特許第6335778号(P6335778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335778
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】IFNアルファ関連疾病の処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/385 20060101AFI20180521BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20180521BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61K39/385
   A61K47/42
   A61P3/10
   A61P17/00
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P31/18
【請求項の数】16
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2014-503144(P2014-503144)
(86)(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公表番号】特表2014-510126(P2014-510126A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2012056238
(87)【国際公開番号】WO2012136739
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2015年3月13日
【審判番号】不服2017-1674(P2017-1674/J1)
【審判請求日】2017年2月3日
(31)【優先権主張番号】11305408.4
(32)【優先日】2011年4月7日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/472,854
(32)【優先日】2011年4月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11188125.6
(32)【優先日】2011年11月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513140880
【氏名又は名称】ネオヴァクス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】グロウアルド−ヴォゲル,ジェラルディン
(72)【発明者】
【氏名】デリン,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ファンゲット,ベルナルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデパペリエル,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ロウキャロル,キャミル
【合議体】
【審判長】 關 政立
【審判官】 冨永 みどり
【審判官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 Ann Rheum Dis,2011年 3月,Vol. 70,p. 1138−1143
【文献】 Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes,1994年,Vol. 7,p. 978−988
【文献】 Immunotherapy,2010年,Vol. 2, No. 3,p. 347−365
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K39/00-39/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象におけるIFNα関連疾病の処置に使用するためのカギアナカサガイヘモシアニン(KLH)と結合されるIFNαを含む免疫原性生成物を含む組成物であって、前記対象に投与される治療有効量の免疫原性生成物が投与当たり60〜450mcgの免疫原性生成物であ前記IFNα/KLHの重量比が0.06〜0.6の範囲である、組成物。
【請求項2】
前記治療有効量の免疫原性生成物の投与が、IFNαの過剰産生に関連する疾患の症候の発生を予防する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記治療有効量の免疫原性生成物の投与が、IFNαの過剰産生に関連する疾患の再燃を予防する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記IFNα関連疾病が、全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、血管炎、HIV、I型糖尿病、自己免疫性甲状腺炎および筋炎を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記免疫原性生成物が、1ヶ月に少なくとも2回対象に投与される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記免疫原性生成物が、さらに3ヶ月毎に少なくとも1回対象に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
対象から得られた血清内に抗IFNα抗体の量が検出されない場合、前記免疫原性生成物が、さらに対象に投与される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記免疫原性生成物が強力に不活性化され、これは前記生成物が試験Bの条件における抗ウイルス活性の5%未満を示すことを意味し、前記試験Bは、メイディン・ダービーウシ腎臓細胞における水疱性口内炎ウイルスの細胞変性作用に及ぼすIFNの防御効果に基づく、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記免疫原性生成物は、試験Cの条件におけるIFNαの抗ウイルス活性を中和可能であり、前記試験Cは、メイディン・ダービーウシ腎臓細胞中で複製する水疱性口内炎ウイルスの存在下で細胞生存度を評価することにより、前記免疫原性生成物で免疫されたマウスから得られた血清の中和能力を評価することである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
IFNαの少なくとも1つの亜型を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記IFNαの亜型がIFNα 2bである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記免疫原性生成物がワクチンである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ワクチンは乳濁液の形態である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のKLHと結合されるIFNαを含む免疫原性生成物を60〜450mcg含む単位剤形。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のKLHと結合されるIFNαを含む免疫原性生成物を60〜450mcg含む医療用具。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のKLHと結合されるIFNαを含む免疫原性生成物を60〜450mcg含有する組成物を含む少なくとも1つのバイアルと、
アジュバントを含有する少なくとも1つのバイアルと、
前記免疫原性生成物をアジュバントと接触させるための、およびアジュバントとの混合物を乳化するための手段と、を包含するキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫原性ワクチン、およびIFNα関連疾病、例えば全身性紅斑性狼瘡を処置するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
IFN I型ファミリーとしては、IFNα、IFNβ、IFNδ、IFN1、IFNκ、IFNτおよびIFNωが挙げられる。その主な形態は、IFNα(このうち13の密接に関連するタンパク質がヒトにおいて記述されている)および単一IFNβである。異なるIFN I型形態は異なる生物学的応答を促進し得るという事実にもかかわらず、すべてのIFN I型が構造的に関連しており(それらの遺伝子はイントロンを欠き、第9染色体の短腕上に位置する)、同一受容体サブユニットを介してシグナル伝達する(Van Boxel-Dezaire et al., Immunity 2006; 25: 361-372)。
【0003】
近年、IFN I型の誘導の徴候、いわゆるインターフェロン・シグネチャーが、異なる自己免疫疾患に罹患している患者で報告されている(Baccala et al., Immunol Rev 2005; 204: 9-26)ため、IFN I型と自己免疫障害との間の関係に対する関心が、今日、増大しつつある。実際、IFN I型は、その免疫調節作用のため、種々の自己免疫疾病のいくつかの病原性経路に関与すると思われる。
【0004】
自己免疫性におけるIFN I型病原性関連性の範例は、全身性紅斑性狼瘡(SLE)である。SLEは、自己抗原に向けられる自己抗体により引き起こされる臓器の自己矛盾的損害のため、多臓器障害により特性化される慢性疾患である。SLEの病因は複雑で、遺伝的および環境的因子の両方を包含する。SLEにおけるIFNαの血清レベルは、疾患の重症度と相関することが示されている(Dall’era et al. Ann Rheum Dis 2005; 64: 1692-7)。
【0005】
シェーグレン症候群(SS)(乾燥症候群としても知られている)は、外分泌腺、特に唾液腺および涙腺に影響を及ぼす慢性全身性自己免疫疾病である。IFNα活性上昇も、この疾患に罹患している患者の血清中で観察されている。最後に、他の疾病、例えば糖尿病、関節リウマチ、強皮症、血管炎および自己免疫性甲状腺炎も、高レベルのIFNαに関連することが示されている。
【0006】
また、近年、Sedaghatらは、長寿命メモリーT細胞の代わりに短寿命細胞であるTh1エフェクターの方に平衡を移すことにより、1型IFNが正常CD4T細胞動力学の定常状態に影響を及ぼすということを示したように、1型INFはHIV患者におけるCD4T細胞枯渇において一役を果たし得るということを示唆した(Sedaghat et al. J. Virol. 2008, 82(4): 1870-1883)。これは、Mandlら(Mandl et al. Nat. Med. 2008)で検証された(ここでは、病理学的免疫活性化を改善するために、形質細胞様樹状細胞によるIFNα産生を減少させることが示唆されている)。
【0007】
さらに、IFNαの投与は、乾癬、自己免疫性甲状腺炎および多発性硬化症を有する患者における根元的疾患を悪化させ、自己免疫疾患の病歴を有さない患者においてSLE様症候を誘導することが報告されている。
【0008】
したがって、IFNα活性を抑制する作用物質が必要とされている。
【0009】
モノクローナル中和抗体による受動的免疫化は、一般に、SLEの処置のためにロンタリズマブおよびシファリムマブを用いて臨床試験で試験されている。しかしながら、上記の療法は、IFNαに関する13のうちの1つのサブセットのみをターゲッティングするという欠点を示し、受動的に投与されるモノクローナル抗体の使用は、抗薬剤抗体の誘導により制限され得る。上記の抗薬剤抗体は、薬剤の臨床的作用を中和するか、そうでなければ弱め得るし、さらにまた自己タンパク質との交差反応性に関連した重篤な悪事象と関連づけられ得る(De Groot et al. Trends. Immunol. 2007, 28(11))。
【0010】
したがって、本発明は、免疫学的B細胞耐容性を遮断し、IFNαに対する高力価のポリクローナル中和抗体を生成し得る能動的免疫化を可能にする治療有効量の免疫原性生成物を投与することにより、in vivoでIFNa活性を抑制するための方法、ならびにIFNα関連疾病を処置するためのその使用を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一目的は、それを必要とする対象におけるIFNα関連疾病を予防または処置するのに用いるための担体タンパク質分子と結合されるIFNαを含む免疫原性生成物であって、対象に投与される治療有効量の免疫原性生成物が投与当たり30mcgより多い、好ましくは少なくとも60mcgの免疫原性生成物である。
【0012】
本発明の一実施形態では、治療有効量の免疫原性生成物の投与は、IFNαの過剰産生に関連する疾患の症候の発生を予防する。
【0013】
本発明の別の実施形態では、治療有効量の免疫原性生成物の投与は、IFNαの過剰産生に関連する疾患の再燃(フレア)を予防する。
【0014】
本発明の別の実施形態では、IFNα関連疾病は、全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、血管炎、HIV、I型糖尿病、自己免疫性甲状腺炎および筋炎を含む。
【0015】
本発明の別の実施形態では、対象に投与される治療有効量の免疫原性生成物は、投与当たり35mcg〜1000mcg、好ましくは60mcg〜1000mcgの免疫原性生成物である。
【0016】
本発明の別の実施形態では、免疫原性生成物は、1ヶ月に少なくとも2回、対象に投与される。
【0017】
本発明の別の実施形態では、免疫原性生成物は、さらに、3ヶ月毎に少なくとも1回、対象に投与される。
【0018】
本発明の別の実施形態では、免疫原性生成物は、さらに、対象から得られた血清中で、抗IFNα抗体の量が検出されない場合、対象に投与される。
【0019】
本発明の別の実施形態では、免疫原性生成物は強力に不活性化され、これは、生成物が試験Bの条件における抗ウイルス活性の5%未満を示す、ということを意味する。
【0020】
本発明の別の実施形態では、免疫原性生成物は、試験Cの条件におけるIFNαの抗ウイルス活性を中和可能である。
【0021】
本発明の別の実施形態では、免疫原性生成物は、IFNαの少なくとも1つの亜型を含む。
【0022】
本発明の別の実施形態では、IFNαの亜型はIFNα 2bであり、担体タンパク質分子はKLHである。
【0023】
本発明の別の実施形態では、免疫原性生成物は好ましくは乳濁液の形態のワクチンである。
【0024】
本発明の別の目的は、上記のような担体タンパク質分子と結合されるIFNαを含む免疫原性生成物を30mcgより多く含む単位剤形である。
【0025】
本発明の別の目的は、上記のような担体タンパク質分子と結合されるIFNαを含む免疫原性生成物を30mcgより多く含む医療用具である。
【0026】
本発明の別の目的は、上記のような担体タンパク質と結合されるIFNαを含む免疫原性生成物を30mcgより多く、好ましくは少なくとも60mcg含有する少なくとも1つのバイアル、アジュバントを含有する少なくとも1つのバイアル、ならびに上記免疫原性生成物をアジュバントと接触させるための、およびアジュバントと水溶液の混合物を乳化するための手段を包含するキットである。
【0027】
一実施形態では、本発明のキットは、
− 本発明による担体タンパク質と結合されるIFNαを含む免疫原性生成物を30mcgより多く、好ましくは少なくとも60mcg含有する少なくとも1つのバイアルと、
− 本発明による担体タンパク質と結合されるIFNαを含む免疫原性生成物を30mcgより多く、好ましくは少なくとも60mcg含む溶液、好ましくは水溶液を含有する少なくとも1つのバイアルと、
− アジュバントを含有する少なくとも1つのバイアル、ならびに上記溶液をアジュバントと接触させるための、およびアジュバントと水溶液の混合物を乳化するための手段と、
を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】暫定報告中のIFNα中和活性を示す免疫化患者血清試料のパーセンテージを示す。
図2】処置患者対プラセボ患者におけるIFN誘導遺伝子の差分進化を示す。基線でのIFN誘導遺伝子発現のレベル増大を示す患者11名のうち、8名を免疫原性生成物で処置し、3名にはプラセボ注射を施した。SLE患者における最高レベルの過剰発現を示す250のIFN誘導遺伝子のレベルを、高密度マイクロアレイを用いて評価した。結果を、平均log2(V1での発現のレベル)−log2(V6での発現のレベル)として示す。
図3】基線での陽性または陰性IFNシグネチャーを有する処置患者対プラセボ摂取患者におけるIFN結合抗体の力価であり、星印は、p値<0.05を示す。
図4】V10〜V0またはV11〜V0の間の、基線での陽性または陰性IFNシグネチャーを有する処置患者対プラセボ患者におけるIFN誘導遺伝子の差分進化。結果を、平均デルタLog(遺伝子発現)として示す。星印は、p値<0.05を示す。
図5】基線での陽性IFNシグネチャーを有する処置患者における、ならびにプラセボ摂取患者における、血清C3値の評価であり、星印は、p値<0.04を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
本明細書中で用いる場合、「インターフェロンα」または「IFNα」という用語は、IFNアルファ1と75%以上の配列同一性を有するインターフェロンアルファ遺伝子座の機能遺伝子によりコードされるIFNアルファタンパク質を指す(GenBank番号NP_076918、またはGenBank番号NP_024013によりコードされるタンパク質)。ヒトIFNアルファ亜型としては、IFNアルファ1(Genbank番号 NP_076918)、アルファ2a(Genbank番号 ITF_A)、アルファ2b(Genbank番号 AAP20099)、アルファ4(Genbank番号 NP_066546)、アルファ5(Genbank番号 P01569)、アルファ6(P05013)、アルファ7(Genbank番号 P01567)、アルファ8(Genbank番号 P32881)、アルファ10(Genbank番号 P01566)、アルファ14(Genbank番号 P01570)、アルファ16(Genbank番号 NP_002164)、アルファ17(Genbank番号 P01571)およびアルファ21(Genbank番号 NP_002166)が挙げられる。非ヒト哺乳動物IFNa亜型の例は、当業者に周知であるようにGenbankで見出され得る(再検討のためには、Pestka et al Immunological reviews 2004、202:8-32を参照)。
【0030】
本明細書中で用いる場合、「免疫応答」という用語は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、ならびに上記の細胞または肝臓により産生される高分子物質(例えば、抗体、サイトカインおよび補体)の作用を指す。
【0031】
本明細書中で用いる場合、IFNαの「生物学的活性を抑制する」または「生物学的活性を中和する」抗体は、例えば、実施例に記載されるものと同様の機能性アッセイを用いることにより、抗体の非存在下でのサイトカインの活性レベルと比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%またはそれ以上、サイトカインの活性を抑制する抗体を指すよう意図される。
【0032】
本明細書中で用いる場合、「担体タンパク質分子」という用語は、ヘテロ複合体を形成するためにIFNα分子と部分的に共有結合される場合、IFNαの多数の抗原をBリンパ球に提示させる少なくとも15アミノ酸長のタンパク質またはペプチドを指す。
【0033】
本明細書中で用いる場合、「対象」という用語は、任意のヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ等を包含する。
【0034】
本明細書中で用いる場合、「患者」という用語は、IFNα関連疾病に冒されている対象を指す。
【0035】
本明細書中で用いる場合、「有効量」という用語は、有益なまたは所望の臨床的結果(例えば、臨床疾病の改善)を生じるのに十分な量を指す。
【0036】
本明細書中で用いる場合、「処置」または「処置すること」という用語は、処置される対象または患者の疾患の自然経過を変更するための試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、または臨床的病態の経過中に実施され得る。望ましい効果としては、疾患の発生または再発を予防すること、症候を軽減すること、疾患の任意の直接的または間接的病理学的結果を抑制し、縮小し、または阻止すること、疾患進行速度を低下させること、疾患状態を改良するかまたは一時的に緩和して寛解を生じ、寛解状態または改良された予後を保持することが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
IFNαの調節因子は身体中に自然に生じるが、しかし例えばSLEおよびSSのような疾患におけるサイトカインレベルを調節するそれらの能力は、不十分であると思われる。本発明の抗IFNα治療的免疫化の目標は、サイトカインに対して抗体レベルを上げる一方で、それらの親和性および中和活性を増強して、過剰量のサイトカインの低減を生じて、他の代謝的および生理学的過程を妨げることなく、その病原作用を抑制することである。
【0038】
本発明の一目的は、それを必要とする対象におけるIFNα関連疾病を処置するための方法であって、担体タンパク質分子と結合されるIFNαを含む治療有効量の免疫原性生成物を対象に投与することを包含する方法であるが、この場合、上記治療有効量は、投与当たり30mcgより多い。
【0039】
本発明の一実施形態では、上記の治療有効量は、投与当たりの免疫原性生成物が少なくとも60mcg(μg)である。
【0040】
本発明の一実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、30mcgより多く、好ましくは60mcgより多く1000mcgまでである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、30mcgより多く、好ましくは60mcgより多く750mcgまでである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、30mcgより多く、好ましくは60mcgより多く500mcgまでである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、30mcgより多く、好ましくは60mcgより多く450mcgまでである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、30mcgより多く、好ましくは60mcgより多く400mcgまでである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、30mcgより多く、好ましくは60mcgより多く350mcgまでである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、30mcgより多く、好ましくは60mcgより多く300mcgまでである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、30mcgより多く、好ましくは60mcgより多く250mcgまでである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、30mcgより多く、好ましくは60mcgより多く200mcgまでである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、30mcgより多く、好ましくは60mcgより多く150mcgまでである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、30mcgより多く、好ましくは60mcgより多く100mcgまでである。
【0041】
本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、35mcg〜1000mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、35mcg〜750mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、35mcg〜500mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、35mcg〜450mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、35mcg〜400mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、35mcg〜350mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、35mcg〜300mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、35mcg〜250mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、35mcg〜200mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、35mcg〜150mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、35mcg〜100mcgである。
【0042】
本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜1000mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜750mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜500mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜450mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜400mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜350mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜300mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜250mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜240mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜200mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜150mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜120mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜100mcgである。
【0043】
本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390mcgから、400mcgまでである。
【0044】
本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜240mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、120mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、240mcgである。
【0045】
一実施形態では、治療有効量は、当該技術分野で周知のようなブラッドフォードタンパク質アッセイを用いて決定される総タンパク質の量に対応する。
【0046】
本発明の一実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、少なくとも月2回投与される。
【0047】
本発明の別の実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、月2回投与される。この実施形態では、対象は、0日目に1回投与され、第2回目は7日目〜28日目の間である。別の実施形態では、対象は、0日目に1回投与され、2回目は7日目〜21日目の間である。一実施形態では、対象は、0日目に1回投与され、2回目は28日目に投与される。
【0048】
本発明の別の実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、月に3回投与される。この実施形態では、処置される対象は、0日目に1回投与され、2回目は7日目〜14日目の間であり、3回目は21日目と28日目の間である。一実施形態では、対象は、0日目に1回投与され、2回目は7日目で、3回目は28日目に投与される。
【0049】
本発明の別の実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、3ヶ月に4回投与される。この実施形態では、処置される対象は、0日目に1回投与され、2回目は7日目〜14日目の間であり、3回目は21日目と28日目の間であり、4回目は77日目と84日目の間である。一実施形態では、対象は、0日目に1回投与され、2回目は7日目で、3回目は28日目、4回目は84日目に投与される。
【0050】
本発明の別の実施形態では、処置される対象は、さらに、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、3ヶ月毎に1回投与され得る。
【0051】
本発明の一実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、上記のように月3回投与され、次いで、さらに3ヶ月毎に1回投与される。
【0052】
本発明の一実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、上記のように3ヶ月に4回投与され、次いで、さらに3ヶ月毎に1回投与される。
【0053】
本発明の別の実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、6ヶ月毎に1回投与される。
【0054】
本発明の一実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、上記のように月3回または3ヶ月に4回投与され、次いで、さらに6ヶ月毎に1回投与される。
【0055】
本発明の別の実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、年1回さらに投与される。
【0056】
本発明の一実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、上記のように月3回または3ヶ月に4回3ヶ月に4回投与され、次いで、さらに毎年1回投与される。
【0057】
本発明の別の実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、5年毎に1回さらに投与される。
【0058】
本発明の一実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、上記のように月3回または3ヶ月に4回投与され、次いで、さらに5年毎に1回投与される。
【0059】
本発明の別の実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、10年毎に1回さらに投与される。
【0060】
本発明の一実施形態では、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、上記のように月3回または3ヶ月に4回投与され、次いで、さらに10年毎に1回投与される。
【0061】
本発明の別の実施形態では、IFNαに対する抗体の量が対象から得られる血清試料中で非検出可能である場合、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物をさらに投与され得る。
【0062】
本発明の一実施形態では、IFNαに対する抗体の量が対象から得られる血清試料中で非検出可能である場合、処置される対象は、本明細書中に上記したような治療有効量の免疫原性生成物を、上記のように月3回または3ヶ月に4回投与され、次いで、さらに投与され得る。
【0063】
血清試料中のIFNαに対する抗体の量の定量は、当該技術分野で既知の慣用的方法により、例えばELISA抗IFNにより実行され得る。
【0064】
このような方法の実行の一例を、以下に示す。
− IFNα−2bのような免疫原性生成物を調製するために用いられるIFNαの亜型 100ngで96ウェルプレートを被覆し、2℃〜8℃で一晩、プレートをインキュベートする。
− 37℃で90分間、遮断緩衝液でプレートを遮断する。
− 37℃で90分間、血清試料およびナイーブ試料のプールとともにプレートをインクとする(血清試料は、典型的には、200倍希釈から出発して、2倍希釈シリーズで、少なくとも8回希釈まで、希釈される)。
− HRPと共役されるヤギ抗ヒト免疫グロブリンのような標識化二次抗体とともにプレートをインキュベートする。
− o−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)基質溶液で複合体を発色させる。酵素反応停止後、結果的に生じた色の強度を、492nmで分光測光的方法により決定する。
【0065】
各試料に関する抗IFN力価は、平均OD値が、以下のカットオフ値より高い最小希釈として表される。
カットオフ値=ナイーブ血清のプールの平均OD×2.08
(ここで、カットオフ値 Nは2.08と等しい)。
【0066】
次に、各試料に関する抗IFN力価は、平均OD値がカットオフ値より高い最小希釈として表される。初回希釈は200であり、1/200でのそのODがカットオフ値より低い場合、患者は陰性であるとみなされる(Mire-Slius et al. 2004 J. Immunol Meth. 289: 1-16)。
【0067】
本発明の一実施形態では、処置される対象は、IFNα関連疾病を患っている。
【0068】
本発明の別の実施形態では、処置される対象は、血清中の非検出可能量の抗IFNα抗体を示す。
作用機序
【0069】
本発明は、上記の免疫原性生成物が投与される哺乳動物における免疫応答、例えば体液性免疫応答(この場合、抗体は、内因性サイトカインIFNαの免疫抑制的、アポトーシス的または血管原性特性を中和する)を誘導するために有用である免疫原性生成物にも関する。
【0070】
本発明は、それを必要とする哺乳動物において免疫応答を誘導するための方法であって、上記の哺乳動物に本明細書中で上記したような免疫原性生成物を投与することを包含する方法にも関する。一実施形態では、上記免疫応答は、内因性サイトカインの免疫抑制的、アポトーシス的または血管原性特性を中和する抗体が誘導される体液性免疫応答を包含する。
【0071】
本発明の一実施形態では、免疫原性生成物は、例えばKLHなどのTヘルパー刺激外来担体タンパク質と化学的に結合されるIFNαの、不活性化されているが免疫原性のサイトカイン誘導体である。上記の免疫原性生成物は、IFNαに対するB細胞耐容性を崩壊するが、しかしT細胞耐容性を崩壊しない能力を有する。自己に対するヘルパーT細胞耐容性は、IFNαを外来担体タンパク質と連結することにより阻止される。
【0072】
IFNαに特異的なB細胞は、抗原結合後に活性化され、免疫原性生成物を貪食して、担体特異的ペプチドが、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII分子を介して提示される。この活性化シグナルは、T依存性抗原の場合にはB細胞分化を誘導するには十分ではないが、しかし、B細胞は、自己および担体抗原をプロセシングするため、T細胞ヘルプが、自己または担体タンパク質に特異的なT細胞により与えられ得る。T細胞選択は非常に癌密であるため、自己抗原に関する特異的T細胞活性化は認められない。
【0073】
樹状細胞(DC)も、自己抗原および担体分子を取込み、それらのMHCクラスII分子を介して担体特異的ペプチドを提示する。ヘルパー細胞は、順次、自己抗原に特異的なB細胞に担体特異的Tヘルパー細胞を提供し、それらのMHCクラスII分子上に担体ペプチドを提示することができる。
【0074】
担体に特異的なヘルパー細胞は、自己抗原に特異的なB細胞と相互作用して、自己抗原に対する正常抗体応答を引き出す。
【0075】
免疫原性生成物は主に、IFNαの過剰産生と結び付けられる疾患を処置するためにワクチン組成物中に用いられる。
【0076】
さらに具体的には、本発明は、IFNαの過剰産生と結び付けられる疾患を処置するための方法であって、治療有効量の本発明の免疫原性生成物を対象に投与するステップを包含する方法に関する。
【0077】
本発明は、IFNαの過剰産生と結び付けられる疾患を処置するための方法であって、治療有効量の免疫原性生成物を投与し、免疫原性生成物の投与が疾患の症候の発声を予防することを包含する方法にも関する。
【0078】
本発明は、IFNαの過剰産生と結び付けられる疾患を処置するための方法であって、治療有効量の免疫原性生成物を投与し、免疫原性生成物の投与が疾患の再燃を予防することを包含する方法にも関する。
【0079】
本発明は、IFNαの過剰産生と結び付けられる疾患を処置するための方法であって、治療有効量の免疫原性生成物を投与し、免疫原性生成物の投与が内因性IFNαの活性を中和する抗体の産生を誘導することを包含する方法にも関する。
【0080】
本発明は、IFNαの過剰産生と結び付けられる疾患を処置するための方法であって、治療有効量の免疫原性生成物を投与し、免疫原性生成物の投与が内因性IFNαの活性の中和を誘導することを包含する方法にも関する。
【0081】
IFNαの過剰産生と結び付けられる疾患の例としては、全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、血管炎、HIV、I型糖尿病、自己免疫性甲状腺炎および筋炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明のさらなる目的は、対象における内因性IFNαの活性を中和する抗体の産生を誘導するための方法であって、治療有効量の免疫原性生成物を上記非検体に投与するステップを包含する方法からなる。
免疫原性生成物
【0083】
本発明で用いられるような免疫原性生成物は、KLHのような担体タンパク質分子と結合されるIFNαを含むが、この場合、免疫原性生成物は不活性化される。
【0084】
本明細書中で用いられるような免疫原性生成物は、少なくとも1つの組換えIFNα亜型と、少なくとも1つの担体タンパク質分子、例えばKLH(グルタルアルデヒドと共役され、その後、ホルムアルデヒドデ不活性化される)との間の複合体である。
【0085】
本発明の一実施形態では、担体タンパク質分子は、免疫学で慣用的に用いられる任意の担体分子、例えばKLH(カギアナカサガイヘモシアニン)、卵白アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)、破傷風類毒素、コレラ毒素B、突然変異体非毒性ジフテリア毒素(CRM197)、髄膜炎菌外膜タンパク質(外膜小胞中)、非類別可能インフルエンザ菌外膜タンパク質、緑膿菌毒素A、ウイルス様粒子(VLP)等であり得る。好ましい一実施形態では、上記の担体は、KLHである。好ましくは、KLH出発物質は、海洋性腹足類軟体動物メガスラ・クレヌラタのリンパから抽出される高度精製KLHからなる。天然に産生されるKLHは、一般的に、20サブユニットの非共有的管状集合体である二重十量体構造からなる。
【0086】
本発明の別の実施形態では、組換えIFNα亜型は、IFNアルファ1、アルファ2a、アルファ2b、アルファ4、アルファ5、アルファ6、アルファ7、アルファ8、アルファ10、アルファ14、アルファ16、アルファ17およびアルファ21の中の任意の亜型であり得る。
【0087】
組換えIFNα亜型は、上記のようなGenBankからの配列を用いて、当該技術分野で既知の慣用的方法により獲得され得る。例えば、組換えIFNα亜型の賛成は、IFNアルファ亜型の遺伝子を含む発現ベクターを含有する細胞を培養し、次いで封入体を収穫し、最後にIFNα亜型を精製することにより実行され得る。
【0088】
本発明の一実施形態では、組換えIFNα亜型は、IFNα 2b亜型である。
【0089】
本発明の一実施形態では、免疫原性生成物は少なくともIFNα 2b亜型を含む。
【0090】
本発明の一実施形態では、組換えIFNα亜型は、液体溶液、好ましくは3.5から好ましくは6〜7.8までの範囲のpHを有する緩衝溶液中にある。
【0091】
一実施形態では、処置される対象がヒトである場合、用いられる組換えIFNαはヒトである。
【0092】
本発明の一実施形態では、免疫原性生成物は、担体タンパク質分子、例えばKLHと結合されるIFNαを含み、この場合、上記免疫原性生成物は抗IFNα抗体により認識される。
【0093】
抗IFNα抗体による免疫原性生成物の認識は、当該技術分野で既知の慣用的方法、例えばサンドイッチELISA抗IFNα/担体タンパク質により実行され得る。ELISA(試験D)は、当該技術分野で既知の任意の比色手段により、例えばビオチンで標識される検出抗体、ポリストレプトアビジンHRP増幅系およびo−フェニレンジアミン二塩酸塩基質溶液を用いて、開発される。
【0094】
上記の方法の一例を以下に示す。
− 捕捉抗体、例えばウサギポリクローナル抗KLH抗体でプレートを被覆する。
− 37℃で90分間、遮断緩衝液(例えば、PBS中の2%カゼイン)でプレートを遮断する。
− 37℃で90分間、250ng/mlから8回の2倍希釈までの免疫原性生成物の希釈シリーズとともに、あるいは陰性対照、例えばKLHおよびIFNαとともに、プレートをインキュベートする。
− 37℃で90分間、検出抗体、例えばビオチニル化抗IFNα抗体とともに、プレートをインキュベートする。
− 37℃で30分間、ストレプトアビジン−HRPとともにプレートをインキュベートし、o−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)基質溶液で30分間、複合体を発色させる。酵素反応停止後、結果的に生じた色の強度を、490nmで分光測光的方法により決定する。
【0095】
免疫原性生成物を含有するウェルの光学密度が、陰性対照を含有するウェルの光学密度より少なくとも10倍高い場合、免疫原性生成物は抗IFNα抗体により認識され、免疫原性生成物中のIFNαはKLHと結合される、と当業者は考える。
【0096】
本発明の別の実施形態では、免疫原性生成物は、担体タンパク質分子、例えばKLHと結合されるIFNαを含むが、この場合、上記免疫原性生成物は強免疫原性であり、これは、当該生成物が、本明細書下で試験される試験Aの条件でin vivoで抗体抗IFNαを誘導し得る、ということを意味する。
【0097】
試験Aは、以下の方法により実行される。
免疫原性生成物の総タンパク質0.3〜10μg(ブラッドフォードタンパク質アッセイにより決定される)を、30日で2回、好ましくは0日目および21日目に、6〜8週齢のBalb/cマウスに注射する。血清試料は、免疫化前(前免疫血清試料)および30日目〜40日目(試験血清試料)、好ましくは31日目に採取する。ELISA抗IFNαを、本明細書に上記したように実行する。
【0098】
簡潔に記載すると、免疫原性生成物を調製するために用いられるIFNαの亜型、例えばIFNα−2B 100ngで96ウェルプレートを被覆し、2℃〜8℃で一晩インキュベートする。次に、37℃で90分間、遮断緩衝液でプレートを遮断する。1/2500希釈の前免疫試料 100μl、ならびに血清試料(前免疫および試験)の1/2500から8回の2倍希釈までの希釈シリーズを、ウェルに付加する。最後に、抗マウス免疫グロブリン標識化二次抗体、例えばHRP共役抗体をウェルに付加し、当該技術分野で既知の任意の比色法、例えばo−フェニレンジアミン二塩酸塩基質溶液を用いて、ELISAを発色させる。
【0099】
試験血清試料を含有するウェルの光学密度が、前免疫血清試料を含有するウェルの光学密度より少なくとも2倍高い場合、免疫原性生成物は免疫原性であると当業者はみなすが、これは、in vivoでそれが抗IFNα抗体を誘導していたことを意味する。
【0100】
本発明の別の実施形態では、免疫原性生成物は、担体タンパク質分子、例えばKLHと結合されるIFNαを含み、この場合、IFNαは強力に不活性化されるが、これは、当該生成物が、下記で言及される試験Bの条件でのIFNαの抗ウイルス活性の5%未満、好ましくは1%未満の抗ウイルス活性を示す、ということを意味する。一実施形態では、本発明の免疫原性生成物は、500ng/mL以上の濃度で、試験Bの条件で500ng/mL以上の濃度でのIFNαの抗ウイルス活性の5%未満、好ましくは1%未満の抗ウイルス活性を示す。
【0101】
このアッセイは、メイディン・ダービーウシ腎臓(MDBK)細胞に及ぼす水疱性口内炎ウイルス(VSV)の細胞変性作用(CPE)に及ぼすIFNαの防御効果を基礎にしている。このアッセイは、Hep−2CまたはA549ヒト細胞およびEMCVウイルスを用いても実行され得る。試験Bは、以下の方法により実行される。
免疫原性生成物および免疫原性生成物を調製するために用いられる組換えIFNα亜型(陽性対照)を、基本培地(2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、1mM Hepesを補足したRPMI)中に、それぞれ少なくとも500ng/mlおよび少なくとも1000U/mlで希釈する。50μlの免疫原性生成物および陽性対照を96ウェルプレート中でプレート化して、基本培地中で2倍希釈のシリーズに希釈する。50μlの細胞培地(4%FBS、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムおよび1mM Hepesを補足したRPMI)中の各ウェル中に、2×10MDBK細胞を付加し、37℃、5%COで一晩、プレートをインキュベートする。次に、ウイルスを基本培地中で少なくとも10 TCID50(組織培養感染用量 50:感染細胞の50%を殺害するために10回希釈)に希釈する。プレートを空にして、100μlの希釈ウイルスを付加する。次いで、37℃、5%COで一晩、プレートをインキュベートする。
【0102】
培養の終了時に、当該技術分野で周知の方法を用いて、MDBK細胞の生存度を評価する。上記の方法の一例を、以下に示す。MTS/PMS(100μlのMTS/5μlのPMS;Promega G5430)の溶液20μl/ウェルをウェルに付加し、プレートをさらに4時間、37℃、5%COでインキュベートする。次に、プレートを、分光光度計で490nmで読み取る。
【0103】
抗ウイルス活性のパーセンテージは、以下のように算定される。
抗ウイルス活性(%)=[(OD生成物−ODウイルス)/平均OD細胞−ODウイルス]×100
(式中、OD生成物は、免疫原性生成物を有するかまたは陽性対照(IFNα亜型)を有するウェルの光学密度を意味し、
ODウイルスは、ウイルスのみを有する対照ウェルの光学密度を意味し、
OD細胞は、IFNαおよびウイルスを有する対照ウェルの光学密度を意味する)。
【0104】
EC50値(ウイルス媒介性死亡率の50%抑制を生じる免疫原性生成物の量に対応する)は、生存度/濃度グラフ上のx軸上にEC50値を挿入することにより決定される。
【0105】
免疫原性生成物のEC50と陽性対照(免疫原性生成物を調製するために用いられる組換えIFNα亜型)のEC50を比較することにより、免疫原性生成物が、5%未満、好ましくは1%未満の活性を示すか否かが決定される。
【0106】
不活性化因子EC50生成物/EC50IFNαが算定され得る。免疫原性生成物が5%未満、好ましくは1%未満の抗ウイルス活性を示す場合、不活性化因子は、20より大きい、好ましくは100より大きい。
【0107】
本発明の別の実施形態では、免疫原性生成物は、担体タンパク質分子、例えばKLHと結合されるIFNαを含み、この場合、免疫原性生成物は、下記で言及される試験Cの条件でIFNαの抗ウイルス活性を中和可能である。本発明によれば、このアッセイは、免疫原性生成物で免疫化されるマウスから得られる血清の中和能力を評価するために実施される。中和能力は、MDBK細胞中で複製する水疱性口内炎ウイルスの存在下で細胞生存度を評価することにより評価され得る。このアッセイは、Hep−2Cヒト細胞およびEMCVウイルスを用いても実行され得る。
【0108】
試験Cは、以下の方法により実行される。
免疫原性生成物の総タンパク質0.3〜10μg(ブラッドフォードタンパク質アッセイにより決定される)を、30日で2回、好ましくは0日目および21日目に、6〜8週齢のBalb/cマウスに注射する。血清試料は、免疫化前(前免疫血清試料)および30日目〜40日目(試験血清試料)、好ましくは31日目に採取する。
【0109】
25μlの前免疫および試験血清試料を、1/200の希釈、1/200から8回の希釈までの希釈で、96ウェルプレート中でプレート化する。陽性対照(ポリクローナル抗IFNα;PBL, Piscataway, NJ, ref.31100-1)は、典型的には、基本培地(2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウムおよび1mMのhepesを補足したRPMI)中で3125UI/ウェルから100UI/ウェルに、IFNα活性を中和可能であるよう希釈され、25μlは、さらにプレート中でプレート化された。
【0110】
基本培地25μl中の25U/ウェル(最終濃度)のIFNαを、各ウェルに付加し、プレートを、室温で60分間インキュベートする。
【0111】
アッセイ培地(4%FBS、2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mMのhepesを補足したRPMI)中の20000個のMDBK細胞を各ウェルに付加し、プレートを、37℃、5%COで一晩、インキュベートする。
【0112】
ウイルスを、ウイルス培地(2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウムおよび1mMのhepesを補足したRPMI)中で少なくとも10 TCID(感染細胞の50%を殺害する希釈の10倍)に希釈する。プレートを空にして、100μlのウイルスを各ウェルに付加した後、37℃、5%COで24時間、インキュベートする。
【0113】
培養の終了時に、当該技術分野で周知の方法を用いて、MDBK細胞の生存度を評価する。上記の方法の一例を、以下に示す。MTS/PMS(100μlのMTS/5μlのPMS;Promega G5430)の溶液20μl/ウェルをウェルに付加し、プレートをさらに4時間、37℃、5%COでインキュベートする。次に、プレートを、分光光度計で490nmで読み取る。
【0114】
相対細胞生存度は、以下のように算定される。
%=[(OD試料−ODウイルス)/ODIFN+ウイルス]×100
(式中、OD試料は、免疫原性生成物で、または陽性対照(ポリクローナル抗IFN抗体)で免疫化されたマウスから得られる血清を有するウェルの光学密度を意味し、
ODウイルスは、ウイルスのみを有する対照ウェルの光学密度を意味し、
ODIFN+ウイルスは、IFNαおよびウイルスを有する対照ウェルの光学密度を意味する)。
【0115】
NC50値(希釈因子または中和単位/mlとして表されるウイルス媒介性死亡率の50%中和を生じる血清の希釈に対応する)は、生存度/濃度グラフ上のx軸上にNC50値を挿入することにより決定される。
【0116】
試験Cにおいて、免疫原性生成物で免疫化されたマウスから得られる血清がMBDK細胞を死から護るわけではないことを示す結果は、その抗ウイルス活性を中和するIFNαに対して向けられる抗体を誘導する能力を免疫原性生成物が有している、ということを意味する。
【0117】
一実施形態では、免疫原性生成物は、担体タンパク質分子、例えばKLHと結合されるIFNαを含み、この場合、免疫原性生成物は、試験Cの条件でIFNαの抗ウイルス活性の少なくとも50%を中和可能である。上記の実施形態において、NC50が算定され得る。血清の希釈が試験Cの条件でIFNαの抗ウイルス活性の少なくとも50%を中和し得ない場合、当該生成物のNC50は算定され得ない。
【0118】
本発明の一実施形態では、免疫原性生成物は、担体タンパク質分子、例えばKLHと結合されるIFNαを含むが、この場合、IFNα/担体の重量比は0.06〜0.6の範囲である。
【0119】
本発明の別の実施形態では、免疫原性生成物は、担体タンパク質分子、例えばKLHと結合されるIFNαを含むが、この場合、IFNα/担体の比は0.1〜0.5である。
【0120】
本発明の別の実施形態では、免疫原性生成物は、担体タンパク質分子、例えばKLHと結合されるIFNαを含むが、この場合、IFNα/担体の比は0.3である。
【0121】
本発明の別の実施形態では、免疫原性生成物は、担体タンパク質分子、例えばKLHと結合されるIFNαを含むが、この場合、IFNα/担体の比は0.05、0.1、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.5である。
【0122】
上記の比は、実施例10で記載されるように、UVおよび蛍光検出(試験E)に基づいた方法により算定され得る。
免疫原性生成物を得るための方法
【0123】
本発明の一実施形態では、IFNα キノイド(kinoid)は、以下の方法により得られる。
a)少なくとも1つの組換えヒトIFNα亜型および少なくとも1つの担体タンパク質分子をグルタルアルデヒドと混合し、(i)還元剤および(ii)リシンおよびグリシンならびにその混合物からなる群から選択されるアミノ酸から選択されるクエンチング化合物を付加することにより反応を遮断する。
b)10kDa未満の、または8kDa未満の分子量を有する化合物を除去する。
c)ホルムアルデヒドを付加する。
d)(i)還元剤および(ii)リシンおよびグリシンならびにその混合物からなる群から選択されるアミノ酸から選択されるクエンチング化合物を付加することによりホルムアルデヒドとの反応を遮断する。
e)上記免疫原性生成物を収集する。
【0124】
ステップa)の一実施形態では、IFNαおよび担体タンパク質分子、例えばKLHが先ず、適切な量で混合された後、グルタルアルデヒドを付加する。
【0125】
一実施形態では、IFNαおよびKLHは、10:1〜40:1の範囲のIFNα:サブユニットKLHモル比で、ステップa)で混合される。別の実施形態では、IFNαおよびKLHは、15:1〜25:1の範囲のIFNα:サブユニットKLHモル比で、ステップa)で混合される。別の実施形態では、IFNαおよびKLHは、20:1〜25:1の範囲のIFNα:サブユニットKLHモル比で、ステップa)で混合される。
【0126】
ステップa)の一実施形態では、グルタルアルデヒドは、1mM〜250mM、好ましくは20mM〜30mM、さらに好ましくは22.5mM〜25mMの範囲の反応混合物中の最終濃度で用いられる。ステップa)の一実施形態では、グルタルアルデヒドは、IFNαおよびKLHとともに、15分〜120分の範囲の時間、好ましくは約30、35、40、45、50、60、70、80、90分間、インキュベートされる。一実施形態では、グルタルアルデヒドは、約45分間、22.5mMで付加される。有益には、グルタルアルデヒドを伴うインキュベーションのステップa)は、18℃〜37℃、好ましくは18℃〜27℃の範囲の温度で実施される。
【0127】
一実施形態によれば、グルタルアルデヒドとの反応(ステップa)は、クエンチング化合物、好ましくは(i)還元剤および(ii)リシンおよびグリシンならびにその混合物からなる群から選択されるアミノ酸から選択されるクエンチング化合物を付加することにより、10kDa未満の分子量を有する化合物を除去する(ステップb)前に、停止される。
【0128】
還元剤は、それらの還元特性のために、アルデヒド処理中に生成される残存するイミン群を還元する能力を有する当該技術分野で既知の還元剤のいずれか1つで構成され得る。還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウムからなる群から選択され得る。
【0129】
一実施形態によれば、上記のクエンチング化合物がアミノ酸である実施形態では、上記のアミノ酸はグリシンからなる。グルタルアルデヒドとの反応を遮断するためにグリシンおよび/またはリシンが用いられるステップb)のいくつかの実施形態では、選択アミノ酸は、本明細書中の実施例で示されるように、0.01M〜1M、好ましくは0.05M〜0.5M、最も好ましくは0.08M〜0.2Mの範囲の、例えば0.1Mの反応混合物中の最終濃度で用いられる。一実施形態では、クエンチング化合物を伴うインキュベーションは、本明細書中の実施例で示されるように、1分〜120分、好ましくは5分〜60分の範囲の時間、例えば30分間、実施される。別の実施形態ではこのステップは、18℃〜30℃、好ましくは18℃〜25℃の範囲の温度で実施される。
【0130】
ステップb)では、反応混合物中に存在する10kDa未満の小化合物は除去される。これらの小化合物は、IFNαまたはKLHと反応していない余分量のグルタルアルデヒドおよび余分量のクエンチング化合物分子を主に包含する。ステップb)は、10kDa未満の化合物の除去を可能にする任意の既知の技法に従って実施され得るが、この技法は、10kDaのカットオフを有する透析膜を伴う透析、または10kDaのカットオフを有する濾過膜を用いる濾過を包含する。例証的には、ステップb)は、本明細書中の実施例で示されるように、10kDaのカットオフを有する濾過膜を用いる接線流濾過のステップで構成され得る。望ましくない小化合物を有さない濾過副産物は、ステップb)の終了時に収集される。所望により、ステップb)は、ステップb)の終了時に得られる反応混合物中に存在する終局的化合物集合体を取り出すという予備的ステップを含み得る。上記の予備ステップは、液体溶液中の懸濁液中に最終的に存在する集合体を取り出すための関与的濾過ステップ、例えば適切な濾過膜、例えば0.2μmの孔サイズを有する濾過膜を用いる濾過ステップで構成され得る。
【0131】
当該方法のステップc)の一実施形態では、ホルムアルデヒドが、6mM〜650mM、好ましくは25mM〜250mMの最終濃度で付加される。当該方法のステップc)の一実施形態では、ホルムアルデヒドは、1時間〜336時間、好ましくは1時間〜144時間の間付加される。一実施形態では、ホルムアルデヒドは、50〜100mM、好ましくは66mMの最終濃度で、20〜50時間、好ましくは40時間、適用される。
【0132】
ステップc)では、ホルムアルデヒドを伴うインキュベーションは、本明細書中の実施例で示されるように、好ましくは30℃〜40℃の範囲の温度で、例えば37℃で実施される。
【0133】
当該方法のステップd)では、ホルムアルデヒド戸の反応は、クエンチング化合物、好ましくは、(i)還元剤および(ii)リシンおよびグリシンからなる群から選択されるアミノ酸から選択されるクエンチング化合物を付加することにより、停止される。
【0134】
還元剤は、それらの還元特性のために、アルデヒド処理中に生成される残存するイミン群を還元する当該技術分野で既知の還元剤のいずれか1つで構成され得る。還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウムからなる群から選択され得る。一実施形態によれば、上記のクエンチング化合物がアミノ酸である実施形態では、上記のアミノ酸はグリシンからなる。ホルムアルデヒドとの反応を遮断するためにグリシンおよび/またはリシンが用いられるステップb)のいくつかの実施形態では、選択アミノ酸は、本明細書中の実施例で示されるように、0.01M〜1.5M、好ましくは0.05M〜1M、最も好ましくは0.1M〜0.2Mの範囲の、例えば0.1Mの反応混合物中の最終濃度で用いられる。一実施形態では、クエンチング化合物を伴うインキュベーションは、本明細書中の実施例で示されるように、5分〜120分、好ましくは10分〜60分の範囲の時間、例えば30分間、実施される。別の実施形態ではこのステップは、18℃〜30℃、好ましくは18℃〜25℃の範囲の温度で実施される。
【0135】
当該方法の一実施形態によれば、ステップe)での収集の直前に、100kDa未満の分子量を有する物質の取り出しが、液体溶液中から100kDaより大きい分子量を有する物質を除去するために、当該技術分野で既知の任意の技法により、当業者によって実施される。第一の実施形態では、用いられる技法は、少なくとも100kDaのカットオフ値を有する濾過膜を用いることにより実施される濾過ステップであり、これは、限外濾過ステップまたは接線濾過ステップを包含する。第二の実施形態では、用いられる技法は、少なくとも100kDaのカットオフ値を有する濾過膜を用いる接線濾過ステップからなる。別の実施形態では、ステップe)での収集の直前に、300kDa未満の分子量を有する物質の取り出しが、少なくとも300kDaのカットオフ値を有する濾過膜を用いることにより実施され得る。
組成物、乳濁液およびこのような乳濁液を含有するワクチン
【0136】
本発明は、本明細書中に上記したような免疫原性生成物を含む組成物に関する。本発明は、当該生成物が乳濁得に内に存在する本発明の生成物の処方物にも関する。有益には、本発明のワクチン組成物は、上記の乳濁液を含むかまたはそれで構成される。このような乳濁液は、本発明の免疫原性生成物、油および界面活性剤、または少なくとも1つの油および少なくとも1つの界面活性剤の混合物を含む。好ましくは、油または混合物油/界面活性剤は、製薬上許容可能な賦形剤である。さらに好ましくは、油および界面活性剤の混合物は、アジュバント、さらに好ましくは免疫アジュバントである。好ましいアジュバントは、ISA51である。用いられ得る免疫アジュバントの別の例は、SWE(スクアレンベースの水中油型乳濁液)である。用いられ得る免疫アジュバントの別の例は、SWE−a(スクアランベースの水中油型乳濁液)である。本発明の乳濁液は、油中水型乳濁液または水中油型乳濁液であり得る。
【0137】
別の実施形態では、本発明による免疫原性生成物の量は、上記の乳濁液の総重量の0.01%(w/w)より多くかつ1%(w/w)未満である。
アジュバント
【0138】
本発明の乳濁液またはワクチン組成物は、アジュバント、特に免疫アジュバントを含み得る。一実施形態では、アジュバントの量は、ワクチン組成物の総重量の0.00001%(w/w)〜1%、好ましくは0.0001〜0.1%、さらに好ましくは0.001〜0.01%(w/w)の範囲である。
【0139】
当業者に既知の任意の適切なアジュバント、例えば油ベースのアジュバント、例えばフロイントの不完全アジュバント、ミコール酸塩ベースのアジュバント(例えば、トレハロース二ミコール酸塩)、細菌リポ多糖(LPS)、ペプチドグリカン(すなわち、ムレイン、ムコペプチドまたは糖タンパク質、例えばN−Opaca、ムラミルジペプチド[MDP]またはMDP類似体)、MPL(モノホスホリル脂質A)、プロテオグリカン(例えば、肺炎桿菌から抽出される)、連鎖球菌調製物(例えば、OK432)、Biostim.TM.(例えば、01 K2)、EP 109942、EP180564およびEP231039の「Iscoms」、水酸化アルミニウム、DEAE−デキストラン、中性油(例えば、ミグリオール)、植物油(例えば、落花生油)、リポソーム、Pluronic.RTM.ポリオール、Ribiアジュバント系(例えばGB−A−2189141参照)、またはインターロイキン、特に細胞媒介性免疫を刺激するものが、上記のワクチン組成物中に用いられ得る。放線菌目の細菌属であるアミコラトゥムの抽出物からなる代替的アジュバントは、米国特許第4,877,612号に記載されている。代替的には、SWE(クエン酸塩緩衝液中、スクアレン 3.9%、スパン 0.47%、トゥイーン80 0.47%)およびSWE−a(クエン酸塩緩衝液中、スクアラン 3.9%、スパン 0.47%、トゥイーン80 0.47%)も、用いられ得る。付加的には、所有権保持アジュバント混合物が市販されている。用いられるアジュバントは、一部は、レシピエント生物体によって決まる。投与するためのアジュバントの量は、動物の種類および大きさによって決まる。最適投与量は、通例の方法により容易に決定され得る。
【0140】
油中水型乳濁液中に用いるのに適した油アジュバントとしては、鉱油および/または代謝可能な油が挙げられる。鉱油は、バイオール(登録商標)、マルコール(登録商標)およびドラケオール、例えばドラケオール(登録商標)6VR(SEPPIC, France)から選択され得る。代謝可能な油は、SP油(後記)、エマルシゲン(MPV Laboratories, Ralston, NZ)、モンタニド 264、266、26(Seppic SA, Paris, France)、ならびに植物油、例えば落花生油およびダイズ油、動物油、例えば魚油スクアランおよびスクアレン、ならびにトコフェロールおよびその誘導体から選択され得る。
【0141】
さらに、アジュバントは、アジュバントの約0.1〜25容積%、さらに好ましくは約1〜10容積%、さらに好ましくは約1〜3容積%の量で、1つ以上の湿潤剤または分散剤を含み得る。湿潤剤または分散剤として特に好ましいのは、非イオン性界面活性剤である。有用な非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、特に、商標プルロニック(登録商標)下で市販され、BASF Corporation(Mt. Olive, N.J.)から入手可能なものが挙げられる。その他の有用な非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンエステル、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(トゥイーン80(登録商標)の商標下で入手可能)またはマンニドモノオレエートが挙げられる。1つ以上の、例えば少なくとも2つの湿潤剤または分散剤を、本発明のワクチン組成物の一部として、アジュバント中に含むことが望ましい。
【0142】
適切なアジュバントとしては、当業者に既知の界面活性剤、例えば、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、リソレシチン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、N,N−ジオクタデシル−N’,N−ビス(2−ヒドロキシエチル−プロパンジアミン)、メトキシヘキサデシル−グリセロールおよびプルロニックポリオール;ピラン、デキストラン、スルフェート、ポリIC、ポリアクリル酸、カルボポールなどのポリアニオン、;ムラミルジペプチド、アイメチルグリシン、ツフトシンなどのペプチド、油乳濁液、ミョウバンおよびその混合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。その他の考え得るアジュバントとしては、大腸菌熱不安定性毒素の、またはコレラ毒素のBペプチドサブユニットが挙げられる(McGhee, J.R., et al., “On
vaccine development,” Sem. Hematol., 30:
3-15 (1993))。
さらなる界面活性剤
【0143】
乳濁液を含む本発明によるワクチン組成物の実施形態では、ワクチン組成物は、好ましくは、免疫原性生成物および1つ以上の油性免疫アジュバント物質のほかに、1つ以上の界面活性剤も含有する。界面活性剤の例示的実施形態は、マンニドモノオレエート、例えばモンタニド(登録商標)80(Arlacel(SEPPIC, France)により市販されている)を含む。
【0144】
一実施形態では、界面活性剤の量は、ワクチン組成物の総重量の0.00001%(w/w)〜1%、好ましくは0.0001〜0.1%、さらに好ましくは0.001〜0.01%(w/w)の範囲である。
凍結乾燥生成物
【0145】
一実施形態によれば、かつ貯蔵目的のために、本発明の生成物またはワクチン組成物は、凍結乾燥され得る。したがって、ワクチン組成物は、フリーズドライ(凍結乾燥)形態で提示され得る。上記の実施形態では、本発明による免疫原性生成物は、1つ以上の凍結乾燥補助物質と組み合わされる。種々の凍結乾燥補助物質は、当業者により周知である。補助物質の凍結乾燥は、ラクトースおよびマンニトールのような糖を包含する。
【0146】
ワクチン組成物が、界面活性剤を含む液体乳濁液として用いるための凍結乾燥組成物からなるこのような実施形態では、ワクチン組成物は、好ましくは、上記ワクチン組成物の総重量の0.1%(w/w)より多く、10%(w/w)未満の本発明による免疫原性生成物の量を含む。
安定化剤
【0147】
いくつかの実施形態では、例えば、分解しがちなタンパク質が分解するのを防いで、ワクチンの保存寿命を増大するために、あるいはフリーズドライ効率を改良するために、ワクチンは安定化剤と混合され得る。有用な安定化剤は、SPGA(Bovarnik et al; J. Bacteriology 59: 509 (1950))では、炭水化物、例えばソルビトール、マンニトール、トレハロース、デンプン、スクロース、デキストランまたはグルコース、タンパク質、例えばアルブミンまたはカゼインまたはその分解産物、アミノ酸、例えばリシンまたはグリシンの混合物、ならびに緩衝剤、例えばアルカリ金属リン酸塩である。
投与経路
【0148】
本発明によるワクチン組成物は、任意の慣用的方法により、例えば注射、例えば皮内、筋肉内、腹腔内または皮下注射により、あるいは、例えば経皮送達により、免疫化される対象に局所的に投与され得る。処置は、単回用量投与、または長期間に亘る複数回の用量投与で構成され得る。
剤形
【0149】
注射可能な使用に適した形態は、滅菌溶液または分散液、ならびに滅菌注射用溶液または分散液の必要に応じた調製のための滅菌粉末を含み得る。微生物による汚染に対する防御は、防腐剤、例えば種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等をワクチン組成物中に付加することにより、行うことができる。多くの場合、注射中の疼痛を低減するために、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能組成物の長期吸収は、吸収を遅延する作用物質、例えばアルミニウムモノステアレートおよびゼラチンの使用により行うことができる。
【0150】
一実施形態によれば、本発明の凍結乾燥ワクチン組成物は、注射のために水中に溶解され、静かに混合される。次いで、免疫アジュバント、好ましくはISA 51が付加される。混合物が、乳化のために静かに混合されて、適切な注射器に入れられる。したがって、本発明は、医療用具、例えば本発明のワクチン組成物を充填されるかまたは予備充填される注射器にも関する。乳濁液は、理想的には、必要に応じて調製される。しかしながら、乳濁液を含有する注射器は、2〜8℃で10時間未満、保存され得る。この場合、乳濁液は、両手で擦り合わせることにより、注射前に温められる必要がある。
単位投与量範囲
【0151】
本発明の別の目的は、30mcgより多く1000mcgまでの範囲の免疫原性生成物の量を含む投与量単位である。別の実施形態では、投与量単位は、35mcg〜1000mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、投与量単位は、35mcg〜750mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、投与量単位は、35mcg〜500mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、投与量単位は、35mcg〜450mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、投与量単位は、35mcg〜400mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、投与量単位は、35mcg〜350mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、投与量単位は、35mcg〜300mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、投与量単位は、35mcg〜250mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜1000mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜750mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜500mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜450mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜400mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜350mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜300mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜250mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜240mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜200mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜150mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜120mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜100mcgである。別の実施形態では、投与量単位は、35、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390mcgから、400mcgまでの範囲の免疫原性生成物の量を含む。
【0152】
別の実施形態では、投与量単位は、60mcg〜240mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、投与量単位は、60mcg〜120mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。
【0153】
別の実施形態では、投与量単位は、60mcgの免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、投与量単位は、120mcgの免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、投与量単位は、240mcgの免疫原性生成物の量を含む。
キットおよび医療用具
【0154】
本発明は、
− 典型的には3mLの本発明の免疫原性生成物を含有する1つのバイアル(第1バイアル)と、
− アジュバント、好ましくはISA51を含有する1つのバイアル(第2バイアル)であって、このバイアルは、3mLのアジュバントを含有することが可能であり、8mLの容器であり得る1つのバイアルと、
− 1つの注射器、典型的には、1mLのBraun Injekt−F(登録商標)と、
− 乳濁液調製のための1つの針(第1針)であって、この針は、好ましくは20G針である1つの針と、
− 注射用の、好ましくは筋肉内注射用の1つの針(第2針)であって、この針は、好ましくは23G針である1つの針と、を包含するキットにも関する。
【0155】
本発明は、キットからワクチンを調製するための方法であって、
(1)第2バイアルから0.4mlのアジュバントを吸い上げ、この注射器内容物を、0.4mlの免疫原性生成物を含有する第1バイアル中に放出することと、
(4)内容物を乳化するために、十分な回数、典型的には30回、全バイアル内容物を吸い上げたり吸い出したりして、最後に、全乳濁液を吸い上げることと、
を包含する方法にも関する。
【0156】
注射前に、第1針は、好ましくは、第2針に切り替えられて、空気が注射器から除去される。
【0157】
一実施形態では、上記のキットは、
− 0.4mlの本発明の免疫原性生成物を含有する1つのバイアル(第1バイアル)と、
− アジュバント、好ましくはISA51を含有する1つのバイアル(第2バイアル)と、
− 1つの注射器、典型的には、1mLのBraun Injekt−F(登録商標)と、
− 乳濁液調製のための(第1針)であって、この針は、好ましくは20G針である1つの針と、
− 注射用の、好ましくは筋肉内注射用の1つの針(第2針)であって、この針は、好ましくは23G針である1つの針と、
を含有する。
【0158】
別の実施形態では、免疫原性生成物は凍結乾燥形態である。したがって、キットは、
− 典型的には3mLの本発明の凍結乾燥生成物を含有する1つのバイアル(第1バイアル)と、
− 典型的には2mLの注射用の水を含有する1つのバイアル(第2バイアル)と、
− アジュバント、好ましくはISA51を含有する1つのバイアル(第3バイアル)であって、このバイアルは、3mLのアジュバントを含有することが可能であり、8mLの容器であり得る1つのバイアルと、
− 1つの注射器、典型的には、1mLのBraun Injekt−F(登録商標)と、
− 乳濁液調製のための1つの針(第1針)であって、この針は、好ましくは20G針である1つの針と、
− 注射用の、好ましくは筋肉内注射用の1つの針(第2針)であって、この針は、好ましくは23G針である1つの針と、
を備える。
【0159】
本発明は、キットからワクチンを調製するための方法であって、
(1)第1針に連結された注射器を用いることにより、第2バイアルから第1バイアルに注射のための水を注入することと、
(2)調製物が完全に可溶化するまで、1〜5分間、第1バイアルを静かに回転させることと、
(3)同一の注射器および針を用いて、第3バイアルからアジュバントを吸い上げこの注射器の内容物を第1バイアル中に放出することと、
(4)内容物を乳化するために、十分な回数、典型的には30回、全バイアル内容物を吸い上げたり吸い出したりして、最後に、全乳濁液を吸い上げることと、
を包含する方法にも関する。
【0160】
本発明は、本発明の組成物、乳濁液またはワクチンで充填されるかまたは予備充填される注射器である医療用具にも関する。
【0161】
一実施形態では、上記注射器は二重チェンバー注射器であって、この場合、一方のチェンバーは本発明の免疫原性生成物を有する溶液を含み、他方のチェンバーはアジュバントを含む。
【0162】
本発明は、本発明の当該生成物を、または本発明のワクチン組成物を予備充填されたバイアルまたはカープルを含む医療用具にも関する。
【0163】
一実施形態では、医療用具は、30mcgより多く1000mcgまでの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、医療用具は、35mcg〜1000mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、医療用具は、35mcg〜750mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、医療用具は、35mcg〜500mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、医療用具は、35mcg〜450mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、医療用具は、35mcg〜400mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、医療用具は、35mcg〜350mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、医療用具は、35mcg〜360mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、医療用具は、35mcg〜250mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜1000mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜750mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜500mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜450mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜400mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜350mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜300mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜250mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜240mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜200mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜150mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜120mcgである。本発明の別の実施形態では、投与当たりの免疫原性生成物の治療有効量は、60mcg〜100mcgである。別の実施形態では、投与量単位は、35、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390mcgから、400mcgまでの範囲の免疫原性生成物の量を含む。
【0164】
別の実施形態では、医療用具は、60mcg〜240mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、医療用具は、60mcg〜120mcgの範囲の免疫原性生成物の量を含む。
【0165】
別の実施形態では、医療用具は、60mcgの免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、医療用具は、120mcgの免疫原性生成物の量を含む。別の実施形態では、医療用具は、240mcgの免疫原性生成物の量を含む。
【実施例】
【0166】
実施例1:免疫原性生成物の調製
カギアナカサガイヘモシアニン(KLH)を、海洋性腹足類軟体動物メガスラ・クレヌラタのリンパから抽出し、次いで、GMP条件下で精製した。2〜8℃の温度での貯蔵条件で実施した安定性アッセイからの結果は、精製KLHの保存寿命が2〜8℃で36ヶ月である、ということを示した。GMP条件下で、大腸菌中で組換えヒトIFNα 2bが産生された。以下で開発された製法を用いて、350mg IFNα規模で、本発明の生成物のバッチが産生された。
a)グルタルアルデヒドを用いた共役
【0167】
濾過KLHを、IFNα 2b溶液(70mMリン酸水素二ナトリウム、pH7.8中のIFNα 2b)に、UV濃度を基礎にして、20:1のIFNα:KLH比(KLHの1サブユニットに対して20単量体のIFNαのモル比に対応する)で付加する。グルタルアルデヒド(反応培地中の最終濃度22.5mMを達成するために付加)およびホウ酸塩、pH9(反応培地中28.5mMの最終濃度を達成するために付加)を用いて共役を実行して、pHを8.5とする。次に、pH8.5でのこの溶液を、23±2℃で45分間混合する。
b)グリシンを用いたクエンチング
【0168】
30分間、グリシン0.1Mを用いて、反応をクエンチする。
c)一次接線流濾過(TFF1)
【0169】
Pall Minim II TFF系、ならびに0.5MのNaOHで衛生化され、作業緩衝液(70mMリン酸水素二ナトリウム、pH7.8)で平衡される10kDaの分子量カットオフを有する0.02mのポリエーテルスルホン膜を用いて、一次TFFを実施する。
【0170】
次に、クエンチ化溶液を、0.22μm濾過により清澄にする。中間体を作業緩衝液で2回希釈し、次いで、接線流濾過(TFF)および12容積の作業緩衝液により分離濾過する。副産物を収穫し、20時間未満の間保存する。
d)ホルムアルデヒドを用いた不活性化
【0171】
蠕動ポンプを用いてホルムアルデヒドを当該副産物に付加して、最終濃度を66.6mMとする。37±2℃に設定したインキュベーター中で40時間、不活性化反応を実施して、磁気撹拌器で溶液を毎日混合する。
e)グリシンを用いたクエンチング
【0172】
30分間、グリシン0.1Mを用いて、反応をクエンチする。
f)二次接線流濾過(TFF2)
【0173】
Pall Minim II TFF系、ならびに0.5MのNaOHで衛生化され、作業緩衝液(70mMリン酸水素二ナトリウム、pH7.8)で平衡される100kDaの分子量カットオフを有する0.02mのポリエーテルスルホン膜を用いて、二次TFFを実施する。
【0174】
クエンチ化溶液を、0.2μm濾過により清澄にする。≒900mLの出発接線容積を有するよう中間体を濃縮し、次いで、12容積の処方緩衝液(70mMリン酸塩緩衝液)を用いたTFFにより濾過して、IFNαの低分子量ホモポリマーおよび非反応試薬を除去する。副産物を収穫し、次いで、ブラッドフォードタンパク質アッセイによる濃度決定に基づいた300μg/mLの理論濃度に希釈して、次に、0.2μm濾過して、本発明の免疫原性生成物を得る。
実施例2:生成物の抗原性
【0175】
サンドイッチELISA抗IFNα/KLHを、以下のように実行した。簡潔に記載すると、96ウェルプレートを捕捉抗体:ウサギポリクローナル抗KLH抗体で被覆して、37℃で90分間、遮断緩衝液(例えば、PBS中カゼイン2%)で遮断した。プレートを37℃で90分間インキュベートし、250ng/mlから8回の2倍希釈までの免疫原性生成物の希釈シリーズとともに、あるいは陰性対照、例えばKLHおよびIFNαとともに、プレートをインキュベートした。次に、検出抗体、例えばビオチニル化抗IFNα抗体を、90分間付加した。最後に、37℃で30分間、ストレプトアビジン−HRPとともにプレートをインキュベートし、o−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)基質溶液で30分間、複合体を発色させた。酵素反応停止後、結果的に生じた色の強度を、490nmで分光測光的方法により決定した。
【0176】
この試験は、抗原性である、すなわち抗IFNα抗体により認識されるIFNαを当該生成物が含むということ、および上記IFNαがKLHと結合されるということを検証した。
実施例3:生成物の免疫原性(試験A)
【0177】
ブラッドフォードタンパク質アッセイにより決定されるような生成物の総タンパク質4μgを、0日目および21日目に、6〜8週齢のBalb/cマウス7匹に注射した。
【0178】
31日目に、マウスから血を抜取り、血清を採取した。
【0179】
以下のように、抗IFNαELISAを免疫前に実行して、以下のように血清を採取した。
− 96ウェルプレートを100ngのIFNα−2bで被覆して、2℃〜8℃で一晩インキュベートした。
− 37℃で90分間、遮断緩衝液を付加した。
− 1/2500の希釈から少なくとも8回の2倍希釈までの希釈で免疫原性生成物を付加し、プレートを、37℃で90分間、インキュベートした。
− 37℃で90分間、抗マウス免疫グロブリン標識化抗体、例えばHRP共役抗体とともに、プレートをインキュベートした。
− o−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)基質溶液でELISAを発色させた。酵素反応停止後、結果的に生じた色の強度を、490nmで分光測光的方法により決定した。
この試験は、マウス7匹において、免疫原性生成物による免疫化は抗IFNα抗体力価を存在させる、ということを示した。
実施例4:生成物の残存活性(試験B)
【0180】
このアッセイは、メイディン・ダービーウシ腎臓(MDBK)細胞に及ぼす水疱性口内炎ウイルス(VSV)の細胞変性作用(CPE)に及ぼすIFNαの防御効果を基礎にしていた。免疫原性生成物および免疫原性生成物を調製するために用いられる組換えIFNα 2b(陽性対照)を、基本培地(2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、1mM Hepesを補足したRPMI)中に、それぞれ少なくとも500ng/mlおよび少なくとも1000U/mlで希釈した。50μlの免疫原性生成物および陽性対照を96ウェルプレート中でプレート化して、基本培地中で2倍希釈のシリーズに希釈した。50μlの細胞培地(4%FBS、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムおよび1mM Hepesを補足したRPMI)中の各ウェル中に、2×10MDBK細胞を付加し、37℃、5%COで一晩、プレートをインキュベートした。次に、ウイルスを基本培地中で少なくとも10 TCID50(組織培養感染用量 50:感染細胞の50%を殺害するために10回希釈)に希釈した。プレートを空にして、100μlの希釈ウイルスを付加した。次いで、37℃、5%COで一晩、プレートをインキュベートした。培養の終了時に、MTS/PMS(100μlのMTS/5μlのPMS;Promega G5430)の溶液20μl/ウェルをウェルに付加し、プレートをさらに4時間、37℃、5%COでインキュベートした。次に、プレートを、分光光度計で490nmで読み取った。
【0181】
免疫原性生成物の抗ウイルス活性のパーセンテージを算定した。試験した生成物の2つのバッチに関して、抗ウイルス活性は、IFNαの抗ウイルス活性の1%未満であった。
実施例5:生成物の中和能力(試験C)
【0182】
MDBK細胞中で複製する水疱性口内炎ウイルスの存在下での細胞生存度を評価することにより、当該生成物の中和能力を評価した。
【0183】
免疫原性生成物の総タンパク質4μg(ブラッドフォードタンパク質アッセイにより決定)を、0日目および21日目に、6〜8週齢のBalb/cマウスに注射した。免疫化前(前免疫血清試料)および31日目(試験血清試料)に、血清試料を得た。
【0184】
25μlの前免疫および試験血清試料を、1/200の希釈、1/200から8回の希釈までの希釈で、96ウェルプレート中でプレート化した。陽性対照(ポリクローナル抗IFNα;PBL, Piscataway, NJ, ref.31100-1)を、基本培地(2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウムおよび1mMのhepesを補足したRPMI)中で3125UI/ウェルから100UI/ウェルに希釈し、25μlを、さらにプレート中でプレート化した。
【0185】
基本培地25μl中の25U/ウェル(最終濃度)のIFNαを、各ウェルに付加し、プレートを、室温で60分間インキュベートする。
【0186】
アッセイ培地(4%FBS、2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mMのhepesを補足したRPMI)中の20000個のMDBK細胞を各ウェルに付加し、プレートを、37℃、5%COで一晩、インキュベートした。
【0187】
ウイルスを、ウイルス培地(2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウムおよび1mMのhepesを補足したRPMI)中で少なくとも10 TCID50(感染細胞の50%を殺害する希釈の10倍)に希釈する。プレートを空にして、100μlのウイルスを各ウェルに付加した後、37℃、5%COで24時間、インキュベートした。
【0188】
培養の終了時に、MTS/PMS(100μlのMTS/5μlのPMS;Promega G5430)の溶液20μl/ウェルをウェルに付加し、プレートをさらに4時間、37℃、5%COでインキュベートした。次に、プレートを、分光光度計で490nmで読み取った。
【0189】
7つの試験試料すべてに関して、NCを算定した:平均NC=253789 IU/ml(SEM=172526)。これは、すべての血清が、IFNαの抗ウイルス活性を中和可能である抗体抗IFNαを含む、ということを示した。
実施例6:免疫原性生成物を含む組成物およびワクチンの例
【0190】
免疫原性生成物を含む一例示的組成物を、表1に示す。
【表1】
【0191】
免疫原性生成物を含む一例示的ワクチン組成物を、表2に示す。
【表2】
実施例7:臨床試験
【0192】
表2に記載したようなワクチン組成物を用いて、臨床試験を実行した。
試験計画:
【0193】
SLEを蒙った成体において、0日目、7日目および28日目に、または0日目、7日目、28日目および84日目に、当該生成物の3または4回投与を実施した。当該生成物の以下の用量を試験した:30mcg、60mcg、120mcgおよび240mcg。
試験集団:
【0194】
処置を受けているにもかかわらず、活動性疾患である軽度〜中等度のSLE(SLEDAI 4〜10)を有する18〜50歳の男性または女性28名。正常対照インターフェロン遺伝子シグネチャーを、48名の健常志願者で確立した。高密度アレイ上のインターフェロン・シグネチャーを同定するために、48名の健常志願者のうちの18名のPBMCを、I型インターフェロンでin vitroで刺激した。基線での健常志願者とSLE患者との間のシグネチャーを比較することにより、SLEシグネチャーを確立した。
【0195】
最初の3つの群に登録された患者、すなわち30、60または120mcg用量またはプラセボを摂取した患者において、暫定分析を実施した。
【表3】
【表4】
結果
ワクチンの安全性および耐容性
【0196】
2つの狼瘡再燃は、関連SAEと報告されている。最初のものは、プラセボ群であった。他方は、注射の2日後に彼女のコルチコステロイド治療を自発的に中止していた患者において、IFN−K 240mcgの最初の注射後に起きた。この突然のコルチコステロイド処置の中止が、再燃の発生に関与した可能性がある。定期的暫定安全分析は、独立安全委員会により実施された。実験室パラメーターにおける臨床的に有意の変化は、検出されていない(血液学、生化学、尿)。
ワクチンの免疫原性
【0197】
患者から採取した血清試料から、ELISAにより、抗IFNα抗体力価を測定した。
【0198】
抗IFNα ELISAを、本明細書に上記したように実行した。
【0199】
結果は、免疫原性生成物で処置した全群において、28日目から抗IFNα抗体力価が検出された、ということを示している。
ワクチンの中和活性
【0200】
以下の方法を用いて、in
vitroで中和活性を評価した。
患者から得た血清試料50μlを、1/200の希釈、1/200から8回の希釈までの希釈で、96ウェルプレート中でプレート化した。
陽性対照(ポリクローナル抗IFN;PBL, Piscataway, NJ, ref.31100-1)を、100ng/ウェルから3.125ng/ウェルに希釈し、50μlをプレートに付加した。希釈は、基本培地(2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウムおよび1mMのhepesを補足したRPMI)中で実行した。
10U/ウェル(最終濃度)のIFNα 2bを各ウェルに付加し、プレートを、室温で60分間インキュベートした。
アッセイ培地(4%FBS、2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mMのhepesを補足したRPMI)中の30000個のMDBK細胞を各ウェルに付加し、プレートを、37℃、5%COで一晩、インキュベートした。
ウイルスを、ウイルス培地(2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウムおよび1mMのhepesを補足したRPMI)中で少なくとも10 TCID(感染細胞の50%を殺害する希釈の10倍)に希釈した。プレートを空にして、100μlのウイルスを各ウェルに付加した後、37℃、5%COで24時間、インキュベートした。
培養の終了時に、MTS/PMS(100μlのMTS/5μlのPMS;Promega G5430)の溶液20μl/ウェルをウェルに付加し、プレートをさらに4時間、37℃、5%COでインキュベートした。次に、プレートを、分光光度計で490nmで読み取った。
【0201】
30mcgの免疫原性生成物で処置した患者からの血清で、免疫化後168日目に中和能力を有する抗IFNα抗体を提示する血清はなかったが、一方、60mcgの免疫原性生成物で処置した患者からの血清は、168日目に中和能力を有する抗IFNα抗体を提示する、ということを暫定報告の結果は示した(図1)。
【0202】
さらに、60μgまたは120μgの免疫原性生成物で処置した対象の50%、および240μgの免疫原性生成物で処置した対象の80%において、中和活性が検出された、ということを最終報告の結果は示した(表5)。
【表5】
【0203】
これらの結果は、IFNαのin vivo中和を有するためには30mcg超の免疫原性生成物での処置が必要である、ということを示した。
実施例8:トランスクリプトーム解析
【0204】
免疫原性生成物の注射の前後のいくつかの時点で、PBMCを採取した。この暫定分析のために、標準Affymetrixプロトコールに従って標識されたV1(0日目)およびV6(初回注射後38日目)試料で総RNAを抽出し、Genechip HGU133 Plus2.0アレイ上でハイブリダイズした。試料のRMA(Robust Microarray Analysis(強固なマイクロアレイ解析))正規化後、GeneSpringで統計学的解析を実施した。
【0205】
目的変数なしのクラスタリングアルゴリズムを基線試料で実施して、患者を、I型インターフェロンにより誘導される遺伝子の自発的過剰発現を有する者(n=11)と、有さない者(n=7)との2つの部類に群分けした基線での(IFN誘導遺伝子は、IFN刺激対照PBMCのマイクロアレイを基礎にして、実験的に同定された)。dsDNA力価が、シグネチャーを有する患者(平均+/−SEM:131.1+/−50.1 UI/ml)では、シグネチャーを有さない患者(平均+/−SEM:44.7+/−33.3、p=0.006;マン・ホイットニー試験による)と比較して有意に高かった、ということは意外ではない。免疫原性生成物を摂取した、基線においてIFNシグネチャーを有する患者8名の8つの追跡調査試料において測定可能な抗IFNα抗体が見出されたが、一方、これは、免疫原性生成物で処置したIFNシグネチャーを有さない患者6名のうち2名でのみ見出され、4名のプラセボ処置個体では誰からも見出されなかった(p=0.002;カイ自乗アッセイ)。基線IFNシグネチャーを有する患者11名のうち、2名が30mcg用量を摂取し、1名が60mcg用量を摂取し、5名が120mcg用量を摂取し、3名がプラセボ注射で処置された。V1およびV6間のIFN誘導遺伝子の発現で観察された変化は、プラセボで処置された患者と比較して、免疫原性生成物で処置された患者においては有意に異なった(図2)。
【0206】
この結果は、免疫原性生成物がin
vivoでIFN誘導遺伝子の発現に影響を及ぼす、ということを示唆している。
実施例9:IFNシグネチャーおよび免疫原性生成物処置に対する応答
【0207】
実施例7の軽度〜中等度のSLEを有する患者28名において、基線での「インターフェロン・シグネチャー」を測定した。インターフェロン・シグネチャー(IFNシグネチャー)は、21のIFN誘導遺伝子を用いて算定されるスコアと対応し、Yao et al., Arthritis & Rheumatism, 2009, 60(6): 1785-1796に記載されている。実施例8に記載したように、インターフェロン・シグネチャーの測定を実行した。
【0208】
実施例7のSLE患者28名のうち、基線において、19名が陽性インターフェロン・シグネチャーを示し、9名が陰性インターフェロン・シグネチャーを示した。
インターフェロン・シグネチャーおよびSLE疾患活性
【0209】
dsDNA抗体力価およびC3の血清レベルを、両群の患者における疾患活性の指数として測定した。
【0210】
DPC抗DNAキット(PIKADD−4:Diagnostic Products Corporation)を用いて、dsDNA抗体力価を決定した。
【0211】
補体C3キット(キット#446450;Beckman Coulter)を用いて、C3血清レベルを決定した。
【表6】
【0212】
上記表6に示すように、基線においてインターフェロン・シグネチャーが陽性であるSLEの患者は高い生物学的な疾患活性の指数を示した。
インターフェロン・シグネチャーおよび本発明の免疫原性生成物による処置に対する応答
【0213】
実施例7で記載したような本発明の免疫原性生成物による処置の作用を、基線においてINFシグネチャーが陽性のSLE患者と陰性のSLE患者とで比較した。
抗IFN−アルファ応答
【0214】
V6(免疫化後38日目)、V10(112日目)およびV11(168日目)で、実施例7に記載したように、IFN結合抗体力価を測定した。
【0215】
陽性インターフェロン・シグネチャーを有するSLE患者は、基線でのインターフェロン・シグネチャーが陰性であるSLE患者より、本発明の免疫原性生成物に応答して10以上のIFN結合抗体を産生する、ということがこの結果により示された(図3)。
IFN誘導遺伝子
【0216】
V0およびV10またはV11間のIFN誘導遺伝子の発現の進化を、基線において陽性または陰性IFNシグネチャーを有する処置患者において、ならびにプラセボ処置患者において測定した。
【0217】
プラセボおよびIFNシグネチャーが陰性の患者と比較して、IFNシグネチャーが陽性のSLE患者では、IFN誘導遺伝子に及ぼす本発明の免疫原性生成物による処置の作用は、V10およびV11で、強力且つ有意に異なる、ということがこの結果により示された(図4)。
補体C3
【0218】
本明細書で上記したようにV−1(免疫化の30日前)、V0(免疫化当日)、V7(免疫化後56日目)、V10(112日目)およびV11(138日目)で、処置患者およびプラセボ摂取患者において、血清C3値を測定した。
【0219】
処置患者対プラセボ患者において、C3レベルに有意の増大が認められる、ということがこの結果により示された。さらに、本発明の免疫原性生成物で処置したIFNシグネチャー陽性SLE患者において、C3レベルの有意の増大が認められる(図5)。
実施例10:本発明の生成物中のIFNα/KLH比の決定
【0220】
本発明の生成物中のIFNαおよびKLHの量を評価するために、UVおよび蛍光検出に基づいた定量方法を開発した。IFNαまたはKLHに各々特異的である2つの蛍光標識を用いて、本発明の生成物を製造した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析後、220nmでのUVシグナルおよびIFNα標識またはKLH標識に特異的な蛍光シグナル(FLD)の積分により、IFNαおよびKLHの量を決定した。この方法は、IFNα/KLHの重量比の算定を可能にする。
a)原料標識化:
【0221】
生成物製造中に用いられるアミノ基を保存するために、蛍光タグをスルフヒドリル基上に結合させた。
【0222】
室温で3時間、70mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)中で、標識化を実行した。KLHを200モル当量のAtto565−マレイミド(18507、Sigma)で、IFNαを100モル当量のフルオレセインマレイミド(46130、Pierce)でそれぞれ標識した。次に、非反応タグを排除するために、70mMリン酸塩緩衝液(pH7.8)で状態調節したZebaカラム上で、標識化タンパク質(KLH−atto565およびIFN−フルオレセイン)を濾過した。
b)生成物製造:
【0223】
次に、標識化原料を用いて、実施例1と同じ製法であるが接線流濾過の代わりに透析濾過を用いて、標識化生成物を製造した。
c)KLHおよびIFNαホモポリマー標準製造
【0224】
定量分析方法のために、ホモポリマー標準を製造した。実施例1と同じ製法であるがKLHの代わりに70mMリン酸塩緩衝液(pH7.8)を、接線流濾過の代わりに透析濾過をそれぞれ用いて、標識化IFNαホモポリマー標準を製造した。
【0225】
実施例1と同じ製法であるがIFNαの代わりに70mMリン酸塩緩衝液(pH7.8)を、接線流濾過の代わりに透析濾過をそれぞれ用いて、標識化KLHホモポリマー標準を製造した。
d)サイズ排除クロマトグラフィーによる分析方法
【0226】
次に、UVおよび特異的蛍光検出を用いたSECにより、バッチを分析した。順次接続した(Agilent,
5190−2536、5190−2511)カラムSEC5(1000Å)SEC3(300Å)上に、試料60μLを注入し、220nmでのUV検出、ならびに表7に記載するような特異的蛍光検出(IFNα−フルオレセインまたはKLH−Atto565に関して)により、35分間、PBSを用いて溶離を実施した。
【表7】
【0227】
0〜20分間のクロマトグラムピーク下面積を積分することにより、UVおよび蛍光(FLD)シグナルを算定した。
【0228】
この方法を検証するために、予備実験を実行して、以下を示した。
− 蛍光シグナル特異性(2つの標識化タンパク質間でシグナル重複は観察されなかった)。
− 各製造バッチ(本発明の生成物、KLHおよびIFNαの標識化ホモポリマー)に関して、SE−HPLCによる類似のUVプロフィールが観察された。
− 製造のための蛍光シグナルの消光は観察されなかった。
− FLDシグナルは線形で、UVシグナルに比例する。
【0229】
製造された標識化キノイド(kinoid)における標識化IFNα UV関与を、標識化IFNαホモポリマー標準のFLDIFNα−フルオレセイン=f(UVによる面積)による曲線面積に従って測定した。
【0230】
製造された標識化キノイド(kinoid)における標識化KLH UV関与を、標識化KLHホモポリマー標準のFLDKLH−Atto565=f(UVによる面積)による曲線面積に従って測定した。
【0231】
UV面積がタンパク質濃度の線形関数であると確認される場合、この方法は、総製造標識化キノイド(kinoid)における標識化IFNαの重量パーセンテージの評価を可能にする。
e)バッチ解析
【0232】
標識化キノイド(kinoid)の3つのバッチを製造し、この方法により解析した。UVシグナルおよび濃度の、ならびにFLDおよびUVシグナルの比率性に基づいて、IFNαおよびKLHの量の間の比(mIFNα/mKLH)を、3つのバッチに関して算定した(表8)。
【表8】
【0233】
0.28という平均比 mIFNα/mKLHは、<15%の相対標準偏差を有することが判明した。
実施例11:生成される抗mIFNα抗体力価ならびに本発明の免疫原性生成物がSWEまたはSWE−aを有する乳濁液として注入される場合の中和能力
muIFN−Kの製造:
【0234】
簡潔に記載すると、ネズミIFNαA(PBL Biomedical Laboratories)およびネイティブKLH(Sigma)を50:1比で混合し、2.5mMグルタルアルデヒドデ45分間処理した。リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析して、余分量のグルタルアルデヒドを除去し、溶液を、37℃で48時間、66mMホルムアルデヒドとともにインキュベートした。グリシン(最終濃度0.1M)でクエンチングした後、10kDaカットオフ膜を用いてPBSに対して透析し、調製物を0.22μm膜を用いてフィルター滅菌して、4℃で保存した。
免疫化プロトコール:
【0235】
mIFN−K(10μg/注射)をSEまたはSE−アジュバント(最終容積100μl)との1:1乳濁液として、0日目および21日目に2回、筋肉内免疫化した。

ELISAによる抗muIFNαおよび抗KLH抗体力価の決定
【0236】
ELISAにより、muIFNαまたはKLHに対する抗体に関して、血清を分析した。簡潔に記載すると、96ウェルMaxisorpプレート(Nunc)を100ng/ウェルのmuIFNαA(PBL Biomedical
Laboratories)で被覆して、抗KLH抗体を検出した。
【0237】
2倍連続血清試料希釈液(1:100〜1:51,200)を、ウェルに付加した。ブランクウェルには、希釈緩衝液100μLを入れた。37℃で1.5時間後、100μLのホースラディッシュペルオキシダーゼ共役抗マウス免疫グロブリンG(IgG)およびO−フェニレンジアミン、ホースラディッシュペルオキシダーゼのための比色基質で、抗体を検出した。muIFN−K免疫化Balb/cマウスからの血清のプールを、陽性対照として用いた。490nmの波長で、光学密度(OD)を記録した。ELISAアッセイを、二重反復実験で実施した。各プレートにおいて、2つのウェルをブランクのために残しておき、その平均値を全ウェルから差し引いた。
【0238】
最大OD(ODmax)/2をx軸上に内挿することにより、抗体力価を算定した。用いた方程式は、ODmax/2の周囲の2つの点を通る直線に関して、y=ax+bであった。
IFN−K免疫化後に誘導される抗muIFNα抗体の中和能力の決定
【0239】
古典的抗ウイルス細胞変性アッセイ(EMCV/L929)を用いて、中和能力を決定した。このアッセイでは、ネズミL−929細胞(ATCC)に及ぼす脳心筋炎ウイルス(EMCV)の致死作用を抑制するその能力に関して、muIFNαの抗ウイルス活性力価を決定した。
【0240】
簡潔に記載すると、25μLの希釈血清試料(または対照抗体)を、2倍連続希釈液(1:200〜1:6400)中の96ウェル培養プレートに付加した。市販のウサギポリクローナル抗体抗muIFNα( PBL, ref:32100−1)を、陽性対照として用いた。25 IU/ウェルのmuIFNαとともに室温で1時間インキュベートした後、ウェル当たり20×10 L−929細胞を植えつけ、37℃でインキュベートした。一晩培養後、プレートをPBSで洗浄して、100μL/ウェルのEMCV溶液(細胞の50%を殺害するために必要とされる用量の100倍)を各ウェルに付加した。プレートを、37℃で48時間インキュベートした。最後に、20μL/ウェルのMTS/PMS(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、分子内塩/フェナジンメトスルフェート)溶液(Promega)を付加し、プレートを、加湿インキュベーター(遮光)中で、37℃、5%COで4時間、インキュベートした。次いで、490nmでのODを各ウェルに関して測定した。ブランク(100μLの培地単独を有するウェル)のODを、試料ODから差し引いた。
【0241】
各試料の中和能力を、以下のように算定した。
中和能力(%)=100×[(OD試験−ODウイルス)/(OD細胞)]
(式中、OD試験は、試験試料(細胞+IFNα+血清+ウイルス)に関するOD
ODウイルスは、ウイルス対照(細胞+ウイルス)に関するOD
OD細胞は、20,000個の細胞/ウェル(細胞+IFNα+ウイルス)に関するOD)
【0242】
中和能力を、血清希釈の一関数としてプロットした。IFNα活性値の50%を中和する力価(血清希釈数)を、曲線の線形部分上の内挿により決定した。
【0243】
SWEまたはSWE−a中に乳濁されたmuIFN−Kの初回注射後31日目に収集したマウス血清中に、抗muIFNα力価および抗KLH力価が存在するということ、ならびに抗muIFNα抗体は中和能力を有する(NC50>20)、ということがこの結果により示された。
図1
図2
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図5