【実施例】
【0074】
以下に実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
(担体の調製例1)
プロテインA固定化担体の調製
4%アガロースビーズとして、水に置換したLow density Glyoxal 4 Rapid Run(ABT社)を湿潤体積として4mL分を反応容器にとり、水にてスラリー体積を5mLとした後に、0.25Mクエン酸ナトリウム(pH3.5)溶液を1mL加えた。更に0.8M過ヨウ素酸ナトリウム2mL加え、室温で0.5時間転倒攪拌し、アルデヒド基が導入された担体を得た。この担体のスラリーを水およびリン酸緩衝液としてダルベッコPBS(−)(日水)(以下、PBS)で十分に洗浄し、回収後にスラリーの量を5mLとした。次に0.1Mリン酸ナトリウム、1Mクエン酸ナトリウム、0.3M塩化ナトリウムの混合溶液(pH6.8)を5mL加え、混合した後に液量を調整し5.5mLとした。これに5N水酸化ナトリウム水溶液を加え担体のスラリーのpHを11.5〜12に調整した後、直ちに100mgのプロテインAを加えて2〜8℃の条件下で2.5時間攪拌した。1Mクエン酸溶液を用いて担体スラリーのpHを7〜5に調整した後に1Mのジメチルアミンボラン0.5mLを加え室温で一晩転倒攪拌した。水、0.1Mクエン酸、0.1M水酸化ナトリウム、およびPBSで十分に洗浄し、アガロースにプロテインAが共有結合で固定化(結合)されたプロテインA担体を得た(担体1)。なお、ここで用いたプロテインAは、国際公開公報WO2011/118699の実施例に基づき調製した。
【0076】
担体1について、抗体アフィニティー分離マトリックスとしての抗体結合容量、特に動的結合容量を測定した。具体的には、プロテインA担体に結合しないIgG3等の画分以外の負荷IgGの10%が漏出するまでにカラムに結合した抗体量をカラム中の担体体積で割った値から、担体1mL当たりのIgG吸着量を10%動的結合容量(Dynamic binding capacity;DBC)として算出した。クロマトグラフィー条件は以下に示すが、負荷時の流速は、0.4mL/minとし、接触時間6分の動的結合容量を求めた。なお、負荷以外の流速設定は、0.6mL/分(接触時間:4分)とした。
【0077】
担体1について、接触時間6分の抗体アフィニティー分離マトリックスとしての10%DBCは、56.0mgであった。
抗体アフィニティーリガンドに基づく10%DBC測定に用いたクロマトグラフィー条件カラム:ID 0.66cm x Height7cm(Omnifit社製)
流速:0.4mL/分(接触時間:6分)または0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(ヒト免疫グロブリンG)(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)
溶出液:50mM酢酸、0.1M塩化ナトリウム(pH3.75)
再生液:0.1M酢酸、1M塩化ナトリウム
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
【0078】
(担体の調製例2)
カルボキシル基導入担体へのプロテインAの固定化によるミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスの調製
4%アガロースビーズとして水に置換したLow density Glyoxal 4 Rapid Run(ABT社)を湿潤体積として4mLを反応容器にとり、水にてスラリー体積を5mLとした後に、0.25Mクエン酸ナトリウム(pH3.5)溶液を1mL加えた。次に0.1Mクエン酸と0.1Mグルタミン酸の混合溶液(pH3.5)を1mL加え攪拌した。更に0.8M過ヨウ素酸ナトリウム0.5mL加え、室温で1時間転倒攪拌してアルデヒド基を導入した。この担体のスラリーを冷水で100倍に希釈した1Mグルタミン酸/PBS(pH7)で5回洗浄し、回収後にスラリーの液量を5mLとした。ここに1Mグルタミン酸/PBS(pH7)を5mL添加し、室温で2時間転倒攪拌した後に、1Mのジメチルアミンボラン水溶液を0.5mL追加投入し一晩室温で転倒攪拌した。遠心して担体を沈降させた後に液面が6mLになるように上清を除去した中に、20mgの水素化ホウ素ナトリウムを直接加え、室温で更に2時間転倒攪拌した。水、0.1Mクエン酸、0.1M水酸化ナトリウム、および0.5MのNaClを添加したPBSで十分に洗浄し、グルタミン酸のアミノ基を介し還元的アミノ化法でアルデヒド基にカルボキシル基を導入したアガロース担体を得た。
【0079】
次に、カルボキシル基導入アガロース担体を0.1M MES、0.5M NaCl(pH6)(MESバッファー)で洗浄し液置換した後に、湿潤体積として4mLの同担体を反応容器にとりスラリー体積を5mLとした。ここに20mLのMESバッファー当たり0.25gのNHSを溶解し、続いて1.5gのEDCを溶解して調製したNHS/EDC溶液5mLを加え、室温で15分間転倒攪拌した後に、冷却したPBSで十分に洗浄し、カルボキシル基の一部がEDC/NHS化されたアガロース担体を得た。液量を7mLに調整し、80mgのプロテインAを加え2時間転倒攪拌した。これを0.1Nの水酸化ナトリウム溶液に置換、洗浄し、プロテインAと反応しなかったEDC/NHS化されたカルボキシル基を再生し、カルボキシル基を導入したプロテインA担体として、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを得た(担体2)。なお、ここで用いたプロテインAは、国際公開公報WO2011/118699の実施例に基づき調製した。
【0080】
担体2について、抗体アフィニティーリガンドに基づく抗体結合容量を測定した。測定方法は、担体の調製例1と同様であり、接触時間6分の10%DBCを求めた結果、10.2mgであった。
【0081】
次に、担体2について、陽イオン交換基に基づく抗体結合容量を測定した。抗体の負荷条件として、抗体アフィニティーリガンドであるプロテインAの抗体捕捉能力が殆どなく、陽イオン交換基として導入したカルボキシル基が機能しうる条件としてpH3.5の10mM酢酸緩衝液を用いた。陽イオン交換基はプロテインAリガンドと異なりIgG3等に選択性を示さないことから、負荷開始から全負荷IgGの10%が漏出するまでにカラムに結合した抗体量をカラム中の担体体積で割った値から、担体1mL当たりのIgG吸着量を10%DBCとして算出した。クロマトグラフィー条件は以下に示すが、負荷時の流速は、0.4mL/分とし、接触時間6分の動的結合容量を求めた。なお、負荷以外の流速設定は、0.6mL/分(接触時間:4分)とした。担体2について、陽イオン交換基の導入に基づく抗体溶出条件下での接触時間6分の10%DBCは、10.6mgであった。
【0082】
以上、陽イオン交換基の導入に基づく抗体結合容量が、抗体アフィニティーリガンドに基づく抗体結合容量よりやや高い本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスである担体2を得ることが出来た。
陽イオン交換基に基づく10%DBC測定に用いたクロマトグラフィー条件
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
流速:0.4mL/分(接触時間:6分)または0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(10mM酢酸:pH3.5)
平衡化液:10mM酢酸(pH3.5)
溶出液:10mM酢酸、0.5M塩化ナトリウム(pH3.5)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム
中和・再平衡化液:10mM酢酸(pH3.5)
【0083】
(担体の調製例3)
プロテインA導入担体へのカルボキシル基の固定化によるミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスの調製
プロテインA固定化担体として0.5Mの食塩水に置換したMabSelect SuRe(GEヘルスケア・バイオサイエンス社、担体3)にカルボキシル基を導入した。MabSelect SuReを担体3として、これを湿潤体積として4mLを反応容器にとりスラリー体積を5mLとした後に、0.25Mクエン酸ナトリウム(pH3.5)溶液を1mL加えた。次に0.1Mクエン酸、0.1Mグルタミン酸(pH3.5)溶液を1mL加え攪拌した。ここに0.8M過ヨウ素酸ナトリウム0.5mL加え、室温で1時間転倒攪拌してアルデヒド基を導入した。この担体スラリーを冷水で100倍に希釈した1Mグルタミン酸/PBS(pH7)で5回洗浄し、回収後にスラリーの液量を5mLとした。ここに1Mグルタミン酸/PBS(pH7)を5mL添加し、室温で2時間転倒攪拌した後に、1Mのジメチルアミンボラン水溶液を0.5mL追加投入し一晩室温で転倒攪拌した。遠心して担体を沈降させた後に液面が6mLになるように上清を除去した中に、20mgの水素化ホウ素ナトリウムを直接加え、室温で更に2時間転倒攪拌した。水、0.1Mクエン酸、0.1M水酸化ナトリウム、および0.5MのNaClを添加したPBSで十分に洗浄し、グルタミン酸のアミノ基を介し還元的アミノ化法でアルデヒド基にカルボキシル基を導入したプロテインA担体として、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを得た(担体4)。
【0084】
担体4について、抗体アフィニティーリガンドに基づく抗体結合容量を測定した。測定方法は、担体の調製例1と同様であり、接触時間6分の10%DBCを求めた結果、42.4mgであった。
【0085】
次に、担体4について、陽イオン交換基に基づく抗体結合容量を測定した。測定方法は、実施例1と同様であり、接触時間6分の10%DBCを求めた結果、4.2mgであった。
【0086】
以上、陽イオン交換基の導入に基づく抗体結合容量が、抗体アフィニティーリガンドに基づく抗体結合容量の約1/10である本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスである担体4を得ることが出来た。
【0087】
また、同様に、上記担体4の材料に使用したプロテインA固定化担体である担体3について、抗体アフィニティー分離マトリックスとしての抗体結合容量を測定した結果、接触時間6分の10%DBCは、50.3mgであった。
【0088】
(比較例1)
プロテインA固定化担体(担体1)の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離
担体の調製例1で調製し、評価に用いたOmnifit社製のカラム(ID 0.66cm x Height 7cm)に充填した担体1を用いて、これに中性条件下でヒトポリクローナル抗体を担体1mL当たり7mg負荷し、酸性条件下で各種イオン強度の溶出バッファーで抗体を溶出させた(凝集体分離用クロマトグラフィー条件1)。
【0089】
各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から蛋白質含量と収率(Yield)を、更に、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めて単量体含量(Monomer content)および単量体収率(Monomer Yield)を算出した。この時、担体1からの溶出画分のエリア値の総和を100%として、各溶出画分を評価した。なお、アフィニティー分離マトリックスからの溶出フラクション中における凝集体形成阻止を行う目的で、各溶出液に終濃度が0.05M以上となるようにアルギニンを添加し、また、pH5のリン酸ナトリウム溶液を用いて各溶出液のpHを5〜6として、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。なお、各クロマトグラフィー条件は、以下に示した。
凝集体分離用クロマトグラフィー条件1(酸性pH、ステップワイズ塩溶出)
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
流速:0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)(3CV、CV:カラム体積)
負荷:6.8mL
負荷後洗浄:PBS(pH7.4)(5CV)
溶出前洗浄液:10mM Tris/HCl(pH7)(5CV)
溶出液1:10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液2:150mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液3:300mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(4CV)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム(4CV)
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
ゲルろ過クロマトグラフィー条件
カラム:Superdex 200 10/300 GL (ID 1cm x Height 30cm)(GEヘルスケア・バイオサイエンス社製)
流速:0.5mL/分
検出波長:214nm
負荷液:100μL / injection(吸光度値が1を超えない範囲に希釈)
溶離液:PBS(pH7.4)
【0090】
担体1の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離特性の評価結果を表1に示した。
【0091】
【表1】
【0092】
(実施例1)
ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス(担体2)の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離
担体の調製例2で調製し、評価に用いたOmnifit社製のカラム(ID 0.66cm x Height 7cm)に充填した担体2を用いて、比較例1と同様に、これに中性条件下でヒトポリクローナル抗体を担体1mL当たり7mg負荷し、酸性条件下で各種イオン強度の溶出バッファーで抗体を溶出させた。ただし、溶出液2のイオン強度を3段階として評価した(凝集体分離用クロマトグラフィー条件2)。
【0093】
各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から蛋白質含量と収率(Yield)を、更に、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めて単量体含量(Monomer content)および単量体収率(Monomer Yield)を算出した。この時、比較例1で評価した担体1からの溶出画分のエリア値の総和を100%として、各溶出画分を評価した。なお、アフィニティー分離マトリックスからの溶出フラクション中における凝集体形成阻止を行う目的で、各溶出液に終濃度が0.05M以上となるようにアルギニンを添加し、また、pH5のリン酸ナトリウム溶液を用いて各溶出液のpHを5〜6として、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。なお、凝集体分離用クロマトグラフィー条件を以下に示したほか、ゲルろ過クロマトグラフィーは、比較例1と同様に評価した。凝集体分離用クロマトグラフィー条件2(酸性pH、ステップワイズ塩溶出)
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
流速:0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)(3CV)
負荷:6.8mL
負荷後洗浄:PBS(pH7.4)(5CV)
溶出前洗浄液:10mM Tris/HCl(pH7)(5CV)
溶出液1:10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液2:150mM、175mM、または、200mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液3:300mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(4CV)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム(4CV)
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
担体2の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離特性の評価結果を表2に示した。
【0094】
【表2】
【0095】
以上、表1および表2の結果から、担体1は、酸性溶出時にNaClのイオン強度がゼロの場合[表1における溶出フラクション:溶出液1(0mM NaCl)]でも99%以上の抗体が溶出するのに対し、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスである担体2は、酸性溶出条件下[表2における溶出フラクション:溶出液2(150mM、175mM、200mM NaCl)]において、陽イオン交換基の機能によりイオン強度依存的溶出挙動を示し、プロテインAリガンドと陽イオン交換基の協奏効果として、モノマー選択性が有意に向上していることが確認できた。よって、本発明の担体2はプロテインAリガンドと陽イオン交換基のそれぞれの特性が協奏的に発現し、1クロマト工程で高い特異性と高いモノマー選択性が発揮されていることが確認できた。
【0096】
なお、担体2は、プロテインAからの抗体溶出pH条件において、陽イオン交換基に基づく抗体結合容量がプロテインAアフィニティーリガンドよりもやや高く、抗体の溶出には一定濃度以上の高いイオン強度が必要であった。
【0097】
(比較例2)
プロテインA固定化担体(担体3)の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離
担体の調製例3で評価に用いたOmnifit社製のカラム(ID 0.66cm x Height 7cm)に充填した担体3を用いて、これに中性条件下でヒトポリクローナル抗体を担体1mL当たり7mg負荷し、酸性条件下で各種イオン強度の溶出バッファーで抗体を溶出させた(凝集体分離用クロマトグラフィー条件3)。
【0098】
各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から蛋白質含量と収率(Yield)を、更に、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めて単量体含量(Monomer content)および単量体収率(Monomer Yield)を算出した。この時、担体3からの溶出画分のエリア値の総和を100%として、各溶出画分を評価した。なお、アフィニティー分離マトリックスからの溶出フラクション中における凝集体形成阻止を行う目的で、各溶出液に終濃度が0.05M以上となるようにアルギニンを添加し、また、pH5のリン酸ナトリウム溶液を用いて各溶出液のpHを5〜6として、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。なお、凝集体分離用クロマトグラフィー条件を以下に示したほか、ゲルろ過クロマトグラフィーは、比較例1と同様に評価した。
凝集体分離用クロマトグラフィー条件3(酸性pH、ステップワイズ塩溶出)
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
流速:0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)(3CV)
負荷:6.8mL
負荷後洗浄:PBS(pH7.4)(5CV)
溶出前洗浄液:10mM Tris/HCl(pH7)(5CV)
溶出液1:10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液2:50mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液3:300mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(4CV)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム(4CV)
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
【0099】
担体3の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離特性の評価結果を表3に示した。なお、溶出液2までに全ての抗体が溶出されたため、溶出液2までのデータを表3に示した。
【0100】
【表3】
【0101】
(実施例2)
ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス(担体4)の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離
担体の調製例3で評価に用いたOmnifit社製のカラム(ID 0.66cm x Height 7cm)に充填した担体4を用いて、比較例2と同様に、これに中性条件下でヒトポリクローナル抗体を担体1mL当たり7mg負荷し、酸性条件下で各種イオン強度の溶出バッファーで抗体を溶出させた。ただし、溶出液2のイオン強度を3段階として評価した(凝集体分離用クロマトグラフィー条件4)。
【0102】
各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から蛋白質含量と収率(Yield)を、更に、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めて単量体含量(Monomer content)および単量体収率(Monomer Yield)を算出した。この時、比較例2で評価した担体3からの溶出画分のエリア値の総和を100%として、各溶出画分を評価した。なお、アフィニティー分離マトリックスからの溶出フラクション中における凝集体形成阻止を行う目的で、各溶出液に終濃度が0.05M以上となるようにアルギニンを添加し、また、pH5のリン酸ナトリウム溶液を用いて各溶出液のpHを5〜6として、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。なお、凝集体分離用クロマトグラフィー条件を以下に示したほか、ゲルろ過クロマトグラフィーは、比較例1と同様に評価した。凝集体分離用クロマトグラフィー条件4(酸性pH、ステップワイズ塩溶出)
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
流速:0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)(3CV)
負荷:6.8mL
負荷後洗浄:PBS(pH7.4)(5CV)
溶出前洗浄液:10mM Tris/HCl(pH7)(5CV)
溶出液1:10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液2:25mM、50mM、または75mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液3:300mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(4CV)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム(4CV)
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
【0103】
担体4の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離特性の評価結果を表4に示した。なお、比較例2の表3と比較するため、本実施例においても溶出液2までの結果を表4に示した。
【0104】
【表4】
【0105】
以上、表3および表4の結果から、担体3は、酸性溶出時にNaClのイオン強度がゼロの場合[表3における溶出フラクション:溶出液1(0mM NaCl)]でも99%以上の抗体が溶出するのに対し、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスである担体4は、酸性溶出条件下[表4における溶出フラクション:溶出液1(0mM NaCl)および溶出液2(25mM、50mM、75mM NaCl)]において、陽イオン交換基の機能によりイオン強度依存的溶出挙動を示し、プロテインAリガンドと陽イオン交換基の協奏効果として、モノマー選択性が有意に向上していることが確認できた。よって、本発明の担体4はプロテインAリガンドと陽イオン交換基のそれぞれの特性が協奏的に発現し、1クロマト工程で高い特異性と高いモノマー選択性が発揮されていることが確認できた。
【0106】
なお、担体4は、プロテインAからの抗体溶出pH条件において、陽イオン交換基に基づく抗体結合容量が、プロテインAアフィニティーリガンドに基づく抗体結合容量の約1/10であり、溶出pHが3.5の場合には、NaClのイオン強度がゼロの場合でも80%以上の抗体が溶出し、実施例1と比較して殆ど全ての抗体を溶出させるイオン強度が低かった。
【0107】
(比較例3)
プロテインA固定化担体(担体3)の酸性pH依存的溶出と凝集体の分離
担体の調製例3で評価に用いたOmnifit社製のカラム(ID 0.66cm x Height 7cm)に充填した担体3を用いて、これに中性条件下でヒトポリクローナル抗体を担体1mL当たり7mg負荷し、酸性条件下で低イオン強度の条件下、各種酸性溶出pHにて抗体を溶出させた(凝集体分離用クロマトグラフィー条件5)。
【0108】
各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から蛋白質含量と収率(Yield)を、更に、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めて単量体含量(Monomer content)および単量体収率(Monomer Yield)を算出した。この時、各クロマトの各々の溶出画分のエリア値の総和を100%として、各溶出pH条件の差異を評価した。なお、アフィニティー分離マトリックスからの溶出フラクション中における凝集体形成阻止を行う目的で、各溶出液に終濃度が0.05M以上となるようにアルギニンを添加し、また、pH5のリン酸ナトリウム溶液を用いて各溶出液のpHを5〜6として、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。なお、凝集体分離用クロマトグラフィー条件を以下に示したほか、ゲルろ過クロマトグラフィーは、比較例1と同様に評価した。
凝集体分離用クロマトグラフィー条件5(酸性pH溶出)
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
流速:0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)(3CV)
負荷:6.8mL
負荷後洗浄:PBS(pH7.4)(5CV)
溶出液:10mM酢酸(pH3.25,pH3.5,または、pH3.75)(8CV)
再生液: 0.1M酢酸(4CV)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム(4CV)
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
【0109】
担体3の酸性pH依存的溶出と凝集体の分離特性の評価結果を表5に示した。
【0110】
【表5】
【0111】
表5の結果から、プロテインA固定化担体が元来有する緩やかなモノマー選択性の発現により、吸着IgGの一部が担体に残るように溶出pHを選定[表5における溶出フラクション:溶出液(pH3.75)]することにより、溶出液中のモノマー含量を増加させることが出来ることが確認できた。しかしながら、表4の結果として示される本発明の担体4[表4における溶出フラクション:溶出液1(0mM NaCl)+溶出液2(25mM NaCl)]と比較して単量体(モノマー)収率の低下割合が大きく、単量体(モノマー)含量の増加の割合も低かった。よって、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスは、抗体アフィニティー分離マトリックスと比較して、高い単量体(モノマー)収率で、高い単量体(モノマー含量)を得ることの出来る優れた特性を有することが確認された。
【0112】
(比較例4)
プロテインA固定化担体と陽イオン交換クロマト担体連結体の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離
カルボキシル基をリガンドに有する陽イオン交換クロマトグラフィー担体であるCM Sepharose Fast Flow(GEヘルスケア・バイオサイエンス社)を担体5とし、同社のカラム(ID 0.5cm x Height 2.5cm)に充填し、0.5mL容のミニカラムを調製した。これを担体の調製例3で評価に用いたOmnifit社製のカラム(ID 0.66cm x Height 7cm)に充填した担体3カラムの直下に接続し連結カラムとした(担体6)。これに中性条件下でヒトポリクローナル抗体を担体3カラム1mL当たり10mg負荷し、酸性条件下で各種イオン強度の溶出バッファーで抗体を溶出させた(凝集体分離用クロマトグラフィー条件6)。
【0113】
各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から蛋白質含量と収率(Yield)を、更に、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めて単量体含量(Monomer content)および単量体収率(Monomer Yield)を算出した。この時、比較例3の担体3からの溶出画分のエリア値の総和を100%として、各溶出画分を評価した。なお、アフィニティー分離マトリックスからの溶出フラクション中における凝集体形成阻止を行う目的で、各溶出液に終濃度が0.05M以上となるようにアルギニンを添加し、また、pH5のリン酸ナトリウム溶液を用いて溶出液のpHを5〜6として、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。なお、凝集体分離用クロマトグラフィー条件を以下に示したほか、ゲルろ過クロマトグラフィーは、比較例1と同様に評価した。
凝集体分離用クロマトグラフィー条件6(酸性pH、ステップワイズ塩溶出)
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
および、ID 0.5cm x Height 2.5cm(GEヘルスケア・バイオサイエンス社製)
流速:0.4mL/分(接触時間:6分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)(3CV)
負荷:9.6mL
負荷後洗浄:PBS(pH7.4)(5CV)
溶出前洗浄液:10mM Tris/HCl(pH7)(5CV)
溶出液1:10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液2:25mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液3:250mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
再生液:0.1M酢酸(4CV)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム(4CV)
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
【0114】
担体6とした担体3と担体5の連結カラムの酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離特性の評価結果を表6に示した。
【0115】
【表6】
【0116】
表6の結果から、プロテインA固定化担体(担体3)と陽イオン交換クロマトグラフィー担体(担体5)を直列に連結したカラムは、モノマー選択性が低いほか、pH3.5で250mMまでイオン強度を上げても[表6における溶出フラクション:溶出液1+2+3]全抗体回収率が50%にも達しなかった。これに対し、表4に示すように、実施例2で示した本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスである担体4[表4における溶出フラクション:溶出液1(0mM NaCl)+溶出液2(25mM NaCl)]は、優れたモノマー選択性と高い回収率を達成しうることが確認できた。これらの結果から、プロテインAリガンドと陽イオン交換基が同一担体上に近接して存在することが、ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスとして重要であり、2種のリガンドが近傍で協奏的に機能することで高い回収率で、高いモノマー選択性を発揮しうることが確認された。
【0117】
以上、本発明により、ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスとして、1クロマトグラフィー工程でプロテインAリガンドと陽イオン交換体の協奏的作用により、高い回収率で、単量体(モノマー)含量を向上することのできる新規分離モードの担体および使用方法が提供され、抗体の精製の効率化への貢献が期待できる。