(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接続導管は、主要導管部と、前記主要導管部から延びる1以上の突出部とを含み、前記乾燥試薬は前記1以上の突出部および前記1以上の突出部間の各接合領域に格納され、前記主要導管部は、前記乾燥試薬の漸進的な再懸濁が発生する可能性のある反応領域を提供する、請求項1に記載の装置。
前記突出部は、主要部と前記接合領域におけるネック部とを含み、前記ネック部は、前記主要部よりも前記主要導管部に沿ってより小さな断面積を有する、請求項2に記載の装置。
前記下流チャンバと流体接続するオーバーフローチャンバをさらに含み、前記下流チャンバと流体接続するサイフォンをさらに含み、当該装置が遠心力を受け、サイフォンがプライミングされたとき、試料の所定の容積が前記下流チャンバ内の試料から吸い上げられるように、サイフォンの入口は前記下流チャンバの一部から径方向内側に配置される、請求項7に記載の装置。
前記計量チャンバは表面張力バリアを含み、表面張力バリアが前記計量チャンバと前記下流チャンバの間の毛管駆動流を停止するように構成される、請求項7から9のいずれかに記載の装置。
廃棄チャンバをさらに含み、前記廃棄チャンバは前記検出チャンバと流体接続され、前記検出チャンバから遠心力で駆動されたオーバーフローを受け取るために、前記検出チャンバから径方向内側に配置される、請求項7から10のいずれかに記載の装置。
前記検出チャンバ内の試料の少なくとも一つの画像を処理するように構成されたプロセッサをさらに含み、試料が血液試料である場合、画像における染色された細胞を分割するために、前記プロセッサは、下流チャンバ内の血液試料のヘマトクリット割合を決定するようにさらに構成された、請求項12または13に記載のシステム。
前記計量チャンバ内に含まれる試料が遠心力によって前記計量チャンバから前記下流チャンバに移動されるように、前記カートリッジを回転させるステップをさらに含む、請求項17または請求項18に記載の方法。
前記下流チャンバ内の血漿から細胞物質を分離するために前記カートリッジを回転させるステップと、いったん細胞物質が分離されると前記下流チャンバ内の試料を撮像するステップとをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デバイスのこのような一例は、Berkel Cらによって「迅速なポイントオブケア(POC)のための統合システム」に記述されている。ベルケルは、試験精度、品質管理、費用対効果を提供するポイントオブケアが望まれることを開示しているが、開示されたシステムは、依然として多くの欠点に悩まされている。タイミングや血流が厳密に監視され、濃度が精密に制御されている場合にだけこのシステムは有効である。さらに、このシステムが動作するには、大規模な訓練と専門の人員を必要とする。
【0005】
したがって、ここでは、ポイントオブケアで取られる高速で正確かつ手頃な血液分析を提供することができる強化された装置と方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、独立請求項1に記載されるように試料を撮像する際に使用するための装置が提供される。
【0007】
ある実施の形態では、装置は、試料を当該装置に受け入れるための入口と、接続導管と、前記試料を光学的に検出するための検出チャンバとを含む。前記接続導管は、前記入口を前記検出チャンバに接続し、前記試料が前記接続導管を通過するとき、前記試料と反応するための1以上の乾燥試薬を含む。漸進的な再懸濁を提供することにより、当該方法は、試料がカートリッジを通って流れるときに一連の独立した化学的反応が試料を処理することを可能にする。
【0008】
ある実施の形態では、前記導管は1以上の試薬でコーティングされている。
【0009】
前記試料は血液試料であってもよく、好ましくは前記1以上の乾燥試薬は、前記血液試料中の赤血球の選択的溶解のための溶血剤と、前記血液試料中の白血球を選択的に染色するための染色剤とを含む。これにより、好中球、リンパ球、単球、好酸球および好塩基球の集団を数えるのに適したアプローチが可能になる。
【0010】
ある実施の形態では、前記接続導管は、主要導管部と、前記主要導管部から延びる1以上の突出部とを含んでもよい。この実施の形態では前記乾燥試薬は前記1以上の突出部および前記1以上の突出部間の各接合領域に格納され、前記主要導管部は、前記乾燥試薬の漸進的な再懸濁が発生する可能性のある反応領域を提供する。前記突出部は主要部と前記接合領域におけるネック部とをさらに含み、前記ネック部は、前記主要部よりも前記主要導管部に沿ってより小さな断面積を有してもよい。
【0011】
好ましくは、前記接続導管は蛇行形状である。それゆえカートリッジは、当該システム内のスペースの要件および制約を考慮して、任意の望ましい形状に適合させることができる。
【0012】
好ましくは、アルデヒドにもとづく固定剤、ピクリン酸系固定剤およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーの族である白血球のために特化した安定化剤は、前記接続導管内に乾燥形態で格納される。好ましくは、前記接続導管は乾燥形態の界面活性剤をさらに含む。前記染色剤は、H&E染色剤、ロマノフスキー染色剤、異染性染色剤またはそれらの任意の組み合わせの族に属してもよい。
【0013】
前記検出チャンバは、平坦表面間の距離が0.03ミリメートル以下である二つの平行な平坦表面の間に制限されてもよい。好ましくは、前記接続導管は、幅2ミリメートル未満、長さ10ミリメートル以上、深さ0.02ミリメートルから1ミリメートルの間である。
【0014】
好ましくは、前記入口、前記接続導管および前記検出チャンバは、血液試料が毛管駆動流により前記入口から前記接続導管を通って検出チャンバへ流れるように寸法決めされる。前記接続導管の少なくとも一つの寸法は、前記入口の最小寸法よりも小さく、前記検出チャンバの少なくとも一つの寸法は、前記接続導管の最小寸法よりも小さくてもよい。これは、毛細管作用によって駆動流を提供することにより、カートリッジ内に流れを駆動するために外部の手段が存在する必要がないことを意味する。しかし、入口から接続導管及び検出チャンバを通る試料の圧力駆動流を提供するための外部ポンプを付加的にあるいは代わりに提供することができることが理解されるであろう。
【0015】
ある実施の形態では、当該装置は、試料の所定の容積を保持するように構成された計量チャンバであって、前記入口と前記接続導管とに流体接続された計量チャンバをさらに含む。この実施の形態では、当該装置はまた、前記計量チャンバと前記接続導管との間で試料を分割するために、前記計量チャンバおよび前記接続導管の間に配置されたスプリット機能と、前記計量チャンバと流体接続され、前記試料の所定の容積を受信するように構成された下流チャンバとをさらに含む。ある実施の形態では、前記下流チャンバへの流れは、回転軸の周りの当該装置の回転による遠心力により駆動されてもよい。前記下流チャンバへの液体の入口の各側にベントが設けられる。
【0016】
好ましくは、当該装置は、前記下流チャンバと流体接続するオーバーフローチャンバをさらに含み、前記下流チャンバと流体接続するサイフォンをさらに含む。当該装置が遠心力を受け、サイフォンがプライミングされた(呼び水を入れられた)とき、試料の所定の容積が前記下流チャンバ内の試料から吸い上げられるように、サイフォンの入口は前記下流チャンバの一部から径方向内側に配置される。これは試料が血液試料である場合に特に有利である正確な吸い上げ(サイフォニング)を可能にする。なぜなら血漿が正確に血液試料から吸い上げられることを可能にするからである。
【0017】
当該装置は空気流路網をさらに含み、前記空気流路網は、当該装置の1以上のチャンバを装置の外部に接続するために空気ベント開口部と空気流路網を含む。これは、装置内で発生するから過圧のリスクを回避できる点で有利である。この空気流路網は、例えば遠心力により検出チャンバからのオーバーフローを受け取る廃棄チャンバに接続されてもよい。前記空気流路網は、試料の導入を容易にするために装置外の大気に開放されてもよく、装置の回転中の試料の流出を防ぐために密閉可能にしてもよい。いったん密閉されると、空気流路網は、装置のチャンバと他の液体取り扱い構造の間の圧力均等化を可能にする閉ベント回路を提供してもよい。
【0018】
好ましくは、凝固血液を防止するために、乾燥した抗凝固剤を計量チャンバに格納してもよい。必要に応じて、計量チャンバは、計量チャンバと下流チャンバの間の毛管駆動流を停止するように構成された表面張力バリアを含んでもよい。表面張力バリアは、好ましくは、装置が回転軸に対して複数の所定の角速度以上で回転している場合に液体の流れがバリアを通過できるように構成され、それ以外の場合には流れを防止するように構成される。好ましくは、下流チャンバの容積は計量チャンバの容積よりも小さいため、オーバーフローチャンバに同じオーバーフローの一部が入る。これは、正確な計量を可能にする。
【0019】
ある実施の形態では、当該装置は廃棄チャンバをさらに含む。前記廃棄チャンバは前記検出チャンバと流体接続され、前記検出チャンバから遠心力で駆動されたオーバーフローを受け取るために、前記検出チャンバから径方向内側に配置される。したがって、廃棄チャンバはベント回路の詰まりを防止する。なぜなら、検出チャンバ内の試料から過剰な液体を制御された様式で脱出させることを可能にするからであり、したがって廃棄チャンバは拡張または膨張容器として作用する。ベントチャンバはベント網と直列に設けられるか、並列に接続されてもよい。好ましくは、前者の場合には、表面張力バリアはさらに、制御されていない液体がベント回路に流出するリスクを減少させる。
【0020】
当該装置はカートリッジ、例えば、円盤状のカートリッジとして提供されてもよく、好ましくは、駆動機構に係合するための特徴を有する。
【0021】
第2の態様では、独立請求項17に記載されるように上述の装置を含む、試料を撮像するためのシステムが提供される。
【0022】
ある実施の形態では、当該システムは前記検出チャンバ内の試料の少なくとも一つの画像を取得する撮像部をさらに含む。
【0023】
当該システムは装置を回転軸周りに回転させるためのドライブをさらに含んでもよい。回転のためのドライブが使用されたとき、液体が遠心力によってドライブを介して駆動されるように、装置の機能は好ましくは回転軸周りに配置される。
【0024】
当該システムは、入口から接続導管及び検出チャンバを通る試料の圧力駆動流を提供するための外部ポンプをさらに含んでもよい。
【0025】
当該システムは、前記検出チャンバ内の試料の少なくとも一つの画像を取得するように構成されたプロセッサをさらに含む。試料が血液試料である場合、プロセッサにより取得された少なくとも一つの画像は、溶解し染色された血液を示すであろう。前記プロセッサは、下流チャンバ内および/またはオーバーフローチャンバ内のヘマトクリット割合を決定するようにさらに構成されてもよい。下流チャンバおよびオーバーフローチャンバの両方の中のヘマトクリット割合を決定することによって、当該システムは、結果がオーバーフローチャンバへの流れから独立することを保証してもよい。
【0026】
軸周りに装置を回転させるためのドライブは、下流チャンバとオーバーフローチャンバに含まれる血液試料を沈降赤血球および血漿上清中へ二相分離させる遠心力を提供する。下流チャンバとオーバーフローチャンバの両方内の前記沈降赤血球と血漿の分離の回転軸に対する距離は、時間の関数としての光学画像取得の手段によって測定されてもよい。前記血漿と赤血球に富む相のそれぞれの長さは、時間の関数として回転軸に対して径方向に測定されてもよい。
【0027】
第3の態様では、独立請求項18に記載されるように試料を撮像するための方法が提供される。
【0028】
当該方法は、カートリッジの第一チャンバに試料を挿入するステップと、毛細管現象によって第一チャンバから接続導管を通って検出チャンバへ試料を流れさせるステップとを含む。試料が前記接続導管を通って流れる間に、1以上の乾燥試薬が徐々に再懸濁される。当該方法は、前記検出チャンバ内の試料の少なくとも一つの画像を取得するステップをさらに含む。漸進的な再懸濁を提供することにより、当該方法は、試料がカートリッジを通過するときに一つまたは一連の独立した化学反応が試料を処理することを可能にする。
【0029】
前記試料が血液試料である場合、前記1以上の乾燥試薬は、前記血液試料中の赤血球の選択的溶解のための溶血剤と、前記血液試料中の白血球を選択的に染色するための染色剤とを含んでもよい。これにより、好中球、リンパ球、単球、好酸球および好塩基球の部分母集団を数えるのに適したアプローチが可能になる。
【0030】
ある実施の形態は、前記検出チャンバ内で溶解し染色された血液の得られた画像を所定の画像のプロパティのしきい値と比較することによって、画像細胞分割および白血球の分類を実行するステップを含む。当該方法は、下流チャンバおよび好ましくは下流チャンバに接続されたオーバーフローチャンバ内の濃厚赤血球と血漿との間の界面の光学イメージング測定によってヘマトクリット割合を決定するステップをさらに含んでもよい。これは、当該方法によって取得された血球数の信頼性を向上させる。
【0031】
好ましくは、血液計量チャンバを血液で充填するステップは毛管作用によって行われる。第1チャンバと血液計量チャンバは、共通の入口から充填されてもよい。当該方法はまた、計量チャンバに含まれる血液が遠心力によって前記血液計量チャンバから下流チャンバに移動されるように、検知カートリッジを回転させるステップをさらに含んでもよい。
【0032】
好ましくは、当該方法は、さらなる分析目的のために血漿の所定の容積を下流チャンバから抽出するステップをさらに含んでもよい。したがって、当該方法は、血液試料が統合された方法でさらに解析されることを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書に記載されるのは、オンチップおよびポイントオブケア技術の枠組みの中で統合された血液検査を提供する血液試料の取り扱いおよび処理のための小型化されたアセンブリである。さらに本明細書に記載されるのは、血液試料体積の計量、ヘマトクリット値及び赤血球沈降速度の測定、白血球亜集団の絶対差分数の測定、および血漿の抽出と分注が同一の装置に結合されたマイクロ流体の実施の形態である。好ましくは、アセンブリは、抽出された細胞を含まない血漿を免疫学的検定試験のために下流で使用することができるものである。
【0035】
また、本明細書に記載されるのは、血液試料を処理するための独立した一連の化学反応を可能にする装置であり、一連の化学反応には、好ましくは赤血球の溶解と白血球の差別的染色が含まれる。白血球の5つの差別的分類は、その後、好中球、リンパ球、単球、好酸球および好塩基球の亜集団を計数するために調整することができる。さらに血小板の計数を行ってもよいことが理解されるであろう。
【0036】
図1Aは、試料注入口(21)、接続導管(20)、および検出チャンバ(30)といった主な流体構造を含むマイクロ流体装置(10)を示す。
【0037】
注入された血液試料は、毛管駆動流または圧力駆動流によって試料注入口(21)から接続導管(20)を通って流れる。接続導管(20)の形状及び長さは、蛇行構成を使用して、デバイス内でスペース節約が可能にするように調整されてもよい。
【0038】
接続導管(20)の軌道は、装置(10)の単一平面内に設けられる(一例では
図1Aに示すように曲がりくねった形状である)。平面蛇行形状が
図1Aに示されているが、装置内の血流の実質的に平坦な軌道を提供するのに適した任意の形状を設けることができることが理解されるであろう。試料の流れに対する障害を軽減するために、かつ、チャンバが血液試料をファイリングしている一方で、接続管(20)内の気泡の捕捉を防止するために、投影された軌道内の鋭角は避けるべきであることに留意すべきである。これは、血流が毛管駆動される場合に特に好ましい。
【0039】
血液試料は、
図1Aに示すように所定の出口(22)を通って接続管(20)を出る。血液試料は、その後、検出チャンバ(30)を充填することによって進行する。ここで好ましくは、検出チャンバ(30)は、空気を脱出させるための通気孔(ベント)(31)を含む。検出チャンバ(30)は、光学イメージングに適した二つの平坦で透明な表面を含む。
図1及び
図2の両方において示された検出チャンバ(31)は二つの平坦で透明な表面を有しているが、光学イメージングを可能にする別の構成を設けてもよいことが理解されるであろう。好ましくは、検出チャンバ(30)の高さを30マイクロメートル以下設定することにより、細胞計数を容易にするために血液細胞の単層がその中に収容されるようにしてもよい。しかし、検出チャンバ(30)の高さは、この高さに限定されるものではない。
【0040】
標準的なプロトタイピング戦略にしたがって、装置(10)は、マイクロ流体構造を含む二つの部分からできてもよい。これらは、例えばボンディング技術を使用して、任意の適切な手段によって一緒に組み立てられてもよい。組み立て前に、接続導管(20)は、その中の特定の位置に乾燥試薬を格納するように適合させることができる。乾燥試薬は、好ましくは、装置(10)の外側で所定の濃度の揮発性溶液中に準備される。試薬の正確な量及び濃度は、試薬の溶解度に依存するであろう。溶液が準備されると、溶液の所定の容積が接続導管(20)の所定の位置に分配される。
図1Aに示すように、蒸発により、試薬は、接続管(20)の濡れ面積(23)内に堆積される。この手順は、乾燥格納に対する所望の試薬の量に応じて必要な回数だけ繰り返してもよい。
【0041】
注入された溶液の容積及び表面張力が好ましくは、接続導管(20)の範囲内で適切な充填および閉じ込めを可能にするように選択されることにより、所定の長さの乾燥試薬の明確に定義されたパッチを接続導管(20)内の明確に定義された位置に配置することができる。
【0042】
接続導管(20)は、乾燥試薬の少なくとも2種類、例えば溶血剤や染色剤を収容する。溶血剤の役割は、検出チャンバ(30)が完全に充填される前に、血液試料から赤血球を選択的に溶解することである。検出チャンバが処理された血液試料で満たされたとき検出チャンバ(30)内に赤血球が存在することを避けることにより、白血球数およびその後の分類によってもたらされる誤った解釈が低減される。
【0043】
さらに、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色剤、ロマノフスキー染色剤、異染色性染色剤のファミリー又はそれらの任意の組み合わせからの染色剤は、白血球の差別的な染色のために使用することができる。細胞質および核の粒度、サイズ、形状などの形態学的特徴を有する色情報の組み合わせから、調査中の部分母集団の各々についてはっきり区別できる特徴のポートフォリオを得ることができる。
【0044】
さらに、安定剤がいくつかの実施の形態において提供される。安定化剤はアルデヒドベースの固定剤、ピクリン酸系固定剤、およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーの族であってもよいし、接続管(20)内の乾燥試薬として含めてもよい。このような安定剤は、白血球膜および全体的な細胞構造に堅牢性を維持し付与するために使用される。
【0045】
界面活性剤がまた、いくつかの実施の形態では、接続導管(20)内の乾燥試薬として含まれる。界面活性剤は、血液試料と接続導管(20)の内壁との間の表面張力を減少させるために使用することができる。そのような分散剤、洗剤及び乳化剤としての使用などの界面活性剤の他の特性は、血液試料と乾燥試薬の反応を改善するためにも有用である。
【0046】
図1Bに示すように、入口から接続導管(20)を充填しながら、血液容積(25)は、乾燥試薬(26、27、28)の一連のパッチに遭遇する。
図1Bにおいて乾燥試薬の 三つのパッチが提供されているが、任意の数(一つ以上)のパッチが接続導管(20)内に設けられてもよいことが理解されるであろう。血液試料が一つまたは複数のパッチの上を流れるため、血液試料は試薬を洗浄して溶解させ、試薬は血液容積を通して徐々に拡散し、化学反応を促すであろう。このような反応の動力学は、血液流速および乾燥試薬のパッチの長さに主に依存する。接続導管(20)に格納された乾燥試薬の量とどのようにそれが簡単に血液中に溶解するかもまた動力学に影響を与えるであろう。
【0047】
最初に乾式化学パッチに達する血流の前面が、その溶解性およびシステム内の界面活性剤の存在に依存して、乾燥試薬のより大きな程度を洗浄する可能性が高いことに留意されたい。したがって、血液容積に沿って流れ方向と反対に溶解乾燥試薬の濃度が減少することが予想される。乾燥試薬の堆積面の法線方向(すなわち接続導管(20)の高さを含む方向)に沿って、溶解乾燥試薬の濃度がより高速に均質化することが期待される。言われているように、検出チャンバ(30)の容積は、好ましくは、接続導管(20)に含まれる血液容積の所定の画分に一致するように設計されることで、処理された血液が前記画分内でできるだけ均一である特性を表すことを確実にすることができる。
【0048】
さらに、いかに多くの反応が接続導管(20)を通じて起こることを意図するかによって、当然のことながら、パッチの数、それぞれの乾燥含量の化学組成、血液流速および/または接続導管(20)容積は、特定の用途に適合するように調整することができる。
【0049】
処理された試料の光学にもとづいた検出が発生する検出チャンバ(30)から少なくとも一つの反応部位(26、27、28)を分離することの利点は次の通りである。検出チャンバ(30)の領域および高さは染色白血球の適切な検出のために独立して調整することができ、シリアル反応に関与する乾燥試薬の更なる痕跡、例えば、視野内の使用下で染色剤の回避された沈殿物を視野から除外することができる。染色された白血球の一つの層と、各白血球亜集団の統計的に有意な数を提供するのに十分な処理された血液容積を収容する領域とを含むように、検出チャンバ(30)の高さを設定してもよい。
【0050】
さらなる例では部分的または全体的な白血球数及びヘマトクリット推定及び更なる分析の目的のための血漿抽出の同時測定のための装置が開示されている。
【0051】
以下のマイクロ流体デバイスは、
図2Aに示すように、主要流体構造を含む。すなわち、試料入口チャンバ(21)、接続導管(20)、検出チャンバ(30)、廃棄チャンバ(50)、計量チャンバ(60)、下流チャンバ(70)、オーバーフローチャンバ(80)、空気流路網(90)、流れバリア弁(61,62,63)、およびサイフォン(71)である。装置(10)において実質的に均等な空気圧力分布を提供するために、空気流路網(90)は、注入された血液試料で満たすか空にしたすべての流体構造間の空気の入れ替えを支援する。マイクロ流体構造およびその動作の設計は、空気流路網(90)に試料が入るのを防止する。さもなければ、減圧および過圧の領域が装置(10)において生じ、それによってその流体の機能を損なうことがある。
【0052】
装置(10)は、二つの流体レジーム、すなわち毛管駆動流と遠心圧力駆動流で動作させることができる。したがって、当該装置は、遠心分離により、流体の流れを駆動するために、
図2Aに示すように、回転軸(100)を中心に回転可能に設計することができる。
【0053】
本明細書に記載のすべての流体構造は、回転軸(100)に対する極座標で設計することができる。したがって、すべての構造は回転軸(100)に関して、それらの径方向及び角度方向の寸法と配置によって特徴付けられる。回転軸(100)周りに装置(10)が回転すると、装置(10)内の液体試料は遠心力場を経験する。
【0054】
投入された血液試料の異なる容積を計量し、さらなる独立した処理のための独立したアリコートで分注してもよい。血液学的試験のために、血液アリコートが同様の構成を有しており、投入された血液試料を代表するものであることが望ましい。その複雑な生物学的組成物のゆえに、血液試料が遠心力場にさらされると、その成分がそれらの密度に基づいて血液量内で自分自身を再分配し、それにより試料の元の均一性が損なわれる。本明細書に記載され
図2に例示される装置(10)はこの問題を克服するか軽減しようとするものである。
【0055】
図2Bに示すように、血液試料を投入する前に、装置(10)は、上述の流体モジュール群を接続する統合空気流路網(90)に含まれるオープンエアーベント(91)を介して大気圧にさらされる。入口チャンバまたは試料注入口(21)は入口チャンバ(21)を装置(10)の外部に接続する開口部(24)を含む。試料が前記開口部(24)に投入されると、試料は毛管作用のみによって入口チャンバ(21)内に移動し、
図2Bの斜線部(2)に図示されているように、同時に計量チャンバ(60)と接続導管(20)に向かってチャンバ(21)を充填し始める。
【0056】
その間、計量チャンバ(60)は投入された血液試料の所定の容積まで実質的に完全にいっぱいになる。計量チャンバ(60)は、好ましくは
図2Cの斜線部(4)に示すように毛細管現象により充填しながら、気泡の捕捉を避けるように形作られる。一つ又は複数の流れバリア(障壁)弁が計量チャンバ(60)を周囲の流体モジュール群に接続するために計量チャンバ(60)内に配置され、血液試料が毛管現象によってバリア弁を通って流れないことを保証する。
図2Cに示されるように、流れバリア弁(61、62)は、目詰まりを防止し、計量チャンバ(60)から装置(10)の外部への空気の放出を確実にするために空気流路網(90)に接続される。毛管充填時に計量チャンバ(60)の一つ又はそれ以上の点からエア抜きを提供することは、計量チャンバ(60)の完全な充填を可能にする。好ましくは、いくつかの実施の形態では、計量された血液試料の望ましくない凝固を避けるために、乾燥した抗凝固剤がさらに計量チャンバ(60)に加えられる。
【0057】
血液試料が接続導管20に達すると、
図2(c)の斜線部(6)に示されるように、血液試料は毛管現象によって接続導管を満たす。
図1を参照して上述したように、血液試料が接続導管(20)に含まれる乾式パッチ(26、27、28)上を流れる一方、化学反応が血液を操作する。血液試料が毛細管によって検出チャンバ(30)に入ると、血液試料は、好ましくは、既に赤血球溶解剤および白血球に対する差別的染色と既に反応している。
【0058】
検出チャンバ(30)は統合空気流路網(90)への少なくとも一つの接続を含んでもよい。二つの接続(92、93)が
図2Cに示されているが、任意の数の接続が提供されてもよいことが理解されるであろう。
【0059】
図2Dの斜線部(8)に示すように検出チャンバ(30)が染色された白血球試料で満たされている間、
図2Dに示すように、接続(92,93)は空気が逃げることを可能にする。各接続空気流路は、処理された血液量が毛細管現象によって空気流路に入るのを防止するための流れ遮断(バリア)弁を含んでもよい。空気流路は、回転軸(100)に対して装置(10)の径方向内側に位置する廃棄チャンバ(50)に検出チャンバ(30)を接続する。廃棄チャンバ(50)の役割は、以下でより詳細に説明する。
【0060】
図2Eの斜線部(12)で示すように、いったん検出チャンバ(30)が血液試料で実質的に満たされると、装置(10)は、顕微鏡アセンブリと移送機構を備えた器具内に配置されてもよい。顕微鏡アセンブリ(10)は、レンズ、フォーカス機構、およびデジタルカメラを含んでもよい。移送機構は装置(10)の角度位置を制御することができる。顕微鏡アセンブリによって検出チャンバ(30)の先端の一つの正確な位置合わせを補助し、その後、検出チャンバ(30)内の一連の位置を規定する増分角度変位を続けるために、位置センサを使用してもよい。各位置において、処理された血液試料のフォーカスの合った画像を所定の倍率で撮影することができる。さらに、正確な径方向位置決め機構を、検出チャンバ(30)の径方向走査のための装置(10)に結合することができる。装置(10)はまた、離散位置決めのために固定化されたり、ゆっくりと回転させてもよく、全ての流体の機能がさらなる干渉や支援なしに、血液試料の毛細血管に基づく処理によって達成されてもよい。
【0061】
計量チャンバ(60)の充填と検出チャンバ(30)内の染色された白血球の画像取得が完了するとすぐに、装置(10)は、好ましくは遠心力にもとづいた流れで動作する。この時点で、入口チャンバ(21)の開口部と空気ベントエスケープ(91)が封止されてもよく、将来の血液試料と空気の交換は、装置(10)内で排他的に起こる。装置(10)が回転軸(100)周りに所定の角速度で回転し始めると、それに含まれる血液容積は、血液試料を強制的に流れさせる外向き径方向に向かう遠心力を受ける。いくつかの実施の形態において、同様の器具は、毛細管流動、画像取得および遠心流動段階の過程で使用される。
【0062】
いくつかの実施の形態では、計量チャンバ(60)は、計量チャンバ(60)と入口チャンバ(21)の間のスプリット機能(64)を含む。スプリット機能(64)は、計量チャンバ(60)と入口チャンバ(21)の間の狭い通路によって特徴づけられ、好ましくは、丸みを帯びたエッジ形状のようなとがった形状を有する。遠心力が作動されると、スプリット機能(64)のエッジに垂直である装置(10)の径方向内側の位置を占める血液容積はこの時点で壊れ、それによって、さらなる処理のために計量チャンバ内で明確に定義された容積が提供されるであろう。
【0063】
流れバリア弁(62)は、好ましくは、空気流路網(90)に接続されて設けられ、
図2Fに示されるように、閉塞を防止して血液試料の分割(スプリット)イベントのために必要とされる空気の摂取を可能にするために、流量バリア弁をスプリット機能(64)と連携させてもよい。装置(10)を以前に充填した血液連続体は、結果として二つの独立した画分に分割される。すなわち計量チャンバ(60)に含まれる容量と、入口(21)、接続導管(20)および検出チャンバ(30)に含まれる容量とである。それぞれは
図2Fの斜線部(14)と(16)で示される。以前のマイクロ流体アーキテクチャは、n個の計量チャンバ(60)と、最初の血液試料から所定の容積を持つn個のアリコートを取得するためのそれらの間のn−1個のスプリットポイントとの系列で複製することができる。
【0064】
計量チャンバ(60)は、
図2Fに示されるように少なくとも一つの流れバリア弁(63)を含み、これは計量チャンバ(60)を下流チャンバ(70)に接続し、回転軸(100)に関して径方向外側に配置されている。回転時において、計量された血液容積に作用する遠心力が、バリア弁を通って流れる血液に向けてバリア弁(63)がもたらす表面張力を克服するのに十分であるならば、流れバリア弁(63)が制動をかける。計量チャンバ(60)と下流チャンバ(70)に計量チャンバ(60)を接続する流れバリア弁(63)とで具体化されたスプリット機能(64)で発生する制動イベントは、好ましくは計量チャンバ(60)で囲まれた血液容積の正確な分別のために同期される。その後、
図2Fのグレーアウト部(18)によって示されるように、計量チャンバ(60)は、血液が実質的に空になるまで、流れバリア弁(63)から下流チャンバ(70)へ流れる血液の実質的に連続的な流れを供給するように適合される。
【0065】
図2Fに示すように、血液の流れが下流チャンバ(70)の外側径方向の位置を充填し始める一方、下流チャンバ(70)とオーバーフローチャンバ(80)の間の接続(81)に達するまで下流チャンバ(70)における血液メニスカスが径方向内側を上昇する。下流チャンバが満たされたとき血流が下流チャンバ(70)の全高を占有し、その結果、血流の各側から延びる二つの流体分離領域を定義するようになる。すなわち1)サイフォン(71)の側面上の下流チャンバ(70)の部分と2)オーバーフローチャンバ(80)に加えられた残りの容積である。これらの領域のそれぞれは、好ましくは、一つ以上の接続により空気流路網(90)に接続される。
図2Fに示すように、下流チャンバ(70)を充填しながら大気を開放するために二つの接続(92、93)が設けられてもよい。これは、前記領域内に生じうる過剰圧力を回避するのに有利である。過剰圧力は血流に偏向力を及ぼすことがあり、それによって下流チャンバ(70)の不正確な充填の危険がある。
【0066】
下流チャンバ(70)とオーバーフローチャンバ(80)の間の接続(81)は、下流チャンバ(70)で囲まれた所定の容積を超える液体をオーバーフローチャンバ(80)に移送するように設計されている。その量は、オーバーフローチャンバ(80)が部分的に血液で満たされるように、計量された血液量よりも小さいことが好ましい。
【0067】
このような構成により、以前に計量された血液試料の二つの独立した画分を得ることができる。さらに、オーバーフローチャンバ(80)内にこのような構成の血液が存在することは、下流チャンバ(70)の完全な充填を確認するための品質管理として使用することができる。
【0068】
下流チャンバ(70)とオーバーフローチャンバ(80)の両方を充填しながら、上述したように、計量された血液試料が遠心力によって作動され、その結果、試料中に含まれる赤血球が沈降し始める。両方のチャンバ(70、80)の充填が達成された場合でも、いくつかの実施の形態では、装置(10)は、これらのチャンバー(70,80)の外側径方向位置に向かってさらに沈殿させるために回転が維持される。さらなる回転時に、下流チャンバ(70)に関しては斜線部(32,33)でオーバーフローチャンバ(80)に関しては斜線部(34,35)で示されるように、二つのそれぞれの赤血球が枯渇し、濃縮相が下流チャンバ(70)およびオーバーフローチャンバ(80)に含まれる血液量に徐々に現れる。
【0069】
相間の遷移は、沈殿が進行するにつれてより顕著になる。時間の関数としての下流チャンバ(70)内の血漿容積とチャンバ材料容積との間の界面の径方向位置の画像取得は、赤血球沈降速度を測定するために使用することができる。この界面は、
図2Gにおける特徴(36)によって示されている。沈降プロセスが実質的に完了すると、はっきりした界面をもつ二相の血液試料が残存する。一つは無細胞血漿を含み、低密度画分で、径方向内側にあり、もう一つは赤血球と他の細胞物質の完全充填された堆積物を含み、より高密度の画分で、径方向外側にある。これは、それぞれ下流チャンバ(70)に関しては斜線部分(37)および(38)で、オーバーフローチャンバ(80)に関しては斜線部分(39)および(40)で示されている。
【0070】
画像取得手段により回転軸(100)に対して半径方向に沿って両方の画分の度合いを測定することができる。これらの度合いの比率は、試料のヘマトクリットの直接的な尺度である。小型光学顕微鏡の倍率が血漿−赤血球相および界面の適切な視覚化のために調整されるならば、当該画像取得方法は、染色された白血球の撮像のために既に述べた説明に従ってもよい。
【0071】
ヘマトクリット計算は、いくつかの実施の形態では、下流チャンバ(70)およびオーバーフローチャンバ(80)の両方の測定値を組み合わせることによって行われる。これらのチャンバ(70,80)の設計、装置(10)の回転速度と回転時間は、沈降及びヘマトクリット測定の両方に影響を与える可能性がある。下流チャンバ(70)及びオーバーフローチャンバ(80)の充填が実質的に完了するまで、沈降による流動血液試料の二相分離が既に発生していることに留意することが重要である。これは、血液試料が下流チャンバ(70)のオーバーフローレベルに達したときに、オーバーフローチャンバ(80)に向かって流れる血液容積が部分的に赤血球から枯渇する可能性があることを意味する。したがって、下流チャンバ(70)とオーバーフローチャンバ(80)上のヘマトクリットの測定は、それぞれより高いヘマトクリット結果とより低いヘマトクリット結果を明らかにする。これは、より正確な結果をもたらす可能性があることから両方のチャンバ(70,80)上のヘマトクリット測定が好ましいとされる理由である。
【0072】
同様に、ヘマトクリット値は、赤血球沈降速度の測定値に影響を与える。すなわちヘマトクリット値が低いほど、より速く沈降メカニズムが発生する。再び、測定された沈降速度は、好ましくは、このようなバイアスを考慮して補正される。
【0073】
図2Iに示すように、いったん赤血球沈降及びヘマトクリット測定が完了すると、下流チャンバ(70)はまた、無細胞血漿(71)を抽出するためのサイフォンを含んでもよい。下流チャンバ(70)を充填した血液試料がサイフォン(71)の入口(78)に達すると、それは、下流チャンバ(70)に含まれる血液のメニスカスでサイフォンレベルに含まれる血液容積のメニスカスを部分的に充填するであろう。
図2Iに示すように、メニスカスが特徴(81)で示される入口レベルに達すると、サイフォンレベルが到達される。下流チャンバ(70)とオーバーフローチャンバ(80)との間のこの移行は、回転軸(100)に対して正確な径方向距離によって定義される。サイフォン(71)の時期を逃したプライミング(呼び水が入ること)を回避するために次のことが好ましい。1)サイフォンクレスト(79)が平衡半径に対して内側に放射状に位置すること、および2)サイフォン(71)に含まれる血液量に作用する遠心力が、入口(78)とクレスト(79)の間に含まれるサイフォン分岐の遠心力の反対方向を有する血液容積(77)に作用する毛管力を克服すること。
【0074】
装置(10)が回転を停止するか、または毛管力が遠心力に打ち勝つような低い角速度で回転するとき、プライミングが完了するまでサイフォン(71)を介して血液容積が進行する。サイフォン(71)内の血液容積の径方向の位置は、サイフォンの入口(78)の径方向位置と比較して外半径(79A)の位置に到達していることが好ましい。この時点で、装置(10)は回転を開始し、下流チャンバ(70)の頂部とサイフォン(71)の入口(78)の間に含まれる細胞を含まない血漿がサイフォン(71)を介して排出を開始する。
【0075】
下流チャンバ(70)の寸法と、下流チャンバ(70)に関するサイフォン入口(78)の位置とを適切に決めることによって血液容積を容易に調整することができるならば、記述した好ましい手順は血漿の正確な量の分注を保証する。抽出された血漿が赤血球で汚染されていないことを保証するために、サイフォンの入口(78)は、好ましくは、血漿−赤血球相転移から、上方に位置するか、または径方向内側に位置する。このような遷移は血液試料のヘマトクリット値に依存するため、実際に見つかった最大値をはるかに超える値である最大65%のヘマトクリットを有する試料に対してサイフォン入口(78)を配置してもよい。分注された血漿量をさらに処理して追加のテストのために使用することができる。
【0076】
図2Fに示すように、装置(10)が回転し始めると、スプリット機能(64)で分割された入口(21)、接続導管(20)、および検出チャンバ(30)に含まれる血液量は、外部の遠心力の影響下で変位する。
図2Fの特徴(41)及び(42)によって示されるように、中身が充填された容器の形状と容積から独立して静水圧を維持するために、血液容積の末端を規定するメニスカスは、好ましくはそれ自身を同じ半径のレベルにする。
【0077】
このレベリングの結果として、血液試料は、廃棄チャンバ(50)に向かって空気流路(92,93)を流れる。これは、回転速度/遠心力が空気流路(92、93)内に具現化された流れバリア弁の表面張力を克服する場合に発生する。好ましくは、スプリット機能(64)の下、すなわち回転軸(100)に対して外径上の他の極端な血液分画上でのメニスカスと血液メニスカスが平衡するまで、血液メニスカスが廃棄チャンバ(50)内に上昇することを確実にするように流体構造は設計される。両方のメニスカスの平衡の径方向の位置は流路と前記血液を含む容器の容積に依存する。
【0078】
この平衡半径は、好ましくは、廃棄チャンバ(50)内に配置された表面張力バリア(52)の下で起こる。
図2Fに示すように、このバリア(52)は、いったんマイクロ流体ディスクの回転が停止すると、廃棄容器(50)内の血液が毛細管流によって流路(94)を介して空気流路網(90)に到達しないことを保証する。
【0079】
いくつかの実施の形態では、
図2Aに示すように、装置(10)は、カートリッジとして提供される。いくつかの実施形態では、カートリッジは、中間接着層によって一緒にされた二つの透明平面円形の半分で構成されるCD/DVDの構成に似ている。その半分は、好ましくは、接着剤層から切り出された検出チャンバ(30)を除いて、上述のマイクロ流体構造と外部への開口部が刻まれている。マイクロ流体構造の正確な位置合わせで、これら三つの部分が組み立てられ結合されて自己完結型のカートリッジを形成してもよい。
【0080】
一例では、接続導管(20)は長さ30ミリメートル、幅0.6ミリメートル、深さ0.2ミリメートルである。この接続導管(20)は一連の三つの連続的なリアクションのために試験された。三つの連続的なリアクションは、安定剤としてグルタルアルデヒドを含む長さ10ミリメートルであった第1の反応部位、界面活性剤と溶解剤(それぞれサーフィノールとサポニン)の混合物をもつ長さ10ミリメートルの反応部位、および染料の混合物をもつ長さ10ミリメートルの反応サイトを含む。この例では、染料の混合物は、白血球の5部構成の分類のために差別的な色をもたらすエオシン、メチレンブルーおよび基本的なオレンジ色21の混合物を含んでいた。すなわち、リンパ球は青色、単球は青/紫に染まり、好中球が青色の核と淡黄色の細胞質を呈し、好酸球は青核と濃い黄色の顆粒を示し、好塩基球は明るいピンクに染まる。他の公知の試薬及びそれらの組合せを当該装置において使用してもよいことが理解される。また、試薬が接続導管(20)に異なる寸法を有して配置されてもよいことが理解されるであろう。
【0081】
上述の構成が3.6マイクロリットルの接続導管(20)に対する容積を定義する一方、検出チャンバ(30)はその容積の1マイクロリットルを保持するように設計された。この例の検出チャンバ(30)は、細胞の単一の層を収容するために20マイクロメートルの高さを有する。
図3は、この例のいくつかの染色された白血球を用いて得られた画像を表す。接続導管と検出チャンバの寸法を調整してもよいことができることが理解されるであろう。
【0082】
計量チャンバ(6)と下流チャンバ(70)は、この例ではそれぞれ5マイクロリットルと4 マイクロリットルに対応するように設計された。この例では、1マイクロリットルの細胞を含まない血漿がサイホン(71)を介して下流チャンバ(70)から排出された。
【0083】
ここに記載された装置の実施の形態は、部分的な白血球数および血液のヘマトクリット割合の両方を決定することができる。
【0084】
上述の実施の形態は血液試料の処理のために適しているが、上記の実施の形態の少なくともいくつかは、任意の液体試料、例えば、撮像の前に一つ以上の試薬と反応させるべき任意の液体を処理するのに適している。実際、記載された再懸濁と他の液体処理機構および構造は、撮像を伴わないアプリケーション、例えば試薬の使用がそれ自体でまたは他の検出メカニズムと結合して必要とされるようなアプリケーションにも同様に適用可能である。
【0085】
誤解を避けるために、流れバリア弁への参照は、毛管駆動流に対する障害を提供するために、表面張力バリアを組み込んだ接続導管を指す。表面張力バリアは、任意の適切な構成、例えば急な膨張または他の幾何学的設計、または導管のすべてまたは一部の表面処理によって提供されうる。
【0086】
上記の説明は、試料の撮像のための実施の形態に関してなされているが、本発明は、他の検出技術、例えば、試料成分の電気化学的検出、またはその後の検出なしの液体流の取り扱いにも同様に適用可能である。
【0087】
さらなる実施の形態は、次の節に開示される。
【0088】
1. 血液白血球の定量的測定のための方法であって、
血液がカートリッジの第1チャンバに挿入され、
血液が毛細管作用によって流体構造で第1チャンバから第2検出チャンバ内に流れ、
血液が前記流体構造に流れる一方、溶血剤の少なくとも一断片および染色剤の少なくとも一断片からなる異なる試薬の緩やかな再懸濁があり、
前記第2検出チャンバ内の溶解し染色された血液の画像を取り込み、
前記第2検出チャンバ内で溶解し染色された血液の得られた画像を所定の画像のプロパティのしきい値と比較することによって、画像細胞分割および白血球の分類を実行することを特徴とする方法。
【0089】
2. カートリッジはさらに血液計量チャンバを含み、
カートリッジが停止している間に、前記血液計量チャンバは、毛管作用によって血液が充填され、
カートリッジが回転し、計量された血液が前記血液計量チャンバから前記下流チャンバに遠心分離によって動かされ、
前記下流チャンバ内の濃厚赤血球と血漿との間の界面の光学イメージング測定によってヘマトクリット割合が決定される、請求項1に記載の方法。
【0090】
3. カートリッジはさらに血液計量チャンバを含み、
カートリッジが停止している間に、前記血液計量チャンバは、毛管作用によって血液が充填され、
カートリッジが回転し、計量された血液が前記血液計量チャンバから前記下流チャンバに遠心分離によって動かされ、
血漿の予め定義された容積が、さらなる分析の目的のために、前記下流チャンバからカートリッジの他の下流部分に取り出される、先行する節に記載の方法。
【0091】
4. そして、前記下流チャンバ内の濃厚赤血球と血漿との間の界面の光学イメージング測定によってヘマトクリット割合が決定される。
【0092】
5. 血液試料内の染色された白血球部分母集団の自動化された差分計数に適した装置であって、
装置内の血液試料挿入用の入口と、
あらかじめ定義された寸法を有する少なくとも一つの検出チャンバと、
あらかじめ定義された寸法を有する少なくとも一つの接続チャンバと、
前記検出チャンバを照射するための光学手段と、
前記検出チャンバの画像取得のための光学手段とを含み、
少なくとも一つの接続チャンバは前記入口を検出チャンバへ連結し、前記接続チャンバは少なくとも二種類の乾燥試薬を含み、乾燥試薬は(i)血液試料中の赤血球の選択的溶解のための溶血剤と、(ii)血液試料中の白血球を選択的に染色するための染色剤を含み、
前記乾燥試薬は、前記接続チャンバのあらかじめ定義された拡張部に格納されており、
前記の接続チャンバは、血液試料が前記接続チャンバを通って前記検出チャンバに流れる間に前記乾燥試薬が緩やかに再懸濁することによって、少なくとも一つの反応領域を含み、
セグメント化された細胞の光学的および形態学的特性によって前記取得された画像からの細胞のセグメンテーションと分類が行われ、
分類された細胞から差分および/または絶対的な白血球計数が行われる、ことを特徴とする装置。
【0093】
5a. 前記乾燥試薬は、少なくとも二つの異なる位置に格納され、前記接続チャンバのあらかじめ定義された拡張部分を占有している、節5に記載の装置。
【0094】
6. アルデヒドにもとづく固定剤、ピクリン酸系固定剤およびポリオキシエチレン− ポリオキシプロピレンブロックコポリマーの族である白血球のために特化した安定化剤は、前記接続チャンバ内に乾燥形態で格納される、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0095】
7. 界面活性剤は、前記接続チャンバに乾燥形態で添加される、先行請求項のいずれかに記載の装置。
【0096】
8. 前記溶血剤がサポニンファミリー試薬である、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0097】
9. 前記染色剤は、H&E染色剤、ロマノフスキー染色剤、異染性染色剤またはそれらの任意の組み合わせの族に属する、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0098】
10. 個々の乾燥試薬または乾燥試薬の混合物は、揮発性溶液中に再懸濁され、前記接続チャンバのあらかじめ定義された拡張部内に分配され、蒸発によって乾燥試薬として格納される、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0099】
11. 検出空洞が、0.03ミリメートル以下の検出チャンバの深さを定義する二つの表面の間の距離を有する二つの平行な平坦面の間に制限されている、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0100】
12. 前記接続チャンバの容積は、幅2ミリメートル未満、長さ10ミリメートル以上、深さ0.02ミリメートルから1ミリメートルの間によって定義される、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0101】
13. 前記入口から接続チャンバおよび検出チャンバを通る血液試料流が毛細管駆動流のみによって維持される、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0102】
14. 前記接続チャンバの少なくとも一つの寸法は、前記入口の最小寸法未満であり、前記検出チャンバの少なくとも一つの寸法は、前記接続チャンバの最小寸法未満である、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0103】
15. 前記入口から接続チャンバおよび検出チャンバを通る血液試料流は、外部ポンプによって加えられる圧力駆動流によって維持される、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0104】
16. 前記入口から接続チャンバおよび検出チャンバを通る血液試料流が、前記血液試料に作用する遠心力によって加えられる圧力駆動流によって維持される、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0105】
17. 少なくとも一つの計量チャンバと、
前記計量チャンバに具現された少なくとも一つのスプリット機能と、
少なくとも一つの下流チャンバと、
少なくとも一つのオーバーフローチャンバと、
少なくとも一つの廃棄チャンバと、
少なくとも一つの流れ遮断弁と、を有する追加の流体本体を含む、先行する節のいずれかに記載の装置であって、
前記流体本体が当該流体本体を含む平面に垂直な回転軸に対する極座標で表された節17に記載の装置。
【0106】
18. 前記空気流路網は、当該装置内に封入されたマイクロ流体構造体を外部に接続する空気ベント開口を含む、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0107】
19. 所定の容積を持つ計量チャンバは、前記接続チャンバと前記血液試料入口を共有する、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0108】
20. 前記計量チャンバの少なくとも一つの寸法は、前記入口の最小寸法未満である、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0109】
21. 乾燥抗凝固剤は、前記計量チャンバに格納される、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0110】
22. 前記計量チャンバは毛管弁として機能するあらかじめ定義された寸法を有する少なくとも二つの流れバリアを含む、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0111】
23. 前記入口に投入された前記血液試料による前記計量チャンバの充填は、毛細管手段によってのみ駆動される、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0112】
24. 前記流れバリアの少なくとも一つが通気ポートとして動作し、前記流れバリアの少なくとも一つが回転軸に対して半径方向外方に位置する少なくとも一つの下流チャンバに前記計量チャンバを接続する、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0113】
25. 前記下流チャンバの容積は、前記計量チャンバの容積よりも小さい、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0114】
26. 分割点に対して法線方向の外力を受ける所定の容積を有する投入された血液試料が、二つの独立した容積に強制的に分けられる場合、前記計量チャンバは前記分割点を特徴とする少なくとも一つのセクションを含む、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0115】
27. フロー遮断弁は、回転軸に対して所定の角速度で回転する装置に対して、計量チャンバと下流チャンバの割れ目を接続する、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0116】
28. 前記計量チャンバから前記下流チャンバへの血液試料の流れが、前記血液試料に加わる遠心力によって維持される、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0117】
29. 前記下流チャンバは、前記オーバーフローチャンバに接続される、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0118】
30. 下流チャンバとオーバーフローチャンバの両方が独立してベントされる、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0119】
31. 下流チャンバとオーバーフローチャンバの両方に含まれる血液試料が所定時間の遠心力を受け、その結果、血液試料が沈降赤血球および血漿上清中へ二相分離する、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0120】
32. 下流チャンバとオーバーフローチャンバの両方内の前記沈降赤血球と血漿の分離の回転軸に対する距離は、時間の関数としての光学画像取得の手段によって測定される、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0121】
33. 前記血漿と赤血球に富む相のそれぞれの長さは、時間の関数として回転軸に対して径方向に測定される、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0122】
34. 前記検出チャンバは、回転軸に対して半径方向内側の位置に配置される前記廃棄チャンバに少なくとも一つの流路によって接続される、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0123】
35. 前記廃棄チャンバは、回転軸から所定の距離にある毛管流バリアと空気流路網への少なくとも一つの接続とを含む、先行する節のいずれかに記載の装置。
【0124】
本発明は、上述の特定の実施形態に限定されるものではなく、上記開示の多くの変形及び改変は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく可能である。