(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335783
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】共重合体、単量体組成物、樹脂溶液及び樹脂膜
(51)【国際特許分類】
C08F 220/18 20060101AFI20180521BHJP
C08F 220/30 20060101ALI20180521BHJP
C08F 220/32 20060101ALI20180521BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
C08F220/18
C08F220/30
C08F220/32
C09D133/06
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-524803(P2014-524803)
(86)(22)【出願日】2013年7月8日
(86)【国際出願番号】JP2013068678
(87)【国際公開番号】WO2014010565
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-156169(P2012-156169)
(32)【優先日】2012年7月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】辻村 優実
(72)【発明者】
【氏名】小林 将行
(72)【発明者】
【氏名】市川 貴生
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 充雄
【審査官】
松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−272773(JP,A)
【文献】
特開2010−250271(JP,A)
【文献】
特開2011−162624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00 − 220/70
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニルフェニル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位と、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位と、エポキシ基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位とを含む共重合体であって、前記ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物が、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートであり、前記エポキシ基含有不飽和化合物が、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする共重合体。
【請求項2】
前記フェニルフェニル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位を5mol%〜70mol%、前記ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位を5mol%〜80mol%及び前記エポキシ基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位を5mol%〜60mol%含むことを特徴とする請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
前記エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸グリシジル及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の共重合体。
【請求項4】
フェニルフェニル(メタ)アクリレートを1質量%〜45質量%、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物を1質量%〜43質量%、エポキシ基含有不飽和化合物を1質量%〜40質量%、反応溶媒を45質量%〜90質量%、及び重合開始剤を0.2質量%〜20質量%含む単量体組成物であって、前記ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物が、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートであり、前記エポキシ基含有不飽和化合物が、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする単量体組成物。
【請求項5】
前記エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸グリシジル及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートからなる群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の単量体組成物。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の単量体組成物を重合して得られることを特徴とする共重合体。
【請求項7】
請求項1〜3及び6のいずれか一項に記載の共重合体を含むことを特徴とする樹脂溶液。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の単量体組成物を70〜100℃で5〜10時間反応させ、固形分濃度を20〜50質量%に調整する樹脂溶液の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の樹脂溶液又は請求項8に記載の方法で得られた樹脂溶液を基板上に塗布し、乾燥する樹脂膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた透明性と高屈折率が求められる用途、詳しくは液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品の保護膜や層間絶縁膜の形成、マイクロレンズ又はマイクロレンズアレイの形成、光導波路の形成などに好適な共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
高屈折率材料を得るための方法には、有機化合物に硫黄原子を導入する方法や、酸化チタンや酸化ジルコニウムなどの無機粒子を有機成分(ポリマーなど)と複合化(コンポジット化)する方法などが知られている。しかし、硫黄原子を大量に導入すると、臭気の問題が生じたり、原料中の不純物から副生するジスルフィドにより安定性が低下するといった問題が生じる場合がある。さらに、無機粒子と有機成分とのコンポジット化では粒子の凝集に伴う問題(例えば、透明性の低下)が生じる場合がある。
【0003】
また、芳香族骨格の導入により高屈折率材料を得る試みもなされている。特に、芳香族骨格の中でもフルオレン骨格(9,9−ビスフェニルフルオレン骨格)は、高屈折率、高耐熱性などの特性を有するため、このようなフルオレン骨格を有する化合物を用いた高屈折率材料が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、9,9−ビス(グリシジルオキシC
2〜4アルコキシフェニル)フルオレンなど)、アルコキシシラン類及び光酸発生剤で構成された光重合性樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、フルオレン化合物、金属アルコキシド及び光酸発生剤を含む重合性組成物を硬化させた高屈折率材料が開示されている。
しかし、これらのフルオレン骨格を有する化合物を用いた高屈折率材料は、光酸発生剤を用いているため、これらの残存による透明性の低下が懸念される。
【0005】
さらに、従来、TFT型液晶表示素子、磁気ヘッド素子、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品の劣化や損傷を防止するための保護膜の形成、層状に配置される配線の間を絶縁するための層間絶縁膜の形成、マイクロレンズ又はマイクロレンズアレイの形成、光導波路の形成には、感光性樹脂組成物が用いられてきた。この感光性樹脂組成物には、優れた透明性や集光度の観点から高い屈折率が求められる。
【0006】
そのような感光性樹脂組成物として、特許文献3には、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートとエポキシ基含有不飽和化合物とを重合成分として含む共重合体及びキノンジアジド基含有化合物を含有するものが開示されているが、これは屈折率が低く、透明性も不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−314692号公報
【特許文献2】特開2011−190179号公報
【特許文献3】特開2007−033518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、上記のような実情を考慮してなされたものであり、優れた透明性と高い屈折率とを併せ持つ共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、フェニルフェニル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位と、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位と、エポキシ基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位とを含む共重合体が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の[1]〜[13]で示される。
[1]フェニルフェニル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位と、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位と、エポキシ基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位とを含むことを特徴とする共重合体。
[2]前記フェニルフェニル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位を5mol%〜70mol%、前記ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位を5mol%〜80mol%及び前記エポキシ基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位を5mol%〜60mol%含むことを特徴とする[1]に記載の共重合体。
[3]前記ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物が、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の共重合体。
[4]前記エポキシ基含有不飽和化合物が、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の共重合体。
[5]前記エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸グリシジル及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートからなる群から選択されることを特徴とする[4]に記載の共重合体。
[6]フェニルフェニル(メタ)アクリレートを1質量%〜45質量%、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物を1質量%〜43質量%、エポキシ基含有不飽和化合物を1質量%〜40質量%、反応溶媒を45質量%〜90質量%、及び重合開始剤を0.2質量%〜20質量%含むことを特徴とする単量体組成物。
[7]前記ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物が、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートであることを特徴とする[6]に記載の単量体組成物。
[8]前記エポキシ基含有不飽和化合物が、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする[6]又は[7]に記載の単量体組成物。
[9]前記エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸グリシジル及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートからなる群から選択されることを特徴とする[8]に記載の単量体組成物。
[10][6]〜[9]のいずれかに記載の単量体組成物を重合して得られることを特徴とする共重合体。
[11][1]〜[5]及び[10]のいずれかに記載の共重合体を含むことを特徴とする樹脂溶液。
[12][6]〜[9]のいずれかに記載の単量体組成物を70〜100℃で5〜10時間反応させ、固形分濃度を20〜50質量%に調整したことを特徴とする樹脂溶液。
[13][11]又は[12]に記載の樹脂溶液を基板上に塗布し、乾燥して得られることを特徴とする樹脂膜。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた透明性と高い屈折率とを併せ持つ共重合体を提供することができる。この共重合体から形成された樹脂膜は、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品の保護膜や層間絶縁膜の形成、マイクロレンズ又はマイクロレンズアレイの形成、光導波路の形成などに好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の共重合体について詳述する。
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
本発明の共重合体は、フェニルフェニル(メタ)アクリレート[ビフェニル(メタ)アクリレートとも呼ばれる]と、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物と、エポキシ基含有不飽和化合物とを重合させて得られる、フェニルフェニル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位と、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位と、エポキシ基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位とを含むものである。共重合体において、フェニルフェニル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位は5mol%〜70mol%含まれることが好ましく、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位は5mol%〜80mol%含まれることが好ましく、エポキシ基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位は5mol%〜60mol%含まれることが好ましい。フェニルフェニル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位が5mol%未満であると、屈折率を向上させる効果が得られない場合があり、一方、70mol%を超えると、得られる共重合体の溶剤溶解性が低下し、濁りが生じたり取り扱いが困難になる場合がある。ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位が5mol%未満であると、エポキシ基との硬化反応が不十分になる場合があり、一方、80mol%を越えると、透明性が低下する傾向がある。エポキシ基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位が5mol%未満であると、水酸基との硬化反応が不十分になる場合があり、一方、60mol%を超えると、屈折率が低下する傾向がある。本発明の共重合体は、より好ましくは、フェニルフェニル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位が10mol%〜65mol%、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位が10mol%〜70mol%、エポキシ基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位が10mol%〜50mol%含まれる。特に、感光性樹脂として用いる場合には、樹脂膜に良好なアルカリ溶解性を付与する観点から、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物由来の繰り返し単位は50mol%〜70mol%含まれることが好ましい。
【0012】
本発明におけるフェニルフェニル(メタ)アクリレートの具体例としては、o−フェニルフェニルアクリレート、m−フェニルフェニルアクリレート、p−フェニルフェニルアクリレート、o−フェニルフェニルメタクリレート、m−フェニルフェニルメタクリレート及びp−フェニルフェニルメタクリレートが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、重合反応中における立体障害が少ないという点で、p−フェニルフェニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0013】
本発明におけるヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物とは、ヒドロキシフェニル基及びエチレン性二重結合を有する化合物であり、その具体例としては、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレートなどのヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン、イソプロペニルフェノール、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、ビニルヒドロキシフェニルエーテルが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、樹脂膜にしたときの光透過率及び耐熱性という点で、p−ヒドロキシフェニルアクリレート及びp−ヒドロキシフェニルメタクリレートが好ましい。
【0014】
本発明におけるエポキシ基含有不飽和化合物とは、エポキシ基及びエチレン性二重結合を有する化合物であり、その具体例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、α−エチルアクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、イソプロペニルグリシジルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物や、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどの脂環式エポキシ基含有不飽和化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でもエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、重合反応性、樹脂膜としたときの光透過率及び耐熱性の点から、メタクリル酸グリシジル及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートから選択されるエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
【0015】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合性モノマーを併用してもよい。そのような重合性モノマーとしては、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、ビニルトルエン、ビニル安息香酸等が挙げられる。
【0016】
本発明の共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で好ましくは5,000〜60,000であり、より好ましくは8,000〜5,0000である。重量平均分子量が5,000未満であると、樹脂膜が脆くなる場合があり、一方、60,000を超えると樹脂が溶剤に溶けない場合がある。
【0017】
なお、本発明における共重合体の分子量の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記条件にて測定し、ポリスチレン換算にて算出されるものである。GPCの立ち上がり時間から15分までを計算範囲として、重量平均分子量及び分子量分布を計算する。
カラム:ショウデックス(登録商標) LF−804+LF−804
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折計(ショウデックス(登録商標) RI−101)
流速:1mL/min
【0018】
本発明の共重合体を得るための重合反応は特に制限されず、従来行われている通常のラジカル重合法を適用することができる。具体的には、反応溶媒中に、フェニルフェニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物及びエポキシ基含有不飽和化合物を所望の比率で溶解し、重合開始剤を混合して70〜100℃程度で、5〜10時間程度重合させることにより、共重合体が得られる。
反応溶媒を使用せずに、フェニルフェニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物及び重合開始剤だけで塊状重合を行ってもよい。
【0019】
反応溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、ノルマルプロピルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸3−メトキシブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、乳酸エチルなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などのアゾ系開始剤等や、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物が挙げられる。
【0021】
また、本発明の単量体組成物は、反応溶媒を含む場合、フェニルフェニル(メタ)アクリレートを1質量%〜45質量%、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物を1質量%〜43質量%、エポキシ基含有不飽和化合物を1質量%〜40質量%、反応溶媒を45質量%〜90質量%、及び重合開始剤を0.2質量%〜20質量%含むものである。好ましくは、フェニルフェニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル基含有不飽和化合物、エポキシ基含有不飽和化合物の比が本発明の共重合体中の前記繰り返し単位の比に対応するものであり、これらの化合物の合計を100質量部とした場合、反応溶媒が500〜700質量部、重合開始剤が5〜15質量部である。この単量体組成物には、上述した他の重合性モノマーが含まれてもよい。
【0022】
本発明の単量体組成物は、上述した共重合体の原料として使用することができる。この単量体組成物を重合して得られる共重合体は、優れた透明性と高い屈折率とを併せ持つ。この共重合体から形成された樹脂膜は、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品の保護膜や層間絶縁膜の形成、マイクロレンズ又はマイクロレンズアレイの形成、光導波路の形成などに好適に利用することができる。
樹脂膜は、本発明の共重合体を含む樹脂溶液を塗布して乾燥させるなど、通常用いられる方法により得ることができる。本発明の樹脂溶液は、例えば、本発明の単量体組成物を70〜100℃で5〜10時間反応させ、蒸留等により固形分濃度を20〜50質量%に調整することにより得ることができる。樹脂溶液の固形分濃度は好ましくは25〜45質量%である。
【実施例】
【0023】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
還流冷却器及び攪拌機を備えたフラスコに、フェニルフェニルメタクリレート69質量部、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート17質量部、メタクリル酸グリシジル14質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート600質量部及びジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)10質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながら液温を80℃まで上昇させ、80℃で6時間反応させた。ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによりモノマーの消失を確認し、100℃まで昇温して30分間エージングを行った。100℃、減圧下でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを蒸留により取り除き、固形分濃度を30質量%に調整して樹脂溶液を得た。
樹脂溶液中に含まれる共重合体の重量平均分子量(Mw)は8,800、分子量分布(Mw/Mn)は3.6であった。
【0024】
<実施例2>
還流冷却器及び攪拌機を備えたフラスコに、フェニルフェニルメタクリレート38質量部、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート47質量部、メタクリル酸グリシジル15質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート600質量部及びジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)10質量部を仕込み、実施例1と同様に反応を行って樹脂溶液を得た。
樹脂溶液中に含まれる共重合体の重量平均分子量(Mw)は8,400、分子量分布(Mw/Mn)は3.5であった。
【0025】
<実施例3>
還流冷却器及び攪拌機を備えたフラスコに、フェニルフェニルメタクリレート13質量部、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート70質量部、メタクリル酸グリシジル16質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート600質量部及びジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)10質量部を仕込み、実施例1と同様に反応を行って樹脂溶液を得た。
樹脂溶液中に含まれる共重合体の重量平均分子量(Mw)は8,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.2であった。
【0026】
<比較例1>
還流冷却器及び攪拌機を備えたフラスコに、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート56質量部、メタクリル酸グリシジル44質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート600質量部及びジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)8質量部を仕込み、実施例1と同様に反応を行って樹脂溶液を得た。
樹脂溶液中に含まれる共重合体の重量平均分子量(Mw)は8,800、分子量分布(Mw/Mn)は2.8であった。
【0027】
(1)透過率の測定
実施例1〜3及び比較例1で得られた樹脂溶液を、ガラス上に厚さ3μmになるよう塗布し、オーブンにて80℃で30分乾燥した後、250℃で3時間加熱した。得られた樹脂膜付きガラスについて、分光光度計を使用して波長400nmでの透過率を測定した。結果を表1に示した。
【0028】
(2)屈折率の測定
実施例1〜3及び比較例1で得られた樹脂溶液を、シリコンウエハー上に厚さ1μmになるように塗布し、オーブンにて80℃で30分乾燥した。得られた樹脂膜付きシリコンウエハーについて、卓上エリプソメーター FE−5000Sを使用して波長589nmでの屈折率を測定した。結果を表1に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
なお、実施例2及び3で得られた樹脂溶液を、シリコンウエハー上に厚さ1μmになるように塗布し、オーブンにて80℃で30分乾燥させた後、これらを2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に90秒浸漬してアルカリ溶解性を評価したところ、実施例3の樹脂膜は完全に溶解したが、実施例2の樹脂膜にはやや溶け残りが見られた。
【0031】
以上より、実施例1〜3で得られた共重合体から形成された樹脂膜は、優れた透明性と高い屈折率とを併せ持っていることが分かった。それに対し、比較例1で得られた共重合体から形成された樹脂膜は、屈折率が低く、さらに透明性も劣ることが分かった。また、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート由来の繰り返し単位を多く含む樹脂膜は、アルカリ溶解性が良好であることも分かった。このようにアルカリ溶解性が良好な共重合体は、感光性樹脂組成物の樹脂成分として好適に利用できる。