(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335803
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】マニプレータを用いたスラブの起立方法
(51)【国際特許分類】
B21B 1/02 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
B21B1/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-884(P2015-884)
(22)【出願日】2015年1月6日
(65)【公開番号】特開2016-124014(P2016-124014A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390022873
【氏名又は名称】NSプラント設計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】池▲崎▼ 徹
(72)【発明者】
【氏名】北里 武
(72)【発明者】
【氏名】吉屋 元志
(72)【発明者】
【氏名】松田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 憲一
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊介
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭49−115058(JP,A)
【文献】
実開平05−024104(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/02,15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1500mm以上2500mm以下の幅を有するスラブの幅方向一側を、該スラブの長さ方向に渡って間隔を有して複数配置された鉤状のフィンガー部材で持ち上げ、前記スラブの幅方向他側の下側角部を中心として回動させ、前記スラブを水平状態から起立状態にするマニプレータを用いたスラブの起立方法であって、
前記各フィンガー部材を、前記スラブの幅方向一側の下面に引っ掛け、水平状態の前記スラブが20度以上30度以下の範囲内に傾斜するまで上昇させる傾動予備工程と、
前記各フィンガー部材を、更に上昇させると共に前記スラブの回動中心側へ移動させ、前記スラブが50度以上60度以下の範囲内に傾斜するまで、前記スラブを該スラブの幅方向他側の下側角部を中心として傾けるスラブ傾動工程と、
前記各フィンガー部材を更に前記スラブの回動中心側へ移動させて、前記スラブを起立状態にするスラブ起立工程とを有することを特徴とするマニプレータを用いたスラブの起立方法。
【請求項2】
請求項1記載のマニプレータを用いたスラブの起立方法において、前記スラブ傾動工程は、前記各フィンガー部材の上昇と前記スラブの回動中心側への移動を同時に行うことを特徴とするマニプレータを用いたスラブの起立方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のマニプレータを用いたスラブの起立方法において、前記フィンガー部材は、その基部が、駆動手段に設けられた回動軸に取付けられたフィンガーアームの先部に吊下状態で回動自在に設けられ、しかも前記フィンガーアームの長さが700mm以上1000mm以下であることを特徴とするマニプレータを用いたスラブの起立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブを水平状態から起立状態にするマニプレータ(マニピュレータ)を用いたスラブの起立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続鋳造によって得られたスラブの幅圧延は、水平状態に寝かせたスラブを起立状態にした後、このスラブを上下に対向配置された対となる水平ロール間で往復移動させて行っている(例えば、特許文献1参照)。このように、スラブを起立状態にする手段には、マニプレータが使用されている。
例えば、
図5に示すように、マニプレータ80は、テーブルローラ81群上のスラブ82の幅方向両側に配置され、移動手段によりスラブ82の幅方向に移動可能なアーム駆動台車と固定フレーム台車(図示しない)を有している。このアーム駆動台車と固定フレーム台車には、スラブ82の長さ方向に渡って配置された駆動側サイドガイド83と固定側サイドガイド84が、それぞれ取付け固定されている。
【0003】
また、アーム駆動台車には、クランク駆動手段が取付け固定され、これに連結された回動軸85に、フィンガーアーム86を介してスラブ82を持ち上げるフィンガー部材87が吊下状態で取付けられている。なお、
図5中の番号88は、フィンガー部材87が上昇及び下降する際のガイドであり、このガイド88もアーム駆動台車に取付け固定されている。
このように構成することで、マニプレータ80を使用してスラブ82を水平状態から起立状態にする場合、まず、フィンガー部材87の上昇動作のみで、水平状態のスラブ82をその傾斜角度θ1が55度程度になるまで傾斜させる。そして、駆動側サイドガイド83にスラブ82を支持させた後、移動手段によりアーム駆動台車を固定フレーム台車側に移動させ、駆動側サイドガイド83を固定側サイドガイド84に寄せて、スラブ82を起立させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−1202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記マニプレータを使用してスラブを水平状態から起立状態にする場合、幅狭(1500mm未満)のスラブであれば問題ないが、幅広(1500mm以上)のスラブであれば、以下のような問題が生じる。これを、
図6を参照しながら説明する。なお、
図6は、フィンガーアームの長さが850mmの場合の、フィンガーアームの回動角度θ2とスラブ幅との関係を示す説明図である。また、
図6のフィンガーアームの回動角度θ2が0度とは、フィンガー部材が最下端位置(即ち、スラブを持ち上げる前の待機状態)にあるときの基準角度を意味する(
図5の実線の位置)。
【0006】
図6に示すように、フィンガー部材87を上昇させてスラブ82の傾斜角度θ1を25度にする場合(
図6の◆印)、当然のことながら、スラブ82の幅が広くなるに伴って、フィンガーアーム86の回動角度θ2も大きくなることが分かる。
そして、スラブ82を起立状態にするに際しては、スラブ82の幅が1400mm程度までであれば、前記したように、フィンガー部材87の上昇動作のみで、水平状態のスラブ82をその傾斜角度θ1が55度となるまで傾斜させることはできる。しかし、それより幅広になると、フィンガー部材87の上昇可能な位置が、その上限値(フィンガーアーム86の回動角度θ2の上限値:68度程度)に近づき、スラブ82の傾斜角度θ1を55度にすることができなくなる(
図6の▲印)。
【0007】
なお、幅広のスラブ82でも、例えば、従来のフィンガーアームの長さ(回動半径に相当)850mmを、1300〜1500mmまで大きくした場合には、フィンガー部材87の上昇可能な高さ位置を更に高くでき、スラブ82の傾斜角度θ1を55度にすることは可能である。しかし、上記したフィンガーアームの長さ850mmは、従来の最大値であるため、これより長過ぎる場合、マニプレータの装置規模やフィンガー部材の重量が大きくなり、設備費がかさんで経済的でない。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、新たな設備投資を行うことなく、幅広のスラブを水平状態から起立状態にできるマニプレータを用いたスラブの起立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う本発明に係るマニプレータを用いたスラブの起立方法は、1500mm以上2500mm以下の幅を有するスラブの幅方向一側を、該スラブの長さ方向に渡って間隔を有して複数配置された鉤状のフィンガー部材で持ち上げ、前記スラブの幅方向他側の
下側角部を中心として回動させ、前記スラブを水平状態から起立状態にするマニプレータを用いたスラブの起立方法であって、
前記各フィンガー部材を、前記スラブの幅方向一側の下面に引っ掛け、水平状態の前記スラブが20度以上30度以下の範囲内に傾斜するまで上昇させる傾動予備工程と、
前記各フィンガー部材を、更に上昇させると共に前記スラブの回動中心側へ移動させ、前記スラブが50度以上60度以下の範囲内に傾斜するまで、前記スラブを該スラブの幅方向他側の
下側角部を中心として傾けるスラブ傾動工程と、
前記各フィンガー部材を更に前記スラブの回動中心側へ移動させて、前記スラブを起立状態にするスラブ起立工程とを有する。
【0010】
本発明に係るマニプレータを用いたスラブの起立方法において、前記スラブ傾動工程は、前記各フィンガー部材の上昇と前記スラブの回動中心側への移動を同時に行うことが好ましい。
【0011】
本発明に係るマニプレータを用いたスラブの起立方法において、前記フィンガー部材は、その基部が、駆動手段に設けられた回動軸に取付けられたフィンガーアームの先部に吊下状態で回動自在に設けられ、しかも前記フィンガーアームの長さが700mm以上1000mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るマニプレータを用いたスラブの起立方法は、各フィンガー部材を、スラブが20度以上30度以下の範囲内に傾斜するまで上昇させる傾動予備工程を有するので、引続き行うスラブ傾動工程において、各フィンガー部材を、更に上昇させると共にスラブの回動中心側へ移動させた場合に、スラブが横滑りすることを防止できる。
なお、スラブ傾動工程では、各フィンガー部材を、更に上昇させると共にスラブの回動中心側へ移動させるので、各フィンガー部材の高さ位置を過剰に高くすることなく、スラブを目標とする角度まで傾斜させることができる。
また、スラブ傾動工程では、スラブの傾斜角度θ1を、50度以上60度以下の範囲内としているため、引続き行うスラブ起立工程において、各フィンガー部材の上昇を停止もしくは継続し、この各フィンガー部材を更にスラブの回動中心側へ移動させた場合に、スラブを容易に起立状態にできる。
従って、幅が1500mm以上2500mm以下の幅広のスラブであっても、新たな設備投資を行うことなく、従来使用していたマニプレータを用いて、スラブを水平状態から起立状態にできる。
【0013】
また、スラブ傾動工程で、各フィンガー部材の上昇とスラブの回動中心側への移動を同時に行う場合、スラブを傾斜させる際の動作をスムーズにでき、例えば、スラブを傾斜させる際の動作でスラブの角部の位置がずれる恐れを低減できる。
【0014】
そして、フィンガー部材が、長さ700mm以上1000mm以下のフィンガーアームに設けられる場合、従来から使用しているマニプレータの設備仕様を大幅に変更することなく、更には全く変更することなく、このマニプレータをそのまま、幅広のスラブを起立させるために使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)〜(C)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係るマニプレータを用いたスラブの起立方法の準備工程の説明図である。
【
図2】(A)は同スラブの起立方法の傾動予備工程の説明図、(B)はスラブ傾動工程の説明図、(C)はスラブ起立工程の説明図である。
【
図3】傾動予備工程からスラブ起立工程までのフィンガー部材及びスラブの一連の動きを示す説明図である。
【
図4】(A)〜(C)はそれぞれ同スラブの起立方法のスラブ位置調整工程の説明図である。
【
図5】従来例に係るマニプレータの使用状態の説明図である。
【
図6】フィンガー部材が取付けられたフィンガーアームの回動角度と起立させるスラブの幅との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜
図4に示すように、本発明の一実施の形態に係るマニプレータを用いたスラブの起立方法は、スラブ10の幅方向一側を、スラブ10の長さ方向に渡って間隔を有して複数配置された鉤状のフィンガー部材11で持ち上げ、スラブ10の幅方向他側の角部12を中心として回動させ、スラブ10を水平状態から起立状態にする方法であり、準備工程、傾動予備工程、スラブ傾動工程、スラブ起立工程、及びスラブ位置調整工程を有している。なお、スラブ10を起立状態にする複数のフィンガー部材11を有するマニプレータ13は、従来公知のものである(
図5参照)。以下、詳しく説明する。
【0017】
まず、準備工程について説明する。
図1(A)に示すように、スラブ10の搬送方向に渡って間隔を有して複数配置されたテーブルローラ14により、スラブ10を、水平状態(寝かせた状態)でマニプレータ13まで搬送し、スラブ10の幅方向両側に対向配置された駆動側サイドガイド15と固定側サイドガイド16の間で停止させる。この駆動側サイドガイド15と固定側サイドガイド16は、移動手段によりスラブ10の幅方向に移動可能なアーム駆動台車と固定フレーム台車(図示しない)に取付け固定されている。
【0018】
対象となるスラブ10は、幅が1500mm以上2500mm以下、厚みが100mm以上500mm以下のものである。
ここで、スラブの幅が1500mm未満の場合、スラブが幅狭であるため、従来からのマニプレータの設備仕様を変更しなくても対応できる。一方、幅が2500mmを超えるスラブは、実操業においては存在しないため、上限値を2500mmとした。
【0019】
このとき、各フィンガー部材11のフック部17が、テーブルローラ14の高さレベルよりも上方(スラブ10よりも上方)にある場合は、クランク駆動手段(図示しない)に設けられた回動軸18を回動させて各フィンガーアーム19を回動(ここでは、時計回りに回動)させる(
図1(A)に示す二点鎖線の位置から実線の位置)。なお、各フィンガーアーム19は、その基部が、一つの回動軸18に取付けられているため、クランク駆動手段により回動軸18を回動させることで、各フィンガーアーム19を同期駆動できる。
【0020】
これにより、各フィンガーアーム19の先部に吊下状態で回動可能に設けられたフィンガー部材11のフック部17を、テーブルローラ14の高さレベルよりも下方に配置する。なお、各フィンガー部材11は、それぞれフィンガー部材11の背面側に設けられたガイド20に沿って、上昇動作及び下降動作を行う。
上記したクランク駆動手段、回動軸18、及びガイド22は、前記したアーム駆動台車に取付け固定されている。
【0021】
次に、
図1(B)に示すように、アーム駆動台車と固定フレーム台車を移動させ、駆動側サイドガイド15と固定側サイドガイド16で停止させたスラブ10を挟込み、スラブ10のセンターリング(位置決め)を行う。
このように、スラブ10のセンターリングが終了した後は、固定フレーム台車を移動させて、
図1(C)に示すように、スラブ10の幅方向他側の側面21と固定側サイドガイド16との間に、スラブ10の厚み分だけ隙間22が形成されるように、固定側サイドガイド16をスラブ10の側面21から離す。なお、上記した隙間22は、スラブ10の厚みよりも僅か(例えば、0を超え50mm以下の範囲)に広くしてもよい。
【0022】
次に、傾動予備工程について説明する。
図2(A)に示すように、クランク駆動手段で回動軸18を回動(ここでは、反時計回りに回動)させることにより、各フィンガー部材11を、そのフック部17をスラブ10の幅方向一側の下面23に引っ掛け、水平状態のスラブ10の傾斜角度θ1が20度以上30度以下の範囲内になるまで、上昇させる。
このとき、各フィンガー部材11のフック部17は、スラブ10の下面23を滑るため、スラブ10は、スラブ10の幅方向他側の角部12の位置がずれることなく、この角部12を中心として傾く。
【0023】
ここで、スラブの傾斜角度θ1が20度未満の場合、スラブの傾斜角度が小さ過ぎるため、引続き行うスラブ傾動工程で、フィンガー部材を更に上昇させると共に回動中心側へ移動させる際にスラブが横滑りし、角部を中心とした回動ができなくなる。一方、傾斜角度θ1が30度を超える場合、フィンガー部材の高さ位置を更に高くしなければならず、例えば、マニプレータの設備仕様等を変更しなければならない恐れがある。
以上のことから、傾動予備工程におけるスラブ10の傾斜角度θ1を20度以上30度以下の範囲内としたが、更には、下限を22度、上限を28度にすることが好ましい。
【0024】
続いて、スラブ傾動工程について説明する。
図2(B)に示すように、クランク駆動手段で回動軸18を更に回動させ、各フィンガー部材11を更に上昇させると共に、アーム駆動台車を移動させて各フィンガー部材11をスラブ10の回動中心側(固定側サイドガイド16側)へ移動させて、スラブ10をスラブ10の幅方向他側の角部12を中心として傾ける。これにより、従来のように、各フィンガー部材11の上昇動作のみで、スラブ10を目標とする角度まで傾斜させる必要がなくなる。
なお、この各フィンガー部材11の動作は、スラブ10の傾斜角度θ1が50度以上60度以下の範囲内になるまで行う。
【0025】
ここで、スラブの傾斜角度θ1が50度未満の場合、スラブの傾斜角度が小さ過ぎるため、引続き行うスラブ起立工程で、各フィンガー部材の上昇を停止し、これを更にスラブの回動中心側へ移動させる際に、スラブが横滑りし、角部を中心とした回動ができなくなる。一方、傾斜角度θ1が60度を超えれば、スラブを傾斜させるために長い時間を要するため、作業効率が低下する。
以上のことから、スラブ傾動工程におけるスラブ10の傾斜角度θ1を50度以上60度以下の範囲内としたが、更には、下限を52度、上限を58度にすることが好ましい。
【0026】
このスラブ傾動工程においては、各フィンガー部材11の上昇とスラブ10の回動中心側への移動を同時に行うことが好ましいが、各フィンガー部材11の上昇と、スラブ10の回動中心側への移動を、短い周期で交互に行ってもよい。
【0027】
次に、スラブ起立工程について説明する。
図2(C)に示すように、クランク駆動手段による回動軸18の回動を停止し、各フィンガー部材11の上昇を停止(又は継続)して、アーム駆動台車により各フィンガー部材11を更にスラブ10の回動中心側へ移動させる。これにより、スラブ10は、固定側サイドガイド16に当接又は僅少の隙間を有して起立状態になる。
ここで、以上に示した傾動予備工程からスラブ起立工程までのフィンガー部材11及びスラブ10の一連の動き(残像)を、
図3に示す。
【0028】
図3に示すように、傾動予備工程、スラブ傾動工程、及びスラブ起立工程を順次行うことにより、スラブ10の幅方向他側の角部12を中心として、スラブ10の幅方向一側端部が、スラブ10の幅寸法を回転半径とした回転運動の軌跡を描くように、水平状態のスラブ10を起立状態にできる。
これにより、フィンガー部材11を過剰に高く上昇させることなく、水平状態のスラブ10を起立状態にできる。従って、フィンガー部材11を上昇させるフィンガーアーム19の長さ(回動半径)も、従来と同等の長さ(例えば、700mm以上1000mm以下)でよく、設備仕様の変更等が不要になる。
【0029】
続いて、スラブ位置調整工程について説明する。
スラブ起立工程で、スラブ10を起立状態にした後は、
図4(A)に示すように、クランク駆動手段で回動軸18を回動(ここでは、時計回りに回動)させることにより、各フィンガー部材11のフック部17を、テーブルローラ14の高さレベルよりも下方に配置する(
図4(A)に示す二点鎖線の位置から実線の位置)。
そして、
図4(B)に示すように、起立状態となったスラブ10に向けて、アーム駆動台車により駆動側サイドガイド15を移動させ、スラブ10の厚み方向両側から、駆動側サイドガイド15と固定側サイドガイド16でスラブ10を挟込む。
【0030】
このように、駆動側サイドガイド15と固定側サイドガイド16でスラブ10を挟込んだ後は、アーム駆動台車と固定フレーム台車を移動させ、
図4(C)に示すように、駆動側サイドガイド15と固定側サイドガイド16をテーブルローラ14の幅方向中心位置へ向けて移動させる。
そして、アーム駆動台車と固定フレーム台車を移動させ、駆動側サイドガイド15及び固定側サイドガイド16とスラブ10との間に、隙間が形成されるように、駆動側サイドガイド15と固定側サイドガイド16をスラブ10から離す。そして、このスラブ10を上下に対向配置された対となる水平ロール(図示しない)間に噛込ませて、スラブ10の幅圧延を行う。
以上のことから、本発明のマニプレータを用いたスラブの起立方法を使用することで、新たな設備投資を行うことなく、幅広のスラブを水平状態から起立状態にできる。
【0031】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明のマニプレータを用いたスラブの起立方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
10:スラブ、11:フィンガー部材、12:角部、13:マニプレータ、14:テーブルローラ、15:駆動側サイドガイド、16:固定側サイドガイド、17:フック部、18:回動軸、19:フィンガーアーム、20:ガイド、21:側面、22:隙間、23:下面