【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下で示す配合割合は、特にことわらない限り質量基準(「質量部」、「質量%」等)とする。
【0029】
[実施例・比較例]
下記表1に示す配合(特に示した以外は質量部)に従い、まず硫黄、加硫促進剤を除く成分を混合し、次いで硫黄と加硫促進剤を添加混合して、タイヤ用ゴム組成物を調製した。表1中の各配合物の詳細は以下の通りである。
【0030】
・S−SBR:ランクセス(株)製 VSL5025−0HM
・BR:宇部興産(株)製 BR150B
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製 ニップシールAQ(BET:200m
2/g)
・シランカップリング剤:エボニック・デグサ製社 Si69
・カーボンブラック:三菱化学(株)製 ダイアブラックN341
・オイル:昭和シェル石油(株)製 エキストラクト4号S
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製 亜鉛華1号
・老化防止剤:住友化学(株)製 アンチゲン6C
・ステアリン酸:花王(株)製 ルナックS20
・ワックス:日本精蝋(株)製 OZOACE0355
・デキストリン:ナカライテスク(株)製 デキストリン
・パルミチン酸:ナカライテスク(株)製 パルミチン酸
・スクロース脂肪酸エステル:三菱化学フーズ(株)製 S−570
・多糖類脂肪酸エステル1:千葉製粉(株)製 レオパールISL2(ステアリン酸イヌリン)
・多糖類脂肪酸エステル2:千葉製粉(株)製 レオパールKL2(パルミチン酸デキストリン)
・多糖類脂肪酸エステル3:千葉製粉(株)製 レオパールMKL2(ミリスチン酸デキストリン)
・多糖類脂肪酸エステル4:千葉製粉(株)製 レオパールTT2((パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン)
・多糖類脂肪酸エステル5:下記製造方法により得られたイソステアリン酸デキストリン
・硫黄:鶴見化学工業(株)製 5%油処理微粉末硫黄
・加硫促進剤:住友化学(株)製 ソクシノールCZ
【0031】
[多糖類脂肪酸エステル5の製造]
デキストリン21.4gをジメチルホルムアミド71g、3−メチルピリジン62gからなる混合溶媒に70℃で分散させ、イソステアリン酸クロライド120gを30分間かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃として5時間反応させた。反応液をメタノールに沈殿させてから濾過し、固形分をメタノールで洗浄後、乾燥して淡黄色の樹脂状物質の粉体を得た。
【0032】
得られた各ゴム組成物について、転がり抵抗(発熱性)及びウェットグリップ性を以下の方法で測定した。各ゴム組成物を150℃にて30分間加熱、加硫して得られたゴムサンプルを下記の評価条件に基づいて評価を行った。結果を表1に示す。
【0033】
転がり抵抗(発熱性):JIS K6394に準じて、東洋精機(株)製粘弾性試験機を用いて、温度60℃、周波数10Hz、初期歪み10%、動歪み±1%の条件で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。60℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、転がり抵抗(低発熱性能)の指標として一般に用いられているものであり、この指数が小さいほどtanδが小さく、従って転がり抵抗が小さく、即ち低発熱性能に優れ、タイヤとしての低燃費性能に優れることを示す。
【0034】
ウェットグリップ性:温度を0℃に変え、その他は低発熱性能の評価と同様にして、損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。0℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、湿潤路面に対するグリップ性能の指標として一般に用いられているものであり、この指数が大きいほどtanδが大きく、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示された結果から分かるように、比較例2のようにデキストリンを添加した場合、転がり抵抗は改善するが、ウェットグリップ性が悪化する。比較例3のように脂肪酸を添加した場合や、比較例4のように多糖類と脂肪酸を別々に添加した場合、転がり抵抗は低下し、ウェットグリップ性の改良も見られない。比較例5のように、デキストリン又はイヌリンではなく低分子量の糖の脂肪酸エステルを添加した場合、転がり抵抗が悪化する。比較例6のように多糖類脂肪酸エステルを過剰に添加した場合、転がり抵抗は改善するが、ウェットグリップ性が悪化する。
【0037】
これに対し、各実施例では、ゴムの発熱特性及びウェットグリップ性をバランスよく向上させることができた。特に分岐鎖を持つ脂肪酸からなる多糖類脂肪酸エステルを添加した実施例5及び10では、分岐鎖を持たない脂肪酸からなる多糖類脂肪酸エステルを使用した他の実施例よりも、転がり抵抗の改良がより顕著であった。