電ノイズがなく、安定的に電波を受信できる可能性がある。このため、ステップS44に進んで、制御部70は受信動作を実施させる。続いて、制御部70は、ステップS44での受信に成功したか否かを判定する(ステップS45)。
【0111】
ステップS44での受信に失敗した場合(ステップS45でNo)には、制御部70は、それ以降の受信を中止させる(ステップS48)。そして、制御部70は、ステップS44で受信されたデータを無効にする受信失敗の処理を行って(ステップS49)、電波受信制御を終了する。一方、受信に成功した場合(ステップS45でYes)には、制御部70は、もう一度、回転検知部30A,30B,30Cの出力から、回転部材22が回転状態であるか否かを判定する(ステップS46)。
【0112】
回転検知部30A,30B,30Cの出力が回転状態を示している場合(ステップS46でYes)には、たとえ受信に成功しても、得られた時刻データにはエラーが含まれる可能性がある。このため、制御部70は、それ以降の受信を中止させる(ステップS48)。そして、制御部70は、ステップS44で受信されたデータを無効にする受信失敗の処理を行って(ステップS49)、電波受信制御を終了する。
【0113】
一方、回転検知部30A,30B,30Cの出力が回転状態を示していない場合(ステップS46でNo)には、エレクトレットの発電ノイズがなく、安定的に電波を受信できていると考えられるので、制御部70は、受信成功の処理を行って(ステップS47)、電波受信制御を終了する。
【0114】
以上説明してきたように、電子機器1,1’,2,3では、発電電極25とは別体の回転検知部30A,30B,30Cにより発電部20の回転部材22の動きを直接検知する。回転検知部30Aのバネ接点31や回転検知部30Bの回転検知電極33であれば、回転検知のセンサ専用のスペースを設ける必要がないため、機器サイズを大型化することなく、また構造的な変更が少ないままで、機器の携帯状態を把握することが可能になる。そして、回転検知部30A,30B,30Cの検知結果に応じて、制御部70が充電部40の動作や時計表示部60の動作モードなどを制御することにより、発電部20による発電を効率化しつつ、消費電力を削減することが可能になる。
【0115】
なお、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的構成はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。