(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335762
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】粉体塗料供給装置
(51)【国際特許分類】
B05C 19/06 20060101AFI20180521BHJP
B05B 5/08 20060101ALN20180521BHJP
【FI】
B05C19/06
!B05B5/08 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-235717(P2014-235717)
(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公開番号】特開2016-97350(P2016-97350A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】海住 晴久
【審査官】
高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−126202(JP,A)
【文献】
特開昭55−061532(JP,A)
【文献】
特開2012−125749(JP,A)
【文献】
特開平11−059780(JP,A)
【文献】
特開2008−229544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C7/00−21/00
B05B5/00−5/16
B65D88/00−90/66
B65G65/30−65/48
B65G53/00−53/28;53/32−53/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体塗料を収容する塗料タンク内の下方を多孔質材料からなる仕切り壁によって仕切り、仕切り壁の下方から流動エアーを塗料タンク内に供給して塗料タンク内の粉体塗料を流動させ、塗料タンク内の流動する粉体塗料を吸引する取り出し装置を設け、塗料タンクに強制排気装置を備える粉体塗料供給装置において、上記塗料タンクの上部に、塗料タンク内の内圧を大気圧に調整する自然空気流通口を設置したことを特徴とする粉体塗料供給装置。
【請求項2】
自然空気流通口の空気流入側の端部が下方に向いていることを特徴とする請求項1記載の粉体塗料供給装置。
【請求項3】
自然空気流通口に、塗料タンク内の内圧が大気圧よりも上昇した際に、自然空気流通口を閉塞するように移動するボール型の弁体を有する請求項1又は2に記載の粉体塗料供給装置。
【請求項4】
自然空気流通口に、ゴミなどの侵入を防止するフィルターを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉体塗料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流動エアによって粉体塗料を流動状態で収容している塗料タンクから粉体塗料を吸引して塗装ガンに供給する粉体塗料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体塗装は有機溶剤を含まず、被塗装物に付着しなかったオーバースプレー粉を回収して再使用することができるので、環境にやさしい塗装として、近年多くの製品に採用されている。
【0003】
当初はガードレール、フェンスなどの道路資材から始まり、冷蔵庫、エアコンの室外機等、家庭内で使用する製品にも多く採用されている。最近は、学校の椅子や机の塗装、ナンバープレートの塗装にも用いられている。
【0004】
一般に粉体塗装は、コロナガンや摩擦帯電ガンを使用し、粉体塗料を被塗装物に吹き付けることによって行っている。
【0005】
コロナガンの場合は、ガン先のコロナ電極と被塗装物との間に電場を作り、そのコロナ放電により、ガンから吐出された粉体塗料を被塗装物に付着させている。
【0006】
また、摩擦帯電ガンは、ガン内に、例えば非導電性樹脂チューブが収容されており、この非導電性樹脂チューブ内に粉体塗料を通過させて、非導電性樹脂と粉体塗料との摩擦によって粉体塗料に電荷を与えるものであり、ガン先から吐出した電荷を帯びた粉体塗料は、静電気力で被塗装物に付着する。
【0007】
ところで、微粉末の粉体塗料を塊のない状態で引き出すことができる塗料タンクとして、流動式の塗料タンクが従来から使用されている(特許文献1)。
【0008】
流動式の塗料タンクは、粉体塗料を収容する塗料タンク内の下方を多孔質材料からなる仕切り壁によって仕切り、仕切り壁の下方から流動エアーを塗料タンク内に供給して塗料タンク内の粉体塗料を流動させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−229544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような流動式の塗料タンク内から粉体塗料を引き出して塗装ガンに粉体塗料を供給する場合、塗料タンク内にインジェクター等の吸引装置を取り付けたパイプを差し込み、パイプから塗料タンク内の粉体塗料を吸引して塗装ガンに粉体塗料を供給するようにしている。
【0011】
流動式の塗料タンク内には、多孔質材料からなる仕切り壁の下方から流動エアーが供給され、流動エアーによって粉体塗料の塊をなくし、粉体塗料の水分を取り除いているが、塗料タンク内に流動エアーが供給されると、塗料タンク内の内圧が流動エアーの供給によって上昇する。
【0012】
このため、塗料タンクの上部にインジェクター等の吸引装置を備える引き抜きパイプを設置し、引き抜きパイプから塗料タンクに供給された流動エアーの強制排気を行っている。
【0013】
ところが、引き抜きパイプからの強制排気が強いと、塗料タンク内が陰圧になり、塗料タンクに新粉を補充する際に、塗料タンクの新粉補給蓋が取り外し難くなる。
【0014】
また、塗料タンク内が陰圧になると、塗料タンク内の粉体塗料をインジェクター等の吸引装置を取り付けたパイプによって引き出す際に、塗料タンク内の陰圧の変化により、吸引する粉体塗料の量が変化する。このため、塗装ガンからの吐出量も変化し、膜厚に差が生じ、塗装不良が発生するという問題が生じる。
【0015】
反対に、引き抜きパイプからの強制排気が弱いと、塗料タンク内が陽圧になり、塗料タンクに新粉を補充する際に、塗料タンクの新粉補給蓋を開くと、粉体塗料が噴き出すといった問題が生じると共に、塗装ガンに粉体塗料を供給するインジェクター等の吸引装置を取り付けたパイプからの粉体塗料の引き出し量も変わり、やはり塗装不良が発生するという問題が生じる。
【0016】
そこで、この発明は、塗料タンクに流動エアーの強制排気装置を備える粉体塗料供給装置において、塗料タンク内の流動する粉体塗料を吸引する取り出し装置の粉体塗料の取り出し量を均一にし、塗装不良の発生を少なくすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の課題を解決するために、この発明に係る粉体塗料供給装置は、粉体塗料を収容する塗料タンク内の下方を多孔質材料からなる仕切り壁によって仕切り、仕切り壁の下方から流動エアーを塗料タンク内に供給して塗料タンク内の粉体塗料を流動させ、塗料タンク内の流動する粉体塗料を吸引する取り出し装置を設け、塗料タンクに強制排気装置を備える粉体塗料供給装置において、上記塗料タンクの上部に、塗料タンク内の内圧を大気圧に調整する自然空気流通口を設置したことを特徴とする。
【0018】
上記自然空気流通口は、空気流入側の端部を下方に向けることにより、自然空気流通口から塗料タンク内へのゴミなどの侵入を防止できる。
【0019】
上記自然空気流通口に、塗料タンク内の内圧が大気圧よりも上昇した際に、自然空気流通口を閉塞するように移動するボール型の弁体を設けてもよい。
【0020】
また、自然空気流通口に、ゴミなどの侵入を防止するフィルターを設けてもよい。
【発明の効果】
【0021】
この発明の粉体塗料供給装置は、以上のように、塗料タンクに流動エアーの強制排気装置を備えていても、塗料タンクに内圧を大気圧に調整する自然空気流通口を設置しているので、塗料タンク内の流動する粉体塗料を吸引する取り出し装置の粉体塗料の取り出し量が均一になり、塗装不良の発生を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明の第1の実施形態を示す概略縦断正面図である。
【
図2】この発明の第2の実施形態を示す概略縦断正面図である。
【
図3】この発明の第3の実施形態を示す概略縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示す流動式の塗料タンクは、粉体塗料Aを収容するタンク本体1の内部の下方が、多孔質板や布等の多孔質材料からなる仕切り壁2によって仕切られ、仕切り壁2の下方に、コンプレッサーから除湿除油されたクリーンな流動エアー3が供給され、タンク本体1内に収容された粉体塗料Aの塊や湿気を取り除くようになっている。
【0024】
タンク本体1の上面には、タンク本体1内の粉体塗料Aを引き出して塗装ガン4に搬送するインジェクター等の吸引装置5が設置され、吸引装置5に取付けたパイプ6をタンク本体1内の流動する粉体塗料Aに差し込み、パイプ6から粉体塗料Aを吸引して塗装ガン4に粉体塗料を供給している。
【0025】
流動式の塗料タンク内には、上記のように、仕切り壁2の下方から流動エアー3が供給され、流動エアー3によって粉体塗料の塊をなくし、粉体塗料の水分が取り除かれるが、塗料タンク内に流動エアーが供給されると、塗料タンク内の内圧が流動エアー3の供給によって上昇する。
【0026】
このため、タンク本体1の上部にインジェクター等の吸引装置7を設置し、吸引装置7に取付けた引き抜きパイプ8を流動する粉体塗料Aの上部の空間に差し込み、引き抜きパイプ8からタンク本体1に供給された流動エアー3を強制排気を行っている。
【0027】
また、タンク本体1の上部には、タンク本体1の内部とタンク本体1の外部とを連通する自然空気流通口9を設けている。この自然空気流通口9によって、タンク本体1の内圧が陰圧になると、外部の空気が自然空気流通口9からタンク本体1内に流入し、反対にタンク本体1の内圧が陽圧になると、タンク本体1内空気が自然空気流通口9から外部に流出し、タンク本体1内が常に大気圧に保たれる。
【0028】
これにより、タンク本体1からパイプ6によって引き出される粉体塗料Aの引き出し量が均一なるため、塗装ガン4からの吐出量が均一化するため、安定した塗装が行える。
【0029】
次に、
図2に示す実施形態は、自然空気流通口9の空気流入側の端部を下方に向けた例である。
【0030】
自然空気流通口9の空気流入側の端部を下方に向けることにより、自然空気流通口9からタンク本体1内へのゴミなどの侵入を防止できる。
【0031】
自然空気流通口9からタンク本体1内へのゴミなどの侵入を防止するために、自然空気流通口9にフィルターを設けてもよい。
【0032】
また、
図3に示す実施形態は、パイプによって形成した自然空気流通口9内に、ピンポン玉のようなボール型の弁体10を収容した例である。タンク本体1内の内圧が大気圧よりも上昇した際に、小径に形成した自然空気流通口9の端部に向かって弁体10が移動して、自然空気流通口9の先端を弁体10によって閉塞し、タンク本体1内の内圧が大気圧よりも下がると、弁体10が自然空気流通口9の先端を開くように移動して、自然空気流通口9の先端からタンク本体1内に空気が流入してタンク本体1内の内圧が大気圧に戻る。
【0033】
自然空気流通口9の先端に、弁体10によって自然空気流通口9の先端が閉塞したことを検知する圧力計(図示省略)を設置することにより、タンク本体1内の内圧の上昇を検知することができ、タンク本体1内の内圧の上昇を検知した際に、流動エアーを供給するコンプレッサーを停止して、タンク本体1内の内圧を大気圧に戻すことができる。
【0034】
また、自然空気流通口9内には、弁体10がタンク本体1内に引き込まれないようにするために、金網等のストッパー11を設けている。
【符号の説明】
【0035】
1 :タンク本体
2 :仕切り壁
3 :流動エアー
4 :塗装ガン
5 :吸引装置
6 :パイプ
7 :吸引装置
8 :引き抜きパイプ
9 :自然空気流通口
10 :弁体
11 :ストッパー
A :粉体塗料