特許第6335773号(P6335773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6335773-非空気圧タイヤ 図000003
  • 特許6335773-非空気圧タイヤ 図000004
  • 特許6335773-非空気圧タイヤ 図000005
  • 特許6335773-非空気圧タイヤ 図000006
  • 特許6335773-非空気圧タイヤ 図000007
  • 特許6335773-非空気圧タイヤ 図000008
  • 特許6335773-非空気圧タイヤ 図000009
  • 特許6335773-非空気圧タイヤ 図000010
  • 特許6335773-非空気圧タイヤ 図000011
  • 特許6335773-非空気圧タイヤ 図000012
  • 特許6335773-非空気圧タイヤ 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335773
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】非空気圧タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20180521BHJP
   B60B 9/28 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B60C7/00 H
   B60B9/28
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-255390(P2014-255390)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-113103(P2016-113103A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尚史
【審査官】 河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−35050(JP,A)
【文献】 特開2012−35792(JP,A)
【文献】 特開平2−179503(JP,A)
【文献】 特開2015−120467(JP,A)
【文献】 特開2016−113104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 7/00−7/28
B60B 9/00−9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する複数の第1スポークとを備える非空気圧タイヤにおいて、
前記外側環状部の第1結合部と前記第1結合部からタイヤ周方向に90°以上ずれた第2結合部とを連結する第2スポークを備え、
前記第1結合部と前記第2結合部にそれぞれ接続される前記第2スポークの両端接続部が、それら両端接続部の間に位置する中間部よりも太いことを特徴とする非空気圧タイヤ。
【請求項2】
前記両端接続部は、前記中間部の延設方向に延びるとともに前記外側環状部の側部に向かって曲がって接続されていることを特徴とする請求項1に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項3】
前記両端接続部と前記中間部の間には、徐々に太さが変化する徐変部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項4】
前記両端接続部に接続されたタイヤ幅方向に延びる補強部材が前記外側環状部に埋設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の非空気圧タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ構造部材として、車両からの荷重を支持する支持構造体を備える非空気圧タイヤ(non−pneumatic tire)に関するものであり、好ましくは空気入りタイヤの代わりとして使用することができる非空気圧タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、荷重の支持機能、接地面からの衝撃吸収能、および動力等の伝達能(加速、停止、方向転換)を有し、このため、多くの車両、特に自転車、オートバイ、自動車、トラックに採用されている。
【0003】
特に、これらの能力は自動車、その他のモーター車両の発展に大きく貢献した。更に、空気入りタイヤの衝撃吸収能は、医療機器や電子機器の運搬用カート、その他の用途でも有用である。
【0004】
従来の非空気圧タイヤとしては、例えばソリッドタイヤ、スプリングタイヤ、クッションタイヤ等が存在するが、空気入りタイヤの優れた性能を有していない。例えば、中実ゴム構造のソリッドタイヤおよびクッションタイヤは、接地部分の圧縮によって荷重を支持するが、この種のタイヤは重くて、堅く、空気入りタイヤのような衝撃吸収能はない。そのため、ソリッドタイヤおよびクッションタイヤは、乗り心地性能が重視される乗用車用には採用されていなかった。
【0005】
下記特許文献1には、上記課題を解決する目的で、タイヤに加わる荷重を支持する補強された環状バンドと、前記環状バンドとホイール又はハブとの間で張力によって荷重力を伝達する複数のウェブスポークとを有する非空気圧タイヤが記載されている。また、下記特許文献2には、ハブと、このハブの外側に配置されたコンプライアントバンドと、ハブ及びコンプライアントバンドの間に延び且つこれらに結合された複数の張力伝達要素とを有し、この張力伝達要素はハブとリングとの間で張力を伝達し且つ圧縮力は実質的に伝達しない非空気圧タイヤが記載されている。
【0006】
特許文献1及び2のように、スポーク(特許文献1におけるウェブスポークと特許文献2における張力伝達要素)の張力により荷重を支持する非空気圧タイヤは、外側リング(特許文献1における環状バンドと特許文献2におけるコンプライアントバンド)を十分補強して剛性を高める必要があるため、乗り心地が悪化する傾向にある。
【0007】
特許文献3には、インナーリングと、アウターリングと、インナーリングとアウターリングの間に延在している可撓性のある相互連結されたウェブを備えている非空気圧タイヤが記載されている。この非空気圧タイヤにおいても、特許文献1及び2と同様にアウターリングの剛性を高める必要があり、乗り心地が悪化する傾向にある。
【0008】
一方、特許文献4には、環状の外周部材と内周部材との間を径方向に連結するスポークを周方向に間隔をあけて間欠的に配列したスポーク構造体を備え、タイヤ周方向に隣接するスポーク間に形成された複数の空間のうちの少なくとも一部を空気が封じ込められた構成にした非空気圧タイヤが記載されている。この非空気圧タイヤは、接地部のスポークの圧縮で荷重を支持する構成であるため、タイヤの一部に力が集中するため、故障しやすく、耐久性能が悪化する。
【0009】
よって、スポークの張力により荷重を支持する構成では乗り心地が悪化する傾向があり、一方、スポークの圧縮により荷重を支持する構成では耐久性能が悪化する傾向があり、乗り心地と耐久性能の両立は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2005−500932号公報
【特許文献2】特表2007−534531号公報
【特許文献3】特開2010−522666号公報
【特許文献4】特開2009−196603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、乗り心地と耐久性能を両立できる非空気圧タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の非空気圧タイヤは、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する複数の第1スポークとを備える非空気圧タイヤにおいて、前記外側環状部の第1結合部と前記第1結合部からタイヤ周方向に90°以上ずれた第2結合部とを連結する第2スポークを備え、前記第1結合部と前記第2結合部にそれぞれ接続される前記第2スポークの両端接続部が、それら両端接続部の間に位置する中間部よりも太いことを特徴とする。
【0013】
本発明の非空気圧タイヤは、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、内側環状部と外側環状部とを連結する複数の第1スポークとを備える。さらに、本発明の非空気圧タイヤは、外側環状部の第1結合部と第1結合部からタイヤ周方向に90°以上ずれた第2結合部とを連結する第2スポークを備えている。この構成によれば、例えば、外側環状部の第1結合部が接地する場合、第2スポークにより第2結合部がタイヤ径方向外側に押され、外側環状部が外側に膨らもうとする力が生じる。その結果、第2結合部付近に位置する第1スポークに張力が発生し、接地部の第1スポークに集中する力を緩和できるため、故障を防いで耐久性能を向上できる。さらに、第2スポークの両端接続部を中間部よりも太くして補強することで、両端接続部にひずみが集中して第2スポークが故障するのを防ぐことができる。また、第1スポークの張力を利用して荷重を支持する構成であるが、第2スポークにより第1スポークに張力がかかるため、外側環状部の剛性を高める必要はなく、乗り心地を向上できる。
【0014】
本発明に係る非空気圧タイヤにおいて、前記両端接続部は、前記中間部の延設方向に延びるとともに前記外側環状部の側部に向かって曲がって接続されていてもよい。
【0015】
このように両端接続部が曲がって外側環状部の側部に接続されている場合、その曲がった曲部にひずみが集中しやすいため、耐久性能の向上の観点から両端接続部を中間部よりも太くして補強することが好ましい。
【0016】
本発明に係る非空気圧タイヤにおいて、前記両端接続部と前記中間部の間には、徐々に太さが変化する徐変部が形成されていることが好ましい。
【0017】
太さの異なる両端接続部と中間部の間に徐変部を形成することで、両端接続部と中間部の境界部分でのひずみの集中を抑制し、耐久性能を向上できる。
【0018】
本発明に係る非空気圧タイヤは、前記両端接続部に接続されたタイヤ幅方向に延びる補強部材が前記外側環状部に埋設されていることが好ましい。
【0019】
外側環状部にタイヤ幅方向に延びる補強部材を埋設することで、第2スポークからの第1結合部及び第2結合部への力を外側環状部のタイヤ幅方向全体に亘って伝達することができるため、乗り心地と耐久性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の非空気圧タイヤの一例を示す正面図
図2図1の非空気圧タイヤの側面図
図3図1の非空気圧タイヤの斜視図
図4A】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの側面図
図4B】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの側面図
図5】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの斜視図
図6】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの断面図
図7】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの側面図
図8】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの斜視図
図9】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの正面図
図10】他の実施形態に係る非空気圧タイヤの側面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、非空気圧タイヤの一例を示す正面図である。図2は、図1の非空気圧タイヤを左側方から見た側面図である。図3は、図1の非空気圧タイヤの斜視図であり、一部のみを拡大して示している。ここで、Oはタイヤ軸を、Hはタイヤ断面高さを、それぞれ示している。
【0022】
この非空気圧タイヤTは、車両からの荷重を支持する支持構造体SSを有している。非空気圧タイヤTは、このような支持構造体SSを備えるものであればよく、その支持構造体SSの外側(外周側)や内側(内周側)に、トレッドに相当する部材、補強層、車軸やリムとの適合用部材などを備えていてもよい。本実施形態では、図1に示すように、支持構造体SSの外側に、支持構造体SSを補強する補強層6が設けられている例を示す。また、本実施形態では、図1に示すように、補強層6の更に外側にトレッドゴム7が設けられている例を示す。補強層6、トレッドゴム7としては、従来の空気入りタイヤのベルト層、トレッドゴムと同様のものを設けることが可能である。また、トレッドパターンとして、従来の空気入りタイヤと同様のパターンを設けることが可能である。なお、図2では、説明の便宜のため、補強層6及びトレッドゴム7を省略している。
【0023】
本実施形態の非空気圧タイヤTは、図1の正面図に示すように、支持構造体SSが、内側環状部1と、その外側に同心円状に設けられた外側環状部2と、内側環状部1と外側環状部2とを連結する複数の第1スポーク3とを備えている。非空気圧タイヤTは、外側環状部2の第1結合部21と第1結合部21からタイヤ周方向CDに90°以上ずれた第2結合部22とを連結する第2スポーク4をさらに備える。
【0024】
内側環状部1は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。また、内側環状部1の内周面には、車軸やリムとの装着のために、嵌合性を保持するための凹凸等を設けるのが好ましい。
【0025】
内側環状部1の厚みは、第1スポーク3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの1〜20%が好ましく、2〜10%がより好ましい。
【0026】
内側環状部1の内径は、非空気圧タイヤTを装着するリムや車軸の寸法などに併せて適宜決定される。ただし、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、250〜500mmが好ましく、330〜440mmがより好ましい。
【0027】
内側環状部1のタイヤ幅方向WDの幅は、用途、車軸の長さ等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0028】
内側環状部1の引張モジュラスは、第1スポーク3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、装着性を図る観点から、5〜180000MPaが好ましく、7〜50000MPaがより好ましい。なお、本発明における引張モジュラスは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した値である。
【0029】
本発明における支持構造体SSは、弾性材料で成形されるが、支持構造体SSを製造する際に、一体成形が可能となる観点から、内側環状部1、外側環状部2、及び第1スポーク3は、補強構造を除いて基本的に同じ材質とすることが好ましい。
【0030】
本発明における弾性材料とは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが、100MPa以下のものを指す。本発明の弾性材料としては、十分な耐久性を得ながら、適度な剛性を付与する観点から、好ましくは引張モジュラスが5〜100MPaであり、より好ましくは7〜50MPaである。母材として用いられる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂が挙げられる。
【0031】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が例示される。架橋ゴム材料を構成するゴム材料としては、天然ゴムの他、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが例示される。これらのゴム材料は必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0032】
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0033】
上記の弾性材料のうち、成形・加工性やコストの観点から、好ましくは、ポリウレタン樹脂が用いられる。なお、弾性材料としては、発泡材料を使用してもよく、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたもの使用可能である。
【0034】
弾性材料で一体成形された支持構造体SSは、内側環状部1、外側環状部2、及び第1スポーク3が、補強繊維により補強されていることが好ましい。
【0035】
補強繊維としては、長繊維、短繊維、織布、不織布などの補強繊維が挙げられるが、長繊維を使用する形態として、タイヤ幅方向WDに配列される繊維とタイヤ周方向に配列される繊維とから構成されるネット状繊維集合体を使用するのが好ましい。
【0036】
補強繊維の種類としては、例えば、レーヨンコード、ナイロン−6,6等のポリアミドコード、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルコード、アラミドコード、ガラス繊維コード、カーボンファイバー、スチールコード等が挙げられる。
【0037】
本発明では、補強繊維を用いる補強の他、粒状フィラーによる補強や、金属リング等による補強を行うことが可能である。粒状フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、アルミナ等のセラミックス、その他の無機フィラーなどが挙げられる。
【0038】
外側環状部2の形状は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。外側環状部2のタイヤ径方向の厚みは、第1スポーク3からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの1〜20%が好ましく、2〜10%がより好ましい。
【0039】
外側環状部2の内径は、その用途等応じて適宜決定される。ただし、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、420〜750mmが好ましく、480〜680mmがより好ましい。
【0040】
外側環状部2のタイヤ幅方向WDの幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0041】
外側環状部2の引張モジュラスは、図1に示すように外側環状部2の外周に補強層6が設けられている場合には、内側環状部1と同程度に設定できる。このような補強層6を設けない場合には、第1スポーク3からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、5〜180000MPaが好ましく、7〜50000MPaがより好ましい。
【0042】
外側環状部2の引張モジュラスを高める場合、弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料で外側環状部2を構成するのが好ましい。外側環状部2を補強繊維により補強することで、外側環状部2と補強層6などとの接着も十分となる。
【0043】
第1スポーク3は、内側環状部1と外側環状部2とを連結するものであり、両者の間に適当な間隔を置いて、タイヤ周方向CDに各々が独立するように複数設けられる。
【0044】
本実施形態の第1スポーク3は、内側環状部1から外側環状部2までタイヤ径方向に延びる板状をしている。また、第1スポーク3は、図3に示すように、タイヤ幅方向WDの一方のタイヤ端から他方のタイヤ端まで連続して形成されている。
【0045】
タイヤ全体の第1スポーク3の数としては、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、10〜80個が好ましく、40〜60個がより好ましい。
【0046】
第1スポーク3のタイヤ周方向CDの厚みは、内側環状部1および外側環状部2からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの1〜30%が好ましく、1〜20%がより好ましい。また、第1スポーク3のタイヤ周方向CDの厚みは、耐久性を確保するため、2mm以上が好ましい。
【0047】
第1スポーク3のタイヤ幅方向WDの幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0048】
第1スポーク3の引張モジュラスは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、5〜50MPaが好ましく、7〜20MPaがより好ましい。
【0049】
第2スポーク4は、外側環状部2の第1結合部21と第2結合部22とを連結するものである。第2結合部22は、第1結合部21からタイヤ軸Oを中心としてタイヤ周方向CDに90°以上ずれた位置である。
【0050】
第2スポーク4を設けることにより、例えば、図1に示すように外側環状部2の第1結合部21が接地する場合、第2スポーク4により第2結合部22がタイヤ径方向外側に押され、外側環状部2が外側に膨らもうとする力が生じる。その結果、第2結合部22付近に位置する第1スポーク3に張力が発生し、接地部の第1スポーク3に集中する力を緩和できるため、故障を防いで耐久性能を向上できる。また、第1スポーク3の張力を利用して荷重を支持する構成であるが、第2スポーク4により第1スポーク3に張力がかかるため、外側環状部2の剛性を高める必要はなく、乗り心地を向上できる。
【0051】
第1結合部21と第2結合部22の位相差θは、90〜180°である。さらに、第1結合部21と第2結合部22の位相差θは、120〜180°であるのが好ましく、150〜180°であるのがより好ましい。
【0052】
第2スポーク4は、図2及び図3に示すように、外側環状部2のタイヤ幅方向WDの端部よりも外側に設けられる。また、本実施形態では、第2スポーク4は、外側環状部2のタイヤ幅方向WDの両端部よりも外側にそれぞれ設けられている。
【0053】
第2スポーク4は、外側環状部2の第1結合部21と第2結合部22にそれぞれ接続される両端接続部41,42と、これら両端接続部41,42の間に位置する中間部40とを備えている。中間部40は、真っ直ぐに延びる棒状をしている。本実施形態では、中間部40の断面は円形となっている。
【0054】
両端接続部41,42は、それぞれ中間部40の延設方向に延びる延出部41a,42aと、タイヤ幅方向WDに延びる突出部41b,42bと、延出部41a,42aと突出部41b,42bの間に設けられた曲部41c,42cとを有する。これにより、両端接続部41,42は、中間部40の延設方向に延びるとともに外側環状部2の側部に向かって曲がって接続されている。本実施形態では、延出部41a,42a、突出部41b,42b、及び曲部41c,42cの断面はいずれも同じ直径を有する円形となっている。また、延出部41a,42aと中間部40の断面は、同心円状となっている。
【0055】
両端接続部41,42は、中間部40よりも太くなっている。より具体的には、両端接続部41,42の最小厚みが、中間部40の最小厚みよりも大きくなっている。最小厚みとは、断面における最小の厚みであり、例えば、断面が円形であればその直径の長さであり、断面が楕円であればその短辺の長さであり、断面が長方形であればその短辺の長さである。本実施形態では、両端接続部41,42の直径D1が中間部40の直径D2よりも大きくなっている。なお、本実施形態では、すべての第2スポーク4の両端接続部41,42が中間部40よりも太くなっているが、少なくとも1個の第2スポーク4をこの形態とすればよい。
【0056】
また、両端接続部41,42の最小厚み(本実施形態では直径D1)は、中間部40の最小厚み(本実施形態では直径D2)の2〜10倍が好ましい。2倍よりも小さいと、両端接続部41,42の強度が不足し、10倍よりも大きいと、両端接続部41,42の重量が重くなり過ぎる。
【0057】
両端接続部41,42と中間部40の間には、徐々に太さが変化する徐変部43が形成されていることが好ましい。両端接続部41,42と中間部40は太さが異なるため、両端接続部41,42と中間部40の境界部分にはひずみが集中しやすい。両端接続部41,42と中間部40の間に徐変部43を形成することで、ひずみの集中を抑制することができるため耐久性能を向上できる。徐変部43と中間部40との接続部、及び徐変部43と両端接続部41,42との接続部は、丸みを持たせて出来る限り滑らかに接続するのが好ましい。
【0058】
両端接続部41,42の長さは、第2スポーク4の全長の10%未満が好ましい。ここで両端接続部41の長さとは、中間部40の延設方向における長さである。両端接続部41,42が曲部41c,42cを有することによるひずみの集中は、第2スポーク4の両端から全長の10%未満の範囲内であり、10%以上とすると両端接続部41,42の重量が重くなり過ぎる。
【0059】
中間部40の長さは、第2スポーク4の全長の80%未満が好ましい。80%以上とすると、両端接続部41,42の長さが短くなり過ぎて耐久性を効果的に向上できない。また、中間部40の中心と第2スポーク4全体の中心は一致しているのが好ましい。さらに、両端接続部41の長さと両端接続部42の長さは等しいのが好ましい。
【0060】
第2スポーク4は、外側環状部2のタイヤ幅方向WDの両側にタイヤ周方向CDに沿って等間隔にそれぞれ4個設けられている。本実施形態では、第2スポーク4を4個設けているが、第2スポーク4の個数は特に限定されない。ただし、第2スポーク4による前述の作用効果を得るためには、第2スポーク4を少なくとも4個設けるのが好ましい。
【0061】
複数の第2スポーク4は、図2及び図3に示すように、突出部41b及び突出部42bの長さを互いに異ならせることで、互いが干渉しないようにタイヤ幅方向WDにずれている。
【0062】
第2スポーク4の材質は、外側環状部2に力を確実に伝達することができるものであれば特に限定されない。第2スポーク4の材質としては、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミ合金、黄銅などの金属、又は繊維強化プラスチック等が例示されるが、第2スポーク4は金属で形成されることが好ましく、耐久性の向上の観点からステンレス鋼で形成されることが特に好ましい。
【0063】
外側環状部2には、図4Aに示すように、第2スポーク4の両端接続部41,42に接続されたタイヤ幅方向WDに延びる補強部材5が埋設されていることが好ましい。補強部材5の両端部は、第2スポーク4の突出部41b,42bに接続されている。このような補強部材5を設けることで、第2スポーク4からの第1結合部21及び第2結合部22への力を外側環状部2のタイヤ幅方向全体に亘って伝達することができるため、乗り心地と耐久性能を効果的に向上できる。
【0064】
図4Aに示す例では、補強部材5が外側環状部2のタイヤ幅方向WDの両端まで達しているが、必ずしもこれに限定されない。例えば、図4Bに示すように、第2スポーク4の突出部41b,42bの一部を外側環状部2に埋設し、この埋設した突出部41b,42bに補強部材5を接続してもよい。このとき、補強部材5と突出部41b,42bの間には、徐々に太さが変化する徐変部を形成するのが好ましい。なお、図4A及び図4Bに示す例では、補強部材5を第2スポーク4の両端接続部41,42よりも細くしているが、第2スポーク4の両端接続部41,42と同じ太さとしてもよい。
【0065】
補強部材5の材質は、外側環状部2に力を確実に伝達することができるものであれば特に限定されない。補強部材5の材質としては、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミ合金、黄銅などの金属、又は繊維強化プラスチック等が例示されるが、補強部材5は金属で形成されることが好ましく、耐久性の向上の観点からステンレス鋼で形成されることが特に好ましい。また、補強部材5の材質は、第2スポーク4の材質と同じとするのが好ましい。さらに、補強部材5と第2スポーク4を一体で形成するのが好ましい。
【0066】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、第2スポーク4の両端接続部41,42を外側環状部2の側部にそれぞれ接続しているが、第2スポーク4の両端接続部41,42は、図5に示すように、外側環状部2の内周面にそれぞれ接続されてもよい。このとき、第2スポーク4の両端接続部41,42は、延出部41a,42aのみで構成される。また、第2スポーク4が第1スポーク3に接触しないように、第1スポーク3のタイヤ幅方向WDの幅は、外側環状部2のタイヤ幅方向WDの幅よりも狭くなっている。
【0067】
また、図4Aに示したような第2スポーク4と補強部材5を図6のように配置してもよい。図6は、補強部材5が配置された箇所における外側環状部2の断面図である。このとき、第2スポーク4の延出部41aの一部、曲部41c、及び突出部41bは、外側環状部2に埋設されている。
【0068】
(2)前述の実施形態では、第2スポーク4の両端接続部41,42が、屈曲したL字状の曲部41c,42cを有しているが、図7に示すように、両端接続部41,42は、湾曲した円弧状の曲部41c,42cを有していてもよい。
【0069】
(3)前述の実施形態では、第1スポーク3が板状をしているが、第1スポーク3は、棒状、柱状、糸状などの形態でもよい。図8に示す例では、第1スポーク3を四角柱状としている。第1スポーク3をタイヤ幅方向WDに不連続な形状とすることで、第2スポーク4の配置の自由度が高まる。例えば、第1結合部21及び第2結合部22を、外側環状部2の内周面であってタイヤ幅方向WDの中央部に設けることも可能となる。
【0070】
(4)前述の実施形態では、第1結合部21と第2結合部22の位相差θを90°としているが、図9に示す例では、位相差θを180°としている。また、この例では、第2スポーク4をタイヤ周方向CDに沿って6個配列している。6個の第2スポーク4は、干渉しないように互いの交差部分(この例ではタイヤ軸Oの位置)でタイヤ幅方向WDにずれている。この例では、第2スポーク4の両端接続部41,42は、外側環状部2の内周面にそれぞれ接続されている。
【0071】
(5)前述の実施形態では、非空気圧タイヤTを側方から見た場合、第2スポーク4は、タイヤ径方向に対して平行に設けられているが、第2スポーク4は、図10に示すように、タイヤ径方向に対して傾斜するように設けられてもよい。第2スポーク4のタイヤ径方向に対する傾斜角度αは、45°以下が好ましく、30°以下がより好ましい。傾斜角度αが45°よりも大きくなると、第2スポーク4により外側環状部2が外側に膨らもうとする力が生じにくくなる。
【0072】
(6)なお、これらの他の実施形態に係る第1スポーク3と第2スポーク4とを組み合わせて用いることもできる。例えば、図8のような四角柱状の第1スポーク3と図5のような外側環状部2の内周面に固定された第2スポーク4とを組み合わせた形態としてもよい。
【0073】
(7)本発明の他の実施形態として、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた中間環状部と、その中間環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、内側環状部と中間環状部とを連結する複数の内側連結部と、中間環状部と外側環状部とを連結する複数の外側連結部とを備える非空気圧タイヤにおいて、外側環状部の第1結合部と、第1結合部からタイヤ軸を中心としてタイヤ周方向に90°以上ずれた中間環状部の第2結合部とを連結する第3スポークを備え、第1結合部と第2結合部にそれぞれ接続される第3スポークの両端接続部が、それら両端接続部の間に位置する中間部よりも太いものでもよい。この構成によれば、例えば、外側環状部の第1結合部が接地する場合、第3スポークにより第2結合部がタイヤ径方向外側に押され、中間環状部が外側に膨らもうとする力が生じる。その結果、第2結合部付近に位置する内側連結部に張力が発生し、接地部の外側連結部に集中する力を緩和できるため、故障を防いで耐久性能を向上できる。さらに、第3スポークの両端接続部を中間部よりも太くすることで、両端接続部にひずみが集中して第3スポークが故障するのを防ぐことができる。また、内側連結部の張力を利用して荷重を支持する構成であるが、第3スポークにより内側連結部に張力がかかるため、外側環状部の剛性を高める必要はなく、乗り心地を向上できる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0075】
(1)耐久性能
直径1.7mmのドラムを備えた室内ドラム試験機を使用し、試験速度を80km/hとし、タイヤ負荷荷重をJIS規定の85%から始め、規定時間ごとに荷重を上げていき、最終的に140%で走行させた。故障が生じるまでの走行距離を測定し、比較例を100としたときの指数で示し、この値が大きいほど耐久性能が優れる。
【0076】
(2)乗り心地性能
縦荷重2000Nを負荷し、タイヤを一回転した際のたわみ量の平均値を乗り心地の指標とし、比較例1を100としたときの指数で示す。この値が大きい方が優れる。なお、たわみ量はタイヤ軸芯の変位を基準として測定した。
【0077】
実施例1
内側環状部と外側環状部と第1スポークとを備える支持構造体、その外周に設けられた補強層、並びにトレッドゴムを備える非空気圧タイヤであって、図9に示すような第2スポークを備える非空気圧タイヤを作製し、耐久性能及び乗り心地性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0078】
実施例2
実施例1の非空気圧タイヤに対し、第2スポークの両端接続部を図2のように湾曲させて外側環状部の側部に接続させたものを実施例2とした。評価結果を表1に示す。
【0079】
比較例1
実施例1に対し、第2スポークの両端接続部の太さを中間部の太さと同じとしたものを比較例1とした。評価結果を表1に示す。
【0080】
比較例2
実施例1に対し、第2スポークを設けなかったものを比較例2とした。評価結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1の結果から以下のことが分かる。実施例1、2の非空気圧タイヤは、比較例1及び2と比較して、耐久性能及び乗り心地性能を向上できた。
【符号の説明】
【0083】
1 内側環状部
2 外側環状部
3 第1スポーク
4 第2スポーク
5 補強部材
21 第1結合部
22 第2結合部
40 中間部
41 両端接続部
42 両端接続部
T 非空気圧タイヤ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10