(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来のワンコンバータ方式のスイッチング電源装置としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
図11に示すように、この従来のスイッチング電源装置10は、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2を中点P10を介して直列接続してなる回路と、これに並列接続された、第3スイッチング素子Q3および第4スイッチング素子Q4を中点P11を介して直列接続してなる回路と、これらに並列接続された、第1ダイオードD6および第2ダイオードD7を中点P12を介して直列接続してなる回路と、これらに並列接続されたコンデンサC4と、スイッチング素子Q1〜Q4を制御する制御部11とを備えている。
【0003】
また、スイッチング電源装置10は、中点P10および中点P11の間に接続された、コンデンサC5、インダクタL4およびトランスTの一次巻線T1を直列接続してなる回路と、中点P12に接続されたインダクタL3とを備えている。インダクタL3および中点P10の間には、当該スイッチング電源装置10に入力電圧を供給する交流電源Eが接続される。また、コンデンサC5およびインダクタL4は、共振回路を構成する。
【0004】
スイッチング電源装置10は、さらに、トランスTの二次巻線T2a,T2bに誘起される電圧を整流および平滑することにより、負荷20に供給すべき直流の出力電圧を生成する二次側回路(ダイオードD8a,D8b、インダクタL5、コンデンサC6)も備えている。
【0005】
制御部11は、PFC電圧および出力電圧に基づいて、スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング(オンからオフへの切り替え、およびオフからオンへの切り替え)を制御する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係るワンコンバータ方式のスイッチング電源装置の実施例について説明する。
【0015】
図1に、本発明の実施例に係るワンコンバータ方式のスイッチング電源装置1を示す。スイッチング電源装置1は、商用系統等の交流電源Eから供給される入力電圧Vinから直流の出力電圧Voutを生成して負荷20に供給するものである。
【0016】
図1に示すように、本実施例に係るスイッチング電源装置1は、第1スイッチング素子Q1および第2スイッチング素子Q2を中点P1を介して直列接続してなる第1直列接続体2と、これに並列接続された、第3スイッチング素子Q3および第4スイッチング素子Q4を中点P2を介して直列接続してなる第2直列接続体3とからなるフルブリッジ回路4を備えている。
【0017】
本実施例では、各スイッチング素子Q1〜Q4としてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を使用している。各スイッチング素子Q1〜Q4は、それぞれボディダイオード(寄生ダイオード)D1〜D4を内包している。ボディダイオードD1のカソードは、第1スイッチング素子Q1のドレインに接続されている。また、ボディダイオードD1のアノードは、第1スイッチング素子Q1のソースに接続されている。スイッチング素子Q2〜Q4およびボディダイオードD2〜D4についても同様である。
【0018】
スイッチング電源装置1は、力率改善用のコンデンサC3をさらに備えている。コンデンサC3は、フルブリッジ回路4(第1直列接続体2,第2直列接続体3)に並列接続されている。より詳しくは、コンデンサC3の一端は、スイッチング素子Q1,Q3のドレインに接続され、コンデンサC3の他端は、スイッチング素子Q2,Q4のソースに接続されている。
【0019】
スイッチング電源装置1は、インダクタL1と、これに直列接続されたコンデンサC1とをさらに備えている。インダクタL1は、一端が中点P1に接続されるとともに、他端がコンデンサC1の一端に接続されている。
【0020】
スイッチング電源装置1に入力電圧Vinを供給する交流電源Eは、コンデンサC1の他端と中点P2の間に接続される。なお、本明細書では、コンデンサC1の他端の電位が中点P2の電位よりも高い場合の入力電圧Vinの極性を“正”、コンデンサC1の他端の電位が中点P2の電位よりも低い場合の入力電圧Vinの極性を“負”とする。
【0021】
スイッチング電源装置1は、トランスTをさらに備えている。トランスTは、一次巻線T1および2つの二次巻線T2a,T2bを含んでいる。一次巻線T1は、一端(
図1において、●が付けられた端部)が中点P1に接続され、他端が中点P2に接続されている。また、二次巻線T2aは、他端(●が付けられていない端部)が二次巻線T2bの一端(●が付けられた端部))に接続されている。
【0022】
スイッチング電源装置1は、トランスTの二次巻線T2a,T2bに誘起される電圧を整流および平滑することにより負荷20に供給すべき直流の出力電圧Voutを生成する二次側回路5をさらに備えている。二次側回路5は、アノードが二次巻線T2aの一端に接続されたダイオードD5aと、アノードが二次巻線T2bの他端に接続されたダイオードD5bと、一端がダイオードD5a,D5bのカソードに接続されたインダクタL2と、一端がインダクタL2の他端に接続されるとともに他端が二次巻線T2aの他端(二次巻線T2bの一端)に接続されたコンデンサC2とを含んでいる。コンデンサC2の両端に発生する電圧が、出力電圧Voutとして負荷20に供給される。
【0023】
スイッチング電源装置1は、マイコン等からなる制御部6をさらに備えている。制御部6は、入力電圧Vin、出力電圧VoutおよびコンデンサC3の一端の電圧(以下、直流リンク電圧という)に基づいて各スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチングを制御する。
【0024】
続いて、本実施例に係るスイッチング電源装置1における、制御部6による各スイッチング素子Q1〜Q4の制御について説明する。
【0025】
制御部6は、入力電圧Vinの極性が正である正半期および入力電圧Vinの極性が負である負半期のいずれにおいても、a)第2スイッチング素子Q2および第3スイッチング素子Q3をオフ、第4スイッチング素子Q4をオンさせつつ第1スイッチング素子Q1をオン/オフさせる第1制御と、b)第1スイッチング素子Q1および第4スイッチング素子Q4をオフ、第2スイッチング素子Q2をオンさせつつ第3スイッチング素子Q3をオン/オフさせる第2制御と、c)第1スイッチング素子Q1および第3スイッチング素子Q3をオフ、第2スイッチング素子Q2および第4スイッチング素子Q4をオンさせる第3制御とを繰り返し実行する。これにより、正半期においては表1に示す状態P1〜P7が作られ、負半期においては表2に示す状態N1〜N7が作られる(
図2,
図3,
図7参照)。
【表1】
【表2】
【0026】
なお、各スイッチング素子Q1〜Q4のデューティ比は、直流リンク電圧および入力電圧Vinの電圧値に応じて変化するが(
図2参照)、
図3および
図7ではこのデューティ比の変化が省略されている。また、各スイッチング素子Q1〜Q4を流れる電流およびインダクタL1を流れる電流は正弦波状に変化するが(
図2参照)、
図3および
図7ではこの正弦波状の変化も省略されている。
【0027】
正半期の状態P1では、第1スイッチング素子Q1がオフ、第2スイッチング素子Q2がオフ、第3スイッチング素子Q3がオフ、第4スイッチング素子Q4がオンとなっている。状態P1における電流経路を
図4(A)に示す。同図に示すように、状態P1では、交流電源Eから供給された電流がコンデンサC1→インダクタL1→第1スイッチング素子Q1のボディダイオードD1→コンデンサC3の経路を流れ、これによりコンデンサC3が充電される。
【0028】
状態P1の次に作られる状態P2では、第1スイッチング素子Q1がオン、第2スイッチング素子Q2がオフ、第3スイッチング素子Q3がオフ、第4スイッチング素子Q4がオンとなっている。状態P2における電流経路を
図4(B)に示す。同図に示すように、状態P2では、コンデンサC3の放電電流が第1スイッチング素子Q1→トランスTの一次巻線T1→第4スイッチング素子Q4の経路を流れ、これにより、トランスTの二次巻線T2a,T2bに電圧が誘起される。二次側回路5は、この誘起電圧を整流および平滑することにより出力電圧Voutを生成する。
【0029】
状態P2の次に作られる状態P3では、第1スイッチング素子Q1がオフ、第2スイッチング素子Q2がオフ、第3スイッチング素子Q3がオフ、第4スイッチング素子Q4がオンとなっている。状態P3における電流経路を
図4(C)に示す。同図に示すように、状態P3では、状態P2と同一の方向に電流を流し続けようとする一次巻線T1の作用により、一次巻線T1→第4スイッチング素子Q4→第2スイッチング素子Q2のボディダイオードD2の経路で電流が流れ、これにより、引き続きトランスTの二次巻線T2a,T2bに電圧が誘起される。
【0030】
状態P3の次に作られる状態P4では、第1スイッチング素子Q1がオフ、第2スイッチング素子Q2がオン、第3スイッチング素子Q3がオフ、第4スイッチング素子Q4がオフとなっている。状態P4における電流経路を
図5(A)に示す。同図に示すように、状態P4では、交流電源Eから供給された電流がコンデンサC1→インダクタL1→第2スイッチング素子Q2→第4スイッチング素子Q4のボディダイオードD4の経路を流れる。
【0031】
状態P4の次に作られる状態P5では、第1スイッチング素子Q1がオフ、第2スイッチング素子Q2がオン、第3スイッチング素子Q3がオン、第4スイッチング素子Q4がオフとなっている。状態P5における電流経路を
図5(B)に示す。同図に示すように、状態P5では、コンデンサC3の放電電流が第3スイッチング素子Q3→トランスTの一次巻線T1→第2スイッチング素子Q2の経路を流れ、これにより、トランスTの二次巻線T2a,T2bに状態P2,P3とは逆極性の電圧が誘起される。
【0032】
状態P5の次に作られる状態P6では、第1スイッチング素子Q1がオフ、第2スイッチング素子Q2がオン、第3スイッチング素子Q3がオフ、第4スイッチング素子Q4がオフとなっている。状態P6における電流経路を
図5(C)に示す。同図に示すように、状態P6では、状態P5と同一の方向に電流を流し続けようとする一次巻線T1の作用により、一次巻線T1→第2スイッチング素子Q2→第4スイッチング素子Q4のボディダイオードD4の経路で電流が流れ、これにより、引き続きトランスTの二次巻線T2a,T2bに電圧が誘起される。
【0033】
状態P6の次に作られる状態P7では、第1スイッチング素子Q1がオフ、第2スイッチング素子Q2がオン、第3スイッチング素子Q3がオフ、第4スイッチング素子Q4がオンとなっている。状態P7における電流経路を
図6に示す。同図に示すように、状態P7では、状態P6と同様、一次巻線T1→第2スイッチング素子Q2→第4スイッチング素子Q4(ボディダイオードD4)の経路で電流が流れ、これにより、引き続きトランスTの二次巻線T2a,T2bに電圧が誘起される。また、第4スイッチング素子Q4がオンすることで、第4スイッチング素子Q4のボディダイオードD4の損失がなくなる。
【0034】
状態P7の後には、再び状態P1が作られる。
【0035】
負半期の状態N1では、正半期の状態P4と同様、第1スイッチング素子Q1がオフ、第2スイッチング素子Q2がオン、第3スイッチング素子Q3がオフ、第4スイッチング素子Q4がオフとなっている。状態N1における電流経路を
図8(A)に示す。同図に示すように、状態N1では、交流電源Eから供給された電流が第3スイッチング素子Q3のボディダイオードD3→コンデンサC3の経路を流れ、これによりコンデンサC3が充電される。
【0036】
状態N1の次に作られる状態N2では、正半期の状態P5と同様、第1スイッチング素子Q1がオフ、第2スイッチング素子Q2がオン、第3スイッチング素子Q3がオン、第4スイッチング素子Q4がオフとなっている。状態N2における電流経路を
図8(B)に示す。同図に示すように、状態N2では、コンデンサC3の放電電流が第3スイッチング素子Q3→トランスTの一次巻線T1→第2スイッチング素子Q2の経路を流れ、これにより、トランスTの二次巻線T2a,T2bに電圧が誘起される。二次側回路5は、この誘起電圧を整流および平滑することにより出力電圧Voutを生成する。
【0037】
状態N2の次に作られる状態N3では、正半期の状態P6と同様、第1スイッチング素子Q1がオフ、第2スイッチング素子Q2がオン、第3スイッチング素子Q3がオフ、第4スイッチング素子Q4がオフとなっている。状態N3における電流経路を
図8(C)に示す。同図に示すように、状態N3では、状態N2と同一の方向に電流を流し続けようとする一次巻線T1の作用により、一次巻線T1→第2スイッチング素子Q2→第4スイッチング素子Q4のボディダイオードD4の経路で電流が流れ、これにより、引き続きトランスTの二次巻線T2a,T2bに電圧が誘起される。
【0038】
状態N3の次に作られる状態N4では、正半期の状態P7と同様、第1スイッチング素子Q1がオフ、第2スイッチング素子Q2がオン、第3スイッチング素子Q3がオフ、第4スイッチング素子Q4がオンとなっている。状態N4における電流経路を
図9(A)に示す。同図に示すように、状態N4では、状態N3と同様、一次巻線T1→第2スイッチング素子Q2→第4スイッチング素子Q4(ボディダイオードD4)の経路で電流が流れ、これにより、引き続きトランスTの二次巻線T2a,T2bに電圧が誘起される。また、第4スイッチング素子Q4がオンすることで、第4スイッチング素子Q4のボディダイオードD4の損失がなくなるとともに、交流電源Eから第4スイッチング素子Q4→第2スイッチング素子Q2→インダクタL1→コンデンサC1の経路で電流が流れ、インダクタL1にエネルギーが蓄えられる。
【0039】
状態N4の次に作られる状態N5では、正半期の状態P1と同様、第1スイッチング素子Q1がオフ、第2スイッチング素子Q2がオフ、第3スイッチング素子Q3がオフ、第4スイッチング素子Q4がオンとなっている。状態N5における電流経路を
図9(B)に示す。同図に示すように、状態N5では、交流電源Eから供給された電流が第4スイッチング素子Q4→第2スイッチング素子Q2のボディダイオードD2→インダクタL1→コンデンサC1の経路を流れる。
【0040】
状態N5の次に作られる状態N6では、正半期の状態P2と同様、第1スイッチング素子Q1がオン、第2スイッチング素子Q2がオフ、第3スイッチング素子Q3がオフ、第4スイッチング素子Q4がオンとなっている。状態N6における電流経路を
図9(C)に示す。同図に示すように、状態N6では、コンデンサC3の放電電流が第1スイッチング素子Q1→トランスTの一次巻線T1→第4スイッチング素子Q4の経路を流れ、これにより、トランスTの二次巻線T2a,T2bに状態N2,N3,N4とは逆極性の電圧が誘起される。
【0041】
状態N6の次に作られる状態N7では、正半期の状態P3と同様、第1スイッチング素子Q1がオフ、第2スイッチング素子Q2がオフ、第3スイッチング素子Q3がオフ、第4スイッチング素子Q4がオンとなっている。状態N7における電流経路を
図10に示す。同図に示すように、状態N7では、状態N6と同一の方向に電流を流し続けようとする一次巻線T1の作用により、一次巻線T1→第4スイッチング素子Q4→第2スイッチング素子Q2のボディダイオードD2の経路で電流が流れ、これにより、引き続きトランスTの二次巻線T2a,T2bに電圧が誘起される。
【0042】
状態N7の後には、再び状態N1が作られる。
【0043】
このように、スイッチング電源装置1は、正半期および負半期のいずれにおいても、力率改善回路としての動作とコンバータとしての動作とを行う。
【0044】
本実施例に係るスイッチング電源装置1によれば、一次側に電流帰還用のダイオードを設ける必要がないので、従来のスイッチング電源装置よりも損失を低減し、高効率化を図ることができる。また、スイッチング電源装置1によれば、交流電源Eと制御部6とを除いた一次側の部品点数が7点(Q1,Q2,Q3,Q4,C1,C3,L1)で済むので、従来のスイッチング電源装置(部品点数は10点)よりも小型化を図ることができる。
【0045】
以上、本発明に係るスイッチング電源装置1の実施例について説明してきたが、本発明の構成は実施例の構成に限定されるものではない。例えば、二次側回路5は、トランスTの二次巻線(二次巻線の数は2つに限定されない)に誘起される電圧を整流および平滑して出力電圧Voutを生成することができる限りにおいて、任意の回路構成に変更することができる。このような二次側回路5としては、例えば、全波整流型の二次側回路や同期整流型の二次側回路がある。