特許第6335747号(P6335747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335747
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】光学的情報読取装置及び照明制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20180521BHJP
   H05B 37/02 20060101ALI20180521BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G06K7/10 316
   G06K7/10 376
   H05B37/02 Z
   H04N1/04 101
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-207996(P2014-207996)
(22)【出願日】2014年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-76106(P2015-76106A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2017年6月30日
(31)【優先権主張番号】61/888,876
(32)【優先日】2013年10月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391062872
【氏名又は名称】株式会社オプトエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100123881
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100080931
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 敬
(72)【発明者】
【氏名】黒川 正樹
(72)【発明者】
【氏名】季 徳培
(72)【発明者】
【氏名】段 志輝
【審査官】 梅沢 俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−132301(JP,A)
【文献】 特開平08−044812(JP,A)
【文献】 特開2011−034360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
H04N 1/04
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射率が周囲と異なる記号に示される情報を読み取る光学的情報読取装置であって、
イメージセンサと、
読み取り対象の記号を照明する照明手段と、
前記照明手段の点灯時間を調整する点灯時間調整手段と、
前記イメージセンサの1フレームの時間を、前記イメージセンサからの1フレーム分のデータ出力に要する出力時間と、前記点灯時間とに基づき設定する設定手段と、
前記1フレームの時間内で、前記データ出力の終了後に前記点灯時間だけ前記照明手段を点灯させる第1の点灯制御を行う第1点灯制御手段と、
前記1フレームの時間内で、前記データ出力を行う期間全体を含むように前記点灯時間だけ前記照明手段を点灯させる第2の点灯制御を行う第2点灯制御手段と、
前記第1点灯制御手段と前記第2点灯制御手段のいずれが前記照明手段の点灯を制御するかを切り替える切替手段とを備えることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学的情報読取装置であって、
前記イメージセンサの前記データ出力を行う期間内には、前記照明手段の点灯と消灯を切り替えないことを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学的情報読取装置であって、
前記切替手段が、前記点灯時間及び前記出力時間の値に基づき、前記切り替えを行うことを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光学的情報読取装置であって、
前記切替手段が、前記点灯時間が前記出力時間以下である場合に前記第1点灯制御手段が前記照明手段の点灯を制御し、前記点灯時間が前記出力時間より大きい場合に前記第2点灯制御手段が前記照明手段の点灯を制御するように前記切り替えを行うことを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置であって、
前記設定手段が、前記第1点灯制御手段が前記照明手段の点灯を制御する場合には、前記1フレームの時間を、前記出力時間と前記点灯時間の合計に所定の調整時間を加えた値に設定し、前記第2点灯制御手段が前記照明手段の点灯を制御する場合には、前記1フレームの時間を、前記点灯時間に所定の調整時間を加えた値に設定することを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置であって、
前記照明手段の点灯に同期して前記イメージセンサを露出させる露出制御手段を備えることを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項7】
光反射率が周囲と異なる記号に示される情報を読み取る光学的情報読取装置における照明制御方法であって、
前記光学的情報読取装置が備える照明手段の点灯時間を調整する点灯時間調整手順と、
前記光学的情報読取装置が備えるイメージセンサの1フレームの時間を、前記イメージセンサからの1フレーム分のデータ出力に要する出力時間と、前記点灯時間とに基づき設定する設定手順と、
前記1フレームの時間内で、前記データ出力の終了後に前記点灯時間だけ前記照明手段を点灯させる第1の点灯制御を行う第1点灯制御手順と、
前記1フレームの時間内で、前記データ出力を行う期間全体を含むように前記点灯時間だけ前記照明手段を点灯させる第2の点灯制御を行う第2点灯手順と、
前記第1点灯制御手順と前記第2点灯制御手順のいずれにより前記照明手段の点灯を制御するかを切り替える切替手順とを備えることを特徴とする照明制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の照明制御方法であって、
前記イメージセンサの前記データ出力を行う期間内には、前記照明手段の点灯と消灯を切り替えないことを特徴とする照明制御方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の照明制御方法であって、
前記切替手順は、前記点灯時間及び前記出力時間の値に基づき、前記切り替えを行う手順であることを特徴とする照明制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の照明制御方法であって、
前記切替手順は、前記点灯時間が前記出力時間以下である場合に前記第1点灯制御手順により前記照明手段の点灯を制御し、前記点灯時間が前記出力時間より大きい場合に前記第2点灯制御手順により前記照明手段の点灯を制御するように前記切り替えを行う手順であることを特徴とする照明制御方法。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか一項に記載の照明制御方法であって、
前記設定手順は、前記第1点灯制御手順により前記照明手段の点灯を制御する場合には、前記1フレームの時間を、前記出力時間と前記点灯時間の合計に所定の調整時間を加えた値に設定し、前記第2点灯制御手順により前記照明手段の点灯を制御する場合には、前記1フレームの時間を、前記点灯時間に所定の調整時間を加えた値に設定する手順であることを特徴とする照明制御方法。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか一項に記載の照明制御方法であって、
前記照明手段の点灯に同期して前記イメージセンサを露出させる露出制御手順を備えることを特徴とする照明制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光反射率が周囲と異なる記号に示される情報を読み取る光学的情報読取装置及び、このような光学的情報読取装置における照明制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアイメージセンサを用いた従来のバーコード読取装置では、図5に示したブロック構成が一般的である。例えば、東芝社製のリニアイメージセンサ(TCD1103GFG)を使用した場合、CPU10でLED(発光ダイオード)制御信号を生成し、バーコードを照明するためのLED20の発光強度を制御する。
【0003】
そして、同じCPU10はリニアイメージセンサ30に対し、リニアイメージセンサ30の動作を制御するためのマスタクロックMCLK、積分クリアゲートICG及びシフトゲートSHを出力する。撮像レンズによりセンサの受光面上に結像されたバーコード像がリニアイメージセンサ30によって電気信号に変換され、リニアイメージセンサ30の出力信号OSとなり、CPU10側に転送される。積分クリアゲートICGがリニアイメージセンサ30のフレームレートを制御して、シフトゲートSHはクロックパターンによって電子シャッタを動作させるかどうかを決めている。
【0004】
図6に、図5に示したブロック構成と対応する制御タイミングチャートの代表例を示す。
従来のバーコード読取装置では、リニアイメージセンサ30の積分クリアゲートICGで出力のフレーム時間を決めて、リニアイメージセンサ30のシフトゲートクロックSHを電子シャッターモードにし、そのフレーム時間を分割して、図6に示すようにリニアイメージセンサ30の露出時間を決めている。
【0005】
また、リニアイメージセンサ30のデータ出力OSのデータ出力時間は積分クリアゲートICGの上がりエッジからスタートし、所要時間はリニアイメージセンサ30のマスタクロックMCLKの周波数fとイメージセンサの画素数NによってN×2/fで決まる。例えば、マスタクロックMCLKの周波数f=1MHz(メガヘルツ)、N=1500個画素を出力するのに、1500×2/1MHz=3ms(ミリ秒)のデータ出力時間が必要となるので、フレーム時間を3msより長く設定すればよい。
【0006】
また、LED20の点灯タイミングについては、使用者がバーコード読取装置を起動すると同時にLED20を点灯させ、バーコードを読み取るまで、または所定のタイムアウト時間までLED20の点灯を続ける。このため、図6に示すように、リニアイメージセンサ30の1フレームの時間内、LED20がずっと点灯することになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「TOSHIBA CCD Image Sensor CCD(charge coupled device) TCD1103GFG Rev. 2.0」、株式会社東芝、2009年1月15日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LEDの照明で種々の読取距離に置いたバーコードを読む場合、読取装置に近ければ近いほどバーコード面から反射する光量が多い。言い換えると、バーコードの読取距離が近ければ、必要なLED照明強度が低くてよいことになる。特に電池駆動の読取装置では、電池寿命を延ばすために、LED照明に必要な電流が低いことが望ましい。
【0009】
図6に示した従来例では、バーコードまでの距離が近距離か遠距離かを問わずLED20が常時点灯している。また、使用頻度の低い遠距離(例えば200mm以上)にあるバーコードを読み取る際でも充分な照明強度を得るため流す大電流(例えば、80mAの駆動電流)を、使用頻度の高い150mm以内の近距離での読み取りの際にも同様に流しているため、電池の消耗が激しくなっている。
このような消費電力の問題を解決するためには、例えば、読み取り距離に応じて、LED20を点灯させる時間を変えることが考えられる。しかし、リニアイメージセンサ30からのデータ出力中にLED20のオンオフを切り替えると、電流値の変化に応じて発生するサージ電圧の影響により、出力されるデータにノイズが入ってしまう可能性がある。
【0010】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、対象に投光しつつ、1フレーム期間中の一定時間内に読取画像のデータを出力するイメージセンサを用いて画像の読取を行う光学的情報読取装置において、読み取りに必要な投光を行いつつ消費電力を低減し、さらに、出力データへのサージ電圧による悪影響を与えないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の目的を達成するため、本発明は、光反射率が周囲と異なる記号に示される情報を読み取る光学的情報読取装置において、イメージセンサと、読み取り対象の記号を照明する照明手段と、上記照明手段の点灯時間を調整する点灯時間調整手段と、上記イメージセンサの1フレームの時間を、上記イメージセンサからの1フレーム分のデータ出力に要する出力時間と、上記点灯時間とに基づき設定する設定手段と、上記1フレームの時間内で、上記データ出力の終了後に上記点灯時間だけ上記照明手段を点灯させる第1の点灯制御を行う第1点灯制御手段と、上記1フレームの時間内で、上記データ出力を行う期間全体を含むように上記点灯時間だけ上記照明手段を点灯させる第2の点灯制御を行う第2点灯制御手段と、上記第1点灯制御手段と上記第2点灯制御手段のいずれが上記照明手段の点灯を制御するかを切り替える切替手段とを設けたものである。
【0012】
このような光学的情報読取装置において、上記イメージセンサの上記データ出力を行う期間内には、上記照明手段の点灯と消灯を切り替えないようにするとよい。
また、上記切替手段が、上記点灯時間及び上記出力時間の値に基づき、上記切り替えを行うとよい。
【0013】
さらにまた、上記切替手段が、上記点灯時間が上記出力時間以下である場合に上記第1点灯制御手段が上記照明手段の点灯を制御し、上記点灯時間が上記出力時間より大きい場合に上記第2点灯制御手段が上記照明手段の点灯を制御するように上記切り替えを行うとよい。
【0014】
また、上記の各光学的情報読取装置において、上記設定手段が、上記第1点灯制御手段が上記照明手段の点灯を制御する場合には、上記1フレームの時間を、上記出力時間と上記点灯時間の合計に所定の調整時間を加えた値に設定し、上記第2点灯制御手段が上記照明手段の点灯を制御する場合には、上記1フレームの時間を、上記点灯時間に所定の調整時間を加えた値に設定するとよい。
さらに、上記照明手段の点灯に同期して上記イメージセンサを露出させる露出制御手段を設けるとよい。
【0015】
また、この発明は、装置として実現する他、光学的情報読取装置における照明方法として実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明の構成によれば、対象に投光しつつ、1フレーム期間中の一定時間内に読取画像のデータを出力するイメージセンサを用いて画像の読取を行う光学的情報読取装置において、読み取りに必要な投光を行いつつ消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図4に示したバーコード読取装置が行う、第1点灯制御モードにおける各部の制御タイミングの一例を示す図である。
図2】同じく第2点灯制御モードにおける各部の制御タイミングの一例を示す図である。
図3】第1点灯制御モードと第2点灯制御モードを切り替えて制御を行う場合における、読取距離とフレームレートとの関係を示す図である。
図4】この発明の光学的情報読取装置の実施形態であるバーコード読取装置の機能構成を示す図である。
図5】リニアイメージセンサを用いた従来のバーコード読取装置の構成を簡単に示すブロック図である。
図6図5に示したバーコード読取装置における各部の制御タイミングの代表例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態は、照明制御方法であって、リニアイメージセンサと照明用LEDを内蔵しているバーコード読取装置(光学的情報読取装置)において、下記の手順に従って照明手段である上記LEDの点灯時間(≒露出時間)を制御することを特徴とする。
1.上記LEDの点灯時間は、リニアイメージセンサのデータ出力終了後に発生させるシフトゲートt_SH2の立ち下がりからt_SH1(≒1フレームの終了タイミング)の立ち下がりまでとし、t_SH2-t_SH1間の時間はバーコードまでの距離に従って変化(距離が長くなると時間も延びる)させる。それに同期して1フレーム時間も延びる。(図1を参照)
2.上記のLED点灯時間t_SH2-t_SH1がリニアイメージセンサのデータ出力時間を超える場合には、LEDの点灯開始タイミングはシフトゲートt_SH0(=t_SH2)の立ち上がりタイミングに移動させ、LED点灯終了時間はシフトゲートt_SH1の立ち下がり点とする。t_SH1はバーコードまでの距離が長くなると後方に移動し、点灯時間が延びると同時に1フレーム時間も延びる。(図2を参照)
【0019】
以上のようにLED点灯時間を制御することで、リニアイメージセンサのデータ出力時間内にLEDのON/OFFが切り替わることがなく、リニアイメージセンサが出力するデータがLEDの点灯時および消灯時のサージ電圧の影響を受けることがない。また同時にバーコードまでの距離に従ってLED点灯時間も変化するので消費電力低減にもなる。
【0020】
以下、この実施形態について図面を参照しつつより詳細に説明する。
なお、この実施形態のバーコード読取装置100は、概略のハードウェア構成は図5を用いて説明した従来の装置と共通であり、各部の動作タイミング制御に関する構成が異なるのみである。従って、ハードウェアについては、図5に示した符号を用いて説明する。
【0021】
まず、図1を用いて、バーコード読取装置100の第1点灯制御モードにおけるLED20の点灯制御方法について説明する。この第1点灯制御モードは、LED20の点灯時間がリニアイメージセンサ30の1フレーム分のデータ出力時間以下である場合に用いるモードである。
【0022】
図1に示したように、第1点灯制御モードにおいては、リニアイメージセンサ30の1フレーム時間のうちシフトゲートSHのt_SH2からt_SH1の間が露出時間となっている。すなわち、CPU10は、この期間だけリニアイメージセンサ30の電子シャッタを開き、リニアイメージセンサ30を露出させる。
【0023】
また、CPU10は、シフトゲートSHのt_SH2のパルスと同期してLED20を点灯させる。すなわち、CPU10は、LED20の点灯時間をリニアイメージセンサ30の露出時間と同時間に設定して、シフトゲートSHのt_SH1のパルスの時間でLEDの点灯が終了する。LED20の点灯時間を常にシフトゲートSHと同期し、CPU10が露出時間と合せて調整する。
このような制御を行うことにより、図6の例と比較して、1フレーム内の有効な露出時間しかLEDが点灯しないため、消費電流が低減できる。
【0024】
なお、リニアイメージセンサ30の露出開始はシフトゲートSHのt_SH2のパルスの立ち下がりタイミングであるのに対し、LED20の点灯開始タイミングは、同じパルスの立ち上がりタイミングとしている。これは、リニアイメージセンサ30の露出開始時までに、LED20が安定した光量で点灯しているよう、若干点灯開始タイミングを早めるための制御である。
【0025】
一般的に、150mm以内の近距離にあるバーコードを読むための露出時間は200mm以上の遠距離にあるバーコードを読むための露出時間の1/3前後で済ませることができる。例えば、LED20のピーク電流を80mAとして、図6のようにLEDがずっと点灯した場合の平均消費電流の80mAと比べ、図1のLED制御方式では平均消費電流は30mA以下となる。
しかしながら、LED20に80mAの大電流を流すと、点灯開始時および消灯時のサージ電圧が、リニアイメージセンサ30の出力データに悪影響を与えて、バーコード信号の誤認識の可能性が高くなってしまう。
【0026】
そこで、本実施形態では、LED20の点灯開始タイミングt_LED0をデータ出力の終了時間t_OS1の後に設定した。従って、リニアイメージセンサ30のシフトゲートSHのt_SH2のパルスも同じくt_OS1の後になっている。具体的には、CPU10は、マスタクロック周波数及びリニアイメージセンサ30の画素数によって、あらかじめデータ出力の終了時間t_OS1を決め、t_OS1から固定時間遅延後のt_SH2に、シフトゲートSHのパルスを立ち上げるように調整する。
【0027】
また、露出時間(≒LED20の点灯時間)がt_SH1-t_SH2で決まる。CPU10は、積分クリアゲートICGもこの露出時間t_SH1-t_SH2と同期させ、t_ICG1を調整する。よって、フレーム時間はt_ICG1-t_ICG0になり、露出時間(≒LED20の点灯時間)によって変化する。
すなわち、CPU10は、第1点灯制御手段として機能して、リニアイメージセンサ30の1フレームの時間内で、データ出力の終了後に、予め設定した点灯時間だけLED20を点灯させる第1の点灯制御を行う。そして、リニアイメージセンサ30のデータ出力時間の間は、LED20の点灯と消灯を切り替えない。この処理が、第1点灯制御手順の処理である。
【0028】
さらに、CPU10は、露出制御手段として機能して、LED20の点灯に同期してリニアイメージセンサ30を露出させる。この処理が、露出制御手順の処理である。
また、CPU10は、設定手段として機能して、リニアイメージセンサ30からの1フレーム分のデータ出力に要する出力時間と、LED20の点灯時間とに基づき、リニアイメージセンサ30の1フレームの期間を設定する。より具体的には、上記の出力時間と点灯時間の合計に所定の調整時間を加えた値が1フレームの期間となる。調整時間は、上記の固定時間遅延と、装置の仕様による積分クリアゲートICGとシフトゲートSHのタイミング差(図1参照)を加味した値である。調整時間がゼロやマイナスになることもあり得る。この処理が、設定手順の処理である。
【0029】
また、もし露出が適切なレベルまで達しなかった場合、CPU10は露出時間とLED20の点灯時間とを再調整する。
例えば、図1に示したように、露出時間の終点をt_SH1′にした場合、CPU10は、積分クリアゲートICGもこれに相応してt_ICG1′まで延ばして、LED20の点灯時間もt_LED1′に終了するように調整する。このようにt_LED0およびt_LED1’を設定することで、リニアイメージセンサ30のデータ出力時間内にLED20のON/OFFが切り替わることはない。
【0030】
図1に示した第1点灯制御モードで、露出不足(例えば、遠方のバーコードを読む場合)を解決するためには、点灯時間をより長くするように調整すればよい。この点灯時間調整を行う場合において、CPU10は点灯時間調整手段として機能する。また、この点灯時間調整の処理が、点灯時間調整手順の処理である。
なお、この実施形態では、露出時間(≒点灯時間)t_SH1-t_SH2がデータ出力時間t_OS1-t_OS0に達したとき、すなわち、十分な露出を確保するために露出時間t_SH1-t_SH2をデータ出力時間t_OS1-t_OS0より大きな値に設定する必要が生じたとき、CPU10は、図2に示した第2点灯制御モードに入るように切り替える。
【0031】
次に、図2を用いて、バーコード読取装置100の第2点灯制御モードにおけるLED20の点灯時間制御方法について説明する。この第2点灯制御モードは、LED20の点灯時間がリニアイメージセンサ30の1フレーム分のデータ出力時間より大きい場合に用いるモードである。
第2点灯制御モードでは、積分クリアゲートICG、シフトゲートSH、及びLED20の発光時間が同期される。すなわち、CPU10は、LED20の点灯に同期してリニアイメージセンサ30を露出させることに加え、リニアイメージセンサ30の1フレームの期間も、LED20の発光時間に同期させる。
このため、LED20の立ち上がりおよび立ち下がりがリニアイメージセンサ30のデータ出力時間と重ならないので、出力データにサージ電圧の影響が出ない。
【0032】
この場合において、CPU10が設定するリニアイメージセンサ30の1フレームの時間は、LED20の点灯時間に所定の調整時間を加えた値である。調整時間は、装置の仕様による積分クリアゲートICGとシフトゲートSHのタイミング差(図2参照)に当たる値である。調整時間がゼロやマイナスになることもあり得る。この処理も、設定手順の処理である。
【0033】
図2に示すように、第2点灯制御モードでは、露出時間(≒点灯時間)はt_SH0からt_SH1までである。CPU10は、この期間だけリニアイメージセンサ30の電子シャッタを開き、リニアイメージセンサ30を露出させる。
第2点灯制御モードでは、リニアイメージセンサ30の露出開始はシフトゲートSHのt_SH0のパルスの立ち下がりタイミングであるのに対し、LED20の点灯開始タイミングは、同じパルスの立ち上がりタイミングとしている。この理由は第1点灯制御モードの場合と同様である。
【0034】
なお、サージ電圧の影響を防ぐために、LED20の点灯開始タイミングt_LED0は、データ出力の開始タイミングt_OS0よりも前である必要がある。可能であれば、LED20への印加電圧が安定するのに要する時間程度の余裕があることが望ましい。
また、サージ電圧の影響を防ぐために、リニアイメージセンサ30の露出終了タイミング(≒LED20の消灯タイミング)t_SH1は少なくともデータ出力の終了タイミングt_OS1よりも後ろである必要がある。しかし、それより後ろであれば、t_SH1のタイミングは任意に設定することができる。
【0035】
このように、第2点灯制御モードにおいては、CPU10は、第2点灯制御手段として機能して、リニアイメージセンサ30の1フレームの時間内で、データ出力を行う期間全体を含むように、予め設定した点灯時間だけLED20を点灯させる第2の点灯制御を行う。そして、リニアイメージセンサ30のデータ出力時間の間は、LED20の点灯と消灯を切り替えない。この処理が、第2点灯制御手順の処理である。
【0036】
また、第2点灯制御モードにおける点灯時間は、t_OS1-t_OS0よりも大きな任意の値に設定可能である。従って、点灯時間をt_OS1-t_OS0以下とする場合に第1点灯制御モードを用い、点灯時間をt_OS1-t_OS0より大きな値とする場合に第2点灯制御モードを用いることにより、適切な露出レベルを得るための露出調整及び点灯時間調整を連続的に行うことができる。CPU10は、切替手段として機能してこのモードの切り替えを行う。この処理が、切替手順の処理である。
【0037】
ここで、第1点灯制御モードのみでLED20の点灯時間を延ばす場合、フレームレートも点灯時間に従って遅くなる。例えば、点灯時間をデータ出力時間と同じ長さまで延ばしたとき、データ出力時間を含めてフレーム時間が初期設定値(データ出力に必要な最低限の時間)の2倍になってしまう。しかし、このとき、第2点灯制御モードに切り替えれば、フレーム時間は速い初期値で済み、実質のLED発光の立ち上がりとデータ出力時間とが重なることもない。このようにフレーム時間が短いほうがデータ出力のためのフレーム間隔も短くなり、システム処理が速くなって望ましい。
【0038】
なお、点灯時間の設定は、リニアイメージセンサ30が受光する画像の明るさが暗すぎる場合に増加させ、明るすぎる場合に減少させる、というように、受光画像に基づいて調整することができる。また、予め距離と適切な点灯時間の対応関係を記憶させておくと共に、バーコード読取装置100(又はリニアイメージセンサ30)からバーコード等の読取対象物までの距離(以下「読取距離」という)を測定して、その距離に対応する点灯時間を設定することも考えられる。一旦距離に応じた点灯時間を設定してから、受光画像に基づいてさらに調整を行うことも考えられる。
【0039】
一般的にいうと、読取距離が遠くなればなるほど点灯時間が長くなる。そこで、上述のように第1点灯制御モードと第2点灯制御モードの切り替えを行うと、読取距離とフレームレートの変化は図3に示すようになる。
図3において、横軸は読取距離を示し、縦軸は、線51についてはフレームレート、線52については点灯時間を示す。
【0040】
図3に示したように、第1点灯制御モードは読取距離が短い場合に用いるが、読取距離が長くなると、必要な点灯時間が徐々に増加し、これに応じて1フレームの期間が長くなるため、リニアイメージセンサ30のフレームレートが徐々に低下する。しかし、フレームレートが初期値N0の半分まで下がった時には、点灯時間がt_OS1-t_OS0となっているため、上述のように第2点灯制御モードに切り換えることができる。この切り替えによってフレームレートをまた初期値N0まで上昇させることができる。第2点灯制御モードにおいても読取距離の増加に従ってフレームレートは低下するが、第1点灯制御モードを使い続けるよりは、速いフレームレートを維持することができる。
【0041】
ここで、フレームレートが低すぎると、バーコードの読み取りからデコード結果を得られるまでの時間が長くなりすぎるため、フレームレートには許容可能な下限がある。この下限をN1とすると第1点灯制御モードのみで点灯時間を調整した場合は、破線で示すように、より近い距離Aでフレームレートの下限N1に達し、点灯時間をさらに増加できないため、読取距離の限界がA点となってしまう。しかし、第2点灯制御モードへ切り替えることで、読取距離の限界をB点まで延ばすことが可能になるため、読取距離の拡張に効果絶大である。
【0042】
ここで、図4に、バーコード読取装置100が備える機能のうち、以上説明してきた点灯制御モードの切り替えを行いつつバーコードの読み取りを行うため機能の構成を示す。図4に示す各部の機能は、CPU10が所要のプログラムを実行してLED20及びリニアイメージセンサ30を始めとする各種ハードウェアの動作を制御することにより実現されるものである。
【0043】
図4に示すように、バーコード読取装置100は、バーコードの読み取りに関する制御を行う機能を有する読取制御部110と、読取制御部110が出力する読み取り結果のデータをデコードするデコード部120とを備える。
また、読み取り制御部110は、センサ制御部111、光源制御部112、点灯時間調整部113、モード切替部114を備える。
【0044】
このうちセンサ制御部111は、設定手段及び露出制御手段と対応し、リニアイメージセンサ30に対して図1等に示したマスタクロックMCLK、積分クリアゲートICG及びシフトゲートSHを出力して、リニアイメージセンサ30の動作を制御する機能を備える。なお、センサ制御部111は、積分クリアゲートICG及びシフトゲートSHのタイミングを考慮してLED20の点灯タイミングを制御する。また、センサ制御部111は、各信号に応じてリニアイメージセンサ30から送信されてくる出力信号OSを、データに変換してデコード部120へ出力する機能も備える。
【0045】
また、光源制御部112は、第1点灯制御手段及び第2点灯制御手段と対応し、上述したように、LED20の点灯時間、点灯制御モード及びデータ出力時間等に基づきLED20の点灯消灯を切り替える機能を備える。
点灯時間調整部113は、点灯時間調整手段と対応し、リニアイメージセンサ30から出力される画像の明るさや読取距離の測定結果等に基づき、LED20の点灯時間を調整する機能を備える。
【0046】
モード切替部114は、切替手段と対応し、LED20の点灯時間(≒リニアイメージセンサ30の露光時間)がデータ出力時間よりも長いか否かに応じて、使用する点灯制御モードを第1点灯制御モードとするか第2点灯制御モードとするかを切り替える機能を備える。
【0047】
以上で実施形態の説明を終了するが、装置の構成、用いるセンサ、読み取り対象の情報、信号の特性、数及びタイミング、具体的な処理の手順等が上述の実施形態で説明したものに限られないことはもちろんである。
例えば、この発明は、バーコード読取装置以外でも、対象に投光しつつ、1フレーム期間中の一定時間内に読取画像のデータを出力するイメージセンサを用いて画像の読取を行う任意の光学的情報読取装置に適用可能である。読取対象は、少なくとも、バーコード記号をはじめとする、一方向に光学的な情報を配置した記号、図形、画像等であることが考えられるし、読取画素を2次元に配置したイメージセンサを用いれば、二次元的に光学的な情報を配置した記号、図形、画像等を読取ることも可能になる。
【0048】
また、上述した実施形態では、LED20の点灯時間とリニアイメージセンサ30の露光時間とがほぼ等しくなっていたが、このことは必須ではない。LEDの点灯時間は露光時間に対して短くすることも考えられる。
また、以上説明してきた構成は、互いに矛盾しない限り任意に組み合わせて適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明してきた光学的情報読取装置及び照明方法によれば、読み取りに必要な投光を行いつつ消費電力を低減することができる。従って、光学的情報読取装置の省電力化を図ることができる。
【符号の説明】
【0050】
10…CPU、20…LED、30…リニアイメージセンサ、100…バーコード読取装置、110…読取制御部、111…センサ制御部、112…光源制御部、113…点灯時間調整部、114…モード切替部、120…デコード部
図1
図2
図3
図4
図5
図6