特許第6335785号(P6335785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335785ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスとそれを用いた精製方法および標的分子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335785
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスとそれを用いた精製方法および標的分子
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/16 20060101AFI20180521BHJP
   B01D 15/26 20060101ALI20180521BHJP
   C07K 1/18 20060101ALN20180521BHJP
   C07K 1/22 20060101ALN20180521BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20180521BHJP
【FI】
   C07K1/16
   B01D15/26
   !C07K1/18
   !C07K1/22
   !C07K16/00
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-532927(P2014-532927)
(86)(22)【出願日】2013年8月19日
(86)【国際出願番号】JP2013072065
(87)【国際公開番号】WO2014034457
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2016年6月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-193069(P2012-193069)
(32)【優先日】2012年9月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】水口 和信
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−517942(JP,A)
【文献】 特表2008−505851(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/071208(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/081898(WO,A1)
【文献】 特表2011−517462(JP,A)
【文献】 特表2008−502920(JP,A)
【文献】 GAGNON, P. et al.,"Cooperative multimodal retention of IgG, fragments, and aggregates on hydroxyapatite.",JOURNAL OF SEPARATION SCIENCE,2009年11月,Vol.32, No.22,P.3857-3865
【文献】 GAGNON, P.,"Technology trends in antibody purification.",JOURNAL OF CHROMATOGRAPHY A,2012年 1月20日,Vol.1221,P.57-70
【文献】 LACKMANN, M. et al.,"Purification and structural analysis of a murine chemotactic cytokine (CP-10) with sequence homology to S100 proteins.",THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1992年 4月15日,Vol.267, No.11,P.7499-7504
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
Science Direct
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基を同一の分離マトリックスに有し、抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基が共に、分離マトリックスに共有結合を介し固定化され
抗体アフィニティーリガンドがプロテインA、プロテインG、プロテインL、プロテインH、プロテインD、プロテインArp、プロテインFcγR、及びそれらを組換え発現させて得られる機能的改変体から選択される少なくとも1種であることを特徴とするミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス。
【請求項2】
標的分子の溶出pH条件下における陽イオン交換基に基づく動的結合容量が中性条件下における抗体アフィニティーリガンドに基づく動的結合容量の2倍以下である請求項1に記載のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス。
【請求項3】
抗体アフィニティーリガンドを有する分離マトリックスに陽イオン交換基を付加してなる請求項1または2に記載のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス。
【請求項4】
陽イオン交換基を有する分離マトリックスに抗体アフィニティーリガンドを付加してなる請求項1または2に記載のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス。
【請求項5】
抗体アフィニティーリガンドがプロテインA、プロテインG、プロテインL及びそれらを組換え発現させて得られる機能的改変体から選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス。
【請求項6】
抗体アフィニティーリガンドがプロテインA及びそれを組換え発現させて得られる機能的改変体から選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス。
【請求項7】
陽イオン交換基がカルボキシル基、および硫酸基から選択される少なくとも1種を含むリガンドである請求項1〜のいずれかに記載のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス。
【請求項8】
分離マトリックスの水不溶性担体基材が炭水化物およびその誘導体、合成ポリマー、並びにガラスから選択される少なくとも1種である請求項1〜のいずれかに記載のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス。
【請求項9】
分離マトリックスの基材の構造が多孔性ビーズ、モノリスまたは膜である請求項1〜のいずれかに記載のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを用いた標的分子の精製方法。
【請求項11】
標的分子の溶出pHが6以下である請求項10に記載のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを用いた標的分子の精製方法。
【請求項12】
標的分子の溶出pHが2以上である請求項10または11に記載のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを用いた標的分子の精製方法。
【請求項13】
標的分子が、免疫グロブリンG、免疫グロブリンG誘導体、またはFc含有分子である請求項1012のいずれかに記載のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを用いた標的分子の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的分子を特異的に精製するためのアフィニティー分離マトリックス、特にアフィニティーリガンドと他のリガンドが同時または連続的に単一なマトリックス上で機能しうる新規なミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス、該分離マトリックスを用いた精製方法、および標的分子に関する。
【背景技術】
【0002】
アフィニティーリガンドは、特定の分子に特異的に結合する機能を有しており、該リガンドを水不溶性担体に固定化してなるアフィニティー分離マトリックスは、生体成分や組換え体を含む微生物および哺乳類培養細胞から、有用物質の効率的な分離精製に利用されている。実際に産業的に利用されている抗体アフィニティーリガンドとして、例えばプロテインAやプロテインG、プロテインL等の微生物由来または、それらを組換え発現させて得られる機能的改変体(類縁物質)からなるペプチド性または蛋白質性リガンドや、ラクダ一本鎖抗体や抗体のFcレセプター等の組換え蛋白質性リガンド、およびチアゾール誘導体等の化学合成性リガンドが挙げられ、抗体医薬品等の精製に使用されている。抗体医薬品は、化学薬品に対しより低い毒性で、より高い特異性を示すことから、理想的な医薬品としてその需要が高まってきている。
【0003】
抗体医薬品の主成分であるモノクローナル抗体は、主に哺乳類培養細胞等を用いて組換え蛋白質として培養液中に発現し、数段のクロマトグラフィーや膜工程により高純度に精製された後に製剤化される。抗体医薬品には、免疫グロブリンGおよびその類縁体であり、一般的に抗体と称される分子の他、免疫グロブリン分子の定常領域であるFc領域と他の機能性蛋白質またはペプチドを融合してなるFc融合蛋白質(Fc含有分子)が含まれる。また、これら抗体医薬品は、微生物を宿主とし、その培養上清に分泌発現されるもの、菌体内または菌体外壁と菌体細胞膜の間に蓄積発現され、精製され、製剤化されるものも含まれる。
【0004】
この培養、精製、製剤化の工程で形成または残留する凝集体(2量体以上の多量体)が副作用の主要原因となるため、その低減が抗体医薬品生産の重要課題となっている。ここで単量体とは、たとえば抗体の場合、定常領域であるFc領域と可変領域からなる重鎖(H鎖)2分子と、可変領域からなる軽鎖(L鎖)2分子からなる4量体構造の抗体を1分子単位として定義される。この単位分子の多量体が凝集体とされ、抗体医薬品の副作用の主要因とされている。
【0005】
凝集体の生成抑制やその除去は、培養、精製、製剤化の工程で、複雑な管理手法や添加剤の使用により制御する試みがなされてきた。特に精製工程では、凝集体の生成を抑制する他にその除去が重要である。よって、精製工程では、簡便で効率的な凝集体除去技術の開発が求められてきている。
【0006】
抗体医薬品の精製工程は、特定の単位操作の組み合わせによる精製手法のパターン化(プラットフォーム化)が進み、その初期精製工程(回収工程)では、リガンドとしてプロテインAが水不溶性担体に固定化された、抗体アフィニティー分離マトリックス(プロテインA担体)が広く利用されている。中性条件下で抗体をプロテインA担体に吸着させ、酸性条件下で抗体を溶出させる手法が一般的に用いられているが、この溶出過程で酸性条件下に曝された抗体が変性し凝集体が形成されやすい。一般的には、プロテインAクロマトグラフィー工程の後段でイオン交換クロマトグラフィーや疎水性相互作用クロマトグラフィー等の組み合わせにより、凝集体等の不純物が除去されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、特許文献5)。
【0007】
しかしながら、プロテインAクロマトグラフィー工程後に凝集体含量が多い場合は、後段の不純物除去工程において、目的の単量体(モノマー)の収率低下に繋がることから、プロテインAクロマトグラフィー工程での凝集体形成を抑えようとする試みの他、更に、当該クロマトグラフィー工程での凝集体を除去する試みがなされている。
【0008】
プロテインAクロマトグラフィー工程は、通常、酸性溶出が行われるが、溶出pHが低い程、凝集体が形成されるリスクが高まるために、pH3前後の低いpH溶出が必要な抗体もpH3.5〜4付近で溶出できるようにプロテインAリガンドにタンパク質工学的に改変を加える試みが行われている(特許文献1)。
【0009】
また、プロテインAクロマトグラフィー工程の使用工程中で、凝集体の分離性を向上させる方法が検討されている。すなわち、溶出時のpHやイオン強度の最適化、さらには溶出ピークの前半部分と後半部分を分画する等の方法が提案されている。具体的には、プロテインA担体の特性として多量体化した抗体分子が、多量体化していない抗体分子よりも高い確率でプロテインAリガンドと接触するため、解離定数が僅かに低くなることや、疎水性の微妙な調節に基づく分離機構を利用した方法である(特許文献2、特許文献3、特許文献4)。しかし、これらの方法は厳密な制御が困難である上に分離能が低く一般的な分離手法としては用いられていない。
【0010】
上記のように抗体アフィニティー分離マトリックスは、抗体に高い特異性を示し高純度化が可能であるが、使用方法を厳密に設定しても単量体(モノマー)と凝集体の分離能が低いため、凝集体の除去工程としては限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4391830号
【特許文献2】WO2008/085988
【特許文献3】特表2010−507583
【特許文献4】WO2010/019493
【特許文献5】WO2010/141039
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Hober S. 他 著,「J.Chromatogr.B」,2007年,848巻,40−47頁
【非特許文献2】Low D. 他 著,「J.Chromatogr.B」,2007年,848巻,48−63頁
【非特許文献3】Roque A.C.A. 他 著,「J.Chromatogr.A」,2007年,1160巻,44−55頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、抗体またはFc含有標的分子精製工程の第一クロマトグラフィー工程において、アフィニティー精製の主要目的である抗体自体の高純度化と共に、モノマーの選択的分離特性を向上させ、凝集体除去に関し後段の不純物除去工程への負荷を低減できる新規分離材料とその分離手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、水不溶担体上に抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基(陽イオン交換リガンド)の両方を固定化することで、それぞれのリガンドが協奏的に作用し、抗体等のFc含有標的分子に特異的な吸着能と優れた凝集体除去能を併せ持つ分離マトリックスが得られることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスは、抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基を同一の分離マトリックスに有するミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスである。
【0016】
また、標的分子の溶出pH条件下における陽イオン交換基に基づく動的結合容量が中性条件下における抗体アフィニティーリガンドに基づく動的結合容量の2倍以下であることが好ましい。
【0017】
更に、抗体アフィニティーリガンドを有する分離マトリックスに陽イオン交換基を付加してなることが好ましい。
【0018】
また、陽イオン交換基を有する分離マトリックスに抗体アフィニティーリガンドを付加してなることが好ましい。
【0019】
抗体アフィニティーリガンドがプロテインA、プロテインG、プロテインL、プロテインH、プロテインD、プロテインArp、プロテインFcγR、抗体結合性合成リガンド及びそれら類縁物質から選択される少なくとも1種であることが好ましく、抗体アフィニティーリガンドがプロテインA、プロテインG、プロテインL及びそれら類縁物質から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
また、抗体アフィニティーリガンドがプロテインA及びそれら類縁物質から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
また、陽イオン交換基がカルボキシル基、および硫酸基から選択される少なくとも1種を含むリガンドであることが好ましい。
【0022】
分離マトリックスの水不溶性担体基材が炭水化物およびその誘導体、合成ポリマー、並びにガラスから選択される少なくとも1種であることが好ましく、分離マトリックスの基材の構造が多孔性ビーズ、モノリスまたは膜であることが好ましい。
【0023】
更に、本発明は、前記ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを用いた標的分子の精製方法である。
【0024】
標的分子の溶出pHが6以下であることが好ましく、標的分子の溶出pHが2以上であることが更に好ましい。
標的分子が、免疫グロブリンG、免疫グロブリンG誘導体、またはFc含有分子であることが好ましい。
【0025】
また、本発明は、本発明の精製方法で精製された標的分子である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、抗体等のFc含有標的分子精製工程の第一工程であるアフィニティークロマトグラフィー工程において、アフィニティー精製の主要目的である抗体自体の高純度化と共に、モノマーの選択的分離特性を向上させ、後段の不純物除去工程に対する負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスは、抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基が共に、分離マトリックス(本明細書中、水不溶性担体、担体ともいう)に共有結合を介し固定化されていることを特徴としている。
【0028】
本発明は、水不溶性担体に抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基を有するミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスであることから、予め一方が固定化された分離マトリックスを用いて調製することが出来る。すなわち、抗体アフィニティーリガンドを有する分離マトリックスに陽イオン交換基を導入する、または、陽イオン交換基を有する分離マトリックスに抗体アフィニティーリガンドを固定化することもできる。あるいは、水不溶性担体に両リガンドを同時に固定化することも出来る。
【0029】
以下に、本発明における抗体アフィニティーリガンド、陽イオン交換基、水不溶性担体、抗体アフィニティーリガンドおよび陽イオン交換基の担体への結合(固定化)等について詳細に説明する。
【0030】
本発明における、「抗体アフィニティーリガンド」とは、抗原と抗体の結合に代表される、特異的な分子間の親和力に基づいて、ある分子の集合から標的(目的)の分子を選択的に捕集(結合)する物質を示す。
【0031】
本発明に用いることができる抗体アフィニティーリガンドは、標的分子として抗体または抗体の定常領域であるFc含有分子に特異的に結合しうる特徴を有していれば特に限定されないが、ペプチド性リガンド、蛋白質性リガンド、または、化学合成性リガンド(合成化合物)が好ましい。標的分子に対する特異性の視点からペプチド性または蛋白質性リガンドが更に好ましく、その内、抗体アフィニティーリガンドがプロテインA、プロテインG、プロテインL、プロテインH、プロテインD、プロテインArp、プロテインFcγR、抗体結合性合成ペプチドリガンド及びそれら類縁物質であることが特に好ましい。抗体アフィニティーリガンドとしては、プロテインA、プロテインG、プロテインL及びそれら類縁物質がより好ましく、プロテインA及びその類縁物質が最も好ましい。抗体アフィニティーリガンドは、標的分子結合ドメイン(単量体ペプチドまたは蛋白質、単ドメイン)を有していれば特に制限されないが、2個以上のドメインが連結された多量体ペプチドまたは蛋白質(複ドメイン)が好ましく、2〜10個がより好ましく、2〜8個、更に2〜6個が好ましく、特に3〜6個のドメインが連結された多量体蛋白質であることが好ましい。これらの多量体蛋白質は、単一の標的分子結合ドメインの連結体であるホモダイマー、ホモトリマー等のホモポリマーであっても良いし、標的分子が同一であれば、複数種類の標的分子結合ドメインの連結体であるヘテロダイマー、ヘテロトリマー等のヘテロポリマーであってもよい。
【0032】
本発明の抗体アフィニティーリガンドの標的分子結合ドメインを連結する方法としては、多量体蛋白質の3次元立体構造を不安定化しない方法が好ましく、たとえば、ドメイン配列の末端アミノ酸を介する連結方法、ドメイン配列のアミノ酸残基を介さず連結する方法、または、1または複数のドメイン配列以外のアミノ酸残基で連結する方法が挙げられ、これらの方法に限定されるものではない。
【0033】
本発明の抗体アフィニティーリガンドとしては、多量体蛋白質を1つの構成成分として、機能の異なる他の蛋白質と融合させた融合蛋白質を好ましく用いることができる。融合蛋白質としては、アルブミンやGST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)が融合した蛋白質やDNAアプタマー等の核酸、抗生物質などの薬物、PEG(ポリエチレングリコール)などの高分子が融合されている蛋白質等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明における、「陽イオン交換基」は、抗体アフィニティーリガンドから標的分子である抗体またはFc含有分子が溶出(脱離)する条件下で陽イオン交換基として機能し標的分子を捕捉できると共に、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のカウンターイオンにより、該標的分子の単量体(モノマー)、凝集体の順序でイオン強度依存的に溶出(脱離)出来れば良い。たとえば、陽イオン交換基としては、カルボキシル基や硫酸基があげられる。抗体アフィニティーリガンドからの標的分子の溶出pH域において、局所的な酸性環境の形成を避けることが好ましく、弱酸性基であることが好ましい。たとえば、プロテインAを抗体アフィニティーリガンドとする場合は、陽イオン交換基としてカルボキシル基の利用が好ましい。
【0035】
本発明に用いることのできる「水不溶性担体」は、水に不溶な基材であって、抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基を固定化できれば特に制限されないが、例えば、ガラスビーズ、シリカゲルなどの無機担体、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレンなどの合成高分子や、結晶性セルロース、架橋セルロース、架橋アガロース、架橋デキストランなどの多糖類からなる有機担体、さらにはこれらの組み合わせによって得られる有機−有機、有機−無機などの複合担体などが挙げられる。市販品としては、多孔質セルロースゲルであるGCL2000、アリルデキストランとメチレンビスアクリルアミドを共有結合で架橋したSephacryl S−1000、アクリレート系の担体であるToyopearl、アガロース系の架橋担体であるSepharose CL4B、Rapid Run Agarose Beads、および、セルロース系の架橋担体であるCellufineなどを例示することができる。上記水不溶性担体は、炭水化物およびその誘導体、合成ポリマー、ガラスなどに分類することもでき、これらは適宜組み合わせることができる。
【0036】
また、本発明に用いる水不溶性担体は、単位時間当たりの処理容量の観点から、表面積が大きいことが望ましく、適当な大きさの細孔を多数有する多孔質であることが好ましい。担体の形態としては、ビーズ状、モノリス状、繊維状、膜状(中空糸を含む)などいずれも可能であり、任意の形態を選ぶことができる。水不溶性担体としては、多孔性ビーズ、モノリス、または膜が好ましく、特に水不溶性担体上に配置された抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基が協奏的に機能するために、その物理的距離が近接し、一定の滞留時間が得られることが当該分離マトリックスの機能を効果的に発揮できることから、多孔性ビーズ(多孔質ビーズ)が好ましい。陽イオン交換基を抗体アフィニティーリガンドが固定化された担体に固定化する場合、多糖類からなる、または、単糖もしくは多糖類で修飾された担体は、抗体アフィニティーリガンド導入の容易さの点で好ましい。具体的には、アガロースやセルロース担体が好ましいが、特にこれに制限されるものではない。
【0037】
抗体アフィニティーリガンドを分離マトリックスに固定化する方法としては、一般的な方法を用いることができる。例えば、抗体アフィニティーリガンドのアミノ基が担体上に導入されたホルミル基を介して担体に結合してもよく、抗体アフィニティーリガンドのアミノ基が担体上の活性化されたカルボキシル基を介して担体に結合してもよい。また、これらの水不溶性担体は、抗体アフィニティーリガンド導入の前にリガンドが担体に共有結合できるように活性化されるが、市販の活性化担体を用いても良いし、自ら活性化を行っても良い。
【0038】
活性化により水不溶性担体に導入される官能基としては、抗体アフィニティーリガンドと共有結合を形成することができる官能基であれば、特に限定されないが、例えばエポキシ基(エピクロルヒドリン)、臭化シアン、N,N−ジスクシンイミジル炭酸塩(DSC)などで活性化されるヒドロキシ基、アルデヒド基または活性化カルボン酸基(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、カルボニルジイミダゾール(CDI)活性化エステル)などの反応性官能基(「活性化基」)等を挙げることができる(Hermanson G.T.他著、「Immobilized Affinity Ligand Techniques, Academic Press」、1992年、米国特許第5,874,165号、米国特許第3,932,557号、米国特許第4,772,653号、米国特許第4,210,723号、米国特許第5,250,6123号、欧州特許公開第1352957号、WO2004/074471)。これらの中には、抗体アフィニティーリガンドが担体に直接共有結合するものと、直鎖、分岐鎖、または環状のリンカーまたはスペーサーが用いられるものが含まれる。なお、抗体アフィニティーリガンドが導入された担体を活性化する場合は、抗体アフィニティーリガンドと直接反応しない活性化手法が好ましい。
【0039】
抗体アフィニティーリガンドの内、蛋白質性リガンドを担体に固定化する方法は、蛋白質の官能基の一部と担体の官能基の一部を反応させる方法を用いることができるが、その反応に利用できる蛋白質側の主な官能基(活性基)は、N末端アミノ酸およびリジン(Lys)側鎖のアミノ基、または、システイン(Cys)側鎖のチオール基、または、C末端アミノ酸およびグルタミン酸(Glu)側鎖およびアスパラギン酸(Asp)側鎖のカルボキシル基等があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0040】
また、リガンドの配向性を制御し蛋白質性抗体アフィニティーリガンドを水不溶性担体に固定化する方法として、C末端にシステインを有するプロテインAを利用する方法が提案されている(米国特許第6,399,750号、Ljungquist C.他 著,「Eur.J.Biochem.」,1989年,186巻,557−561頁)。
リンカーを利用する固定化技術としては、担体とリガンドの距離を確保し、立体障害を排除して高性能化を図る方法の他、リンカーまたはスペーサーの中に官能基(例えば、帯電アミン)を付与、形成させる方法等が挙げられる。抗体アフィニティーリガンドの固定化時にリンカーまたはスペーサー部分にリガンドを効果的に集積し、固定化収率の向上による分離性能の向上が検討されてきている。たとえば、リンカーアームの1部としてNHS活性化されたカルボン酸で誘導体化されたアガロース担体への蛋白質性リガンドの固定化技術が挙げられる(米国特許第5,260,373号、特開2010−133733、特開2010−133734)。
また、リンカーやスペーサーとは別に担体に会合性基を利用し、抗体アフィニティーリガンドを担体に集積した後に、会合性基と抗体アフィニティーリガンドの間に共有結合を形成させずに、水不溶性担体上に抗体アフィニティーリガンドを個別に固定化する方法も提案されている(特開2011−256176)。
陽イオン交換基を水不溶性担体に固定化または導入する手法として、抗体アフィニティーリガンドの固定化前に陽イオン交換基を導入する場合は、通常、陽イオン交換体の作製に用いられる手法が利用できる。たとえば、糖骨格にカルボキシメチル基を導入する手法として、アルカリ条件下でモノクロル酢酸を反応させる方法や、硫酸基を導入する方法として、アルカリ条件下で硫酸を反応させる方法があるが、これらに限定されるものではない。水不溶性担体にアミノ基と反応する活性基を導入した後に、アミノ酸のアミノ基を介しアミノ酸を固定化することによりカルボキシル基を導入することも出来る。
【0041】
抗体アフィニティーリガンド導入後に陽イオン交換基を導入する場合は、抗体アフィニティーリガンドの活性低下を最小限に抑える手法を選択することが好ましい。たとえば、水不溶性担体上に存在または導入されたジオール基に対し過ヨウ素酸ナトリウムを反応させて担体を活性化しアルデヒド基を導入し、アミノ基と陽イオン交換基を同一分子内に持つ分子を添加し、イミン形成後に還元処理することにより、担体上のアルデヒド基とアミノ基を還元的アミノ化法により共有結合させ陽イオン交換基を導入することが出来る。アミノ酸のカルボキシル基を導入する方法は、リガンドが脱離した場合の毒性の観点からも、抗体精製用分離マトリックスの材料として好ましい。
【0042】
抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基を連続的または同時的に水不溶性担体に導入することも出来る。たとえば、水不溶性担体上に存在または導入されたジオールに対し過ヨウ素酸ナトリウムを反応させて担体を活性化しアルデヒド基を導入する。これに抗体アフィニティーリガンドを加えて固定化する際、これと連続的または同時的にアミノ基と陽イオン交換基を同一分子内に持つアミノ酸等の分子をも添加し、水不溶性担体上の別々のアルデヒド基に対し還元的アミノ化法により抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基をそれぞれ導入することが出来る。
【0043】
陽イオン交換基は、直接、水不溶性担体に固定化されていても良いし、スペーサー、リンカー等を介して固定化されていても良い。また、抗体アフィニティーリガンドから標的分子が溶出(脱離)する酸性pH条件下で陽イオン交換体として機能できれば、陽イオン交換基、スペーサーやリンカーが他の機能を有する官能基を含んでいても良く、それらの分子形状も特に制限されない。
【0044】
本発明は、抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基が共に水不溶性の基材からなる担体に共有結合を介して固定化されているミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスであり、異なる分離機能を複合させて、各分離機能の協奏作用から優れた分離性(例えば、単量体の選択性、凝集体の除去性)を有していることを特徴としている。
【0045】
抗体医薬品の精製プラットホームプロセスに利用される第一クロマトグラフィーと第二クロマトグラフィーの代表例として、例えばプロテインAクロマトグラフィーと陽イオンクロマトグラフィーの組み合わせが用いられる。
【0046】
第一クロマトグラフィーでは、用いられるプロテインAクロマトグラフィーによる単量体と凝集体の分離能が低く、分離の安定性にも乏しいことから、通常、標的分子である抗体またはFc含有分子の変性や凝集を最小限に抑えつつ高い回収率が得られる溶出条件が選定され、凝集体等の除去は後段プロセスが担う。
【0047】
第二クロマトグラフィーとして、陽イオン交換クロマトグラフィーが選定される場合は、一般的に吸脱着モードで凝集体や他の夾雑物の除去が行われるが、プロテインA担体からの溶出液を陽イオン交換クロマトグラフィーの吸着に適したpHおよびイオン強度に調整することが必要である他、凝集体等の分離能は負荷量に依存し、分離を優先する場合、負荷量に制限が設けられる。よって、多種の制限因子がある一方で効率的な凝集体分離が可能とは言い切れない。
【0048】
一方、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを用いる場合、両リガンドの有する単量体(モノマー)と凝集体分離機能が協奏的に機能することで優れた分離特性を示すほか、2工程のクロマトグラフィー操作を1工程に短縮可能で、使用する緩衝液の種類および使用量、更に、作業時間の短縮が期待できる。
【0049】
また、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスは、抗体アフィニティーリガンドからの標的分子が溶出される狭いpH域(好ましくはpH3〜4、より好ましくはpH3.1〜3.9、さらに好ましくはpH3.2〜3.8)で、イオン強度(好ましくは10〜500mM、より好ましくは15〜400mM、さらに好ましくは20〜350mM、前記範囲で段階的に高くなる塩濃度を2種以上使用する「ステップワイズ溶出」または前記範囲で勾配的に高くなる塩濃度を使用する「グラジェント溶出」)の設定により単量体含量の高い溶出画分を得ることが可能である。特にモノクローナル抗体の精製においては、当該溶出pHは標的分子の等電点から大きく離れているため、抗体毎に溶出イオン強度の幅に大きな差異がなく、狭い範囲で各種標的分子の使用条件の設定が可能であることが期待できる。更に、抗体アフィニティーリガンドとして、改変プロテインAリガンドを用いる場合、溶出pH域を更に狭く設定可能であるほか、アルカリCIP(cleaning in place;定置洗浄)の使用により、効果的な洗浄も可能であるため、安定的なプロセス構築の観点からは改変プロテインAの利用が好ましい。
【0050】
通常ミックスモード分離マトリックスとして使用される、イオン交換基と疎水基からなる合成化合物をリガンドとする分離マトリックスは、たとえ標的分子がモノクローナル抗体であっても、疎水性および等電点の相違等により各標的分子毎に使用条件の設定が異なる他、特異性も低く、回収工程としてプラットフォーム化は困難とされている。
【0051】
一方、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスは、吸着時に抗体アフィニティーリガンドにより、高い特異性を発揮できるほか、抗体アフィニティーリガンドの溶出条件範囲内でイオン強度の設定により容易にその使用条件が設定可能である点で、既存のミックスモード分離マトリックスよりも優れている。
【0052】
より具体的には、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスの使用方法に関し、中性付近で抗体等の標的分子を吸着させる場合、陽イオン交換基のカウンターイオンを一定濃度以上添加して使用することが好ましく、当該条件では陽イオン交換体機能は作用せず、また、作用しても更に高いイオン強度の洗浄でその陽イオン交換基に由来する非特異的な吸着物は洗浄除去できる。一方、イオン強度は抗体アフィニティーリガンドの吸着を阻害せず、高い特異性をもって目的物質を吸着できるほか、高イオン強度の洗浄液の使用により、基材、リンカー、スペーサー、リガンドおよび標的分子に非特異的に吸着する分子を効果的に洗浄除去しうる。
【0053】
通常、組換えモノクローナル抗体を発現させた培養上清は、ヒトなどの体液に近いイオン強度を有することから直接本発明の分離マトリックスに供しても高い特異性を維持できる他、より高いイオン強度の洗浄液により夾雑物を更に低減できる。
【0054】
なお、抗体アフィニティーリガンドの分離マトリックスへの固定化時に、イオン交換基や疎水性官能基を用いて該リガンドを基材担体上に非共有結合的にかつ効果的に集積し、固定化率を向上させる方法が知られている(特開2011−256176)。この方法は、(1)凝集体等の分離能の改善を伴わない点で本質的に本発明と異なり、(2)抗体アフィニティーリガンドの基材担体上への集積に、本発明のもう一方のリガンドである陽イオン交換基を利用していない点で、調製の原理上、本発明と明確に区別され、(3)本発明の分離マトリックスは凝集体の優れた分離特性を有する点で、機能上も明確に区別される。
【0055】
本発明の分離マトリックスは、抗体アフィニティーリガンドが固定化された抗体アフィニティー担体上に追加的に陽イオン交換基を導入することによっても調製可能で、抗体アフィニティーリガンドの固定化と独立して所望のイオン交換基を導入できることを特徴としている。
【0056】
また、NHS活性化担体に抗体アフィニティーリガンドを導入する方法が一般的に知られているが、通常、NHSで活性化されたカルボキシル基に蛋白質性リガンドを導入した後は、カルボキシル基をアミン等と反応させ不活性化するため、意図的にカルボキシル基の機能を利用しようとする事例はない。従ってこの一般的な方法は、意図的に陽イオン交換基を導入する本発明と明確に区別される。本発明において陽イオン交換基の導入は、抗体アフィニティーリガンドの導入前後のいずれでもかまわず、リガンドの導入方法に関してもNHS等により活性化されたカルボキシル基の使用に限定されるものではない。
【0057】
効率的にカルボキシル基を不溶性担体に導入する手法および、導入カルボキシル基を活性化した担体を用いて抗体アフィニティー分離マトリックスを調製する手法が示されているが(特開2010−133733、特開2010−133734)、NHS活性化以降の手法は公知のNHS活性化担体を用いたアフィニティーリガンド固定化方法と何ら変わらない。本発明は、抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基を同時に利用し、凝集体等の夾雑物を低減する新規のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスとその使用方法であり、従前のNHS活性化担体を用いて調製された抗体アフィニティー分離マトリックスと明確に区別される。
【0058】
本発明により調製されたミックスモードアフィニティー分離マトリックスは、抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基の比率によってその機能が調節可能である。抗体アフィニティーリガンドの結合容量が陽イオン交換基の結合容量よりも大きい場合は、酸性溶出時に低イオン強度でも抗体が担体から溶出される傾向があり、抗体アフィニティーリガンドの結合容量が陽イオン交換基の結合容量と同程度または低い場合には、低イオン強度では抗体アフィニティーリガンドから溶出された抗体が陽イオン交換基に強く保持され、抗体が溶出されにくい傾向にあり、より高い回収率を得るには溶出イオン強度を高めに設定する必要がある。何れの場合も、イオン強度の調節により回収率および、そのモノマー比率の制御が可能である。
【0059】
抗体アフィニティーリガンドに基づく抗体結合容量と陽イオン交換基に基づく抗体結合容量の比率に特に制限を設けないが、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスにおける標的分子(特に抗体、より好ましくはヒトIgGまたはヒト化モノクローナル抗体などのIgGである。)の溶出pH条件下における陽イオン交換基による標的分子(特に抗体、より好ましくはヒトIgGまたはヒト化モノクローナル抗体などのIgG)の動的結合容量が、抗体吸着条件下(中性条件下)における抗体アフィニティーリガンドによる標的分子(特に抗体、より好ましくはヒトIgGまたはヒト化モノクローナル抗体などのIgG)の動的結合容量に対し、2倍以下であることが好ましく、等倍以下であることがより好ましく、1/5倍以下が特に好ましい。下限値は、例えば1/100倍以上であってもよく、1/50倍以上であってもよい。陽イオン交換基による抗体結合量が小さい場合には、溶出イオン強度を低く設定することが可能であり、後段の抗体精製プロセスにて脱塩等の処理が必要でなくなる傾向があるほか、溶出イオン強度の設定の幅が狭くプロセス開発が容易である。
【0060】
本発明のミックスモードアフィニティー分離マトリックスにより精製される標的分子は、免疫グロブリンGおよびその類縁体(誘導体を含む)であり、一般的に抗体と称される分子の他、免疫グロブリン分子の定常領域であるFc領域と他の機能性蛋白質またはペプチドを融合してなるFc融合蛋白質(Fc含有分子)が含まれる。これらは、抗体医薬品の原料として利用される。
【0061】
以下に、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを用いた精製方法の詳細な説明を、標的分子が免疫グロブリンGの場合について例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを用いた標的分子(抗体)の精製は、大きく、吸着工程、洗浄工程、イオン強度調節工程、溶出工程の4工程で構成されるほか、その後の再生工程および/またはCIP工程、再平衡化工程などの再利用の為の工程を含んでいてもよい。
【0063】
吸着工程では、一般的なアフィニティーカラムクロマトグラフィー精製方法を用いることができる。すなわち、その一例において、免疫グロブリンGを含む蛋白質溶液のpHが中性付近となるように調整した後、該溶液を本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを充填したカラムに通過させ、抗体アフィニティーリガンドを介して免疫グロブリンGを特異的に分離マトリックスに吸着させる。たとえば、プロテインAを抗体アフィニティーリガンドとする場合、その負荷pHは6以上が好ましく、6.3以上9以下がより好ましく、6.5以上8.5以下がさらに好ましい。哺乳類培養細胞により生産される免疫グロブリンGの精製において、特にイオン強度の調製を必要としないほか、あらかじめイオン強度を上げて更に非特異吸着を抑制することも出来る。
【0064】
洗浄工程では、抗体アフィニティーリガンドが機能する条件範囲の緩衝液を適量通過させ、カラム内部を洗浄する。すなわち、pHの好ましい範囲は前記負荷時と同じ範囲(中性付近のpH)であってもよく、例えば、6以上が好ましい。この時点では標的分子である免疫グロブリンGは本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスに吸着されている。この時、中性付近のpHでイオン強度や組成物の最適化により、不純物を効果的に除去できる場合がある。負荷、洗浄時において、陽イオン交換基が機能しない条件が好ましく、すなわち、中性付近のpHにすると共に一定以上のイオン強度の洗浄液の利用が好ましく、この過程で該分離マトリックスおよび/または、免疫グロブリンGを介して非特異的にカラムに残留する不純物を洗浄することが出来る。イオン強度は、例えば、0.2M以上が好ましく、0.5M以上がより好ましい。
【0065】
イオン強度調節工程では、中性付近でイオン強度が低い緩衝液にカラムを置換し、溶出時の陽イオン交換基によるイオン強度依存的溶出機能の発現に備える。
【0066】
溶出工程では、酸性pH、イオン強度の組み合わせにより、抗体アフィニティーリガンドからの溶出時に陽イオン交換分離モードを機能させ、両リガンドの協奏的な作用で、単量体含量の高い画分を低イオン強度溶出画分に回収することが出来る。溶出液のpHは抗体アフィニティーリガンドからの免疫グロブリンGの溶出pHが適用できる。当該pHは、ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスの作製に用いた抗体アフィニティーリガンドからなる抗体アフィニティー分離マトリックスと免疫グロブリンGの種類により決定される分離条件を中心に決定されることから、特段の条件設定を必要としない。
【0067】
抗体アフィニティーリガンドにプロテインAを用いた場合は、pHは6〜2の間に設定されることが好ましい。ただし、標的分子の酸変性を避ける目的から、pH3.0以上がより好ましく、pH3.3以上がより好ましく、pH3.5以上が特に好ましい。pHは、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下である。
【0068】
アルカリ耐性型のプロテインAリガンドを使用する場合は、一般的にその溶出pHは3.5〜4.0の間を中心に設定されるが、これに限定されるものではない。また、溶出イオン強度は、抗体アフィニティーリガンドと陽イオン交換基の導入比率に依存するほか、単位体積当たりの免疫グロブリンGの負荷量にも依存するが、グラジエント実験やステップワイズ溶出実験により最適化ポイントを容易に設定しうる。
【0069】
本発明により調製されるミックスモードアフィニティー分離マトリックスからの抗体溶出は、塩濃度グラジエント溶出でもステップワイズ溶出でも適用可能であるが、溶出液量の低減を目的にした場合はイオン強度によるステップワイズ溶出が好ましい。更に、操作の単純化のためには、ワンステップ溶出による抗体の回収と高モノマー含量化を達成できる条件設定が好ましい。
【0070】
なお、洗浄工程のイオン強度と酸性pHの組み合わせでも凝集体がカラムに残留し溶出画分に混入しない場合は、イオン強度調節工程を省略することが出来る。
【0071】
本発明により調製されたミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを用いて精製された免疫グロブリンGは、単一の分離モードに基づく抗体アフィニティー分離マトリックスよりも高いモノマー選択性を示し、その溶出液中のモノマー含量が高い。
【0072】
単一分離モードに基づく抗体アフィニティー分離マトリックスを用いた場合にも、溶出pHおよびイオン強度等の最適化により、モノマー含量を幾分高めることは可能であるが、その効果が低く、効果発現にはより大きな回収率の低下を伴う。本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを用いることにより、特異性の高いアフィニティー精製と、主に陽イオン交換クロマトグラフィーにより達成しうるモノマー含量の向上を、高回収率を維持したまま単一のクロマト操作で効率的に達成可能であることから、後段プロセスへの負荷の低減が可能となり、プロセス全体の収率向上と単量体含量の向上に貢献できる。すなわち、本発明の新規ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスの使用により、抗体医薬品の製造プロセスの生産性向上と高純度化に寄与できる。
【0073】
本願は、2012年9月3日に出願された日本国特許出願第2012−193069号に基づく優先権の利益を主張するものである。2012年9月3日に出願された日本国特許出願第2012−193069号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0074】
以下に実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
(担体の調製例1)
プロテインA固定化担体の調製
4%アガロースビーズとして、水に置換したLow density Glyoxal 4 Rapid Run(ABT社)を湿潤体積として4mL分を反応容器にとり、水にてスラリー体積を5mLとした後に、0.25Mクエン酸ナトリウム(pH3.5)溶液を1mL加えた。更に0.8M過ヨウ素酸ナトリウム2mL加え、室温で0.5時間転倒攪拌し、アルデヒド基が導入された担体を得た。この担体のスラリーを水およびリン酸緩衝液としてダルベッコPBS(−)(日水)(以下、PBS)で十分に洗浄し、回収後にスラリーの量を5mLとした。次に0.1Mリン酸ナトリウム、1Mクエン酸ナトリウム、0.3M塩化ナトリウムの混合溶液(pH6.8)を5mL加え、混合した後に液量を調整し5.5mLとした。これに5N水酸化ナトリウム水溶液を加え担体のスラリーのpHを11.5〜12に調整した後、直ちに100mgのプロテインAを加えて2〜8℃の条件下で2.5時間攪拌した。1Mクエン酸溶液を用いて担体スラリーのpHを7〜5に調整した後に1Mのジメチルアミンボラン0.5mLを加え室温で一晩転倒攪拌した。水、0.1Mクエン酸、0.1M水酸化ナトリウム、およびPBSで十分に洗浄し、アガロースにプロテインAが共有結合で固定化(結合)されたプロテインA担体を得た(担体1)。なお、ここで用いたプロテインAは、国際公開公報WO2011/118699の実施例に基づき調製した。
【0076】
担体1について、抗体アフィニティー分離マトリックスとしての抗体結合容量、特に動的結合容量を測定した。具体的には、プロテインA担体に結合しないIgG3等の画分以外の負荷IgGの10%が漏出するまでにカラムに結合した抗体量をカラム中の担体体積で割った値から、担体1mL当たりのIgG吸着量を10%動的結合容量(Dynamic binding capacity;DBC)として算出した。クロマトグラフィー条件は以下に示すが、負荷時の流速は、0.4mL/minとし、接触時間6分の動的結合容量を求めた。なお、負荷以外の流速設定は、0.6mL/分(接触時間:4分)とした。
【0077】
担体1について、接触時間6分の抗体アフィニティー分離マトリックスとしての10%DBCは、56.0mgであった。
抗体アフィニティーリガンドに基づく10%DBC測定に用いたクロマトグラフィー条件カラム:ID 0.66cm x Height7cm(Omnifit社製)
流速:0.4mL/分(接触時間:6分)または0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(ヒト免疫グロブリンG)(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)
溶出液:50mM酢酸、0.1M塩化ナトリウム(pH3.75)
再生液:0.1M酢酸、1M塩化ナトリウム
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
【0078】
(担体の調製例2)
カルボキシル基導入担体へのプロテインAの固定化によるミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスの調製
4%アガロースビーズとして水に置換したLow density Glyoxal 4 Rapid Run(ABT社)を湿潤体積として4mLを反応容器にとり、水にてスラリー体積を5mLとした後に、0.25Mクエン酸ナトリウム(pH3.5)溶液を1mL加えた。次に0.1Mクエン酸と0.1Mグルタミン酸の混合溶液(pH3.5)を1mL加え攪拌した。更に0.8M過ヨウ素酸ナトリウム0.5mL加え、室温で1時間転倒攪拌してアルデヒド基を導入した。この担体のスラリーを冷水で100倍に希釈した1Mグルタミン酸/PBS(pH7)で5回洗浄し、回収後にスラリーの液量を5mLとした。ここに1Mグルタミン酸/PBS(pH7)を5mL添加し、室温で2時間転倒攪拌した後に、1Mのジメチルアミンボラン水溶液を0.5mL追加投入し一晩室温で転倒攪拌した。遠心して担体を沈降させた後に液面が6mLになるように上清を除去した中に、20mgの水素化ホウ素ナトリウムを直接加え、室温で更に2時間転倒攪拌した。水、0.1Mクエン酸、0.1M水酸化ナトリウム、および0.5MのNaClを添加したPBSで十分に洗浄し、グルタミン酸のアミノ基を介し還元的アミノ化法でアルデヒド基にカルボキシル基を導入したアガロース担体を得た。
【0079】
次に、カルボキシル基導入アガロース担体を0.1M MES、0.5M NaCl(pH6)(MESバッファー)で洗浄し液置換した後に、湿潤体積として4mLの同担体を反応容器にとりスラリー体積を5mLとした。ここに20mLのMESバッファー当たり0.25gのNHSを溶解し、続いて1.5gのEDCを溶解して調製したNHS/EDC溶液5mLを加え、室温で15分間転倒攪拌した後に、冷却したPBSで十分に洗浄し、カルボキシル基の一部がEDC/NHS化されたアガロース担体を得た。液量を7mLに調整し、80mgのプロテインAを加え2時間転倒攪拌した。これを0.1Nの水酸化ナトリウム溶液に置換、洗浄し、プロテインAと反応しなかったEDC/NHS化されたカルボキシル基を再生し、カルボキシル基を導入したプロテインA担体として、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを得た(担体2)。なお、ここで用いたプロテインAは、国際公開公報WO2011/118699の実施例に基づき調製した。
【0080】
担体2について、抗体アフィニティーリガンドに基づく抗体結合容量を測定した。測定方法は、担体の調製例1と同様であり、接触時間6分の10%DBCを求めた結果、10.2mgであった。
【0081】
次に、担体2について、陽イオン交換基に基づく抗体結合容量を測定した。抗体の負荷条件として、抗体アフィニティーリガンドであるプロテインAの抗体捕捉能力が殆どなく、陽イオン交換基として導入したカルボキシル基が機能しうる条件としてpH3.5の10mM酢酸緩衝液を用いた。陽イオン交換基はプロテインAリガンドと異なりIgG3等に選択性を示さないことから、負荷開始から全負荷IgGの10%が漏出するまでにカラムに結合した抗体量をカラム中の担体体積で割った値から、担体1mL当たりのIgG吸着量を10%DBCとして算出した。クロマトグラフィー条件は以下に示すが、負荷時の流速は、0.4mL/分とし、接触時間6分の動的結合容量を求めた。なお、負荷以外の流速設定は、0.6mL/分(接触時間:4分)とした。担体2について、陽イオン交換基の導入に基づく抗体溶出条件下での接触時間6分の10%DBCは、10.6mgであった。
【0082】
以上、陽イオン交換基の導入に基づく抗体結合容量が、抗体アフィニティーリガンドに基づく抗体結合容量よりやや高い本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスである担体2を得ることが出来た。
陽イオン交換基に基づく10%DBC測定に用いたクロマトグラフィー条件
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
流速:0.4mL/分(接触時間:6分)または0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(10mM酢酸:pH3.5)
平衡化液:10mM酢酸(pH3.5)
溶出液:10mM酢酸、0.5M塩化ナトリウム(pH3.5)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム
中和・再平衡化液:10mM酢酸(pH3.5)
【0083】
(担体の調製例3)
プロテインA導入担体へのカルボキシル基の固定化によるミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスの調製
プロテインA固定化担体として0.5Mの食塩水に置換したMabSelect SuRe(GEヘルスケア・バイオサイエンス社、担体3)にカルボキシル基を導入した。MabSelect SuReを担体3として、これを湿潤体積として4mLを反応容器にとりスラリー体積を5mLとした後に、0.25Mクエン酸ナトリウム(pH3.5)溶液を1mL加えた。次に0.1Mクエン酸、0.1Mグルタミン酸(pH3.5)溶液を1mL加え攪拌した。ここに0.8M過ヨウ素酸ナトリウム0.5mL加え、室温で1時間転倒攪拌してアルデヒド基を導入した。この担体スラリーを冷水で100倍に希釈した1Mグルタミン酸/PBS(pH7)で5回洗浄し、回収後にスラリーの液量を5mLとした。ここに1Mグルタミン酸/PBS(pH7)を5mL添加し、室温で2時間転倒攪拌した後に、1Mのジメチルアミンボラン水溶液を0.5mL追加投入し一晩室温で転倒攪拌した。遠心して担体を沈降させた後に液面が6mLになるように上清を除去した中に、20mgの水素化ホウ素ナトリウムを直接加え、室温で更に2時間転倒攪拌した。水、0.1Mクエン酸、0.1M水酸化ナトリウム、および0.5MのNaClを添加したPBSで十分に洗浄し、グルタミン酸のアミノ基を介し還元的アミノ化法でアルデヒド基にカルボキシル基を導入したプロテインA担体として、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスを得た(担体4)。
【0084】
担体4について、抗体アフィニティーリガンドに基づく抗体結合容量を測定した。測定方法は、担体の調製例1と同様であり、接触時間6分の10%DBCを求めた結果、42.4mgであった。
【0085】
次に、担体4について、陽イオン交換基に基づく抗体結合容量を測定した。測定方法は、実施例1と同様であり、接触時間6分の10%DBCを求めた結果、4.2mgであった。
【0086】
以上、陽イオン交換基の導入に基づく抗体結合容量が、抗体アフィニティーリガンドに基づく抗体結合容量の約1/10である本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスである担体4を得ることが出来た。
【0087】
また、同様に、上記担体4の材料に使用したプロテインA固定化担体である担体3について、抗体アフィニティー分離マトリックスとしての抗体結合容量を測定した結果、接触時間6分の10%DBCは、50.3mgであった。
【0088】
(比較例1)
プロテインA固定化担体(担体1)の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離
担体の調製例1で調製し、評価に用いたOmnifit社製のカラム(ID 0.66cm x Height 7cm)に充填した担体1を用いて、これに中性条件下でヒトポリクローナル抗体を担体1mL当たり7mg負荷し、酸性条件下で各種イオン強度の溶出バッファーで抗体を溶出させた(凝集体分離用クロマトグラフィー条件1)。
【0089】
各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から蛋白質含量と収率(Yield)を、更に、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めて単量体含量(Monomer content)および単量体収率(Monomer Yield)を算出した。この時、担体1からの溶出画分のエリア値の総和を100%として、各溶出画分を評価した。なお、アフィニティー分離マトリックスからの溶出フラクション中における凝集体形成阻止を行う目的で、各溶出液に終濃度が0.05M以上となるようにアルギニンを添加し、また、pH5のリン酸ナトリウム溶液を用いて各溶出液のpHを5〜6として、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。なお、各クロマトグラフィー条件は、以下に示した。
凝集体分離用クロマトグラフィー条件1(酸性pH、ステップワイズ塩溶出)
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
流速:0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)(3CV、CV:カラム体積)
負荷:6.8mL
負荷後洗浄:PBS(pH7.4)(5CV)
溶出前洗浄液:10mM Tris/HCl(pH7)(5CV)
溶出液1:10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液2:150mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液3:300mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(4CV)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム(4CV)
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
ゲルろ過クロマトグラフィー条件
カラム:Superdex 200 10/300 GL (ID 1cm x Height 30cm)(GEヘルスケア・バイオサイエンス社製)
流速:0.5mL/分
検出波長:214nm
負荷液:100μL / injection(吸光度値が1を超えない範囲に希釈)
溶離液:PBS(pH7.4)
【0090】
担体1の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離特性の評価結果を表1に示した。
【0091】
【表1】
【0092】
(実施例1)
ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス(担体2)の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離
担体の調製例2で調製し、評価に用いたOmnifit社製のカラム(ID 0.66cm x Height 7cm)に充填した担体2を用いて、比較例1と同様に、これに中性条件下でヒトポリクローナル抗体を担体1mL当たり7mg負荷し、酸性条件下で各種イオン強度の溶出バッファーで抗体を溶出させた。ただし、溶出液2のイオン強度を3段階として評価した(凝集体分離用クロマトグラフィー条件2)。
【0093】
各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から蛋白質含量と収率(Yield)を、更に、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めて単量体含量(Monomer content)および単量体収率(Monomer Yield)を算出した。この時、比較例1で評価した担体1からの溶出画分のエリア値の総和を100%として、各溶出画分を評価した。なお、アフィニティー分離マトリックスからの溶出フラクション中における凝集体形成阻止を行う目的で、各溶出液に終濃度が0.05M以上となるようにアルギニンを添加し、また、pH5のリン酸ナトリウム溶液を用いて各溶出液のpHを5〜6として、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。なお、凝集体分離用クロマトグラフィー条件を以下に示したほか、ゲルろ過クロマトグラフィーは、比較例1と同様に評価した。凝集体分離用クロマトグラフィー条件2(酸性pH、ステップワイズ塩溶出)
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
流速:0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)(3CV)
負荷:6.8mL
負荷後洗浄:PBS(pH7.4)(5CV)
溶出前洗浄液:10mM Tris/HCl(pH7)(5CV)
溶出液1:10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液2:150mM、175mM、または、200mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液3:300mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(4CV)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム(4CV)
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
担体2の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離特性の評価結果を表2に示した。
【0094】
【表2】
【0095】
以上、表1および表2の結果から、担体1は、酸性溶出時にNaClのイオン強度がゼロの場合[表1における溶出フラクション:溶出液1(0mM NaCl)]でも99%以上の抗体が溶出するのに対し、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスである担体2は、酸性溶出条件下[表2における溶出フラクション:溶出液2(150mM、175mM、200mM NaCl)]において、陽イオン交換基の機能によりイオン強度依存的溶出挙動を示し、プロテインAリガンドと陽イオン交換基の協奏効果として、モノマー選択性が有意に向上していることが確認できた。よって、本発明の担体2はプロテインAリガンドと陽イオン交換基のそれぞれの特性が協奏的に発現し、1クロマト工程で高い特異性と高いモノマー選択性が発揮されていることが確認できた。
【0096】
なお、担体2は、プロテインAからの抗体溶出pH条件において、陽イオン交換基に基づく抗体結合容量がプロテインAアフィニティーリガンドよりもやや高く、抗体の溶出には一定濃度以上の高いイオン強度が必要であった。
【0097】
(比較例2)
プロテインA固定化担体(担体3)の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離
担体の調製例3で評価に用いたOmnifit社製のカラム(ID 0.66cm x Height 7cm)に充填した担体3を用いて、これに中性条件下でヒトポリクローナル抗体を担体1mL当たり7mg負荷し、酸性条件下で各種イオン強度の溶出バッファーで抗体を溶出させた(凝集体分離用クロマトグラフィー条件3)。
【0098】
各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から蛋白質含量と収率(Yield)を、更に、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めて単量体含量(Monomer content)および単量体収率(Monomer Yield)を算出した。この時、担体3からの溶出画分のエリア値の総和を100%として、各溶出画分を評価した。なお、アフィニティー分離マトリックスからの溶出フラクション中における凝集体形成阻止を行う目的で、各溶出液に終濃度が0.05M以上となるようにアルギニンを添加し、また、pH5のリン酸ナトリウム溶液を用いて各溶出液のpHを5〜6として、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。なお、凝集体分離用クロマトグラフィー条件を以下に示したほか、ゲルろ過クロマトグラフィーは、比較例1と同様に評価した。
凝集体分離用クロマトグラフィー条件3(酸性pH、ステップワイズ塩溶出)
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
流速:0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)(3CV)
負荷:6.8mL
負荷後洗浄:PBS(pH7.4)(5CV)
溶出前洗浄液:10mM Tris/HCl(pH7)(5CV)
溶出液1:10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液2:50mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液3:300mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(4CV)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム(4CV)
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
【0099】
担体3の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離特性の評価結果を表3に示した。なお、溶出液2までに全ての抗体が溶出されたため、溶出液2までのデータを表3に示した。
【0100】
【表3】
【0101】
(実施例2)
ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックス(担体4)の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離
担体の調製例3で評価に用いたOmnifit社製のカラム(ID 0.66cm x Height 7cm)に充填した担体4を用いて、比較例2と同様に、これに中性条件下でヒトポリクローナル抗体を担体1mL当たり7mg負荷し、酸性条件下で各種イオン強度の溶出バッファーで抗体を溶出させた。ただし、溶出液2のイオン強度を3段階として評価した(凝集体分離用クロマトグラフィー条件4)。
【0102】
各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から蛋白質含量と収率(Yield)を、更に、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めて単量体含量(Monomer content)および単量体収率(Monomer Yield)を算出した。この時、比較例2で評価した担体3からの溶出画分のエリア値の総和を100%として、各溶出画分を評価した。なお、アフィニティー分離マトリックスからの溶出フラクション中における凝集体形成阻止を行う目的で、各溶出液に終濃度が0.05M以上となるようにアルギニンを添加し、また、pH5のリン酸ナトリウム溶液を用いて各溶出液のpHを5〜6として、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。なお、凝集体分離用クロマトグラフィー条件を以下に示したほか、ゲルろ過クロマトグラフィーは、比較例1と同様に評価した。凝集体分離用クロマトグラフィー条件4(酸性pH、ステップワイズ塩溶出)
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
流速:0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)(3CV)
負荷:6.8mL
負荷後洗浄:PBS(pH7.4)(5CV)
溶出前洗浄液:10mM Tris/HCl(pH7)(5CV)
溶出液1:10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液2:25mM、50mM、または75mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液3:300mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(4CV)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム(4CV)
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
【0103】
担体4の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離特性の評価結果を表4に示した。なお、比較例2の表3と比較するため、本実施例においても溶出液2までの結果を表4に示した。
【0104】
【表4】
【0105】
以上、表3および表4の結果から、担体3は、酸性溶出時にNaClのイオン強度がゼロの場合[表3における溶出フラクション:溶出液1(0mM NaCl)]でも99%以上の抗体が溶出するのに対し、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスである担体4は、酸性溶出条件下[表4における溶出フラクション:溶出液1(0mM NaCl)および溶出液2(25mM、50mM、75mM NaCl)]において、陽イオン交換基の機能によりイオン強度依存的溶出挙動を示し、プロテインAリガンドと陽イオン交換基の協奏効果として、モノマー選択性が有意に向上していることが確認できた。よって、本発明の担体4はプロテインAリガンドと陽イオン交換基のそれぞれの特性が協奏的に発現し、1クロマト工程で高い特異性と高いモノマー選択性が発揮されていることが確認できた。
【0106】
なお、担体4は、プロテインAからの抗体溶出pH条件において、陽イオン交換基に基づく抗体結合容量が、プロテインAアフィニティーリガンドに基づく抗体結合容量の約1/10であり、溶出pHが3.5の場合には、NaClのイオン強度がゼロの場合でも80%以上の抗体が溶出し、実施例1と比較して殆ど全ての抗体を溶出させるイオン強度が低かった。
【0107】
(比較例3)
プロテインA固定化担体(担体3)の酸性pH依存的溶出と凝集体の分離
担体の調製例3で評価に用いたOmnifit社製のカラム(ID 0.66cm x Height 7cm)に充填した担体3を用いて、これに中性条件下でヒトポリクローナル抗体を担体1mL当たり7mg負荷し、酸性条件下で低イオン強度の条件下、各種酸性溶出pHにて抗体を溶出させた(凝集体分離用クロマトグラフィー条件5)。
【0108】
各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から蛋白質含量と収率(Yield)を、更に、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めて単量体含量(Monomer content)および単量体収率(Monomer Yield)を算出した。この時、各クロマトの各々の溶出画分のエリア値の総和を100%として、各溶出pH条件の差異を評価した。なお、アフィニティー分離マトリックスからの溶出フラクション中における凝集体形成阻止を行う目的で、各溶出液に終濃度が0.05M以上となるようにアルギニンを添加し、また、pH5のリン酸ナトリウム溶液を用いて各溶出液のpHを5〜6として、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。なお、凝集体分離用クロマトグラフィー条件を以下に示したほか、ゲルろ過クロマトグラフィーは、比較例1と同様に評価した。
凝集体分離用クロマトグラフィー条件5(酸性pH溶出)
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
流速:0.6mL/分(接触時間:4分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)(3CV)
負荷:6.8mL
負荷後洗浄:PBS(pH7.4)(5CV)
溶出液:10mM酢酸(pH3.25,pH3.5,または、pH3.75)(8CV)
再生液: 0.1M酢酸(4CV)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム(4CV)
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
【0109】
担体3の酸性pH依存的溶出と凝集体の分離特性の評価結果を表5に示した。
【0110】
【表5】
【0111】
表5の結果から、プロテインA固定化担体が元来有する緩やかなモノマー選択性の発現により、吸着IgGの一部が担体に残るように溶出pHを選定[表5における溶出フラクション:溶出液(pH3.75)]することにより、溶出液中のモノマー含量を増加させることが出来ることが確認できた。しかしながら、表4の結果として示される本発明の担体4[表4における溶出フラクション:溶出液1(0mM NaCl)+溶出液2(25mM NaCl)]と比較して単量体(モノマー)収率の低下割合が大きく、単量体(モノマー)含量の増加の割合も低かった。よって、本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスは、抗体アフィニティー分離マトリックスと比較して、高い単量体(モノマー)収率で、高い単量体(モノマー含量)を得ることの出来る優れた特性を有することが確認された。
【0112】
(比較例4)
プロテインA固定化担体と陽イオン交換クロマト担体連結体の酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離
カルボキシル基をリガンドに有する陽イオン交換クロマトグラフィー担体であるCM Sepharose Fast Flow(GEヘルスケア・バイオサイエンス社)を担体5とし、同社のカラム(ID 0.5cm x Height 2.5cm)に充填し、0.5mL容のミニカラムを調製した。これを担体の調製例3で評価に用いたOmnifit社製のカラム(ID 0.66cm x Height 7cm)に充填した担体3カラムの直下に接続し連結カラムとした(担体6)。これに中性条件下でヒトポリクローナル抗体を担体3カラム1mL当たり10mg負荷し、酸性条件下で各種イオン強度の溶出バッファーで抗体を溶出させた(凝集体分離用クロマトグラフィー条件6)。
【0113】
各溶出液をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、各溶出フラクション(画分)の蛋白質ピークエリア値から蛋白質含量と収率(Yield)を、更に、蛋白質ピーク分析から単量体(モノマー)と凝集体(多量体)等の比率を求めて単量体含量(Monomer content)および単量体収率(Monomer Yield)を算出した。この時、比較例3の担体3からの溶出画分のエリア値の総和を100%として、各溶出画分を評価した。なお、アフィニティー分離マトリックスからの溶出フラクション中における凝集体形成阻止を行う目的で、各溶出液に終濃度が0.05M以上となるようにアルギニンを添加し、また、pH5のリン酸ナトリウム溶液を用いて溶出液のpHを5〜6として、ゲルろ過クロマトグラフィーに供した。なお、凝集体分離用クロマトグラフィー条件を以下に示したほか、ゲルろ過クロマトグラフィーは、比較例1と同様に評価した。
凝集体分離用クロマトグラフィー条件6(酸性pH、ステップワイズ塩溶出)
カラム:ID 0.66cm x Height 7cm(Omnifit社製)
および、ID 0.5cm x Height 2.5cm(GEヘルスケア・バイオサイエンス社製)
流速:0.4mL/分(接触時間:6分)
ポリクローナル抗体(IgG):ガンマグロブリン・ニチヤク(日本製薬)
負荷液:2.5mg−IgG/mL(PBS:ダルベッコ・日水)
平衡化液:PBS(pH7.4)(3CV)
負荷:9.6mL
負荷後洗浄:PBS(pH7.4)(5CV)
溶出前洗浄液:10mM Tris/HCl(pH7)(5CV)
溶出液1:10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液2:25mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
溶出液3:250mM塩化ナトリウム含有、10mM酢酸(pH3.5)(8CV)
再生液:0.1M酢酸(4CV)
CIP液:0.1M水酸化ナトリウム、1M塩化ナトリウム(4CV)
中和・再平衡化液:PBS(pH7.4)
【0114】
担体6とした担体3と担体5の連結カラムの酸性条件下でのステップワイズ塩溶出と凝集体の分離特性の評価結果を表6に示した。
【0115】
【表6】
【0116】
表6の結果から、プロテインA固定化担体(担体3)と陽イオン交換クロマトグラフィー担体(担体5)を直列に連結したカラムは、モノマー選択性が低いほか、pH3.5で250mMまでイオン強度を上げても[表6における溶出フラクション:溶出液1+2+3]全抗体回収率が50%にも達しなかった。これに対し、表4に示すように、実施例2で示した本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスである担体4[表4における溶出フラクション:溶出液1(0mM NaCl)+溶出液2(25mM NaCl)]は、優れたモノマー選択性と高い回収率を達成しうることが確認できた。これらの結果から、プロテインAリガンドと陽イオン交換基が同一担体上に近接して存在することが、ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスとして重要であり、2種のリガンドが近傍で協奏的に機能することで高い回収率で、高いモノマー選択性を発揮しうることが確認された。
【0117】
以上、本発明により、ミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスとして、1クロマトグラフィー工程でプロテインAリガンドと陽イオン交換体の協奏的作用により、高い回収率で、単量体(モノマー)含量を向上することのできる新規分離モードの担体および使用方法が提供され、抗体の精製の効率化への貢献が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明のミックスモード抗体アフィニティー分離マトリックスは、抗体またはFc含有標的分子精製工程の第一クロマト工程において抗体を高純度化するのに有用であり、抗体医薬品の研究開発や製造において利用できる。