特許第6335779号(P6335779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335779カートリッジ・センサとカートリッジ・ホルダ・ドア・センサとを有する薬剤送達デバイスおよびこのデバイスを制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335779
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】カートリッジ・センサとカートリッジ・ホルダ・ドア・センサとを有する薬剤送達デバイスおよびこのデバイスを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20180521BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20180521BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61M5/20
   A61M5/24
   A61M5/24 530
   A61M5/315 550E
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-511880(P2014-511880)
(86)(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公表番号】特表2014-516701(P2014-516701A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012059751
(87)【国際公開番号】WO2012160159
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年5月12日
(31)【優先権主張番号】11167533.6
(32)【優先日】2011年5月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】イロナ・エッゲルト
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ナイジェル・ラングレイ
(72)【発明者】
【氏名】シェーン・アリステア・デイ
(72)【発明者】
【氏名】アレッド・メレディッド・ジェームズ
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/089310(WO,A1)
【文献】 特表2007−522853(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0161744(US,A1)
【文献】 特表平10−511014(JP,A)
【文献】 特表2000−513973(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0171476(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/24
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたはそれ以上の薬作用物質の投与のための薬剤送達デバイスであって、
開位置と閉位置の間で可動である、薬剤カートリッジを保持するための保持器と、
保持器が開位置にあるか閉位置にあるかを示す位置出力を生成するための位置センサと、
保持器が薬剤カートリッジを保持しているかどうかを示すカートリッジ出力を生成するためのカートリッジ・センサと、
ピストン・ロッドと、ドライブ・トレインと、
位置センサの出力およびカートリッジ・センサの出力に応じて該デバイスの所定の動作を制御するためのコントローラと、
出口と薬剤カートリッジ保持器の間の流体連通を提供するための投薬インターフェースと、
その投薬インターフェースが該デバイスに取り付けられているか該デバイスから取り外されているかを示す出力を生成するためのインターフェース・センサと、
コントローラの制御下で、保持器を閉位置に保持するための掛止位置と、保持器を開いて開位置にするための非掛止位置の間で可動なラッチと、
カートリッジ・ドア・ボタンとを備え、
コントローラは、そのインターフェース・センサの出力に応じて該デバイスの所定の動作を制御するように動作可能であり、ここで、所定の動作は、投薬インターフェースの取り外し時の該デバイスのカートリッジ入れ替えサイクルに関連し、
ここで、投薬インターフェースが該デバイスから取り外されていることを示すインターフェース・センサからの出力を受け取ることに応答して、コントローラはカートリッジ入れ替えサイクルを開始するように構成され、
ここで、カートリッジ入れ替えサイクルの開始は、カートリッジ・ドア・ボタンを起動させること、及び、起動させられたカートリッジ・ドア・ボタンが使用者によって作動されたことを検出することに応じて、ピストン・ロッドを薬剤カートリッジから後退させること、及びラッチを掛止位置から非掛止位置に移動すること、を含む、
上記デバイス。
【請求項2】
コントローラは、カートリッジ・センサおよび位置センサからの出力に応じた種々の所定の動作シーケンスの制御を容易にする、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項3】
保持器が薬剤カートリッジを保持していることをカートリッジ・センサが示し、保持器が閉位置にあることを位置センサが示したときに、第1の所定の動作シーケンスがコントローラによって実行され、デバイスは、ピストン・ロッドを保持器に前進させるまたはピストン・ロッドを保持器から後退させるためのドライブ・トレインを含み、上記所定の動作シーケンスのうちの第1の動作シーケンスが、ピストン・ロッドを薬剤カートリッジに前進させることを含む、請求項2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項4】
保持器が薬剤カートリッジを保持していないことをカートリッジ・センサが示し、保持器が閉位置にあることを位置センサが示したときに、第2の所定の動作シーケンスがコントローラによって実行され、第2の所定の動作シーケンスは、カートリッジをデバイスに挿入するプロンプトを表示することを含む、請求項2または3に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項5】
デバイスは手持ち式である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項6】
デバイスはペン型の注射デバイスである、請求項5に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項7】
各々が薬剤カートリッジを保持するための第1の保持器と第2の保持器とを備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の投薬インターフェースを有する薬剤送達デバイスを制御する方法であって、
デバイスからの投薬インターフェースの取り外しをコントローラが感知する工程と、
投薬インターフェースのデバイスからの取り外しを感知することに応答して、カートリッジ・ドア・ボタンをコントローラが起動させる工程と、
投薬インターフェースの感知された取り外しに応答して起動されたカートリッジ・ドア・ボタンの作動をコントローラが感知し、起動されたカートリッジ・ドア・ボタンの作動を感知することに応答して、コントローラがデバイスの薬剤カートリッジ保持器からピストン・ロッドを後退させ、及びラッチを掛止位置から非掛止位置に移動させる工程と、
を含む上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたはそれ以上の薬作用物質(drug agent)を患者に投与するための、限定するものではないが特に薬作用物質(複数可)の自己投与のための、薬剤送達デバイス、およびこのデバイスを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の疾患状態は、1つまたはそれ以上の異なる薬剤を使用する治療を必要とする。いくつかの薬物化合物は、最適な治療用量を送達するために、互いとの特定の関係で送達される必要がある。本特許出願は、単一薬剤デバイスに適用可能であるが、併用療法が望ましい、しかしそれだけに限らないが安定性、治療成績の低下、および毒性などの理由で単一配合物では可能でない場合に有益である。
【0003】
たとえば、場合によっては、糖尿病患者を、GLP−1またはGLP−1類似物などのグルカゴン様ペプチド−1(第2の薬物または副薬剤とも呼ばれることがある)と共に、長時間作用型インスリン(第1の薬剤または主薬剤とも呼ばれることがある)で治療することが有益なことがある。
【0004】
したがって、使用者が実行するのが簡単で薬物送達デバイスの複雑な物理的な操作を伴わない単回の注射または送達工程で1つまたはそれ以上の薬剤を送達するためのデバイスを提供することが求められている。併用療法デバイスの場合、提案する薬物送達デバイスは、2つ以上の活性薬作用物質に対する別個の貯蔵容器またはカートリッジ保持器を設ける。その場合、これらの活性薬作用物質のみが、単一の送達手順の間に患者に併用および/または送達される。これらの活性薬品は、組み合わされた用量で一緒に投与してもよいし、あるいは、これらの活性薬品は順次相次いで組み合わせてもよい。
【0005】
薬物送達デバイスはまた、薬剤の量を変える機会を考慮に入れる。たとえば、1つの流体の量は、注射デバイスの特性を変更する(たとえば、使用者変更可能な用量を設定すること、またはデバイスの「固定」用量を変更すること)ことによって変えることができる。第2の薬剤の量は、さまざまな副薬含有パッケージを製造し、それぞれの変種が異なる体積および/または濃度の第2の活性薬品を含むことによって、変更することができる。
【0006】
薬物送達デバイスは、単一の投薬インターフェースを有することができる。このインターフェースは、単一薬剤デバイスの場合はリザーバと、または併用療法デバイスの場合は1次リザーバおよび少なくとも1つの薬作用物質を含む薬剤の2次リザーバと流体連通するように構成することができる。薬物投薬インターフェースは、2つ以上の薬剤がシステムを出て患者に送達可能なある種の出口とすることができる。
【0007】
上述のタイプの医療デバイスの実際の使用に際して、これらの医療デバイスが単回の薬剤送達を意図したものであろうと複数回の薬剤送達を意図したものであろうと、薬剤(複数可)が使い尽くされると通常はカートリッジである薬物含有リザーバを取り替えることが必要である。
【0008】
知られている薬剤送達デバイスは、開位置と閉位置の間を移動するなどのようにデバイスに蝶番によって取り付けられた保持器を備える。この保持器は、薬剤リザーバまたはカートリッジを保持するように構成される。ラッチは、保持器を閉位置にロックまたは保持するためにデバイス上に設けられる。薬剤カートリッジを装着するまたは取り外すための保持器へのアクセスは、ラッチを解除することによって達成される。保持器を開く前に、保持器へのアクセスを妨げ得る妨害物がないことを確認することが重要である。たとえば、デバイスの損傷を回避するために、保持器を開位置に移動する前にピストン・ロッドを薬剤カートリッジから後退させることが必要である。保持器ドアが開位置にあるか閉位置にあるかを感知するためのセンサを設けることができる。ただし、知られているデバイスにセンサおよび/またはデバイス制御システムにプログラムされた論理を設置することが、デバイスの実際の状態と感知された状態の間に不一致がある過渡的状態などをもたらすことがある。この一例は、保持器が開いているまたは閉じられていると感知されるが、実際にはこれらの間を移動中である場合である。
【0009】
知られているデバイスにセンサを設置することは、デバイスの動作状態を正確に感知できない過渡的状態の状況の一因となることがある。たとえば、ドア・ラッチ上にセンサを留置することが、過渡的状態の状況をもたらした。これが生じるのは、ドアが開位置と閉位置の間を移動するとき、保持器ドアがラッチ上のセンサを起動するからである。
【0010】
したがって、本発明は、デバイスの実際の状態と感知された状態の不一致から生じるデバイスの損傷の危険を低下させるためにデバイスの状態の正確な判定および適切な制御ロジックを確保するという技術的な問題に直面する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上述の問題点を軽減することである。さらなる目的は、制御ロジックの使用により薬剤送達デバイスの使用者の操作を簡略化することである。また、不必要なまたは不適切なデバイス機能が行われるのを回避することも本発明の目的である。本発明のさらなる目的は、薬剤カートリッジの取り替えに関連する動作シーケンス中のエラーの危険を軽減する制御ロジックを考案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、1つまたはそれ以上の薬作用物質の投与のための薬剤送達デバイスであって、出口と薬剤カートリッジ保持器の間の流体連通を提供するための投薬インターフェースと、その投薬インターフェースがデバイスに取り付けられているかデバイスから取り外されているかを示す出力を生成するためのインターフェース・センサと、そのインターフェース・センサの出力に応じてデバイスの所定の動作を制御するためのコントローラとを備えるデバイスが提供される。
【0013】
第1の態様の好ましい一実施形態では、投薬インターフェースは、このデバイスにおいて、デバイスから出口への流体連通を提供するように構成される。この出口は、ニードル・ハブの取付け部を含むことができる。所定の動作は、インターフェース・センサの取り外し時のデバイスのカートリッジ入れ替え(change)または取り替えサイクルに関連することができる。好ましい一実施形態では、所定の動作は、カートリッジ入れ替えまたは取り替えサイクルの開始とすることができる。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、1つまたはそれ以上の薬作用物質の投与のための薬剤送達デバイスであって、開位置と閉位置の間で可動である、薬剤カートリッジを保持するための保持器と、保持器が閉位置にあるか開位置にあるかを感知するための、および保持器内のカートリッジの有無を感知するための保持器センサと、保持器センサの出力に応じてデバイスの所定の動作を制御するためのコントローラとを備えるデバイスが提供される。
【0015】
本発明を実施するデバイスの保持器センサは、保持器が開位置にあるか閉位置にあるかを示す位置出力を生成するための位置センサと、保持器が薬剤カートリッジを保持しているかどうかを示すカートリッジ出力を生成するためのカートリッジ・センサとを備えることができる。好ましい一実施形態では、コントローラは、保持器からの出力と位置センサからのそれぞれの出力の組み合わせに応じた種々の所定の動作シーケンスの制御を容易にする。所定の動作は、保持器内の薬剤カートリッジの識別(または非識別)に関連することができる。
【0016】
本発明の第1の態様および第2の態様は、デバイス・コントローラのソフトウェアにプログラミングできるカートリッジの入れ替えまたは取り替えサイクルを構成するために、単一療法デバイスまたは併用療法デバイスにおいて利用することができる。第1の態様および第2の態様を実施するデバイスでは、第1の態様は、保持器ドアを開くことによって、取り替えるべき薬剤カートリッジへの使用者のアクセスを確立することに関し、第2の態様は、保持器ドアの閉鎖に続くデバイス機能に関する。カートリッジ入れ替えまたは取り替えサイクルについては、以下で詳しく説明する。
【0017】
上述のように、第1の態様および第2の態様は、リザーバまたはカートリッジ内に貯蔵された単一薬剤を有する単一療法デバイスに適用可能である。しかし、本発明の実施形態は、複数の薬作用物質リザーバまたはカートリッジを収容できる併用療法デバイスにも適用可能であり、このデバイスは、2つの薬作用物質を含有する薬剤リザーバまたはカートリッジを保つための第1の保持器と第2の保持器とを含むことができ、この2つの薬作用物質は同じであってもよいし、互いと異なってもよい。薬剤リザーバまたはカートリッジは、単独の薬剤(単一の薬物化合物)を含有してもよいし、あらかじめ混合された薬剤(一緒に調製された複数の薬物化合物)を含有してもよい。第1の保持器と第2の保持器とを有するデバイスのための投薬インターフェースは、第1の保持器および第2の保持器から一体的出口への流体連通を提供するための分岐(bifurcated)コンジットを備えることができる。ニードル・ハブは、この一体的出口に取外し可能に取り付けることができる。第1の保持器および第2の保持器のそれぞれは、関連付けられた位置センサおよびカートリッジ・センサを有することができ、したがって、デバイスのカートリッジ入れ替えサイクルは各保持器に関して別々に実施することができる。
【0018】
薬剤は、同じであってもよいし、互いと異なってもよい。デバイスは、使用者が1つまたはそれ以上の薬作用物質の適切な用量を設定するための用量設定機構を有することができる。保持器、または併用療法デバイスの場合には各保持器は、その保持器に関連付けられた、患者への薬作用物質(複数可)の自動送達または手動送達のためのドライブ・トレインを有することができる。このドライブ・トレインは、デバイスの装填動作または用量動作中に薬剤カートリッジの栓を駆動するためのピストン・ロッドを含むことができる。保持器とドアは連結されてもよいし、デバイスの一体的な構成要素として一体的に形成されてもよい。保持器は、コントローラの制御下で掛止位置と非掛止位置の間で可動なラッチによって閉位置に固着される。保持器および/またはドアは、コントローラによるラッチの解除時に、使用者にとってアクセス可能な、その中に保持された薬剤カートリッジを示すなどのために、保持器ドアが開くように、ばねにより装着することができる。
【0019】
本発明のどちらかの態様を実施するデバイスは、ボタンなどの入力手段ならびにデジタル・ディスプレイまたは音響ユニットなどの出力手段を有する制御パネルを含むことができる。この入力手段は、用量機能、装填機能などのための入力を使用者から受け取るように構成することができ、出力手段は、情報、許容可能な/許可されない機能、プロンプトまたはガイダンスを使用者に示すように構成することができる。デジタル・ディスプレイは、カートリッジ保持器が開いているかどうか、および何のタイプの薬剤で充填されたどの薬剤リザーバを、開いたカートリッジ保持器に挿入しなければならないかを示すように構成することができる。同様に、デジタル・ディスプレイおよび音響ユニットは、薬剤リザーバがそれぞれのカートリッジ保持器に適切に挿入されていないかどうかを示すように構成することができる。出力手段は、薬剤リザーバの充填レベルに関する情報を示すようにさらに構成することができる。
【0020】
コントローラは電子制御ユニットを含むことができ、この電子制御ユニットは、少なくとも、センサ・ユニットから信号を受け取るように構成された評価ユニットを備えることができる。この構成では、センサ・ユニットは、薬剤またはカートリッジ保持器の位置および/またはデバイス内で薬剤リザーバもしくはカートリッジを保持するために設けられたロッキング・デバイスのロッキング状況に依存して信号を評価ユニットに送るように構成された電子センサまたは電気機械センサとすることができる。薬剤リザーバの適切な挿入に依存して信号を評価ユニットに送るように構成されたセンサ・ユニットも存在することがある。薬剤リザーバの充填レベルに依存して信号を評価ユニットに送るように構成されたセンサ・ユニットがさらに存在することがある。センサ・ユニットと評価ユニットは1つの構成要素であってもよい。
【0021】
投薬インターフェース(すなわちカートリッジ・ハブ)をデバイスから分離したまたは取り外したとき、コントローラは、カートリッジの入れ替えサイクルを開始することによってインターフェース・センサにより生成される信号に応答する。これは、1つまたはそれ以上のカートリッジ・ドア・ボタン(すなわち保持器ごとに1つ)を起動する工程を含み、カートリッジ・ドア・ボタンは、保持器ドアを開くためにデバイス上に設けることができる。カートリッジ・ドア・ボタンが使用者によって押されると、ドライブ・トレインが「ホーム」終了位置まで巻き戻って停止する。この巻き戻しによって、ピストン・ロッドが、保持器によって保持される薬剤カートリッジから引っ込められる。ピストン・ロッドは、カートリッジの近位端のない位置に引っ込められる。ピストン・ロッドの巻き戻しは継続し、したがって、その行程は近位端を越えてラッチを解除する。これによって、保持器ドアはばね装着のアクション下で開くことができる。保持器ドアの開扉状態を検出するためのセンサが設けられる。終了位置、すなわち完全に引っ込められる位置はピストン・ロッドによって到達され、これはコントローラによって感知される。これに応答して、コントローラは、薬剤カートリッジの装着後に保持器ドアが閉じられたときに保持器のロッキングを可能にする位置にラッチを移動させるのに十分な距離だけドライブ・トレインを前進させる。第1の態様および第2の態様を実施するデバイスでは、このセンサは、保持器センサによって提供されることができる。
【0022】
本発明の第2の態様を実施するデバイスの動作手順は、コントローラが位置センサから信号を受け取るときに呼び出され、好ましい一実施形態では、カートリッジ・ドア・スイッチの機能を実行することができる。呼び出される動作手順は、コントローラによって受け取られるカートリッジ・センサの出力によって決まる。位置センサが保持器は閉じられていることを示し、カートリッジ・センサが保持器は薬剤カートリッジを保持していることを示す場合、ドライブ・トレインは、ドライブ・トレインが失速するまで薬剤カートリッジの栓の方へピストン・ロッドを前進させる。ドライブ・トレインの失速時に、コントローラは、場合により、薬剤カートリッジにかかる圧力を低下させるために、ピストン・ロッドの小さな巻き戻し、すなわち「後退」を実施することができる。使用者にデバイスの動作ステータスを知らせるプロンプトが、コントローラによってディスプレイ上に表示される。このプロンプトは、その適切な装着を示す「カートリッジO.K.」、続いて「カートリッジ・ハブを嵌着する」などの投薬インターフェースを取り付けさせるプロンプトを含むことができる。2つのカートリッジ保持器を有する併用療法デバイスでは、プロンプトは、他のカートリッジ入れ替え(たとえば「他のカートリッジを入れ替える」)または投薬インターフェースの取付けを選択する選択肢を使用者に提供することができる。使用者が投薬インターフェースの取付けに進んだ場合、コントローラは、投薬インターフェースから空気を除去するために強制的装填動作を実施することができる。この場合、使用者が装填するプロンプトを表示することができる。
【0023】
保持器が閉じられていることを位置センサが示し、保持器が薬剤カートリッジを保持していないことをカートリッジ・センサが示す場合、使用者が薬剤カートリッジを挿入するプロンプト(「カートリッジを挿入する」など)がデバイス上に表示される。ディスプレイは、関連する保持器用の開扉ボタンを押すように使用者に促す指示を提示し、場合により、カートリッジが保持器に挿入されているという図または説明を提供することができる。併用療法デバイスでは、使用者は、必要に応じて薬剤カートリッジを他の保持器から取り外すという選択肢を提供されることができる。
【0024】
たとえば薬剤を使い果たしたときに、薬剤カートリッジを取り替える必要性がデジタル・ディスプレイ上に示されることができる。コントローラ・ソフトウェアは、インターフェース・ハブがデバイスに取り付けられているかどうかチェックすることができる。インターフェース・ハブがデバイスに取り付けられている場合、カートリッジ入れ替えサイクルを開始可能にするために、ディスプレイは、使用者がインターフェース・ハブを取り外すプロンプトを提示する。
【0025】
本発明のさらなる態様によれば、投薬インターフェースを有する薬剤送達デバイスを制御する方法であって:デバイスからの投薬インターフェースの取り外しを感知する工程と;投薬インターフェースの感知された取り外しに応答してカートリッジ・ドア・ボタンの作動を感知し、それに応答してデバイスの薬剤カートリッジ保持器からピストン・ロッドを後退させる工程と;ピストン・ロッドの後退に続いて薬剤カートリッジ保持器を開く工程とを含む方法が提供される。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、薬剤送達デバイスを制御する方法であって:カートリッジ・センサおよび薬剤カートリッジ保持器位置センサの出力を感知する工程と;カートリッジ・センサの出力がカートリッジの存在を示し、薬剤カートリッジ保持器位置センサの出力が保持器は閉位置にあることを示したときにピストン・ロッドを薬剤カートリッジの方へ前進させるか、またはカートリッジ・センサの出力がカートリッジの存在を示さず、位置センサが保持器は閉位置にあることを示したときに薬剤カートリッジの挿入を促す工程とを含む方法が提供される。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、投薬インターフェースを有する薬剤送達デバイスを制御する方法であって:デバイスからの投薬インターフェースの取り外しを感知する工程と;投薬インターフェースの感知された取り外しに応答してカートリッジ・ドア・ボタンの作動を感知し、それに応答してデバイスの薬剤カートリッジ保持器からピストン・ロッドを後退させる工程と;ピストン・ロッドの後退に続いて薬剤カートリッジ保持器を開く工程と;カートリッジ・センサおよび薬剤カートリッジ保持器位置センサの出力を感知する工程と;カートリッジ・センサの出力がカートリッジの存在を示し、薬剤カートリッジ保持器位置センサの出力が保持器は閉位置にあることを示したときにピストン・ロッドを薬剤カートリッジの方へ前進させるか、またはカートリッジ・センサの出力がカートリッジの存在を示さず、位置センサが保持器は閉位置にあることを示したときに薬剤カートリッジの挿入を促す工程とを含む方法が提供される。
【0028】
本発明のさらに別の態様によれば、プロセッサ上での実行時に、1つまたはそれ以上の薬作用物質の投与のための薬剤送達デバイスを制御するように、および、このデバイスを以下のように制御するように動作可能であるコードを含むコンピュータ・プログラムが提供される:カートリッジ・センサおよび薬剤カートリッジ保持器位置センサの出力を感知し;カートリッジ・センサの出力がカートリッジの存在を示し、薬剤カートリッジ保持器位置センサの出力が保持器は閉位置にあることを示したときにピストン・ロッドを薬剤カートリッジの方へ前進させるか、またはカートリッジ・センサの出力がカートリッジの存在を示さず、位置センサが保持器は閉位置にあることを示したときに薬剤カートリッジの挿入を促す。
【0029】
本発明の別の態様によれば、以下によって、コンピュータ上での実行時に、1つまたはそれ以上の薬作用物質を投与するための薬剤送達デバイスを制御する命令で符号化されたコンピュータ可読媒体が提供される:カートリッジ・センサおよび薬剤カートリッジ保持器位置センサの出力を感知し;カートリッジ・センサの出力がカートリッジの存在を示し、薬剤カートリッジ保持器位置センサの出力が保持器は閉位置にあることを示したときにピストン・ロッドを薬剤カートリッジの方へ前進させるか、またはカートリッジ・センサの出力がカートリッジの存在を示さず、位置センサが保持器は閉位置にあることを示したときに薬剤カートリッジの挿入を促すこと。
【0030】
本発明のどちらかまたは両方の態様の実施形態では、位置センサは、デバイス内の、保持器ドア・ラッチとは別の場所に位置することができる。
【0031】
本発明の一方または両方の態様を実施するデバイスは、デバイスの動作工程のシーケンスによって使用者を導くことができる。これは、使用者によるデバイス機能の不適切な、間違った、または有益でない選択の危険を低下させることによって使用者の操作性を向上させるという利点を有する。さらなる利点は、結果として生じるバッテリ寿命の増加を伴う不必要なモータ運動の回避および投薬インターフェース(カートリッジ・ハブ)またはニードル・ハブの消耗の回避にある。
【0032】
薬剤送達デバイスは、注入デバイスまたは注射デバイス、たとえば携帯型インスリン注射ペンとすることができる。本発明を実施する薬剤送達デバイスは、医療関係者によって、または患者自身によって使用されることができる。一例として、1型糖尿病および2型糖尿病は、たとえば1日1回または複数回のインスリン用量の注射によって患者自身により治療することができる。第1の保持器および第2の保持器は、互いと異なる薬作用物質、たとえば一方に速効型インスリン薬作用物質および他方に長時間作用型インスリン薬作用物質を含む薬剤リザーバまたはカートリッジを保つように構成することができる。第1の保持器および第2の保持器は、好ましくは、使用者が適切な薬作用物質を適切な保持器内に確実に配設するようにするために互いと異なるような大きさにされる。本発明の実施形態では、コントローラは、デバイスの動作を実行するように、ならびにデバイスの所定の状態および所定でない状態を識別するようにソフトウェアによってプログラムされることができる。
【0033】
本発明の種々の態様の上記ならびに他の利点は、添付の図面を適切に参照して以下の詳細な説明を読めば、当業者には明らかになるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】デバイスの端部キャップが取り外された、本発明を実施する単一薬剤カートリッジ送達デバイスの斜視図である。
図2】二重薬剤カートリッジを有することを除いて、図1の送達デバイスの斜視図である。
図3】1つのカートリッジ保持器が開位置にある、図2に示されるカートリッジ保持器の斜視図である。
図4図2に示されるデバイスなどの薬物送達デバイス上に取り付けられた、投薬インターフェースおよび用量投薬器の断面図である。
図5】薬剤カートリッジおよびドライブ・トレインを示す、医療デバイスの断面図である。
図6】a〜cは、デバイスへの投薬インターフェースの取付けを示すための断面図である。
図7】医療デバイスからの投薬インターフェースの取付けまたは分離の断面図である。
図8】本発明を実施するデバイスの動作を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に示される薬物送達デバイスは、近位端16から遠位端15まで延びる本体14を備える。遠位端15には、取外し可能な端部キャップまたはカバー18が設けられる。この端部キャップ18と本体14の遠位端15は協働して、スナップ嵌めまたはフォーム・フィット(form fit)連結を提供し、したがって、カバー18が本体14の遠位端15上で摺動すると、キャップと本体外面20の間のこの摩擦嵌めによって、注意しないとカバーが本体から落ちるのが防止される。
【0036】
本体14は、マイクロプロセッサ制御ユニットと、電気機械的ドライブ・トレインと、薬剤リザーバまたはカートリッジを保持するための単一の保持器とを含む。端部キャップまたはカバー18をデバイス10から(図1に示されるように)取り外すと、投薬インターフェース201が本体14の遠位端15に取り付けられ、このインターフェースには用量投薬器(たとえば、ニードル・アセンブリ)が取り付けられている。投薬インターフェース201は、ニードル・アセンブリとデバイス内に保持される薬剤リザーバとの間の流体連通を提供する。薬物送達デバイス10は、単一のニードル・アセンブリによって薬剤の計算された用量を投与するために使用することができる。
【0037】
制御パネル領域60が本体14の近位端の近傍に設けられる。好ましくは、この制御パネル領域60は、組み合わされた用量を設定および注射するように使用者により操作できる複数のヒューマン・インターフェース要素に加えて、デジタル・ディスプレイ80を備える。この配置では、制御パネル領域は、第1の用量設定ボタン62と、第2の用量設定ボタン64と、記号「OK」で示される第3のボタン66とを備える。さらに、本体の最近位端に沿って、注射ボタン74も設けられている(図1の斜視図では見えない)。カートリッジ・ホルダ40は、本体14に取外し可能に取り付けることができ、単一のカートリッジ保持器(図示せず)を含んでよい。
【0038】
図2に示される実施形態は、同様に本体14に取外し可能に取り付けることができるカートリッジ・ホルダ40が少なくとも2つのカートリッジ保持器50および52を含むことができることを除いて、図1の実施形態に類似した要素を有する。各保持器は、ガラス・カートリッジなどの1つの薬剤リザーバを含むように構成される。好ましくは、各カートリッジは、異なる薬剤を含む。
【0039】
さらに、カートリッジ・ホルダ40の遠位端には、図2に示される薬物送達デバイスは、ニードル・アセンブリとデバイス内に保持される薬剤リザーバとの間の流体連通を提供するための投薬インターフェース200を含む。一配置では、この投薬インターフェース200は、カートリッジ・ホルダ40の遠位端42に取外し可能に取り付けられた外側本体212を含む。図1の実施形態について言えば、同様に投薬インターフェース201の遠位端214が設けられ、好ましくはニードル・ハブ216を備える。このニードル・ハブ216は、従来のペン型注射ニードル・アセンブリなどの用量投薬器を取外し可能に薬物送達デバイス10に取り付けることができるように構成することができる。
【0040】
デバイスの電源を投入すると、図1および図2の実施形態のデジタル・ディスプレイ80が明るくなり、特定のデバイス情報、好ましくはカートリッジ・ホルダ40内に含まれる薬剤(複数可)に関する情報を使用者に提供する。たとえば、使用者は、図1の単一の薬剤または図2の主薬剤(薬物A)と副薬剤(薬物B)の両方に関する特定の情報を持つ。
【0041】
図3に示されるように、第1のカートリッジ保持器50、および第2のカートリッジ保持器52は、蝶番式カートリッジ保持器を備える。これらの蝶番式保持器を使用することによって、使用者は、カートリッジにアクセスすることができる。図3は、第1の蝶番式カートリッジ保持器50が開位置にある、カートリッジ・ホルダ40の斜視図を示す。図3は、第1の保持器50を開き、それにより第1のカートリッジ90へのアクセスを有することによって、使用者が第1のカートリッジ90にどのようにアクセスできるかを示す。図1のカートリッジ・ホルダ40は、図2の実施形態の保持器50または52のどちらかに類似した単一の保持器を備える。
【0042】
インターフェース200と共に使用できる用量投薬器またはニードル・アセンブリも示されており、保護用外側キャップ(図示せず)内に設けられる。図4に示される投薬インターフェース200が、カートリッジ・ホルダ40に連結されて示されている。投薬インターフェース200とカートリッジ・ホルダ40の間の軸方向取付け手段は、スナップ・ロック、スナップ嵌め、スナップ・リング、突起の付いた(keyed)スロット、およびこのような連結の組み合わせを含む、当業者に知られている任意の軸方向取付け手段とすることができる。投薬インターフェースとカートリッジ・ホルダの間のこの連結または取付けは、特定のハブが対応する薬物送達デバイスのみに取付け可能であることを確実にする、コネクタ、止め具、スプライン、リブ、溝、点(pip)、クリップ、および設計上の同様な特徴などの追加の特徴(図示せず)も含んでよい。このような追加の特徴は、対応しない注射デバイスへの不適切な二次カートリッジの挿入を防止する。
【0043】
図4は、ニードル・アセンブリ400も示す。これは、両頭針406とハブ401とを有する。両頭針またはカニューレ406は、ニードル・ハブ401内に固定的に取り付けられる。このニードル・ハブ401は、ニードル・ハブ401を投薬インターフェース200上にねじ込むことができるネジ付き(図示せず)内壁を備え、投薬インターフェース200は、1つの好ましい配置では、遠位ハブに沿って対応する外側ネジ山を備える。スナップ・ロック、ネジ山によって着脱されるスナップ・ロック、バヨネット・ロック、フォーム・フィット、または他の類似の連結配置などの代替の着脱可能なコネクタを設けてもよい。両頭針406は、第1のまたは遠位穿刺端405が注射部位(たとえば、使用者の皮膚)を穿刺するための注射部材を形成するように、ニードル・ハブ401を通して中央に取り付けられる。同様に、第2のまたは近位穿刺端407がアセンブリ400の反対側から突出する。この第2の端407は、投薬インターフェース200のセプタム270を穿刺する。
【0044】
投薬インターフェース200は、図4に断面で示されている。この1つの好ましい配置では、このインターフェース200は以下のものを備える:a)主外側本体210;b)第1の内側本体220;c)第2の内側本体230;d)第1の穿刺針240;e)第2の穿刺針250;f)バルブ・シール260;およびg)セプタム270。
【0045】
投薬インターフェース200は、カートリッジ・ホルダ40上に設けられた突出部217および投薬インターフェース上に設けられた対応する凹部218によって、カートリッジ・ホルダ40に取外し可能に連結するように構成される。これらは協働して、締まり嵌め、フォーム・フィット、またはスナップ・ロックを投薬インターフェース200とカートリッジ・ホルダ40の間に形成する。あるいは、当業者が理解できるように、投薬インターフェースとカートリッジ・ハウジング40を軸方向に連結する他の任意の類似の連結トレインも使用することができる。
【0046】
投薬インターフェース200およびカートリッジ・ホルダ40の遠位端は、カートリッジ・ハウジングの遠位端上に軸方向に摺動できる軸方向に係合するスナップ・ロックまたはスナップ嵌めの配置を形成するように作用する。一代替配置では、投薬インターフェース200は、不注意による投薬インターフェースの交差使用を防止するようにコーディング機能を備えることができる。すなわち、ハブの内側本体は、1つまたはそれ以上の投薬インターフェースの不注意による交差使用を防止するように幾何学的に構成されることができる。
【0047】
さらに、図4で分かるように、第1の内側本体220の近位端の近傍の近位面226は、近位穿刺端部分244を備える少なくとも第1の近位に設置された穿刺針240を持つように構成することができる。同様に、第1の内側本体220は、近位穿刺端部分254を備える第2の近位に設置された穿刺針250を持つように構成される。第1の針240、および第2の針250は両方とも、第1の内側本体220の近位面226にしっかりと取り付けられる。
【0048】
好ましくは、この投薬インターフェース200は、バルブ配置をさらに備える。このようなバルブ配置は、第1のリザーバおよび第2のリザーバ内にそれぞれ含まれる第1の薬剤および第2の薬剤の交差汚染を防止するように構築することができる。好ましいバルブ配置は、第1の薬剤および第2の薬剤の逆流および交差汚染を防止するように構成することもできる。
【0049】
1つの好ましいシステムでは、投薬インターフェース200は、バルブ・シール260の形をしたバルブ配置を含む。このようなバルブ・シール260は、保持チャンバ280を形成するように、第2の内側本体230によって画成される空洞231内に設けることができる。好ましくは、空洞231は第2の内側本体230の上面に沿って存在する。このバルブ・シールは、第1の流体溝264および第2の流体溝266の両方を画成する上面を備える。たとえば、図4は、第1の内側本体220と第2の内側本体230の間に着座するバルブ・シール260の位置を示す。注射工程中に、このシール・バルブ260は、第1の経路内の主薬剤が第2の経路内の副薬剤に移行するのを防止しながら、第2の経路内の副薬剤が第1の経路内の主薬剤に移行するのも防止する助けとなる。好ましくは、このシール・バルブ260は、第1の逆止め弁262と、第2の逆止め弁268とを備える。したがって、第1の逆止め弁262は、第1の流体経路264たとえばシール・バルブ260内の溝に沿って移動する流体がこの経路264へと戻るのを防止する。同様に、第2の逆止め弁268は、第2の流体経路266に沿って移動する流体がこの経路266へと戻るのを防止する。
【0050】
第1の溝および第2の溝264、266は一緒に、それぞれ逆止め弁262および268に向かって収斂し、次に、出力流体経路または保持チャンバ280を提供する。この保持チャンバ280は、穿刺可能なセプタム270と共に画成される第1の逆止め弁262、と第2の逆止め弁268の両方の第2の内側本体の遠位端によって画成される内側チャンバによって画成される。図示のように、この穿刺可能なセプタム270は、第2の内側本体230の遠位端部分と外側本体210のニードル・ハブによって画成される内面との間に設置される。
【0051】
保持チャンバ280は、インターフェース200の出口ポートで終わる。この出口ポート290は、好ましくは、インターフェース200のニードル・ハブの中央に位置し、穿刺可能なシール270を静止位置に維持する助けとなる。したがって、両頭針アセンブリがインターフェース(両頭針406など)のニードル・ハブに取り付けられると、出力流体経路は、両方の薬剤を、取り付けられたニードル・アセンブリと流体連通させることができる。
【0052】
薬物送達デバイスの遠位端の上で外側本体210を軸方向に摺動させると、投薬インターフェース200が多目的デバイスに取り付けられる。このようにして、第1の針240と第2の針250の間でそれぞれ第1のカートリッジの主薬剤と第2のカートリッジの副薬剤との流体連通を生じることができる。図4は、カートリッジ・ホルダ40の遠位端42上に取り付けられた投薬インターフェース200を示す。カートリッジ・ホルダ40は、第1の薬剤92を含む第1のカートリッジ90と第2の薬剤102を含む第2のカートリッジ100とを有するように示されている。
【0053】
インターフェース200が最初にカートリッジ・ホルダ40の遠位端の上に取り付けられるとき、第1の穿刺針240の近位穿刺端244が第1のカートリッジ90のセプタムを穿刺し、それにより第1のカートリッジ90の主薬剤92と流体連通して存在する。第1の穿刺針240の遠位端も、バルブ・シール260によって画成される第1の流体経路溝264と流体連通する。
【0054】
同様に、第2の穿刺針250の近位穿刺端254は第2のカートリッジ100のセプタムを穿刺し、それにより第2のカートリッジ100の副薬剤102と流体連通して存在する。この第2の穿刺針250の遠位端も、バルブ・シール260によって画成される第2の流体経路溝266と流体連通する。
【0055】
医療デバイス10を初めて使用するとき、投薬インターフェース200の第1の流体コンジットおよび第2の流体コンジット264、266および保持チャンバ280ならびにニードル・ハブ400のカニューレ406内に空気があることは明らかであろう。したがって、薬剤がニードル・ハブ400の遠位端に見えるまでコンジットを通して薬剤を吐出することによってデバイス10を装填することが望ましい。それによって、カートリッジ90、100と患者に挿入されるカニューレ406の端の間の流体連通チャネルから空気が確実に追い出されるようになる。そのうえ、カートリッジ90、100の一方または両方の取り替えの場合、保持器50、52のどちらか一方がロック解除される前に投薬インターフェース400を取り外すことが、デバイス内にプログラムされる機能要件であることがある。この場合、デバイス10は、カートリッジの取り替えおよび投薬インターフェース200または新しい投薬インターフェース200の取り替えの後の装填を必要とする。装填中に充填するべき投薬インターフェース200内のコンジットの容積は、1μl程度とすることができる。
【0056】
図5は、医療デバイス10を断面図で示す。2つのカートリッジ保持器50および52は閉位置で示されている。保持器50は薬剤リザーバ620を含むように構成され、保持器52は薬剤リザーバ622を含むように構成される。リザーバ620、622は、ガラス、金属、またはプラスチック・カートリッジであってよい。リザーバ622は、リザーバ620より小さな直径とこれより短い長さを有してよい。カートリッジ・ホルダ40は、2つのロッキング・デバイス600および602をさらに備えることができる。ロッキング・デバイス600および602は、カートリッジ保持器50、52をフォーム・フィットさせるように閉位置にロックできるラッチとして設計されてよい。ロッキング・デバイス600および602は、保持器ドアまたはカートリッジ解除ボタン504および506の動作によって解除またはロック解除することができる。保持器ドアまたはカートリッジ解除ボタン504および506は、機械的または電気機械的に機能することができる。
【0057】
カートリッジ・ホルダ40は、2つのカートリッジ保持器ばね608および610をさらに含み、カートリッジ保持器ばね608および610は、カートリッジ保持器50および52の閉位置において、カートリッジ保持器に弾性ばね力を及ぼす。ロッキング・デバイス600および602を解除することによって、ばね力は、カートリッジ保持器50および52を開位置に動かす。カートリッジ保持器50は、ピボット軸受612でカートリッジ保持器ハウジングに蝶番により取り付けられ、カートリッジ保持器52は、ピボット軸受614でカートリッジ保持器ハウジングに蝶番により取り付けられる。それによって、カートリッジ保持器50、52は、ピボット軸受612、614のまわりを閉位置と開位置の間で枢動可能である。
【0058】
保持器50および52のそれぞれのための保持器センサを設け、それぞれの薬剤カートリッジ620、622の挿入状況および/またはカートリッジ保持器50および52の閉鎖状況を検出するように構成することができる。図5の実施形態では、カートリッジ・ホルダ40内に設けられる保持器センサは、保持器50および52それぞれが閉位置または開位置にあるかどうか感知するための位置センサ613および615を備えるように示されている。別個のカートリッジ・センサまたは検出スイッチ616および618はそれぞれ、保持器50および52内のカートリッジの有無を感知するために設けられる。位置センサ613、615は、保持器ドア・ラッチ600、602とは別個の場所にあるデバイス内に位置する。
【0059】
デバイス10はコントローラ700をさらに備え、コントローラ700はマイクロプロセッサ制御ユニットであってよい。コントローラ700は、位置センサ613、615およびカートリッジ・センサ616、618から信号を受け取る。
【0060】
カートリッジ620用のカートリッジ・センサ616からの出力は、カートリッジがデバイス内で適切に位置することを示すことができる。この状況は、デバイスのカートリッジ保持器50が閉じられ、カートリッジ620が挿入されているときに発生する可能性が最も高い。カートリッジ保持器50が閉じられ、カートリッジ620がないとき、またはカートリッジ保持器50が開いているとき、コントローラ700は、カートリッジがないことを検出するはずである。位置スイッチ613は、カートリッジの有無にかかわらず、カートリッジ保持器50が開いているか閉じられていることを示す。
【0061】
以下の表1に示される状況は、それぞれのカートリッジ・センサ616、618とそれぞれの位置センサ613、615の組み合わせによって達成することができる。システムの意図された挙動を説明することを目的として、カートリッジ・センサ列の「1」はカートリッジが検出されたことを示し、位置センサの「1」はドアが閉じられていることを示す。これらの列のいずれかの「0」は、「1」と反対の意味を有する。
【0062】
以下の表1は、カートリッジ・センサと保持器センサの考えられ得る組み合わせを示す。
【0063】
【表1】
【0064】
これらのセンサからの出力は、たとえば、カートリッジが所定の位置にある状態でカートリッジ保持器50が閉じられており、位置センサ613またはカートリッジ・センサ615のどちらかが最初にトリガできる場合、過渡的状態の対象となり得る。この過渡的状態は、たとえば公差によるものである場合がある。このため、どのセンサ・スイッチが最初にトリガするかに応じて、コントローラ700は、以下の状態を判定することができる:「カートリッジ保持器が閉じられている−カートリッジなし」または「カートリッジ保持器が開いている−カートリッジが存在」、後者は非論理的な状態である。
【0065】
カートリッジ622用のセンサの構成および挙動は、上記で説明したカートリッジ620用のものと本質的に同じである。
【0066】
デバイス10は、メモリ・ユニット、たとえばコントローラ700に連結されている読み取り専用メモリ・ユニットをさらに備え、このメモリ・ユニットは、以下で図7および8を参照してより詳細に説明するように、コントローラ700により実行される、デバイスの機能を実行するためのソフトウェアをその中にプログラムすることができる。コントローラ700は評価ユニット702を備えることができ、評価ユニット702は、位置センサ613および615から、ならびにカートリッジ検出スイッチ616および618から信号を受け取るように構成することができる。評価ユニット702はまた、カートリッジ620、622の充填レベルを判定するように構成されたセンサから信号を受け取るように構成することができる。
【0067】
コントローラ700は、ユーザ・インターフェース、たとえば制御パネル領域60にさらに連結される。好ましくは、ユーザ・インターフェースまたは制御パネル領域60は、デジタル・ディスプレイ80などの出力手段と、たとえば用量設定ボタン62および64または記号「OK」で示されるボタン66(図1〜3の実施形態では図7の実施形態と異なる位置で示される)を備える、キーボードなどの入力手段とを備える。本体14の近位端には、さらなる注射ボタン74が設けられる。
【0068】
図5は、一対のドライブ・トレイン624および625も示す。この対の第1のドライブ・トレイン624は、ギア628によってピストン・ロッド627を駆動するモータ626を含む。ドライブ・トレイン624は、カートリッジ620から薬剤を投薬するためにコントローラ700の制御下でピストン・ロッド627を駆動させるように動作可能である。第2のドライブ・トレイン625は、同様にコントローラ700の制御下でカートリッジ622から薬剤を投薬するために、第2のギア機構631によってピストン・ロッド630を駆動するためのモータ629を含む。
【0069】
図6a〜6cは、インターフェース・センサ600を示す投薬インターフェース200の概略断面図である。これは、プッシュ・ロッド601を備えることができる。たとえば、インターフェース・センサ600は、少なくとも部分的に、図4の空洞43などの、カートリッジ・ホルダ40によって形成される空洞の中に配置される。
【0070】
プッシュ・ロッド601の近位端には、プッシュ・ロッド601が薬物送達デバイス10内に弾性的に保たれ薬物送達デバイス内で少なくとも長手方向に可動であるようにカートリッジ・ホルダ40に連結されたばね602が配置される。
【0071】
検出配置600は、空洞43の側壁に長手方向に配置された第1のスイッチ603と第2のスイッチ604とをさらに備えることができる。その中では、第1のスイッチ603が、第2のスイッチよりカートリッジ・ホルダ40の遠位端42の近くに配置される。言い換えれば、薬物送達デバイス10において、第1のスイッチ603は遠位に位置し、第2のスイッチ604は近位に位置する。第1のスイッチ603および第2のスイッチ604は、第1の検出ユニットおよび第2の検出ユニットを形成する、圧力により起動されるスイッチである。具体的には、第1のスイッチ603および第2のスイッチ604は、圧力がそれぞれのスイッチに印加されたときのみ起動され、それ以外の場合は起動停止される。これらのスイッチは、たとえば薬物送達デバイス10のマイクロプロセッサ制御ユニットに連結することができる(マイクロプロセッサ制御ユニットに起動および起動停止を論理的に知らせる)。
【0072】
第1のスイッチ603および第2のスイッチ604の方を向いたプッシュ・ロッド601の外側面は、3つの部分、すなわち2つの平行面部分605、606および傾斜面部分607から形成される。傾斜面部分607は、プッシュ・ロッドの近位端で平行面部分605が引っ込むように、平行面部分605、606の間に配置される。ロッド608は、プッシュ・ロッド601の遠位端に配置される。
【0073】
図6aでは、投薬インターフェース200は薬物送達デバイス10に取り付けられていない。具体的には、ロッド608と投薬インターフェース200の面226の間に接触はない。したがって、ばね602は弛緩し、プッシュ・ロッド601は薬物送達デバイス10内の第1の位置に保持される。薬物送達デバイス10内のプッシュ・ロッド601のこの第1の位置では、第1のスイッチ603および第2のスイッチ604はそれぞれ、引っ込んだ平行面部分605およびばね602に面する。具体的には、プッシュ・ロッド601の外側面と第1のスイッチ603および第2のスイッチ604の間に接触はない。両方のスイッチは起動停止される。
【0074】
図6bでは、薬物送達デバイス10への投薬インターフェース200の取付けが開始され、投薬インターフェース200は、カートリッジ・ホルダ40の遠位端42に位置合わせされ、薬物送達デバイス10の方に押されて、薬物送達デバイス10のカートリッジ・ハウジング40の遠位端42の上で軸方向に摺動する。それによって、ロッド608の遠位端は投薬インターフェース200の面226上に存在し、同様に薬物送達デバイス10の方へ押され、したがって、薬物送達デバイス10に投薬インターフェース200を取り付ける間、薬物送達デバイスの方に投薬インターフェース200が移動することによって、プッシュ・ロッド601の対応する移動およびばね602の圧縮が促進される。
【0075】
これに対応してプッシュ・ロッド601が移動すると、第1のスイッチ603および第2のスイッチ604は、プッシュ・ロッド601の外側面の傾斜面部分607に沿って平行面部分606の方へ摺動し、それによって、スイッチに印加される圧力が増加する。圧力閾値を超えると、第1のスイッチ603および第2のスイッチ604が起動され、たとえば、平行面部分606(すなわち、プッシュ・ロッドの起動部分)の上に存在するとき、スイッチが起動される。第1のスイッチ603は、遠位位置にあるので、第2のスイッチ604が平行面部分606上に存在するよりも早く平行面部分606上に存在し、したがって第2のスイッチ604よりも早く起動される。この取付けが図6bに示されるように開始されるとき、第1のスイッチ603は平行面部分606上に存在し、起動されている。
【0076】
図6cでは、薬物送達デバイス10への投薬インターフェース200の取付けは完了し、したがって、第1のカートリッジ90および第2のカートリッジ100のセプタムは穿刺され、投薬インターフェースは、上記で説明したように第1のカートリッジ90の主薬剤92および第2のカートリッジ100の副薬剤102と流体連通して存在する。
【0077】
図6cに示されるように薬物送達デバイス10への投薬インターフェース200の取付けが完了すると、第2のスイッチ604も平行面部分606上に存在し、起動される。ばね602は圧縮され、プッシュ・ロッドは第2の位置にある。
【0078】
投薬インターフェース200が薬物送達デバイス10から解除されると、圧縮されたばね602は弛緩し、プッシュ・ロッド601を第1の位置に戻し、場合により投薬インターフェース200を戻り止め位置(すなわち、図6bに示される位置)に戻す。それによって、最初に第2のスイッチ604が、次いで第1のスイッチ603が傾斜面部分607に沿って引っ込んだ平行面605の方へ摺動し、その後で起動停止される。これによって、コントローラ700は投薬インターフェース200の取り外しを感知する。
【0079】
図6a〜6cは2つのスイッチ603、604を示すが、実施形態は、インターフェース・センサ600に単一のスイッチを用いることができる。
【0080】
本発明を実施するデバイスの動作について、図7および8を参照して説明する。
【0081】
図7は、医療送達デバイス10においてカートリッジを交換する方法を示す。工程800では、医療デバイス10のコントローラ700は、保持器50内のカートリッジが空であると判断するか、または使用者がカートリッジを取り替えることを選定し、そのためコントローラ700は「カートリッジ交換または取り替えモード」に入る。たとえば、デバイスは、カートリッジ内に残っている薬剤より多い用量の設定を妨げることができる。したがって、デジタル・ディスプレイ80は、薬物B(薬剤カートリッジ620)が空であることを示す。同様に、工程800では、デジタル・ディスプレイ80は、大きな直径と長い長さとを有するカートリッジ620を、交換を必要とするカートリッジであると示す。
【0082】
使用者がカートリッジ・ホルダ40にアクセスできるようになる前に、デバイスは、工程802において、使用者に投薬インターフェースを取り外すように指示する。これは図8の工程900に相当し、デジタル・ディスプレイ80上に示される。工程800および802で示されるデジタル・ディスプレイ80上の表示は、一定の期間中に交互に替わることができる。その後、工程802において、投薬インターフェース200が使用者によってカートリッジ・ホルダ40から取り外される。
【0083】
工程804では、コントローラ700は、図8の工程905によって示されるように、1つまたはそれ以上のスイッチ603および604からの信号を感知することによって、投薬インターフェース200がカートリッジ・ホルダ40から取り外されていると判断する。さらに、工程804において、投薬インターフェース200がカートリッジ・ホルダ40に取り付けられていながらロッキング・デバイス600および602がロック解除不可能状態にある場合に、コントローラ700は、ロッキング・デバイス600および602を操作しロック解除可能状態にすることができる。同時に、コントローラ700が、交換するべきカートリッジすなわちカートリッジ620に対応する保持器ドアまたはカートリッジ解除ボタン504を起動する(工程910)。コントローラ700は、使用者がカートリッジ解除ボタン504を操作するプロンプトをデジタル・ディスプレイ80に表示する。使用者がカートリッジ解除ボタン604を押すと、これは工程915で感知され、その後で、コントローラ700がドライブ・トレイン624にピストン・ロッド627をカートリッジ620から引っ込めさせ(工程920)、ピストン・ロッド627をカートリッジ620から後退させるとき、ディスプレイ上に「待ってください」指示(図7の806では回転する砂時計として示される)を表示する。ピストン・ロッド627を完全に後退させると、モータ626は失速し、ロッキング・デバイス600をロック解除されたまたは解除された状態にトリガするように信号がコントローラ700に送られ、したがって、カートリッジ保持器50を開く(工程925の「ドアを開く」)ことを可能にする。保持器内にカートリッジがない場合、ドライブ・トレインは、ラッチを解除するのに十分な短い距離だけ巻き戻すことができる。モータの失速時に、ドライブ・トレインを監視するためのエンコーダ(図示せず)は、コントローラ700によって「データ・リセット」状況にされる。また、このとき、一度にカートリッジ保持器50、52の一方のみが開くことができるように、ロッキング・デバイス602がこれより前にロック解除不可能状態に操作されていない場合、これが行われる。
【0084】
工程808では、カートリッジ保持器50は、カートリッジ保持器ばね608によって閉位置から開位置に押し込まれる。弾性ばね力の助けなしにカートリッジ保持器50が使用者によって開位置に引き出されることも可能である。カートリッジ保持器50を開くとすぐに、検出スイッチ616が、一致した信号をコントローラ700に送る。その後、デジタル・ディスプレイ80が、薬物Bで充填された新しいカートリッジ622を挿入することを示し、大きな直径と長い長さとを有するカートリッジを示す(工程930)。工程930では、使用者は、新しいカートリッジを装着し、保持器ドアを閉じて、保持器を空のままにしておく、または現在のカートリッジを再挿入することができる。
【0085】
カートリッジ保持器50が開いたことはコントローラ700によって感知され、その後、カートリッジの取り替え後にカートリッジ保持器50が使用者によって閉鎖されるとき、ロッキング・デバイス600のリセットを可能にする距離だけピストン・ロッド627を前進させるのに十分な時間モータ626が動かされる。保持器50に結び付けられた検出スイッチ616は、閉鎖されたときに保持器50内のカートリッジ620の存在を検出するように設けられる。その後の工程810では、カートリッジ保持器50は手動で閉位置へと動かされ(工程940)、閉位置では、カートリッジ保持器50はロッキング・デバイス600によってロックされる。保持器50を閉じると、コントローラ700は、保持器50の閉鎖を検出するために設けられた位置センサ613からの信号を感知する。保持器50が完全に閉じない場合、位置センサ613からの信号はコントローラによって感知されず(工程945)、したがって、コントローラは、保持器ドアを閉じるように指示をディスプレイ80上に提供する(工程950)。閉位置にあるとき、これはコントローラ700によって感知される(工程945)。コントローラ700は、工程955で保持器50内のカートリッジの存在を確認するために検出スイッチ616からの出力の感知を必要とする。工程955において、取り替え用カートリッジが検出スイッチ616によって検出された場合、対応する信号がコントローラ700によって感知される。カートリッジが工程955で感知されない場合、工程915で検出された保持器ドア・ボタンを使用者が押すようにプロンプトが工程960で表示される。これに加えてまたはこの代わりに、このプロンプトは、図7の804で示されるプロンプトに相当することができる。
【0086】
保持器50内での新しいカートリッジ620の留置成功および保持器50の閉鎖成功の後、検出スイッチ616は、カートリッジが存在することをコントローラ700に知らせ、位置センサ613は、ドアが閉じられたという信号をコントローラに送る。そのうえ、挿入されたカートリッジの挿入成功状態は、デジタル・ディスプレイ80に示されることができ(図7の工程810を参照されたい)、その後、工程970でコントローラがピストン・ロッドを取り替え用カートリッジの栓に前進させる。上記で説明したカートリッジ交換方法は、他のカートリッジ622および上記で説明した工程800〜810(および図8の工程900〜990)に対応する工程のルーチンによるカートリッジ保持器52内へのその取り替えに適用可能とすることができる。デバイスが、他のカートリッジも空であるまたは入れ替えを必要とすることを検出するように動作可能である場合、工程975では、これは、工程800と同様にディスプレイ80上に示されるが、薬物Bの代わりに薬物Aを示す。コントローラは、このカートリッジに対応する保持器ドア・ボタン506を起動し、その後、工程915で、このボタンが押されたことを検出することができる。デバイスが他のカートリッジの入れ替えを示さない場合、使用者は、保持器ドア・ボタン506を押すことによって、依然としてそのカートリッジにアクセスすることができる。他のカートリッジを取り替えることになっていない場合、工程980で、コントローラ700は、嵌着させるべき表示インターフェースのプロンプトを表示させる。投薬インターフェースの嵌着を検出し、その後、工程990で、コントローラは、使用者が装填動作を実施するプロンプトを表示することができる。
【0087】
図7および8を参照して説明した工程800〜810(および工程900〜990)は、単一のカートリッジ保持器を有する図1のデバイスに適用可能である。
【0088】
図7または8の動作シーケンスは、CD−ROM992またはメモリ・スティック993などのコンピュータ可読媒体に保存することができるコンピュータ・プログラムによって実行することができる。
【0089】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで1実施態様において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための、少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0090】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンが、Asp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられ、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0091】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0092】
エキセンジン−4は、たとえば、エキセンジン−4(1−39)、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドを意味する。
【0093】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
ここで、基−Lys6−NH2は、エキセンジン−4誘導体のC−末端と結合してもよく;
【0094】
または以下の配列のエキセンジン−4誘導体
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28 Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28 Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28 Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,
Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5,desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれかのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0095】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0096】
多糖類としては、たとえば、グルコアミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体または上述の多糖類の硫酸化された、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容可能なそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウム塩がある。
【0097】
抗体は、基本的な構造が共通している、免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。それらはアミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能ユニットは、免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIgユニットのみを含む)であり;分泌型抗体は、また、IgAとして2つのIgユニットを有する二量体型、硬骨魚IgMのような4つのIgユニットを有する四量体型または哺乳類IgMのような5つのIgユニットを有する五量体型があり得る。
【0098】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖;システイン残基の間のジスルフィド結合により結合された2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖からなる「Y」型分子である。各重鎖は約440アミノ酸長であり;各軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、それらの折り畳みを安定化する鎖内(intrachain)ジスルフィド結合を含む。各鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは、約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて、異なったカテゴリ(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインとその他の電荷アミノ酸の間の相互作用により一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0099】
α、δ、ε、γ、およびμで示される5つの型の哺乳動物Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の型は抗体のアイソタイプを定義しており;これらの鎖はそれぞれIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM抗体で見られる。
【0100】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なる;αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含むが、μおよびεは約550個のアミノ酸を含む。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)とを有する。ある種では、定常領域は、同じアイソタイプの全ての抗体において本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し;重鎖μおよびεは、4個の免疫グロブリン領域から構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なったB細胞で生成された抗体において異なるが、単一のB細胞またはB細胞クローンにより生成された全ての抗体に対しては同一である。各重鎖の可変領域は約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0101】
哺乳類において、λおよびκと指定される2つのタイプの免疫グロブリン軽鎖が存在する。軽鎖は2つの連続したドメイン:1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各々の抗体は、常に同一である2つの軽鎖を有する;哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλのうちの1タイプのみ存在する。
【0102】
全ての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所定の抗体の独特の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域により決定される。より具体的には、可変のループ状で、3つの軽鎖(VL)および3つの重鎖(VH)は、抗原への結合、すなわち、その抗原特異性に原因がある。これらのループは、相補性決定領域(CDR)として参照される。VHドメインおよびVLドメインからのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終の抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組み合わせであり、それぞれ単独のみではない。
【0103】
「抗体フラグメント」は、上記で定義したように、少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、フラグメントが誘導される完全な抗体と本質的に同一の機能および特異性を示す。パパインによる限定されたタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。それぞれ1つの完全なL鎖と約半分のH鎖とを含む2つの同一アミノ末端フラグメントは、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間でジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物と、補体結合と、FcR結合部位とを含む。限定されたペプシンの消化により、Fabフラグメント(piece)とH−H鎖間ジスルフィド結合を有するヒンジ領域との両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが生じる。F(ab’)2は、抗原結合に対して2価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断され得る。さらに、重鎖と軽鎖の可変領域は、単一鎖可変フラグメント(scFv)を形成するために共に縮合できる。
【0104】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩がある。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類金属、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)を有する塩であり、ここで、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されるC6〜C10ヘテロアリール基である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17編、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0105】
薬学的に許容可能な溶媒和物は、たとえば、水和物である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8