特許第6335804号(P6335804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335804
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】シート検査装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20180521BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20180521BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G01N21/892 A
   G01B11/30 A
   G01N21/956 Z
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-4550(P2015-4550)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-130672(P2016-130672A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】北井 基善
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 昭夫
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−220022(JP,A)
【文献】 特開2013−092469(JP,A)
【文献】 特開2011−053044(JP,A)
【文献】 特開2011−70602(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0090489(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
G06T 1/00、7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に周期性を有する導電パターンが形成されたシートの検査装置であって、
前記シートを搬送する搬送部と、
前記シートを照明する照明部と、
前記シートからの透過光又は反射光を受光して濃淡画像を生成する撮像部と、
前記濃淡画像を高精細二値化し、前記導電パターンの周期性を有する特徴点の位置を認識して、前記シートの欠陥を検出する第1画像処理手段と、
を少なくとも含むシート検査装置。
【請求項2】
前記濃淡画像を低精細二値化して、前記周期性を有する導電パターンの抜けを検出する第2画像処理手段をさらに有する、
請求項1に記載のシート検査装置。
【請求項3】
前記基材が透明であって、前記撮像部は、前記シートを挟んで前記照明部と対向して配置され、前記シートからの透過光を受光して濃淡画像を生成する、
請求項1または2に記載のシート検査装置。
【請求項4】
前記周期性を有する導電パターンがメッシュ状であり、前記特徴点が該メッシュ状の交差部である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート検査装置。
【請求項5】
前記基材が合成樹脂フィルムである、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のシート検査装置。
【請求項6】
前記シートがタッチパネルの材料である、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート検査装置。
【請求項7】
前記周期性を有する導電パターンが印刷によって形成されている、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のシート検査装置。
【請求項8】
前記シートは前記周期性を有する導電パターンの端部に接続された電極および引出配線を含む非周期性配線をさらに有し、
前記シート検査装置は、前記濃淡画像を高精細二値化し、基準画像との照合によって前記非周期性配線の欠陥を検出する第3画像処理手段をさらに有する、
請求項1〜7のいずれか一項に記載のシート検査装置。
【請求項9】
基材上に周期性を有する導電パターンが形成されたシートの検査方法であって、
前記シートを搬送しながら、照明部により前記シートに光を照射して、撮像部により前記シートからの透過光又は反射光を受光して濃淡画像を生成するステップS1と、
前記濃淡画像を高精細二値画像に変換するステップS2と、
前記高精細二値画像上の、前記導電パターンの周期性を有する特徴点の位置を認識するステップS3と、
前記シートの欠陥を検出するステップS4と、
を有するシートの検査方法。
【請求項10】
前記ステップS4は、前記高精細二値画像および前記特徴点の位置に基づいて前記シートの欠陥を検出するステップである、
請求項9に記載のシートの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチパネル等に用いる導電パターンが形成されたシートの外観検査装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン用ディスプレイや街頭に設置される電子看板などで、大型スクリーンへのタッチパネルの組み込みが進んでいる。このような大型タッチパネルのセンサーにITO(インジウム錫酸化物)を用いると、ITO膜の抵抗値が高いことから、応答速度が遅くなる等の問題がある。特に、基材に樹脂フィルムを用いる場合には、高温での成膜ができずITO膜の抵抗値を下げることが難しいので、この問題はより深刻である。
【0003】
そこで、ITOの代替として、銀や銅の細線で配線パターンを形成することが検討されている。例えば、特許文献1には、金属細線でセンサー部の導電パターンを形成した、投影型静電容量方式タッチパネル用の導電シートが記載されている。また、特許文献2には、網目形状の金属配線を用いたタッチパネルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−152559号公報
【特許文献2】特開2010−277392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような金属細線を用いた導電シートに対しては、実用的な検査方法がなかった。導電シートはスクリーン表示部の前面に配置されるので、金属細線は線幅を細くしてメッシュ状や並列パターンに形成される。そのため、細線の一部に微細な欠陥があっても、抵抗率測定などの電気的な検査方法によって検出することが難しかった。
【0006】
他方、プリント回路基板の分野では、光学的に回路の画像を取得し、良品画像との照合によって、配線の欠陥・異物等の有無を検査する方法が知られている。しかしながら、タッチパネル用等の導電シートでは金属細線の幅がより細く、実用的な光学装置の光学的解像度よりも小さいため、画像照合によっては正確な検査ができないという問題があった。また、高度な画像処理を用いて画像照合を行おうとしても、処理すべき画像データのサイズが大きいため、実用的な処理速度で検査を行うことが難しいという問題があった。
【0007】
本発明は上記を考慮してなされたものであり、基材上に導電パターンが形成されたシートの欠陥を実用的な処理速度で検出可能なシート検査装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題に対して、本発明は、タッチパネル用等のシートの導電パターンが周期性を有することに着目し、該周期性を利用して検査を行う。
【0009】
本発明のシート検査装置は、基材上に周期性を有する導電パターンが形成されたシートの検査装置であって、前記シートを搬送する搬送部と、前記シートを照明する照明部と、前記シートからの透過光又は反射光を受光して濃淡画像を生成する撮像部と、前記濃淡画像を高精細二値化し、前記導電パターンの周期性を有する特徴点の位置を認識して、前記シートの欠陥を検出する第1画像処理手段とを少なくとも含む。
【0010】
この構成により、前記シートの欠陥を、実用的な処理速度で検出することができる。
【0011】
好ましくは、前記シート検査装置は、前記濃淡画像を低精細二値化して、前記周期性を有する導電パターンの抜けを検出する第2画像処理手段をさらに有する。
【0012】
好ましくは、前記基材が透明であって、前記撮像部は、前記シートを挟んで前記照明部と対向して配置され、前記シートからの透過光を受光して濃淡画像を生成する。
【0013】
好ましくは、前記周期性を有する導電パターンがメッシュ状であり、前記特徴点が該メッシュ状の交差部である。また、好ましくは、前記基材が合成樹脂フィルムである。また、好ましくは、前記シートがタッチパネルの材料である。また、好ましくは、前記周期性を有する導電パターンが印刷によって形成されている。
【0014】
また、好ましくは、前記シートは前記周期性を有する導電パターンの端部に接続された電極および引出配線を含む非周期性配線をさらに有し、前記シート検査装置は、前記濃淡画像を高精細二値化し、基準画像との照合によって前記非周期性配線の欠陥を検出する第3画像処理手段をさらに有する。
【0015】
本発明のシート検査方法は、基材上に周期性を有する導電パターンが形成されたシートの検査方法であって、前記シートを搬送しながら、照明部により前記シートに光を照射して、撮像部により前記シートからの透過光又は反射光を受光して濃淡画像を生成するステップS1と、前記濃淡画像を高精細二値画像に変換するステップS2と、前記高精細二値画像上の、前記導電パターンの周期性を有する特徴点の位置を認識するステップS3と、前記シートの欠陥を検出するステップS4とを有する。
【0016】
好ましくは、前記ステップS4は、前記高精細二値画像および前記特徴点の位置に基づいて前記シートの欠陥を検出するステップである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基材上に周期性を有する導電パターンが形成されたシートに対して、実用的な処理速度で検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態であるシート検査装置の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態であるシート検査装置の側面図である。
図3】本発明の一実施形態であるシート検査装置の機能ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態であるシート検査方法のフロー図である。
図5】本発明の装置および方法が検査対象とするシートの例である。
図6】濃淡画像の光学解像度と金属細線の関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図に基づいて説明する。本実施形態は、透明な合成樹脂フィルムを基材とする、タッチパネル用導電シートの検査に関する。なお、本明細書中で、導電パターンが形成されたシートを、単に「導電シート」という。
【0020】
まず、本実施形態の検査装置および方法が対象とする導電シートについて、図5に基づいて説明する。
【0021】
図5において、導電シート40は、透明基材41上に、金属細線42により、周期性を有するメッシュ状のパターン43が形成されている。パターン43中には金属細線の交差部44があり、パターン43の周期性に対応した周期性を持って散在している。この交差部は金属細線の特徴部として検査に利用される。また、パターン43中には、金属細線の断線部45がある。
【0022】
メッシュ状パターン43の左右両端部には、それぞれ電極46および引出配線47が電気的に接続されて、周期性を有しない非周期性金属配線48を形成している。これにより、対応する左右の電極46、46間がメッシュ状パターン43によって通電可能となっており、全体として図を左右に横断する導電帯が、上下方向に並列に形成される。この導電シート40をタッチパネルとして使用する場合は、これと直交する方向に導電帯が形成された導電シートおよび表面保護層と重ね合わせてパネルを構成する。パネル表面に指で接触すると、2枚の導電シートの導電帯間の静電容量が変化するので、この変化をIC回路で検知することにより指先の位置を求めることができる。
【0023】
透明基材41の種類は特に限定されないが、合成樹脂フィルムであることが好ましい。基材として合成樹脂フィルムを用いると、搬送時の振動等により検査が難しくなるので、本発明を利用することのメリットが大きいからである。なお、タッチパネル用導電シートの基材としてはPETフィルムが多く用いられる。
【0024】
導電シート40の幅は特に限定されない。ただし、シート幅が小さすぎると、本実施形態の検査装置および方法を用いるメリットが小さいので、シート幅は100mm以上であることが好ましく、300mm以上であることがさらに好ましい。シート幅が大きい場合には、後述するように撮像部を並列に設けることができる。しかし、シート幅が大きすぎると、搬送時の振動等が過大になるので、シート幅は2000mm以下であることが好ましい。また、導電シートの長さも特に限定されず、枚葉シートであってもよいし、ロール状に巻き取り可能な長尺シートであってもよい。
【0025】
金属細線42の材料は特に限定されないが、銀、銅が多く用いられる。また、金属細線の形成方法は、金属ナノワイヤーやナノ粒子を含有するインクを印刷する方法、銀塩写真技術による方法、全面に形成した金属膜をエッチングする方法などが用いられる。
【0026】
金属細線42の幅は、10μm以下のものが多く用いられる。通常、金属細線42(導電パターン)の線幅は光学解像度の3倍以上であることが検査上好ましいが、本発明では金属細線42(導電パターン)の線幅が光学解像度以下であっても導電パターンの検査が可能である。本実施形態の効果が顕著に得られるという観点からは、金属細線の幅は好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは8μm以下である。また、金属細線が細すぎると本実施形態によっても検査が難しくなるので、金属細線の幅は好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上である。金属細線の間隔(メッシュのピッチ)は特に限定されないが、タッチパネル用としては、100〜400μmのものが多く用いられる。
【0027】
次に、本実施形態の検査装置の構成を図1〜3に基づいて説明する。
【0028】
図1および図2において、検査装置10は、被検査対象である導電シート40を搬送する搬送部と、線状照明22と、撮像部としてラインセンサカメラ23を有する。図中、装置の枠等は省略し、搬送部はその一部である2本のローラー21のみを示した。
【0029】
線状照明22は、その長手方向が導電シート40の搬送方向と直交する向きに、導電シートの下方に配置され、導電シートに向けて光Lを照射する。線状照明の種類は特に限定されず、例えばLED素子を光源とするものを用いることができる。線状照明の発光面の幅は、より明瞭な透過画像を得るために、狭い方が好ましい。線状照明の発光面の長さは、検査対象である導電シートの幅より大きいことが好ましい。
【0030】
ラインセンサカメラ23は、導電シート40の上方に、導電シートを挟んで線状照明22と対向して配置される。ラインセンサカメラは、導電シートからの透過光をレンズで集光して、内部のリニア撮像素子によって受光する。リニア撮像素子は、光を感知するセルが一列に並んだ撮像素子である。ラインセンサカメラが線状照明と対向して配置されるとは、このリニア撮像素子が線状照明と平行に、向かい合って配置されることをいう。リニア撮像素子としては、CCDやCMOSで構成されたものを用いることができる。リニア撮像素子からのアナログ画像信号は、同じくラインセンサカメラ内部のA−D変換器によって多階調のデジタル画像、すなわち濃淡画像(多値画像ともいう)に量子化される。
【0031】
濃淡画像の光学解像度dは、後に高精細二値化処理を行うので金属細線42の幅以上であってもよい。しかし、光学解像度dが金属細線の幅に対して粗すぎると正確な検査が難しくなるので、光学解像度は金属細線の幅の8倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがさらに好ましく、2倍以下であることが特に好ましい。一方、光学解像度dは金属細線の幅より細かくてもよい。しかし、光学解像度dが細かすぎると処理すべき画像データのサイズが大きくなるので、光学解像度は金属細線の幅の0.5倍以上であることが好ましい。光学解像度dは、ラインセンサカメラ23のレンズの仕様、リニア撮像素子のセル数に依存する。また、得られる画像の実質的な解像度は、導電シート搬送時の振動や、線状照明の発光面の幅等にも依存する。
【0032】
濃淡画像は、一画素あたり階調数mに等しい情報量を持っている。後に高精細二値化処理によって明瞭な画像を得るためには、階調数mが大きいことが好ましい。階調数mは、金属細線の幅wと光学解像度dに対して、m>(d/w)であることが好ましく、m>(2d/w)であることがさらに好ましい。一方、階調数mが大きすぎると処理すべき画像データのサイズが大きくなるので、階調数mは、好ましくは232以下、さらに好ましくは216以下である。階調数mは、ラインセンサカメラのリニア撮像素子のセル面積やA−D変換器の仕様等に依存する。
【0033】
ラインセンサカメラ23としては、リニア撮像素子のセル数が16,000程度、階調数が210のものが市販されている。これを適切なレンズと組み合わせることにより、約10μmの光学解像度で、幅約160mmの濃淡画像を生成することができる。導電シート40の幅がこれより大きい場合には、複数台のライセンサカメラを幅方向に並べて配置すればよい。例えば、図1および図2では、3台のラインセンサカメラを並置している。
【0034】
図3において、導電シート検査装置10は、搬送部20、線状照明22、ラインセンサカメラ23、処理部26、制御部30および記憶部31を有する。
【0035】
各ラインセンサカメラ23は内部にリニア撮像素子24およびA−D変換器25を有している。各ラインセンサカメラは、カメラ内部では階調数210の濃淡画像を保持し、カメラ外部に出力する際に、伝送負荷を軽減するため、2の濃淡画像に低階調化して出力してもよい。
【0036】
各ラインセンサカメラ23には、処理部26が接続されている。処理部26の内部には、第1画像処理手段27、第2画像処理手段28および第3画像処理手段29が構成されている。第1画像処理手段27は、ラインセンサカメラから転送される濃淡画像のうち少なくともメッシュ状パターン(図5の43)の領域を高精細二値化し、金属細線の特徴点の位置を認識して、同領域の欠陥を検出する。第2画像処理手段28は、ラインセンサカメラから転送される濃淡画像のうち少なくともメッシュ状パターン(図5の43)の領域を低精細二値化して、メッシュ状パターンの抜けを検出する。第3画像処理手段29は、ラインセンサカメラから転送される濃淡画像のうち少なくとも非周期性金属配線(図5の48)の領域を高精細二値化して、同領域の基準画像と照合して、同領域の欠陥を検出する。処理部26としては、パソコン(PC)、ワークステーション(WS)などのコンピュータを用いることができる。第1ないし第3画像処理手段27〜29は、処理部26上で動作するソフトウェアとして実装されてもよいし、処理部26内に画像処理回路として実装されてもよい。
【0037】
記憶部31には、金属細線の特徴点の周期性に関する情報、非周期性金属配線の基準画像、二値化処理の閾値等が記憶されている。記憶部としては、ハードディスク装置などの各種の記憶装置を用いることができる。制御部30は、検査装置10全体を制御する。制御部としては、PC、WSなどのコンピュータを用いることができる。
【0038】
なお、検査装置10の構成は、図3の構成に限定されるものではない。例えば、図3ではラインセンサカメラ23の1台毎に処理部26が接続されているが、実用的な速度で処理可能であれば、複数のラインセンサカメラからの濃淡画像データをまとめて、1つのコンピュータ等で処理してもよい。あるいは、第1ないし第3画像処理手段27〜29を、それぞれ物理的に別個のコンピュータ等で構成してもよい。さらに、第1ないし第3画像処理手段のうち、いくつかの画像処理手段を複数のコンピュータ等で構成して、並列処理を行ってもよい。また、図3では、1つの記憶部31が制御部30に接続されているが、各処理部26にそれぞれ記憶部を設けて接続してもよい。
【0039】
次に、本実施形態の検査方法を図4に沿って説明する。部材等の参照番号は図1〜3および図5のものを用いた。
【0040】
導電シート40は、搬送部20により搬送されている状態で、線状照明22によって光が照射される。導電シートを透過した光はラインセンサカメラ23によって受光され、ラインセンサカメラによって濃淡画像が生成される(以上ステップS1)。ラインセンサカメラ内部の動作は、前述のとおり、導電シートからの透過光がレンズで集光されてリニア撮像素子24によって受光され、リニア撮像素子からのアナログ画像信号がA−D変換器25によって濃淡デジタル画像に量子化される。このとき、透明基材41上の金属線は不透明であるため、金属線が存在する部分に対応する画素は暗く、存在しない部分に対応する画素は明るくなる。メッシュ状パターン43の領域では明るい画素が多くなるので、A−D変換器が非線形量子化等を行うことによりコントラストを高めるようにしてもよい。ステップS1によって、導電シートの幅方向の1ライン分、光学解像度が10μmであれば幅10μmの1ライン分の画像が生成される。ステップS1が繰り返されることによって、導電シート全体の画像が生成される。
【0041】
ラインセンサカメラ23によって生成された濃淡画像のデータは、ステップS1を繰り返しながら、並行して第1ないし第3画像処理手段27〜29へと転送される。
【0042】
濃淡画像データを受信した第1画像処理手段27では、メッシュ状パターン43領域の検査が行われる。
【0043】
第1画像処理手段27は、濃淡画像のうち少なくともメッシュ状パターン43の領域を高精細二値画像に変換する(ステップS2)。高精細二値化処理では、濃淡画像の各画素を、補間(内挿)しながらさらに細かく分割して、所定の閾値との比較により白と黒の2階調に変換する。補間は、連続する複数ライン分の濃淡画像データを用いて、バイリニア補間やさらに高次の補間など、種々公知の方法で行うことができる。金属細線42が細いと、その幅全体が濃淡画像の一画素中に含まれることがあり、高精細二値画像では輪郭が明瞭に得られないことがある。しかし、メッシュ状パターン中に金属細線の交差部44があると、その部位の濃淡画像は金属細線の直線または曲線部よりも少し濃くなり、高精細二値画像では少し大きく現れる。このことは、例えば、たがいに連結している黒い画素の集まりである連結成分の大きさによって判断できる。発明者らの実験では、光学解像度10μm、撮像素子から得た210階調の画像データを2階調に低階調化した濃淡画像を4×4倍(16倍)に高精細二値化した画像で、幅約10μmの金属細線の交差部を明瞭に確認することができた。
【0044】
なお、特徴点とは、所定の周期性を有し、かつ濃淡画像において金属細線の直線または曲線部よりも濃く現れうる点をいう。図6に、金属細線42の幅wが濃淡画像の光学解像度dの0.6倍であるときの例を示す。濃淡画像の一画素50は、1辺がdの正方形で表される。一画素に含まれうる金属細線の面積割合は、直線部分(図6A)と比較して、交差部44(図6B)や金属細線が折れ曲がってV字形に尖った角部51(図6C)では大きくなる。このように、金属細線の交差部や、金属細線が折れ曲がってV字形に尖った角部は特徴点である。
【0045】
第1画像処理手段27は、次いで、高精細二値画像上の金属細線42の特徴点44の位置を認識する(ステップS3)。特徴点はメッシュ状パターンに対応する周期性を有するので、第1画像処理手段27は、記憶部31からあらかじめ設定した特徴点の周期性に関する情報(例えば、交差部のピッチなど)を取得して参照することにより、高精細二値画像上のどの位置が特徴点に相当するかを認識することができる。なお、特徴点の周期性に関する情報は、高精細二値画像上から複数の特徴点の候補を抽出し自動的に計算することもできる。
【0046】
第1画像処理手段27は、次いで、高精細二値画像と特徴点44の位置に基づいて種々の欠陥を検出する(ステップS4)。具体的には、高精細二値画像上の特徴点の大きさから、例えば高精細二値画像上の特徴点に相当する位置にある連結成分の大きさから、特徴点の良否を判定することができる。金属細線の交差部44は電気特性に重要な影響を与えるが製造上の欠点が出やすいため、交差部が正常に形成されているか否かを判定することのメリットは大きい。また、交差部でない部分に大きな点(例えば大きな連結成分)が存在する場合は、異物、汚れ等であると判断できる。
【0047】
以上により、第1画像処理手段27は、周期性を有するパターン中の特徴点の不良、異物など、導電シートの欠陥を検出することができる。
【0048】
濃淡画像データを受信した第2画像処理手段28では、メッシュ状パターン43領域の検査が行われる。
【0049】
第2画像処理手段28は、濃淡画像のうち少なくともメッシュ状パターン43の領域を低精細二値画像に変換する(ステップS5)。低精細二値化処理では、濃淡画像データの各画素を、隣接するいくつかの画素毎に濃淡の平均を取って統合し、ある閾値との比較により白と黒の2階調に変換する。このとき、適当な閾値を設定することにより、メッシュ状パターンの正常部の全体を黒くすることができる。上記の低精細二値化処理では、画像を圧縮する(画像の画素数を減らす)ことになり、後段の画像処理を高速化できるという効果もある。その他の手法として画像全体を平滑化した後に二値化してもよいが、この場合、画素数は元の濃淡画像と同じになる。
【0050】
第2画像処理手段28は、次いで、低精細二値画像からメッシュ状パターンの抜けを検出する(ステップS6)。ここで、パターンの抜けとは、パターンを構成する金属細線の一部が存在しないことをいう。メッシュ状パターン43内に、ある程度以上の広がりを持って金属細線42がない部分が存在すると、低精細二値画像においてその部分に対応する画素だけが白く残るので、これを検出することができる。例えば、繰り返しパターンを構成する最小の要素が少なくとも1つ以上存在しない場合をパターンの抜けとして検出してもよい。具体的には、図5のメッシュ状パターン43内において、少なくとも1つの四角形を構成する金属細線42がない場合、これをパターンの抜けとして検出することができる。また、金属細線42の線幅が細いまたは線が薄い部分がある程度以上の広がりを持って存在する場合も、同様にパターンの抜けとして検出することができる。
【0051】
以上により、第2画像処理手段28は、周期性を有するパターンの抜けを検出することができる。この方法では、ある程度以上の広がりを持った抜けだけが検出できるが、このような抜けはパターン形成時の基材汚れや印刷の不具合等によって高い頻度で発生すること、簡易な画像処理によってそれを検出可能である点でメリットがある。特に、第2画像処理手段での検査によって第1画像処理手段27での検査を補完するとメリットが大きい。
【0052】
濃淡画像データを受信した第3画像処理手段29では、電極および引出配線を含む非周期性金属配線48の検査が行われる。
【0053】
第3画像処理手段29は、濃淡画像のうち少なくとも非周期性金属配線48の領域を高精細二値画像に変換する(ステップS7)。メッシュ状パターン43を形成する金属細線42と異なり、非周期性金属配線48は最小でも30〜100μm程度の線幅があるので、濃淡画像の光学解像度が十分に小さければ、濃淡画像の一画素中に線幅の全体が含まれることがない。したがって、高精細二値化処理によって、輪郭の明瞭な画像を得ることができる。
【0054】
第3画像処理手段29は、次いで、高精細二値画像と非周期性金属配線48の基準画像とを照合して、欠陥を検出する(ステップS8)。第3画像処理手段29は、記憶部31に格納された非周期性金属配線の基準画像を取得する。基準画像は、CADソフト等から生成した設計画像であってもよいし、導電シートの良品から本実施形態の検査装置等で予め取得した画像であってもよい。得られた高精細二値画像と基準画像を照合して異なる所があれば、その部分に欠陥が存在するものと判断できる。発明者らの実験では、光学解像度10μm、撮像素子から得た210階調の画像データを2階調に低階調化した濃淡画像を10×10倍(100倍)に高精細二値化した画像で、最小線幅/間隔が30μmの金属配線に対して画像照合による外観検査が可能であった。
【0055】
以上により、第3画像処理手段29は、非周期性金属配線48の欠陥を検出することができる。基準画像との照合を行うので、配線の欠け、ショート、異物の混入等ほとんどの欠陥を検出することができる。画像照合による検査が難しいメッシュ状パターン43の検査を第1画像処理手段27および/または第2画像処理手段28で行い、第3画像処理手段による非周期性金属配線の検査と組み合わせることによって、導電シート40の全体を検査することができる。
【0056】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0057】
例えば、導電シートは、タッチパネル用のものに限らず、スクリーン前面に設ける電磁遮蔽板用のものであってもよい。本発明は、周期性を有するパターンおよび周期性を有する特徴点が形成された各種の導電シートに適用可能である。
【0058】
例えば、図5に示したメッシュの格子は略正方形であるが、メッシュ形状はこれに限られず、菱形状、長方形状、各種多角形状であってもよい。また、導電シートの周期性を有するパターンはメッシュ状に限られず、折れ線等が並んで配置されたようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 導電シート検査装置
20 搬送部
21 ローラー
22 線状照明(照明部)
23 ラインセンサカメラ(撮像部)
24 リニア撮像素子
25 A−D変換器
26 処理部
27 第1画像処理手段
28 第2画像処理手段
29 第3画像処理手段
30 制御部
31 記憶部
40 導電シート
41 透明基材
42 金属細線
43 メッシュ状パターン(周期性を有するパターン)
44 金属細線の交差部(特徴点)
45 金属細線の断線部
46 電極
47 引出配線
48 非周期性金属配線
50 濃淡画像の一画素
51 金属細線の角部(特徴点)
L 光線
d 濃淡画像の光学解像度
m 濃淡画像の階調数
w 金属細線の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6